JP2004039515A - すぐれた接面通電性を長期に亘って発揮する固体高分子形燃料電池のセパレータ板材 - Google Patents
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Abstract
【課題】すぐれた接面通電性を長期に亘って発揮する固体高分子形燃料電池のセパレータ板材を提供する。
【解決手段】固体高分子形燃料電池のセパレータ板材を、セパレータ本体と、燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材とで構成し、前記セパレータ本体を、質量%で、Cr:40〜48%、Moおよび/またはW:0.1〜2%、B:0.01〜1%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金薄板で構成すると共に、上記燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を、発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトン(骨格構造)からなり、前記スケルトンが、同じく質量%で、Cr:40〜48%、Moおよび/またはW:0.1〜2%、B:0.01〜1%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有し、かつ40〜98容量%の気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体で構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】固体高分子形燃料電池のセパレータ板材を、セパレータ本体と、燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材とで構成し、前記セパレータ本体を、質量%で、Cr:40〜48%、Moおよび/またはW:0.1〜2%、B:0.01〜1%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金薄板で構成すると共に、上記燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を、発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトン(骨格構造)からなり、前記スケルトンが、同じく質量%で、Cr:40〜48%、Moおよび/またはW:0.1〜2%、B:0.01〜1%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有し、かつ40〜98容量%の気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体で構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、すぐれた接面通電性を経時的低下なく、長期に亘って発揮し、したがって電池性能の低下なく、使用寿命の著しい延命化を可能とする固体高分子形燃料電池(以下、単に燃料電池という)のセパレータ板材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に上記燃料電池が、図2,3に全体斜視図および分解斜視図で示される通り、単セルと呼ばれる単一発電モジュールを複数個重ね合わせて圧接組み立てた構造をもち、かつ前記単セルが、固体高分子電解質膜の一方側面に、アノード(水素極)を挟んでセパレータ板材が当接され、また前記固体高分子電解質膜の他方側面には、カソード(酸素極または空気極)を挟んで、同じくセパレータ板材が当接され、さらに前記セパレータ板材における前記アノードとの当接面には溝型の燃料ガス流路、前記カソードとの当接面には同じく溝型の酸化ガス流路が形成された構造をもつことはよく知られるところである。
また、上記の従来燃料電池は、セパレータ板材のアノード側に形成された燃料ガス流路を通常約80℃の水素ガスが流れ、同カソード側の酸化ガス流路を同じく約80℃の大気と燃料電池の反応生成物である水および/または水蒸気との混合ガスが流れることによって発電機能を発揮することも知られている。
さらに、上記の通り従来燃料電池のセパレータ板材のカソード当接面は、約80℃の水および/または水蒸気と大気との混合ガスからなる酸化性ガス流に曝されるが、このカソード当接面に酸化膜が形成されるようになると、接面通電性が著しく低下して、電池機能低下の原因となることから、セパレータ板材の形成にはすぐれた耐食性を有する各種の材料が用いられており、かかる材料の中で、良好な耐食性を示す材料として、質量%(以下、%は質量%を示す)で、
Cr:40〜48%、
Moおよび/またはW(以下、Mo/Wで示す):0.1〜2%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成を有するオーステナイト単相組織のNi基合金が注目され、このNi基合金で形成されたセパレータ板材が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年の燃料電池の高性能化および使用寿命の延命化に対する要求は強く、これに伴い、燃料電池は一段と苛酷な腐食条件下での実用化を余儀なくされる傾向にあるが、上記の従来燃料電池においては、より一段と苛酷な腐食条件下での実用に際しては、特に構造部材であるセパレータ板材の耐食性が不十分であるために経時的に接面通電性が漸次低下し、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に燃料電池のセパレータ板材の接面通電性に着目し、研究を行なった結果、燃料電池のセパレータ板材を、図1に分解斜視図で示される通り、セパレータ本体と、燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材で構成し、前記セパレータ本体を、
Cr:40〜48%、
Mo/W:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金薄板で、上記燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を、発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトン(骨格構造)からなり、前記スケルトンが、同じく、
Cr:40〜48%、
Mo/W:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有し、かつ40〜98容量%の気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体で構成すると、この結果のセパレータ板材においては、これを構成するセパレータ本体のNi基合金薄板、さらに燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材の多孔質Ni基合金焼結体のスケルトンが、いずれもオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織をもち、前記金属硼化物は素地のオーステナイトに比して上記の酸化ガス雰囲気で著しくすぐれた耐食性を発揮し、かつ導電性のすぐれたものであるので、素地のオーステナイトの酸化が進行し、素地部分の接面通電性が経時的に低下するようになっても、前記金属硼化物によって、すぐれた接面通電性が長期に亘って確保されることになり、さらに前記多孔質Ni基合金焼結体のもつ40〜98容量%の気孔率によって燃料ガスおよび酸化ガスの流れが均一化し、反応面での局部的不均一性が著しく解消されることから、電池性能が一段と向上するようになる、という研究結果を得たのである。
【0005】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、固体高分子電解質膜の一方側面に、アノードを挟んで、これに当接して燃料ガス流路が形成され、かつ前記燃料ガス流路の背面側には酸化ガス流路が形成されたセパレータ板材が、同他方側面には、カソードを挟んで、これに当接して酸化ガス流路が形成され、かつ前記酸化ガス流路の背面側には燃料ガス流路が形成されたセパレータ板材が配置された構造の単一発電モジュールを複数個重ね合わせて圧接組み立てしてなる燃料電池において、前記セパレータ板材を、セパレータ本体と、燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材で構成し、前記セパレータ本体を、
Cr:40〜48%、
Mo/W:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金薄板で構成すると共に、上記燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を、発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトン(骨格構造)からなり、前記スケルトンが、同じく、
Cr:40〜48%、
Mo/W:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有し、かつ40〜98容量%の気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体で構成してなる、すぐれた接面通電性を長期に亘って発揮する燃料電池のセパレータ板材に特徴を有するものである。
【0006】
つぎに、この発明のセパレータ板材において、これを構成するNi基合金薄板の組成、同じく多孔質Ni基合金焼結体のスケルトンの組成および気孔率を上記の通りに定めた理由を説明する。
(1)Ni基合金薄板および多孔質Ni基合金焼結体のスケルトンの組成
(a)Cr
Cr成分には、Niと共に素地のオーステナイトを形成し、前記素地の耐食性向上に寄与するほか、より一段と耐食性にすぐれ、かつ導電性にもすぐれた金属硼化物を形成し、この金属硼化物が素地に分散分布することによってすぐれた接面通電性が確保されるようになる作用があるが、その含有量が40%未満では前記の作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が48%を越えるとNi基合金薄板の加工性が急激に低下するようになることから、その含有量を40〜48%と定めた。
【0007】
(b)Mo/W
これらの成分には、素地のオーステナイトに固溶して、これを強化すると共に、上記の通り金属硼化物を形成して接面通電性の向上に寄与する作用があるが、その含有量が0.1%未満では前記の作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が2%を越えるとNi基合金薄板の加工性が急激に低下するようになることから、その含有量を0.1〜2%、望ましくは0.3〜1.5%と定めた。
【0008】
(c)B
B成分には、その僅かな一部が素地に固溶して、素地の耐食性向上に寄与するが、その大部分は上記の通り素地に長さ方向の径で0.5〜10μmの寸法で分散分布する金属硼化物を形成して、自身のもつすぐれた耐食性と導電性によって接面通電性の経時的低下を抑制し、長期に亘ってすぐれた通電機能を保持せしめる作用があるが、その含有量が0.01%未満では金属硼化物の形成が不十分で前記の作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が1%を越えると、金属硼化物の形成が多くなり過ぎてNi基合金薄板の加工性が急激に低下するようになることから、その含有量を0.01〜1%、望ましくは0.1〜0.9%と定めた。
【0009】
(2)多孔質Ni基合金焼結体の気孔率
上記の通り燃料ガス流路および酸化ガス流路を多孔質Ni基合金焼結体で形成することにより燃料ガスおよび酸化ガスの流れが均一化し、反応面での局部的不均一性が著しく低減され、電池性能が一段と向上するようになるが、その気孔率が40容量%未満では均一な燃料ガスおよび酸化ガスの流れを確保することができず、一方その気孔率が98容量%を越えると強度が急激に低下するようになることから、その気孔率を40〜98容量%と定めた。
【0010】
なお、この発明のセパレータ板材のセパレータ本体を構成するNi基合金薄板は、所定の組成を有するNi基合金溶湯を、例えば水冷銅鋳型に鋳造して所定厚さの板状インゴットとし、この板状インゴットに通常の条件で熱間圧延および熱処理を施し、さらに同じく通常の条件で冷間圧延および熱処理を施して、所定厚さの薄板とすることにより製造することができる。
【0011】
また、同じくセパレータ板材の燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を構成する多孔質Ni基合金焼結体は、所定の組成を有するNi基合金溶湯を、例えば高圧水でアトマイズして所定の粒度の粉末とし、これに熱処理を施して、オーステナイト素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金粉末を調製し、このNi基合金粉末を原料粉末として用い、例えば特開平9−143511号公報に記載される通り、
上記Ni基合金粉末:30〜80%、
炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤:0.5〜10%、
水溶性樹脂結合剤:0.5〜20%、
必要に応じて、界面活性剤:0.05〜5%、
さらに必要に応じて、多価アルコール、油脂、エーテル、およびエステルのうちの1種または2種以上からなる可塑剤:0.1〜15%、
水:残り、
からなる配合割合の混合スラリーとし、この混合スラリーから、例えば公知のドクターブレード法やストリップキャスト法などの方法で所定形状の成形体を成形し、この成形体を5℃以上の温度に保持して、水よりも大きい蒸気圧を有する上記非水溶性炭化水素系有機溶剤を気化して、前記成形体内に微細にして整寸の気泡を多数発生させ、もって気泡生成気孔とスケルトンからなる多孔質成形体を形成し、この多孔質成形体は、上記水溶性樹脂結合剤によってハンドリング可能な強度をもち、また上記可塑剤によって可塑性も具備するものであり、ついで、前記多孔質成形体を通常の条件で焼結することにより製造するのが望ましい。
上記の方法で、成形体を5℃以上の温度に保持することからなる気泡形成処理で形成された気孔(気泡生成気孔)と、焼結により形成された気孔(焼結生成気孔)を内在するスケルトンとで構成され、かつ85〜98容量%の著しく高い気孔率をもった多孔質Ni基合金焼結体が製造されるが、さらに強度向上を図る目的で、前記の85〜98容量%の気孔率をもった多孔質Ni基合金焼結体に、平面寸法はそのままに厚さだけを減少させる厚さ方向のみの圧縮プレスを施してもよく、この場合前記多孔質Ni基合金焼結体は、40〜90容量%の気孔率をもつものとする必要がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明のセパレータ板材を実施例により具体的に説明する。
(a)まず、原料として、いずれも純度が99.9%以上の高純度のNi材、Cr材、Mo材、およびW材、さらにNi−B母合金材(B:17%含有)を用い、真空高周波誘導溶解装置で溶解し、それぞれ所定の成分組成をもった溶湯を調製し、これの一部を水冷銅鋳型に鋳造して厚さ:5mmの板状インゴットとし、この板状インゴットに1200℃の圧延開始温度での熱間圧延を繰り返し4回施して、厚さ:2mmの熱延板とし、ついで前記熱延板に1200℃に10分間保持後水冷の溶体化処理と500℃に10分間保持後空冷の焼戻し処理を施し、酸洗した後、冷間加工にて厚さ:0.5mmの板材を形成し、この冷延板に500℃に10分間保持後空冷の熱処理を施し、酸洗した状態で、平面寸法:100mm×100mmの薄板に切り出すことによりそれぞれ表1に示される成分組成をもったNi基合金薄板で構成された本発明セパレータ本体A−1〜A−27をそれぞれ製造した。
なお、この結果得られた本発明セパレータ本体A−1〜A−27について、その組織を走査型電子顕微鏡(1000倍)を用いて観測したところ、いずれもオーステナイトの素地に長さ方向の径で0.5〜10μmの寸法を有する金属硼化物が分散分布した組織を示した。
【0013】
さらに、表2に示される通り、上記の本発明セパレータ本体A−1〜A−27のそれぞれの形成に用いた残りのNi基合金溶湯を高圧水を用いてアトマイズして5〜25μmの範囲内の所定の平均粒径を有する粉末とし、これに500℃に10分間保持後空冷の条件で熱処理を施すことにより調製したNi基合金粉末を用いて、
上記混合粉末のいずれか:30〜80%、
炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤としてヘキサン:0.5〜5%、
界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩:0.5〜3%、
水溶性樹脂結合剤としてメチルセルロース:2〜10%、
水:残り、
からなる配合割合の混合スラリーとし、この混合スラリーから、公知のドクターブレード法、すなわち前記混合スラリーをスラリー溜めに入れ、前記スラリー溜め底面にそってキャリアーシートを移動させて、前記キャリアーシート上に前記混合スラリーを乗せた後、前記キャリアーシートの表面と120μm間隔を保持してセットされたブレードの前記間隙を通過させて、前記キャリアーシート表面における混合スラリーの厚さを幅方向に一定の約80μmとし、ついでこれを湿度:85%、温度:35℃の雰囲気に15分間保持して、発泡させ、さらに温度:60℃に1時間保持して、乾燥し、もって発泡生成気孔と、スケルトンからなり、かつ幅:200mm×長さ:3000mm×厚さ:約0.8mmの寸法をもった多孔質成形体を形成し、引き続いて前記多孔質成形体に、平面寸法:130mm×130mmに切断した状態で、5容量%水素ガス−95容量%窒素ガスの雰囲気中、600℃に30分間保持の脱脂処理を施した後、100容量%の水素ガス雰囲気中、1200℃に1時間保持の条件で焼結を施して、前記スケルトン内に焼結生成気孔を形成すると共に、それぞれ表2に示される気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体とし、さらにこれを平面寸法:100mm×100mm、厚さ:0.5mmとすることにより、本発明燃料ガスおよび酸化ガス流路部材(以下、本発明ガス流路部材という)B−1〜B−27をそれぞれ製造した。
また、この結果得られた本発明ガス流路部材B−1〜B−27について、その組織を走査型電子顕微鏡(1000倍)を用いて観測したところ、いずれも発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトンからなり、かつ前記スケルトンがオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有する多孔質Ni基合金焼結体からなることが確認された。
さらに、上記の本発明ガス流路部材B−1〜B−27のうち、本発明ガス流路部材B−2,B−5,B−8,B−11,B−16,B−19,およびB−26に厚さ方向のみの圧縮プレスを施して、表3に示される通りの気孔率および厚さ(平面寸法は100mm×100mm)を有する本発明ガス流路部材B−28〜B−34を製造した。
この結果得られた本発明セパレータ本体A−1〜A−27および本発明ガス流路部材B−1〜B−34をそれぞれ表4に示される組み合わせでセットすることにより本発明セパレータ板材1〜34を製造した。
【0014】
また、比較の目的で、原料として、いずれも純度が99.9%以上の高純度のNi材、Cr材、Mo材、およびW材を用い、上記の本発明セパレータ本体A−1〜A−27の製造条件と同じ条件で、溶解し、インゴットに鋳造し、さらに熱間圧延、溶体化処理、焼戻し処理、冷間加工、および熱処理を施して、それぞれ表5に示される成分組成をもったNi基合金からなり、かついずれも平面寸法:140mm×140mm、厚さ:2mmの板材とし、この板材の中央部にプレス加工にて燃料ガス流路および酸化ガス流路に相当する幅:2mm×深さ:0.5mmの溝を2mm間隔で24本平行して形成することにより従来セパレータ板材1〜21をそれぞれ製造した。
【0015】
上記の本発明セパレータ板材1〜34および従来セパレータ板材1〜21の接面通電性について、その経時変化を評価する目的で、上記の各種セパレータ板材から寸法が30mm×30mmの試験片を切り出し、この試験片を30℃の20%HCl水溶液で1分間酸洗処理した後、沸騰したイオン交換水で十分に洗浄し、完全に乾燥した状態で、セパレータ板材の酸化ガス流路が曝される酸化性雰囲気と同等の雰囲気、すなわち80℃の大気飽和水蒸気雰囲気中に1000時間、2000時間、および3000時間放置の腐食試験を行い、腐食試験後の接触電気抵抗値を測定した。
なお、接触電気抵抗値は、上記試験片:2枚を1組とし、これを厚さ:0.3mmのカーボンペーパーを挟んで重ね合わせ、この重ね合わせた試験片を油圧プレスにて上下面から3MPaの圧力で加圧した状態で15Aの直流電流を流し、前記試験片相互間の電位差を測定し、この測定電位差から接触電気抵抗値を算出した。この結果を表4,5に示した。
この場合、接触電気抵抗値の低い方がセパレータ板材の表面における腐食試験後の接面通電性がすぐれていることを示し、これとは反対に腐食試験後の接触電気抵抗値が高くなればなるほど接面通電性が低いことを示すものである。
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【表4】
【0019】
【表5】
【0020】
【発明の効果】
表1〜5に示される結果から、本発明セパレータ板材1〜34は、これを構成するセパレータ本体のNi基合金薄板並びに燃料ガスおよび酸化ガス流路部材の多孔質Ni基合金焼結体のスケルトンがいずれもオーステナイトの素地に耐食性および導電性のすぐれた金属硼化物が分散分布した組織をもつので、前記素地のオーステナイトが酸化して、この部分での接面通電性が低下しても、前記金属硼化物を通して良好な接面通電性を長期に亘って確保することができるのに対して、前記金属硼化物の形成がない従来セパレータ板材1〜21においては、オーステナイト単相の酸化による全面的酸化膜の形成によって接面通電性が経時的に低下し、接触電気抵抗値の経時的増大は避けられないことが明かである。
上述のように、この発明のセパレータ板材は、すぐれた接面通電性を長期に亘って発揮し、燃料電池の使用寿命の延命化に大いに寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明セパレータ板材を組み込んだ燃料電池の分解斜視図である。
【図2】燃料電池の概略斜視図である。
【図3】従来セパレータ板材を組み込んだ燃料電池の分解斜視図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、すぐれた接面通電性を経時的低下なく、長期に亘って発揮し、したがって電池性能の低下なく、使用寿命の著しい延命化を可能とする固体高分子形燃料電池(以下、単に燃料電池という)のセパレータ板材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に上記燃料電池が、図2,3に全体斜視図および分解斜視図で示される通り、単セルと呼ばれる単一発電モジュールを複数個重ね合わせて圧接組み立てた構造をもち、かつ前記単セルが、固体高分子電解質膜の一方側面に、アノード(水素極)を挟んでセパレータ板材が当接され、また前記固体高分子電解質膜の他方側面には、カソード(酸素極または空気極)を挟んで、同じくセパレータ板材が当接され、さらに前記セパレータ板材における前記アノードとの当接面には溝型の燃料ガス流路、前記カソードとの当接面には同じく溝型の酸化ガス流路が形成された構造をもつことはよく知られるところである。
また、上記の従来燃料電池は、セパレータ板材のアノード側に形成された燃料ガス流路を通常約80℃の水素ガスが流れ、同カソード側の酸化ガス流路を同じく約80℃の大気と燃料電池の反応生成物である水および/または水蒸気との混合ガスが流れることによって発電機能を発揮することも知られている。
さらに、上記の通り従来燃料電池のセパレータ板材のカソード当接面は、約80℃の水および/または水蒸気と大気との混合ガスからなる酸化性ガス流に曝されるが、このカソード当接面に酸化膜が形成されるようになると、接面通電性が著しく低下して、電池機能低下の原因となることから、セパレータ板材の形成にはすぐれた耐食性を有する各種の材料が用いられており、かかる材料の中で、良好な耐食性を示す材料として、質量%(以下、%は質量%を示す)で、
Cr:40〜48%、
Moおよび/またはW(以下、Mo/Wで示す):0.1〜2%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成を有するオーステナイト単相組織のNi基合金が注目され、このNi基合金で形成されたセパレータ板材が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年の燃料電池の高性能化および使用寿命の延命化に対する要求は強く、これに伴い、燃料電池は一段と苛酷な腐食条件下での実用化を余儀なくされる傾向にあるが、上記の従来燃料電池においては、より一段と苛酷な腐食条件下での実用に際しては、特に構造部材であるセパレータ板材の耐食性が不十分であるために経時的に接面通電性が漸次低下し、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に燃料電池のセパレータ板材の接面通電性に着目し、研究を行なった結果、燃料電池のセパレータ板材を、図1に分解斜視図で示される通り、セパレータ本体と、燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材で構成し、前記セパレータ本体を、
Cr:40〜48%、
Mo/W:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金薄板で、上記燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を、発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトン(骨格構造)からなり、前記スケルトンが、同じく、
Cr:40〜48%、
Mo/W:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有し、かつ40〜98容量%の気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体で構成すると、この結果のセパレータ板材においては、これを構成するセパレータ本体のNi基合金薄板、さらに燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材の多孔質Ni基合金焼結体のスケルトンが、いずれもオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織をもち、前記金属硼化物は素地のオーステナイトに比して上記の酸化ガス雰囲気で著しくすぐれた耐食性を発揮し、かつ導電性のすぐれたものであるので、素地のオーステナイトの酸化が進行し、素地部分の接面通電性が経時的に低下するようになっても、前記金属硼化物によって、すぐれた接面通電性が長期に亘って確保されることになり、さらに前記多孔質Ni基合金焼結体のもつ40〜98容量%の気孔率によって燃料ガスおよび酸化ガスの流れが均一化し、反応面での局部的不均一性が著しく解消されることから、電池性能が一段と向上するようになる、という研究結果を得たのである。
【0005】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、固体高分子電解質膜の一方側面に、アノードを挟んで、これに当接して燃料ガス流路が形成され、かつ前記燃料ガス流路の背面側には酸化ガス流路が形成されたセパレータ板材が、同他方側面には、カソードを挟んで、これに当接して酸化ガス流路が形成され、かつ前記酸化ガス流路の背面側には燃料ガス流路が形成されたセパレータ板材が配置された構造の単一発電モジュールを複数個重ね合わせて圧接組み立てしてなる燃料電池において、前記セパレータ板材を、セパレータ本体と、燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材で構成し、前記セパレータ本体を、
Cr:40〜48%、
Mo/W:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金薄板で構成すると共に、上記燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を、発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトン(骨格構造)からなり、前記スケルトンが、同じく、
Cr:40〜48%、
Mo/W:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有し、かつ40〜98容量%の気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体で構成してなる、すぐれた接面通電性を長期に亘って発揮する燃料電池のセパレータ板材に特徴を有するものである。
【0006】
つぎに、この発明のセパレータ板材において、これを構成するNi基合金薄板の組成、同じく多孔質Ni基合金焼結体のスケルトンの組成および気孔率を上記の通りに定めた理由を説明する。
(1)Ni基合金薄板および多孔質Ni基合金焼結体のスケルトンの組成
(a)Cr
Cr成分には、Niと共に素地のオーステナイトを形成し、前記素地の耐食性向上に寄与するほか、より一段と耐食性にすぐれ、かつ導電性にもすぐれた金属硼化物を形成し、この金属硼化物が素地に分散分布することによってすぐれた接面通電性が確保されるようになる作用があるが、その含有量が40%未満では前記の作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が48%を越えるとNi基合金薄板の加工性が急激に低下するようになることから、その含有量を40〜48%と定めた。
【0007】
(b)Mo/W
これらの成分には、素地のオーステナイトに固溶して、これを強化すると共に、上記の通り金属硼化物を形成して接面通電性の向上に寄与する作用があるが、その含有量が0.1%未満では前記の作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が2%を越えるとNi基合金薄板の加工性が急激に低下するようになることから、その含有量を0.1〜2%、望ましくは0.3〜1.5%と定めた。
【0008】
(c)B
B成分には、その僅かな一部が素地に固溶して、素地の耐食性向上に寄与するが、その大部分は上記の通り素地に長さ方向の径で0.5〜10μmの寸法で分散分布する金属硼化物を形成して、自身のもつすぐれた耐食性と導電性によって接面通電性の経時的低下を抑制し、長期に亘ってすぐれた通電機能を保持せしめる作用があるが、その含有量が0.01%未満では金属硼化物の形成が不十分で前記の作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が1%を越えると、金属硼化物の形成が多くなり過ぎてNi基合金薄板の加工性が急激に低下するようになることから、その含有量を0.01〜1%、望ましくは0.1〜0.9%と定めた。
【0009】
(2)多孔質Ni基合金焼結体の気孔率
上記の通り燃料ガス流路および酸化ガス流路を多孔質Ni基合金焼結体で形成することにより燃料ガスおよび酸化ガスの流れが均一化し、反応面での局部的不均一性が著しく低減され、電池性能が一段と向上するようになるが、その気孔率が40容量%未満では均一な燃料ガスおよび酸化ガスの流れを確保することができず、一方その気孔率が98容量%を越えると強度が急激に低下するようになることから、その気孔率を40〜98容量%と定めた。
【0010】
なお、この発明のセパレータ板材のセパレータ本体を構成するNi基合金薄板は、所定の組成を有するNi基合金溶湯を、例えば水冷銅鋳型に鋳造して所定厚さの板状インゴットとし、この板状インゴットに通常の条件で熱間圧延および熱処理を施し、さらに同じく通常の条件で冷間圧延および熱処理を施して、所定厚さの薄板とすることにより製造することができる。
【0011】
また、同じくセパレータ板材の燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を構成する多孔質Ni基合金焼結体は、所定の組成を有するNi基合金溶湯を、例えば高圧水でアトマイズして所定の粒度の粉末とし、これに熱処理を施して、オーステナイト素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金粉末を調製し、このNi基合金粉末を原料粉末として用い、例えば特開平9−143511号公報に記載される通り、
上記Ni基合金粉末:30〜80%、
炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤:0.5〜10%、
水溶性樹脂結合剤:0.5〜20%、
必要に応じて、界面活性剤:0.05〜5%、
さらに必要に応じて、多価アルコール、油脂、エーテル、およびエステルのうちの1種または2種以上からなる可塑剤:0.1〜15%、
水:残り、
からなる配合割合の混合スラリーとし、この混合スラリーから、例えば公知のドクターブレード法やストリップキャスト法などの方法で所定形状の成形体を成形し、この成形体を5℃以上の温度に保持して、水よりも大きい蒸気圧を有する上記非水溶性炭化水素系有機溶剤を気化して、前記成形体内に微細にして整寸の気泡を多数発生させ、もって気泡生成気孔とスケルトンからなる多孔質成形体を形成し、この多孔質成形体は、上記水溶性樹脂結合剤によってハンドリング可能な強度をもち、また上記可塑剤によって可塑性も具備するものであり、ついで、前記多孔質成形体を通常の条件で焼結することにより製造するのが望ましい。
上記の方法で、成形体を5℃以上の温度に保持することからなる気泡形成処理で形成された気孔(気泡生成気孔)と、焼結により形成された気孔(焼結生成気孔)を内在するスケルトンとで構成され、かつ85〜98容量%の著しく高い気孔率をもった多孔質Ni基合金焼結体が製造されるが、さらに強度向上を図る目的で、前記の85〜98容量%の気孔率をもった多孔質Ni基合金焼結体に、平面寸法はそのままに厚さだけを減少させる厚さ方向のみの圧縮プレスを施してもよく、この場合前記多孔質Ni基合金焼結体は、40〜90容量%の気孔率をもつものとする必要がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明のセパレータ板材を実施例により具体的に説明する。
(a)まず、原料として、いずれも純度が99.9%以上の高純度のNi材、Cr材、Mo材、およびW材、さらにNi−B母合金材(B:17%含有)を用い、真空高周波誘導溶解装置で溶解し、それぞれ所定の成分組成をもった溶湯を調製し、これの一部を水冷銅鋳型に鋳造して厚さ:5mmの板状インゴットとし、この板状インゴットに1200℃の圧延開始温度での熱間圧延を繰り返し4回施して、厚さ:2mmの熱延板とし、ついで前記熱延板に1200℃に10分間保持後水冷の溶体化処理と500℃に10分間保持後空冷の焼戻し処理を施し、酸洗した後、冷間加工にて厚さ:0.5mmの板材を形成し、この冷延板に500℃に10分間保持後空冷の熱処理を施し、酸洗した状態で、平面寸法:100mm×100mmの薄板に切り出すことによりそれぞれ表1に示される成分組成をもったNi基合金薄板で構成された本発明セパレータ本体A−1〜A−27をそれぞれ製造した。
なお、この結果得られた本発明セパレータ本体A−1〜A−27について、その組織を走査型電子顕微鏡(1000倍)を用いて観測したところ、いずれもオーステナイトの素地に長さ方向の径で0.5〜10μmの寸法を有する金属硼化物が分散分布した組織を示した。
【0013】
さらに、表2に示される通り、上記の本発明セパレータ本体A−1〜A−27のそれぞれの形成に用いた残りのNi基合金溶湯を高圧水を用いてアトマイズして5〜25μmの範囲内の所定の平均粒径を有する粉末とし、これに500℃に10分間保持後空冷の条件で熱処理を施すことにより調製したNi基合金粉末を用いて、
上記混合粉末のいずれか:30〜80%、
炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤としてヘキサン:0.5〜5%、
界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩:0.5〜3%、
水溶性樹脂結合剤としてメチルセルロース:2〜10%、
水:残り、
からなる配合割合の混合スラリーとし、この混合スラリーから、公知のドクターブレード法、すなわち前記混合スラリーをスラリー溜めに入れ、前記スラリー溜め底面にそってキャリアーシートを移動させて、前記キャリアーシート上に前記混合スラリーを乗せた後、前記キャリアーシートの表面と120μm間隔を保持してセットされたブレードの前記間隙を通過させて、前記キャリアーシート表面における混合スラリーの厚さを幅方向に一定の約80μmとし、ついでこれを湿度:85%、温度:35℃の雰囲気に15分間保持して、発泡させ、さらに温度:60℃に1時間保持して、乾燥し、もって発泡生成気孔と、スケルトンからなり、かつ幅:200mm×長さ:3000mm×厚さ:約0.8mmの寸法をもった多孔質成形体を形成し、引き続いて前記多孔質成形体に、平面寸法:130mm×130mmに切断した状態で、5容量%水素ガス−95容量%窒素ガスの雰囲気中、600℃に30分間保持の脱脂処理を施した後、100容量%の水素ガス雰囲気中、1200℃に1時間保持の条件で焼結を施して、前記スケルトン内に焼結生成気孔を形成すると共に、それぞれ表2に示される気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体とし、さらにこれを平面寸法:100mm×100mm、厚さ:0.5mmとすることにより、本発明燃料ガスおよび酸化ガス流路部材(以下、本発明ガス流路部材という)B−1〜B−27をそれぞれ製造した。
また、この結果得られた本発明ガス流路部材B−1〜B−27について、その組織を走査型電子顕微鏡(1000倍)を用いて観測したところ、いずれも発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトンからなり、かつ前記スケルトンがオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有する多孔質Ni基合金焼結体からなることが確認された。
さらに、上記の本発明ガス流路部材B−1〜B−27のうち、本発明ガス流路部材B−2,B−5,B−8,B−11,B−16,B−19,およびB−26に厚さ方向のみの圧縮プレスを施して、表3に示される通りの気孔率および厚さ(平面寸法は100mm×100mm)を有する本発明ガス流路部材B−28〜B−34を製造した。
この結果得られた本発明セパレータ本体A−1〜A−27および本発明ガス流路部材B−1〜B−34をそれぞれ表4に示される組み合わせでセットすることにより本発明セパレータ板材1〜34を製造した。
【0014】
また、比較の目的で、原料として、いずれも純度が99.9%以上の高純度のNi材、Cr材、Mo材、およびW材を用い、上記の本発明セパレータ本体A−1〜A−27の製造条件と同じ条件で、溶解し、インゴットに鋳造し、さらに熱間圧延、溶体化処理、焼戻し処理、冷間加工、および熱処理を施して、それぞれ表5に示される成分組成をもったNi基合金からなり、かついずれも平面寸法:140mm×140mm、厚さ:2mmの板材とし、この板材の中央部にプレス加工にて燃料ガス流路および酸化ガス流路に相当する幅:2mm×深さ:0.5mmの溝を2mm間隔で24本平行して形成することにより従来セパレータ板材1〜21をそれぞれ製造した。
【0015】
上記の本発明セパレータ板材1〜34および従来セパレータ板材1〜21の接面通電性について、その経時変化を評価する目的で、上記の各種セパレータ板材から寸法が30mm×30mmの試験片を切り出し、この試験片を30℃の20%HCl水溶液で1分間酸洗処理した後、沸騰したイオン交換水で十分に洗浄し、完全に乾燥した状態で、セパレータ板材の酸化ガス流路が曝される酸化性雰囲気と同等の雰囲気、すなわち80℃の大気飽和水蒸気雰囲気中に1000時間、2000時間、および3000時間放置の腐食試験を行い、腐食試験後の接触電気抵抗値を測定した。
なお、接触電気抵抗値は、上記試験片:2枚を1組とし、これを厚さ:0.3mmのカーボンペーパーを挟んで重ね合わせ、この重ね合わせた試験片を油圧プレスにて上下面から3MPaの圧力で加圧した状態で15Aの直流電流を流し、前記試験片相互間の電位差を測定し、この測定電位差から接触電気抵抗値を算出した。この結果を表4,5に示した。
この場合、接触電気抵抗値の低い方がセパレータ板材の表面における腐食試験後の接面通電性がすぐれていることを示し、これとは反対に腐食試験後の接触電気抵抗値が高くなればなるほど接面通電性が低いことを示すものである。
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【表4】
【0019】
【表5】
【0020】
【発明の効果】
表1〜5に示される結果から、本発明セパレータ板材1〜34は、これを構成するセパレータ本体のNi基合金薄板並びに燃料ガスおよび酸化ガス流路部材の多孔質Ni基合金焼結体のスケルトンがいずれもオーステナイトの素地に耐食性および導電性のすぐれた金属硼化物が分散分布した組織をもつので、前記素地のオーステナイトが酸化して、この部分での接面通電性が低下しても、前記金属硼化物を通して良好な接面通電性を長期に亘って確保することができるのに対して、前記金属硼化物の形成がない従来セパレータ板材1〜21においては、オーステナイト単相の酸化による全面的酸化膜の形成によって接面通電性が経時的に低下し、接触電気抵抗値の経時的増大は避けられないことが明かである。
上述のように、この発明のセパレータ板材は、すぐれた接面通電性を長期に亘って発揮し、燃料電池の使用寿命の延命化に大いに寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明セパレータ板材を組み込んだ燃料電池の分解斜視図である。
【図2】燃料電池の概略斜視図である。
【図3】従来セパレータ板材を組み込んだ燃料電池の分解斜視図である。
Claims (1)
- 固体高分子電解質膜の一方側面に、アノードを挟んで、これに当接して燃料ガス流路が形成され、かつ前記燃料ガス流路の背面側には酸化ガス流路が形成されたセパレータ板材が、同他方側面には、カソードを挟んで、これに当接して酸化ガス流路が形成され、かつ前記酸化ガス流路の背面側には燃料ガス流路が形成されたセパレータ板材が配置された構造の単一発電モジュールを複数個重ね合わせて圧接組み立てしてなる固体高分子形燃料電池において、前記セパレータ板材を、セパレータ本体と、燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材とで構成し、前記セパレータ本体を、質量%で、
Cr:40〜48%、
Moおよび/またはW:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有するNi基合金薄板で構成すると共に、上記燃料ガス流路部材および酸化ガス流路部材を、発泡生成気孔と、焼結生成気孔が内在するスケルトン(骨格構造)からなり、前記スケルトンが、同じく質量%で、
Cr:40〜48%、
Moおよび/またはW:0.1〜2%、
B:0.01〜1%、
を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びにオーステナイトの素地に金属硼化物が分散分布した組織を有し、かつ40〜98容量%の気孔率を有する多孔質Ni基合金焼結体で構成したことを特徴とする、すぐれた接面通電性を長期に亘って発揮する固体高分子形燃料電池のセパレータ板材。
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