JP2004036498A - 燃料噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】蓄圧室の内圧の制御性とサプライポンプの駆動効率とのより安定した両立を図ることが可能な燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置(ECU)46は、絞り弁34による調量制御及び減圧弁37による減圧制御を切り替えつつ、コモンレール25の内圧を制御する。そしてECU46は、絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていないことを条件に行う。
【選択図】 図1
【解決手段】電子制御装置(ECU)46は、絞り弁34による調量制御及び減圧弁37による減圧制御を切り替えつつ、コモンレール25の内圧を制御する。そしてECU46は、絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていないことを条件に行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン、特に、車載エンジン等の燃焼室内に噴射する高圧燃料を蓄積する蓄圧室の内圧を制御するための弁を備えた燃料噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の燃料噴射装置としては、例えば、特開2001−182638号公報に記載されたものがある。この装置では、インジェクタを介してエンジンの気筒(燃焼室)内に噴射される高圧燃料を蓄積するためのコモンレール(蓄圧室)が設けられている。このコモンレールの内圧は、例えば、排ガス値や騒音の改善のために所望とされる所定の圧力を維持すべく制御装置によってフィードバック制御される。
【0003】
一方、こうした燃料噴射装置においては、上記の圧力制御を行うために、コモンレールの内圧を減圧するための減圧弁と、前記コモンレールに高圧燃料を加圧供給するサプライポンプの燃料供給圧力を制御するポンプ調量弁とが設けられることがある。即ちこの場合、前記コモンレールの内圧制御は、適宜の制御装置によってこれら両弁の開度が制御されることにより行われる。
【0004】
そして一般に、これら2つの弁を用いたコモンレールの内圧制御においては、エンジンの始動直後など、エンジン温度が比較的低く、燃料温度も比較的低い状態においては、燃料粘度等の影響を受けにくい前記減圧弁が用いられる。ちなみに、燃料粘度は燃料温度の影響を受けて変動する。他方、エンジンの始動時からの経過時間が所定時間以上となった場合など、エンジン温度や燃料温度が比較的高く安定した状態では、燃料粘度等の影響は比較的受けやすいものの前記サプライポンプの駆動効率に優れる前記ポンプ調量弁が用いられる。このように、エンジン温度などに基づいて前記減圧弁のみによる制御と前記ポンプ調量弁のみによる制御とを切り替えることで、エンジン温度が低い場合などにおける前記コモンレール内圧の制御性と、エンジン温度が高い場合などにおける前記サプライポンプの駆動効率との両立が図られるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記減圧弁及びポンプ調量弁といった2種の弁の切替制御を通じてコモンレール内圧の制御性とサプライポンプの駆動効率との両立は確かに図られるようにはなるものの、それら弁の切替えに伴う次のような不都合も無視できないものとなっている。即ち上記の構成において、エンジンの運転中に前述の弁の切替えが行われると、前記両弁間における前記コモンレール内圧制御の誤差に起因して燃料噴射状態が変動する虞がある。ちなみに、この内圧制御の誤差は、例えば、前記両弁間の制御態様の差異などに起因して発生する。そして、こうして燃料噴射状態が変動すると、エンジンの回転速度やエンジン音等も変動することとなり、ひいてはユーザーに、エンジンに異常が発生したとの誤認をも与えかねない。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄圧室の内圧の制御性とサプライポンプの駆動効率とのより安定した両立を図ることが可能な燃料噴射装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に係る発明では、燃料噴射装置は、高圧燃料を蓄積するための蓄圧室と、該蓄圧室内の燃料をエンジンの燃焼室内に噴射するためのインジェクタと、燃料タンク側から前記蓄圧室に供給される燃料を加圧するためのサプライポンプとを備えている。また燃料噴射装置は、前記ポンプによって前記蓄圧室に供給される燃料の圧力を制御するためのポンプ調量弁と、前記蓄圧室の内圧を減圧するために該蓄圧室から前記燃料タンク側への燃料排出を制御する減圧弁とを備えている。
【0008】
さらに燃料噴射装置は、それらポンプ調量弁による調量制御及び減圧弁による減圧制御を切り替えつつ、前記蓄圧室の内圧を制御する制御装置を備えている。そしてこの制御装置は、前記ポンプ調量弁による調量制御と前記減圧弁による減圧制御との切替えを、前記インジェクタから前記燃焼室内への燃料噴射が行われていないことを条件に行う。
【0009】
この発明によれば、蓄圧室の内圧制御をポンプ調量弁による調量制御と減圧弁による減圧制御とで切り替える際には、インジェクタから燃焼室内への燃料噴射が行われていないため、前記両弁間における前記内圧制御の誤差に起因する燃料噴射状態の変動が発生し難い状態となる。つまり、蓄圧室の内圧制御において、ポンプ調量弁による調量制御と減圧弁による減圧制御との切替えを、例えばインジェクタからの燃料噴射が行われているときに行う場合に比較して、前記切替え時においてエンジンの回転速度やエンジン音等が変動しなくなる。したがって、エンジンの回転速度やエンジン音等の変動を発生させることなく、蓄圧室の内圧の制御性とサプライポンプの駆動効率との両立を図ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の発明において、前記制御装置は、前記エンジンの始動に伴って前記減圧弁による減圧制御を通じた前記蓄圧室の内圧制御を実行する。また前記制御装置は、前記条件の成立に伴って前記ポンプ調量弁による調量制御に切り替えて以降は、同ポンプ調量弁による調量制御を通じて前記蓄圧室の内圧制御を実行する。
【0011】
この発明によれば、例えば、エンジンの始動直後等の燃料温度が比較的低いときに減圧弁による減圧制御を通じて蓄圧室の内圧制御を行い、暖機後燃料温度が充分高くなってからポンプ調量弁による調量制御を通じて前記内圧制御を行うということが可能になる。ちなみに、前記減圧弁による減圧制御においては燃料温度即ち燃料粘度がその制御性に与える影響が比較的小さく、前記ポンプ調量弁による調量制御においてはサプライポンプの駆動効率が比較的高い。したがって前記蓄圧室の内圧制御において、燃料温度の比較的低いときの制御性の確保と、燃料温度の比較的高いときのサプライポンプの高い駆動効率の確保とが可能になる。
【0012】
請求項3に係る発明では、請求項1または2に記載の発明において、前記エンジンが車載エンジンであり、前記制御装置は、前記インジェクタから前記燃焼室内への燃料噴射が行われていない条件の成立を、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間以上継続されることに基づき判断する。
【0013】
この発明によれば、例えば、アクセル開度がゼロ%とされた時点にインジェクタから燃焼室内への燃料噴射が急停止されず、その時点から燃料噴射量が漸減されるように燃料噴射制御が行われる場合においても、前記インジェクタからの燃料噴射が行われていない条件の成立を判断することができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、請求項3に記載の発明において、前記制御装置は、前記エンジンの回転速度が所定の速度以上であること、及び、前記エンジンの温度が、前記インジェクタの無噴射時において前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために必要な所定の温度以上であることを更に評価して前記条件の成立を判断する。
【0015】
この発明によれば、制御装置は、エンジンの回転速度が所定の速度以上であることを評価の対象とする。従って例えば、アクセル開度がゼロ%とされたときなどの前記エンジンの回転速度の急減時において、前記回転速度の落ち込みによるエンジンストール等を回避するべく、前記回転速度が所定の速度を下回ったときに燃料噴射量を増加方向に制御する場合などにおいても、前記条件の成立を判断できる。
【0016】
また、前記制御装置は、前記エンジンの温度が、前記インジェクタの無噴射時において前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために必要な所定の温度以上であることを評価の対象とする。これによれば、エンジンの温度が、インジェクタの無噴射時において充分な制御性で以てポンプ調量弁による調量制御を行うことができる状態にあるか否かを判断することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、請求項3または4に記載の発明において、前記制御装置は、前記エンジンがアイドル状態にあるとき、前記エンジンの温度が暖機完了温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、所定時間を経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なす。
【0018】
この発明によれば、制御装置は、エンジンの状態が、インジェクタからの燃料噴射が実際には行われているアイドル状態にあっても、前記エンジンの温度が暖機完了温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、所定時間を経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なす。つまり、この場合、前記インジェクタからの燃料噴射が行われている状態であってもその燃料噴射状態が安定した状態にあると判断され、前記ポンプ調量弁による調量制御と前記減圧弁による減圧制御との切替えを行うための条件が成立したと判断される。この燃料噴射状態が安定したアイドル状態においては、前記切替えに起因する燃料噴射状態の変動を極力抑え込むことができるため、前記エンジンの回転速度やエンジン音の変動を可及的に抑止可能である。
【0019】
請求項6に係る発明では、請求項3〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記制御装置は、更に、前記エンジンの温度が、前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、同ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な時間を経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なす。
【0020】
この発明では、前記エンジンの温度が、前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、同ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な時間を経過したことが評価対象とされている。そしてこれらの評価対象が採用されることで、例えば、前記条件が既に成立したと判断された後に再度その条件の成立を判断する際の処理負担を軽減することができる。即ち、例えば前記評価対象を必須評価対象とした上で、前記条件の成立を判断するための他の評価対象が既に評価されて前記条件が既に成立したと判断された場合に、その後の前記条件の成立の再判断処理時において前記必須評価対象のみを評価するようにすることで、前記再判断処理の負担を軽減できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の燃料噴射装置を具体化した一実施形態を、図面に従って説明する。
【0022】
車両には、図1に示すように、車載エンジンとしての畜圧式ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、シリンダヘッド12と、複数の燃焼室を構成する気筒(シリンダ)13を有するシリンダブロック14とを備えている。各シリンダ13内にはピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15はコネクティングロッド16を介し、エンジン11の出力軸であるクランク軸(図示しない)に連結されている。各ピストン15の往復運動は、コネクティングロッド16によって回転運動に変換された後、クランク軸に伝達される。
【0023】
各シリンダ13には吸気通路18が接続されており、エンジン11の外部の空気が吸気通路18を通って各シリンダ13に取込まれる。また、シリンダ13には排気通路19が接続されている。シリンダヘッド12には、シリンダ13毎に吸気弁21及び排気弁22が設けられている。これらの吸・排気弁21,22は、前記クランク軸の回転に連動して往復動することにより、吸・排気通路18,19とシリンダ13との接続部分を開閉する。
【0024】
また、シリンダヘッド12には、各シリンダ13に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)23が取付けられている。各インジェクタ23から対応するシリンダ13への燃料噴射は、電磁弁24により制御される。インジェクタ23は、蓄圧室としてのコモンレール25に接続されており、電磁弁24が開いている間、コモンレール25内の燃料がインジェクタ23から、対応するシリンダ13に噴射される。
【0025】
そして、吸気通路18を通ってシリンダ13内に導入され、かつピストン15により圧縮された高温かつ高圧の吸入空気に、インジェクタ23から燃料が噴射される。この噴射燃料は自己着火して燃焼する。このときに生じた燃焼ガスによりピストン15が往復動され、クランク軸が回転されて、エンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。燃焼ガスは、排気通路19を通ってエンジン11の外部へ排出される。
【0026】
前述のコモンレール25には、燃料噴射圧に相当する比較的高い高圧燃料が蓄積されている。この高圧燃料の蓄積(畜圧)を実現するために、コモンレール25は、供給配管26を介してサプライポンプ27の吐出ポート28に接続されている。このサプライポンプ27としては、公知の構造の吐出容量可変タイプの高圧ポンプが用いられている。即ち、サプライポンプ27の吸入ポート31は、フィルタ32を介して燃料タンク33に接続されている。サプライポンプ27は、燃料タンク33からフィルタ32を介して燃料を吸入する。また、サプライポンプ27は、エンジン11の回転に同期する図示しないカムによってプランジャを往復動させ、燃料を昇圧してコモンレール25に供給する。
【0027】
サプライポンプ27の吐出ポート28の近傍には、その吐出ポート28からコモンレール25へ向けて供給される燃料の圧力、ひいては吐出量(供給量)を制御するための電磁弁からなるポンプ調量弁としての絞り弁34が設けられている。この絞り弁34の開度調節制御により、サプライポンプ27に吸入された燃料のうち吐出ポート28から吐出される燃料の量が制御される。即ち、絞り弁34が閉じられた状態では、吸入ポート31を介してサプライポンプ27に吸入された燃料の全てが吐出ポート28から吐出されコモンレール25に供給される。つまりこの場合、サプライポンプ27のコモンレール25に対する燃料供給量は、そのときのエンジン11の回転速度において最大供給量となる。そして、絞り弁34が開かれることにより、吐出ポート28から吐出されない分の燃料は前記プランジャによって昇圧されることなくサプライポンプ27のリターンポート35からリターン配管36を経て燃料タンク33に戻される。この結果、サプライポンプ27からコモンレール25への燃料供給量が前記最大供給量よりも低減される。このとき、サプライポンプ27を駆動するためのエネルギは、吐出ポート28から吐出される分の燃料の昇圧に必要なエネルギと略等しい。
【0028】
一方、コモンレール25には、所定の条件が満たされた場合に開弁されることでコモンレール25の内圧(燃料の圧力)を減圧可能な電磁弁からなる減圧弁37が設けられている。この減圧弁37の開弁により、コモンレール25内の高圧燃料がリターン配管38を通じて燃料タンク33へ戻されて、コモンレール25の内圧が減圧される。
【0029】
本実施形態では、エンジン11の運転状態を検出するために、水温センサ41、回転速度センサ42、アクセルセンサ43、燃料圧センサ44等の各種センサが用いられている。水温センサ41はシリンダブロック14に取付けられ、ウォータジャケット14a内を流れる冷却水の温度である冷却水温を検出する。この冷却水温に関する検出値は、後述するECU46においてエンジン11の温度を把握するために参照される。回転速度センサ42はクランク軸の近傍に配置され、単位時間当たりの同クランク軸の回転数であるエンジン11の回転速度(エンジン回転速度)を検出する。アクセルセンサ43は、運転者によるアクセルペダル39の踏込み量であるアクセル開度を検出する。燃料圧センサ44はコモンレール25に取付けられ、そのコモンレール25の内圧を検出する。
【0030】
また車両には、前記各種センサ41〜44の検出値に基づきエンジン11の各部を制御するために、制御装置としての電子制御装置(ECU)46が設けられている。ECU46はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行ない、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。なお、ECU46は、エンジン11の始動時からの経過時間をカウント可能なタイマー47を備えている。
【0031】
本実施形態では、ECU46がコモンレール25の内圧をエンジンの運転状態に対して好適なものとすべく制御するようになっている。このコモンレール25の内圧制御は、ECU46によって絞り弁34や減圧弁37の開度が制御されることで行われる。ECU46は、前記各種センサ41〜44及びタイマー47からの情報に基づき絞り弁34の開度調節制御による内圧制御(調量制御)と減圧弁37の開度調節制御による内圧制御(減圧制御)とを切り替えつつコモンレール25の内圧制御を行う。ちなみに、絞り弁34による調量制御、及び、減圧弁37による減圧制御は、ともに閉ループ制御である。即ち本実施形態では、コモンレール25の内圧に関する閉ループ制御において、絞り弁34による調量制御及び減圧弁37による減圧制御の一方が行われる。
【0032】
減圧弁37による減圧制御が行われる場合、絞り弁34による調量制御は行われず、絞り弁34は開ループ制御によって閉弁された状態とされる。つまり、サプライポンプ27のコモンレール25に対する燃料供給量は、そのときのエンジン11の回転速度において最大となり、サプライポンプ27が必要とする駆動エネルギも同様にそのときのエンジン11の回転速度において最大となる。そして、減圧弁37による減圧制御においては、この状態で減圧弁37がコモンレール25の圧力抜き(減圧)を行う。
【0033】
なお、減圧弁37はコモンレール25に設けられてリターン配管38を介したコモンレール25からの燃料排出を制御するのみであるため、燃料温度即ち燃料粘度の影響によるその制御誤差が比較的少ない。つまり、減圧弁37による減圧制御は、燃料温度によって左右され難く、広い温度範囲に亘って比較的高い制御性を有するものであると言える。
【0034】
一方、絞り弁34による調量制御が行われる場合、減圧弁37による減圧制御は行われず、減圧弁37は開ループ制御によって閉弁された状態とされる。この状態では、減圧弁37によるリターン配管38を介したコモンレール25からの燃料排出制御は行われず、サプライポンプ27からコモンレール25への燃料供給量の制御によるコモンレール25の内圧制御が行われる。
【0035】
この燃料供給量の制御においては、必要な燃料供給量の燃料に対する昇圧が行われれば済むようにサプライポンプ27の仕事量が調節されることになるため、減圧弁37による減圧制御に比較して、サプライポンプ27の駆動のためのエネルギの無駄が低減され、駆動効率がよくなる。
【0036】
本実施形態においてECU46は、コモンレール25の内圧制御の制御性とサプライポンプ27の駆動効率とを両立すべく、絞り弁34による調量制御及び減圧弁37による減圧制御を切り替えつつ前記内圧制御を行う。そしてECU46は、絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えによるインジェクタ23の燃料噴射状態の変動を抑制すべく、前記切替えを、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていないことを条件に行う。
【0037】
ECU46は前記切替えに関する制御に際し、図2及び図3に示す「切替え制御ルーチン」を所定のタイミングで、例えば所定時間毎に繰り返し実行する。
ECU46は、まずステップS100において、車両のイグニッションスイッチがOFF状態からON状態に切替えられるという状態変化があったか否かを判定する。これにより、エンジン11の始動がなされたか否かが判定される。
【0038】
ステップS100判定がYESの場合、エンジン11はこの時点で始動されたことになり、ステップS105においてECU46は、タイマー47を初期化するとともに、エンジン11の始動時点からの経過時間のカウントを開始する。そしてステップS110において絞り弁制御移行フラグをゼロとしてこれをRAMに記憶させた後、処理をステップS115に移行する。一方、ステップS100判定がNOの場合、今回のステップS100判定時よりも前のステップS100判定時にエンジン11が始動された、即ち、今回のステップS100判定時よりも前の時点で既にエンジン11が駆動状態にあるとされる。従ってこの場合、ステップS105及びステップS110の処理を行うことなくステップS115に移行する。
【0039】
ステップS115においては、水温センサ41によって検出された冷却水温が、所定の最低制御切替許可温度α以上であるか否かが判定される。この判定により、冷却水温が、絞り弁34にて制御性の充分なコモンレール25の内圧制御を行うために最低限必要な温度(α)以上であるか否かが判断される。即ちECU46はステップS115判定により、エンジン11の温度が、絞り弁34による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度以上であるか否かを判断する。
【0040】
ステップS115判定がNOの場合、絞り弁34による調量制御では充分な制御性のコモンレール25の内圧制御を行うことは不可能であるとして、燃料温度が低温であっても比較的制御性に優れる減圧弁37による減圧制御を通じて前記内圧制御を行うべく、ステップS135に移行する。これにより、減圧弁37による減圧制御を通じてコモンレール25の内圧制御が行われる。
【0041】
一方、ステップS115判定がYESの場合は、ステップS120においてエンジン11の始動時点からの経過時間が制御切替許可時間ta以上であるか否かが判定される。このステップS120判定がNOの場合、絞り弁34による調量制御では充分な制御性のコモンレール25の内圧制御を行うことは不可能であるとして、減圧弁37による減圧制御を通じて前記内圧制御を行うべく、ステップS135に移行する。
【0042】
これは、仮に冷却水温が最低制御切替許可温度α以上であったとしても、エンジン11の始動時点からの経過時間が不充分なために、シリンダ13内のオイル潤滑不足によるピストン15の摺動摩擦抵抗の増大によってエンジン11の仕事量が大きくなっている可能性があると考えられるからである。サプライポンプ27はエンジン11の回転に同期して駆動されるという構造上、ピストン15の摺動摩擦抵抗の増大によりエンジン11の仕事量が大きくなった状態では、絞り弁34による調量制御ではコモンレール25の内圧制御の制御性を高く維持することが困難となる虞がある。さらに、エンジン11の始動時点からの経過時間が不充分な場合には、絞り弁34を構成する電磁コイルが充分に昇温されておらず、例えばこの電磁コイルからECU46へのフィードバック電流が安定しないなど、制御性を高く維持することが困難となる虞がある。即ち、ステップS120の判定は、これらによる制御性の低下を回避するために行われる。
【0043】
ステップS120判定がYESの場合、ステップS125において絞り弁制御移行フラグが1であるか否かが判定される。このステップS125判定がYESの場合、既に絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御を行うことが許可されているものとして、図3に示すルーチンの処理を行うことなく、ステップS130に移行する。これにより、絞り弁34による調量制御を通じてコモンレール25の内圧制御が行われる(継続される)。一方、ステップS125判定がNOの場合、即ち、絞り弁制御移行フラグがゼロの場合、絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御を許可するための判定が行われる必要があるとして、ステップS140において冷却水温が所定の暖機完了温度β以上であるか否かが判定される。なお、暖機完了温度βは最低制御切替許可温度αよりも高く設定されている。
【0044】
このステップS140判定がYESの場合、エンジン11が充分暖機されて安定した状態にあるとして、ステップS145に移行する。このステップS145においては、エンジン11の始動時点からの経過時間が所定時間tb以上であるか否かが判定される。
【0045】
このステップS145判定がYESの場合、燃料温度が後述のアイドル状態での絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御において充分な制御性を発揮できる高さとなるための時間(tb)が経過したものとして、ステップS150に移行する。このステップS150においては、エンジン11がアイドル状態にあるか否かが判定される。この判定においては、水温センサ41によって検出された冷却水温、回転速度センサ42によって検出されたエンジン回転速度、アクセルセンサ43によって検出されたアクセル開度、及び、燃料圧センサ44によって検出されたコモンレール25の内圧等が参照される。前記アイドル状態においては、インジェクタ23からの燃料噴射が低圧で噴射量の極少ない状態で安定的に行われるとともに、エンジン11が一定の安定状態に保たれた状態にあるとされる。この状態では、コモンレール25の内圧制御において絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御とを切り替えても、前記両弁間における前記内圧制御の誤差に起因する燃料噴射状態の変動を、ユーザーに対してエンジン11に異常が発生したとの誤認を与えない程度に抑制できる。
【0046】
このステップS150判定がYESの場合、絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御を行うことが可能であるとして、ステップS155において絞り弁制御移行フラグを1としてこれをRAMに記憶させた後、ステップS130に移行する。即ち、本実施形態においては、燃料温度が充分に高温であり、エンジン11が充分に暖機されるとともにアイドル状態にある場合には、絞り弁34による調量制御を通じてコモンレール25の内圧制御が行われる。即ち、ステップS140判定、ステップS145判定、及び、ステップS150判定の全てがYESの場合、ECU46は、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていない無噴射状態に等しい状態にあると見なす。なお例えば、この時点まで減圧弁37による減圧制御を通じたコモンレール25の内圧制御が行われていた場合には、この時点を以て前記内圧制御は絞り弁34による調量制御を通じたものに切り替えられることになる。
【0047】
一方、ステップS140判定、ステップS145判定、及び、ステップS150判定のいずれかがNOの場合には、ステップS160において冷却水温が所定の無噴射時制御切替許可温度γ以上であるか否かが判定される。即ちECU46はステップS160判定により、エンジン11の温度や燃料温度が、インジェクタ23の無噴射時において絞り弁34による調量制御を許可するために必要な所定の温度以上であるか否かを判断する。なお、各温度α,β,γは、「最低制御切替許可温度α<無噴射時制御切替許可温度γ<暖機完了温度β」の高低関係となるように設定されている。
【0048】
このステップS160判定がYESの場合、エンジン11の温度が、インジェクタ23の無噴射時において絞り弁34による調量制御を通じて充分な制御性で以てコモンレール25の内圧制御を行うことができる状態にあるとして、ステップS165に移行する。
【0049】
ステップS165においては、エンジン回転速度が所定回転速度ra以上か否かが判定される。この所定回転速度raは、前記アイドル状態におけるエンジン回転速度rbよりも高く設定されている。
【0050】
このステップS165判定がYESの場合、減圧弁37による減圧制御から絞り弁34による調量制御への切替えがアイドル一定速制御に影響を与えることがないとして、ステップS170に移行する。このアイドル一定速制御とは、アクセルペダル39がOFFされる(アクセル開度ゼロ%状態)などのエンジン回転速度の急減時において、エンジン回転速度の落ち込みによるエンジンストール等を回避するべくエンジン回転速度をアイドル状態における回転速度rbに復帰させるための燃料噴射制御である。
【0051】
本実施形態では、前記エンジン回転速度の急減時において、エンジン回転速度が所定回転速度ra以上である場合には、インジェクタ23からの燃料噴射が停止される(無噴射状態)。一方、エンジン回転速度が所定回転速度ra未満である場合には、エンジン回転速度がエンジン回転速度rbを大きく下回ってエンジンストールが引き起こされること等が発生せぬよう、インジェクタ23からの燃料噴射が行われるように制御される(アイドル一定速制御状態)。
【0052】
つまり、エンジン回転速度が所定回転速度ra未満である場合には、アクセル開度がゼロ%であってもインジェクタ23からの燃料噴射が行われる可能性がある。そのため、仮にこの状態で減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御との切替えが行われた場合、これによってアイドル一定速制御における燃料噴射状態が影響を受ける虞がある。この場合、アイドル一定速制御の制御性が低下するとともに、燃料噴射中にはその噴射状態に変動を来し、エンジン11の回転速度やエンジン音が変動する虞がある。つまりステップS165においては、燃料噴射がなされる可能性があるときに前述の減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御とが切り替えられることを回避するため、エンジン回転速度が、アイドル一定速制御の行われることのない所定回転速度ra以上の回転速度であるか否かが判定される。
【0053】
ステップS170においては、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間tc以上継続されたか否かが判定される。このステップS170判定がYESの場合、コモンレール25の内圧制御における減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御との切替えが減速ショック低減制御に影響を与えることがないとして、ステップS155の処理後、ステップS130に移行する。この減速ショック低減制御とは、アクセル開度が所定値以上の大きな開度変化率でゼロ%に急減された場合に、エンジン回転速度が急減されることで車両に大きな減速ショックが発生することを防止するべく、インジェクタ23の燃料噴射を急停止することなく徐々に燃料噴射量を低減する制御である。なお、前記開度変化率とは、単位時間あたりのアクセル開度値の変化の大きさを示すものである。この率が大きいほど、急激にゼロ%に向けて減少されたことになる。
【0054】
本実施形態では、前記減速ショック低減制御において燃料噴射が行われる時間が、最長でも所定時間tc未満となるように設定されている。即ち本実施形態では、アクセル開度が所定値以上の開度変化率でゼロ%に急減されても、インジェクタ23からの燃料噴射は急停止されず徐々に燃料噴射量が低減され、所定時間tc未満の猶予時間内で燃料噴射量がゼロとされる。
【0055】
仮にアクセル開度がゼロ%である状態が所定時間tc未満である場合に減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御との切替えが行われた場合、この切替えによって前記減速ショック低減制御における燃料噴射状態に変動を来し、エンジン11の回転速度やエンジン音が変動する虞がある。即ちステップS170では、燃料噴射がなされる可能性があるときに前述の減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御とが切り替えられることを回避するため、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間tc以上継続され、インジェクタ23が無噴射状態となっているか否かが判定される。
【0056】
したがって、本実施形態では、ステップS170判定がYESの場合には、インジェクタ23が無噴射である状態において、減圧弁37による減圧制御から絞り弁34による調量制御への切替えが行われる。これによれば、エンジン11においては、前記切替えによる燃料噴射状態の変動、ひいてはエンジン11の回転速度やエンジン音等の変動が発生し難くなる。
【0057】
一方、ステップS160判定、ステップS165判定、及び、ステップS170判定のいずれかがNOの場合には、絞り弁34による調量制御では充分な制御性を得られない可能性が高いとして、ステップS135に移行し、減圧弁37による減圧制御を通じてコモンレール25の内圧制御を行う。
【0058】
なお、例えばマニュアル車の発進時など、ユーザーの意に反してエンジン11がストップしてしまった場合、イグニッションスイッチをOFF状態とすることなくON状態のままエンジン11を再始動すれば、ステップS100判定はNOとなる。したがって、この場合、絞り弁制御移行フラグは1のまま維持されるため、コモンレール25の内圧制御において絞り弁34による調量制御から減圧弁37による減圧制御への切替えは行われない。
【0059】
しかし、エンジン11がストップした後の再始動時などに、一旦イグニッションスイッチをOFF状態とした後にON状態とした場合には、ステップS100判定がYESとなる。そのため、ステップS105においてタイマー47の初期化が行われ、仮にステップS115判定がYESであったとしても、ステップS120判定がNOとなって減圧弁37による減圧制御を通じたコモンレール25の内圧制御が行われることになる。
【0060】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
(1) コモンレール25の内圧制御における絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えは、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていない、または、前記燃料噴射が行われていないと見なされた状態においてのみ行われる。そのため、前記両弁間における前記内圧制御の誤差に起因する燃料噴射状態の変動が発生し難い状態となる。つまり例えば、インジェクタ23からの燃料噴射が行われている、または、前記燃料噴射が行われていると見なされるときに絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行う場合に比較して、前記切替え時においてエンジン11の回転速度やエンジン音等が変動しなくなる。したがって、エンジン11の回転速度やエンジン音等の変動を発生させることなく、コモンレール25の内圧の制御性とサプライポンプ27の駆動効率との両立を図ることができる。
【0061】
(2) ECU46は、エンジン11の始動に伴って減圧弁37による減圧制御を通じたコモンレール25の内圧制御を実行する。またECU46は、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件の成立に伴って絞り弁34による調量制御に切り替えて以降は、この絞り弁34による調量制御を通じてコモンレール25の内圧制御を実行する。これによれば、例えば、エンジン11の始動直後等の燃料温度が比較的低いときに減圧弁37による減圧制御を通じてコモンレール25の内圧制御を行い、暖機後燃料温度が充分高くなってから絞り弁34による調量制御を通じて前記内圧制御を行うということが可能になる。ちなみに、減圧弁37による減圧制御においては燃料温度即ち燃料粘度がその制御性に与える影響が比較的小さく、絞り弁34による調量制御においてはサプライポンプ27の駆動効率が比較的高い。したがってコモンレール25の内圧制御において、燃料温度の比較的低いときの制御性の確保と、燃料温度の比較的高いときのサプライポンプ27の高い駆動効率の確保とが可能になる。
【0062】
(3) ECU46は、ステップS170の処理によって、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていない条件の成立を、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間tc以上継続されることに基づき判断する。これによれば、例えば、前記減速ショック低減制御が行われる場合においても、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件の成立を判断することができる。
【0063】
(4) ECU46は、ステップS165において、エンジン11の回転速度が所定の速度ra以上であることを、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件の成立を判断するための評価の対象とする。従って例えば、前記アイドル一定速制御が行われる場合においても、前記条件の成立を判断することができる。
【0064】
(5) ECU46は、ステップS160において、エンジン11の温度が、インジェクタ23の無噴射時において絞り弁34による調量制御を許可するために必要な所定の温度γ以上であることを、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件の成立を判断するための評価の対象とする。これによれば、エンジンの温度や燃料温度が、インジェクタ23の無噴射時において充分な制御性で以て絞り弁34による調量制御を行うことができる状態にあるか否かを判断することができる。つまりステップS160においては、ステップS165及びステップS170における処理を行うための前提となる判断がなされる。
【0065】
(6) ECU46は、エンジン11がアイドル状態にあるとき、エンジン11の温度が暖機完了温度(冷却水温の暖機完了温度βに対応)以上であり、且つ、エンジン11の始動後、所定時間tbを経過したと判断した場合に、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件が成立したと見なす。これによれば、ECU46は、エンジン11の状態が、インジェクタ23からの燃料噴射が実際には行われているアイドル状態にあっても、エンジン11の温度が暖機完了温度以上であり、且つ、エンジン11の始動後、所定時間tbを経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なす。つまり、この場合、インジェクタ23からの燃料噴射が行われている状態であってもその燃料噴射状態が安定した状態にあると判断され、絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行うための条件が成立したと判断される。この燃料噴射状態が安定したアイドル状態においては、前記切替えに起因するインジェクタ23の燃料噴射状態の変動を極力抑え込むことができるため、エンジン11の回転速度やエンジン音の変動を可及的に抑止可能である。
【0066】
(7) ECU46は、エンジン11の温度が、絞り弁34による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度α以上であり、且つ、エンジン11の始動後、絞り弁34による調量制御を許可するために最低限必要な時間taを経過したことを評価対象としている。これらの評価対象が採用されることで、例えば、前記条件が既に成立したと判断された後に再度その条件の成立を判断する際の処理負担を軽減することができる。即ち本実施形態では、ステップS115判定及びステップS120判定が共にYESの場合、ステップS125において絞り弁制御移行フラグが1であることが確認されれば、他の評価対象が評価されることなく絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御が継続される。また、ステップS115判定及びステップS120判定のいずれかがNOの場合には、他の評価対象が評価されることなく減圧弁37による減圧制御を通じた前記内圧制御が行われる。つまり、これらの場合、図3に示すルーチンの処理が省かれ、前記条件の成立を再判断する際の処理負担が軽減される。
【0067】
(8) ECU46は、水温センサ41、回転速度センサ42、アクセルセンサ43、燃料圧センサ44、及び、タイマー47からの情報に基づいて絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行う。これによれば、前記切替えを行うために、特段にセンサ類を設ける必要がない。したがって、例えば、部品点数の増加を防止することができる。
【0068】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、以下の様態としてもよい。
・ 前記実施形態では、絞り弁34による調量制御及び減圧弁37による減圧制御の一方を通じてコモンレール25の内圧制御が行われる場合、他方は閉弁状態にされたが、開ループ制御等によって閉弁状態以外の所定の開度に保たれるようになっていてもよい。
【0069】
・ 減圧弁37に、コモンレール25の内圧が異常な高圧状態となった場合に、ECU46の制御に因らず、自律的にコモンレール25の内圧を低減可能なリリーフ弁としての機能を持たせてもよい。
【0070】
・ コモンレール25の内圧制御における絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行うために、水温センサ41、回転速度センサ42、アクセルセンサ43、燃料圧センサ44、及び、タイマー47以外に、特段にセンサ類を設けてもよい。
【0071】
・ 前記実施形態では、エンジン11のアイドル状態においても絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行うことができるようにしたが、前記アイドル状態において前記切替えを行わないようにしてもよい。この場合、例えば、前記切替え制御ルーチンにおいて、各ステップS140,S145及びS150の処理を省略するとともに、ステップS125判定がNOの場合に処理をステップS160に移行するようにする。
【0072】
・ 本発明は、ディーゼルエンジンに限らず、蓄圧室内の燃料圧力に基づき、燃料の噴射量や噴射圧を制御するようにしたエンジン、例えば燃焼室内に燃料を直接噴射する直接噴射式のガソリンエンジンにも適用可能である。
【0073】
・ 本発明は、車載エンジンに限らず、車両以外の移動体用エンジンにも適用可能である。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0074】
(1)高圧燃料を蓄積するための蓄圧室と、該蓄圧室内の燃料をエンジンの燃焼室内に噴射するためのインジェクタと、燃料タンク側から前記蓄圧室に供給される燃料を加圧するためのサプライポンプと、該ポンプによって前記蓄圧室に供給される燃料の圧力を制御するためのポンプ調量弁と、前記蓄圧室の内圧を減圧するために該蓄圧室から前記燃料タンク側への燃料排出を制御する減圧弁とを備えた燃料噴射装置の制御を行う制御装置であって、
前記制御装置は、前記ポンプ調量弁による調量制御及び前記減圧弁による減圧制御を切り替えつつ、前記蓄圧室の内圧を制御するとともに、前記ポンプ調量弁による調量制御と前記減圧弁による減圧制御との切替えを、前記インジェクタから前記燃焼室内への燃料噴射が行われていないことを条件に行うことを特徴とする燃料噴射装置の制御装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料噴射装置の一実施形態についてその概要を示す構成図。
【図2】同実施形態による絞り弁と減圧弁との切替え処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態による絞り弁と減圧弁との切替え処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
11…畜圧式ディーゼルエンジン、13…燃焼室としての気筒(シリンダ)、23…インジェクタ、25…蓄圧室としてのコモンレール、27…サプライポンプ、33…燃料タンク、34…ポンプ調量弁としての絞り弁、37…減圧弁、46…制御装置としての電子制御装置(ECU)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン、特に、車載エンジン等の燃焼室内に噴射する高圧燃料を蓄積する蓄圧室の内圧を制御するための弁を備えた燃料噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の燃料噴射装置としては、例えば、特開2001−182638号公報に記載されたものがある。この装置では、インジェクタを介してエンジンの気筒(燃焼室)内に噴射される高圧燃料を蓄積するためのコモンレール(蓄圧室)が設けられている。このコモンレールの内圧は、例えば、排ガス値や騒音の改善のために所望とされる所定の圧力を維持すべく制御装置によってフィードバック制御される。
【0003】
一方、こうした燃料噴射装置においては、上記の圧力制御を行うために、コモンレールの内圧を減圧するための減圧弁と、前記コモンレールに高圧燃料を加圧供給するサプライポンプの燃料供給圧力を制御するポンプ調量弁とが設けられることがある。即ちこの場合、前記コモンレールの内圧制御は、適宜の制御装置によってこれら両弁の開度が制御されることにより行われる。
【0004】
そして一般に、これら2つの弁を用いたコモンレールの内圧制御においては、エンジンの始動直後など、エンジン温度が比較的低く、燃料温度も比較的低い状態においては、燃料粘度等の影響を受けにくい前記減圧弁が用いられる。ちなみに、燃料粘度は燃料温度の影響を受けて変動する。他方、エンジンの始動時からの経過時間が所定時間以上となった場合など、エンジン温度や燃料温度が比較的高く安定した状態では、燃料粘度等の影響は比較的受けやすいものの前記サプライポンプの駆動効率に優れる前記ポンプ調量弁が用いられる。このように、エンジン温度などに基づいて前記減圧弁のみによる制御と前記ポンプ調量弁のみによる制御とを切り替えることで、エンジン温度が低い場合などにおける前記コモンレール内圧の制御性と、エンジン温度が高い場合などにおける前記サプライポンプの駆動効率との両立が図られるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記減圧弁及びポンプ調量弁といった2種の弁の切替制御を通じてコモンレール内圧の制御性とサプライポンプの駆動効率との両立は確かに図られるようにはなるものの、それら弁の切替えに伴う次のような不都合も無視できないものとなっている。即ち上記の構成において、エンジンの運転中に前述の弁の切替えが行われると、前記両弁間における前記コモンレール内圧制御の誤差に起因して燃料噴射状態が変動する虞がある。ちなみに、この内圧制御の誤差は、例えば、前記両弁間の制御態様の差異などに起因して発生する。そして、こうして燃料噴射状態が変動すると、エンジンの回転速度やエンジン音等も変動することとなり、ひいてはユーザーに、エンジンに異常が発生したとの誤認をも与えかねない。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄圧室の内圧の制御性とサプライポンプの駆動効率とのより安定した両立を図ることが可能な燃料噴射装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に係る発明では、燃料噴射装置は、高圧燃料を蓄積するための蓄圧室と、該蓄圧室内の燃料をエンジンの燃焼室内に噴射するためのインジェクタと、燃料タンク側から前記蓄圧室に供給される燃料を加圧するためのサプライポンプとを備えている。また燃料噴射装置は、前記ポンプによって前記蓄圧室に供給される燃料の圧力を制御するためのポンプ調量弁と、前記蓄圧室の内圧を減圧するために該蓄圧室から前記燃料タンク側への燃料排出を制御する減圧弁とを備えている。
【0008】
さらに燃料噴射装置は、それらポンプ調量弁による調量制御及び減圧弁による減圧制御を切り替えつつ、前記蓄圧室の内圧を制御する制御装置を備えている。そしてこの制御装置は、前記ポンプ調量弁による調量制御と前記減圧弁による減圧制御との切替えを、前記インジェクタから前記燃焼室内への燃料噴射が行われていないことを条件に行う。
【0009】
この発明によれば、蓄圧室の内圧制御をポンプ調量弁による調量制御と減圧弁による減圧制御とで切り替える際には、インジェクタから燃焼室内への燃料噴射が行われていないため、前記両弁間における前記内圧制御の誤差に起因する燃料噴射状態の変動が発生し難い状態となる。つまり、蓄圧室の内圧制御において、ポンプ調量弁による調量制御と減圧弁による減圧制御との切替えを、例えばインジェクタからの燃料噴射が行われているときに行う場合に比較して、前記切替え時においてエンジンの回転速度やエンジン音等が変動しなくなる。したがって、エンジンの回転速度やエンジン音等の変動を発生させることなく、蓄圧室の内圧の制御性とサプライポンプの駆動効率との両立を図ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の発明において、前記制御装置は、前記エンジンの始動に伴って前記減圧弁による減圧制御を通じた前記蓄圧室の内圧制御を実行する。また前記制御装置は、前記条件の成立に伴って前記ポンプ調量弁による調量制御に切り替えて以降は、同ポンプ調量弁による調量制御を通じて前記蓄圧室の内圧制御を実行する。
【0011】
この発明によれば、例えば、エンジンの始動直後等の燃料温度が比較的低いときに減圧弁による減圧制御を通じて蓄圧室の内圧制御を行い、暖機後燃料温度が充分高くなってからポンプ調量弁による調量制御を通じて前記内圧制御を行うということが可能になる。ちなみに、前記減圧弁による減圧制御においては燃料温度即ち燃料粘度がその制御性に与える影響が比較的小さく、前記ポンプ調量弁による調量制御においてはサプライポンプの駆動効率が比較的高い。したがって前記蓄圧室の内圧制御において、燃料温度の比較的低いときの制御性の確保と、燃料温度の比較的高いときのサプライポンプの高い駆動効率の確保とが可能になる。
【0012】
請求項3に係る発明では、請求項1または2に記載の発明において、前記エンジンが車載エンジンであり、前記制御装置は、前記インジェクタから前記燃焼室内への燃料噴射が行われていない条件の成立を、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間以上継続されることに基づき判断する。
【0013】
この発明によれば、例えば、アクセル開度がゼロ%とされた時点にインジェクタから燃焼室内への燃料噴射が急停止されず、その時点から燃料噴射量が漸減されるように燃料噴射制御が行われる場合においても、前記インジェクタからの燃料噴射が行われていない条件の成立を判断することができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、請求項3に記載の発明において、前記制御装置は、前記エンジンの回転速度が所定の速度以上であること、及び、前記エンジンの温度が、前記インジェクタの無噴射時において前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために必要な所定の温度以上であることを更に評価して前記条件の成立を判断する。
【0015】
この発明によれば、制御装置は、エンジンの回転速度が所定の速度以上であることを評価の対象とする。従って例えば、アクセル開度がゼロ%とされたときなどの前記エンジンの回転速度の急減時において、前記回転速度の落ち込みによるエンジンストール等を回避するべく、前記回転速度が所定の速度を下回ったときに燃料噴射量を増加方向に制御する場合などにおいても、前記条件の成立を判断できる。
【0016】
また、前記制御装置は、前記エンジンの温度が、前記インジェクタの無噴射時において前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために必要な所定の温度以上であることを評価の対象とする。これによれば、エンジンの温度が、インジェクタの無噴射時において充分な制御性で以てポンプ調量弁による調量制御を行うことができる状態にあるか否かを判断することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、請求項3または4に記載の発明において、前記制御装置は、前記エンジンがアイドル状態にあるとき、前記エンジンの温度が暖機完了温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、所定時間を経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なす。
【0018】
この発明によれば、制御装置は、エンジンの状態が、インジェクタからの燃料噴射が実際には行われているアイドル状態にあっても、前記エンジンの温度が暖機完了温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、所定時間を経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なす。つまり、この場合、前記インジェクタからの燃料噴射が行われている状態であってもその燃料噴射状態が安定した状態にあると判断され、前記ポンプ調量弁による調量制御と前記減圧弁による減圧制御との切替えを行うための条件が成立したと判断される。この燃料噴射状態が安定したアイドル状態においては、前記切替えに起因する燃料噴射状態の変動を極力抑え込むことができるため、前記エンジンの回転速度やエンジン音の変動を可及的に抑止可能である。
【0019】
請求項6に係る発明では、請求項3〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記制御装置は、更に、前記エンジンの温度が、前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、同ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な時間を経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なす。
【0020】
この発明では、前記エンジンの温度が、前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、同ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な時間を経過したことが評価対象とされている。そしてこれらの評価対象が採用されることで、例えば、前記条件が既に成立したと判断された後に再度その条件の成立を判断する際の処理負担を軽減することができる。即ち、例えば前記評価対象を必須評価対象とした上で、前記条件の成立を判断するための他の評価対象が既に評価されて前記条件が既に成立したと判断された場合に、その後の前記条件の成立の再判断処理時において前記必須評価対象のみを評価するようにすることで、前記再判断処理の負担を軽減できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の燃料噴射装置を具体化した一実施形態を、図面に従って説明する。
【0022】
車両には、図1に示すように、車載エンジンとしての畜圧式ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、シリンダヘッド12と、複数の燃焼室を構成する気筒(シリンダ)13を有するシリンダブロック14とを備えている。各シリンダ13内にはピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15はコネクティングロッド16を介し、エンジン11の出力軸であるクランク軸(図示しない)に連結されている。各ピストン15の往復運動は、コネクティングロッド16によって回転運動に変換された後、クランク軸に伝達される。
【0023】
各シリンダ13には吸気通路18が接続されており、エンジン11の外部の空気が吸気通路18を通って各シリンダ13に取込まれる。また、シリンダ13には排気通路19が接続されている。シリンダヘッド12には、シリンダ13毎に吸気弁21及び排気弁22が設けられている。これらの吸・排気弁21,22は、前記クランク軸の回転に連動して往復動することにより、吸・排気通路18,19とシリンダ13との接続部分を開閉する。
【0024】
また、シリンダヘッド12には、各シリンダ13に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)23が取付けられている。各インジェクタ23から対応するシリンダ13への燃料噴射は、電磁弁24により制御される。インジェクタ23は、蓄圧室としてのコモンレール25に接続されており、電磁弁24が開いている間、コモンレール25内の燃料がインジェクタ23から、対応するシリンダ13に噴射される。
【0025】
そして、吸気通路18を通ってシリンダ13内に導入され、かつピストン15により圧縮された高温かつ高圧の吸入空気に、インジェクタ23から燃料が噴射される。この噴射燃料は自己着火して燃焼する。このときに生じた燃焼ガスによりピストン15が往復動され、クランク軸が回転されて、エンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。燃焼ガスは、排気通路19を通ってエンジン11の外部へ排出される。
【0026】
前述のコモンレール25には、燃料噴射圧に相当する比較的高い高圧燃料が蓄積されている。この高圧燃料の蓄積(畜圧)を実現するために、コモンレール25は、供給配管26を介してサプライポンプ27の吐出ポート28に接続されている。このサプライポンプ27としては、公知の構造の吐出容量可変タイプの高圧ポンプが用いられている。即ち、サプライポンプ27の吸入ポート31は、フィルタ32を介して燃料タンク33に接続されている。サプライポンプ27は、燃料タンク33からフィルタ32を介して燃料を吸入する。また、サプライポンプ27は、エンジン11の回転に同期する図示しないカムによってプランジャを往復動させ、燃料を昇圧してコモンレール25に供給する。
【0027】
サプライポンプ27の吐出ポート28の近傍には、その吐出ポート28からコモンレール25へ向けて供給される燃料の圧力、ひいては吐出量(供給量)を制御するための電磁弁からなるポンプ調量弁としての絞り弁34が設けられている。この絞り弁34の開度調節制御により、サプライポンプ27に吸入された燃料のうち吐出ポート28から吐出される燃料の量が制御される。即ち、絞り弁34が閉じられた状態では、吸入ポート31を介してサプライポンプ27に吸入された燃料の全てが吐出ポート28から吐出されコモンレール25に供給される。つまりこの場合、サプライポンプ27のコモンレール25に対する燃料供給量は、そのときのエンジン11の回転速度において最大供給量となる。そして、絞り弁34が開かれることにより、吐出ポート28から吐出されない分の燃料は前記プランジャによって昇圧されることなくサプライポンプ27のリターンポート35からリターン配管36を経て燃料タンク33に戻される。この結果、サプライポンプ27からコモンレール25への燃料供給量が前記最大供給量よりも低減される。このとき、サプライポンプ27を駆動するためのエネルギは、吐出ポート28から吐出される分の燃料の昇圧に必要なエネルギと略等しい。
【0028】
一方、コモンレール25には、所定の条件が満たされた場合に開弁されることでコモンレール25の内圧(燃料の圧力)を減圧可能な電磁弁からなる減圧弁37が設けられている。この減圧弁37の開弁により、コモンレール25内の高圧燃料がリターン配管38を通じて燃料タンク33へ戻されて、コモンレール25の内圧が減圧される。
【0029】
本実施形態では、エンジン11の運転状態を検出するために、水温センサ41、回転速度センサ42、アクセルセンサ43、燃料圧センサ44等の各種センサが用いられている。水温センサ41はシリンダブロック14に取付けられ、ウォータジャケット14a内を流れる冷却水の温度である冷却水温を検出する。この冷却水温に関する検出値は、後述するECU46においてエンジン11の温度を把握するために参照される。回転速度センサ42はクランク軸の近傍に配置され、単位時間当たりの同クランク軸の回転数であるエンジン11の回転速度(エンジン回転速度)を検出する。アクセルセンサ43は、運転者によるアクセルペダル39の踏込み量であるアクセル開度を検出する。燃料圧センサ44はコモンレール25に取付けられ、そのコモンレール25の内圧を検出する。
【0030】
また車両には、前記各種センサ41〜44の検出値に基づきエンジン11の各部を制御するために、制御装置としての電子制御装置(ECU)46が設けられている。ECU46はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行ない、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。なお、ECU46は、エンジン11の始動時からの経過時間をカウント可能なタイマー47を備えている。
【0031】
本実施形態では、ECU46がコモンレール25の内圧をエンジンの運転状態に対して好適なものとすべく制御するようになっている。このコモンレール25の内圧制御は、ECU46によって絞り弁34や減圧弁37の開度が制御されることで行われる。ECU46は、前記各種センサ41〜44及びタイマー47からの情報に基づき絞り弁34の開度調節制御による内圧制御(調量制御)と減圧弁37の開度調節制御による内圧制御(減圧制御)とを切り替えつつコモンレール25の内圧制御を行う。ちなみに、絞り弁34による調量制御、及び、減圧弁37による減圧制御は、ともに閉ループ制御である。即ち本実施形態では、コモンレール25の内圧に関する閉ループ制御において、絞り弁34による調量制御及び減圧弁37による減圧制御の一方が行われる。
【0032】
減圧弁37による減圧制御が行われる場合、絞り弁34による調量制御は行われず、絞り弁34は開ループ制御によって閉弁された状態とされる。つまり、サプライポンプ27のコモンレール25に対する燃料供給量は、そのときのエンジン11の回転速度において最大となり、サプライポンプ27が必要とする駆動エネルギも同様にそのときのエンジン11の回転速度において最大となる。そして、減圧弁37による減圧制御においては、この状態で減圧弁37がコモンレール25の圧力抜き(減圧)を行う。
【0033】
なお、減圧弁37はコモンレール25に設けられてリターン配管38を介したコモンレール25からの燃料排出を制御するのみであるため、燃料温度即ち燃料粘度の影響によるその制御誤差が比較的少ない。つまり、減圧弁37による減圧制御は、燃料温度によって左右され難く、広い温度範囲に亘って比較的高い制御性を有するものであると言える。
【0034】
一方、絞り弁34による調量制御が行われる場合、減圧弁37による減圧制御は行われず、減圧弁37は開ループ制御によって閉弁された状態とされる。この状態では、減圧弁37によるリターン配管38を介したコモンレール25からの燃料排出制御は行われず、サプライポンプ27からコモンレール25への燃料供給量の制御によるコモンレール25の内圧制御が行われる。
【0035】
この燃料供給量の制御においては、必要な燃料供給量の燃料に対する昇圧が行われれば済むようにサプライポンプ27の仕事量が調節されることになるため、減圧弁37による減圧制御に比較して、サプライポンプ27の駆動のためのエネルギの無駄が低減され、駆動効率がよくなる。
【0036】
本実施形態においてECU46は、コモンレール25の内圧制御の制御性とサプライポンプ27の駆動効率とを両立すべく、絞り弁34による調量制御及び減圧弁37による減圧制御を切り替えつつ前記内圧制御を行う。そしてECU46は、絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えによるインジェクタ23の燃料噴射状態の変動を抑制すべく、前記切替えを、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていないことを条件に行う。
【0037】
ECU46は前記切替えに関する制御に際し、図2及び図3に示す「切替え制御ルーチン」を所定のタイミングで、例えば所定時間毎に繰り返し実行する。
ECU46は、まずステップS100において、車両のイグニッションスイッチがOFF状態からON状態に切替えられるという状態変化があったか否かを判定する。これにより、エンジン11の始動がなされたか否かが判定される。
【0038】
ステップS100判定がYESの場合、エンジン11はこの時点で始動されたことになり、ステップS105においてECU46は、タイマー47を初期化するとともに、エンジン11の始動時点からの経過時間のカウントを開始する。そしてステップS110において絞り弁制御移行フラグをゼロとしてこれをRAMに記憶させた後、処理をステップS115に移行する。一方、ステップS100判定がNOの場合、今回のステップS100判定時よりも前のステップS100判定時にエンジン11が始動された、即ち、今回のステップS100判定時よりも前の時点で既にエンジン11が駆動状態にあるとされる。従ってこの場合、ステップS105及びステップS110の処理を行うことなくステップS115に移行する。
【0039】
ステップS115においては、水温センサ41によって検出された冷却水温が、所定の最低制御切替許可温度α以上であるか否かが判定される。この判定により、冷却水温が、絞り弁34にて制御性の充分なコモンレール25の内圧制御を行うために最低限必要な温度(α)以上であるか否かが判断される。即ちECU46はステップS115判定により、エンジン11の温度が、絞り弁34による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度以上であるか否かを判断する。
【0040】
ステップS115判定がNOの場合、絞り弁34による調量制御では充分な制御性のコモンレール25の内圧制御を行うことは不可能であるとして、燃料温度が低温であっても比較的制御性に優れる減圧弁37による減圧制御を通じて前記内圧制御を行うべく、ステップS135に移行する。これにより、減圧弁37による減圧制御を通じてコモンレール25の内圧制御が行われる。
【0041】
一方、ステップS115判定がYESの場合は、ステップS120においてエンジン11の始動時点からの経過時間が制御切替許可時間ta以上であるか否かが判定される。このステップS120判定がNOの場合、絞り弁34による調量制御では充分な制御性のコモンレール25の内圧制御を行うことは不可能であるとして、減圧弁37による減圧制御を通じて前記内圧制御を行うべく、ステップS135に移行する。
【0042】
これは、仮に冷却水温が最低制御切替許可温度α以上であったとしても、エンジン11の始動時点からの経過時間が不充分なために、シリンダ13内のオイル潤滑不足によるピストン15の摺動摩擦抵抗の増大によってエンジン11の仕事量が大きくなっている可能性があると考えられるからである。サプライポンプ27はエンジン11の回転に同期して駆動されるという構造上、ピストン15の摺動摩擦抵抗の増大によりエンジン11の仕事量が大きくなった状態では、絞り弁34による調量制御ではコモンレール25の内圧制御の制御性を高く維持することが困難となる虞がある。さらに、エンジン11の始動時点からの経過時間が不充分な場合には、絞り弁34を構成する電磁コイルが充分に昇温されておらず、例えばこの電磁コイルからECU46へのフィードバック電流が安定しないなど、制御性を高く維持することが困難となる虞がある。即ち、ステップS120の判定は、これらによる制御性の低下を回避するために行われる。
【0043】
ステップS120判定がYESの場合、ステップS125において絞り弁制御移行フラグが1であるか否かが判定される。このステップS125判定がYESの場合、既に絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御を行うことが許可されているものとして、図3に示すルーチンの処理を行うことなく、ステップS130に移行する。これにより、絞り弁34による調量制御を通じてコモンレール25の内圧制御が行われる(継続される)。一方、ステップS125判定がNOの場合、即ち、絞り弁制御移行フラグがゼロの場合、絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御を許可するための判定が行われる必要があるとして、ステップS140において冷却水温が所定の暖機完了温度β以上であるか否かが判定される。なお、暖機完了温度βは最低制御切替許可温度αよりも高く設定されている。
【0044】
このステップS140判定がYESの場合、エンジン11が充分暖機されて安定した状態にあるとして、ステップS145に移行する。このステップS145においては、エンジン11の始動時点からの経過時間が所定時間tb以上であるか否かが判定される。
【0045】
このステップS145判定がYESの場合、燃料温度が後述のアイドル状態での絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御において充分な制御性を発揮できる高さとなるための時間(tb)が経過したものとして、ステップS150に移行する。このステップS150においては、エンジン11がアイドル状態にあるか否かが判定される。この判定においては、水温センサ41によって検出された冷却水温、回転速度センサ42によって検出されたエンジン回転速度、アクセルセンサ43によって検出されたアクセル開度、及び、燃料圧センサ44によって検出されたコモンレール25の内圧等が参照される。前記アイドル状態においては、インジェクタ23からの燃料噴射が低圧で噴射量の極少ない状態で安定的に行われるとともに、エンジン11が一定の安定状態に保たれた状態にあるとされる。この状態では、コモンレール25の内圧制御において絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御とを切り替えても、前記両弁間における前記内圧制御の誤差に起因する燃料噴射状態の変動を、ユーザーに対してエンジン11に異常が発生したとの誤認を与えない程度に抑制できる。
【0046】
このステップS150判定がYESの場合、絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御を行うことが可能であるとして、ステップS155において絞り弁制御移行フラグを1としてこれをRAMに記憶させた後、ステップS130に移行する。即ち、本実施形態においては、燃料温度が充分に高温であり、エンジン11が充分に暖機されるとともにアイドル状態にある場合には、絞り弁34による調量制御を通じてコモンレール25の内圧制御が行われる。即ち、ステップS140判定、ステップS145判定、及び、ステップS150判定の全てがYESの場合、ECU46は、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていない無噴射状態に等しい状態にあると見なす。なお例えば、この時点まで減圧弁37による減圧制御を通じたコモンレール25の内圧制御が行われていた場合には、この時点を以て前記内圧制御は絞り弁34による調量制御を通じたものに切り替えられることになる。
【0047】
一方、ステップS140判定、ステップS145判定、及び、ステップS150判定のいずれかがNOの場合には、ステップS160において冷却水温が所定の無噴射時制御切替許可温度γ以上であるか否かが判定される。即ちECU46はステップS160判定により、エンジン11の温度や燃料温度が、インジェクタ23の無噴射時において絞り弁34による調量制御を許可するために必要な所定の温度以上であるか否かを判断する。なお、各温度α,β,γは、「最低制御切替許可温度α<無噴射時制御切替許可温度γ<暖機完了温度β」の高低関係となるように設定されている。
【0048】
このステップS160判定がYESの場合、エンジン11の温度が、インジェクタ23の無噴射時において絞り弁34による調量制御を通じて充分な制御性で以てコモンレール25の内圧制御を行うことができる状態にあるとして、ステップS165に移行する。
【0049】
ステップS165においては、エンジン回転速度が所定回転速度ra以上か否かが判定される。この所定回転速度raは、前記アイドル状態におけるエンジン回転速度rbよりも高く設定されている。
【0050】
このステップS165判定がYESの場合、減圧弁37による減圧制御から絞り弁34による調量制御への切替えがアイドル一定速制御に影響を与えることがないとして、ステップS170に移行する。このアイドル一定速制御とは、アクセルペダル39がOFFされる(アクセル開度ゼロ%状態)などのエンジン回転速度の急減時において、エンジン回転速度の落ち込みによるエンジンストール等を回避するべくエンジン回転速度をアイドル状態における回転速度rbに復帰させるための燃料噴射制御である。
【0051】
本実施形態では、前記エンジン回転速度の急減時において、エンジン回転速度が所定回転速度ra以上である場合には、インジェクタ23からの燃料噴射が停止される(無噴射状態)。一方、エンジン回転速度が所定回転速度ra未満である場合には、エンジン回転速度がエンジン回転速度rbを大きく下回ってエンジンストールが引き起こされること等が発生せぬよう、インジェクタ23からの燃料噴射が行われるように制御される(アイドル一定速制御状態)。
【0052】
つまり、エンジン回転速度が所定回転速度ra未満である場合には、アクセル開度がゼロ%であってもインジェクタ23からの燃料噴射が行われる可能性がある。そのため、仮にこの状態で減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御との切替えが行われた場合、これによってアイドル一定速制御における燃料噴射状態が影響を受ける虞がある。この場合、アイドル一定速制御の制御性が低下するとともに、燃料噴射中にはその噴射状態に変動を来し、エンジン11の回転速度やエンジン音が変動する虞がある。つまりステップS165においては、燃料噴射がなされる可能性があるときに前述の減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御とが切り替えられることを回避するため、エンジン回転速度が、アイドル一定速制御の行われることのない所定回転速度ra以上の回転速度であるか否かが判定される。
【0053】
ステップS170においては、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間tc以上継続されたか否かが判定される。このステップS170判定がYESの場合、コモンレール25の内圧制御における減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御との切替えが減速ショック低減制御に影響を与えることがないとして、ステップS155の処理後、ステップS130に移行する。この減速ショック低減制御とは、アクセル開度が所定値以上の大きな開度変化率でゼロ%に急減された場合に、エンジン回転速度が急減されることで車両に大きな減速ショックが発生することを防止するべく、インジェクタ23の燃料噴射を急停止することなく徐々に燃料噴射量を低減する制御である。なお、前記開度変化率とは、単位時間あたりのアクセル開度値の変化の大きさを示すものである。この率が大きいほど、急激にゼロ%に向けて減少されたことになる。
【0054】
本実施形態では、前記減速ショック低減制御において燃料噴射が行われる時間が、最長でも所定時間tc未満となるように設定されている。即ち本実施形態では、アクセル開度が所定値以上の開度変化率でゼロ%に急減されても、インジェクタ23からの燃料噴射は急停止されず徐々に燃料噴射量が低減され、所定時間tc未満の猶予時間内で燃料噴射量がゼロとされる。
【0055】
仮にアクセル開度がゼロ%である状態が所定時間tc未満である場合に減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御との切替えが行われた場合、この切替えによって前記減速ショック低減制御における燃料噴射状態に変動を来し、エンジン11の回転速度やエンジン音が変動する虞がある。即ちステップS170では、燃料噴射がなされる可能性があるときに前述の減圧弁37による減圧制御と絞り弁34による調量制御とが切り替えられることを回避するため、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間tc以上継続され、インジェクタ23が無噴射状態となっているか否かが判定される。
【0056】
したがって、本実施形態では、ステップS170判定がYESの場合には、インジェクタ23が無噴射である状態において、減圧弁37による減圧制御から絞り弁34による調量制御への切替えが行われる。これによれば、エンジン11においては、前記切替えによる燃料噴射状態の変動、ひいてはエンジン11の回転速度やエンジン音等の変動が発生し難くなる。
【0057】
一方、ステップS160判定、ステップS165判定、及び、ステップS170判定のいずれかがNOの場合には、絞り弁34による調量制御では充分な制御性を得られない可能性が高いとして、ステップS135に移行し、減圧弁37による減圧制御を通じてコモンレール25の内圧制御を行う。
【0058】
なお、例えばマニュアル車の発進時など、ユーザーの意に反してエンジン11がストップしてしまった場合、イグニッションスイッチをOFF状態とすることなくON状態のままエンジン11を再始動すれば、ステップS100判定はNOとなる。したがって、この場合、絞り弁制御移行フラグは1のまま維持されるため、コモンレール25の内圧制御において絞り弁34による調量制御から減圧弁37による減圧制御への切替えは行われない。
【0059】
しかし、エンジン11がストップした後の再始動時などに、一旦イグニッションスイッチをOFF状態とした後にON状態とした場合には、ステップS100判定がYESとなる。そのため、ステップS105においてタイマー47の初期化が行われ、仮にステップS115判定がYESであったとしても、ステップS120判定がNOとなって減圧弁37による減圧制御を通じたコモンレール25の内圧制御が行われることになる。
【0060】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
(1) コモンレール25の内圧制御における絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えは、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていない、または、前記燃料噴射が行われていないと見なされた状態においてのみ行われる。そのため、前記両弁間における前記内圧制御の誤差に起因する燃料噴射状態の変動が発生し難い状態となる。つまり例えば、インジェクタ23からの燃料噴射が行われている、または、前記燃料噴射が行われていると見なされるときに絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行う場合に比較して、前記切替え時においてエンジン11の回転速度やエンジン音等が変動しなくなる。したがって、エンジン11の回転速度やエンジン音等の変動を発生させることなく、コモンレール25の内圧の制御性とサプライポンプ27の駆動効率との両立を図ることができる。
【0061】
(2) ECU46は、エンジン11の始動に伴って減圧弁37による減圧制御を通じたコモンレール25の内圧制御を実行する。またECU46は、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件の成立に伴って絞り弁34による調量制御に切り替えて以降は、この絞り弁34による調量制御を通じてコモンレール25の内圧制御を実行する。これによれば、例えば、エンジン11の始動直後等の燃料温度が比較的低いときに減圧弁37による減圧制御を通じてコモンレール25の内圧制御を行い、暖機後燃料温度が充分高くなってから絞り弁34による調量制御を通じて前記内圧制御を行うということが可能になる。ちなみに、減圧弁37による減圧制御においては燃料温度即ち燃料粘度がその制御性に与える影響が比較的小さく、絞り弁34による調量制御においてはサプライポンプ27の駆動効率が比較的高い。したがってコモンレール25の内圧制御において、燃料温度の比較的低いときの制御性の確保と、燃料温度の比較的高いときのサプライポンプ27の高い駆動効率の確保とが可能になる。
【0062】
(3) ECU46は、ステップS170の処理によって、インジェクタ23からシリンダ13内への燃料噴射が行われていない条件の成立を、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間tc以上継続されることに基づき判断する。これによれば、例えば、前記減速ショック低減制御が行われる場合においても、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件の成立を判断することができる。
【0063】
(4) ECU46は、ステップS165において、エンジン11の回転速度が所定の速度ra以上であることを、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件の成立を判断するための評価の対象とする。従って例えば、前記アイドル一定速制御が行われる場合においても、前記条件の成立を判断することができる。
【0064】
(5) ECU46は、ステップS160において、エンジン11の温度が、インジェクタ23の無噴射時において絞り弁34による調量制御を許可するために必要な所定の温度γ以上であることを、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件の成立を判断するための評価の対象とする。これによれば、エンジンの温度や燃料温度が、インジェクタ23の無噴射時において充分な制御性で以て絞り弁34による調量制御を行うことができる状態にあるか否かを判断することができる。つまりステップS160においては、ステップS165及びステップS170における処理を行うための前提となる判断がなされる。
【0065】
(6) ECU46は、エンジン11がアイドル状態にあるとき、エンジン11の温度が暖機完了温度(冷却水温の暖機完了温度βに対応)以上であり、且つ、エンジン11の始動後、所定時間tbを経過したと判断した場合に、インジェクタ23からの燃料噴射が行われていない条件が成立したと見なす。これによれば、ECU46は、エンジン11の状態が、インジェクタ23からの燃料噴射が実際には行われているアイドル状態にあっても、エンジン11の温度が暖機完了温度以上であり、且つ、エンジン11の始動後、所定時間tbを経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なす。つまり、この場合、インジェクタ23からの燃料噴射が行われている状態であってもその燃料噴射状態が安定した状態にあると判断され、絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行うための条件が成立したと判断される。この燃料噴射状態が安定したアイドル状態においては、前記切替えに起因するインジェクタ23の燃料噴射状態の変動を極力抑え込むことができるため、エンジン11の回転速度やエンジン音の変動を可及的に抑止可能である。
【0066】
(7) ECU46は、エンジン11の温度が、絞り弁34による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度α以上であり、且つ、エンジン11の始動後、絞り弁34による調量制御を許可するために最低限必要な時間taを経過したことを評価対象としている。これらの評価対象が採用されることで、例えば、前記条件が既に成立したと判断された後に再度その条件の成立を判断する際の処理負担を軽減することができる。即ち本実施形態では、ステップS115判定及びステップS120判定が共にYESの場合、ステップS125において絞り弁制御移行フラグが1であることが確認されれば、他の評価対象が評価されることなく絞り弁34による調量制御を通じたコモンレール25の内圧制御が継続される。また、ステップS115判定及びステップS120判定のいずれかがNOの場合には、他の評価対象が評価されることなく減圧弁37による減圧制御を通じた前記内圧制御が行われる。つまり、これらの場合、図3に示すルーチンの処理が省かれ、前記条件の成立を再判断する際の処理負担が軽減される。
【0067】
(8) ECU46は、水温センサ41、回転速度センサ42、アクセルセンサ43、燃料圧センサ44、及び、タイマー47からの情報に基づいて絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行う。これによれば、前記切替えを行うために、特段にセンサ類を設ける必要がない。したがって、例えば、部品点数の増加を防止することができる。
【0068】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、以下の様態としてもよい。
・ 前記実施形態では、絞り弁34による調量制御及び減圧弁37による減圧制御の一方を通じてコモンレール25の内圧制御が行われる場合、他方は閉弁状態にされたが、開ループ制御等によって閉弁状態以外の所定の開度に保たれるようになっていてもよい。
【0069】
・ 減圧弁37に、コモンレール25の内圧が異常な高圧状態となった場合に、ECU46の制御に因らず、自律的にコモンレール25の内圧を低減可能なリリーフ弁としての機能を持たせてもよい。
【0070】
・ コモンレール25の内圧制御における絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行うために、水温センサ41、回転速度センサ42、アクセルセンサ43、燃料圧センサ44、及び、タイマー47以外に、特段にセンサ類を設けてもよい。
【0071】
・ 前記実施形態では、エンジン11のアイドル状態においても絞り弁34による調量制御と減圧弁37による減圧制御との切替えを行うことができるようにしたが、前記アイドル状態において前記切替えを行わないようにしてもよい。この場合、例えば、前記切替え制御ルーチンにおいて、各ステップS140,S145及びS150の処理を省略するとともに、ステップS125判定がNOの場合に処理をステップS160に移行するようにする。
【0072】
・ 本発明は、ディーゼルエンジンに限らず、蓄圧室内の燃料圧力に基づき、燃料の噴射量や噴射圧を制御するようにしたエンジン、例えば燃焼室内に燃料を直接噴射する直接噴射式のガソリンエンジンにも適用可能である。
【0073】
・ 本発明は、車載エンジンに限らず、車両以外の移動体用エンジンにも適用可能である。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0074】
(1)高圧燃料を蓄積するための蓄圧室と、該蓄圧室内の燃料をエンジンの燃焼室内に噴射するためのインジェクタと、燃料タンク側から前記蓄圧室に供給される燃料を加圧するためのサプライポンプと、該ポンプによって前記蓄圧室に供給される燃料の圧力を制御するためのポンプ調量弁と、前記蓄圧室の内圧を減圧するために該蓄圧室から前記燃料タンク側への燃料排出を制御する減圧弁とを備えた燃料噴射装置の制御を行う制御装置であって、
前記制御装置は、前記ポンプ調量弁による調量制御及び前記減圧弁による減圧制御を切り替えつつ、前記蓄圧室の内圧を制御するとともに、前記ポンプ調量弁による調量制御と前記減圧弁による減圧制御との切替えを、前記インジェクタから前記燃焼室内への燃料噴射が行われていないことを条件に行うことを特徴とする燃料噴射装置の制御装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料噴射装置の一実施形態についてその概要を示す構成図。
【図2】同実施形態による絞り弁と減圧弁との切替え処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態による絞り弁と減圧弁との切替え処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
11…畜圧式ディーゼルエンジン、13…燃焼室としての気筒(シリンダ)、23…インジェクタ、25…蓄圧室としてのコモンレール、27…サプライポンプ、33…燃料タンク、34…ポンプ調量弁としての絞り弁、37…減圧弁、46…制御装置としての電子制御装置(ECU)。
Claims (6)
- 高圧燃料を蓄積するための蓄圧室と、該蓄圧室内の燃料をエンジンの燃焼室内に噴射するためのインジェクタと、燃料タンク側から前記蓄圧室に供給される燃料を加圧するためのサプライポンプと、該ポンプによって前記蓄圧室に供給される燃料の圧力を制御するためのポンプ調量弁と、前記蓄圧室の内圧を減圧するために該蓄圧室から前記燃料タンク側への燃料排出を制御する減圧弁と、それらポンプ調量弁による調量制御及び減圧弁による減圧制御を切り替えつつ、前記蓄圧室の内圧を制御する制御装置とを備えた燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記ポンプ調量弁による調量制御と前記減圧弁による減圧制御との切替えを、前記インジェクタから前記燃焼室内への燃料噴射が行われていないことを条件に行うことを特徴とする燃料噴射装置。
- 前記制御装置は、前記エンジンの始動に伴って前記減圧弁による減圧制御を通じた前記蓄圧室の内圧制御を実行し、前記条件の成立に伴って前記ポンプ調量弁による調量制御に切り替えて以降は、同ポンプ調量弁による調量制御を通じて前記蓄圧室の内圧制御を実行する請求項1に記載の燃料噴射装置。
- 前記エンジンが車載エンジンであり、前記制御装置は、前記インジェクタから前記燃焼室内への燃料噴射が行われていない条件の成立を、アクセル開度がゼロ%である状態が所定時間以上継続されることに基づき判断する請求項1または2に記載の燃料噴射装置。
- 請求項3に記載の燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記エンジンの回転速度が所定の速度以上であること、及び、前記エンジンの温度が、前記インジェクタの無噴射時において前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために必要な所定の温度以上であることを更に評価して前記条件の成立を判断することを特徴とする燃料噴射装置。
- 請求項3または4に記載の燃料噴射装置において、前記制御装置は、前記エンジンがアイドル状態にあるとき、前記エンジンの温度が暖機完了温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、所定時間を経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なすことを特徴とする燃料噴射装置。
- 請求項3〜5のいずれか一項に記載の燃料噴射装置において、前記制御装置は、更に、前記エンジンの温度が、前記ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な所定の温度以上であり、且つ、同エンジンの始動後、同ポンプ調量弁による調量制御を許可するために最低限必要な時間を経過したと判断した場合に、前記条件が成立したと見なすことを特徴とする燃料噴射装置。
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