JP2004036653A - 車両用自動変速機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】補助油圧供給装置として機能する電気式油圧ポンプユニット112は、変速制御のための油圧制御回路66の少なくとも一部が内部に設けられたバルブボデー106に設けられていることから、部品点数および組み立て工数が少なくなるので、車両用自動変速機が低コストとなる。また、切換弁98により、第1吸入管LIN1と電気式油圧ポンプ78との間に設けられた第2吸入管LIN2が機械式油圧ポンプ70の作動状態に応じて開閉されることので、電気式油圧ポンプ78を大型化することなく、高いエネルギ効率が得られるとともに低コストとなる。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンによって回転駆動される機械式油圧ポンプの他に、電気的に駆動される電動式油圧ポンプを備えた車両用自動変速機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用自動変速機の一種に、エンジンによって回転駆動される機械式油圧ポンプの他に、電気的に駆動される電動式油圧ポンプを備えたものがある。これによれば、エンジンの低回転時或いはエンジン停止時などにおいて機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足すると、電動式油圧ポンプから作動油圧が補充されるので、エンジンと共に駆動される機械式油圧ポンプを可及的に小型、小容量のものとすることができるので、十分な容量の機械式油圧ポンプを単独で設ける形式の自動変速機に比較して、エンジンの回転速度上昇と共に発生する不要な駆動機械的損失が低減され、燃費が向上させられる。たとえば特開平10−324177号公報に記載された車両用自動変速機がそれである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来の車両用自動変速機では、変速制御回路を構成するバルブボデーとは別に電動式油圧ポンプがたとえば外付けで独立して設けられることから、部品点数が多くなるとともに組付け工数が多くなって高コストとなる不都合があった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、低コストの車両用自動変速機を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための第1の手段】
かかる目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a) 変速制御のための油圧制御回路の少なくとも一部が内部に設けられたバルブボデーと、(b) 前記油圧制御回路へ作動油を供給するためにエンジンにより駆動される機械式油圧ポンプと、(c) その機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足する場合に前記油圧制御回路へ作動油を補給する補助油圧供給装置と備えた車両用自動変速機であって、(d) 前記補助油圧供給装置が前記バルブボデーに設けられていることにある。
【0006】
【第1発明の効果】
このようにすれば、前記補助油圧供給装置が変速制御のための油圧制御回路の少なくとも一部が内部に設けられたバルブボデーに設けられていることから、部品点数および組み立て工数が少なくなるので、車両用自動変速機が低コストとなる。
【0007】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明の要旨とするところは、(a) 変速制御のための油圧制御回路の少なくとも一部が内部に設けられたバルブボデーと、(b) 前記油圧制御回路へ作動油を供給するためにエンジンにより駆動される機械式油圧ポンプと、(c) その機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足する場合に前記油圧制御回路へ作動油を補給する補助油圧供給装置と備えた車両用自動変速機であって、(d) 前記補助油圧供給装置の吐出油路と前記油圧制御回路との間に設けられ、前記機械式油圧ポンプの作動状態に応じて開閉される開閉弁を、含むことにある。
【0008】
【第2発明の効果】
このようにすれば、開閉弁により、前記補助油圧供給装置の吐出油路と前記油圧制御回路との間が、機械式油圧ポンプの作動状態に応じて開閉されることから、機械式油圧ポンプからの作動油圧の低下時に補助油圧供給装置からの作動油が供給されるので、電動オイルポンプを大型化する必要がなく、高いエネルギ効率が得られるとともに低コストとなる。
【0009】
【第1発明および第2発明の他の態様】
ここで、好適には、前記開閉弁は、前記機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足するときに開かれて、前記補助油圧供給装置からの作動油が補充されるようにするものである。このようにすれば、前記機械式油圧ポンプの作動状態に応じて開閉されることから、機械式油圧ポンプからの作動油圧の低下時に補助油圧供給装置からの作動油が供給される。
【0010】
また、好適には、上記開閉弁は、前記機械式油圧ポンプから出力される作動油圧の低下に基づいて前記補助油圧供給装置の吐出油路と前記油圧制御回路との間を開く位置に作動させられるスプール弁子を備えた切換弁である。或いは、上記開閉弁は、前記機械式油圧ポンプから出力される作動油圧の低下に基づいて前記補助油圧供給装置の吐出油路と前記油圧制御回路との間を開く球状弁子を備えたチェック弁である。機械式油圧ポンプから出力される作動油圧、或いは開閉弁の圧力差に応じて開閉されるので、電気的開閉制御が不要となる。
【0011】
また、好適には、前記補助油圧供給装置は、電気的に駆動される電動式油圧ポンプを有するものである。また、好適には、この電動式油圧ポンプと前記開閉弁とは、前記バルブボデーの一部を構成して着脱可能に装着される部分ボデー部材に設けられ、その部分ボデー部材と共にユニット型電動式油圧供給装置を構成するものである。このようにすれば、一層構造が簡単となることから、部品点数および組み立て工数が少なくなるので、車両用自動変速機が低コストとなる。
【0012】
また、好適には、前記ユニット型電動式油圧供給装置は、前記バルブボデーの後端部に装着されるものである。このようにすれば、設計変更をそれほど要せず、従来の油圧制御回路の仕様がそのまま活用できる利点がある。
【0013】
また、好適には、前記補助油圧供給装置は、作動油圧を蓄えるアキュムレータを有し、前記機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足するときに該アキュムレータ内の作動油を出力するものである。このようにすれば、電動式油圧ポンプが不要となるので、油圧制御回路の構成が一層簡単となり、低コストとなる。
【0014】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例の制御装置が適用された車両用動力伝達装置の構成を説明する図であり、図2はそれに含まれる自動変速機14の構成を説明する骨子図である。図1および図2において、動力源としてのエンジン10の出力は、クラッチ12、トルクコンバータ14を有する自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。上記クラッチ12とトルクコンバータ14との間には、電動モータおよび発電機として機能する第1モータジェネレータMG1が配設されている。上記トルクコンバータ14は、クラッチ12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、それらポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えている。
【0016】
上記自動変速機16は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機32と、後進変速段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機34とを備えている。第1変速機32は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリアK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置36と、サンギヤS0とキャリアK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング38間に設けられたブレーキB0とを備えている。
【0017】
第2変速機34は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリアK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置40と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリアK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置42と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置44とを備えている。
【0018】
上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリアK2とキャリアK3とが一体的に連結され、そのキャリアK3は出力軸46に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3および中間軸48に一体的に連結されている。そして、リングギヤR0と中間軸48との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2とリングギヤR0との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング38に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング38との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸22と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0019】
キャリアK1とハウジング38との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング38との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0020】
以上のように構成された自動変速機16では、例えば図3に示す作動表に従って後進1段および変速比が順次異なる前進5段の変速段のいずれかに切り換えられる。図3において「○」は係合状態を表し、空欄は解放状態を表し、「◎」はエンジンブレーキのときの係合状態を表し、「△」は動力伝達に関与しない係合を表している。この図3から明らかなように、第2変速段(2nd)から第3変速段(3rd)へのアップシフトでは、ブレーキB3を解放すると同時にブレーキB2を係合させるクラッチツークラッチ変速が行われ、ブレーキB3の解放過程で係合トルクを持たせる期間とブレーキB2の係合過程で係合トルクを持たせる期間とがオーバラップして設けられる。それ以外の変速は、1つのクラッチまたはブレーキの係合或いは解放作動だけで行われるようになっている。上記クラッチおよびブレーキは何れも油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0021】
前記エンジン10は、必要に応じて過給機を備える内燃機関であり、たとえば燃料消費を減少させるために、燃料が筒内噴射されることにより軽負荷時においては空燃比A/Fが理論空燃比よりも高い燃焼である希薄燃焼が行われるリーンバーンエンジンが用いられる。また、このエンジン10は、必要に応じて、たとえば3気筒ずつから構成される左右1対のバンクは単独で或いは同時に作動させられて、作動気筒数の変更が可能とされたり、或いは必要に応じて運転サイクル数が変更されたりする。
【0022】
また、図1に示すように、前記第1モータジェネレータMG1はエンジン10と自動変速機16との間に配置され、クラッチ12はエンジン10と第1モータジェネレータMG1との間に配置されている。上記自動変速機16の各油圧式摩擦係合装置およびロックアップクラッチ26は、主として機械式油圧ポンプ70から発生する油圧を元圧とする油圧制御回路66により制御されるようになっている。また、エンジン10には第2モータジェネレータMG2が作動的に連結されている。そして、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2の電源として機能する図示しない燃料電池および二次電池と、それらから第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2へ供給される電流を制御したり或いは充電のために二次電池へ供給される電流を制御するための切換スイッチとが設けられている。この切換スイッチは、スイッチ機能を有する装置を示すものであって、たとえばインバータ機能などを有する半導体スイッチング素子などから構成され得るものである。
【0023】
図4は、上記油圧制御回路66の要部を説明する図である。この図4において、エンジン10に機械的に連結されてそれにより直接回転駆動される機械式油圧ポンプ70は、共用のストレーナ72を有する第1吸入管LIN1 を介して、オイルタンクとして機能するオイルパン74内に還流した作動油を吸入してライン油路L1へ圧送する。また、電動モータ76に連結されてそれにより回転駆動される電気式油圧ポンプ78は、上記第1吸入管LIN1 から分岐する第2吸入管LIN2 を介して、オイルパン74内に還流した作動油を吸入してライン油路L1へ圧送する。上記第1吸入管LIN1 と第2吸入管LIN2 との間には、流通許可方向が第1吸入管LIN1 へ向かう方向であり且つ流通阻止方向が第2吸入管LIN2 へ向かう方向である一方向弁すなわちチェック弁79が設けられている。上記ライン油路L1内のライン油圧PL1は、ライン圧制御用電磁弁MVL1からの油圧信号に従って調圧するライン圧調圧弁80により、入力トルクTINに応じた大きさに調圧される。たとえば、このライン油圧PL1は、第1クラッチC1、第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合装置の油圧源であるので、その油圧式摩擦係合装置の滑りが発生しない範囲で可及的に低い圧に調圧される。上記ライン油圧PL1は、第1クラッチC1、第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合装置の元圧として用いるためにマニアル弁82へ供給される。このマニアル弁82よりも油圧式摩擦係合装置側が変速制御回路の主要部を構成している。
【0024】
上記マニアル弁82は、シフトレバー83に機械的に連結されることによりその操作位置たとえばP位置、R位置、N位置、D位置、S位置、L位置に連動して切換位置が変化させられるものであり、その切換位置に対応するポートからライン油圧PL1が出力される。シフトレバー83が前進走行ポジション(レンジ)すなわちD位置、S位置、L位置へ操作されている場合は、第1クラッチC1および第2クラッチC2などへ向かってライン油圧PL1が出力される。前進走行中には、第4速および第5速時に第2クラッチC2にライン油圧PL1が供給されるように、第2クラッチC2は図示しないシフト弁を介してマニアル弁82に連結されている。また、第1クラッチC1とマニアル弁82との間には、エンジン10の停止状態からの自動復帰に際してより速やかに発進を行うための油路が設けられている。すなわち、ファーストアプライ(速やかな供給)時には、第1クラッチC1には大オリフィス84と電磁弁86により開閉制御される切換弁88を経由してライン油圧PL1がマニアル弁82から供給されるが、非ファーストアプライ(通常の供給)時には、第1クラッチC1には大オリフィス84と小オリフィス90とを経由してライン油圧PL1がマニアル弁82から供給される。上記小オリフィス90と並列に設けられたチェック弁92は、第1クラッチC1にライン油圧PL1が供給されるときは閉じられるが、第1クラッチC1から作動油が排出されるときには開かれることにより、第1クラッチC1が速やかに解放される。上記第1クラッチC1に接続されたC1アキュムレータ94およびその接続路に設けられたオリフィス96は、通常のN→Dシフト時において第1クラッチC1を滑らかに係合させるためのものである。発進を一層早くするために、上記切換弁88を解放させたファーストアプライ以外に、ライン圧調圧弁80により調圧されるライン油圧PL1が高くなるようにライン圧制御用電磁弁MVL1を制御してもよい。図10のt1 乃至t2 区間は、上記ファーストアプライ区間を示している。
【0025】
本油圧制御回路66では、ライン油圧PL1が不足する場合、たとえばエンジン10の始動復帰時またはエンジン10の停止中においてライン油圧PL1が所定値よりも低くなった場合や、機械式油圧ポンプ70の出力圧(ライン油圧PL1)が電気式油圧ポンプ78の出力圧よりも低くなった場合には、機械式油圧ポンプ70と並列に設けられた電気式油圧ポンプ78からライン油路L1へ作動油が供給されるようになっている。すなわち、単一の切換弁98は、ライン油圧PL1に基づく閉弁方向の推力とスプリング104の付勢力に基づく開弁方向の推力との推力差に基づいて移動させられる図示しない弁子を備え、スプリング104の付勢力よりも上記ライン油圧PL1に基づく推力が高い場合には、第2吸入管LIN2 と電気式油圧ポンプ78の吸入ポート100との間、およびライン油路L1と電気式油圧ポンプ78の吐出ポート102との間をそれぞれ遮断するが、スプリング104の付勢力が上記ライン油圧PL1に基づく推力よりも高くなると、第2吸入管LIN2 と電気式油圧ポンプ78の吸入ポート100との間、およびライン油路L1と電気式油圧ポンプ78の吐出ポート102との間をそれぞれ開いて、電気式油圧ポンプ78から吐出された作動油がライン油路L1へ供給されるようにする。すなわち、機械式油圧ポンプ70の吐出ポートに接続されたライン油路L1は切換弁98を介して電気式油圧ポンプ78の吐出ポート102にも接続されており、ライン油圧PL1の不足時には、その切換弁98が開かれることにより、電気式油圧ポンプ78から出力される作動油圧がライン油圧PL1へ供給されるようになっている。すなわち、切換弁98は電気式油圧ポンプ78の吐出ポート102とライン油路L1或いは変速用油圧制御回路66の主要部との間の油路に設けられている。図4は、切換弁98が閉じられた状態、すなわち電気式油圧ポンプ78が作動油をライン油路L1へ供給していない状態を示している。
【0026】
図5に示すように、前記自動変速機16の下部に固定されたオイルパン74内の油密な空間内において、上記油圧制御回路66を形成するバルブボデー106が自動変速機16に固定されている。このバルブボデー106は、自動変速機16に固定された厚圧板状のアッパーボデー108と、そのアッパーボデー108の下面に密着状態で固定された厚圧板状のローワボデー110と、そのローワボデー110に隣接してアッパーボデー108の下面に密着状態で固定された電気式油圧ポンプユニット112とから構成され、前記ライン圧調圧弁80、マニアル弁82、切換弁88の弁子を摺動可能に収納するボアや、前記ライン油路L1をはじめとしてそれらの弁を接続する油路を構成する溝を備えている。
【0027】
図6の平面図および図7の斜視図にも示すように、上記電気式油圧ポンプユニット112は、上記ローワボデー110と同様の厚圧板状の本体114とその本体114の側面に固定された電動モータ76とを備えてモジュール化されることにより補助油圧供給装置を構成しており、その本体114の内部には、図4の1点鎖線で囲まれた油圧回路、すなわち、電動モータ76により回転駆動される電気式油圧ポンプ78、チェック弁79、切換弁98、それらを接続する油路などが設けられている。この電気式油圧ポンプユニット112は、バルブボデー106の後端部に位置するように、アッパーボデー108の車両後方側に図示しないボルトを用いて着脱可能に固定されている。
【0028】
図8は、電子制御装置116に入力される信号およびその電子制御装置116から出力される信号を例示している。たとえば、電子制御装置116には、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度θACC を表すアクセル開度信号、スロットル弁62の開度θTHを表すスロットル開度信号、自動変速機16の出力軸46の回転速度NOUT すなわち車速Vに対応する車速信号、エンジン回転速度NE を表す信号、タービン回転速度NT を表す信号、空燃比A/Fを表す信号、シフトレバーの操作位置SH を表す信号、変速機16の作動油温度すなわちAT油温TOIL などが図示しないセンサから供給されている。また、電子制御装置116からは、アクセル開度θACC に応じた大きさのスロットル開度θTHとするためのスロットルアクチュエータ60を駆動する信号、燃料噴射弁からエンジン10の気筒内へ噴射される燃料の量を制御するための噴射信号、自動変速機16のギヤ段を切り換えるために油圧制御回路66内のシフト弁を駆動するシフトソレノイドを制御する信号S1、S2、S3、ロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量、ブレーキB3の直接制御、およびクラッチツウクラッチ変速を制御するリニヤソレノイド弁SLU を駆動するための指令信号DSLU 、スロットル弁の開度θTHに対応した大きさのスロットル圧PTHを発生させるリニヤソレノイド弁SLT を駆動するための指令信号DSLT 、アキュム背圧を制御するためのリニヤソレノイド弁SLN を駆動する指令値信号DSLN 、電動モータ76の駆動信号などをそれぞれ出力させる。
【0029】
上記電子制御装置116は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、自動変速機16のギヤ段を自動的に切り換える変速制御、ロックアップクラッチ26の係合、解放、或いはスリップを実行する制御、空燃比制御、ライン油圧PL1の不足を補うための電気式油圧ポンプ78の作動を制御する油圧ポンプ制御、制動停止時にはエンジン10を自動停止させるとともに前進走行レンジに拘わらず第1(前進)クラッチC1を解放して自動変速機16をニュートラル状態とし、再発進に際してブレーキペダル解放操作によりエンジン10の作動を復帰させるとともに第1クラッチC1を係合させるエコラン制御、ファーストアプライ制御などを実行する。
【0030】
図9は、上記電子制御装置116の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。エコラン制御手段118は、車両の燃費を良くするために、車両の制動停止時においてエンジン10を自動停止させ且つシフトレバー83が前進走行ポジションへ操作されているにも拘わらず第1(前進)クラッチC1を解放することにより自動変速機16をニュートラル状態とする一方で、車両の再発進時においてブレーキペダルの解放操作が行われると、たとえば図10に示すように、エンジン10を再始動させその作動を復帰させ、且つ第1クラッチC1を係合させて再発進を行わせる。すなわち、ブレーキペダルの解放操作に関連してエンジン復帰指令が出力されると、エンジン回転速度NE が上昇し、それに伴ってエンジン10に連結された機械式油圧ポンプ70の回転速度が上昇してそれから出力される油圧が上昇する。エンジン回転速度NE はアイドル回転速度よりも所定値高く設定された目標値NETGTに向かって上昇してその目標値NETGTに維持されると同時に、前進動力伝達経路を成立させるための第1クラッチC1の係合圧PC1が上昇させられる。
【0031】
ファーストアプライ制御手段120は、上記車両の再発進のための操作に関連してエンジン回転速度NE が所定値NE1を超えると、図10のt1 乃至t2 に示すファーストアプライ区間において、電磁弁86により切換弁88を解放させ、第1クラッチC1を速やかに係合させる。油圧ポンプ制御手段122は、上記車両の再発進のための操作、たとえばブレーキペダルの解放操作が行われると、図10のt1 乃至t4 に示す油圧補充区間において、電動モータ76により電気式油圧ポンプ78を作動させ、電気式油圧ポンプ78から出力される作動油を切換弁98を介して第1ライン油路L1へ供給し、機械式油圧ポンプ70の出力を補完する。
【0032】
図11は、エコラン制御手段118によりエンジン10の作動が停止させられている区間においても、エンジン10の再始動時において第1クラッチC1の係合が遅れないように電気式油圧ポンプ78が継続的に作動させられてライン油圧PL1が所定値に維持される場合を示している。この場合において、油圧ポンプ制御手段122は、t1 時点においてエンジン10の作動停止指令が出されてエンジン回転速度NE が所定値以下となると、電動モータ76により電気式油圧ポンプ78を作動させ(t2 時点)、電気式油圧ポンプ78から出力される作動油を切換弁98を介して第1ライン油路L1へ供給させることにより、機械式油圧ポンプ70が停止させられている間においてもライン油圧PL1を所定の待機圧に維持させる。次いで、t3 時点においてエコラン制御手段118によりエンジン10の再始動指令が行われると同時に、電動モータ76により電気式油圧ポンプ78の出力圧を上昇させ、第1クラッチC1の係合油圧上昇の応答性を向上させる。そして、第1クラッチC1の係合油圧PC1の上昇が完了すると、t4 時点において電動モータ76による電気式油圧ポンプ78の駆動を停止させる。
【0033】
上述のように、本実施例によれば、補助油圧供給装置として機能する電気式油圧ポンプユニット112は、変速制御のための油圧制御回路66の少なくとも一部が内部に設けられたバルブボデー106に設けられていることから、部品点数および組み立て工数が少なくなるので、車両用自動変速機が低コストとなる。
【0034】
また、本実施例によれば、開閉弁として機能する切換弁98により、第1吸入管LIN1 と電気式油圧ポンプユニット112すなわち電気式油圧ポンプ78との間に設けられた第2吸入管LIN2 が、上記電気式油圧ポンプユニット112からの作動油を油圧制御回路66へ補給するために機械式油圧ポンプ70の作動状態に応じて開閉されることから、その機械式油圧ポンプ70からの作動油圧の低下時に電気式油圧ポンプユニット112からの作動油が供給されるので、電気式油圧ポンプ78を大型化する必要がなく、高いエネルギ効率が得られるとともに低コストとなる。
【0035】
また、本実施例によれば、開閉弁として機能する切換弁98は、機械式油圧ポンプ70から出力される作動油圧が不足するときに開かれて、電気式油圧ポンプユニット112からの作動油が補充されるようにするものであることから、機械式油圧ポンプ70の作動状態に応じて開閉されるので、機械式油圧ポンプ70からの作動油圧の低下時に電気式油圧ポンプユニット112からの作動油が供給される。
【0036】
また、本実施例によれば、上記切換弁98は、機械式油圧ポンプ70から出力される作動油圧の低下に基づいて第2吸入管LIN2 を開き電気式油圧ポンプ78を通してライン油路L1に接続する位置に作動させられるスプール弁子を備えた切換弁であるので、電気的開閉制御が不要となる。
【0037】
また、本実施例によれば、電気式油圧ポンプユニット(補助油圧供給装置)112は、電動モータ76により電気的に駆動される電気式油圧ポンプ78を有するものであり、その電気式油圧ポンプ78と切換弁(開閉弁)98とは、バルブボデー106の一部である部分ボデー部材を構成して着脱可能に装着される本体114に設けられ、その本体114と共にユニット型電動式油圧供給装置を構成するものであることから、一層構造が簡単となるとともに部品点数および組み立て工数が少なくなるので、車両用自動変速機16が低コストとなる。
【0038】
また、本実施例によれば、上記ユニット型電動式油圧供給装置を構成する電気式油圧ポンプユニット112は、バルブボデー106の後端部に装着されるものであるので、設計変更をそれほど要せず、従来の油圧制御回路66の仕様がそのまま活用できる利点がある。
【0039】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において、前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図12、図13、図14は、前記油圧制御回路66のうちの補助油圧供給装置として機能する部分の他の例をそれぞれ示している。図12の補助油圧供給装置130は、電磁開閉弁132と、その電磁開閉弁132を介してライン油路L1に接続されたアキュムレータ134とを備えたものである。本実施例では、ライン油圧PL1が十分に高い状態において電磁開閉弁132が一旦開かれることによりアキュムレータ134内に畜圧させられた後にその電磁開閉弁132が閉じられる。その後、図10のt1 乃至t4 区間、或いは図11のt2 乃至t4 区間においてその電磁開閉弁132が開かれることにより、ライン油圧PL1が不足する状態となると、アキュムレータ134内に貯えられた作動油がライン油路L1へ供給されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、本実施例の補助油圧供給装置130は、作動油圧を蓄えるアキュムレータ134を有し、機械式油圧ポンプ70から出力される作動油圧が不足するときにそのアキュムレータ134内の作動油が出力されるので、電動式油圧ポンプ78が不要となり、油圧制御回路66の構成が一層簡単となり、低コストとなる。
【0041】
図13において、補助油圧供給装置として機能する電気式油圧ポンプユニット140は、前述の図4の電気式油圧ポンプユニット112に比較して、切換弁(開閉弁)98に替えて一方向弁142が設けられている点において相違し、他は同様に構成されている。電気式油圧ポンプ78の吸入ポート100は第2吸入管LIN2 に直接接続され、電気式油圧ポンプ78の吐出ポート102は上記一方向弁142を介してライン油路L1に接続されている。この一方向弁142は、その流通阻止方向が電気式油圧ポンプ78に向かう方向であり且つその流通許容方向がライン油路L1に向かう方向となるように配設されている。本実施例によれば、ライン油圧PL1が不足する状態となると、たとえば図10のt1 乃至t4 区間、或いは図11のt2 乃至t4 区間において電気式油圧ポンプ78が電動モータ76によって回転駆動されることにより、電気式油圧ポンプ78からの作動油がライン油路L1へ供給されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、本実施例では、開閉弁として機能する一方向弁142は、機械式油圧ポンプ70から出力される作動油圧の低下に基づいて第2吸入管LIN2 から電気式油圧ポンプ78を経てライン油路L1への通路を開く球状弁子144を備えたチェック弁であって、機械式油圧ポンプ70から出力される作動油圧の低下、或いは一方向弁142の圧力差に応じて開閉されるので、電気的開閉制御が不要となる。
【0042】
図14の実施例では、第1吸入管LIN1 と第2吸入管LIN2 とが、ストレーナ72から機械式油圧ポンプ70までの間と、共用のストレーナ72から電気式油圧ポンプ78との間において、並列に設けられているとともに、補助油圧供給装置として機能する電気式油圧ポンプユニット150は、チェック弁79を備えていない点において、上記図13の実施例の電気式油圧ポンプユニット140に比較して相違する。本実施例においても、図13の実施例と同様の効果が得られる。
【0043】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0044】
たとえば、前述の各実施例において、電気式油圧ポンプ78は、電動モータ76により回転駆動されるものであったが、電磁アクチュエータにより往復駆動される形式のものであってもよい。
【0045】
また、上記自動変速機16に替えて、手動操作に応答して油圧アクチュエータにより変速段が切り換えられる変速機、有効径が可変な一対の可変プーリに伝動ベルトが巻き掛けられたベルト式無段変速機、或いは一対のコーン(回転体)間に回転軸心が回動させられるローラが介在させられたトラクション式の無段変速機などが設けられていても差し支えない。
【0046】
また、前述の実施例のエンジン10は、ディーゼル燃料で作動させられるエンジンや、2サイクルと4サイクルとの間に切換られるものであってもよいし、吸気管に排気タービン式過給機が設けられていてもよい。
【0047】
また、前述の実施例において、ストレーナ72は機械式油圧ポンプ70および電気式油圧ポンプ78により共用されていたが、各々独立に別の位置或いは別のタンク内に設けられていてもよい。
【0048】
また、前述の実施例において、電気式油圧ポンプユニット112、140、150や補助油圧供給装置130は、マニアル弁82の上流側すなわちライン圧調圧弁80側に接続されていたが、マニアル弁82の下流側すなわち第1クラッチC1側に設けられていてもよい。
【0049】
また、前述の実施例において、電磁弁86により切換弁88が解放される図10のt1 乃至t2 に示すファーストアプライ区間において、ライン油圧PL1が所定値上昇させられるように制御されてもよい。また、そのファーストアプライ区間の開始判断は、エンジン回転速度NE が所定値NE1を上まわったことに基づいて実行されていたが、そのエンジン回転速度NE に替えて機械式油圧ポンプ70の回転速度を直接或いは間接的に検出して用いられてもよい。
【0050】
その他、一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の自動変速機を含む車両用駆動装置の構成を説明する図である。
【図2】図1の実施例の車両用自動変速機の構成を説明する骨子図である。
【図3】図1および図2の自動変速機における、複数の油圧式摩擦係合装置の作動の組合わせとそれにより成立するギヤ段との関係を示す図表である。
【図4】図1の自動変速機に設けられた油圧制御回路の要部を説明する図である。
【図5】図4の油圧制御回路が内部に設けられたバルブボデーを説明する図である。
【図6】図4の油圧制御回路に含まれる電気式油圧ポンプユニットを示す平面図である。
【図7】図4の油圧制御回路に含まれる電気式油圧ポンプユニットを示す斜視図である。
【図8】図1の自動変速機などを制御するための電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図9】図8の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図10】車両発進時における図8の電子制御装置の制御作動を説明するタイムチャートである。
【図11】図8の電子制御装置の他の制御作動例を説明するタイムチャートである。
【図12】本発明の他の実施例における補助油圧供給装置の構成を説明する図である。
【図13】本発明の他の実施例における電気式油圧ポンプユニットの構成を説明する図である。
【図14】本発明の他の実施例における電気式油圧ポンプユニットの構成を説明する図である。
【符号の説明】
10:エンジン
16:自動変速機
66:油圧制御回路
70:機械式油圧ポンプ
76:電動モータ
78:電気式油圧ポンプ
98:切換弁(開閉弁)
102:吐出ポート(吐出油路)
106:バルブボデー
112、140、150:電気式油圧ポンプユニット(補助油圧供給装置、ユニット型電動式油圧供給装置)
114:本体(部分ボデー部材)
130:補助油圧供給装置
134:アキュムレータ
142:一方向弁(開閉弁)
Claims (10)
- 変速制御のための油圧制御回路の少なくとも一部が内部に設けられたバルブボデーと、前記油圧制御回路へ作動油を供給するためにエンジンにより駆動される機械式油圧ポンプと、該機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足する場合に前記油圧制御回路へ作動油を補給する補助油圧供給装置と備えた車両用自動変速機であって、
前記補助油圧供給装置が前記バルブボデーに設けられていることを特徴とする車両用自動変速機。 - 変速制御のための油圧制御回路の少なくとも一部が内部に設けられたバルブボデーと、前記油圧制御回路へ作動油を供給するためにエンジンにより駆動される機械式油圧ポンプと、該機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足する場合に前記油圧制御回路へ作動油を補給する補助油圧供給装置と備えた車両用自動変速機であって、
前記補助油圧供給装置の吐出油路と前記油圧制御回路との間に設けられ、前記機械式油圧ポンプの作動状態に応じて開閉される開閉弁と
を、含むことを特徴とする車両用自動変速機。 - 前記開閉弁は、前記機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足するときに開かれて、前記補助油圧供給装置からの作動油が補充されるようにするものである請求項2の車両用自動変速機。
- 前記開閉弁は、前記機械式油圧ポンプから出力される作動油圧の低下に基づいて前記補助油圧供給装置の吐出油路と前記油圧制御回路との間を開く位置に作動させられるスプール弁子を備えた切換弁である請求項2または3の車両用自動変速機。
- 前記開閉弁は、前記機械式油圧ポンプから出力される作動油圧の低下に基づいて前記補助油圧供給装置の吐出油路と前記油圧制御回路との間を開く球状弁子を備えたチェック弁である請求項2または3の車両用自動変速機。
- 前記補助油圧供給装置は、電気的に駆動される電動式油圧ポンプを有するものである請求項1乃至5のいずれかの車両用自動変速機。
- 前記電動式油圧ポンプと前記開閉弁とは、前記バルブボデーの一部を構成して着脱可能に装着される部分ボデー部材に設けられ、該部分ボデー部材と共にユニット型電動式油圧供給装置を構成するものである請求項6の車両用自動変速機。
- 前記ユニット型電動式油圧供給装置は、前記バルブボデーの後端部に装着されるものである請求項7の車両用自動変速機。
- 前記補助油圧供給装置は、作動油圧を蓄えるアキュムレータを有し、前記機械式油圧ポンプから出力される作動油圧が不足するときに該アキュムレータ内の作動油を出力するものである請求項1乃至5のいずれかの車両用自動変速機。
- 前記機械式油圧ポンプと補助油圧供給装置は、共通のストレーナを通して作動油を吸引するものである請求項1乃至9のいずれかの車両用自動変速機。
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JP2002191008A JP2004036653A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 車両用自動変速機 |
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JP2015206447A (ja) * | 2014-04-23 | 2015-11-19 | 本田技研工業株式会社 | トロイダル型無段変速機 |
-
2002
- 2002-06-28 JP JP2002191008A patent/JP2004036653A/ja active Pending
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