JP2004035960A - 円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工できる円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置を提供する。
【解決手段】円形鋼構造物である吸出し管1上流のランナー(羽根車)シュラウドが対向する出口ライナーの内壁面を自動溶射して皮膜を施工する円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置10であって、円形開口部入口ライナーもしくは出口ライナーを跨いで設置され、円形開口に沿った旋回移動を可能にする旋回駆動輪13a,13bを備えている回転架台11と、該回転架台11に対し円形開口部の直径方向へ移動可能な直径方向スライド機構14a,14bと軸方向スライド機構15a,15bとを備え、被溶射面の平行面2a,垂直面2bに向けられて取り付けられている溶射ガン12とを具備して構成した。
【選択図】 図1
【解決手段】円形鋼構造物である吸出し管1上流のランナー(羽根車)シュラウドが対向する出口ライナーの内壁面を自動溶射して皮膜を施工する円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置10であって、円形開口部入口ライナーもしくは出口ライナーを跨いで設置され、円形開口に沿った旋回移動を可能にする旋回駆動輪13a,13bを備えている回転架台11と、該回転架台11に対し円形開口部の直径方向へ移動可能な直径方向スライド機構14a,14bと軸方向スライド機構15a,15bとを備え、被溶射面の平行面2a,垂直面2bに向けられて取り付けられている溶射ガン12とを具備して構成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水力、火力、原子力発電所などに設置されている大形鋼管のような円形鋼構造物の内壁面を自動溶射する円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置に関する。
特に、本発明は円形鋼構造物の内壁面の被溶射面が中心軸に対し垂直面及び平行面よりなる階段状であるもの、たとえばフランシス水車などのランナー(羽根車)のシュラウドが対向する入口もしくは出口ライナーの内壁面を、土砂などに対する耐摩耗性、耐食性を向上させるために溶射して皮膜を施工するのに有効である。
しかしながら、本発明は、円形鋼構造物の内壁面の被溶射面が中心軸に対し垂直面、平行面もしくは傾斜面(円錐台壁面)に対して適用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
溶射法は、金属(合金)、セラミック、サーメットなどの材料をプラズマジェットや可燃性の炭化水素と酸素との燃焼フレームなどの熱源によって溶融若しくは軟化状態の微粒子として、被処理体の表面に吹き付けて皮膜を形成する表面処理方法である。
従って、熱エネルギーによって溶融・軟化するものであれば、金属材料はもちろんのこと、酸化物、硼化物、ガラス、プラスチックなども成膜できるため、材料が保有する多彩な機能を表面皮膜として利用できる特徴がある。
【0003】
また、炭化物のように硬質であるものの、熱源中で明確な融点を示さず、分解したり、酸化して変質しやすい材料には、金属質を混在させることによって、これをバインダーとして金属質の接合力を利用して炭化物粒子を相互に結合させることによって、皮膜を形成させることが可能であり耐摩耗皮膜として汎用されている。
【0004】
一方、溶射装置は溶射ガン、熱源(電気、燃料など)及び溶射粉末供給装置があれば、容易に施工できることなどから可搬性で現地作業に富んだ表面処理装置として評価され、大形の鋼構造物の防食・耐高温環境性皮膜などの施工に適用されている。
【0005】
たとえば、屋外の大形鋼構造物の防食対策として亜鉛・アルミニウム及びそれらの合金溶射として溶射皮膜の品質(JIS H8300 1999)、溶射皮膜試験法(JIS H8661 1999)などが制定されている。ただ、これらの現地溶射の大部分は、作業者が溶射ガンを持って施工するいわゆる人力による皮膜形成であり、施工した溶射皮膜の品質管理が十分に行われていない状態にある。亜鉛・アルミニウム溶射皮膜のように鋼構造物に対して犠牲陽極作用によって防食する場合には、厳格な膜厚管理を必要としない場合が多いので、このような場合には膜厚の分布が大きくて偏っても問題となることは少ない。
【0006】
ただ、防食を目的とした溶射皮膜でも、ボイラ蒸発管壁のように大面積の平面を対象とする場合には特開平10−310860号公報に開示されているような自動溶射装置が適用されている。この自動溶射装置は、軸線が水平に対して傾斜したボイラ炉壁管から成る垂直な火炉壁に対して自動溶射するものであるが、しかし、この場合の溶射皮膜でも防食を目的としているため、厳格な膜厚管理を必要とせず、最小膜厚を管理しているのみである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の大形鋼構造物の溶射皮膜施工を目的とした自動溶射装置には、次の問題点がある。
(1)被溶射面が平面またはボイラ鋼管のような円筒の形状を示すもののほぼ平面として取り扱えるため、溶射ガンの移動が往復運動に限定されている。
(2)皮膜材質が金属(合金)に限定され、膜厚の許容範囲が大きく、仮に膜厚分布に大きな幅が存在しても耐食性に必要な最小膜厚が確保されていれば問題がないので、厳格な膜厚管理を無視した装置となっている。
(3)硬質で耐摩耗性及び耐キャビテーション・エロージョン性に優れた性能を示す炭化物サーメット皮膜は現地作業によって成膜後、これを機械加工などにより膜厚を均一にすることは困難であるため、精度の高い膜厚分布を有する皮膜の施工可能な自動装置の開発が望まれているが、未だに完成されていない。
(4)特に、本発明が対象とするような大形円形鋼構造物の内壁面の被溶射面が階段状になっていて、しかも、その中心軸に対し平行面と垂直面とに硬質の炭化物サーメット皮膜を精度の高い膜厚分布で施工する自動溶射装置は開発されていない。
【0008】
本発明は以上述べた事情に鑑みなされたもので、その課題は、円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工できる円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の手段を採用した。
請求項1に記載の発明は、円形鋼構造物の内壁面を自動溶射して皮膜を施工する円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置であって、円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで設置され、前記円形開口に沿った旋回移動手段を備えている回転架台と、該回転架台に対し前記円形開口部中心軸の直径方向へ移動可能な直径方向移動手段と中心軸方向移動手段とを備え、前記円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に向けられて取り付けられている溶射ガンと、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0010】
このような本発明の円形鋼構造物の自動溶射装置によれば、円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで設置され、前記円形開口に沿った旋回移動手段を備えている回転架台と、該回転架台に対し前記円形開口部の直径方向へ移動可能な直径方向移動手段と中心軸方向移動手段とを備え、前記円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に向けられて取り付けられている溶射ガンと、を具備して構成したので、直径方向移動手段及び中心軸方向移動手段によって溶射ガンを被溶射面の最適位置に調整した後、旋回移動手段で円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に沿って旋回させれば、円形鋼構造物の被溶射面に対して精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の円形鋼構造物の自動溶射装置において、前記被溶射面が中心軸に対しして垂直面及び平行面よりなる階段状であり、前記溶射ガンは、垂直面用溶射ガンと平行面用溶射ガンとを一緒にまたは交換可能に取り付けられていることが好ましく、これにより、垂直面及び平行面よりなる階段状の被溶射面を自動施工することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の円形鋼構造物の自動溶射装置において、前記被溶射面が垂直面及び平行面よりなる階段状であり、前記溶射ガンには、垂直面及び平行面から溶射方向を選択して回転させる溶射方向切換手段を設けることが好ましく、これにより、一台の溶射ガンで垂直面及び平行面よりなる階段状の被溶射面を自動施工することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置において、前記回転架台が、前記円形開口部の直径方向長さを調整する長さ調整手段を備えていることが好ましく、これにより、径の異なる円形構造物に応じて回転架台の長さを調整すれば、多様な径の円形構造物に使用できるようになる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の円形鋼構造物自動溶射装置において、前記円形開口部中心軸が傾斜または水平であっても、前記回転架台が安定に旋回出来るよう走行部に電磁石もしくは永久磁石を取り付けていることを特徴としており、これにより、円形開口部の中心軸の向きがどのような方向であっても安定した自動溶射が可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1及び図2に示す本発明の第1の実施形態では、大形の円形鋼構造物であるフランシス水車のランナー(羽根車)のシュラウドが対向する入口ライナーもしくは出口ライナーを被溶射面として自動溶射する場合について、特に、階段状内壁面となる出口ライナーに自動溶射する場合に適用した例を示す。
【0017】
図1において、符号1はフランシス水車などの吸出し管であり、この吸出し管の上流端はランナー(羽根車)シュラウドが対向する入口ライナー3および出口ライナー2が設けられている。ここで出口ライナーは中心軸に対し平行面2a及び垂直面2bよりなる階段状内壁面を有しており、この階段状内壁面が自動溶射の対象壁面(被溶射面)となっている。
【0018】
本実施形態によれば、円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置(以下、「自動溶射装置」と略す)10は、出口ライナー2に自動溶射して皮膜を施工するもので、回転架台11と、溶射ガン12とを具備して構成される。
【0019】
回転架台11は、円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで、すなわち入口ライナー3を直径方向に跨いで設置される梁状の部材である。この回転架台11は、入口ライナー3を旋回移動するため、旋回駆動輪13a,13bを備えている。
【0020】
一方の旋回駆動輪13aは、円形開口部中心軸に対し垂直面3b上を旋回走行する。また、他方の旋回駆動輪13bは、円形開口部中心軸に対し平行な壁面である平行面3aに当接して旋回走行する。
なお、旋回駆動輪13a,13bは、少なくとも一方(両端のいずれか一方のみでもよい)が図示省略の駆動機構に連結された駆動輪となる。
【0021】
溶射ガン12は、回転架台11の所定位置に固定支持して取り付けられ、回転架台11に対して円形開口部の直径方向へ移動可能とする直径方向スライド機構(直径方向移動手段)と、この直径方向スライド機構に対して中心軸方向へ移動可能とする中心軸方向スライド機構(軸方向移動手段)とを備えている。
図示の例では、直径方向スライド機構及び軸方向スライド機構を備えている溶射ガン12が2台(12a,12b)設けられ、一方の溶射ガン12aが平行面2aへ向けて取り付けられた平行面専用となり、他方の溶射ガン12bが垂直面2bに向けて取り付けられた垂直面専用となっている。
【0022】
そして、一方の溶射ガン12aが直径方向スライド機構14aと軸方向スライド機構15aとを備え、かつ、他方の溶射ガン12bが直径方向スライド機構14bと軸方向スライド機構15bとを備えているが、これらの溶射ガンユニットは基本構成が同じであり、補助部材を用いるなどして回転架台11に対する取り付け方向を90度変化させた構成となっている。
また、直径方向スライド機構14a,14b及び軸方向スライド機構15a,15bとしては、たとえば電動機でスクリューネジを適宜回動させて直径方向または軸方向の移動量を調整するものなど、公知の移動量調整機構から適宜選択して採用することができる。
【0023】
なお、図示の構成では平行面2a専用の溶射ガン12aと、垂直面2b専用の溶射ガン12bとを設けてあるが、溶射ガン12の溶射方向を変更できる機能を設ければ、1台の溶射ガン12で平行面2a、垂直面2b及び傾斜面のいずれにも溶射することが可能になり、あるいは、平行面2a専用の溶射ガン12aと、垂直面2b専用の溶射ガン12bとを適宜交換可能な構成とすれば、1台の溶射ガン12で平行面2a及び垂直面2bの両面を溶射できるようになる。
【0024】
さて、以上述べた自動溶射装置10を用いて円形鋼構造物の中心軸に対し平行面、すなわち本実施形態によれば出口ライナー2の平行面2aを溶射する場合には、溶射ガン12aの直径方向スライド機構14a及び軸方向スライド機構15aを操作して、溶射ガン12aを所望の溶射位置に移動させる。被溶射面に対する最適な溶射角度は90度であり、溶射ガン12aと被溶射面の平行面2aとは、常に溶射粒子が90度の角度で衝突すると共に、両者の距離を適切に保つ必要がある。
このため、本発明の自動溶射装置10では、直径方向スライド機構14aを操作して溶射ガン12aを直径方向に移動させることで、自由に距離を変化させて調整することができる。また、軸方向スライド機構15aの操作によって、溶射ガン12aを上下に移動させることが可能となっているので、旋回駆動輪13a,13bによって回転架台11を旋回させれば、精度の高い溶射皮膜を被溶射面の全面にわたって略均等に形成させることができる。
【0025】
一方、被溶射面が中心軸に対し垂直面、すなわち本実施形態によれば出口ライナー2の垂直面2bを溶射する場合には、溶射ガン12bの直径方向スライド機構14b及び軸方向スライド機構15bを操作して、溶射ガン12bを所望の溶射位置に移動させる。被溶射面に対する最適な溶射角度は90度であり、溶射ガン12bと被溶射面の垂直面2bとは、常に溶射粒子が90度の角度で衝突すると共に、両者の距離を適切に保つ必要がある。
このため、本発明の自動溶射装置10では、軸方向スライド機構15bを操作して溶射ガン12bを上下方向に移動させることで、自由に距離を変化させて調整することができる。また、直径方向スライド機構14bの操作によって、溶射ガン12bを直径方向に移動させることが可能となっているので、旋回駆動輪13a,13bによって回転架台11を旋回させれば、精度の高い溶射皮膜を被溶射面の全面にわたって略均等に形成させることができる。
【0026】
なお、上述した溶射ガン12には、溶射粉末材料を供給するためのホース、燃料や酸素、ときにはArガスを供給するためのホースが取り付けられているが、ここでは図示及びその詳細な説明は省略する。
【0027】
さらに、前記円形開口部中心軸が傾斜または水平であっても、前記回転架台が安定に旋回出来るよう走行部に電磁石もしくは永久磁石を取り付けていること(図示省略)により安定に円形鋼構造物の自動溶射が可能となる。
【0028】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態を図3及び図4に基づいて説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態と同様の部材には同じ符合を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態の自動溶射装置10Aでは、回転架台11Aが所定の間隔をもって平行に配置された一対のレール部材11a,11bにより構成されている。レール部材11a,11bの両端部は連結部材11cにより一体に連結され、さらに、回転架台11Aの両端部には、旋回移動手段として連結部材11cに旋回駆動輪13a,13bが設けられている。
【0029】
さて、本実施形態の溶射ガン12は、上述したレール部材11a,11b上を直径方向へ走行移動可能な溶射ガンユニット20に取り付けられている。この溶射ガンユニット20は、溶射ガン12を直径方向に移動させる直径方向移動手段として図示省略の駆動機構に連結された走行輪(直径方向スライド機構)21を備えており、さらに、溶射ガン12を軸方向に移動させる軸方向移動手段として軸方向スライド機構22を備えている。
【0030】
図3に示した例では、2台の溶射ガンユニット、すなわち、平行面2a専用の溶射ガン12aを取り付けた溶射ガンユニット20Aと、垂直面2b専用の溶射ガン12bを取り付けた溶射ガンユニット20Bとが設けられているが、溶射ガン12に平行面2a、垂直面2b及び傾斜面から所望の溶射方向を選択切換できる旋回機構を設ければ、あるいは、平行面専用及び垂直面専用の溶射ガンを適宜交換可能な構成とすれば、図4に示すように、1台の溶射ガンユニット20とすることも可能である。
【0031】
このような構成とすれば、溶射ガン12は、走行輪21が走行して溶射ガンユニット20を直径方向に移動させることにより、また、軸方向スライド機構22が動作して上下方向に移動させることにより、第1の実施形態と同様に被溶射面との距離や溶射位置を調整することができる。
従って、上述した第1の実施形態と同様の自動溶射方法により、溶射による膜厚の均一化を図ることができる。
【0032】
また、上述した第1及び第2の実施形態において、回転架台11,11Aの長さについて、すなわち直径が異なる種々の円形開口部に対応できるようにするため、直径方向長さを調整する長さ調整手段を設けておけば、自動溶射装置10,10Aの汎用性を大きく向上させることができる。
【0033】
ところで、上述した本発明の自動溶射装置は、自動作業装置として、たとえばブラッシング、掃除、グラインディング、塗装及び溶接等の作業にも使用することができる。この場合、溶射ガン12に代えて、それぞれの作業に使用する工具等を取り付ければよい。
なお、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【0034】
【発明の効果】
上述した本発明の自動溶射装置によれば、円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで設置され、前記円形開口に沿った旋回移動手段を備えている回転架台と、該回転架台に対し前記円形開口部の直径方向へ移動可能な直径方向移動手段と軸方向移動手段とを備え、前記円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に向けられて取り付けられている溶射ガンと、を具備して構成したので、直径方向移動手段及び軸方向移動手段によって溶射ガンを被溶射面の最適位置に調整し、旋回移動手段で円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に沿って旋回させれば、円形鋼構造物の被溶射面に対して精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工により容易に形成することができる。
【0035】
また、自動施工が可能になることにより、溶射加工に要する作業時間を短縮でき、生産性の向上に大きく貢献できるだけでなく、紫外線や赤外線、粉塵や騒音といった作業環境から作業員を解放することも可能になる。
さらに、精度の高い膜厚分布の成膜が可能なため、硬質で耐摩耗性及び耐キャビテーション・エロージョン性に優れた高性能の皮膜を形成することができるので、被溶射面の耐久性や信頼性の向上に大きな効果を奏する。
【0036】
特に、被溶射面が中心軸に対し平行面及び垂直面よりなる階段状の場合には、平行面用溶射ガンと垂直面用溶射ガンとを一緒にまたは交換可能に取り付けられる構成としたので、平行面及び垂直面よりなる階段状の被溶射面に対し、精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工により容易に形成することができる。また、被溶射面が平行面及び垂直面よりなる階段状の場合には、平行面及び垂直面から溶射方向を選択して回転させる溶射方向切換手段を設けた構成としたので、一台の溶射ガンにより、平行面及び垂直面よりなる階段状の被溶射面に対して精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工により容易に形成することができる。
【0037】
さらに、回転架台の長さを調整できるように構成すれば、径の異なる円形構造物に応じて最適な長さの回転架台に調整できるので、多様な径の円形構造物に使用できる汎用性の高い装置となる。
さらに前記円形開口部中心軸が傾斜または水平であっても、前記回転架台が安定に旋回出来るよう走行部に電磁石もしくは永久磁石を取り付けていることにより前記円形開口部の中心軸の向きがどのような方向であっても安定に自動溶射可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の要部平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置を示す縦断面図である。
【図4】図3の要部平面図である。
【符号の説明】
1 吸出し管(大形の円形構造物)
2 出口ライナー
2a 平行面(被溶射面)
2b 垂直面(被溶射面)
3 入口ライナー
3a 平行面
3b 垂直面
10,10A 円形構造物の内壁面自動溶射装置(自動溶射装置)
11,11A 回転架台
11a,11b レール部材
11c 連結部材
12 溶射ガン
13a,13b 旋回駆動輪(旋回移動手段)
14a,14b 直径方向スライド機構(直径方向移動手段)
15a,15b 軸方向スライド機構(軸方向移動手段)
20 溶射ガンユニット
21 走行輪(直径方向移動手段)
22 軸方向スライド機構(軸方向移動手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、水力、火力、原子力発電所などに設置されている大形鋼管のような円形鋼構造物の内壁面を自動溶射する円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置に関する。
特に、本発明は円形鋼構造物の内壁面の被溶射面が中心軸に対し垂直面及び平行面よりなる階段状であるもの、たとえばフランシス水車などのランナー(羽根車)のシュラウドが対向する入口もしくは出口ライナーの内壁面を、土砂などに対する耐摩耗性、耐食性を向上させるために溶射して皮膜を施工するのに有効である。
しかしながら、本発明は、円形鋼構造物の内壁面の被溶射面が中心軸に対し垂直面、平行面もしくは傾斜面(円錐台壁面)に対して適用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
溶射法は、金属(合金)、セラミック、サーメットなどの材料をプラズマジェットや可燃性の炭化水素と酸素との燃焼フレームなどの熱源によって溶融若しくは軟化状態の微粒子として、被処理体の表面に吹き付けて皮膜を形成する表面処理方法である。
従って、熱エネルギーによって溶融・軟化するものであれば、金属材料はもちろんのこと、酸化物、硼化物、ガラス、プラスチックなども成膜できるため、材料が保有する多彩な機能を表面皮膜として利用できる特徴がある。
【0003】
また、炭化物のように硬質であるものの、熱源中で明確な融点を示さず、分解したり、酸化して変質しやすい材料には、金属質を混在させることによって、これをバインダーとして金属質の接合力を利用して炭化物粒子を相互に結合させることによって、皮膜を形成させることが可能であり耐摩耗皮膜として汎用されている。
【0004】
一方、溶射装置は溶射ガン、熱源(電気、燃料など)及び溶射粉末供給装置があれば、容易に施工できることなどから可搬性で現地作業に富んだ表面処理装置として評価され、大形の鋼構造物の防食・耐高温環境性皮膜などの施工に適用されている。
【0005】
たとえば、屋外の大形鋼構造物の防食対策として亜鉛・アルミニウム及びそれらの合金溶射として溶射皮膜の品質(JIS H8300 1999)、溶射皮膜試験法(JIS H8661 1999)などが制定されている。ただ、これらの現地溶射の大部分は、作業者が溶射ガンを持って施工するいわゆる人力による皮膜形成であり、施工した溶射皮膜の品質管理が十分に行われていない状態にある。亜鉛・アルミニウム溶射皮膜のように鋼構造物に対して犠牲陽極作用によって防食する場合には、厳格な膜厚管理を必要としない場合が多いので、このような場合には膜厚の分布が大きくて偏っても問題となることは少ない。
【0006】
ただ、防食を目的とした溶射皮膜でも、ボイラ蒸発管壁のように大面積の平面を対象とする場合には特開平10−310860号公報に開示されているような自動溶射装置が適用されている。この自動溶射装置は、軸線が水平に対して傾斜したボイラ炉壁管から成る垂直な火炉壁に対して自動溶射するものであるが、しかし、この場合の溶射皮膜でも防食を目的としているため、厳格な膜厚管理を必要とせず、最小膜厚を管理しているのみである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の大形鋼構造物の溶射皮膜施工を目的とした自動溶射装置には、次の問題点がある。
(1)被溶射面が平面またはボイラ鋼管のような円筒の形状を示すもののほぼ平面として取り扱えるため、溶射ガンの移動が往復運動に限定されている。
(2)皮膜材質が金属(合金)に限定され、膜厚の許容範囲が大きく、仮に膜厚分布に大きな幅が存在しても耐食性に必要な最小膜厚が確保されていれば問題がないので、厳格な膜厚管理を無視した装置となっている。
(3)硬質で耐摩耗性及び耐キャビテーション・エロージョン性に優れた性能を示す炭化物サーメット皮膜は現地作業によって成膜後、これを機械加工などにより膜厚を均一にすることは困難であるため、精度の高い膜厚分布を有する皮膜の施工可能な自動装置の開発が望まれているが、未だに完成されていない。
(4)特に、本発明が対象とするような大形円形鋼構造物の内壁面の被溶射面が階段状になっていて、しかも、その中心軸に対し平行面と垂直面とに硬質の炭化物サーメット皮膜を精度の高い膜厚分布で施工する自動溶射装置は開発されていない。
【0008】
本発明は以上述べた事情に鑑みなされたもので、その課題は、円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工できる円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の手段を採用した。
請求項1に記載の発明は、円形鋼構造物の内壁面を自動溶射して皮膜を施工する円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置であって、円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで設置され、前記円形開口に沿った旋回移動手段を備えている回転架台と、該回転架台に対し前記円形開口部中心軸の直径方向へ移動可能な直径方向移動手段と中心軸方向移動手段とを備え、前記円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に向けられて取り付けられている溶射ガンと、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0010】
このような本発明の円形鋼構造物の自動溶射装置によれば、円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで設置され、前記円形開口に沿った旋回移動手段を備えている回転架台と、該回転架台に対し前記円形開口部の直径方向へ移動可能な直径方向移動手段と中心軸方向移動手段とを備え、前記円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に向けられて取り付けられている溶射ガンと、を具備して構成したので、直径方向移動手段及び中心軸方向移動手段によって溶射ガンを被溶射面の最適位置に調整した後、旋回移動手段で円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に沿って旋回させれば、円形鋼構造物の被溶射面に対して精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の円形鋼構造物の自動溶射装置において、前記被溶射面が中心軸に対しして垂直面及び平行面よりなる階段状であり、前記溶射ガンは、垂直面用溶射ガンと平行面用溶射ガンとを一緒にまたは交換可能に取り付けられていることが好ましく、これにより、垂直面及び平行面よりなる階段状の被溶射面を自動施工することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の円形鋼構造物の自動溶射装置において、前記被溶射面が垂直面及び平行面よりなる階段状であり、前記溶射ガンには、垂直面及び平行面から溶射方向を選択して回転させる溶射方向切換手段を設けることが好ましく、これにより、一台の溶射ガンで垂直面及び平行面よりなる階段状の被溶射面を自動施工することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置において、前記回転架台が、前記円形開口部の直径方向長さを調整する長さ調整手段を備えていることが好ましく、これにより、径の異なる円形構造物に応じて回転架台の長さを調整すれば、多様な径の円形構造物に使用できるようになる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の円形鋼構造物自動溶射装置において、前記円形開口部中心軸が傾斜または水平であっても、前記回転架台が安定に旋回出来るよう走行部に電磁石もしくは永久磁石を取り付けていることを特徴としており、これにより、円形開口部の中心軸の向きがどのような方向であっても安定した自動溶射が可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1及び図2に示す本発明の第1の実施形態では、大形の円形鋼構造物であるフランシス水車のランナー(羽根車)のシュラウドが対向する入口ライナーもしくは出口ライナーを被溶射面として自動溶射する場合について、特に、階段状内壁面となる出口ライナーに自動溶射する場合に適用した例を示す。
【0017】
図1において、符号1はフランシス水車などの吸出し管であり、この吸出し管の上流端はランナー(羽根車)シュラウドが対向する入口ライナー3および出口ライナー2が設けられている。ここで出口ライナーは中心軸に対し平行面2a及び垂直面2bよりなる階段状内壁面を有しており、この階段状内壁面が自動溶射の対象壁面(被溶射面)となっている。
【0018】
本実施形態によれば、円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置(以下、「自動溶射装置」と略す)10は、出口ライナー2に自動溶射して皮膜を施工するもので、回転架台11と、溶射ガン12とを具備して構成される。
【0019】
回転架台11は、円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで、すなわち入口ライナー3を直径方向に跨いで設置される梁状の部材である。この回転架台11は、入口ライナー3を旋回移動するため、旋回駆動輪13a,13bを備えている。
【0020】
一方の旋回駆動輪13aは、円形開口部中心軸に対し垂直面3b上を旋回走行する。また、他方の旋回駆動輪13bは、円形開口部中心軸に対し平行な壁面である平行面3aに当接して旋回走行する。
なお、旋回駆動輪13a,13bは、少なくとも一方(両端のいずれか一方のみでもよい)が図示省略の駆動機構に連結された駆動輪となる。
【0021】
溶射ガン12は、回転架台11の所定位置に固定支持して取り付けられ、回転架台11に対して円形開口部の直径方向へ移動可能とする直径方向スライド機構(直径方向移動手段)と、この直径方向スライド機構に対して中心軸方向へ移動可能とする中心軸方向スライド機構(軸方向移動手段)とを備えている。
図示の例では、直径方向スライド機構及び軸方向スライド機構を備えている溶射ガン12が2台(12a,12b)設けられ、一方の溶射ガン12aが平行面2aへ向けて取り付けられた平行面専用となり、他方の溶射ガン12bが垂直面2bに向けて取り付けられた垂直面専用となっている。
【0022】
そして、一方の溶射ガン12aが直径方向スライド機構14aと軸方向スライド機構15aとを備え、かつ、他方の溶射ガン12bが直径方向スライド機構14bと軸方向スライド機構15bとを備えているが、これらの溶射ガンユニットは基本構成が同じであり、補助部材を用いるなどして回転架台11に対する取り付け方向を90度変化させた構成となっている。
また、直径方向スライド機構14a,14b及び軸方向スライド機構15a,15bとしては、たとえば電動機でスクリューネジを適宜回動させて直径方向または軸方向の移動量を調整するものなど、公知の移動量調整機構から適宜選択して採用することができる。
【0023】
なお、図示の構成では平行面2a専用の溶射ガン12aと、垂直面2b専用の溶射ガン12bとを設けてあるが、溶射ガン12の溶射方向を変更できる機能を設ければ、1台の溶射ガン12で平行面2a、垂直面2b及び傾斜面のいずれにも溶射することが可能になり、あるいは、平行面2a専用の溶射ガン12aと、垂直面2b専用の溶射ガン12bとを適宜交換可能な構成とすれば、1台の溶射ガン12で平行面2a及び垂直面2bの両面を溶射できるようになる。
【0024】
さて、以上述べた自動溶射装置10を用いて円形鋼構造物の中心軸に対し平行面、すなわち本実施形態によれば出口ライナー2の平行面2aを溶射する場合には、溶射ガン12aの直径方向スライド機構14a及び軸方向スライド機構15aを操作して、溶射ガン12aを所望の溶射位置に移動させる。被溶射面に対する最適な溶射角度は90度であり、溶射ガン12aと被溶射面の平行面2aとは、常に溶射粒子が90度の角度で衝突すると共に、両者の距離を適切に保つ必要がある。
このため、本発明の自動溶射装置10では、直径方向スライド機構14aを操作して溶射ガン12aを直径方向に移動させることで、自由に距離を変化させて調整することができる。また、軸方向スライド機構15aの操作によって、溶射ガン12aを上下に移動させることが可能となっているので、旋回駆動輪13a,13bによって回転架台11を旋回させれば、精度の高い溶射皮膜を被溶射面の全面にわたって略均等に形成させることができる。
【0025】
一方、被溶射面が中心軸に対し垂直面、すなわち本実施形態によれば出口ライナー2の垂直面2bを溶射する場合には、溶射ガン12bの直径方向スライド機構14b及び軸方向スライド機構15bを操作して、溶射ガン12bを所望の溶射位置に移動させる。被溶射面に対する最適な溶射角度は90度であり、溶射ガン12bと被溶射面の垂直面2bとは、常に溶射粒子が90度の角度で衝突すると共に、両者の距離を適切に保つ必要がある。
このため、本発明の自動溶射装置10では、軸方向スライド機構15bを操作して溶射ガン12bを上下方向に移動させることで、自由に距離を変化させて調整することができる。また、直径方向スライド機構14bの操作によって、溶射ガン12bを直径方向に移動させることが可能となっているので、旋回駆動輪13a,13bによって回転架台11を旋回させれば、精度の高い溶射皮膜を被溶射面の全面にわたって略均等に形成させることができる。
【0026】
なお、上述した溶射ガン12には、溶射粉末材料を供給するためのホース、燃料や酸素、ときにはArガスを供給するためのホースが取り付けられているが、ここでは図示及びその詳細な説明は省略する。
【0027】
さらに、前記円形開口部中心軸が傾斜または水平であっても、前記回転架台が安定に旋回出来るよう走行部に電磁石もしくは永久磁石を取り付けていること(図示省略)により安定に円形鋼構造物の自動溶射が可能となる。
【0028】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態を図3及び図4に基づいて説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態と同様の部材には同じ符合を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態の自動溶射装置10Aでは、回転架台11Aが所定の間隔をもって平行に配置された一対のレール部材11a,11bにより構成されている。レール部材11a,11bの両端部は連結部材11cにより一体に連結され、さらに、回転架台11Aの両端部には、旋回移動手段として連結部材11cに旋回駆動輪13a,13bが設けられている。
【0029】
さて、本実施形態の溶射ガン12は、上述したレール部材11a,11b上を直径方向へ走行移動可能な溶射ガンユニット20に取り付けられている。この溶射ガンユニット20は、溶射ガン12を直径方向に移動させる直径方向移動手段として図示省略の駆動機構に連結された走行輪(直径方向スライド機構)21を備えており、さらに、溶射ガン12を軸方向に移動させる軸方向移動手段として軸方向スライド機構22を備えている。
【0030】
図3に示した例では、2台の溶射ガンユニット、すなわち、平行面2a専用の溶射ガン12aを取り付けた溶射ガンユニット20Aと、垂直面2b専用の溶射ガン12bを取り付けた溶射ガンユニット20Bとが設けられているが、溶射ガン12に平行面2a、垂直面2b及び傾斜面から所望の溶射方向を選択切換できる旋回機構を設ければ、あるいは、平行面専用及び垂直面専用の溶射ガンを適宜交換可能な構成とすれば、図4に示すように、1台の溶射ガンユニット20とすることも可能である。
【0031】
このような構成とすれば、溶射ガン12は、走行輪21が走行して溶射ガンユニット20を直径方向に移動させることにより、また、軸方向スライド機構22が動作して上下方向に移動させることにより、第1の実施形態と同様に被溶射面との距離や溶射位置を調整することができる。
従って、上述した第1の実施形態と同様の自動溶射方法により、溶射による膜厚の均一化を図ることができる。
【0032】
また、上述した第1及び第2の実施形態において、回転架台11,11Aの長さについて、すなわち直径が異なる種々の円形開口部に対応できるようにするため、直径方向長さを調整する長さ調整手段を設けておけば、自動溶射装置10,10Aの汎用性を大きく向上させることができる。
【0033】
ところで、上述した本発明の自動溶射装置は、自動作業装置として、たとえばブラッシング、掃除、グラインディング、塗装及び溶接等の作業にも使用することができる。この場合、溶射ガン12に代えて、それぞれの作業に使用する工具等を取り付ければよい。
なお、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【0034】
【発明の効果】
上述した本発明の自動溶射装置によれば、円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで設置され、前記円形開口に沿った旋回移動手段を備えている回転架台と、該回転架台に対し前記円形開口部の直径方向へ移動可能な直径方向移動手段と軸方向移動手段とを備え、前記円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に向けられて取り付けられている溶射ガンと、を具備して構成したので、直径方向移動手段及び軸方向移動手段によって溶射ガンを被溶射面の最適位置に調整し、旋回移動手段で円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に沿って旋回させれば、円形鋼構造物の被溶射面に対して精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工により容易に形成することができる。
【0035】
また、自動施工が可能になることにより、溶射加工に要する作業時間を短縮でき、生産性の向上に大きく貢献できるだけでなく、紫外線や赤外線、粉塵や騒音といった作業環境から作業員を解放することも可能になる。
さらに、精度の高い膜厚分布の成膜が可能なため、硬質で耐摩耗性及び耐キャビテーション・エロージョン性に優れた高性能の皮膜を形成することができるので、被溶射面の耐久性や信頼性の向上に大きな効果を奏する。
【0036】
特に、被溶射面が中心軸に対し平行面及び垂直面よりなる階段状の場合には、平行面用溶射ガンと垂直面用溶射ガンとを一緒にまたは交換可能に取り付けられる構成としたので、平行面及び垂直面よりなる階段状の被溶射面に対し、精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工により容易に形成することができる。また、被溶射面が平行面及び垂直面よりなる階段状の場合には、平行面及び垂直面から溶射方向を選択して回転させる溶射方向切換手段を設けた構成としたので、一台の溶射ガンにより、平行面及び垂直面よりなる階段状の被溶射面に対して精度の高い膜厚分布の均等な溶射皮膜を自動施工により容易に形成することができる。
【0037】
さらに、回転架台の長さを調整できるように構成すれば、径の異なる円形構造物に応じて最適な長さの回転架台に調整できるので、多様な径の円形構造物に使用できる汎用性の高い装置となる。
さらに前記円形開口部中心軸が傾斜または水平であっても、前記回転架台が安定に旋回出来るよう走行部に電磁石もしくは永久磁石を取り付けていることにより前記円形開口部の中心軸の向きがどのような方向であっても安定に自動溶射可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の要部平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置を示す縦断面図である。
【図4】図3の要部平面図である。
【符号の説明】
1 吸出し管(大形の円形構造物)
2 出口ライナー
2a 平行面(被溶射面)
2b 垂直面(被溶射面)
3 入口ライナー
3a 平行面
3b 垂直面
10,10A 円形構造物の内壁面自動溶射装置(自動溶射装置)
11,11A 回転架台
11a,11b レール部材
11c 連結部材
12 溶射ガン
13a,13b 旋回駆動輪(旋回移動手段)
14a,14b 直径方向スライド機構(直径方向移動手段)
15a,15b 軸方向スライド機構(軸方向移動手段)
20 溶射ガンユニット
21 走行輪(直径方向移動手段)
22 軸方向スライド機構(軸方向移動手段)
Claims (5)
- 円形鋼構造物の内壁面を自動溶射して皮膜を施工する円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置であって、
円形構造物の被溶射面が存在する円形開口部を跨いで設置され、前記円形開口に沿った旋回移動手段を備えている回転架台と、
該回転架台に対し前記円形開口部の直径方向へ移動可能な直径方向移動手段と円形開口部中心軸方向移動手段とを備え、前記円形鋼構造物の内壁面の被溶射面に向けられて取り付けられている溶射ガンと、
を具備して構成したことを特徴とする円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置。 - 前記被溶射面が円形開口部中心軸に対し垂直面及び平行面よりなる階段状であり、前記溶射ガンの向きをそれぞれの面に対し垂直となるよう切り替え可能な構成であることを特徴とする請求項1記載の円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置。
- 前記被溶射面が垂直面及び水平面よりなる階段状であり、前記溶射ガンには、垂直面及び水平面から溶射方向を選択して回転させる溶射方向切換手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置。
- 前記回転架台が、前記円形開口部の直径方向長さを調整する長さ調整手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の円形鋼構造物の内壁面自動溶射装置。
- 前記円形開口部中心軸が傾斜または水平であっても、前記回転架台が安定に旋回出来るよう走行部に電磁石もしくは永久磁石を取り付けていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の円形鋼構造物自動溶射装置。
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-
2002
- 2002-07-04 JP JP2002195783A patent/JP2004035960A/ja not_active Withdrawn
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