JP2004036596A - 圧縮機の制御弁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制御弁1は、感圧機構11と弁機構12とソレノイド部13とからなり、可変容量型圧縮機の吐出容量を制御する。感圧機構11は、感圧部材としてダイアフラム35を有する。下部ケース34内において、ダイアフラム35に当接される下部当金44と、ダイアフラム35の変位を弁体18に伝達するための感圧ロッド21との間に、強制開放スプリング46が設けられる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば車両空調装置に使用される可変容量型圧縮機の吐出容量を制御するための制御弁に関する。
【従来の技術】
冷媒回路に用いられる一般的な可変容量型圧縮機は、クランク室と、クランク室内に設けられた傾動可能な斜板と、斜板によって往復移動させられるピストンとを備えている。クランク室内の圧力(クランク圧力)に応じて斜板の傾角が変化する。ピストンは斜板の傾角に応じたストロークで移動する。ピストンのストロークに応じて圧縮機の容量が変化する。
前記クランク圧力を調節するため、上記圧縮機には制御弁が備えられている。この制御弁は、例えば、圧縮機の吐出室を前記クランク室に接続するガス供給通路の途中に設けられる。制御弁は、冷媒回路中に設けられたエバポレータから圧縮機に吸入される冷媒ガスの圧力(吸入圧力)に応じて、吐出室からガス供給通路を通じてクランク室に供給される冷媒ガスの量を調節する。
図5は、従来の制御弁50の一例を示す。
同制御弁50は、感圧機構51と、弁機構52と、ソレノイド部53とにより構成されている。弁機構52のバルブハウジング55には弁室56が区画形成され、その弁室56内に弁体57が収納されている。弁室56の天面56aに弁孔58が開口されている。また、弁室56の天面56aと弁体57の段差部57aとの間には、強制開放スプリング59が配置されている。強制開放スプリング59は、弁孔58を開放する方向に弁体57を付勢する。
弁室56は、吐出圧導入ポート61を介して図示しない圧縮機の吐出室に連通されており、同弁室56には、吐出室の圧力(吐出圧力)Pdが導入される。また、弁孔58は、クランク圧導入ポート63を介して圧縮機のクランク室に連通されており、同弁孔58にはクランク室の圧力(クランク圧力)Pcが導入される。
バルブハウジング55の上端には、感圧機構51が設けられている。感圧機構51は、樹脂製或いは金属製のダイアフラム65と、そのダイアフラム65によって仕切られた調節室66及び感圧室67を有する。ダイアフラム65は、上部ケース69のフランジ69aと下部ケース70のフランジ70aとの間に保持される。ダイアフラム65の上側の調節室66は、所定の基準圧力(好ましくはほぼ真空)に維持される。調節室66には、ダイアフラム65上に配置される上部当金71と、該上部当金71をダイアフラム65に向けて付勢する調節スプリング72と、該調節スプリング72の付勢力を調節するアジャスタ73とが収納されている。
ダイアフラム65の下側の感圧室67は、下部ケース70の導入孔70b、バルブハウジング55の吸入圧導入ポート74を介して圧縮機の吸入室に連通され、該感圧室67には、吸入室の圧力(吸入圧力)Psが導入される。ダイアフラム65は、感圧室67内の吸入圧力Psに応じて変位する。ダイアフラム65の変位は、下部当金76及び感圧ロッド77を介して弁体57に伝達される。感圧ロッド77は、一端が弁体57に固着されるとともに、他端が下部当金76のロッド受け部76aに摺動可能な状態で嵌入されている。つまり、下部当金76と弁体57とは感圧ロッド77を介して接離可能に作動連結されている。
バルブハウジング55の下端には、ソレノイド部53が設けられている。ソレノイド部53は、有底筒状のプランジャスリーブ80と、プランジャスリーブ80の上側開口に嵌合された固定鉄心すなわち吸引子81と、該吸引子81の下方のソレノイド室82において移動可能に収納された可動鉄心すなわちプランジャ83とを含む。
吸引子81には、ソレノイド室82と弁室56とを連通するソレノイドロッドガイド81aが形成されている。ソレノイドロッド84は、弁体57と一体形成されており、ソレノイドロッドガイド81a内において軸方向に沿って移動される。プランジャスリーブ80の底面とプランジャ83との間には追従スプリング85が配置されている。追従スプリング85によって、プランジャ83が上方に押し上げられ、ソレノイドロッド84の下端はプランジャ83に当接される。従って、プランジャ83、ソレノイドロッド84、及び弁体57は一体に移動する。また、円筒状のコイル86が吸引子81及びプランジャ83を囲むように配置されている。
励磁電流の供給によりコイル86が励磁されると、そのコイル86は、磁気回路部材すなわち吸引子81及びプランジャ83に磁気回路を形成させる。このとき、励磁電流の大きさに応じた吸引力が吸引子81とプランジャ83との間に生じる。この吸引力は、強制開放スプリング59の付勢力に抗して、弁開度が小さくなる方向への力としてソレノイドロッド84を介して弁体57に伝達される。一方、ダイアフラム65は感圧室67の吸入圧力Psの変動に応じて変位し、ダイアフラム65の変位は下部当金76及び感圧ロッド77を介して弁体57に伝えられる。従って、制御弁50の開度(弁孔63の開度)は、ソレノイド部53からの付勢力、ダイアフラム65からの付勢力及び強制開放スプリング59の付勢力により決定される。
具体的には、冷房負荷が大きく吸入圧力Psが高くなる場合には、ダイアフラム65が上方にふくらみ、弁孔58の開度が小さくなる。逆に、冷房負荷が小さく吸入圧力Psが低くなる場合には、ダイアフラム65が下方にふくらみ、弁孔58の弁開度が大きくなる。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えば車両外部の温度(外気温)が高く、かつ車速が上がらない場合等では、凝縮器(コンデンサ)における熱交換容量が著しく低下する。そのため、圧縮機が最大吐出容量で運転され、前記吐出圧力Pdは非常に高い圧力になる。この場合には、制御弁50における感圧室67に非常に高い吸入圧力Psが作用して、ダイアフラム65が上方にふくらむ。この状態において、例えば、車両運転者により、車両空調装置の作動スイッチがオフされコイル86への励磁電流の供給が停止されると、吸引子81とプランジャ83との間に作用していた吸引力が消失する。このため、弁体57は、強制開放スプリング59の付勢力により下方に押され、弁孔58を最大に開いた弁開度位置に移動する。
ところが、この場合においては、感圧ロッド77が弁体57とともに下方に移動し、同感圧ロッド77の先端に嵌め込まれている下部当金76も下方に移動するため、ダイアフラム65から下部当金76への付勢力が作用しなくなる。つまり、下部当金76は、そのロッド受け部76aに嵌め込まれているロッド77に対して自由に摺動する状態となる。そのため、圧縮機における振動等の要因によって、下部当金76がダイアフラム65に衝突してしまう。このような状態が繰り返し発生する場合には、ダイアフラム65が疲労し、その耐久性が問題となる。
因みに、ダイアフラム65と下部当金76とを溶接等により一体化する手段も考えられるが、ダイアフラム65は、非常に薄い箔で形成されているため、溶接等により下部当金76に接合することは困難である。また、ダイアフラム65を接合できたとしても、耐久性に乏しく、長期間の使用に耐えることができないといった問題があった。
本発明の目的は、ダイアフラムの耐久性を向上することができる圧縮機の制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、可変容量式圧縮機の制御弁であって、前記制御弁はソレノイド部と弁機構と感圧機構とを備え、前記圧縮機の吐出圧領域とクランク室とを連通するガス供給通路の開度を調整して前記クランク室の圧力を変更することにより、該クランク室内のカムプレートの傾角を変更して前記圧縮機の吐出容量を変更するものであり、前記感圧機構は、下部ケースと、上部ケースと、両ケースによって狭持されるダイアフラムとを有し、前記弁機構は、前記ガス供給通路の一部を構成する弁孔と、前記ダイアフラムの変位に応じて該弁孔を開放または閉鎖する弁体とを有し、前記下部ケース内には、前記ダイアフラムに当接される下部当金を設け、前記ダイアフラムの変位を前記弁体に伝達する感圧ロッドを前記下部当金に対して相対移動可能に設け、前記弁孔を開放する方向へ前記弁体を付勢するための強制開放スプリングを前記下部当金と感圧ロッドとの間に設けた。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の圧縮機の制御弁において、前記感圧ロッドの端部に前記強制開放スプリングを受けるためのスプリング受けを設けた。
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の圧縮機の制御弁において、前記上部ケースとダイアフラムとの間に形成される調節室には、前記ダイアフラムに当接する上部当金と、該上部当金をダイアフラムに向けて付勢する調節スプリングと、該調節スプリングの付勢力を調整するためのアジャスタとが設けられ、前記上部ケースには段差部が設けられ、その段差部に前記上部当金を当接させることにより上部ケース側へのダイアフラムの変位を規制する。
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮機の制御弁において、前記ソレノイド部は、コイルと、プランジャと、前記コイルの励磁により前記プランジャを吸引する吸引子とを有し、前記プランジャは、該プランジャと吸引子との間に働く吸引力に応じた力で前記弁体を付勢し、前記強制開放スプリングの付勢力は、前記コイルの励磁時に前記吸引子とプランジャと間に働く吸引力よりも小さく、コイルの励磁時には、前記吸引力により強制開放スプリングが縮むことにより前記感圧ロッドが前記下部当金に当接し、その状態で前記ダイアフラムの変位を前記感圧ロッドを介して弁体に伝達する。
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態について図1〜図4を用いて説明する。
図2に示すように、制御弁1は、冷媒回路100に組み込まれた可変容量型圧縮機101に装着される。冷媒回路100は、その圧縮機101に加え、コンデンサ(凝縮器)102、膨張弁103及びエバポレータ(蒸発器)104等により構成される。エバポレータ104の近傍には温度センサ105が配置されている。
圧縮機101は冷媒ガスを圧縮し、圧縮冷媒ガスをコンデンサ102に供給する。コンデンサ102は、圧縮冷媒ガスを冷却し液化する。膨張弁103は、液化した冷媒を霧状にしてエバポレータ104に噴射する。エバポレータ104において霧状の冷媒が気化され、エバポレータ104から比較的低圧の冷媒ガスが圧縮機101に戻される。冷媒回路100では、エバポレータ104における気化熱でエバポレータ104自体が冷やされ、このエバポレータ104に空気を通すことにより車室内に冷風を供給できるようになっている。
次に、圧縮機101の構成について詳述する。
圧縮機101におけるクランク室110は、プーリ111により回転される駆動シャフト120と、駆動シャフト120に固定された回転支持体121と、駆動シャフト120の軸線方向にスライド可能に、かつ斜動可能に支持されたカムプレートすなわち斜板130とを収容する。斜板130のガイドピン131は回転支持体121の支持アーム122に支持される。斜板130は一対のシュー132を介してピストン140に連結される。ピストン140は斜板130の回転に伴ってシリンダボア142内で往復移動される。
ピストン140のストロークは斜板130の傾斜角度に応じて変化する。斜板130の傾斜角度はクランク室110内の圧力(クランク圧力Pc)に応じて変更される。遮断体150は斜板130に向かって押圧されており、斜板130の傾斜角度に応じて収容孔143内で移動する。
リアハウジング160には、吸入室161a、161b及び吐出室162a、162bが区画される。ピストン140の移動によって、吸入室161a、161b内の冷媒ガスが、吸入ポート163からシリンダボア142内に吸入される。ピストン140により圧縮された冷媒ガスは吐出ポート164から吐出室162a、162bに吐出される。従って、吐出室162a、162bは比較的高圧(吐出圧力Pd)の冷媒ガスが流れる吐出圧領域である。
リアハウジング160の中央には、圧縮機101の軸方向に沿って延びる吸入通路165が形成され、該吸入通路165には比較的低圧の冷媒ガスがエバポレータ104から導入される。吸入通路165は、収容孔143に連通するとともに、通孔166を介して吸入室161bに連通する。斜板130により遮断体150がリアハウジング160に向けて移動されると、遮断体150は通孔166を閉鎖する。吐出室162bとクランク室110は、ガス供給通路168、169を介して連通される。ガス供給通路168、169の途中には制御弁1が設けられている。制御弁1は、吸入通路165から検圧通路170を通じて導入される吸入圧力Psに応じて、吐出室162bからガス供給通路168、169を通じてクランク室110に供給される冷媒ガスの量を調節する。
以下、図1を参照して本実施形態の制御弁1について説明する。
制御弁1は、感圧機構11、弁機構12、及びソレノイド部13からなる。制御弁1において、中央に弁機構12が配置されており、その弁機構12の一端に(図1の上方に)感圧機構11、他端(図1の下方)にソレノイド部13が配置されている。
弁機構12のバルブハウジング15には弁孔16及び弁室17が区画されている。弁室17内に弁体18が収容されている。弁体18は弁室17の天面17aと対向する端面18aを有する。バルブハウジング15は軸線に直交しかつ弁室17に連通する吐出圧導入ポート19を有する。図2に示すように、吐出圧導入ポート19はガス供給通路168を介して圧縮機101の吐出室162bに接続される。従って、吐出圧力Pdが吐出圧導入ポート19を介して弁室17に導入される。バルブハウジング15は、弁孔16に連通するクランク圧導入ポート20を有する。クランク圧導入ポート20は、ガス供給通路169を介して圧縮機101のクランク室110に接続される。従って、クランク圧力Pcがクランク圧導入ポート20を介して弁孔16に導入される。
図1に示すように、弁体18の上部中央には軸方向に沿って延びる感圧ロッド21が設けられている。バルブハウジング15の中央にはガイド孔15aが形成されており、感圧ロッド21はそのガイド孔15aに沿って摺動する。感圧ロッド21は、ガイド孔15aの内径とほぼ等しい直径を有する上ロッド部21aと、上ロッド部21aと弁体18との間に形成された比較的小径の下ロッド部21bとを有する。下ロッド部21bにより、弁孔16内において冷媒ガスの流通が許容される。
ソレノイド部13は、バルブハウジング15の下端に接合されている。同ソレノイド部13は、有底円筒形状をなす筒体としてのプランジャスリーブ23と、プランジャスリーブ23の上側開口に嵌合された固定鉄心すなわち吸引子24と、プランジャスリーブ23内において吸引子24の下方に収納された可動鉄心すなわちプランジャ25とを含む。プランジャスリーブ23及び吸引子24によりソレノイド室26が区画され、このソレノイド室26に略円筒形状をなすプランジャ25が移動可能に収納されている。また、プランジャスリーブ23の外周には、円筒状のコイル28が吸引子24及びプランジャ25を囲むように配置されている。
吸引子24には、ソレノイド室26と弁室17とを連通するソレノイドロッドガイド24aが形成されている。ソレノイドロッド29は、弁体18と一体形成されており、ソレノイドロッドガイド24a内において軸方向に沿って移動される。プランジャ25の底にはキャビティ25aが形成されている。プランジャ25のキャビティ25aとプランジャスリーブ23の底部との間には、プランジャ25を上向きに付勢する追従スプリング31が配置されている。ソレノイドロッド29の下端は追従スプリング31の付勢力によってプランジャ25に当接される。従って、プランジャ25、ソレノイドロッド29、及び弁体18は一体に移動する。
吸引子24の側面には軸方向に延びる連通溝24bが形成されている。制御弁1が圧縮機101に装着された状態では、バルブハウジング15と圧縮機101との間にクランク圧導入ポート20に連通する空間32が区画される(図2参照)。ソレノイド室26は、吸引子24の連通溝24b、バルブハウジング15の連通孔15b、及び空間32を介してクランク圧導入ポート20に連通される。従って、ソレノイド室26の圧力は弁孔16の圧力と等しい。プランジャ25はキャビティ25aに連通するプランジャ孔25bを有する。従って、プランジャ25の上側と下側との間で冷媒ガスは流通可能である。
感圧機構11は、上部ケース33及び下部ケース34と、上部ケース33の上部フランジ33aと下部ケース34の下部フランジ34aとの間に保持される感圧部材すなわちダイアフラム35と、ダイアフラム35により仕切られる調節室36と感圧室37とを有する。ダイアフラム35は、例えば樹脂材料或いは金属材料よりなる。上部ケース33と下部ケース34とは溶接にて一体化されている。この一体化の方法としては、例えば、プラズマ溶接、レーザ溶接、又はビーム溶接によって両ケース33、34の外周を封止し、ケース33、34を連結するのが好ましい。
ダイアフラム35の上側の調節室36は所定の基準圧力(好ましくはほぼ真空)に維持される。調節室36内には、上部当金38と、アジャスタ39と、調節スプリング40とが配置される。上部当金38は、ダイアフラム35上に配置されている。また、上部ケース33における下側には段差部33bが形成されている。その段差部33bに上部当金38の縁部が当接することで、上部当金38の上方への移動が規制される。アジャスタ39は、上部ケース33における上側に固定されている。アジャスタ39は、略円筒形状をなし、中心には上下に貫通する貫通孔39aが形成され、外側面には係合溝39bが形成されている。アジャスタ39の係合溝39bは、上部ケース33の係合突部33cに係合されている。上部当金38とアジャスタ39との間に調節スプリング40が配置されている。調節スプリング40は上部当金38をダイアフラム35に向けて付勢する。また、上部ケース33は天孔33dすなわち圧力設定孔を有する。天孔33dは封体42により塞がれる。天孔33dは円形であることが好ましく、封体42は球状であることが好ましい。
制御弁1の特性は、上部ケース33におけるアジャスタ39の軸方向位置により調整される。具体的には、感圧機構11の製造時において、天孔33dから工具を挿入してアジャスタ39の軸方向位置を調整した後、上部ケース33をかしめる。このかしめ加工によりケース33が内側に突出することで係合突部33cが形成され、同係合突部33cがアジャスタ39の係合溝39bに係合される。これにより、調節スプリング40の長さすなわち付勢力が調整され、制御弁1が所望の特性になるよう調整される。
アジャスタ39の固定後、感圧機構11は所定の基準圧力雰囲気下に配置される。例えば、感圧機構11は基準圧力の圧力室内に配置される。ケース33の天孔33d及びアジャスタ39の貫通孔39aを介して、調節室36の圧力は圧力室の圧力とスムースに平衡化され、調節室36の圧力が基準圧力に設定される。この状態で、封体42により天孔33dを塞ぐ。封体42を上部ケース33に溶接することにより、調節室36は密閉される。組み立て後、感圧機構11の圧力漏れテストが行われる。この感圧機構11の圧力漏れテストは、制御弁1の製造前に行われる。尚、調節室36はほぼ真空まで減圧されることが好ましいが、基準圧力を有する気体を調節室36に充填してもよい。また、感圧機構11は減圧雰囲気下で組み立てられてもよい。
バルブハウジング15は、感圧機構11の下部ケース34が挿入される凹部15cと、下部ケース34のフランジ34aを支持する位置決め面15dと、感圧機構11を固定するための係合爪15eとを有する。位置決め面15dはダイアフラム35と弁室17の天面17aとの距離が所定値になるように形成される。係合爪15eは感圧機構11と弁機構12との接合を強固にする。係合爪15eは、下部ケース34のフランジ34aが位置決め面15dに当接した状態で、上部ケース33のフランジ33aに係合される。またこのとき、下部ケース34のフランジ34aと位置決め面15dとはガス漏れが生じないよう固着される。
ここで、位置決め面15dについて説明する。ダイアフラム35のたわみ量は制御弁1の開弁圧力に関連する。また、ダイアフラム35の反発力はそのたわみ量に対して直線的ではなく曲線的に変化する。そのため、ダイアフラム35の初期たわみ量は厳密に調整されるべきである。本実施形態では、感圧機構11を弁機構12に装着した時にダイアフラム35が所定の位置になるように、天面17aと位置決め面15dとの距離が設定されている。
また、下部ケース34内には、前記ダイアフラム35の下面に当接する下部当金44と、感圧ロッド21の先端に配置されるスプリング受け45と、前記下部当金44とスプリング受け45との間に設けられた強制開放スプリング46とが配置されている。スプリング受け45の中央部45aは凹状に窪み、その中央部45aに感圧ロッド21の先端が挿入されている。下部当金44は、感圧ロッド21に向かって突出する凸部44aを有し、該凸部44aがスプリング受け45の中央部45aに当接している。中央部45a及び凸部44aの周りに強制開放スプリング46が設けられている。強制開放スプリング46は、スプリング受け45及び感圧ロッド21を介して弁体18を図1の下方(弁孔16を開放する方向)に向かって付勢する。
強制開放スプリング46の付勢力は、プランジャ25とプランジャスリーブ23との間に配置される追従スプリング31の付勢力よりも大きくなるよう設定されている。つまり、強制開放スプリング46は、追従スプリング31よりも弾性係数が大きい。従って、ソレノイド部13における吸引子24とプランジャ25との間に吸引力が作用しない場合には、強制開放スプリング46の付勢力により、追従スプリング31の付勢力に抗して感圧ロッド21、弁体18が押し下げられ弁孔16が開放される。
下部ケース34には吸入圧導入孔34bが形成され、また、バルブハウジング15においてその吸入圧導入孔34bに対応する位置には吸入圧導入ポート47が形成されている。吸入圧導入ポート47は、図2に示すように、圧縮機101のリアハウジング160における検圧通路170を通じて吸入通路165に接続されている。従って、図1に示すダイアフラム35の下側の感圧室37には、吸入圧導入ポート47、吸入圧導入孔34bを介して吸入圧力Psが作用する。
感圧室37に導入される吸入圧力Psが比較的高いとき、ダイアフラム35は調節スプリング40の付勢力に抗して上方に変位する。逆に、吸入圧力Psが比較的低いとき、ダイアフラム35は調節スプリング40の付勢力及び圧力差により下方に変位する。つまり、ダイアフラム35は吸入圧力Psの大きさに応じてたわむ。ダイアフラム35の変位は、下部当金44、スプリング受け45、感圧ロッド21を介して弁体18に伝達される。
また、図2に示すように、前記ソレノイド部13におけるコイル28は駆動回路180に接続されている。駆動回路180は、コントローラ181の指令に従ってコイル28に励磁電流を供給する。コントローラ181には、空調装置作動スイッチ182、車室内における温度(車室温度)を検出するための温度センサ183、車室温度を設定するための室温設定器184、エバポレータ104における温度を検出するための温度センサ105等が接続されている。コントローラ181は、空調装置作動スイッチ182からのオン・オフ信号、室温設定器184にて予め設定された設定温度や温度センサ105,183にて検出された検出温度に関する外部信号に基づいて、その時々に必要となる励磁電流を算出しその励磁電流に対応する励磁指令を駆動回路180に出力する。そして、駆動回路180はコントローラ181の励磁指令に応答して励磁電流をコイル28に供給する。
次に、制御弁1の作用について説明する。
空調装置作動スイッチ182がオンされ、かつ、温度センサ183に検出された車室温度が室温設定器184に設定された設定温度以上である場合には、コントローラ181はコイル28の励磁を指令する。駆動回路180は励磁指令に応答してコイル28に励磁電流を供給する。励磁されたコイル28は磁気回路部材すなわち吸引子24及びプランジャ25に磁気回路を形成させる。励磁電流の大きさに応じた吸引力が吸引子24及びプランジャ25間に生じ、プランジャ25が吸引子24に吸引され、ソレノイドロッド29を介して弁体18及び感圧ロッド21を上方に押し上げる。一方、ダイアフラム35は感圧室37に導入される吸入圧力Psの変動に応じて変位する。ダイアフラム35の変位は、下部当金44、スプリング受け45、及び感圧ロッド21を介して弁体18に伝えられる。従って、制御弁1の開度(弁孔16の開度)は、ソレノイド部13の付勢力、感圧機構11の付勢力とにより決定される。
本実施形態において、強制開放スプリング46の付勢力は、コイル28の励磁によりプランジャ25と吸引子24間に作用する吸引力よりも小さくなるよう設定されている。具体的には、コイル28の励磁電流は、0.2A〜0.7A程度であり、励磁電流が0.2Aである場合の吸引力より強制開放スプリング46の付勢力は小さい。そのため、コイル28が励磁された状態では、その吸引力により前記弁体18及び感圧ロッド21が上方に押し上げられて強制開放スプリング46が縮み、常に下部当金44の凸部44aとスプリング受け45の中央部45aとが当接する。そして、それら凸部44aと中央部45aとが当接した状態でダイアフラム35の変位が感圧ロッド21を介して弁体18に伝達される。
また、冷房負荷が大きい場合には、温度センサ183によって検出された温度と室温設定器184の設定温度との差が大きい。コントローラ181は検出温度が高いほど励磁電流を大きくするように駆動回路180に指令する。この場合、吸引子24とプランジャ25との間の吸引力が大きくなるため、弁孔16の開度を小さくさせる力が増大する。従って、より低い吸入圧力Psにて弁体18が開放または閉鎖される。言い換えると、励磁電流が比較的大きいとき、より低い吸入圧力Psを保持するように制御弁1は作動する。
弁体18の弁開度の低下にともない、吐出室162bからガス供給通路168、169を経由してクランク室110へ流入する冷媒ガスの量が減少する。この一方で、クランク室110内の冷媒ガスは、通路145及び放圧通口146を経由して吸入室161bへ流出する。従って、クランク圧力Pcは低下する。冷房負荷が大きい状態では、クランク圧力Pcとシリンダボア142内の吸入圧力Psとの差が小さいので、斜板130の傾角は大きくなる。
弁体18が弁孔16を完全に閉鎖したとき、ガス供給通路169は閉じられる。従って、吐出室162bの高圧冷媒ガスはクランク室110へ供給されず、クランク圧力Pcは、吸入室161a内の吸入圧力Psと略同一になり、斜板130の傾角は最大となる。斜板130の最大傾角は、回転支持体121の規制突部121aと斜板130との当接によって規制され、吐出容量は最大となる。
逆に、温度センサ183によって検出された温度と室温設定器184の設定温度との差は小さいとき、冷房負荷が小さい。この場合、コントローラ181は検出温度が低いほど励磁電流値を小さくするように駆動回路180に指令する。比較的小さい励磁電流値のため、吸引子24とプランジャ25との間の吸引力が弱く、弁体18の弁開度が小さくなる方向への力は減少する。従って、より高い吸入圧力Psにて、弁体18が開放又は閉鎖される。言い換えると、制御弁1は、電流値が減少されることにより、より高い吸入圧力Psを保持するように作動する。
弁体18の弁開度が大きくなれば、吐出室162aからクランク室110へ流入する冷媒ガス量が多くなり、クランク圧力Pcが上昇する。冷房負荷が小さい状態では、シリンダボア142内の吸入圧力Psが低く、クランク圧力Pcとシリンダボア142内の吸入圧力Psとの差が大きい。従って、斜板130の傾角は小さくなる。
温度センサ105の検出温度が設定温度以下になると、コントローラ181はコイル28の消磁を駆動回路180に指令する。コイル28への励磁電流の供給が停止されたとき、吸引子24とプランジャ25との間の吸引力が消失する。このとき、強制開放スプリング46はスプリング受け45を介して感圧ロッド21を下方に押し下げ、それにより弁体18は弁孔16が最大に開かれる位置まで移動する。このため、吐出室162b内の高圧冷媒ガスがガス供給通路169を介してクランク室110へ多量に供給され、クランク圧力Pcが上昇する。クランク圧力Pcの上昇に伴い、斜板130の傾角は最小傾角に移行する。
また、空調装置作動スイッチ182がオフされたとき、コントローラ181はコイル28の消磁を駆動回路180に指令する。この場合にも、斜板130の傾角は最小傾角に移行する。
このように、制御弁1はコイル28の励磁電流に従って動作する。言い換えると、制御弁1は励磁電流に応じて吸入圧力Psの設定値を変更する。励磁電流値が大きいとき、比較的低い吸入圧力Psにて弁孔16は開放され、励磁電流値が比較的小さいとき、比較的高い吸入圧力Psにて弁孔16は開放される。圧縮機101は設定された吸入圧力Psを維持すべく吐出容量を変更する。
また具体的に、例えば車室外部の温度(外気温)が高く、車両の速度(車速)が上がらない時(例えば、真夏の渋滞時)等では、圧縮機101に接続されたコンデンサ102における熱交換容量が著しく低下する。この状態で、圧縮機101が最大の吐出容量にて運転されている場合、吐出圧力Pdは非常に高い圧力になる。この場合、ダイアフラム35の下側の感圧室37にも非常に高い吸入圧力Psが作用するため、図3に示すように、ダイアフラム35が上方にふくらむ。ここで、例えば、車両運転者により空調装置作動スイッチ182がオフされると、コイル28への励磁電流の供給が停止される。そして、その停止に伴い吸引子24とプランジャ25との間に作用していた吸引力が消失する。このとき、弁体18には、その下方からプランジャ25及びソレノイドロッド29を介して追従スプリング31の付勢力が作用し、その上方からスプリング受け45及び感圧ロッド21を介して強制開放スプリング46の付勢力が作用している。強制開放スプリング46の付勢力は、追従スプリング31の付勢力よりも大きい。そのため、図4に示すように、強制開放スプリング46の付勢力よって、スプリング受け45は、追従スプリング31の付勢力に抗して下部当金44から引き離されて下方に押し下げられ、弁体18は感圧ロッド21を介して下方に移動される。これにより、弁孔16を最大に開いた弁開度位置に弁体18が移行する。またこのとき、強制開放スプリング46が伸びることにより、下部当金44がダイアフラム35から離れることが防止される。つまり、下部当金44は、強制開放スプリング46によって、ダイアフラム35に押しつけられた状態に維持される。
弁体18が弁孔16を最大に開いた弁開度位置に移行すると、吐出室162b内の高圧冷媒ガスがクランク室110へ多量に供給されるため、クランク圧力Pcが高くなり、そのクランク圧力Pcの上昇に伴い、斜板130の傾角は最小傾角に移行する。
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
制御弁1において、感圧ロッド21と下部当金44との間に強制開放スプリング46を設けるようにした。このようにすれば、ダイアフラム35が調節スプリング40の付勢力に抗して上方に変位しているときにコイル28の通電が遮断された場合、強制開放スプリング46が伸びて感圧ロッド21を介して弁体18を押し下げる。またこのとき、強制開放スプリング46が伸びることで下部当金44がダイアフラム35から離れることが防止される。そのため、下部当金44がダイアフラム35に対して当接したり離間したりすることによるダイアフラム35の疲労が防止され、ダイアフラム35の耐久性を向上することができる。
感圧ロッド21の先端にスプリング受け45を設けたので、強制開放スプリング46を確実に保持することができる。
上部当金38は、その周縁が上部ケース33の段差部33bに当接することにより上方へのダイアフラム35の変位が規制される。よって、吸入圧力Psが異常に高い時であっても、ダイアフラム35の必要以上の変位が確実に防止されるため、ダイアフラム35の耐久性をより高めることできる。
強制開放スプリング46の付勢力は、吸引子24とプランジャ25と間に働く吸引力よりも小さくなるよう設定されている。従って、その吸引力により、強制開放スプリング46が縮み、下部当金44の凸部44aがスプリング受け45に当接する。このようにすれば、ダイアフラム35の変位を確実に弁体18へ伝達することができる。
下部当金44の凸部44aの周りに強制開放スプリング46が設けられているので、下部当金44の凸部44aとスプリング受け45とを当接させる上で実用上好ましいものとなる。
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
上記実施形態とは逆に、弁室17がガス供給通路を通じてクランク室110に接続され、弁孔16がガス供給通路を通じて吐出室162bに接続されてもよい。
上記実施形態では、感圧ロッド21の先端に、強制開放スプリング46を保持するためのスプリング受け45を配設するようにしたが、そのスプリング受け45を省略してもよい。つまり、感圧ロッド21を下部当金44に間接的に当接させる代わりに、直接的に当接させてもよい。なおこの場合、感圧ロッド21に強制開放スプリング46を保持するための保持部を一体的に形成する。このようにしても、下部当金44がダイアフラム35から離れることが防止され、ダイアフラム35の耐久性を向上することができる。
上記実施形態より把握される技術的思想について記載する。
〔1〕前記上部ケースとダイアフラムとの間に形成される調節室を真空もしくは一定圧力に保持した状態にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧縮機の制御弁。
〔2〕前記下部当金は感圧ロッドに向かって突出する凸部を有し、その凸部の周りに前記強制開放スプリングが設けられることを特徴とする請求項4に記載の圧縮機の制御弁。
〔3〕前記筒体の底部には、前記弁孔を閉鎖する方向へプランジャを付勢する追従スプリングが配置され、前記強制開放スプリングの付勢力は、該追従スプリングの付勢力よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧縮機の制御弁。
〔4〕前記強制開放スプリングは、前記感圧ロッドを下部当金から離間させる方向へ感圧ロッドを付勢することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧縮機の制御弁。
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、制御弁において感圧部材として使用するダイアフラムの耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における制御弁の断面図。
【図2】図1の制御弁を備えた可変容量型圧縮機の断面図。
【図3】制御弁の作用を説明するための要部断面図。
【図4】制御弁の作用を説明するための要部断面図。
【図5】従来の制御弁の断面図。
【符号の説明】
1…制御弁、11…感圧機構、12…弁機構、13…ソレノイド部、16…弁孔、18…弁体、21…感圧ロッド、23…筒体としてのプランジャスリーブ、24…吸引子、25…プランジャ、28…コイル、33…上部ケース、33b…段差部、34…下部ケース、35…ダイアフラム、36…調節室、38…上部当金、39…アジャスタ、40…調節スプリング、44…下部当金、44a…凸部、45…スプリング受け、46…強制開放スプリング、101…圧縮機、110…クランク室、168,169…ガス供給通路。
Claims (4)
- 可変容量式圧縮機の制御弁であって、前記制御弁はソレノイド部と弁機構と感圧機構とを備え、前記圧縮機の吐出圧領域とクランク室とを連通するガス供給通路の開度を調整して前記クランク室の圧力を変更することにより、該クランク室内のカムプレートの傾角を変更して前記圧縮機の吐出容量を変更するものであり、
前記感圧機構は、下部ケースと、上部ケースと、両ケースによって狭持されるダイアフラムとを有し、
前記弁機構は、前記ガス供給通路の一部を構成する弁孔と、前記ダイアフラムの変位に応じて該弁孔を開放または閉鎖する弁体とを有し、
前記下部ケース内には、前記ダイアフラムに当接される下部当金を設け、前記ダイアフラムの変位を前記弁体に伝達する感圧ロッドを前記下部当金に対して相対移動可能に設け、前記弁孔を開放する方向へ前記弁体を付勢するための強制開放スプリングを前記下部当金と感圧ロッドとの間に設けたことを特徴とする圧縮機の制御弁。 - 前記感圧ロッドの端部に前記強制開放スプリングを受けるためのスプリング受けを設けたことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機の制御弁。
- 前記上部ケースとダイアフラムとの間に形成される調節室には、前記ダイアフラムに当接する上部当金と、該上部当金をダイアフラムに向けて付勢する調節スプリングと、該調節スプリングの付勢力を調整するためのアジャスタとが設けられ、
前記上部ケースには段差部が設けられ、その段差部に前記上部当金を当接させることにより上部ケース側へのダイアフラムの変位を規制することを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機の制御弁。 - 前記ソレノイド部は、コイルと、プランジャと、前記コイルの励磁により前記プランジャを吸引する吸引子とを有し、
前記プランジャは、該プランジャと吸引子との間に働く吸引力に応じた力で前記弁体を付勢し、
前記強制開放スプリングの付勢力は、前記コイルの励磁時に前記吸引子とプランジャと間に働く吸引力よりも小さく、コイルの励磁時には、前記吸引力により強制開放スプリングが縮むことにより前記感圧ロッドが前記下部当金に当接し、その状態で前記ダイアフラムの変位を前記感圧ロッドを介して弁体に伝達することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮機の制御弁。
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