JP2004039507A - 複合絶縁体および複合絶縁体を用いた開閉器 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、優れた絶縁耐力と機械的強度を備えた複合絶縁体を提供する。
【解決手段】本発明の複合絶縁体は、互いに離間して対向配置された一対の電極21、22と、前記一対の電極21、22のそれぞれの少なくとも前記対向する表面に被覆された第1の絶縁層25、26と、前記第1の絶縁層25、26が被覆された前記一対の電極21、22を一体成形した第2の絶縁層27とから成り、前記第1の絶縁層25、26は、前記第2の絶縁層27より単位距離当たりの絶縁耐力を高くし、前記第2の絶縁層27は、前記前記第1の絶縁層25、26より単位面積当たりの機械的強度を高くしたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば開閉器の可動部の主回路を絶縁支持する複合絶縁体、およびこの複合絶縁体を用いた開閉器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種、開閉器における主回路を絶縁支持する絶縁体は、優れた機械的特性と電気的特性が要求され、この要求を満たすため、熱硬化性から成る優れた絶縁材料で成形されている。
【0003】
この絶縁体を、真空コンタクタのような開閉器に用いられている絶縁フランジを例にとり説明する。
【0004】
図4に示すように、真空コンタクタは、3分割に仕切られた3相一体で成形された箱形の絶縁バリア1の正面側に、それぞれ3相分の真空バルブ2が配設されている。この真空バルブ2の固定側2aは、前記絶縁バリア1に固定されている。また、前記真空バルブ2には、内部に図示しない接離自在の一対の電極が設けられ、この電極の可動側に固着されて前記真空バルブ2の容器外に導出された可動通電軸3に、それぞれ絶縁フランジ4が連結されている。この絶縁フランジ4には、電磁操作からなる操作機構5が連結され、前記一対の電極の開閉が行われている。
【0005】
また、前記真空バルブ2の固定側と可動側には、それぞれ主回路導体6、7が接続され、前記絶縁バリア1の背面側に導出されている。なお、前記操作機構5には、開閉動作の制御を行う端子8、また、前記一対の電極の開閉信号を取出す補助接点9が設けられている。
【0006】
前記絶縁フランジ4は、その詳細を図5に示すように、同軸上に互いに離間して配置された一対の電極10、11にそれぞれロッド12、13が固定され、これらの周囲には、一体成形で絶縁層14が形成されている。なお、前記ロッド12、13は、前記可動通電軸3と前記操作機構5に連結される。
【0007】
このような前記絶縁層14は、可動部の絶縁体であり、また前記真空コンタクタが多頻度開閉の責務を有しているため、優れた機械的特性と電気的特性が必要となる。この機械的強度には、例えば引張り強度や繰返し疲労強度があり、例えばガラス繊維を充填させた熱硬化性の不飽和ポリエステルからなる絶縁材料で成形されている。そして、この成形は、例えば温度150℃の金型内に前記絶縁材料を充填し、加圧硬化させることにより行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明した従来の絶縁体において、前記電極10、11間の絶縁耐力は、成形時の製造条件に大きく左右されることになる。特に、金型内への絶縁材料の充填時には金型を開放するため、開放時間や周囲温度によって金型温度が大きく左右され、前記絶縁層14内部の絶縁材料の流れや硬化状態を細かく制御することが困難であった。
【0009】
このため、成形時の金型温度のバラツキから生じる絶縁耐力の低下を考慮せざるを得なかった。即ち、前記絶縁フランジ4は、絶縁耐力に裕度を持たせる絶縁設計とし、前記電極10、11間の絶縁厚さなどを厚くしていた。
【0010】
なお、前記絶縁層14の沿面絶縁耐力の向上には、特開平6−351117号公報に記載の技術がある。これは、沿面に異種絶縁層を設けるものであるが、対向する一対の電極間の絶縁耐力向上が図れるものではない。
【0011】
従って、前記絶縁フランジ4が大型化し、また、これに伴って真空コンタクタの対地間距離などが広くなり、開閉器の全体形状が大型化し、これは、最近の趨勢である縮小化に逆行するものである。
【0012】
従って、本発明の目的は、絶縁耐力を向上させ小型化を図りうる複合絶縁体、また、この複合絶縁体を用いて全体形状の小型化を図りうる複合絶縁体を用いた開閉器を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明の複合絶縁体は、互いに離間して対向配置された一対の電極と、前記一対の電極のそれぞれの少なくとも前記対向する表面に被覆された第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層が被覆された前記一対の電極を一体成形した第2の絶縁層とから成り、前記第1の絶縁層は、前記第2の絶縁層より単位距離当たりの絶縁耐力を高くし、前記第2の絶縁層は、前記前記第1の絶縁層より単位面積当たりの機械的強度を高くしたことを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、電極表面に高い絶縁耐力を有する第1の絶縁層を被覆し、これらを優れた機械的特性を有する第2の絶縁層で一体成形しているので、優れた絶縁耐力と機械的特性を備えた複合絶縁体が得られる。このため、開閉器の可動部を絶縁支持する絶縁体を小型化できる。
【0015】
また、第2の発明の複合絶縁体を用いた開閉器は、接離自在の一対の第1の電極を有する真空バルブと、この真空バルブの可動軸に連結された絶縁体と、この絶縁体に連結され、前記真空バルブの一対の第1の電極を開閉する操作機構から成り、前記絶縁体が、互いに離間して対向配置された第2の電極のそれぞれの少なくとも対向する表面に被覆された高い絶縁耐力を有する第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層が被覆された前記第2の電極を一体成形し、高い機械的強度を有する第2の絶縁層から成ることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、開閉器の可動部の絶縁支持に、複合絶縁体を用いることにより小型化できるので、それに伴って対地間距離の縮小化が図れ、開閉器の全体形状を小型化できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る複合絶縁体を図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る絶縁フランジを示す縦断面図、図2は、本発明の実施の形態に係る複合絶縁体の等価回路を説明する説明図、図3は、本発明の実施の形態に係る複合絶縁体の絶縁耐力を説明する説明図である。
【0018】
なお、複合絶縁体は、従来と同様に真空コンタクタのような開閉器に用いられている絶縁フランジを例にとり説明する。そして、真空コンタクタは、従来と同様の構成であるので、その説明を省略する。
【0019】
図1に示すように、真空コンタクタの絶縁フランジ20は、次のように構成されている。即ち、互いに離間して対向配置された一対の電極21、22の反対向側にそれぞれロッド23、24を固定し、前記電極21、22のそれぞれの少なくとも前記対向する表面に、例えばエポキシのフローコート被覆による第1の絶縁層25、26を設けている。この第1の絶縁層25、26は、前述のように少なくとも前記電極21、22が対向する平滑面と、この平滑面に連接されている曲率面に被覆している。
【0020】
そして、これらの周りに、例えばガラス繊維を充填させた不飽和ポリエステルからなる絶縁材料を一体成形して、主絶縁となる第2の絶縁層27を形成している。即ち、前記電極21、22間は、第1の絶縁層25(26)と第2の絶縁層27の2層からなる複合絶縁体の構成としている。
【0021】
ここで、前記第1の絶縁層25、26のエポキシは、例えば比誘電率が約4で、また、絶縁耐力が約25kV/mmであり、絶縁厚さを約1mmとしている。また、前記第2の絶縁層27は、例えば比誘電率が約5で、絶縁耐力が約10kV/mmであり、絶縁厚さを約12mmとしている。
【0022】
このように構成された前記絶縁フランジ20を用いて絶縁耐力を求めたところ、従来に比べてAC破壊電圧が約20%向上した。また、標準偏差が、従来の16%から12%と小さくなった。試料数は12個であり、破壊電圧、標準偏差共、平均値である。
【0023】
この破壊電圧の向上と、標準偏差が小さくなった理由を以下に説明する。
【0024】
前記電極21、22間は、図2に示すように、分担電圧が前記第1の絶縁層25、26のE1と、前記第2の絶縁層27のE2となる。
【0025】
また、図3に示すように、分担電圧E1、E2に伴うそれぞれの絶縁耐力V1、V2が得られる。そして、前記電極21、22間の絶縁耐力V0は、単純加算ではないがV0=V1+V2となる。
【0026】
ここで、前記第1の絶縁層25、26は、絶縁厚さが薄いのにも関らず、単位距離当りの絶縁耐力が高いので、高い絶縁耐力のV1となる。また、前記第2の絶縁層27は、比誘電率が大きく、分担電圧が小さくなるので、前記電極21、22間の絶縁耐力V0に占める割合が低減される。
【0027】
このため、前記電極21、22間の絶縁耐力を考えるとき、この電極21、22の平滑面とこの平滑面に連接された電極21、22が対向する曲率面の近傍に最大電界が位置するが、この高電界部分が単位距離当りの絶縁耐力の高い前記第1の絶縁層25、26に覆われているので、電子放出が抑制される。また、前記第2の絶縁層27は、分担電圧が小さいので、全体に占めるバラツキの割合が小さくなる。従って、これらが相乗されて、前記電極21、22間の絶縁耐力が向上し、且つバラツキが抑えられるものである。
【0028】
なお、前記第2の絶縁層27は、従来と同様の絶縁材料を用いているが、優れた引張り強度や繰返し疲労特性が得られる。即ち、単位面積当りの機械的強度が前記第1の絶縁層25、26より高く、多頻度開閉を伴うような可動部の絶縁支持を行うのに適している。
【0029】
本発明によれば、前記電極21、22のそれぞれに高い絶縁耐力を有する前記第1の絶縁層25、26を被覆し、これらを優れた機械的特性を有する前記第2の絶縁層27で一体成形して主絶縁としているため、優れた絶縁耐力と機械的強度を備えた複合絶縁体を得ることができる。
【0030】
従って、可動部を絶縁支持する前記絶縁フランジ20は、絶縁厚さに裕度を持たせる必要がなく、最適な厚さとすることができ、小型化することができる。また、前記絶縁フランジ20を用いた前記真空コンタクタでは、対地間距離の縮小化が図れ、全体形状を小型化することができる。
【0031】
なお、上記実施の形態では、開閉器として真空コンタクタを用いて説明したが、多頻度開閉を責務とした真空遮断器などの可動部の絶縁支持部に複合絶縁体を用いれば、絶縁耐力を大きく向上させることができる。また、優れた機械的特性を得ることができる。これに伴って、前記可動部の絶縁支持部を小型化でき、開閉器の全体形状を小型化することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の複合絶縁体によれば、互いに離間して対向する一対の電極表面に高い絶縁耐力の第1の絶縁層を被覆し、これらを機械的特性の優れた第2の絶縁層で一体成形して主絶縁とすることにより、優れた絶縁耐力と機械的特性を備えた開閉器の可動部を絶縁支持する複合絶縁体を得ることができる。
【0033】
また、この複合絶縁体を前記可動部の絶縁支持とすることにより、開閉器の全体形状を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る絶縁フランジを示す縦断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る複合絶縁体の等価回路を説明する説明図。
【図3】本発明の実施の形態に係る複合絶縁体の絶縁耐力を説明する説明図。
【図4】真空コンタクタを示す正面図。
【図5】従来の絶縁フランジを示す縦断面図。
【符号の説明】
1 絶縁バリア
2 真空バルブ
2a 固定側
3 可動通電軸
4、20 絶縁フランジ
5 操作機構
6、7 主回路導体
8 端子
9 補助接点
10、11、21、22 電極
12、13、23、24 ロッド
14 絶縁層
25、26 第1の絶縁層
27 第2の絶縁層

Claims (5)

  1. 互いに離間して対向配置された一対の電極と、
    前記一対の電極のそれぞれの少なくとも前記対向する表面に被覆された第1の絶縁層と、
    前記第1の絶縁層が被覆された前記一対の電極を一体成形した第2の絶縁層とから成り、
    前記第1の絶縁層は、前記第2の絶縁層より単位距離当たりの絶縁耐力を高くし、
    前記第2の絶縁層は、前記前記第1の絶縁層より単位面積当たりの機械的強度を高くしたことを特徴とする複合絶縁体。
  2. 前記第1の絶縁層より前記第2の絶縁層の比誘電率を大きくしたことを特徴とする請求項1記載の複合絶縁体。
  3. 前記第1の絶縁層を、最大電界が位置する前記一対の電極表面にそれぞれ被覆したことを特徴とする請求項1記載の複合絶縁体。
  4. 前記第1の絶縁層がエポキシのフローコートの被覆から成り、
    前記第2の絶縁層がガラス繊維を充填した不飽和ポリエステルで成形されたことを特徴とする請求項1記載の複合絶縁体。
  5. 接離自在の一対の第1の電極を有する真空バルブと、
    この真空バルブの可動軸に連結された絶縁体と、
    この絶縁体に連結され、前記真空バルブの一対の第1の電極を開閉する操作機構から成り、
    前記絶縁体が、互いに離間して対向配置された第2の電極のそれぞれの少なくとも対向する表面に被覆された高い絶縁耐力を有する第1の絶縁層と、
    前記第1の絶縁層が被覆された前記第2の電極を一体成形し、高い機械的強度を有する第2の絶縁層から成ることを特徴とする複合絶縁体を用いた開閉器。
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