JP2004047293A - 有機エレクトロルミネセンス表示装置、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂繊維のピッチ間隔のばらつきを補正でき、均等間隔でストライプ電極を形成できる有機EL表示装置、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上に、少なくとも陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極を積層してなり、一方向に沿って複数列の陽極を配するとともに、陽極と直交する方向に沿って複数行の陰極を配する有機EL表示装置の製造方法であって、複数条の樹脂繊維7を一方向に沿って並列に有する蒸着用マスクを用いて、陽極と陰極の少なくとも一方を形成し、蒸着用マスクの樹脂繊維7を基板1上に設けた支持体3間に支持して、樹脂繊維7同士のピッチ間隔を補正する。
【選択図】 図3
【解決手段】基板1上に、少なくとも陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極を積層してなり、一方向に沿って複数列の陽極を配するとともに、陽極と直交する方向に沿って複数行の陰極を配する有機EL表示装置の製造方法であって、複数条の樹脂繊維7を一方向に沿って並列に有する蒸着用マスクを用いて、陽極と陰極の少なくとも一方を形成し、蒸着用マスクの樹脂繊維7を基板1上に設けた支持体3間に支持して、樹脂繊維7同士のピッチ間隔を補正する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に、少なくとも陽極、発光層、及び陰極を積層してなるエレクトロルミネセンス表示装置(以下、「EL表示装置」という。)に係り、詳しくは、発光層として発光材料を含有する有機物層を備えた有機EL表示装置、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界発光を利用したEL表示装置は、自己発光であるため視認性が高く、また完全固体であるため耐衝撃性に優れている等の特徴を有することから、各種表示装置として注目されている。このEL表示装置には、無機化合物を用いた無機EL表示装置と、有機化合物を用いた有機EL表示装置とがあり、このうち有機EL表示装置の素子は印加電圧を大幅に低くすることができるので、次世代の自発光表示装置として、その実用化の研究が積極的になされている。
【0003】
有機EL表示装置は、基板上に平面配置された発光層としての有機物層を挟んで陽極と陰極とをストライプ状に直交させてマトリックス配置した構成となっており、これらの有機EL表示装置の陽極および陰極間に3〜20Vの直流電圧を印加すると、陽極から正孔が、陰極から電子が有機物層に注入され、陽極と陰極の交差領域において正孔と電子の再結合により有機物層が発光する。
【0004】
従来の有機EL表示装置では、透明支持基板上に透明電極、通常ではITOが形成され、フォトリソグラフィ技術を用いて一方向に伸びる複数列の所要パターンが陽極として形成される。この陽極上には、真空蒸着法により単層あるいは積層構造の有機物層が成膜され、この有機物層の上に、前記陽極とは直交する方向に延びて前記陽極と交差する複数行の陰極が形成される。
【0005】
この陰極の形成方法としては、シャドウマスクを用いて蒸着法により形成する技術が提案されている。すなわち、この方法は、所要パターンの陽極を形成した後に、全面に有機物層を成膜し、この有機物層上にストライプ状のスリットを有するシャドウマスクを被せ、このスリットを通して陰極を構成する導電材料を蒸着法によって形成し、所要パターンの陰極を形成するものである。
【0006】
このような従来の陰極製造技術において、前記したシャドウマスクには、通常金属製のものが多く用いられ、そのシャドウマスクの形成方法としてはエッチング技術及び電鋳技術が採用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このシャドウマスクを用いて陰極を形成する場合、形成しようとする有機EL表示装置の基板サイズが大きな場合には、これに伴ってシャドウマスクの寸法も大きくなる。このため、陰極を堆積する際に、下方に向けられる透明支持基板の表面に密着させるべきシャドウマスクの中央部分がその自重によって下方に撓んで密着されなくなる。その結果、この隙間を通して陰極用金属が透明支持基板の表面に被着されるために、シャドウマスク通りのパターンの陰極を形成することができなくなり、隣接する陰極が短絡してしまうことになる。特に、微細な陰極を形成するには、シャドウマスクの厚みも薄くなるため、シャドウマスクの剛性が低下してしまい、前記した撓みが顕著になり易い。
【0008】
このような問題に対しては、特開2000−182767号公報において、前記のシャドウマスク部材の金属よりも比重が小さいポリイミド系のアラミド繊維などの樹脂系単繊維を用いて、陰極形成用のストライプ状のスリットを引き伸ばした状態で貼り付けた単繊維マスクを採用し、基板とシャドウマスクの間の弛みや浮きを低減する方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、前記単繊維マスクは、矩形の環状を呈する金属フレームの開口部に、ストライプ状に単繊維マスクを緊張状態で貼り付けるという形成方法が採用されており、その単繊維のストライプピッチ間隔の幅には約10%のばらつきが発生していた。そのため、前記単繊維マスクを用いて陰極を形成した場合、陰極のストライプの幅にも10%程度のばらつきが生じていた。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、樹脂繊維のストライプピッチ間隔のばらつきを補正することができ、均等間隔でストライプ電極を形成することができる有機EL表示装置、およびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく、本発明の有機EL表示装置は、基板上に、少なくとも陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極を積層してなり、一方向に沿って複数列の陽極を配するとともに、該陽極と直交する方向に沿って複数行の陰極を配する有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法において、
複数条の樹脂繊維を一方向に沿って並列に有する蒸着用マスクを用いて陽極と陰極の少なくとも一方を形成するに際して、該蒸着用マスクの樹脂繊維を基板上に設けた支持体間に支持して、樹脂繊維同士のピッチ間隔を補正することを特徴としている。
【0012】
上記有機EL表示装置の製造方法において、基板上に、陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極を順次形成し、該陰極を形成する部位における長手方向の延長線上に、蒸着マスクの樹脂繊維同士のピッチ間隔を補正する支持体を設けることが好ましい。
【0013】
また、上記支持体に、相隣接する支持体同士の間隔を基板から離れるに従い順次拡大するようなテーパを形成することが好ましい。
【0014】
さらに、上記支持体を絶縁体により形成することが好ましい。
【0015】
そして、上記支持体をフォトリソグラフィー技術により形成することが好ましい。
【0016】
一方、本発明の有機EL表示装置は、基板上に、少なくとも陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極が積層され、一方向に沿って複数列の陽極が配されるとともに、該陽極と直交する方向に沿って複数行の陰極が配されてなる有機エレクトロルミネセンス表示装置において、
上記のいずれかの方法により製造されることを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明は本実施形態に限るものではない。
【0018】
図1は本発明の一実施形態の有機EL表示装置を示す平面図であり、図2は図1のA−B線断面図である。
【0019】
図1において、基板1上の点線内部の領域は、本実施形態の有機EL表示装置における発光部10であり、複数列のストライプ状に形成された透明電極(陽極)2、有機物層、及び陽極2と直交するようにストライプ状に形成される複数行の陰極6が配置される。ストライプ状に形成される複数行の陰極6の両端には、蒸着用マスクに貼り付けられた樹脂繊維を所定の位置に配置するための支持体3が設けられている。
【0020】
支持体3は、陰極6を形成する際に、適切な場所に樹脂繊維を配置するために、樹脂繊維が配置されるべき箇所の両脇に形成されており、図1及び図2では、陰極6の長手方向の延長上に配置されている。また、図3に示すように、支持体同士の間隔は、蒸着用マスクを構成している樹脂繊維7の直径と同程度であることが好ましい。また、支持体3には、支持体同士の間隔が基板から離れるに従い順次拡大するようなテーパーが形成されていると、樹脂繊維7の設置が容易となるので好ましい。さらに、支持体3の基板1からの高さは、樹脂繊維マスクを構成している単繊維の直径と同程度であることが好ましい。支持体3の基板1からの高さが低いと、支持体3に配置した各樹脂繊維7…が位置ずれを起してしまう可能性があるからである。
【0021】
陰極を成膜する際、相隣接する支持体3、3の間に樹脂繊維7を配置することにより、樹脂繊維マスク自体に存在する樹脂繊維7のストライプピッチ間隔のばらつきを補正することが可能となり、成膜後におけるストライプ陰極のピッチ間隔のばらつきを低減することが可能となる。従来の方法では、陰極を成膜するために樹脂繊維マスクを所定の位置に設置しても、図4に示すように樹脂繊維マスク自体に樹脂繊維7のストライプピッチ間隔のばらつきがあるために、ストライプ状の陰極を均等間隔に配置することが困難であった。
【0022】
なお、前記支持体3の材質としては、隣接する陰極同士が導通を起さないようにするために絶縁体で形成することが好ましいが、隣接する支持体同士が導通を起さなければ、導体であっても差し支えない。
【0023】
次に、本実施形態の有機EL表示装置の製造方法を図5に基づいて製造工程順に説明する。まず、図5(a)に示すように、透明基板1の表面上にITO膜をスパッタリング法で100nm程度の厚みに成膜する。そして、このITO膜をフォトリソグラフィー技術とエッチング技術を用いてストライプ状にパターニングし、ITO膜による陽極2を形成する。ここで、必要であれば、陰極用の取り出し電極をパターニングしておくとよい。
【0024】
次に、図5(b)に示すように、表示部外周部4辺の内、陰極と直交する2辺に蒸着用マスクの樹脂繊維を配置するための支持体3を形成する。すなわち、上記のITO膜のパターニングされた基板1上に、ポジ型のフォトレジストを約30μmの厚みに塗布する。その後、陰極と直交する表示部外周部分に開口部が設けられ、かつ蒸着用マスクの樹脂繊維が配置される部分には遮光部が設けられたパターンマスクを用いて露光を行い、さらに前記フォトレジストを現像することで、図5(c)に示すように、支持体3のパターニングを行った。
【0025】
そして、図5(d)に示すように、その上に、真空蒸着装置を用いて表示領域全域に、N,N’−ビス−3−メチルフェニル−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(以下、「TPD」という。)を300〜500Å蒸着して正孔輸送層4を形成し、該正孔輸送層4上にトリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq3)を400〜600Å蒸着して発光層兼電子輸送層5を形成して、前記ITO電極を含む表示領域を有機多層薄膜4、5により被覆する。
【0026】
その後、図5(e)に示すように、所定の位置にストライプ状の陰極を形成するために、有機多層薄膜4、5により被覆された基板1上に蒸着用マスクを設置する。この蒸着用マスクは、矩形の環状を呈する金属フレームの開口部に、所定の間隔でストライプ状に樹脂繊維7を緊張状態で貼り付けたものである。ここで、ストライプの陰極を形成するための樹脂繊維7は上記で形成したフォトレジストによる支持体3、3の間に配置されるように調節する。これにより、樹脂繊維マスク自体がもっているストライプ陰極のピッチ間隔のばらつきが補正される。
【0027】
蒸着用マスクの設置後、Al等の陰極導電性材料を蒸着し、複数列の陽極2に直交する方向に延びる複数行の陰極6を形成する。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0029】
〔実施例〕
本実施例の有機EL表示装置の製造方法を工程順に説明する。まず、50mm×50mm×1.0mmのガラス基板上にITO膜をスパッタリング法で100nm程度の厚みで成膜した。そして、このITO膜による陽極を形成するために、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて、ITO膜を幅0.3mm、陽極間幅0.05mmのピッチでストライプ状にパターニングすると同時に、陰極形成方向の基板外周部に、幅0.3mm、間隔幅0.03mmの陰極用の取り出し電極をパターニングした。
【0030】
次に、蒸着用マスクの樹脂繊維を配置する支持体を形成するために、表示部外周部4辺の内、陰極と直交し相対向する2辺の部分に、ポジ型のフォトレジストをスピンコーティング法により約30μmの厚みで塗布した。
【0031】
その後、フォトレジストによる支持体を作製するために、前記取り出し電極上に開口部を設け、かつ蒸着マスクの樹脂繊維が配置される部分に遮光部を設けた露光用パターンマスクを用いて露光を行い、さらに前記フォトレジストを現像することでパターニングを行った。
【0032】
そして、上記基板上に、真空蒸着装置を用いて表示領域全域に、TPDを300Å蒸着して正孔輸送層を形し、この正孔輸送層上にAlqを500Å蒸着して発光層兼電子輸送層を形成して、前記ITO電極を含む表示領域を有機多層薄膜により被覆した。
【0033】
その後、直径0.03mmの樹脂繊維を複数有する樹脂繊維マスクを使用して、樹脂繊維を支持体の間に設置し、陰極材料としてAlを1200Åの膜厚で蒸着し、設計値として陰極幅0.3mmの陰極を形成した。陰極の長手方向の端部はITOで形成された取り出し電極上に蒸着されており、Al膜材と取り出し電極との間の導電性を確保した。
【0034】
以上のような作製工程により、所望の有機EL表示装置を作製した。作製した有機EL表示装置の陰極の配列間隔を調べるために、図6に示すように、蒸着されたAlのストライプ幅と隣接する陰極間ピッチ幅の和(図6のXの長さ)の値を各々のストライプについて測定したところ、寸法のばらつき幅は0.33mm±0.004mmの範囲であった。
【0035】
〔比較例〕
上記実施例と同様の方法により、ガラス基板上にITO膜を成膜し、陽極及び陰極用の取り出し電極をパターニングした。フォトレジストによる支持体は形成せずに、上記実施例と同様に真空蒸着装置を用いて表示領域全域TPDおよびAlqを成膜した。樹脂繊維マスクを所定の位置に設置してマスキングし、Al陰極を形成し、有機EL表示装置を作製した。
【0036】
作製した有機EL表示装置の陰極の配列間隔を調べるために、図6に示すように、蒸着されたAlのストライプ幅と隣接する陰極間ピッチ幅の和(図6のXの長さ)の値を各々のストライプについて測定したところ、寸法のばらつき幅は0.33mm±0.034mmの範囲であり、上記実施例よりも大きかった。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂繊維マスク自体に存在する樹脂繊維のストライプピッチ間隔のばらつきを支持体で補正することが可能であり、ばらつきを低減した均等間隔のストライプ陰極を形成することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の有機EL表示装置を示す平面図である。
【図2】図1のA−B線の断面図である。
【図3】本発明の有機EL表示装置の製造工程における説明図である。
【図4】有機EL表示装置の従来の製造工程を示す比較説明図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置における製造工程を示す説明図である。
【図6】陰極のピッチ間隔のばらつきについて説明するための図である。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 支持体
4 正孔輸送層
5 発光層兼電子輸送層
6 陰極
7 樹脂繊維
8 陰極用取出し電極
10 発光部
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に、少なくとも陽極、発光層、及び陰極を積層してなるエレクトロルミネセンス表示装置(以下、「EL表示装置」という。)に係り、詳しくは、発光層として発光材料を含有する有機物層を備えた有機EL表示装置、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界発光を利用したEL表示装置は、自己発光であるため視認性が高く、また完全固体であるため耐衝撃性に優れている等の特徴を有することから、各種表示装置として注目されている。このEL表示装置には、無機化合物を用いた無機EL表示装置と、有機化合物を用いた有機EL表示装置とがあり、このうち有機EL表示装置の素子は印加電圧を大幅に低くすることができるので、次世代の自発光表示装置として、その実用化の研究が積極的になされている。
【0003】
有機EL表示装置は、基板上に平面配置された発光層としての有機物層を挟んで陽極と陰極とをストライプ状に直交させてマトリックス配置した構成となっており、これらの有機EL表示装置の陽極および陰極間に3〜20Vの直流電圧を印加すると、陽極から正孔が、陰極から電子が有機物層に注入され、陽極と陰極の交差領域において正孔と電子の再結合により有機物層が発光する。
【0004】
従来の有機EL表示装置では、透明支持基板上に透明電極、通常ではITOが形成され、フォトリソグラフィ技術を用いて一方向に伸びる複数列の所要パターンが陽極として形成される。この陽極上には、真空蒸着法により単層あるいは積層構造の有機物層が成膜され、この有機物層の上に、前記陽極とは直交する方向に延びて前記陽極と交差する複数行の陰極が形成される。
【0005】
この陰極の形成方法としては、シャドウマスクを用いて蒸着法により形成する技術が提案されている。すなわち、この方法は、所要パターンの陽極を形成した後に、全面に有機物層を成膜し、この有機物層上にストライプ状のスリットを有するシャドウマスクを被せ、このスリットを通して陰極を構成する導電材料を蒸着法によって形成し、所要パターンの陰極を形成するものである。
【0006】
このような従来の陰極製造技術において、前記したシャドウマスクには、通常金属製のものが多く用いられ、そのシャドウマスクの形成方法としてはエッチング技術及び電鋳技術が採用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このシャドウマスクを用いて陰極を形成する場合、形成しようとする有機EL表示装置の基板サイズが大きな場合には、これに伴ってシャドウマスクの寸法も大きくなる。このため、陰極を堆積する際に、下方に向けられる透明支持基板の表面に密着させるべきシャドウマスクの中央部分がその自重によって下方に撓んで密着されなくなる。その結果、この隙間を通して陰極用金属が透明支持基板の表面に被着されるために、シャドウマスク通りのパターンの陰極を形成することができなくなり、隣接する陰極が短絡してしまうことになる。特に、微細な陰極を形成するには、シャドウマスクの厚みも薄くなるため、シャドウマスクの剛性が低下してしまい、前記した撓みが顕著になり易い。
【0008】
このような問題に対しては、特開2000−182767号公報において、前記のシャドウマスク部材の金属よりも比重が小さいポリイミド系のアラミド繊維などの樹脂系単繊維を用いて、陰極形成用のストライプ状のスリットを引き伸ばした状態で貼り付けた単繊維マスクを採用し、基板とシャドウマスクの間の弛みや浮きを低減する方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、前記単繊維マスクは、矩形の環状を呈する金属フレームの開口部に、ストライプ状に単繊維マスクを緊張状態で貼り付けるという形成方法が採用されており、その単繊維のストライプピッチ間隔の幅には約10%のばらつきが発生していた。そのため、前記単繊維マスクを用いて陰極を形成した場合、陰極のストライプの幅にも10%程度のばらつきが生じていた。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、樹脂繊維のストライプピッチ間隔のばらつきを補正することができ、均等間隔でストライプ電極を形成することができる有機EL表示装置、およびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく、本発明の有機EL表示装置は、基板上に、少なくとも陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極を積層してなり、一方向に沿って複数列の陽極を配するとともに、該陽極と直交する方向に沿って複数行の陰極を配する有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法において、
複数条の樹脂繊維を一方向に沿って並列に有する蒸着用マスクを用いて陽極と陰極の少なくとも一方を形成するに際して、該蒸着用マスクの樹脂繊維を基板上に設けた支持体間に支持して、樹脂繊維同士のピッチ間隔を補正することを特徴としている。
【0012】
上記有機EL表示装置の製造方法において、基板上に、陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極を順次形成し、該陰極を形成する部位における長手方向の延長線上に、蒸着マスクの樹脂繊維同士のピッチ間隔を補正する支持体を設けることが好ましい。
【0013】
また、上記支持体に、相隣接する支持体同士の間隔を基板から離れるに従い順次拡大するようなテーパを形成することが好ましい。
【0014】
さらに、上記支持体を絶縁体により形成することが好ましい。
【0015】
そして、上記支持体をフォトリソグラフィー技術により形成することが好ましい。
【0016】
一方、本発明の有機EL表示装置は、基板上に、少なくとも陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極が積層され、一方向に沿って複数列の陽極が配されるとともに、該陽極と直交する方向に沿って複数行の陰極が配されてなる有機エレクトロルミネセンス表示装置において、
上記のいずれかの方法により製造されることを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明は本実施形態に限るものではない。
【0018】
図1は本発明の一実施形態の有機EL表示装置を示す平面図であり、図2は図1のA−B線断面図である。
【0019】
図1において、基板1上の点線内部の領域は、本実施形態の有機EL表示装置における発光部10であり、複数列のストライプ状に形成された透明電極(陽極)2、有機物層、及び陽極2と直交するようにストライプ状に形成される複数行の陰極6が配置される。ストライプ状に形成される複数行の陰極6の両端には、蒸着用マスクに貼り付けられた樹脂繊維を所定の位置に配置するための支持体3が設けられている。
【0020】
支持体3は、陰極6を形成する際に、適切な場所に樹脂繊維を配置するために、樹脂繊維が配置されるべき箇所の両脇に形成されており、図1及び図2では、陰極6の長手方向の延長上に配置されている。また、図3に示すように、支持体同士の間隔は、蒸着用マスクを構成している樹脂繊維7の直径と同程度であることが好ましい。また、支持体3には、支持体同士の間隔が基板から離れるに従い順次拡大するようなテーパーが形成されていると、樹脂繊維7の設置が容易となるので好ましい。さらに、支持体3の基板1からの高さは、樹脂繊維マスクを構成している単繊維の直径と同程度であることが好ましい。支持体3の基板1からの高さが低いと、支持体3に配置した各樹脂繊維7…が位置ずれを起してしまう可能性があるからである。
【0021】
陰極を成膜する際、相隣接する支持体3、3の間に樹脂繊維7を配置することにより、樹脂繊維マスク自体に存在する樹脂繊維7のストライプピッチ間隔のばらつきを補正することが可能となり、成膜後におけるストライプ陰極のピッチ間隔のばらつきを低減することが可能となる。従来の方法では、陰極を成膜するために樹脂繊維マスクを所定の位置に設置しても、図4に示すように樹脂繊維マスク自体に樹脂繊維7のストライプピッチ間隔のばらつきがあるために、ストライプ状の陰極を均等間隔に配置することが困難であった。
【0022】
なお、前記支持体3の材質としては、隣接する陰極同士が導通を起さないようにするために絶縁体で形成することが好ましいが、隣接する支持体同士が導通を起さなければ、導体であっても差し支えない。
【0023】
次に、本実施形態の有機EL表示装置の製造方法を図5に基づいて製造工程順に説明する。まず、図5(a)に示すように、透明基板1の表面上にITO膜をスパッタリング法で100nm程度の厚みに成膜する。そして、このITO膜をフォトリソグラフィー技術とエッチング技術を用いてストライプ状にパターニングし、ITO膜による陽極2を形成する。ここで、必要であれば、陰極用の取り出し電極をパターニングしておくとよい。
【0024】
次に、図5(b)に示すように、表示部外周部4辺の内、陰極と直交する2辺に蒸着用マスクの樹脂繊維を配置するための支持体3を形成する。すなわち、上記のITO膜のパターニングされた基板1上に、ポジ型のフォトレジストを約30μmの厚みに塗布する。その後、陰極と直交する表示部外周部分に開口部が設けられ、かつ蒸着用マスクの樹脂繊維が配置される部分には遮光部が設けられたパターンマスクを用いて露光を行い、さらに前記フォトレジストを現像することで、図5(c)に示すように、支持体3のパターニングを行った。
【0025】
そして、図5(d)に示すように、その上に、真空蒸着装置を用いて表示領域全域に、N,N’−ビス−3−メチルフェニル−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(以下、「TPD」という。)を300〜500Å蒸着して正孔輸送層4を形成し、該正孔輸送層4上にトリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq3)を400〜600Å蒸着して発光層兼電子輸送層5を形成して、前記ITO電極を含む表示領域を有機多層薄膜4、5により被覆する。
【0026】
その後、図5(e)に示すように、所定の位置にストライプ状の陰極を形成するために、有機多層薄膜4、5により被覆された基板1上に蒸着用マスクを設置する。この蒸着用マスクは、矩形の環状を呈する金属フレームの開口部に、所定の間隔でストライプ状に樹脂繊維7を緊張状態で貼り付けたものである。ここで、ストライプの陰極を形成するための樹脂繊維7は上記で形成したフォトレジストによる支持体3、3の間に配置されるように調節する。これにより、樹脂繊維マスク自体がもっているストライプ陰極のピッチ間隔のばらつきが補正される。
【0027】
蒸着用マスクの設置後、Al等の陰極導電性材料を蒸着し、複数列の陽極2に直交する方向に延びる複数行の陰極6を形成する。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0029】
〔実施例〕
本実施例の有機EL表示装置の製造方法を工程順に説明する。まず、50mm×50mm×1.0mmのガラス基板上にITO膜をスパッタリング法で100nm程度の厚みで成膜した。そして、このITO膜による陽極を形成するために、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて、ITO膜を幅0.3mm、陽極間幅0.05mmのピッチでストライプ状にパターニングすると同時に、陰極形成方向の基板外周部に、幅0.3mm、間隔幅0.03mmの陰極用の取り出し電極をパターニングした。
【0030】
次に、蒸着用マスクの樹脂繊維を配置する支持体を形成するために、表示部外周部4辺の内、陰極と直交し相対向する2辺の部分に、ポジ型のフォトレジストをスピンコーティング法により約30μmの厚みで塗布した。
【0031】
その後、フォトレジストによる支持体を作製するために、前記取り出し電極上に開口部を設け、かつ蒸着マスクの樹脂繊維が配置される部分に遮光部を設けた露光用パターンマスクを用いて露光を行い、さらに前記フォトレジストを現像することでパターニングを行った。
【0032】
そして、上記基板上に、真空蒸着装置を用いて表示領域全域に、TPDを300Å蒸着して正孔輸送層を形し、この正孔輸送層上にAlqを500Å蒸着して発光層兼電子輸送層を形成して、前記ITO電極を含む表示領域を有機多層薄膜により被覆した。
【0033】
その後、直径0.03mmの樹脂繊維を複数有する樹脂繊維マスクを使用して、樹脂繊維を支持体の間に設置し、陰極材料としてAlを1200Åの膜厚で蒸着し、設計値として陰極幅0.3mmの陰極を形成した。陰極の長手方向の端部はITOで形成された取り出し電極上に蒸着されており、Al膜材と取り出し電極との間の導電性を確保した。
【0034】
以上のような作製工程により、所望の有機EL表示装置を作製した。作製した有機EL表示装置の陰極の配列間隔を調べるために、図6に示すように、蒸着されたAlのストライプ幅と隣接する陰極間ピッチ幅の和(図6のXの長さ)の値を各々のストライプについて測定したところ、寸法のばらつき幅は0.33mm±0.004mmの範囲であった。
【0035】
〔比較例〕
上記実施例と同様の方法により、ガラス基板上にITO膜を成膜し、陽極及び陰極用の取り出し電極をパターニングした。フォトレジストによる支持体は形成せずに、上記実施例と同様に真空蒸着装置を用いて表示領域全域TPDおよびAlqを成膜した。樹脂繊維マスクを所定の位置に設置してマスキングし、Al陰極を形成し、有機EL表示装置を作製した。
【0036】
作製した有機EL表示装置の陰極の配列間隔を調べるために、図6に示すように、蒸着されたAlのストライプ幅と隣接する陰極間ピッチ幅の和(図6のXの長さ)の値を各々のストライプについて測定したところ、寸法のばらつき幅は0.33mm±0.034mmの範囲であり、上記実施例よりも大きかった。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂繊維マスク自体に存在する樹脂繊維のストライプピッチ間隔のばらつきを支持体で補正することが可能であり、ばらつきを低減した均等間隔のストライプ陰極を形成することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の有機EL表示装置を示す平面図である。
【図2】図1のA−B線の断面図である。
【図3】本発明の有機EL表示装置の製造工程における説明図である。
【図4】有機EL表示装置の従来の製造工程を示す比較説明図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置における製造工程を示す説明図である。
【図6】陰極のピッチ間隔のばらつきについて説明するための図である。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 支持体
4 正孔輸送層
5 発光層兼電子輸送層
6 陰極
7 樹脂繊維
8 陰極用取出し電極
10 発光部
Claims (6)
- 基板上に、少なくとも陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極を積層してなり、一方向に沿って複数列の陽極を配するとともに、該陽極と直交する方向に沿って複数行の陰極を配する有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法において、
複数条の樹脂繊維を一方向に沿って並列に有する蒸着用マスクを用いて陽極と陰極の少なくとも一方を形成するに際して、該蒸着用マスクの樹脂繊維を基板上に設けた支持体間に支持して、樹脂繊維同士のピッチ間隔を補正することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法。 - 基板上に、陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極を順次形成し、該陰極を形成する部位における長手方向の延長線上に、蒸着マスクの樹脂繊維同士のピッチ間隔を補正する支持体を設けることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法。
- 前記支持体に、相隣接する支持体同士の間隔を基板から離れるに従い順次拡大するようなテーパを形成することを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法。
- 前記支持体を絶縁体により形成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法。
- 前記支持体をフォトリソグラフィー技術により形成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置の製造方法。
- 基板上に、少なくとも陽極、発光材料を含有する有機物層、及び陰極が積層され、一方向に沿って複数列の陽極が配されるとともに、該陽極と直交する方向に沿って複数行の陰極が配されてなる有機エレクトロルミネセンス表示装置において、
請求項1から5のいずれかの方法により製造されることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置。
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JP2002203723A JP2004047293A (ja) | 2002-07-12 | 2002-07-12 | 有機エレクトロルミネセンス表示装置、およびその製造方法 |
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Cited By (2)
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JP2010229550A (ja) * | 2010-04-28 | 2010-10-14 | Nbc Meshtec Inc | 平行線型マスクおよびその製造方法 |
JP2012077328A (ja) * | 2010-09-30 | 2012-04-19 | Mitsubishi Plastics Inc | 蒸着用マスク、その製造方法及び蒸着方法 |
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2002
- 2002-07-12 JP JP2002203723A patent/JP2004047293A/ja not_active Withdrawn
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