JP2004042791A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】カーカスプライにスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいて、製造時取り扱い性の悪化やエンド数乱れによる耐久性を引き起こすことなく、フレッチング摩耗を低減し、タイヤ寿命を向上させることのできるタイヤを提供する。
【解決手段】1×19等の、最密に撚られた場合に最外層フィラメント11,12が断面略六角形をなすようなスチールコードであって、下記の特徴を有するものをカーカスプライに用いる。
(1)略六角形の頂点に位置する角部フィラメント11の型付け率(Kt)が93〜100%である。
(2)非角部最外層フィラメント12の型付け率(Kc)が70〜90%である。
(3)ラッピングワイヤが省かれている。
【選択図】 図1
【解決手段】1×19等の、最密に撚られた場合に最外層フィラメント11,12が断面略六角形をなすようなスチールコードであって、下記の特徴を有するものをカーカスプライに用いる。
(1)略六角形の頂点に位置する角部フィラメント11の型付け率(Kt)が93〜100%である。
(2)非角部最外層フィラメント12の型付け率(Kc)が70〜90%である。
(3)ラッピングワイヤが省かれている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーカスプライ等にスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤに関し、特には、タイヤ寿命を向上させた空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
トラック・バス用やライトトラック用などの各種の空気入りラジアルタイヤにおいて、カーカスプライ用の補強コードとしてスチールコードが用いられている。トラック・バス用などの空気入りラジアルタイヤには、特に、耐久性や強度の観点から、1又は3本のフィラメントからなるコアの周りに2〜3層のシースが層撚りにより配列され、さらにラッピングワイヤが巻き付けられたスチールコードが多く用いられている。すなわち、3+9+1,3+9+15+1構造等の2層撚り構造ないし3層撚り構造のスチールコードが多く用いられている。使用条件が特に厳しいものにあっては、3層撚り構造のスチールコードが主として用いられる。
【0003】
ところが、このような多層撚り構造のスチールコードを用いた場合、隣接するシースフィラメントの間、及びラッピングフィラメントとシースフィラメントとの間で点接触が生じ、タイヤ使用時の繰り返し変形に伴い、スチールフィラメント同士が擦れ合うことによる摩耗、すなわち「フレッチング摩耗」が生じる。フレッチング摩耗は、フィラメントの強度を低下させ、ひいては、部分的な破断をも引き起こし、スチールコードの破断を生じることもある。
【0004】
上記フレッチング摩耗を改善するものとして、スチールコードのコア、シースの各層のフィラメントを同一方向、同一ピッチで撚り合わせた1×12+1,1×19+1,1×27+1等の、いわゆる束撚り構造が用いられている。
【0005】
しかし、この束撚り構造のスチールコードでは、フィラメント間の線接触によりフレッチング摩耗は改善されるが、ラッピングとシースとの間のフレッチングは解消されなかった。一方、ラッピングを省くと、タイヤ製造工程中に、コードがばらけたり、コード内の各フィラメントの挙動が表に出てプライコードのエンド数の乱れが発生し、耐久性の低下が見られることから、ラッピングを省くことは困難であった。
【0006】
そこで、ラッピングを省いた束撚りのスチールコードを採用するものとしては、各層の撚りピッチ及び撚り方向を同一にした束撚り構造のスチールコードにおいて、ゴムの浸透によってコード内のフィラメントを拘束し、また隣接フィラメント間の接触圧を軽減すべく、外側の層の所定のフィラメントについてコアフィラメント等よりも径を小さくしたものがある。
【0007】
また、特開平11−124781においては、最外層のフィラメントのうちの所定のものに波付けを行うことが提案されている。さらに、特開2000−80578においては、コア層のフィラメント、及び、該コア層と最外層との間の中間層に位置するフィラメントについて、スパイラル状の小さなくせを付けることで、フィラメント間のズレ動きを低減させることが提案されている。
【0008】
しかし、外側のフィラメントの径を小さくした場合、あるいは、くせ付けフィラメントを用いた場合、フィラメントを撚り合わせてスチールコードを製造する工程において、撚り機内でのフィラメント間の張力バランスを維持するのが困難である。そのため、実際の製造ラインでは、撚り不良等によるスチールコード自身の機械的特性の不良、並びに、断面形状安定性やコード回転性の不良により、タイヤ製造工程での取り扱い性に劣り、カレンダー加工での作業性の悪化や、カレンダー加工後のシートにエンド数乱れや波打ち現象が生じるという問題があった。
【0009】
また、外層に径の小さいフィラメントが配される結果、フィラメントの巻き付け位置に偏りが生じやすく、このため、局部的なフレッチング摩耗や金属疲労を受けるといった問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のいずれの従来の技術においても、フレッチング摩耗の低減によるタイヤ寿命の向上や、製造安定性及び耐久性の確保等の観点から、いずれも満足する結果が得られなかった。
【0011】
本件発明者は、まず、過去の知見から、束撚り構造スチールコードのラッピングワイヤを省略することができるならば、ラッピングによるシースフィラメントのフレッチングを低減できタイヤ寿命を向上させることができるであろうという点に着目した。
【0012】
ところが、束撚りコードから、単にラッピングワイヤを省略した場合には、充分に拘束されない各フィラメントがそれぞれに挙動し、回転性が経時に変化するので、平坦なシートが得られない。そのため、カーカスプライの製造時等における取り扱い性が著しく低下するのであった。特に、タイヤ製造の際のカレンダー工程において、スチールコードを均等に等間隔に配列させることができず、単位幅あたりのスチールコード打ち込み数(エンド数)が乱れる結果、スチールコードにかかる張力分布が均等にならず、空気入りラジアルタイヤの耐久性等の性能を著しく損ねることとなった。
【0013】
本件発明者は、鋭意検討を重ねた結果、最外層のフィラメントについて、その位置に応じた特定の型付けを行うことにより、このような問題点を解消することができることを見出した。
【0014】
本発明は、カーカスプライ等にスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいて、製造時取り扱い性の悪化やエンド数乱れによる耐久性の低下を引き起こすことなく、フレッチング摩耗を低減し、タイヤ寿命を向上させることのできるタイヤを提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の空気入りラジアルタイヤは、1又は3本のスチールフィラメントからなるコアと、その周りの複数層のシースからなるスチールコードが、同一ピッチで同一方向に最密状態に撚られて略六角形の断面形状をなしたスチールコードを用いる空気入りラジアルタイヤにおいて、最外層のフィラメントのうち、前記略六角形の頂点に位置する最外層フィラメントの型付け率を93〜100%とし、該頂点以外の個所に位置する最外層フィラメントの型付け率を70〜90%とし、ラッピングワイヤが省かれていることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、カーカスプライ製造時のスチールコードの取り扱い性やスチールコードの配列分布の均一性を損なうことなく、フレッチング摩耗を低減させることができ、これによりタイヤ寿命を向上させることができる。
【0017】
好ましくは、コアフィラメントがシースを構成するフィラメントより大径であり、シースフィラメントが全て略同一径である。
【0018】
このような構成であると、シースフィラメント同士の接触圧を低く保つことができ、かつ、撚り工程を容易に行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の空気入りラジアルタイヤに用いるカーカスプライ補強用のスチールコードは、多層をなすフィラメントが同一ピッチで同一方向に撚られたものであり、スチールコード全体が最密に撚られたとしたならば最外層のフィラメントが略六角形の断面形状をなすように構成されている。
【0020】
スチールコードは、1又は3本のフィラメントからなるコア部の周囲に、複数のシースフィラメントが、好ましくは複数層をなすように配列される。コア部は、1本のフィラメントからなるのが製造の容易さから好ましい。
【0021】
また、スチールコードは、束撚りによるものが製造の容易さから好ましいが、層撚りにより形成されるものであっても良い。ここで、束撚りとは、コアとシースを構成する複数のフィラメントが一回の撚り工程により撚られることによりスチールコードを作製するような場合であり、層撚りとは、例えば、中間層と最外層とが別個の撚り工程により作製されるものである。
【0022】
本発明においては、このような前提の下で、スチールコードが下記(1)〜(3)の特徴を有する。
【0023】
(1)最外層フィラメントのうち、最密に撚られたとした場合の略六角形の頂点に位置する最外層フィラメントの型付け率(Kt)が93〜100%である。
【0024】
(2)最外層フィラメントのうち、該略六角形の頂点以外の個所に位置する最外層フィラメントの型付け率(Kc)が70〜90%である。
【0025】
(3)このようなフィラメントがなす撚り構造をまとめるためのラッピングワイヤが省かれている。
【0026】
これら本発明の特徴について、図1〜2を用いて説明する。図1は、後述する本発明の実施例におけるスチールコードの断面図であり、図2は、型付け率について模式的に説明するための概念図である。
【0027】
型付けとは、フィラメントをコードに撚る前に予めスパイラル構造をなすように、弾性限界を超える応力下で変形を与える操作であり、ゴムの浸透を容易にする等の目的で行われている。そして、型付けの程度を示す型付け率は、下式により表される。
【0028】
型付け率=B/A×100(%)
ここで、Aは、フィラメントを最密に撚ったときの各フィラメントのスパイラルの理想計算値の外径である。Bは、型付け操作後のフリー(応力印加なし)の状態における、同一フィラメントについてのスパイラルの外径である。すなわち、Bは、コードにまとめられる前またはコードをほぐした状態でのスパイラルの外径である。
【0029】
型付け率が100%よりも小さいということは、コードにまとめられる際に、フィラメントがスパイラルの径方向外側へと押し広げられるということである。このような弾性変形に起因して、押し広げられたフィラメントは、その内側のフィラメントを締め付ける形で、コードにまとめられている。型付け率が小さい程、この締め付け力が大きいこととなる。
【0030】
型付け操作は、一般に用いられているいずれの方法によっても行うことができる。例えば、型付けピンの間を通過させて撚り合わせたり、コードを塑性域まで過度にねじって型付けを行う。
【0031】
図1の例により、本発明の上記特徴(1)〜(3)について簡単に説明する。
【0032】
スチールコードが、1本のやや太めのコアフィラメント3と、これを断面略六角形状にとり囲む6本の中間層フィラメント2と、さらにこれを断面略六角形状にとり囲む12本の最外層フィラメント11,12とからなる。
【0033】
最外層フィラメント11,12のうち、角部すなわち断面略六角形の頂点に6本の角部フィラメント11が位置し、これらに挟まれる個所、すなわち断面略六角形の辺の中心部に対応する個所に、6本の非角部最外層フィラメント12が位置する。
【0034】
上記のように、角部フィラメント11の型付け率(Kt)が93〜100%に設定され、非角部最外層フィラメント12の型付け率(Kc)が70〜90%に設定される。したがって、最外層フィラメント11,12は、いずれも内側のフィラメント2,3を締め付けているが、角部フィラメント11ではこの締め付け応力が比較的小さいのに対し、非角部最外層フィラメント12では、締め付け応力が大きい。
【0035】
角部フィラメント11の型付け率(Kt)が100%を超えると、非角部最外層フィラメント12に対する拘束力が不足するため、最外層フィラメントを最密状態に維持することが困難となり、又、フィラメントがコード表面上に突出しやすく、工程での取り扱い性が悪くなる。また、93%未満では、隣接するフィラメントを締め付ける力が大きくなるため、コード内部にコード自体を回転させようとする応力が生じ、取り扱い性が悪化する。
【0036】
一方、非角部最外層フィラメント12の型付け率(Kc)が90%を超えると、内側シースフィラメントを締め付ける応力が不足して、コード全体を最密状態に維持することが困難となる。また、70%未満では、フィラメントに残留する反発力によって、コードカット時にカット端部のコードがばらけやすくなり、撚りが戻ろうとするトルクが発生しカットしたゴム引きシートに反り返りが生じ易く、取り扱い性に劣る。
【0037】
最外層フィラメント11,12の型付け率をこのように設定することにより、スチールコードを構成する断面略円形のフィラメント11,12,2,3が、断面略六角形のコンパクトな最適形状をなすようにまとめられる。
【0038】
特には、ラッピングワイヤーが省かれているにも拘わらず、カーカスプライの製造工程において、このようなコンパクトな最適形状を維持することで、良好な取り扱い性が確実に得られる。
【0039】
最外層フィラメント11,12の型付け率の設定値が、上記範囲から外れた場合には、断面形状を最適化することができず、このため、ラッピングワイヤーを省いた場合にコード形状を維持することができず、取り扱い性が著しく低下する。
【0040】
スチールコードの断面の最適形状は、最外層フィラメント11,12全体による内側のフィラメント2,3に対する締め付けが最適状態にあって、かつ、角部フィラメント11による締め付け力と、非角部最外層フィラメント12による締め付け力とが、最適状態でバランスすることにより得られる。すなわち、非角部最外層フィラメント12が内側シースの谷にあたる部分を比較的強く締め付け、かつ、より大きい型付け率を有する角部フィラメント11が、適度の締め付けを行うことで、コードのばらけを抑えるとともに、コード形状を安定させるのである。
【0041】
他方、フィラメント11,12,2,3がなす撚り構造をさらにまとめるためのラッピングワイヤーを付加した場合には、タイヤ使用時に、ラッピングワイヤーと最外層フィラメント11,12との間でのフレッチング摩耗を引き起こすことから、タイヤ寿命がそれだけ短くなってしまう。
【0042】
すなわち、最外層の角部、非角部のフィラメントの型付け率を上記範囲とすることで、コードの断面形状を最適にし、かつ、安定に維持することができるようになり、これにより、ラッピングを省くことが可能となるのである。
【0043】
なお、図1に示す例においては、コアフィラメント3以外の全てのフィラメント11,12,2の径が略同一であり、全体が束撚りによりコードにまとめられている。そのため、層撚りとする場合に比べて、スチールコードの製造工程を簡略化し、製造コストを低減することができる。
【0044】
また、コアフィラメント3の径は、他のフィラメント11,12,2の径と、略同一であるかまたはやや太めであり、好ましくは、1.03〜1.25倍である。1.03倍より小さい場合には、六角形の形状がくずれ、コードがいびつな形となり、タイヤ中でカーカス用に使用した場合、フィラメント個々に均等な歪みがかからず、コードとしての耐疲労性が悪化する。また、中心部に太いフィラメントがあれば、撚り線時のコード形状の安定化が図れる。一方、1.25倍より大きい場合には、耐疲労性が低下する他、シースフィラメントの適当な配置に支障が生じ、撚り不良が生じやすい。
【0045】
また、コアフィラメント3の径をこのように設定することで、撚り工程を、容易に行うことができるようになる。
【0046】
以下に、本発明について、具体的な実施例及び比較例の結果に基づき、さらに詳細に説明する。
【0047】
角部フィラメント11の型付け率Kt及び非角部最外層フィラメント12の型付け率Kcを種々変化させつつ、図1に示されるような断面構成のスチールコードを作製した。この際、コアフィラメント3の径を0.2mmとし、他の全てのフィラメント11,12,2の径を0.18mmとし、これら19本のフィラメントの束撚り(1×19)によりスチールコードを作製した。詳しくは、バンチャー型撚線機を用いて、撚りピッチ16mmで、S方向に1回で撚り合わせた。なお、下記比較例4の場合のみ、0.15mm径のラッピングワイヤを、巻き付けピッチ3.5mmで逆スパイラルに巻き付けた。
【0048】
そして、このスチールコードを用いて、平行に配列し、通常のスチールコード用カレンダー装置にてゴム引きすることによりカーカスプライを製造し、10.00R20サイズの空気入りラジアルタイヤを組み立てた。このとき、クラウンセンターにおけるスチールコード打ち込み数(エンド数)が11本/インチとなるようにした。また、ベルトは4枚重ねとし、ベルト用のスチールコードとして3X0.20 +6X0.35 HTのものを用い、第1層(最内層)のベルトでは8本/インチ、第2〜4層のベルトでは11.5本/インチのスチールコード打ち込み数とした。
【0049】
このようなタイヤを200本ずつ製造して、大型トラックの後輪に装着し、路面上での実走行テストを行った。約20万kmの走行後、各実施例及び比較例について5本のタイヤを任意抽出し、スチールコードの強力保持率を求めた。すなわち、タイヤから切り出したスチールコードの引っ張り強度を測定し、初期状態の引っ張り強度に対する保持率(%)を求めた。
【0050】
また、各200本のタイヤのうち、約20万kmの走行に至らずに故障(スチールコードの並びの乱れ)を生じたタイヤの本数を測定した。
【0051】
この結果を下表にまとめて示す。
【0052】
【表1】実施例及び比較例のタイヤによる走行試験結果
実施例1〜3においては、角部フィラメント11についての型付け率Ktを96%に固定しつつ、非角部最外層フィラメント12の型付け率Kcを70〜90%の範囲で変化させたが、いずれも良好な結果が得られた。カーカスプライ製造時の取り扱い性に優れることから、エンド数乱れ等に起因するタイヤの故障の発生は全く見られなかった。また、スチールコードの強力保持率も92〜93%と充分な値となった。
【0053】
比較例1及び3においては、実施例と同様の構成において、角部フィラメント11の型付け率Ktを所定上限値(100%)より大きく設定した。この結果、スチールコードの強力保持率は実施例と同様であったが、エンド数乱れに起因するタイヤの早期の故障が見られた。また、比較例2においては、非角部最外層フィラメント12の型付け率Kcを所定上限値である90%よりわずかに大きく設定しただけで、同様に、エンド数乱れに起因するタイヤの早期の故障が見られた。
【0054】
比較例2〜3においては、型付け率がわずかに所定上限値を越えただけであり、実施例3と比べてもわずかに相違するだけある。しかしながら、顕著にタイヤ耐久性が低下している。これらの結果により、本発明で規定する型付け率Kt,Kcの上限値が非常に顕著な臨界的意義を有することが明らかになっている。
【0055】
比較例4においては、実施例1と同様のスチールコードにラッピングワイヤを巻き付けたものをカーカスプライに用いた。タイヤの故障の発生は全く見られないが、ラッピングワイヤーによるフレッチング摩耗が顕著に生じることから、スチールコードの強力保持率が79%と低く、充分なタイヤ寿命が得られないことが知られた。
【0056】
各型付け率Kt,Kcが下限値を下回る場合の試験結果について示していないが、このような場合には、スチールコードがばらけやすく、有意な試験結果の得られるようなタイヤの作製が困難であったからである。
【0057】
図1に示す実施例においては、スチールコードが19本のフィラメントからなるとして説明したが、27本または12本のフィラメントにより、同様の断面六角形状にまとめられるものであっても、上記実施例と同様の効果が得られる。また、上記実施例においては、製造の容易な束撚りによる撚り構造であるとして説明したが、層撚りであっても同様の効果を得ることが可能である。
【0058】
すなわち、好ましい、スチールコードの構成の例としては、上記実施例の1×19の他、1×27、1×12、及び1+18を挙げることができる。
【0059】
【発明の効果】
カーカスプライにスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいて、カーカスプライ製造時のスチールコードの取り扱い性やスチールコードの配列分布の均一性を損なうことなく、フレッチング摩耗を低減させることができ、これによりタイヤ寿命を向上させることができる。
【0060】
また、カーカス以外にも、ベルト、チェーハー等に使用して、タイヤ耐久性を向上させることができ、コストダウンも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるスチールコードの断面図である。
【図2】型付け率について説明するための模式的な外観斜視図である。
【符号の説明】
11 最外層の角に位置するフィラメント
12 最外層にあって角以外に位置するフィラメント
2 中間層フィラメント
3 コアフィラメント
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーカスプライ等にスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤに関し、特には、タイヤ寿命を向上させた空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
トラック・バス用やライトトラック用などの各種の空気入りラジアルタイヤにおいて、カーカスプライ用の補強コードとしてスチールコードが用いられている。トラック・バス用などの空気入りラジアルタイヤには、特に、耐久性や強度の観点から、1又は3本のフィラメントからなるコアの周りに2〜3層のシースが層撚りにより配列され、さらにラッピングワイヤが巻き付けられたスチールコードが多く用いられている。すなわち、3+9+1,3+9+15+1構造等の2層撚り構造ないし3層撚り構造のスチールコードが多く用いられている。使用条件が特に厳しいものにあっては、3層撚り構造のスチールコードが主として用いられる。
【0003】
ところが、このような多層撚り構造のスチールコードを用いた場合、隣接するシースフィラメントの間、及びラッピングフィラメントとシースフィラメントとの間で点接触が生じ、タイヤ使用時の繰り返し変形に伴い、スチールフィラメント同士が擦れ合うことによる摩耗、すなわち「フレッチング摩耗」が生じる。フレッチング摩耗は、フィラメントの強度を低下させ、ひいては、部分的な破断をも引き起こし、スチールコードの破断を生じることもある。
【0004】
上記フレッチング摩耗を改善するものとして、スチールコードのコア、シースの各層のフィラメントを同一方向、同一ピッチで撚り合わせた1×12+1,1×19+1,1×27+1等の、いわゆる束撚り構造が用いられている。
【0005】
しかし、この束撚り構造のスチールコードでは、フィラメント間の線接触によりフレッチング摩耗は改善されるが、ラッピングとシースとの間のフレッチングは解消されなかった。一方、ラッピングを省くと、タイヤ製造工程中に、コードがばらけたり、コード内の各フィラメントの挙動が表に出てプライコードのエンド数の乱れが発生し、耐久性の低下が見られることから、ラッピングを省くことは困難であった。
【0006】
そこで、ラッピングを省いた束撚りのスチールコードを採用するものとしては、各層の撚りピッチ及び撚り方向を同一にした束撚り構造のスチールコードにおいて、ゴムの浸透によってコード内のフィラメントを拘束し、また隣接フィラメント間の接触圧を軽減すべく、外側の層の所定のフィラメントについてコアフィラメント等よりも径を小さくしたものがある。
【0007】
また、特開平11−124781においては、最外層のフィラメントのうちの所定のものに波付けを行うことが提案されている。さらに、特開2000−80578においては、コア層のフィラメント、及び、該コア層と最外層との間の中間層に位置するフィラメントについて、スパイラル状の小さなくせを付けることで、フィラメント間のズレ動きを低減させることが提案されている。
【0008】
しかし、外側のフィラメントの径を小さくした場合、あるいは、くせ付けフィラメントを用いた場合、フィラメントを撚り合わせてスチールコードを製造する工程において、撚り機内でのフィラメント間の張力バランスを維持するのが困難である。そのため、実際の製造ラインでは、撚り不良等によるスチールコード自身の機械的特性の不良、並びに、断面形状安定性やコード回転性の不良により、タイヤ製造工程での取り扱い性に劣り、カレンダー加工での作業性の悪化や、カレンダー加工後のシートにエンド数乱れや波打ち現象が生じるという問題があった。
【0009】
また、外層に径の小さいフィラメントが配される結果、フィラメントの巻き付け位置に偏りが生じやすく、このため、局部的なフレッチング摩耗や金属疲労を受けるといった問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のいずれの従来の技術においても、フレッチング摩耗の低減によるタイヤ寿命の向上や、製造安定性及び耐久性の確保等の観点から、いずれも満足する結果が得られなかった。
【0011】
本件発明者は、まず、過去の知見から、束撚り構造スチールコードのラッピングワイヤを省略することができるならば、ラッピングによるシースフィラメントのフレッチングを低減できタイヤ寿命を向上させることができるであろうという点に着目した。
【0012】
ところが、束撚りコードから、単にラッピングワイヤを省略した場合には、充分に拘束されない各フィラメントがそれぞれに挙動し、回転性が経時に変化するので、平坦なシートが得られない。そのため、カーカスプライの製造時等における取り扱い性が著しく低下するのであった。特に、タイヤ製造の際のカレンダー工程において、スチールコードを均等に等間隔に配列させることができず、単位幅あたりのスチールコード打ち込み数(エンド数)が乱れる結果、スチールコードにかかる張力分布が均等にならず、空気入りラジアルタイヤの耐久性等の性能を著しく損ねることとなった。
【0013】
本件発明者は、鋭意検討を重ねた結果、最外層のフィラメントについて、その位置に応じた特定の型付けを行うことにより、このような問題点を解消することができることを見出した。
【0014】
本発明は、カーカスプライ等にスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいて、製造時取り扱い性の悪化やエンド数乱れによる耐久性の低下を引き起こすことなく、フレッチング摩耗を低減し、タイヤ寿命を向上させることのできるタイヤを提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の空気入りラジアルタイヤは、1又は3本のスチールフィラメントからなるコアと、その周りの複数層のシースからなるスチールコードが、同一ピッチで同一方向に最密状態に撚られて略六角形の断面形状をなしたスチールコードを用いる空気入りラジアルタイヤにおいて、最外層のフィラメントのうち、前記略六角形の頂点に位置する最外層フィラメントの型付け率を93〜100%とし、該頂点以外の個所に位置する最外層フィラメントの型付け率を70〜90%とし、ラッピングワイヤが省かれていることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、カーカスプライ製造時のスチールコードの取り扱い性やスチールコードの配列分布の均一性を損なうことなく、フレッチング摩耗を低減させることができ、これによりタイヤ寿命を向上させることができる。
【0017】
好ましくは、コアフィラメントがシースを構成するフィラメントより大径であり、シースフィラメントが全て略同一径である。
【0018】
このような構成であると、シースフィラメント同士の接触圧を低く保つことができ、かつ、撚り工程を容易に行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の空気入りラジアルタイヤに用いるカーカスプライ補強用のスチールコードは、多層をなすフィラメントが同一ピッチで同一方向に撚られたものであり、スチールコード全体が最密に撚られたとしたならば最外層のフィラメントが略六角形の断面形状をなすように構成されている。
【0020】
スチールコードは、1又は3本のフィラメントからなるコア部の周囲に、複数のシースフィラメントが、好ましくは複数層をなすように配列される。コア部は、1本のフィラメントからなるのが製造の容易さから好ましい。
【0021】
また、スチールコードは、束撚りによるものが製造の容易さから好ましいが、層撚りにより形成されるものであっても良い。ここで、束撚りとは、コアとシースを構成する複数のフィラメントが一回の撚り工程により撚られることによりスチールコードを作製するような場合であり、層撚りとは、例えば、中間層と最外層とが別個の撚り工程により作製されるものである。
【0022】
本発明においては、このような前提の下で、スチールコードが下記(1)〜(3)の特徴を有する。
【0023】
(1)最外層フィラメントのうち、最密に撚られたとした場合の略六角形の頂点に位置する最外層フィラメントの型付け率(Kt)が93〜100%である。
【0024】
(2)最外層フィラメントのうち、該略六角形の頂点以外の個所に位置する最外層フィラメントの型付け率(Kc)が70〜90%である。
【0025】
(3)このようなフィラメントがなす撚り構造をまとめるためのラッピングワイヤが省かれている。
【0026】
これら本発明の特徴について、図1〜2を用いて説明する。図1は、後述する本発明の実施例におけるスチールコードの断面図であり、図2は、型付け率について模式的に説明するための概念図である。
【0027】
型付けとは、フィラメントをコードに撚る前に予めスパイラル構造をなすように、弾性限界を超える応力下で変形を与える操作であり、ゴムの浸透を容易にする等の目的で行われている。そして、型付けの程度を示す型付け率は、下式により表される。
【0028】
型付け率=B/A×100(%)
ここで、Aは、フィラメントを最密に撚ったときの各フィラメントのスパイラルの理想計算値の外径である。Bは、型付け操作後のフリー(応力印加なし)の状態における、同一フィラメントについてのスパイラルの外径である。すなわち、Bは、コードにまとめられる前またはコードをほぐした状態でのスパイラルの外径である。
【0029】
型付け率が100%よりも小さいということは、コードにまとめられる際に、フィラメントがスパイラルの径方向外側へと押し広げられるということである。このような弾性変形に起因して、押し広げられたフィラメントは、その内側のフィラメントを締め付ける形で、コードにまとめられている。型付け率が小さい程、この締め付け力が大きいこととなる。
【0030】
型付け操作は、一般に用いられているいずれの方法によっても行うことができる。例えば、型付けピンの間を通過させて撚り合わせたり、コードを塑性域まで過度にねじって型付けを行う。
【0031】
図1の例により、本発明の上記特徴(1)〜(3)について簡単に説明する。
【0032】
スチールコードが、1本のやや太めのコアフィラメント3と、これを断面略六角形状にとり囲む6本の中間層フィラメント2と、さらにこれを断面略六角形状にとり囲む12本の最外層フィラメント11,12とからなる。
【0033】
最外層フィラメント11,12のうち、角部すなわち断面略六角形の頂点に6本の角部フィラメント11が位置し、これらに挟まれる個所、すなわち断面略六角形の辺の中心部に対応する個所に、6本の非角部最外層フィラメント12が位置する。
【0034】
上記のように、角部フィラメント11の型付け率(Kt)が93〜100%に設定され、非角部最外層フィラメント12の型付け率(Kc)が70〜90%に設定される。したがって、最外層フィラメント11,12は、いずれも内側のフィラメント2,3を締め付けているが、角部フィラメント11ではこの締め付け応力が比較的小さいのに対し、非角部最外層フィラメント12では、締め付け応力が大きい。
【0035】
角部フィラメント11の型付け率(Kt)が100%を超えると、非角部最外層フィラメント12に対する拘束力が不足するため、最外層フィラメントを最密状態に維持することが困難となり、又、フィラメントがコード表面上に突出しやすく、工程での取り扱い性が悪くなる。また、93%未満では、隣接するフィラメントを締め付ける力が大きくなるため、コード内部にコード自体を回転させようとする応力が生じ、取り扱い性が悪化する。
【0036】
一方、非角部最外層フィラメント12の型付け率(Kc)が90%を超えると、内側シースフィラメントを締め付ける応力が不足して、コード全体を最密状態に維持することが困難となる。また、70%未満では、フィラメントに残留する反発力によって、コードカット時にカット端部のコードがばらけやすくなり、撚りが戻ろうとするトルクが発生しカットしたゴム引きシートに反り返りが生じ易く、取り扱い性に劣る。
【0037】
最外層フィラメント11,12の型付け率をこのように設定することにより、スチールコードを構成する断面略円形のフィラメント11,12,2,3が、断面略六角形のコンパクトな最適形状をなすようにまとめられる。
【0038】
特には、ラッピングワイヤーが省かれているにも拘わらず、カーカスプライの製造工程において、このようなコンパクトな最適形状を維持することで、良好な取り扱い性が確実に得られる。
【0039】
最外層フィラメント11,12の型付け率の設定値が、上記範囲から外れた場合には、断面形状を最適化することができず、このため、ラッピングワイヤーを省いた場合にコード形状を維持することができず、取り扱い性が著しく低下する。
【0040】
スチールコードの断面の最適形状は、最外層フィラメント11,12全体による内側のフィラメント2,3に対する締め付けが最適状態にあって、かつ、角部フィラメント11による締め付け力と、非角部最外層フィラメント12による締め付け力とが、最適状態でバランスすることにより得られる。すなわち、非角部最外層フィラメント12が内側シースの谷にあたる部分を比較的強く締め付け、かつ、より大きい型付け率を有する角部フィラメント11が、適度の締め付けを行うことで、コードのばらけを抑えるとともに、コード形状を安定させるのである。
【0041】
他方、フィラメント11,12,2,3がなす撚り構造をさらにまとめるためのラッピングワイヤーを付加した場合には、タイヤ使用時に、ラッピングワイヤーと最外層フィラメント11,12との間でのフレッチング摩耗を引き起こすことから、タイヤ寿命がそれだけ短くなってしまう。
【0042】
すなわち、最外層の角部、非角部のフィラメントの型付け率を上記範囲とすることで、コードの断面形状を最適にし、かつ、安定に維持することができるようになり、これにより、ラッピングを省くことが可能となるのである。
【0043】
なお、図1に示す例においては、コアフィラメント3以外の全てのフィラメント11,12,2の径が略同一であり、全体が束撚りによりコードにまとめられている。そのため、層撚りとする場合に比べて、スチールコードの製造工程を簡略化し、製造コストを低減することができる。
【0044】
また、コアフィラメント3の径は、他のフィラメント11,12,2の径と、略同一であるかまたはやや太めであり、好ましくは、1.03〜1.25倍である。1.03倍より小さい場合には、六角形の形状がくずれ、コードがいびつな形となり、タイヤ中でカーカス用に使用した場合、フィラメント個々に均等な歪みがかからず、コードとしての耐疲労性が悪化する。また、中心部に太いフィラメントがあれば、撚り線時のコード形状の安定化が図れる。一方、1.25倍より大きい場合には、耐疲労性が低下する他、シースフィラメントの適当な配置に支障が生じ、撚り不良が生じやすい。
【0045】
また、コアフィラメント3の径をこのように設定することで、撚り工程を、容易に行うことができるようになる。
【0046】
以下に、本発明について、具体的な実施例及び比較例の結果に基づき、さらに詳細に説明する。
【0047】
角部フィラメント11の型付け率Kt及び非角部最外層フィラメント12の型付け率Kcを種々変化させつつ、図1に示されるような断面構成のスチールコードを作製した。この際、コアフィラメント3の径を0.2mmとし、他の全てのフィラメント11,12,2の径を0.18mmとし、これら19本のフィラメントの束撚り(1×19)によりスチールコードを作製した。詳しくは、バンチャー型撚線機を用いて、撚りピッチ16mmで、S方向に1回で撚り合わせた。なお、下記比較例4の場合のみ、0.15mm径のラッピングワイヤを、巻き付けピッチ3.5mmで逆スパイラルに巻き付けた。
【0048】
そして、このスチールコードを用いて、平行に配列し、通常のスチールコード用カレンダー装置にてゴム引きすることによりカーカスプライを製造し、10.00R20サイズの空気入りラジアルタイヤを組み立てた。このとき、クラウンセンターにおけるスチールコード打ち込み数(エンド数)が11本/インチとなるようにした。また、ベルトは4枚重ねとし、ベルト用のスチールコードとして3X0.20 +6X0.35 HTのものを用い、第1層(最内層)のベルトでは8本/インチ、第2〜4層のベルトでは11.5本/インチのスチールコード打ち込み数とした。
【0049】
このようなタイヤを200本ずつ製造して、大型トラックの後輪に装着し、路面上での実走行テストを行った。約20万kmの走行後、各実施例及び比較例について5本のタイヤを任意抽出し、スチールコードの強力保持率を求めた。すなわち、タイヤから切り出したスチールコードの引っ張り強度を測定し、初期状態の引っ張り強度に対する保持率(%)を求めた。
【0050】
また、各200本のタイヤのうち、約20万kmの走行に至らずに故障(スチールコードの並びの乱れ)を生じたタイヤの本数を測定した。
【0051】
この結果を下表にまとめて示す。
【0052】
【表1】実施例及び比較例のタイヤによる走行試験結果
実施例1〜3においては、角部フィラメント11についての型付け率Ktを96%に固定しつつ、非角部最外層フィラメント12の型付け率Kcを70〜90%の範囲で変化させたが、いずれも良好な結果が得られた。カーカスプライ製造時の取り扱い性に優れることから、エンド数乱れ等に起因するタイヤの故障の発生は全く見られなかった。また、スチールコードの強力保持率も92〜93%と充分な値となった。
【0053】
比較例1及び3においては、実施例と同様の構成において、角部フィラメント11の型付け率Ktを所定上限値(100%)より大きく設定した。この結果、スチールコードの強力保持率は実施例と同様であったが、エンド数乱れに起因するタイヤの早期の故障が見られた。また、比較例2においては、非角部最外層フィラメント12の型付け率Kcを所定上限値である90%よりわずかに大きく設定しただけで、同様に、エンド数乱れに起因するタイヤの早期の故障が見られた。
【0054】
比較例2〜3においては、型付け率がわずかに所定上限値を越えただけであり、実施例3と比べてもわずかに相違するだけある。しかしながら、顕著にタイヤ耐久性が低下している。これらの結果により、本発明で規定する型付け率Kt,Kcの上限値が非常に顕著な臨界的意義を有することが明らかになっている。
【0055】
比較例4においては、実施例1と同様のスチールコードにラッピングワイヤを巻き付けたものをカーカスプライに用いた。タイヤの故障の発生は全く見られないが、ラッピングワイヤーによるフレッチング摩耗が顕著に生じることから、スチールコードの強力保持率が79%と低く、充分なタイヤ寿命が得られないことが知られた。
【0056】
各型付け率Kt,Kcが下限値を下回る場合の試験結果について示していないが、このような場合には、スチールコードがばらけやすく、有意な試験結果の得られるようなタイヤの作製が困難であったからである。
【0057】
図1に示す実施例においては、スチールコードが19本のフィラメントからなるとして説明したが、27本または12本のフィラメントにより、同様の断面六角形状にまとめられるものであっても、上記実施例と同様の効果が得られる。また、上記実施例においては、製造の容易な束撚りによる撚り構造であるとして説明したが、層撚りであっても同様の効果を得ることが可能である。
【0058】
すなわち、好ましい、スチールコードの構成の例としては、上記実施例の1×19の他、1×27、1×12、及び1+18を挙げることができる。
【0059】
【発明の効果】
カーカスプライにスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいて、カーカスプライ製造時のスチールコードの取り扱い性やスチールコードの配列分布の均一性を損なうことなく、フレッチング摩耗を低減させることができ、これによりタイヤ寿命を向上させることができる。
【0060】
また、カーカス以外にも、ベルト、チェーハー等に使用して、タイヤ耐久性を向上させることができ、コストダウンも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるスチールコードの断面図である。
【図2】型付け率について説明するための模式的な外観斜視図である。
【符号の説明】
11 最外層の角に位置するフィラメント
12 最外層にあって角以外に位置するフィラメント
2 中間層フィラメント
3 コアフィラメント
Claims (3)
- 1又は3本のスチールフィラメントからなるコアと、その周りの複数層のシースからなるスチールコードが、同一ピッチで同一方向に最密状態に撚られて略六角形の断面形状をなしたスチールコードを用いる空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記スチールコードの最外層のフィラメントのうち、前記略六角形の頂点に位置する最外層フィラメントの型付け率を93〜100%とし、該頂点以外の個所に位置する最外層フィラメントの型付け率を70〜90%とし、
ラッピングワイヤが省かれていることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。 - コアフィラメントが、シースを構成するフィラメントより大径であり、シースフィラメントが全て略同一径であることを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
- 前記スチールコードをカーカスプライに使用したことを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
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