JP2004036235A - 鉄塔嵩上げ工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】既設鉄塔を有効利用することにより、低コストで鉄塔の嵩上げをすることができる鉄塔嵩上げ工法を提供する。
【解決手段】既設鉄塔の塔体用地内に増築塔体20用の塔体基礎21を構築し、その塔体基礎21上に増築塔体20を既設鉄塔とは別に該既設鉄塔を挿通するように立設する。そして次に、既設鉄塔における4本の主柱部と増築塔体20の四隅の間に連結部材を架設し、該連結部材を介して、既設鉄塔と増築塔体20とを連結する。すなわち、前記既設鉄塔は、前記増築塔体20の補強材として利用され、該増築塔体20と一体的に形成される構成となっている。従って、既設鉄塔を有効に利用することができ、その結果、低コストで鉄塔の嵩上げをすることができる。
【選択図】 図8
【解決手段】既設鉄塔の塔体用地内に増築塔体20用の塔体基礎21を構築し、その塔体基礎21上に増築塔体20を既設鉄塔とは別に該既設鉄塔を挿通するように立設する。そして次に、既設鉄塔における4本の主柱部と増築塔体20の四隅の間に連結部材を架設し、該連結部材を介して、既設鉄塔と増築塔体20とを連結する。すなわち、前記既設鉄塔は、前記増築塔体20の補強材として利用され、該増築塔体20と一体的に形成される構成となっている。従って、既設鉄塔を有効に利用することができ、その結果、低コストで鉄塔の嵩上げをすることができる。
【選択図】 図8
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄塔嵩上げ工法に係り、詳しくは既設鉄塔を有効利用する鉄塔嵩上げ工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、送電鉄塔は、建設されてから長年月が過ぎると、樹木の生長や市街地化に伴う線下構造物の新設等に対する電線地上高の確保、増容量化への対処等のため、鉄塔の嵩上げを行う必要が生じる。そして、その際における鉄塔嵩上げ工法としては、従来から以下のような様々な工法(第1〜第3従来技術)が知られている。
【0003】
まず、第1従来技術の工法は、図9に示すように、既設鉄塔31を包み込むように大型の新規鉄塔32を建設した後、既設送電線33を既設鉄塔31から新規鉄塔32に移線し、その後、用済みの既設鉄塔31及びその塔体基礎34を解体するもので、包み込み工法とも呼ばれている。また、第2従来技術の工法は、新規鉄塔の塔体下部となる新設主柱材をせり上げ時の仮設外塔として兼用し、大型鉄塔の組立時に使用するタワークレーンによって既設鉄塔を前記新設主柱材上までせり上げて連結支持するもので、TPU工法とも呼ばれている。
【0004】
また、第3従来技術の工法は、特開2002−97819号公報に示されるものであり、図10に示すように、既設鉄塔41の用地内に新規鉄塔42用の塔体基礎43を新設し、その塔体基礎43上に細身で嵩高の新規鉄塔42を構築するものである。その構築手順は、前記用地内において新規鉄塔42の鉄塔構成部材を専用のせり上げ装置によって最上位の鉄塔構成部材から順次に所要高までせり上げ、該鉄塔部材に下方から次位の鉄塔部材を次々と接続するものである。そして、最上位の鉄塔部材が所要高に達したところで最下位の鉄塔部材を前記塔体基礎43に連結し、その後、既設鉄塔41及びその塔体基礎44を解体するというものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記第1〜第3従来技術に係る各鉄塔嵩上げ工法には、以下のような問題があった。
【0006】
まず、第1従来技術の場合は、既設鉄塔31の外側周囲に新たな鉄塔用地の買い増し、大型の新規鉄塔32及びその塔体基礎34の新設、用済みの既設鉄塔31及びその塔体基礎34の解体等が必要であるため、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストが大きくなってしまうという問題があった。また、第2従来技術の場合も、新設主柱材及びその基礎の新設、既設鉄塔の解体等が必要である上に、既設鉄塔を持ち上げ得るような大規模なタワークレーンが必要であるため、やはり鉄塔嵩上げにかかるトータルコストが大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
また、第3従来技術の場合は、既設鉄塔41の用地内に大がかりなせり上げ専用装置を搬入、組立する必要があると共に、使用後にはその撤去が必要であった。また、既設鉄塔41と比較して細身で嵩高な新規鉄塔42の塔体基礎43は、前記既設鉄塔41の塔体基礎44よりも狭い範囲内で設置されるものであった。そのため、新規鉄塔42における垂直方向のみならず水平方向の安定性確保をも考慮すると、その塔体基礎43については、従来よりも深く強固に構築する必要があり、その基礎工事には技術的な困難性と共に大きなコストがかかっていた。さらに、新規鉄塔42への既設送電線の移線完了に伴い、最終的には既設鉄塔41及びその塔体基礎44を解体することも必要とされていた。従って、この第3従来技術にあっても、やはりトータル的に見ると、鉄塔嵩上げコストは依然として大きいという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、既設鉄塔を有効利用することにより、低コストで鉄塔の嵩上げをすることができる鉄塔嵩上げ工法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、既設鉄塔の塔体用地内に増築塔体の塔体基礎を構築する基礎構築工程と、前記増築塔体を形成するための複数の塔体部材を、最上位の塔体部材から順に前記塔体用地内でせり上げ手段により所定の高さまでせり上げると共に、そのせり上げた塔体部材の下端に次位の塔体部材を直列状に順次連結する作業を繰り返して、最上位の塔体部材が前記既設鉄塔よりも高い所定高さ位置までせり上げられた増築塔体を構築する塔体胃構築工程と、前記増築塔体における最下位の塔体部材と前記増築塔体の塔体基礎とを連結する基礎連結工程と、前記既設鉄塔と前記増築塔体との間を連結部材により連結する塔体連結工程とを有することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鉄塔嵩上げ工法において、前記塔体構築工程においては、前記既設鉄塔が前記せり上げ手段の一部として利用されることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、既設鉄塔の塔体用地内に増築塔体の塔体基礎を構築する基礎構築工程と、前記既設鉄塔を仮設外塔として利用するせり上げ手段によって、前記増築塔体を形成するための複数の塔体部材を、最上位の塔体部材から順に前記塔体用地内で所定の高さまでせり上げると共に、そのせり上げた塔体部材の下端に次位の塔体部材を直列状に順次連結する作業を繰り返して、最上位の塔体部材が前記既設鉄塔よりも高い所定高さ位置までせり上げられた増築塔体を構築する塔体構築工程と、前記増築塔体における最下位の塔体部材と前記増築塔体の塔体基礎とを連結する基礎連結工程とを有することを要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0013】
図1に示すように、既設鉄塔11は、塔体用地内に埋設された塔体基礎12上に図示しないアンカーボルトを介して固定支持されている。前記既設鉄塔11は、既設塔体13と、該既設塔体13上部に固着された複数の腕金部14とから構成されている。また、前記既設塔体13は、前記塔体基礎12から垂直方向に立設された複数(4本)の主柱部15と、各主柱部15間に水平方向へ架設された複数の水平フレーム16と、前記主柱部15と水平フレーム16との間に斜め方向に架設された複数の斜めフレーム17とによって構成されている。また、前記各腕金部14は、水平方向に片持ち支持された水平部14aと、斜め下方に片持ち支持された斜部14bとから構成されている。そして、前記水平部14aの先端には、図7に示すように、懸垂がいし18を介して、送電線19が吊されている。
【0014】
さて、前記既設鉄塔11においては、樹木の生長等に対する電線地上高の確保等の理由により、鉄塔の嵩上げが必要になる場合がある。そこで、図1に示す既設鉄塔11を嵩上げして、図8に示す新規鉄塔30を構築する際の鉄塔嵩上げ工法について、以下、工程順に説明する。
【0015】
まず、最初に基礎構築工程として、図2に示すように、前記既設鉄塔11の塔体用地内に新規鉄塔30の一部を構成することになる増築塔体20(図5参照)の塔体基礎21を構築する。該塔体基礎21は、主に前記増築塔体20の垂直方向の荷重を支持するためのものであるため、前述した第3従来技術(図10参照)の場合と異なって、比較的簡単な工事であってもよい。なお、この基礎構築工程においては、前記塔体基礎21から複数のアンカーボルトを突設させておく。
【0016】
次の塔体構築工程では、まず、図2に示すように、増築塔体20を構成する複数の塔体部材22を最上位の塔体部材22から順に前記既設鉄塔11内に搬入する。前記各塔体部材22は、図3に示すような直方体状をなすフレーム枠体に形成されている。そして、前記増築塔体20は、そのせり上げ単位ごとに分割された各塔体部材22を順次せり上げ、その下端に次位の塔体部材22を直列に連結させることにより、形成される構成となっている。
【0017】
さて、前記塔体部材22を順次連結しつつせり上げるためには、図2に示すように、塔体用地内において、4つのウインチ23(一部図示しない)を、前記既設塔体13を挟むようにして対向設置する。ちなみに、図示しない2つのウインチ23は、図2における紙面の前後方向に対向設置されている。
【0018】
その後、各ウインチ23の索条としてのワイヤー23aを、既設鉄塔11の水平に形成された最下位の腕金部14又は、該腕金部14と同等の高さの水平フレーム16に固定された4つの滑車26を介して、前記塔体部材22の上方までそれぞれ垂下させる。そして、前記各ワイヤー23aの先端に形成されたフック部23b(図3(b)参照)を、前記塔体部材22の上部フレームに4方向からそれぞれ取着固定する。
【0019】
このように塔体増築工程においては、前記既設鉄塔11における腕金部14又は水平フレーム16を、塔体部材22のせり上げ時の支点として利用することにより、前記既設鉄塔11は、前記ワイヤー23aを所定高さ位置から垂れ下げ支持するための仮設外塔を兼用する構成となっている。
【0020】
次に、図2、3に示すように、前記塔体部材22を、前記各ウインチ23によって、垂直方向へせり上げる。なお、その際に、前記塔体部材22は、水平フレーム16に支持されたガイド機構24により水平方向から保持されて垂直状に保たれつつせり上げられる。
【0021】
図3(a)(b)に示すように、前記ガイド機構24は、既設塔体13に支持された4本の支持フレーム24aと、各支持フレーム24aに取着された8個のローラ24bとによって構成されている。前記各支持フレーム24aは、前記既設鉄塔11において対向する水平フレーム16間に一対ずつ架設され、ボルトとナットを螺合することにより固定されている。前記4本の支持フレーム24aのうち2本の支持フレーム24aは、対応する水平フレーム16の上方から相互に平行に固定され、残りの2本の支持フレーム24aは、他の2本の支持フレーム24aと直角に交わるように、前記水平フレーム16の下方から相互に平行に固定されている。
【0022】
その結果、前記ガイド機構24を上方からみると、前記既設鉄塔11内部中央に、前記各支持フレーム24aによって、方形状のガイド空間25が形成される。該ガイド空間25は、前記塔体部材22が挿通できる程度の大きさに形成されている。
【0023】
また、前記各支持フレーム24aの所定の位置には、ガイド空間25の軸線方向を向いた前記ローラ24bが2つずつ取着されている。前記各ローラ24bは、円筒状をなすとともに、その軸方向には、コ字状をなすシャフトが挿通されている。そして、前記ローラ24bは、前記シャフトと前記支持フレーム24aとをボルトとナットで螺合することにより固定されている。
【0024】
すなわち、前記ガイド機構24は、前記塔体部材22の垂直方向へのせり上げ作業時において、該塔体部材22を、前記ガイド空間25に挿通させ、前記ローラ24bと摺動させてせり上げることにより、円滑かつ水平方向へのぶれを防止した状態で、せり上げし得る構造となっている。従って、本実施形態では、前記ウインチ23、ワイヤー23a、フック部23b、滑車26、及び仮設外塔を兼用する前記既設鉄塔11によって、せり上げ手段が構成されている。
【0025】
さて、この塔体構築工程では、前記塔体部材22を、次位の塔体部材22と連結するのに適する高さまでせり上げたところで、一旦、前記ウインチ23を停止し、せり上げ作業を中断する。そして、次には、次位の塔体部材22を前記既設鉄塔11内に搬入し、そして、図4に示すように、前記塔体部材22の下端に対して次位の塔体部材22の上端をボルトとナットで螺合することにより、直列状に連結し、締結する。そして、その状態から、図2に示すように、前記ウインチ23を再び稼働させ、前記直列状に連結された各塔体部材22を垂直方向へせり上げる。
【0026】
その後、下位側に連結された前記塔体部材22の下端が、さらに次位の塔体部材22を連結するのに適した高さまでせり上げられたところで、再び、せり上げ作業を中断し、さらに次位の塔体部材22を直列状に連結し、その後、せり上げ作業を再開する。
【0027】
以後、同様に、このような新たな次位の塔体部材22の搬入連結と、直列状に連結された各塔体部材22のせり上げという作業を、最上位に位置する塔体部材22が、既設鉄塔11の高さを超えて、さらに予定の高さに達するまで繰り返す。そして、その結果、最上位の塔体部材22が予定の高さに達したところで、該繰り返し作業を停止し、次の基礎構築工程に移る。
【0028】
なお、前記繰り返し作業において、最上位の塔体部材22を前記既設鉄塔11よりも高い位置まで引き上げるためには、前記各フック部23bの固定位置を、さらに下位に連結された他の塔体部材22に変更して、上記繰り返し作業を行う。
【0029】
また、前記塔体構築工程において、前記既設鉄塔11を構成する所定の鉄塔部材(例えば、頂部鉄塔部材)が、前記塔体部材22のせり上げ作業の支障になるような場合には、該鉄塔部材を切除して行う。
【0030】
次に、基礎連結工程においては、図5に示すように、増築塔体20における最下位に連結された塔体部材22の下端を、前記塔体基礎21に突設された複数のアンカーボルト(図示しない)により、前記塔体基礎21上で固定支持する。その結果、複数の塔体部材22が直列状に連結されてなる増築塔体20と塔体基礎21とが連結され、該塔体基礎21上に増築塔体20が立設される。
【0031】
次に、塔体連結工程として、図6に示すように、まず、前記既設鉄塔11の垂直方向に延びる4本の主柱部15に、所定の間隔をおいて、複数のブラケット15aを溶接(又はボルトで締結)する。各ブラケット15aは、前記既設鉄塔11の水平断面において形成される四角形の対角線方向にそれぞれ延出するように設置され、その先端には、ボルトを挿通させるためのボルト孔15bが各々2つ(3つ以上の複数でもよい)ずつ形成されている。
【0032】
一方、増築塔体20の垂直方向に延びる4本の主柱部27には、該増築塔体20の外側において、ブラケット27aを溶接(又はボルトで締結)する。該ブラケット27aは、前記ブラケット15aと対向するように、所定の間隔をおいて形成され、その先端には、ボルトを挿通させるためのボルト孔が各々2つずつ形成されている。
【0033】
その後、長板状の連結部材28を前記両ブラケット15a,27a間に配置し、その両端に形成されているボルト孔28aと、前記各ブラケット15a,27aにおける前記各ボルト孔15b等を対向させた状態で、所定のボルトとナットでそれぞれ螺合し、締結する。その結果、前記既設鉄塔11と増築塔体20とが連結部材28を介して連結される。
【0034】
次に、図7に示すように、前記増築塔体20の上部に、送電線を吊るための新規な腕金部29をボルトとナットでそれぞれ螺合し、締結する。その後、既設鉄塔11の腕金部14に懸垂がいし18を介して吊されている全ての既設送電線19を、前記腕金部29にそれぞれ移線する。最後に、図8に示すように、前記既設鉄塔11から前記腕金部14のみを解体することにより、既設鉄塔11をほぼ全部利用し、増築塔体20を増築しただけの新規鉄塔30が完成し、全工程が終了する。
【0035】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、新規鉄塔30を、既設塔体13と増築塔体20とを一体化することにより形成した。
【0036】
従って、新たに増設する増築塔体20のみを新設するだけで既設鉄塔11の嵩上げが可能なため、既設鉄塔11の嵩上げに必要な材料費用及び工事費用を低減することができ、その結果、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。また、既設鉄塔11及びその塔体基礎12を新規鉄塔30の構成部材として有効利用することにより、既設鉄塔11の解体費用及び基礎脱却費用を削減することができ、この点でも、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストをさらに低減することができる。
【0037】
(2)上記実施形態では、既設鉄塔11とは別に、該既設鉄塔11内を挿通するように増築塔体20を新設した後、該増築塔体20と、前記既設鉄塔11とを、連結部材28を介して連結した。
【0038】
従って、既設鉄塔11を、新規鉄塔30における特に水平方向の保持、補強材として有効に利用することができる。その結果、増築塔体20に伴う基礎工事のコストを、第3従来技術(図10参照)の場合と比較して、低減することができ、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。また、他方において、基礎工事を容易化できる。
【0039】
(3)上記実施形態では、既設鉄塔11における腕金部14(又は水平フレーム16)を、前記塔体部材22のせり上げ作業時において支点として利用し、既設鉄塔11(既設塔体13)を仮設外塔として兼用する構成とした。
【0040】
従って、塔体部材22をせり上げるために、大がかりな専用の装置を用いたり、新たに仮設外塔を製造する場合と比較して、塔体部材22のせり上げ費用を低減することができる。その結果、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。
【0041】
(4)上記実施形態では、ガイド空間25を形成する4本の支持フレーム24aと、各支持フレーム24aに固定された8個のローラ24bとによって構成されたガイド機構24を既設鉄塔11内に設けた。すなわち、前記ガイド機構24は、塔体部材22を前記ガイド空間25に挿通させて前記ローラ24bと摺動させつつせり上げる構造とした。
【0042】
従って、前記塔体部材22のせり上げ作業時において、該塔体部材22を円滑かつ水平方向のぶれを防止した状態でせり上げることができる。
(5)上記実施形態では、既設鉄塔11とは別に、該既設鉄塔11を挿通するように形成された増築塔体20と、既設鉄塔11の塔体用地内に設けられた増築塔体20用の塔体基礎21と、既設塔体13と、該既設塔体13の塔体基礎12とから新規鉄塔30を形成した。それとともに、既設鉄塔11における腕金部14(又は水平フレーム16)を、前記塔体部材22のせり上げ時の支点として利用し、仮設外塔を兼用する構成とした。
【0043】
従って、既設鉄塔11の塔体用地内で、新規鉄塔30の工事及び建設をすることができるため、既設鉄塔11の外側周囲に新たな鉄塔用地(工事用地)の買い増しに伴うコストを削除することができ、その結果、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。
【0044】
なお、前記実施形態は以下のように変更してもよい。
○前記実施形態では、既設鉄塔11と増築塔体20とを、長板状をなす連結部材28を介して連結させたが、該連結部材28は長板状でなくても、例えば、その両端が前記ブラケット15a及びブラケット27aを挟みこむような形状になっているようなものに適宜変更してもよい。
【0045】
○前記実施形態では、既設鉄塔11と増築塔体20とを、ボルトとナットで連結したが、それ以外にも、例えば、溶接によって連結するなど適宜変更してよい。また、前記実施形態では、塔体部材22が直方体状をなすフレーム枠体に形成されていたが、例えば所定長さの鋼管又は内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填管により塔体部材22を構成してもよい。
【0046】
○前記実施形態では、索条としてワイヤー23aを使用したが、それ以外にも、例えばチェーン等、他の部材に変更してもよい。
○前記実施形態では、仮設外塔として既設鉄塔11の水平フレーム16及び腕金部14を利用したが、既設鉄塔11を構成する鉄塔構成部材であればどこを利用してもよい。
【0047】
○前記実施形態では、ガイド機構24として支持フレーム24a及びローラ24bを使用したが、それ以外にも、例えば、水平フレーム16間に掛け渡し支持した丸太等を利用してガイドしてもよい。
【0048】
○前記実施形態では、ガイド機構24を既設鉄塔11の高さ方向における一カ所に設けたが、所定の数カ所に設けてもよい。このようにした場合には、前記塔体部材22のせり上げ作業を、さらに確実に、前記塔体部材22の水平方向へのぶれを防止した状態で行うことができる。
【0049】
○前記実施形態では、既設鉄塔11とは別に、該既設鉄塔11を挿通するように増築塔体20を新設した後において、該増築塔体20と既設鉄塔11とを連結部材28を介して連結する塔体連結工程を有したが、当該工程はなくてもよい。このようにした場合でも、既設鉄塔11を塔体部材22のせり上げ時の支点として利用し、仮設外塔として兼用することで、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。
【0050】
次に、上記実施形態及び各別例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)前記せり上げ手段は、せり上げ時に塔体部材を吊り下げて引き上げるための索条と、当該索条を所定高さ位置から垂れ下げ支持するための仮設外塔とを有しており、当該仮設外塔として前記既設鉄塔が兼用されている請求項2に記載の鉄塔嵩上げ工法。
【0051】
(ロ)前記せり上げ手段は、前記塔体部材が垂直状に保たれつつせり上げられるように該塔体部材を水平方向から保持するガイド機構を備えている請求項2又は技術的思想(イ)に記載の鉄塔嵩上げ工法。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、既設鉄塔を有効利用することにより、低コストで鉄塔の嵩上げをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】既設鉄塔の概略正面図。
【図2】本実施形態の鉄塔嵩上げ工法におけるせり上げ工程の説明図。
【図3】(a)は、ガイド機構を説明する概略平面図。(b)は、ガイド機構周辺を説明する概略正面図。
【図4】本実施形態の鉄塔嵩上げ工法における塔体構築工程の説明図。
【図5】本実施形態の鉄塔嵩上げ工法における基礎連結工程の説明図。
【図6】(a)、(b)は、本実施形態の鉄塔嵩上げ工法における塔体連結工程の説明図。
【図7】既設鉄塔から増築鉄塔への移線状態を示す説明図。
【図8】新規鉄塔の概略正面図。
【図9】第1従来技術の鉄塔嵩上げ工法を説明する概略正面図。
【図10】第3従来技術の鉄塔嵩上げ工法を説明する概略正面図。
【符号の説明】
11…既設鉄塔、20…増築塔体、21…塔体基礎、22…塔体部材、23…せり上げ手段を構成するウインチ、23a…索条としてのワイヤー、24…ガイド機構、26…せり上げ手段を構成する滑車、28…連結部材。
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄塔嵩上げ工法に係り、詳しくは既設鉄塔を有効利用する鉄塔嵩上げ工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、送電鉄塔は、建設されてから長年月が過ぎると、樹木の生長や市街地化に伴う線下構造物の新設等に対する電線地上高の確保、増容量化への対処等のため、鉄塔の嵩上げを行う必要が生じる。そして、その際における鉄塔嵩上げ工法としては、従来から以下のような様々な工法(第1〜第3従来技術)が知られている。
【0003】
まず、第1従来技術の工法は、図9に示すように、既設鉄塔31を包み込むように大型の新規鉄塔32を建設した後、既設送電線33を既設鉄塔31から新規鉄塔32に移線し、その後、用済みの既設鉄塔31及びその塔体基礎34を解体するもので、包み込み工法とも呼ばれている。また、第2従来技術の工法は、新規鉄塔の塔体下部となる新設主柱材をせり上げ時の仮設外塔として兼用し、大型鉄塔の組立時に使用するタワークレーンによって既設鉄塔を前記新設主柱材上までせり上げて連結支持するもので、TPU工法とも呼ばれている。
【0004】
また、第3従来技術の工法は、特開2002−97819号公報に示されるものであり、図10に示すように、既設鉄塔41の用地内に新規鉄塔42用の塔体基礎43を新設し、その塔体基礎43上に細身で嵩高の新規鉄塔42を構築するものである。その構築手順は、前記用地内において新規鉄塔42の鉄塔構成部材を専用のせり上げ装置によって最上位の鉄塔構成部材から順次に所要高までせり上げ、該鉄塔部材に下方から次位の鉄塔部材を次々と接続するものである。そして、最上位の鉄塔部材が所要高に達したところで最下位の鉄塔部材を前記塔体基礎43に連結し、その後、既設鉄塔41及びその塔体基礎44を解体するというものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記第1〜第3従来技術に係る各鉄塔嵩上げ工法には、以下のような問題があった。
【0006】
まず、第1従来技術の場合は、既設鉄塔31の外側周囲に新たな鉄塔用地の買い増し、大型の新規鉄塔32及びその塔体基礎34の新設、用済みの既設鉄塔31及びその塔体基礎34の解体等が必要であるため、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストが大きくなってしまうという問題があった。また、第2従来技術の場合も、新設主柱材及びその基礎の新設、既設鉄塔の解体等が必要である上に、既設鉄塔を持ち上げ得るような大規模なタワークレーンが必要であるため、やはり鉄塔嵩上げにかかるトータルコストが大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
また、第3従来技術の場合は、既設鉄塔41の用地内に大がかりなせり上げ専用装置を搬入、組立する必要があると共に、使用後にはその撤去が必要であった。また、既設鉄塔41と比較して細身で嵩高な新規鉄塔42の塔体基礎43は、前記既設鉄塔41の塔体基礎44よりも狭い範囲内で設置されるものであった。そのため、新規鉄塔42における垂直方向のみならず水平方向の安定性確保をも考慮すると、その塔体基礎43については、従来よりも深く強固に構築する必要があり、その基礎工事には技術的な困難性と共に大きなコストがかかっていた。さらに、新規鉄塔42への既設送電線の移線完了に伴い、最終的には既設鉄塔41及びその塔体基礎44を解体することも必要とされていた。従って、この第3従来技術にあっても、やはりトータル的に見ると、鉄塔嵩上げコストは依然として大きいという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、既設鉄塔を有効利用することにより、低コストで鉄塔の嵩上げをすることができる鉄塔嵩上げ工法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、既設鉄塔の塔体用地内に増築塔体の塔体基礎を構築する基礎構築工程と、前記増築塔体を形成するための複数の塔体部材を、最上位の塔体部材から順に前記塔体用地内でせり上げ手段により所定の高さまでせり上げると共に、そのせり上げた塔体部材の下端に次位の塔体部材を直列状に順次連結する作業を繰り返して、最上位の塔体部材が前記既設鉄塔よりも高い所定高さ位置までせり上げられた増築塔体を構築する塔体胃構築工程と、前記増築塔体における最下位の塔体部材と前記増築塔体の塔体基礎とを連結する基礎連結工程と、前記既設鉄塔と前記増築塔体との間を連結部材により連結する塔体連結工程とを有することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鉄塔嵩上げ工法において、前記塔体構築工程においては、前記既設鉄塔が前記せり上げ手段の一部として利用されることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、既設鉄塔の塔体用地内に増築塔体の塔体基礎を構築する基礎構築工程と、前記既設鉄塔を仮設外塔として利用するせり上げ手段によって、前記増築塔体を形成するための複数の塔体部材を、最上位の塔体部材から順に前記塔体用地内で所定の高さまでせり上げると共に、そのせり上げた塔体部材の下端に次位の塔体部材を直列状に順次連結する作業を繰り返して、最上位の塔体部材が前記既設鉄塔よりも高い所定高さ位置までせり上げられた増築塔体を構築する塔体構築工程と、前記増築塔体における最下位の塔体部材と前記増築塔体の塔体基礎とを連結する基礎連結工程とを有することを要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0013】
図1に示すように、既設鉄塔11は、塔体用地内に埋設された塔体基礎12上に図示しないアンカーボルトを介して固定支持されている。前記既設鉄塔11は、既設塔体13と、該既設塔体13上部に固着された複数の腕金部14とから構成されている。また、前記既設塔体13は、前記塔体基礎12から垂直方向に立設された複数(4本)の主柱部15と、各主柱部15間に水平方向へ架設された複数の水平フレーム16と、前記主柱部15と水平フレーム16との間に斜め方向に架設された複数の斜めフレーム17とによって構成されている。また、前記各腕金部14は、水平方向に片持ち支持された水平部14aと、斜め下方に片持ち支持された斜部14bとから構成されている。そして、前記水平部14aの先端には、図7に示すように、懸垂がいし18を介して、送電線19が吊されている。
【0014】
さて、前記既設鉄塔11においては、樹木の生長等に対する電線地上高の確保等の理由により、鉄塔の嵩上げが必要になる場合がある。そこで、図1に示す既設鉄塔11を嵩上げして、図8に示す新規鉄塔30を構築する際の鉄塔嵩上げ工法について、以下、工程順に説明する。
【0015】
まず、最初に基礎構築工程として、図2に示すように、前記既設鉄塔11の塔体用地内に新規鉄塔30の一部を構成することになる増築塔体20(図5参照)の塔体基礎21を構築する。該塔体基礎21は、主に前記増築塔体20の垂直方向の荷重を支持するためのものであるため、前述した第3従来技術(図10参照)の場合と異なって、比較的簡単な工事であってもよい。なお、この基礎構築工程においては、前記塔体基礎21から複数のアンカーボルトを突設させておく。
【0016】
次の塔体構築工程では、まず、図2に示すように、増築塔体20を構成する複数の塔体部材22を最上位の塔体部材22から順に前記既設鉄塔11内に搬入する。前記各塔体部材22は、図3に示すような直方体状をなすフレーム枠体に形成されている。そして、前記増築塔体20は、そのせり上げ単位ごとに分割された各塔体部材22を順次せり上げ、その下端に次位の塔体部材22を直列に連結させることにより、形成される構成となっている。
【0017】
さて、前記塔体部材22を順次連結しつつせり上げるためには、図2に示すように、塔体用地内において、4つのウインチ23(一部図示しない)を、前記既設塔体13を挟むようにして対向設置する。ちなみに、図示しない2つのウインチ23は、図2における紙面の前後方向に対向設置されている。
【0018】
その後、各ウインチ23の索条としてのワイヤー23aを、既設鉄塔11の水平に形成された最下位の腕金部14又は、該腕金部14と同等の高さの水平フレーム16に固定された4つの滑車26を介して、前記塔体部材22の上方までそれぞれ垂下させる。そして、前記各ワイヤー23aの先端に形成されたフック部23b(図3(b)参照)を、前記塔体部材22の上部フレームに4方向からそれぞれ取着固定する。
【0019】
このように塔体増築工程においては、前記既設鉄塔11における腕金部14又は水平フレーム16を、塔体部材22のせり上げ時の支点として利用することにより、前記既設鉄塔11は、前記ワイヤー23aを所定高さ位置から垂れ下げ支持するための仮設外塔を兼用する構成となっている。
【0020】
次に、図2、3に示すように、前記塔体部材22を、前記各ウインチ23によって、垂直方向へせり上げる。なお、その際に、前記塔体部材22は、水平フレーム16に支持されたガイド機構24により水平方向から保持されて垂直状に保たれつつせり上げられる。
【0021】
図3(a)(b)に示すように、前記ガイド機構24は、既設塔体13に支持された4本の支持フレーム24aと、各支持フレーム24aに取着された8個のローラ24bとによって構成されている。前記各支持フレーム24aは、前記既設鉄塔11において対向する水平フレーム16間に一対ずつ架設され、ボルトとナットを螺合することにより固定されている。前記4本の支持フレーム24aのうち2本の支持フレーム24aは、対応する水平フレーム16の上方から相互に平行に固定され、残りの2本の支持フレーム24aは、他の2本の支持フレーム24aと直角に交わるように、前記水平フレーム16の下方から相互に平行に固定されている。
【0022】
その結果、前記ガイド機構24を上方からみると、前記既設鉄塔11内部中央に、前記各支持フレーム24aによって、方形状のガイド空間25が形成される。該ガイド空間25は、前記塔体部材22が挿通できる程度の大きさに形成されている。
【0023】
また、前記各支持フレーム24aの所定の位置には、ガイド空間25の軸線方向を向いた前記ローラ24bが2つずつ取着されている。前記各ローラ24bは、円筒状をなすとともに、その軸方向には、コ字状をなすシャフトが挿通されている。そして、前記ローラ24bは、前記シャフトと前記支持フレーム24aとをボルトとナットで螺合することにより固定されている。
【0024】
すなわち、前記ガイド機構24は、前記塔体部材22の垂直方向へのせり上げ作業時において、該塔体部材22を、前記ガイド空間25に挿通させ、前記ローラ24bと摺動させてせり上げることにより、円滑かつ水平方向へのぶれを防止した状態で、せり上げし得る構造となっている。従って、本実施形態では、前記ウインチ23、ワイヤー23a、フック部23b、滑車26、及び仮設外塔を兼用する前記既設鉄塔11によって、せり上げ手段が構成されている。
【0025】
さて、この塔体構築工程では、前記塔体部材22を、次位の塔体部材22と連結するのに適する高さまでせり上げたところで、一旦、前記ウインチ23を停止し、せり上げ作業を中断する。そして、次には、次位の塔体部材22を前記既設鉄塔11内に搬入し、そして、図4に示すように、前記塔体部材22の下端に対して次位の塔体部材22の上端をボルトとナットで螺合することにより、直列状に連結し、締結する。そして、その状態から、図2に示すように、前記ウインチ23を再び稼働させ、前記直列状に連結された各塔体部材22を垂直方向へせり上げる。
【0026】
その後、下位側に連結された前記塔体部材22の下端が、さらに次位の塔体部材22を連結するのに適した高さまでせり上げられたところで、再び、せり上げ作業を中断し、さらに次位の塔体部材22を直列状に連結し、その後、せり上げ作業を再開する。
【0027】
以後、同様に、このような新たな次位の塔体部材22の搬入連結と、直列状に連結された各塔体部材22のせり上げという作業を、最上位に位置する塔体部材22が、既設鉄塔11の高さを超えて、さらに予定の高さに達するまで繰り返す。そして、その結果、最上位の塔体部材22が予定の高さに達したところで、該繰り返し作業を停止し、次の基礎構築工程に移る。
【0028】
なお、前記繰り返し作業において、最上位の塔体部材22を前記既設鉄塔11よりも高い位置まで引き上げるためには、前記各フック部23bの固定位置を、さらに下位に連結された他の塔体部材22に変更して、上記繰り返し作業を行う。
【0029】
また、前記塔体構築工程において、前記既設鉄塔11を構成する所定の鉄塔部材(例えば、頂部鉄塔部材)が、前記塔体部材22のせり上げ作業の支障になるような場合には、該鉄塔部材を切除して行う。
【0030】
次に、基礎連結工程においては、図5に示すように、増築塔体20における最下位に連結された塔体部材22の下端を、前記塔体基礎21に突設された複数のアンカーボルト(図示しない)により、前記塔体基礎21上で固定支持する。その結果、複数の塔体部材22が直列状に連結されてなる増築塔体20と塔体基礎21とが連結され、該塔体基礎21上に増築塔体20が立設される。
【0031】
次に、塔体連結工程として、図6に示すように、まず、前記既設鉄塔11の垂直方向に延びる4本の主柱部15に、所定の間隔をおいて、複数のブラケット15aを溶接(又はボルトで締結)する。各ブラケット15aは、前記既設鉄塔11の水平断面において形成される四角形の対角線方向にそれぞれ延出するように設置され、その先端には、ボルトを挿通させるためのボルト孔15bが各々2つ(3つ以上の複数でもよい)ずつ形成されている。
【0032】
一方、増築塔体20の垂直方向に延びる4本の主柱部27には、該増築塔体20の外側において、ブラケット27aを溶接(又はボルトで締結)する。該ブラケット27aは、前記ブラケット15aと対向するように、所定の間隔をおいて形成され、その先端には、ボルトを挿通させるためのボルト孔が各々2つずつ形成されている。
【0033】
その後、長板状の連結部材28を前記両ブラケット15a,27a間に配置し、その両端に形成されているボルト孔28aと、前記各ブラケット15a,27aにおける前記各ボルト孔15b等を対向させた状態で、所定のボルトとナットでそれぞれ螺合し、締結する。その結果、前記既設鉄塔11と増築塔体20とが連結部材28を介して連結される。
【0034】
次に、図7に示すように、前記増築塔体20の上部に、送電線を吊るための新規な腕金部29をボルトとナットでそれぞれ螺合し、締結する。その後、既設鉄塔11の腕金部14に懸垂がいし18を介して吊されている全ての既設送電線19を、前記腕金部29にそれぞれ移線する。最後に、図8に示すように、前記既設鉄塔11から前記腕金部14のみを解体することにより、既設鉄塔11をほぼ全部利用し、増築塔体20を増築しただけの新規鉄塔30が完成し、全工程が終了する。
【0035】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、新規鉄塔30を、既設塔体13と増築塔体20とを一体化することにより形成した。
【0036】
従って、新たに増設する増築塔体20のみを新設するだけで既設鉄塔11の嵩上げが可能なため、既設鉄塔11の嵩上げに必要な材料費用及び工事費用を低減することができ、その結果、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。また、既設鉄塔11及びその塔体基礎12を新規鉄塔30の構成部材として有効利用することにより、既設鉄塔11の解体費用及び基礎脱却費用を削減することができ、この点でも、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストをさらに低減することができる。
【0037】
(2)上記実施形態では、既設鉄塔11とは別に、該既設鉄塔11内を挿通するように増築塔体20を新設した後、該増築塔体20と、前記既設鉄塔11とを、連結部材28を介して連結した。
【0038】
従って、既設鉄塔11を、新規鉄塔30における特に水平方向の保持、補強材として有効に利用することができる。その結果、増築塔体20に伴う基礎工事のコストを、第3従来技術(図10参照)の場合と比較して、低減することができ、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。また、他方において、基礎工事を容易化できる。
【0039】
(3)上記実施形態では、既設鉄塔11における腕金部14(又は水平フレーム16)を、前記塔体部材22のせり上げ作業時において支点として利用し、既設鉄塔11(既設塔体13)を仮設外塔として兼用する構成とした。
【0040】
従って、塔体部材22をせり上げるために、大がかりな専用の装置を用いたり、新たに仮設外塔を製造する場合と比較して、塔体部材22のせり上げ費用を低減することができる。その結果、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。
【0041】
(4)上記実施形態では、ガイド空間25を形成する4本の支持フレーム24aと、各支持フレーム24aに固定された8個のローラ24bとによって構成されたガイド機構24を既設鉄塔11内に設けた。すなわち、前記ガイド機構24は、塔体部材22を前記ガイド空間25に挿通させて前記ローラ24bと摺動させつつせり上げる構造とした。
【0042】
従って、前記塔体部材22のせり上げ作業時において、該塔体部材22を円滑かつ水平方向のぶれを防止した状態でせり上げることができる。
(5)上記実施形態では、既設鉄塔11とは別に、該既設鉄塔11を挿通するように形成された増築塔体20と、既設鉄塔11の塔体用地内に設けられた増築塔体20用の塔体基礎21と、既設塔体13と、該既設塔体13の塔体基礎12とから新規鉄塔30を形成した。それとともに、既設鉄塔11における腕金部14(又は水平フレーム16)を、前記塔体部材22のせり上げ時の支点として利用し、仮設外塔を兼用する構成とした。
【0043】
従って、既設鉄塔11の塔体用地内で、新規鉄塔30の工事及び建設をすることができるため、既設鉄塔11の外側周囲に新たな鉄塔用地(工事用地)の買い増しに伴うコストを削除することができ、その結果、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。
【0044】
なお、前記実施形態は以下のように変更してもよい。
○前記実施形態では、既設鉄塔11と増築塔体20とを、長板状をなす連結部材28を介して連結させたが、該連結部材28は長板状でなくても、例えば、その両端が前記ブラケット15a及びブラケット27aを挟みこむような形状になっているようなものに適宜変更してもよい。
【0045】
○前記実施形態では、既設鉄塔11と増築塔体20とを、ボルトとナットで連結したが、それ以外にも、例えば、溶接によって連結するなど適宜変更してよい。また、前記実施形態では、塔体部材22が直方体状をなすフレーム枠体に形成されていたが、例えば所定長さの鋼管又は内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填管により塔体部材22を構成してもよい。
【0046】
○前記実施形態では、索条としてワイヤー23aを使用したが、それ以外にも、例えばチェーン等、他の部材に変更してもよい。
○前記実施形態では、仮設外塔として既設鉄塔11の水平フレーム16及び腕金部14を利用したが、既設鉄塔11を構成する鉄塔構成部材であればどこを利用してもよい。
【0047】
○前記実施形態では、ガイド機構24として支持フレーム24a及びローラ24bを使用したが、それ以外にも、例えば、水平フレーム16間に掛け渡し支持した丸太等を利用してガイドしてもよい。
【0048】
○前記実施形態では、ガイド機構24を既設鉄塔11の高さ方向における一カ所に設けたが、所定の数カ所に設けてもよい。このようにした場合には、前記塔体部材22のせり上げ作業を、さらに確実に、前記塔体部材22の水平方向へのぶれを防止した状態で行うことができる。
【0049】
○前記実施形態では、既設鉄塔11とは別に、該既設鉄塔11を挿通するように増築塔体20を新設した後において、該増築塔体20と既設鉄塔11とを連結部材28を介して連結する塔体連結工程を有したが、当該工程はなくてもよい。このようにした場合でも、既設鉄塔11を塔体部材22のせり上げ時の支点として利用し、仮設外塔として兼用することで、鉄塔嵩上げにかかるトータルコストを低減することができる。
【0050】
次に、上記実施形態及び各別例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)前記せり上げ手段は、せり上げ時に塔体部材を吊り下げて引き上げるための索条と、当該索条を所定高さ位置から垂れ下げ支持するための仮設外塔とを有しており、当該仮設外塔として前記既設鉄塔が兼用されている請求項2に記載の鉄塔嵩上げ工法。
【0051】
(ロ)前記せり上げ手段は、前記塔体部材が垂直状に保たれつつせり上げられるように該塔体部材を水平方向から保持するガイド機構を備えている請求項2又は技術的思想(イ)に記載の鉄塔嵩上げ工法。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、既設鉄塔を有効利用することにより、低コストで鉄塔の嵩上げをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】既設鉄塔の概略正面図。
【図2】本実施形態の鉄塔嵩上げ工法におけるせり上げ工程の説明図。
【図3】(a)は、ガイド機構を説明する概略平面図。(b)は、ガイド機構周辺を説明する概略正面図。
【図4】本実施形態の鉄塔嵩上げ工法における塔体構築工程の説明図。
【図5】本実施形態の鉄塔嵩上げ工法における基礎連結工程の説明図。
【図6】(a)、(b)は、本実施形態の鉄塔嵩上げ工法における塔体連結工程の説明図。
【図7】既設鉄塔から増築鉄塔への移線状態を示す説明図。
【図8】新規鉄塔の概略正面図。
【図9】第1従来技術の鉄塔嵩上げ工法を説明する概略正面図。
【図10】第3従来技術の鉄塔嵩上げ工法を説明する概略正面図。
【符号の説明】
11…既設鉄塔、20…増築塔体、21…塔体基礎、22…塔体部材、23…せり上げ手段を構成するウインチ、23a…索条としてのワイヤー、24…ガイド機構、26…せり上げ手段を構成する滑車、28…連結部材。
Claims (3)
- 既設鉄塔の塔体用地内に増築塔体の塔体基礎を構築する基礎構築工程と、前記増築塔体を形成するための複数の塔体部材を、最上位の塔体部材から順に前記塔体用地内でせり上げ手段により所定の高さまでせり上げると共に、そのせり上げた塔体部材の下端に次位の塔体部材を直列状に順次連結する作業を繰り返して、最上位の塔体部材が前記既設鉄塔よりも高い所定高さ位置までせり上げられた増築塔体を構築する塔体構築工程と、前記増築塔体における最下位の塔体部材と前記増築塔体の塔体基礎とを連結する基礎連結工程と、前記既設鉄塔と前記増築塔体との間を連結部材により連結する塔体連結工程とを有する鉄塔嵩上げ工法。
- 前記塔体構築工程においては、前記既設鉄塔が前記せり上げ手段の一部として利用される請求項1に記載の鉄塔嵩上げ工法。
- 既設鉄塔の塔体用地内に増築塔体の塔体基礎を構築する基礎構築工程と、前記既設鉄塔を仮設外塔として利用するせり上げ手段によって、前記増築塔体を形成するための複数の塔体部材を、最上位の塔体部材から順に前記塔体用地内で所定の高さまでせり上げると共に、そのせり上げた塔体部材の下端に次位の塔体部材を直列状に順次連結する作業を繰り返して、最上位の塔体部材が前記既設鉄塔よりも高い所定高さ位置までせり上げられた増築塔体を構築する塔体構築工程と、前記増築塔体における最下位の塔体部材と前記増築塔体の塔体基礎とを連結する基礎連結工程とを有する鉄塔嵩上げ工法。
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