JP2004038039A - 塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】品質を損うことなく、短時間で均一にプラスチックレンズ基材表面の塗膜乾燥を行うことが可能であり、かつ、よりコンパクトな塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】処理液体をプラスチックレンズ基材表面に塗布して塗膜を形成後、前記塗膜に近赤外線を照射する。
【選択図】 図1
【解決手段】処理液体をプラスチックレンズ基材表面に塗布して塗膜を形成後、前記塗膜に近赤外線を照射する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メガネレンズ等のプラスチックレンズにおいては、表面にプライマー加工、ハードコート加工等のコーティング加工を施し、性能、機能の向上を図ることが一般に行われている。
【0003】
プライマー加工とは、プラスチックレンズ基材とハードコート膜との密着性向上、耐衝撃性向上等の機能を付与する加工であり、プライマー用組成物をプラスチックレンズ表面に塗布、加熱乾燥処理する方法が広く用いられている。
【0004】
また、ハードコート加工とは、プラスチックレンズ表面の耐久性向上、反射防止膜との密着性向上等の機能を付与する加工であり、ハードコーティング用組成物をプラスチックレンズ基材表面またはプライマー加工を施したプラスチックレンズ表面に塗布、加熱乾燥処理する方法が広く用いられている。
【0005】
これら処理液体の塗布方式としては、主に浸漬方式及びスピンコーティング方式が広く用いられている。浸漬方式とは、保持治具で保持された被塗布物を、浸漬槽の処理液体に浸漬、放置した後、引き上げて塗膜を形成する方法であり、スピンコーティング方式とは、プラスチックレンズ基材表面に処理液体を吐出し、高速回転させることにより塗膜を形成する方法である。
【0006】
また、これら塗膜の乾燥方式としては、主に、熱風を塗膜に当てて加熱する熱風乾燥方式、または、前記熱風乾燥方式と遠赤外線方式との組み合わせが用いられている。遠赤外線方式が用いられるのは、塗膜の主な組成分である高分子材料が、この波長域に吸収を持つためである。これらの方式は、塗膜を施したプラスチックレンズ基材を保持治具で固定して搬送ローラーに載せ、トンネル型乾燥炉の中を通過させて乾燥するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述のような従来技術では、次のような問題があった。
【0008】
つまり、従来の熱風乾燥方式の場合には、厚みが一定でないプラスチックレンズ基材上の塗膜を乾燥させる時、プラスチックレンズ基材の厚みによる熱容量の影響を受けやすい。すなわち、厚い部分は、熱容量が大きいために目的とする乾燥温度に達するのに必要とする時間が長く、また、逆に薄い部分は、熱容量が小さく、目的とする乾燥温度に達するのに必要とする時間が短いため、乾燥性に差が生じ、塗膜の品質が低下する恐れがある。さらに、塗膜を施した複数のプラスチックレンズ基材を同時に加熱処理する場合には、枚葉に形状が異なるため、厚みのばらつきは一層深刻なものとなる。
【0009】
また、熱風乾燥方式のトンネル型乾燥炉においては、前述のように、プラスチックレンズ基材の表面温度が一様になるための予熱スペースが必要であり、また、安定した乾燥性を維持管理するために、空調等様々な付帯設備が必要である。よって必然的に装置は大型化し、コンパクト性が失われると同時に、多くの電力エネルギーを必要とする。
【0010】
そこで本発明は、このような問題点を解決するもので、その目的とするところは、品質を損うことなく、短時間で均一にプラスチックレンズ基材表面の塗膜乾燥を行うことが可能であり、かつ、よりコンパクトな塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法を提供するところにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、処理液体をプラスチックレンズ基材表面に塗布して塗膜を形成後、塗膜を乾燥する塗膜の乾燥方法において、塗膜に近赤外線を照射することが有効であることを見出した。
【0012】
つまり、波長領域が約0.75〜2μm、中心波長が約1.2μmである近赤外線は、主な組成分が高分子材料である塗膜およびプラスチックレンズ基材に対する赤外線吸収率が低いため、近赤外線の大部分は塗膜およびプラスチックレンズ基材表層部分を通過し、プラスチックレンズ基材全体に対し、均一かつ徐々に吸収される。結果として、プラスチックレンズ基材の厚みの違いによる熱容量の影響を受け難くなるため、プラスチックレンズ基材全体が均一に加熱され、プラスチックレンズ基材表面が一定温度に上昇するまでの所要時間に差が生じにくい。よって、厚みの差が大きいプラスチックレンズ基材を複数同時に加熱処理する場合でも、目的とする性能を有する塗膜を得ることができる。
【0013】
また、近赤外線は、塗膜およびプラスチックレンズ基材に対する赤外線吸収率が低いとはいえ、近赤外線による乾燥機構は輻射熱を利用するので、熱伝導や対流による熱風乾燥方式に比べ、そのエネルギー効率は著しく高い。したがって、乾燥温度までプラスチックレンズ基材を昇温するのに要する時間が短く、加熱時間の短時間化を実現することができると同時に、装置の小型化が可能である。さらに、スイッチのオン/オフとほぼ同時に立ち上がるため、熱風乾燥に比べて電力エネルギーの使用量が少ない処理方法であり、製造コストも削減できる。
【0014】
従って、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、処理液体をプラスチックレンズ表面に塗布して塗膜を形成後、前記塗膜を乾燥する塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に近赤外線を照射することを特徴とする塗膜の乾燥方法を提供する。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に前記近赤外線を照射する方式と、前記塗膜に熱風を吹き付ける方式とを併用することを特徴とする塗膜の乾燥方法を提供する。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に前記近赤外線を照射した後、前記塗膜に前記熱風を吹き付けることを特徴とする塗膜の乾燥方法を提供する。
【0017】
請求項4記載の発明は、塗膜を施したプラスチックレンズを保持する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズを搬送する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズの表面に近赤外線を照射する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズの表面に熱風を吹き付ける手段とを具備することを特徴とする塗膜の乾燥装置を提供する。
【0018】
請求項5記載の発明は、プラスチックレンズを成形する工程と、前記プラスチックレンズに塗膜を施す工程と、塗膜を施した前記プラスチックレンズの表面に近赤外線を照射する工程と、下記(a)〜(e)の少なくとも一つ以上の工程とからなることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
(a)染色を施す工程
(b)洗浄する工程
(c)塗膜に熱風を吹き付ける工程
(d)反射防止膜を施す工程
(e)撥水処理を施す工程
を提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を、プラスチックレンズに対するコーティングを例に、図面に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明による近赤外線の照射手段としては、ハロゲンヒータを例に挙げることができる。ハロゲンヒータの特徴としては、投入電力の85%以上が赤外線に変換して照射されるため、エネルギー効率が高いこと、光エネルギーを利用しているため、レンズやミラーによる光学的扱いにより、集光や散光が容易であること、小型・軽量で、狭い場所でも設置可能であること、非接触加熱であるため、被加熱物や加熱環境を汚染しないこと、スイッチのオン/オフにより、立ち上がり・立ち下がりを行うことができるため、応答性に優れ、かつ、複雑な加熱プログラムに対応する熱制御が可能であること、等が挙げられる。
【0021】
コーティングの対象となるプラスチックレンズとしては、特に制限されず、例えばメガネレンズ、調光用レンズ、サングラス、カメラレンズ、望遠鏡レンズ、拡大鏡レンズ、プロジェクターレンズ、ピックアップレンズ、マイクロレンズ等が挙げられる。
【0022】
プラスチックレンズの材質としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、チオウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、チオエポキシ系樹脂、アリルカーボネート系樹脂、アリルイタコネート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0023】
コーティングに用いる処理液体としては、特に制限されず、例えばプライマー用組成物、ハードコーティング用組成物、反射防止膜用組成物等が挙げられる。
【0024】
また、プライマー用組成物としては、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル酸系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アミノ系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂およびこれらの混合物もしくは共重合体等が挙げられる。
【0025】
ハードコーティング用組成物としては、メラミン樹脂系、ウレタン樹脂系、アルキッド樹脂系、アクリル樹脂系などの有機材料系、オルガノアルコキシシランあるいはその加水分解縮合物を主体としたシリコーン系、及び有機材料とシリカなどの微粒子をブレンドした有機無機ハイブリッド系などが挙げられる。
【0026】
プライマー用組成物、ハードコーティング用組成物等における溶剤としては、特に制限されず、例えばメタノール、エタノール、IPA、ブタノール等のアルコール類、MEK、2−ペンタノン、MIBK、2−ヘプタノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸secブチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸ブチル、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して用いることができる。なお、セロソルブは、エチレングリコールモノアルキルエーテルの通称である。
【0027】
処理液体中の溶剤の量は、コーティング被膜として必要な膜厚を確保するため、組成分全体の60〜99重量%、特に70〜97重量%、固形分の量は、組成分全体の1〜40重量%、特に3〜30重量%の範囲が適当である。
【0028】
上記処理液体をプラスチックレンズに塗布する方法としては、例えば、浸漬法、スピンコーティング法、スプレー法、インクジェット法などを挙げることができる。
【0029】
本発明における塗膜の乾燥装置においては、塗膜を施したプラスチックレンズに、近赤外線が直接照射される必要がある。したがって、塗布面の両面に対面するように、左右または上下にハロゲンヒータを設置し、プラスチックレンズ両面に対して近赤外線照射を行うことが効率的である。また、片側のみハロゲンヒータを設置する場合には、プラスチックレンズの一方の面に近赤外線を照射した後、反転させて他方の面に照射することが必要である。
【0030】
ハロゲンヒータによる加熱の際、近赤外線の照射量を調整する方法としては、ハロゲンヒータのスイッチのオン/オフ、電流値や電圧値の調整のほか、ハロゲンヒータからの近赤外線の出口である近赤外線照射域に、開閉可能なシャッターなどの近赤外線遮断機構を設置し、その開閉によって調整する方法を挙げることができる。近赤外線遮断機構による方法は、開閉程度を瞬時に調節でき、近赤外線照射量を微調整できる長所を有する。
【0031】
また、本発明においては、塗膜の乾燥を近赤外線照射のみによって行っても良いが、熱風による加熱を併用しても良い。
【0032】
例えば、塗膜を施したプラスチックレンズを近赤外線照射によって予め加熱した後、熱風乾燥方式によって乾燥させる方法が挙げられる。この方法においては、まず近赤外線照射によってプラスチックレンズを短時間で乾燥に必要な温度まで加熱し、次いで熱風乾燥炉にて設定された保持温度で加熱乾燥することで、乾燥時の保持温度までプラスチックレンズを昇温するのに要する時間が少なくて済み、乾燥工程の短時間化及び乾燥炉長の短縮化が可能になる。
【0033】
また、熱風による加熱によって一定の温度に保持した雰囲気下にて、塗膜を施したプラスチックレンズに近赤外線を照射する方法も挙げられる。この方法によれば、近赤外線照射区域内の雰囲気温度を熱風によって一定に保持することで、塗膜の乾燥雰囲気温度を一定に保持することができる。つまり、近赤外線照射によって加熱を行っていくと、調節を行わない限り照射の進行とともに加熱されたプラスチックレンズからの熱放射によって、近赤外線照射区域内の雰囲気温度が上昇していく。照射初期の雰囲気温度が低い状態と雰囲気温度が上昇後の高い状態とで近赤外線によるプラスチックレンズの温度上昇を比較すると、雰囲気温度が上昇後の高い状態の方が、早く温度が上昇する。すなわち、雰囲気温度の差によって塗膜の乾燥温度に差が生じ、品質にばらつきが発生する原因となる。また、熱風による加熱によって、近赤外線照射開始時にも雰囲気温度は乾燥に必要な温度付近に保持されているので、少なくとも近赤外線照射開始初期における塗膜の乾燥を早めることができる。保持する上記一定の雰囲気温度は、塗膜の乾燥に必要な保持温度に近い温度とすることが好適である。雰囲気温度の管理は、熱風の導入、加熱していない空気の導入などによって行うことができる。
【0034】
さらに、熱風による加熱によって一定の温度に保持した雰囲気下にて、塗膜を施したプラスチックレンズに近赤外線を照射した後、さらに熱風乾燥炉にて乾燥させる方法も挙げられる。この方法は、上記2つの方法を兼ね備えたものであり、乾燥工程の短時間化及び乾燥炉長の短縮化と、雰囲気温度の安定化が可能になる。
【0035】
以下、本発明の実施例をプラスチックレンズを例に、図面に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0036】
図1は、本発明によるプラスチックレンズの塗膜乾燥装置の一例を示す図である。図1において、プラスチックレンズ1は、固定部材2によって固定されており、5本並列に並んだ2kW、発熱長300mmのハロゲンヒータ3より近赤外線が照射される構造になっている。照射距離は、プラスチックレンズ1の照射面最外周部とハロゲンヒータ3の最短距離であり、200mm以下が望ましい。さらに効率を考慮すると、150mm以下が望ましい。
【0037】
[実施例1]
図2に示すように、熱伝対を101〜105の5箇所に貼り付けた外径75mm、中心厚み6mm、外周部厚み1mmのチオウレタン系プラスチックレンズ1に、図1に示すような装置を用いて、出力150V、距離120mmに設定したハロゲンヒータ3より近赤外線を33秒間照射し、プラスチックレンズ1の表面の温度を測定した。図3のグラフに示すように、最も高温部分は124℃、最も低温部分は114℃であり、プラスチックレンズ1の表面温度のばらつきを10℃以内に収めることが可能であった。
【0038】
[実施例2]
アセトンで洗浄したチオウレタン系プラスチックレンズ1に、ポリウレタン系プライマー用組成物を膜厚が約1μmとなるように塗布した。続いて、図1に示すような装置を用いて出力150V、距離120mmに設定したハロゲンヒータ3より近赤外線を照射し、80℃で7分間維持した。得られたプライマーレンズは、十分に乾燥・硬化しており、また、塗りむらが無く良好な外観であった 。
【0039】
[比較例1]
アセトンで洗浄したチオウレタン系プラスチックレンズ1に、ポリウレタン系プライマー用組成物を膜厚が約1μmとなるように塗布した。続いて、熱風乾燥炉を用いて、80℃で20分間加熱した。このようにして作られたプライマーレンズは、十分に乾燥・硬化しており、また、塗りむらが無く良好な外観であったが、近赤外線を照射した場合より約3倍の加熱時間を要した。
【0040】
[実施例3]
アセトンで洗浄したチオウレタン系プラスチックレンズ1に、シリコーン系ハードコート液を膜厚が約2μmとなるように塗布した。続いて、図1に示すような装置を用いて出力150V、距離120mmに設定したハロゲンヒータ3より近赤外線を照射し、120℃で20分間維持した。このようにして作られたハードコートレンズは、十分に乾燥・硬化しており、また、塗りむらが無く良好な外観であった。
【0041】
[比較例2]
アセトンで洗浄したチオウレタン系のプラスチックレンズ1に、シリコーン系ハードコート液を膜厚が約2μmとなるように塗布した。続いて、熱風乾燥炉を用いて、120℃で60分間加熱した。このようにして作られたハードコートレンズは、十分に乾燥・硬化しており、また、塗りむらが無く良好な外観であったが、近赤外線を照射した場合より3倍の加熱時間を要した。
【0042】
1)反射防止膜の形成
実施例3及び比較例2で得られたハードコートレンズにプラズマ処理(アルゴンプラズマ400w×60秒)した後、基板から大気に向かって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層からなる反射防止多層膜を、真空蒸着法(真空器械工業(株)製;CES−34)にて形成した。各層の光学的膜厚は、最初のSiO2層、次のZrO2層とSiO2の等価膜層、及び次のZrO2層、最上層のSiO2層が、それぞれλ/4となるように形成した。なお、設計波長は520nmとした。
【0043】
得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光透過率は98%だった。
【0044】
2)耐久性能試験
1)で反射防止膜を形成したハードコートレンズに対し、耐久性能試験を実施した。
【0045】
(a)耐磨耗性:ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの荷重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷ついた程度を、目視で10段階に分けて評価した。
10:1cm×3cmの範囲に全く傷がつかない
1:表面についた傷のため、平滑な表面が残っていない
評価の結果は、10だった。
【0046】
(b)密着性:基材とハードコート膜及びハードコート膜と反射防止膜との密着性は、JIS K 5600に準じてクロスカットテープ試験によって行った。すなわち、ナイフを用いて基材表面に1mm間隔に切れ目を入れ、1mm2のマス目を100個形成する。次に、その上へセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製:商品名「セロテープ(登録商標)」)を強く押し付けた後、表面から90度方向へすばやく引っ張り、剥離した後、コート被膜に残っているマス目をもって、密着性指標とした。
【0047】
評価の結果は、100個のマス目のいずれにおいても、全くハガレが生じなかった。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、品質を損うことなく、短時間で均一にプラスチックレンズ基材表面の塗膜乾燥を行うことが可能であり、かつ、よりコンパクトな塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるプラスチックレンズの塗膜乾燥装置の一例を示す概略図
【図2】プラスチックレンズ基材上の熱伝対の貼り付け位置
【図3】実施例1におけるプラスチックレンズ1の表面温度の変化を示すグラフ
【符号の説明】
1 プラスチックレンズ
2 固定部材
3 ハロゲンヒータ
101〜105 熱伝対貼り付け位置
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メガネレンズ等のプラスチックレンズにおいては、表面にプライマー加工、ハードコート加工等のコーティング加工を施し、性能、機能の向上を図ることが一般に行われている。
【0003】
プライマー加工とは、プラスチックレンズ基材とハードコート膜との密着性向上、耐衝撃性向上等の機能を付与する加工であり、プライマー用組成物をプラスチックレンズ表面に塗布、加熱乾燥処理する方法が広く用いられている。
【0004】
また、ハードコート加工とは、プラスチックレンズ表面の耐久性向上、反射防止膜との密着性向上等の機能を付与する加工であり、ハードコーティング用組成物をプラスチックレンズ基材表面またはプライマー加工を施したプラスチックレンズ表面に塗布、加熱乾燥処理する方法が広く用いられている。
【0005】
これら処理液体の塗布方式としては、主に浸漬方式及びスピンコーティング方式が広く用いられている。浸漬方式とは、保持治具で保持された被塗布物を、浸漬槽の処理液体に浸漬、放置した後、引き上げて塗膜を形成する方法であり、スピンコーティング方式とは、プラスチックレンズ基材表面に処理液体を吐出し、高速回転させることにより塗膜を形成する方法である。
【0006】
また、これら塗膜の乾燥方式としては、主に、熱風を塗膜に当てて加熱する熱風乾燥方式、または、前記熱風乾燥方式と遠赤外線方式との組み合わせが用いられている。遠赤外線方式が用いられるのは、塗膜の主な組成分である高分子材料が、この波長域に吸収を持つためである。これらの方式は、塗膜を施したプラスチックレンズ基材を保持治具で固定して搬送ローラーに載せ、トンネル型乾燥炉の中を通過させて乾燥するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述のような従来技術では、次のような問題があった。
【0008】
つまり、従来の熱風乾燥方式の場合には、厚みが一定でないプラスチックレンズ基材上の塗膜を乾燥させる時、プラスチックレンズ基材の厚みによる熱容量の影響を受けやすい。すなわち、厚い部分は、熱容量が大きいために目的とする乾燥温度に達するのに必要とする時間が長く、また、逆に薄い部分は、熱容量が小さく、目的とする乾燥温度に達するのに必要とする時間が短いため、乾燥性に差が生じ、塗膜の品質が低下する恐れがある。さらに、塗膜を施した複数のプラスチックレンズ基材を同時に加熱処理する場合には、枚葉に形状が異なるため、厚みのばらつきは一層深刻なものとなる。
【0009】
また、熱風乾燥方式のトンネル型乾燥炉においては、前述のように、プラスチックレンズ基材の表面温度が一様になるための予熱スペースが必要であり、また、安定した乾燥性を維持管理するために、空調等様々な付帯設備が必要である。よって必然的に装置は大型化し、コンパクト性が失われると同時に、多くの電力エネルギーを必要とする。
【0010】
そこで本発明は、このような問題点を解決するもので、その目的とするところは、品質を損うことなく、短時間で均一にプラスチックレンズ基材表面の塗膜乾燥を行うことが可能であり、かつ、よりコンパクトな塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法を提供するところにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、処理液体をプラスチックレンズ基材表面に塗布して塗膜を形成後、塗膜を乾燥する塗膜の乾燥方法において、塗膜に近赤外線を照射することが有効であることを見出した。
【0012】
つまり、波長領域が約0.75〜2μm、中心波長が約1.2μmである近赤外線は、主な組成分が高分子材料である塗膜およびプラスチックレンズ基材に対する赤外線吸収率が低いため、近赤外線の大部分は塗膜およびプラスチックレンズ基材表層部分を通過し、プラスチックレンズ基材全体に対し、均一かつ徐々に吸収される。結果として、プラスチックレンズ基材の厚みの違いによる熱容量の影響を受け難くなるため、プラスチックレンズ基材全体が均一に加熱され、プラスチックレンズ基材表面が一定温度に上昇するまでの所要時間に差が生じにくい。よって、厚みの差が大きいプラスチックレンズ基材を複数同時に加熱処理する場合でも、目的とする性能を有する塗膜を得ることができる。
【0013】
また、近赤外線は、塗膜およびプラスチックレンズ基材に対する赤外線吸収率が低いとはいえ、近赤外線による乾燥機構は輻射熱を利用するので、熱伝導や対流による熱風乾燥方式に比べ、そのエネルギー効率は著しく高い。したがって、乾燥温度までプラスチックレンズ基材を昇温するのに要する時間が短く、加熱時間の短時間化を実現することができると同時に、装置の小型化が可能である。さらに、スイッチのオン/オフとほぼ同時に立ち上がるため、熱風乾燥に比べて電力エネルギーの使用量が少ない処理方法であり、製造コストも削減できる。
【0014】
従って、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、処理液体をプラスチックレンズ表面に塗布して塗膜を形成後、前記塗膜を乾燥する塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に近赤外線を照射することを特徴とする塗膜の乾燥方法を提供する。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に前記近赤外線を照射する方式と、前記塗膜に熱風を吹き付ける方式とを併用することを特徴とする塗膜の乾燥方法を提供する。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に前記近赤外線を照射した後、前記塗膜に前記熱風を吹き付けることを特徴とする塗膜の乾燥方法を提供する。
【0017】
請求項4記載の発明は、塗膜を施したプラスチックレンズを保持する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズを搬送する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズの表面に近赤外線を照射する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズの表面に熱風を吹き付ける手段とを具備することを特徴とする塗膜の乾燥装置を提供する。
【0018】
請求項5記載の発明は、プラスチックレンズを成形する工程と、前記プラスチックレンズに塗膜を施す工程と、塗膜を施した前記プラスチックレンズの表面に近赤外線を照射する工程と、下記(a)〜(e)の少なくとも一つ以上の工程とからなることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
(a)染色を施す工程
(b)洗浄する工程
(c)塗膜に熱風を吹き付ける工程
(d)反射防止膜を施す工程
(e)撥水処理を施す工程
を提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を、プラスチックレンズに対するコーティングを例に、図面に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明による近赤外線の照射手段としては、ハロゲンヒータを例に挙げることができる。ハロゲンヒータの特徴としては、投入電力の85%以上が赤外線に変換して照射されるため、エネルギー効率が高いこと、光エネルギーを利用しているため、レンズやミラーによる光学的扱いにより、集光や散光が容易であること、小型・軽量で、狭い場所でも設置可能であること、非接触加熱であるため、被加熱物や加熱環境を汚染しないこと、スイッチのオン/オフにより、立ち上がり・立ち下がりを行うことができるため、応答性に優れ、かつ、複雑な加熱プログラムに対応する熱制御が可能であること、等が挙げられる。
【0021】
コーティングの対象となるプラスチックレンズとしては、特に制限されず、例えばメガネレンズ、調光用レンズ、サングラス、カメラレンズ、望遠鏡レンズ、拡大鏡レンズ、プロジェクターレンズ、ピックアップレンズ、マイクロレンズ等が挙げられる。
【0022】
プラスチックレンズの材質としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、チオウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、チオエポキシ系樹脂、アリルカーボネート系樹脂、アリルイタコネート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
【0023】
コーティングに用いる処理液体としては、特に制限されず、例えばプライマー用組成物、ハードコーティング用組成物、反射防止膜用組成物等が挙げられる。
【0024】
また、プライマー用組成物としては、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル酸系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アミノ系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂およびこれらの混合物もしくは共重合体等が挙げられる。
【0025】
ハードコーティング用組成物としては、メラミン樹脂系、ウレタン樹脂系、アルキッド樹脂系、アクリル樹脂系などの有機材料系、オルガノアルコキシシランあるいはその加水分解縮合物を主体としたシリコーン系、及び有機材料とシリカなどの微粒子をブレンドした有機無機ハイブリッド系などが挙げられる。
【0026】
プライマー用組成物、ハードコーティング用組成物等における溶剤としては、特に制限されず、例えばメタノール、エタノール、IPA、ブタノール等のアルコール類、MEK、2−ペンタノン、MIBK、2−ヘプタノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸secブチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸ブチル、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を適宜混合して用いることができる。なお、セロソルブは、エチレングリコールモノアルキルエーテルの通称である。
【0027】
処理液体中の溶剤の量は、コーティング被膜として必要な膜厚を確保するため、組成分全体の60〜99重量%、特に70〜97重量%、固形分の量は、組成分全体の1〜40重量%、特に3〜30重量%の範囲が適当である。
【0028】
上記処理液体をプラスチックレンズに塗布する方法としては、例えば、浸漬法、スピンコーティング法、スプレー法、インクジェット法などを挙げることができる。
【0029】
本発明における塗膜の乾燥装置においては、塗膜を施したプラスチックレンズに、近赤外線が直接照射される必要がある。したがって、塗布面の両面に対面するように、左右または上下にハロゲンヒータを設置し、プラスチックレンズ両面に対して近赤外線照射を行うことが効率的である。また、片側のみハロゲンヒータを設置する場合には、プラスチックレンズの一方の面に近赤外線を照射した後、反転させて他方の面に照射することが必要である。
【0030】
ハロゲンヒータによる加熱の際、近赤外線の照射量を調整する方法としては、ハロゲンヒータのスイッチのオン/オフ、電流値や電圧値の調整のほか、ハロゲンヒータからの近赤外線の出口である近赤外線照射域に、開閉可能なシャッターなどの近赤外線遮断機構を設置し、その開閉によって調整する方法を挙げることができる。近赤外線遮断機構による方法は、開閉程度を瞬時に調節でき、近赤外線照射量を微調整できる長所を有する。
【0031】
また、本発明においては、塗膜の乾燥を近赤外線照射のみによって行っても良いが、熱風による加熱を併用しても良い。
【0032】
例えば、塗膜を施したプラスチックレンズを近赤外線照射によって予め加熱した後、熱風乾燥方式によって乾燥させる方法が挙げられる。この方法においては、まず近赤外線照射によってプラスチックレンズを短時間で乾燥に必要な温度まで加熱し、次いで熱風乾燥炉にて設定された保持温度で加熱乾燥することで、乾燥時の保持温度までプラスチックレンズを昇温するのに要する時間が少なくて済み、乾燥工程の短時間化及び乾燥炉長の短縮化が可能になる。
【0033】
また、熱風による加熱によって一定の温度に保持した雰囲気下にて、塗膜を施したプラスチックレンズに近赤外線を照射する方法も挙げられる。この方法によれば、近赤外線照射区域内の雰囲気温度を熱風によって一定に保持することで、塗膜の乾燥雰囲気温度を一定に保持することができる。つまり、近赤外線照射によって加熱を行っていくと、調節を行わない限り照射の進行とともに加熱されたプラスチックレンズからの熱放射によって、近赤外線照射区域内の雰囲気温度が上昇していく。照射初期の雰囲気温度が低い状態と雰囲気温度が上昇後の高い状態とで近赤外線によるプラスチックレンズの温度上昇を比較すると、雰囲気温度が上昇後の高い状態の方が、早く温度が上昇する。すなわち、雰囲気温度の差によって塗膜の乾燥温度に差が生じ、品質にばらつきが発生する原因となる。また、熱風による加熱によって、近赤外線照射開始時にも雰囲気温度は乾燥に必要な温度付近に保持されているので、少なくとも近赤外線照射開始初期における塗膜の乾燥を早めることができる。保持する上記一定の雰囲気温度は、塗膜の乾燥に必要な保持温度に近い温度とすることが好適である。雰囲気温度の管理は、熱風の導入、加熱していない空気の導入などによって行うことができる。
【0034】
さらに、熱風による加熱によって一定の温度に保持した雰囲気下にて、塗膜を施したプラスチックレンズに近赤外線を照射した後、さらに熱風乾燥炉にて乾燥させる方法も挙げられる。この方法は、上記2つの方法を兼ね備えたものであり、乾燥工程の短時間化及び乾燥炉長の短縮化と、雰囲気温度の安定化が可能になる。
【0035】
以下、本発明の実施例をプラスチックレンズを例に、図面に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0036】
図1は、本発明によるプラスチックレンズの塗膜乾燥装置の一例を示す図である。図1において、プラスチックレンズ1は、固定部材2によって固定されており、5本並列に並んだ2kW、発熱長300mmのハロゲンヒータ3より近赤外線が照射される構造になっている。照射距離は、プラスチックレンズ1の照射面最外周部とハロゲンヒータ3の最短距離であり、200mm以下が望ましい。さらに効率を考慮すると、150mm以下が望ましい。
【0037】
[実施例1]
図2に示すように、熱伝対を101〜105の5箇所に貼り付けた外径75mm、中心厚み6mm、外周部厚み1mmのチオウレタン系プラスチックレンズ1に、図1に示すような装置を用いて、出力150V、距離120mmに設定したハロゲンヒータ3より近赤外線を33秒間照射し、プラスチックレンズ1の表面の温度を測定した。図3のグラフに示すように、最も高温部分は124℃、最も低温部分は114℃であり、プラスチックレンズ1の表面温度のばらつきを10℃以内に収めることが可能であった。
【0038】
[実施例2]
アセトンで洗浄したチオウレタン系プラスチックレンズ1に、ポリウレタン系プライマー用組成物を膜厚が約1μmとなるように塗布した。続いて、図1に示すような装置を用いて出力150V、距離120mmに設定したハロゲンヒータ3より近赤外線を照射し、80℃で7分間維持した。得られたプライマーレンズは、十分に乾燥・硬化しており、また、塗りむらが無く良好な外観であった 。
【0039】
[比較例1]
アセトンで洗浄したチオウレタン系プラスチックレンズ1に、ポリウレタン系プライマー用組成物を膜厚が約1μmとなるように塗布した。続いて、熱風乾燥炉を用いて、80℃で20分間加熱した。このようにして作られたプライマーレンズは、十分に乾燥・硬化しており、また、塗りむらが無く良好な外観であったが、近赤外線を照射した場合より約3倍の加熱時間を要した。
【0040】
[実施例3]
アセトンで洗浄したチオウレタン系プラスチックレンズ1に、シリコーン系ハードコート液を膜厚が約2μmとなるように塗布した。続いて、図1に示すような装置を用いて出力150V、距離120mmに設定したハロゲンヒータ3より近赤外線を照射し、120℃で20分間維持した。このようにして作られたハードコートレンズは、十分に乾燥・硬化しており、また、塗りむらが無く良好な外観であった。
【0041】
[比較例2]
アセトンで洗浄したチオウレタン系のプラスチックレンズ1に、シリコーン系ハードコート液を膜厚が約2μmとなるように塗布した。続いて、熱風乾燥炉を用いて、120℃で60分間加熱した。このようにして作られたハードコートレンズは、十分に乾燥・硬化しており、また、塗りむらが無く良好な外観であったが、近赤外線を照射した場合より3倍の加熱時間を要した。
【0042】
1)反射防止膜の形成
実施例3及び比較例2で得られたハードコートレンズにプラズマ処理(アルゴンプラズマ400w×60秒)した後、基板から大気に向かって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層からなる反射防止多層膜を、真空蒸着法(真空器械工業(株)製;CES−34)にて形成した。各層の光学的膜厚は、最初のSiO2層、次のZrO2層とSiO2の等価膜層、及び次のZrO2層、最上層のSiO2層が、それぞれλ/4となるように形成した。なお、設計波長は520nmとした。
【0043】
得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光透過率は98%だった。
【0044】
2)耐久性能試験
1)で反射防止膜を形成したハードコートレンズに対し、耐久性能試験を実施した。
【0045】
(a)耐磨耗性:ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの荷重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷ついた程度を、目視で10段階に分けて評価した。
10:1cm×3cmの範囲に全く傷がつかない
1:表面についた傷のため、平滑な表面が残っていない
評価の結果は、10だった。
【0046】
(b)密着性:基材とハードコート膜及びハードコート膜と反射防止膜との密着性は、JIS K 5600に準じてクロスカットテープ試験によって行った。すなわち、ナイフを用いて基材表面に1mm間隔に切れ目を入れ、1mm2のマス目を100個形成する。次に、その上へセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製:商品名「セロテープ(登録商標)」)を強く押し付けた後、表面から90度方向へすばやく引っ張り、剥離した後、コート被膜に残っているマス目をもって、密着性指標とした。
【0047】
評価の結果は、100個のマス目のいずれにおいても、全くハガレが生じなかった。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、品質を損うことなく、短時間で均一にプラスチックレンズ基材表面の塗膜乾燥を行うことが可能であり、かつ、よりコンパクトな塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるプラスチックレンズの塗膜乾燥装置の一例を示す概略図
【図2】プラスチックレンズ基材上の熱伝対の貼り付け位置
【図3】実施例1におけるプラスチックレンズ1の表面温度の変化を示すグラフ
【符号の説明】
1 プラスチックレンズ
2 固定部材
3 ハロゲンヒータ
101〜105 熱伝対貼り付け位置
Claims (5)
- 処理液体をプラスチックレンズ表面に塗布して塗膜を形成後、前記塗膜を乾燥する塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に近赤外線を照射することを特徴とする塗膜の乾燥方法。
- 請求項1に記載の塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に前記近赤外線を照射する方式と、前記塗膜に熱風を吹き付ける方式とを併用することを特徴とする塗膜の乾燥方法。
- 請求項2に記載の塗膜の乾燥方法において、前記塗膜に前記近赤外線を照射した後、前記塗膜に前記熱風を吹き付けることを特徴とする塗膜の乾燥方法。
- 塗膜を施したプラスチックレンズを保持する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズを搬送する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズの表面に近赤外線を照射する手段と、前記塗膜を施したプラスチックレンズの表面に熱風を吹き付ける手段とを具備することを特徴とする塗膜の乾燥装置。
- プラスチックレンズを成形する工程と、前記プラスチックレンズに塗膜を施す工程と、塗膜を施した前記プラスチックレンズの表面に近赤外線を照射する工程と、下記(a)〜(e)の少なくとも一つ以上の工程とからなることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
(a)染色を施す工程
(b)洗浄する工程
(c)塗膜に熱風を吹き付ける工程
(d)反射防止膜を施す工程
(e)撥水処理を施す工程
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JP2002197807A JP2004038039A (ja) | 2002-07-05 | 2002-07-05 | 塗膜の乾燥方法、塗膜の乾燥装置、及びプラスチックレンズの製造方法 |
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
US20200190355A1 (en) * | 2018-12-17 | 2020-06-18 | Leica Camera Ag | Use of a lacquer system for coating a lens, method of coating an edge of a lens, and lens |
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2002
- 2002-07-05 JP JP2002197807A patent/JP2004038039A/ja not_active Withdrawn
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