JP3632097B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料ポンプの吐出行程毎の余剰燃料戻し量を制御することにより燃料蓄圧室内の燃料圧力を制御しつつ、該燃料蓄圧室内の燃料を燃料噴射弁から機関に供給する構成を有した燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガソリンエンジン等の火花点火式エンジンにおいて、燃料を燃焼室内に直接噴射し、低・中負荷領域では、燃料を圧縮行程で噴射することにより点火プラグ付近のみに可燃混合気を層状に生成して成層燃焼を行い、これにより、空燃比を大幅にリーンとした燃焼を可能として燃費,排気浄化性能を大きく改善した技術が開発されている。
【0003】
但し、該成層燃焼を行なうエンジンでも、所定以上の高負荷領域などでは、限られたシリンダ容積で要求トルクを確保するためには、燃料を吸気行程で噴射して均質に混合した混合気を形成し、均質燃焼を行なう必要があり、したがって、成層燃焼と均質燃焼とを運転状態に応じて切り換えるようにしている。
かかる機関では、燃焼方式の切換に応じて燃料噴射時期におけるシリンダ内圧力が異なるため、これに応じて燃料噴射弁からの燃料噴射圧力を切り換える必要がある。また、燃焼方式の切換以外でも機関運転条件に応じて所望の燃料噴射圧力に制御することが要求されている。
【0004】
この要求を満たすため、燃料ポンプから燃料蓄圧室に供給される毎回の燃料供給量をプレッシャレギュレータで制御することにより、前記燃料蓄圧室内の燃料圧力を目標値に制御しつつ、該燃料蓄圧室内の燃料を燃料噴射弁から機関に供給するようにした燃料噴射圧力制御装置が提案されている。
例えば、燃料タンクからフィードポンプにより供給される燃料をカム駆動されるプランジャにより吸入して吐出する燃料ポンプ(以下単気筒ポンプという) と、燃料吐出口と低圧源(燃料タンク) との間に介装され、該単気筒ポンプの吐出行程の初期又は後期に開弁するプレッシャレギュレータとしての電磁弁を備え、該電磁弁を開弁して吐出燃料を低圧源に戻すシステムにおいて、前記電磁弁の開弁期間を制御して燃料蓄圧室に供給される燃料量を制御することにより、燃料蓄圧室内の燃料圧力を制御するものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、内燃機関においては、例えば高回転時からの減速運転時に、減速性や燃費向上のため機関への燃料供給をカットすることが一般に行われている。
ところで、前記燃料供給カット後に燃料供給を再開する場合、前記燃料噴射圧力を可変に制御する方式では、減速運転時の燃料供給カット直前の高めに設定された燃料噴射圧力に対し、アイドル状態で燃料供給を再開する際には、燃料噴射圧力が高いままだと、燃焼が良好に行われず、エンストにいたるおそれがあるため、燃料噴射圧力は十分低下させておく必要がある。
【0006】
しかしながら、燃料供給カット条件が成立後、直ちに燃料供給カットを行うと、燃料蓄圧室内の燃料圧力が低下しないため、燃料供給再開時にアイドル状態に応じた目標燃料圧力に低下させることができない。
一方、トルクショック緩和の目的で、燃料供給カット条件成立後、燃料供給カットの開始を遅らせ、その間トルクを徐々に減少させつつトルクを推定し、該推定されたトルクが安定状態となってから燃料供給カットを実行するようにしたものがある。
【0007】
しかしながら、上記のように推定したトルクのみで燃料供給カットの開始を遅らせる方式では、トルクは低下しても燃料圧力が目標値まで低下しない場合があり、燃料供給再開時の燃焼性を悪化させてしまうことがあった。
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、燃料供給カット開始の遅延時間を適切に設定することにより、燃料供給再開後の燃焼性能を良好に維持できるようにした内燃機関の燃料噴射圧力制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため請求項1に係る発明は、図1に示すように、
燃料ポンプの吐出行程毎に余剰燃料を燃料吸入側に戻しつつ燃料蓄圧室に供給される毎回の燃料供給量を制御することにより、前記燃料蓄圧室内の燃料圧力を目標値に制御しつつ該燃料蓄圧室内の燃料を燃料噴射弁から機関に供給する内燃機関の燃料噴射圧力制御装置において、
所定の減速運転条件で燃料噴射弁からの燃料供給カット条件成立時に、燃料蓄圧室内の燃料圧力が燃料供給再開時の目標値になり、かつ、機関のトルクの降下特性を推定し、該推定されたトルクが安定状態となるまでは、燃料ポンプから燃料蓄圧室への燃料供給を停止しつつ、燃料供給カットの開始を遅らせる一方、燃料供給カット遅延中に前記推定されたトルクが安定状態となるより前に、燃料蓄圧室内の燃料圧力が目標値になったときは、燃料供給カットが開始されるまで該目標値を維持するように前記燃料ポンプから燃料蓄圧室への燃料供給をフィードバック制御することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によると、燃料蓄圧室内の燃料圧力つまり燃料噴射圧力が燃料供給再開時のアイドル状態に応じた燃料圧力に減少し、かつ、推定されたトルクが安定状態となるまでは、燃料供給カットが開始されないので、燃料供給再開時の燃焼を良好に維持でき、エンストの発生等を防止できると同時に、燃料供給カット開始時のトルクショックも回避できる。
【0011】
また、燃料供給カット遅延中に推定トルクが安定するより先に燃料圧力が目標値に達した場合は、そのまつ燃料ポンプから燃料蓄圧室への供給を停止すると燃料圧力が目標値より低下してしまうので、燃料ポンプから燃料蓄圧室への燃料供給を行い、該目標値を維持するようにフィードバック制御する。
また、請求項2に係る発明は、
燃料蓄圧室内の燃料圧力を検出する燃料圧力検出手段を含んでいることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によると、燃料圧力を直接検出した結果を用いることにより精度の良い制御が行える。但し、燃料噴射量の積算等によって燃料蓄圧室からの燃料減少量を算出して燃料圧力を推定することも可能である。
また、請求項3に係る発明は、
前記燃料噴射弁は、燃料を直接燃焼室内に噴射供給することを特徴とする。
【0013】
かかる構成によると、成層燃焼と均質燃焼との切換などに応じて燃料噴射圧力を可変に設定されることを要求される直噴式火花点火機関等に適用したときに十分な効果を発揮できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図2は、本発明の一実施の形態に係る内燃機関の燃料噴射圧力制御装置の全体構成を示す。
図2において、燃料タンク1には、該タンク1内の燃料を圧送する電動式フィードポンプ2が装着され、該フィードポンプ2から吐出された燃料は燃料フィルタ3、燃料ダンパ4、チェックバルブ5を介装した燃料通路6を介して単気筒型の燃料ポンプ7に吸入される。該燃料ポンプ7は、機関回転に連動するカムシャフトにより駆動されて上下動するピストンの下降時に燃料を吸入口側から吸い込み、上昇時に吐出する構造を有している。一方、前記燃料ポンプ7の吐出口と燃料タンク1との間に電磁弁(プレッシャレギュレータ) 8及びチェックバルブ9を介装したリターン通路10が配設されている。前記燃料ポンプ7の吐出口には、チェックバルブ11を介して燃料蓄圧室(コモンレール) 12が接続され、該燃料蓄圧室12から分岐する各分岐管13を介して接続された燃料噴射弁14が図示しない内燃機関の燃焼室に装着されている。前記燃料蓄圧室12には、該蓄圧室12内の燃料圧力を検出する燃圧センサ15が装着されている。なお、燃料ポンプ7をバイパスする2つの燃料通路にそれぞれ逆向きにチェックバルブ16,17が介装され燃料ポンプ7の非作動時に、燃料蓄圧室12内の燃料圧力を所定圧力に維持できるようにしている。
【0015】
前記電磁弁8は、コントロールユニット18からの制御信号により駆動制御され、該電磁弁8を制御して燃料ポンプ7から燃料蓄圧室11への燃料供給量を制御することにより、該燃料蓄圧室12内の燃料圧力ひいては燃料噴射弁14の燃料噴射圧力が制御される。前記コントロールユニット18は、前記燃圧センサ15から燃料蓄圧室12内の燃料圧力を入力すると共に、機関の各種運転状態を検出するセンサからの信号を入力し、該機関運転条件に基づいて後述するように電磁弁8の制御量を設定する。
【0016】
前記電磁弁8の動作の概要を説明すると、図3に示すように、前記燃料ポンプ7のピストン上死点(TDC) で閉弁し、該上死点から下死点に至るピストン下降中にポンプ7内に燃料が吸入され、ピストンが上昇に転じると電磁弁8が閉弁されている間はリターン通路10が閉じているので、燃料ポンプ7から吐出された燃料はチェックバルブ11を介して燃料蓄圧室12に供給される。電磁弁8が開弁すると、燃料ポンプ7から吐出された燃料は開弁された電磁弁8を介してリターン通路9から燃料タンク1に戻され、燃料蓄圧室12への供給は停止される。したがって、電磁弁8の上死点で閉弁された後、燃料吐出行程での開弁時期θopを制御することにより、燃料が燃料蓄圧室12に供給される期間つまり供給量が制御され、ひいては燃料蓄圧室12内の燃料圧力, つまり燃料噴射圧力が制御される。なお、吸入行程から吐出行程の途中まで開弁し、その後次の吸入行程開始まで閉弁して該吐出行程後期の閉弁期間中に燃料を燃料蓄圧室に供給する構成であってもよい。
【0017】
次に、燃料供給カット制御を、図4に示したフローチャートに従い、図4のタイムチャートを参照して説明する。
ステップ(図ではSと記す。以下同様) 1では、所定の燃料供給カット条件が成立したか否かを判定する。具体的には、機関が所定以上の高回転時でアクセルを離したアイドル状態であることなどを条件として判定する。
【0018】
燃料供給カット条件が成立した場合は、ステップ2へ進み、燃料ポンプ7から燃料蓄圧室12への燃料供給を停止するように電磁弁8を開放状態に維持する。
ステップ3では、燃圧センサ15によって検出された燃料蓄圧室12内の燃料圧力を読み込む。
ステップ4では、推定トルクTを演算する。具体的には、減速によって減少する燃料噴射量により推定することができる。
【0019】
ステップ5では、前記検出された燃料圧力が燃料供給再開後のアイドル状態に応じた目標燃料圧力(例えば5Pa) に達したか否かを判定し、達するのを待ってステップ6へ進む。
ステップ6では、ステップ4で推定されたトルクTの変化率ΔT(=Told −Tnew ) が0に近い設定値DT1以下に減少したかを判定し、減少していれば、トルクが十分低下しアイドル状態に応じた値に安定したと判断して直ちにステップ8へ進み、設定値DT1以下に減少していなければ、ステップ7へ進み燃料ポンプ7から燃料蓄圧室12への燃料供給を開始し、現在の燃料圧力の目標値を維持するように電磁弁8の開閉をフィードバック制御した後、ステップ6へ戻り推定トルクが安定するのを待ってステップ8へ進む。
【0020】
ステップ8では、燃料ポンプ7から燃料蓄圧室12への燃料供給を停止状態に維持しつつ燃料供給カットを開始する。
このようにすれば、図5に示すように、少なくとも燃料蓄圧室12内の燃料圧力つまり燃料噴射圧力が燃料供給再開時のアイドル状態に応じた燃料圧力に減少するまでは、燃料供給カットが開始されないので、燃料供給再開時の燃焼を良好に維持でき、エンストの発生等を防止できる。また、推定トルクの安定より先に燃料圧力が目標値に達した場合は、更に推定トルクがアイドル状態に対応したトルクに安定するまで十分に低下するのを待ってから燃料供給カットを開始する。これにより、燃料供給カット開始時のトルクショックも回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を示す機能ブロック図
【図2】一実施の形態の全体構成を示す図。
【図3】同上実施の形態の燃料ポンプの吐出量制御の様子を示すタイムチャート。
【図4】同上実施の形態の燃料供給カット時の制御を示すフローチャート。
【図5】同上実施の形態の燃料供給カット時の各種状態量のの変化を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1 燃料タンク
7 燃料ポンプ
8 電磁弁
12 燃料蓄圧室
14 燃料噴射弁
15 燃圧センサ
18 コントロールユニット
Claims (3)
- 燃料ポンプの吐出行程毎に余剰燃料を燃料吸入側に戻しつつ燃料蓄圧室に供給される毎回の燃料供給量を制御することにより、前記燃料蓄圧室内の燃料圧力を目標値に制御しつつ該燃料蓄圧室内の燃料を燃料噴射弁から機関に供給する内燃機関の燃料噴射圧力制御装置において、
所定の減速運転条件で燃料噴射弁からの燃料供給カット条件成立時に、燃料蓄圧室内の燃料圧力が燃料供給再開時の目標値になり、かつ、機関のトルクの降下特性を推定し、該推定されたトルクが安定状態となるまでは、燃料ポンプから燃料蓄圧室への燃料供給を停止しつつ、燃料供給カットの開始を遅らせる一方、燃料供給カット遅延中に前記推定されたトルクが安定状態となるより前に、燃料蓄圧室内の燃料圧力が目標値になったときは、燃料供給カットが開始されるまで該目標値を維持するように前記燃料ポンプから燃料蓄圧室への燃料供給をフィードバック制御することを特徴とする内燃機関の燃料噴射圧力制御装置。 - 燃料蓄圧室内の燃料圧力を検出する燃料圧力検出手段を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記燃料噴射弁は、燃料を直接燃焼室内に噴射供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
詳細な説明
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