JP2004035348A - 鎖状オクタポリリン酸塩及びその製造方法 - Google Patents

鎖状オクタポリリン酸塩及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生体材料、電子材料、光学セラミックス、医薬品や医薬品原料として、有用な、線状の高次ポリリン酸塩を提供する。
【解決手段】式(1)で表される構造を有する新規なポリリン酸塩であるオクタポリリン酸塩を提供する。また、この新規なオクタポリリン酸塩は、シクロオクタリン酸塩をアルカリ金属等の水酸化物により加水分解し選択的に開環させて得ることができる。
Figure 2004035348

(式中、Mは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を示す。ただし、アルカリ土類金属の場合は、Mは1/2モル数を表す。)
【選択図】  図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な縮合リン酸塩に関し、より詳しくは鎖状オクタポリリン酸塩及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
縮合リン酸塩(ポリリン酸塩)は、古くから使用されている化学肥料の原料を始めとして、合成洗剤、清缶剤、硬水軟化剤、難燃剤、ガラス添加剤、食品添加剤等の分野、さらには、生体材料、電子材料、光学セラミックス等の新規な分野まで、その用途は大きく開けている。また、これらポリリン酸は、生物の代謝作用に深い関係を有し、アデノシン三リン酸、ジアデノシン四リン酸及びジアデノシン五リン酸並びに糖のリン酸化合物等は、種々な生理作用を有し、医薬品や医薬品原料としての利用が期待されている。
【0003】
縮合リン酸塩のうち、環状のポリリン酸塩は、上記の用途にはほとんど使用されておらず、工業的・技術的には、鎖状のポリリン酸塩が圧倒的に重要である。これらは、オルトリン酸塩の加熱縮合または環状ポリリン酸塩の開環により合成されるが、鎖が長くなるにつれて、合成が困難になり、従来その製造方法が明確にされているものは、せいぜいテトラポリリン酸塩までである。
【0004】
なお、現在まで知られている高次の鎖状ポリリン酸塩のうち、本発明者により六量体であるヘキサポリリン酸塩が合成され、その構造及び物性が確認されているものが(M. Watanabe, Phosphorus Research Bulletin,vol.8,1−6(1998))、従来報告されている最も高次のポリリン酸塩であると考えられ、これ以上の高次のものは、現在知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる技術的背景のもとに、例えば上記した生体材料、電子材料、光学セラミックスとして、さらには医薬品や医薬品原料として、低次のポリリン酸塩と比較し、更なる、若しくは特異な効果が期待される、高次ポリリン酸塩、特には鎖状オクタポリリン酸塩を新規に創出することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0007】
〔請求項1〕に記載のオクタポリリン酸塩は、式(1)で表される構造を有することを特徴とするオクタポリリン酸塩である(以下、当該「オクタポリリン酸塩」を単に「オクタリン酸塩」と称することがある。)。
【0008】
【化4】
Figure 2004035348
【0009】
(式中、Mは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を示す。ただし、アルカリ土類金属の場合は、Mは1/2モル数を表す。以下、同じ。)
【0010】
〔請求項2〕に記載の方法は、式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩を、
【0011】
【化5】
Figure 2004035348
【0012】
(式中、M’は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を示す。ただし、アルカリ土類金属の場合は、M’は1/2モル数を表す。以下、同じ。)
【0013】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属(M)の水酸化物の水溶液中で加水分解することを特徴とする式(1)で表される構造を有するオクタポリリン酸塩の製造方法である。
【0014】
【化6】
Figure 2004035348
【0015】
(式中、MとM’は同じでも異なっていてもよい。)
【0016】
〔請求項3〕に記載の方法は、前記式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩の加水分解を、アルカリ金属水酸化物の水溶液中で行って、オクタポリリン酸のアルカリ金属塩を得、これをさらにアルカリ土類金属の水溶性塩と接触させ、イオン交換することを特徴とする〔請求項2〕に記載のオクタポリリン酸のアルカリ土類金属塩の製造方法である。
【0017】
〔請求項4〕に記載の方法は、前記式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩の加水分解を、水酸化カリの水溶液中、−15〜10℃の温度で行うことを特徴とする〔請求項2〕又は〔請求項3〕に記載のオクタポリリン酸塩の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
(シクロオクタリン酸塩の調製)
本発明においては、式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩を、
【0020】
【化7】
Figure 2004035348
【0021】
(なお、式中で、M’は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択されるアルカリ金属、及びベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及ラジウムから選択されるアルカリ土類金属の少なくとも一種を示す。)
【0022】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属(M)の水酸化物の水溶液中で加水分解するものであるが、この加水分解の出発原料となるシクロオクタリン酸塩は、本発明者が提案している次の方法により調製することができる(M. Watanabe, Phosphorus Research Bulletin, vol.1,119−124(1991))。
【0023】
すなわち、α−Pを加水分解し、その溶液に、塩化ナトリウムを添加してシクロテトラリン酸ナトリウムの結晶〔(NaPO・4HO 〕を得、当該シクロテトラリン酸ナトリウムに、例えば2倍モルの硝酸鉛〔Pb(NO〕の0.1モル/L水溶液を加え、まず、シクロテトラリン酸鉛〔Pb(PO・2HO 〕を生成・分離する。
【0024】
このシクロテトラリン酸鉛を、300〜420℃、好ましくは340〜400℃の温度で、5〜60分、好ましくは10〜50分、電気炉中で加熱して縮合せしめ、そのシクロオクタリン酸鉛を主体とする加熱生成物を得る。ここで、一旦シクロテトラリン酸の鉛塩としてから、加熱縮合してそのシクロオクタリン酸塩とするのは、上記シクロテトラリン酸ナトリウムを直接加熱縮合させると、そのシクロオクタリン酸塩は生成されず、更なる高分子量のポリマーとなってしまうからである。
【0025】
当該加熱生成物を、例えば3質量%程度のEDTA水溶液に溶解し、30〜120分程度撹拌した後、過剰の塩化ナトリウムを添加し、鉛とナトリウムのイオン交換反応を行わしめ、シクロオクタリン酸ナトリウムを形成させる。
【0026】
このシクロオクタリン酸ナトリウムの水溶液を濾過分離して、沈殿物を除いた後、当該濾液にアルコールやアセトン等の沈殿剤を添加することにより、シクロオクタリン酸ナトリウム〔(NaPO・7HO 〕(7水塩)が得られる。なお、所望により、再度これを水に溶解し、同様に沈殿剤を加えて再結晶することも可能である。
【0027】
以上の如くして得られたシクロオクタリン酸塩は、ナトリウム塩〔すなわち、式(2)におけるM’=Na〕の場合であるが、その他のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の場合も、基本的には同じようにして調製することができる。
【0028】
すなわち、上記と同様にして合成したシクロオクタリン酸鉛を主体とする加熱生成物を、EDTA水溶液とした後に、塩化ナトリウムの代わりに、所望のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水溶性塩を添加し、鉛イオンとのイオン交換反応を行わしめればよいのである。
【0029】
このようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水溶性塩としては、特に限定するものではなく、例えば、LiCl、KCl、RbCl、CsCl等のアルカリ金属塩;及びBeCl、MgCl、CaCl、SrCl、BaCl、RaCl等のアルカリ土類金属塩等が好適に使用可能である。
【0030】
以上のごとくして得られる、式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩においては、M’で示される当該アルカリ金属やアルカリ土類金属として、ナトリウム以外に任意のものを導入することが可能である。しかしながら、本発明においては、当該シクロオクタリン酸塩それ自体は、出発原料であり、当該M’として式(2)に導入されたアルカリ金属等が、最終的な目的物質である式(1)で表されるオクタポリリン酸塩のアルカリ金属又はアルカリ土類金属(M)としてそのまま移行するものではなく、また後記するように、次の加水分解工程及び/又はそれに引き続き行ってもよいカチオン交換処理において、任意のアルカリ金属等を導入することが可能であるため、通常は、出発物質たるシクロオクタリン酸塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、なかでも容易に調製できるリチウム塩やナトリウム塩を使用することが最も好ましい。
【0031】
(加水分解工程)
本発明においては、上記のごとくして得られた式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩を、アルカリ水溶液、すなわち、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(M)の水酸化物の水溶液中で加水分解する。
【0032】
かかるアルカリ金属の水酸化物としては、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOHが挙げられ、アルカリ土類金属の水酸化物としては、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、Ra(OH)等が挙げられる。これらは、いずれも、アルカリ性雰囲気下で、式(2)のシクロオクタリン酸塩を加水分解することが可能であり、基本的には使用可能であるが、当該水酸化物の水への溶解度や加水分解速度、加水分解収率、目的オクタポリリン酸への選択率、加水分解反応の制御の容易性等の点で、アルカリ金属の水酸化物を使用することが好ましく、中でもLiOH、NaOH又はKOHを使用することがより好ましく、KOHを使用することが最も好ましい。
【0033】
加水分解の条件としては、後記するように、当該加水分解反応が、シクロオクタリン酸塩が分解してオクタポリリン酸塩が生成する主反応(選択的開環反応)とともに、当該生成したオクタポリリン酸塩が、さらに加水分解する副反応を伴う、所謂逐次反応タイプの反応経路をとるものである。従って、当該主反応速度が充分大きいとともに、目的のオクタポリリン酸塩の収率が高く、かつ副反応が起こりにくい条件を選択することが好ましい。
【0034】
かかる観点から、加水分解を、例えばアルカリ金属の水酸化物を使用して行う場合、その水溶液の濃度は、1〜20M、より好ましくは2〜15Mである。
【0035】
また、反応温度は、−20〜20℃、好ましくは−15〜10℃、さらに好ましくは−10〜5℃、最も好ましくは−8〜2℃である。
【0036】
さらに反応時間は、アルカリの濃度や反応温度により異なりうるが、通常5〜300hr、好ましくは10〜200hr、さらに好ましくは20〜100hrである。
【0037】
図1は、後記実施例における加水分解反応の経過の一例を示すグラフである。ここでaは生成するオクタポリリン酸塩、bはシクロオクタリン酸塩、cはその他副生するリン酸塩の液中濃度の経時変化を示す。この図から明らかなように、シクロオクタリン酸塩bが加水分解されてその濃度が減少するにつれて、生成するオクタポリリン酸塩aの濃度が上昇するが、当該オクタポリリン酸塩濃度は、ある時点でピーク(ここでは65P%程度)に達し、以後は徐々に減少する反応経路をとることがわかる。そして、その他のリン酸塩cの濃度は単調に増加する。すなわち、すでに述べたように、この加水分解反応は、一旦生成したオクタポリリン酸塩がさらに加水分解され、その他の低次のリン酸塩が生成する、逐次反応の類型に属する反応として取り扱えると考えられる。
【0038】
従って、当該反応を実施する装置としては、撹拌手段、温度制御手段、原料シクロオクタリン酸塩及びアルカリ溶液供給手段、反応液サンプリング手段等を備えた槽型の反応容器が好ましく、適当な間隔で反応液をサンプリングし、分析しながら当該加水分解反応を実施し、オクタポリリン酸塩生成量(濃度)がピークの時点で、反応を終了することが望ましい。
【0039】
反応の停止は、反応液に塩酸や硫酸等の適当な酸を添加してアルカリを中和することにより行われる。
【0040】
(生成物の分離・精製)
かくして得られたオクタポリリン酸塩含有中和反応液から、当該オクタリン酸塩を分離する。
【0041】
分離工程としては、いくつかの操作を採用することが可能であるが、最も好ましくは、まず当該反応液に沈殿剤を添加して、オクタポリリン酸塩を沈殿せしめ、遠心分離、濾過等で固液分離して、固体として取得する方法である。
【0042】
沈殿剤としては、水に対する溶解度が高く、溶解しているオクタポリリン酸塩を析出せしめうる水溶性有機溶剤が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノール、1,3−プロパンジオール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド等のアミド類;トリエチルアミン等のアミン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ピリジン等のピリジン類;テトラヒドロフラン等のフラン類;1,4−ジオキサン等のジオキサン類が使用可能である。
【0043】
沈殿剤添加による沈殿は、例えば図1に示すように、通常、オクタポリリン酸塩と共に、未反応のシクロオクタリン酸塩及び他の副生リン酸塩(主として低縮合リン酸塩)が混入している組成物となる(以下、これを「粗オクタポリリン酸塩」と称することがある。)ので、さらに精製することが望ましい。
【0044】
精製工程は、この粗オクタポリリン酸塩を再度水に溶解し、当該粗オクタポリリン酸塩水溶液を、高速液体クロマトグラフィ法(HPLC)や一次元(又は二次元)ペーパークロマトグラフィ法等により処理し、吸着能の差異により各成分を分離してもよいが、好ましくは、当該粗オクタポリリン酸塩水溶液を陰イオン交換樹脂カラムに通液処理すること(以下、単に「カラム処理」と称することがある。)が最も実際的である。
【0045】
カラム処理に使用する陰イオン交換樹脂としては、トリアルキルアミン型(I型)又はジアルキルエタノールアミン型(II型)等の強塩基性陰イオン交換樹脂が好ましく、これを充填したカラムに、当該粗オクタポリリン酸塩水溶液を通液して、そのオクタポリリン酸イオンを他の低縮合リン酸イオン等とともに樹脂に吸着させる。次に当該カラムを、濃度を段階的に変化させた塩化カリや塩化ナトリウム水溶液を溶離液として通液処理し、リン酸塩の縮合度による吸着性の差異により、目的とするオクタポリリン酸イオンを、例えばそのカリウム塩やナトリウム塩として、他の低縮合リン酸塩等と分離して取得することが可能である。
【0046】
かくして得られたオクタポリリン酸塩を含む水溶液に、さらに上記した沈殿剤を添加してこれを沈殿分離することにより、式(1)で表される構造を有するオクタポリリン酸塩が固体として得られる。なお、このオクタポリリン酸塩は、通常非結晶性のものである。
【0047】
【化8】
Figure 2004035348
【0048】
上記式中で、Mは、すでに規定しているように、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択されるアルカリ金属、及びベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及ラジウムから選択されるアルカリ土類金属の少なくとも一種を示すものである。このうち、調製の容易性等の点から、Mがアルカリ金属の場合が好ましく、特にリチウム、ナトリウム、カリウム塩、なかでもカリウム塩の場合がもっとも好ましい。
【0049】
また、Mがアルカリ土類金属の場合は、一旦式(1)で表されるナトリウム塩又はカリウム塩等のアルカリ金属の塩を合成し、この水溶液に、8〜20モル倍程度の過剰のアルカリ土類金属の水溶性塩を添加・接触させることにより、イオン交換反応を行わしめ、オクタポリリン酸のアルカリ土類金属塩を得ることができる。このようにして生成されたアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属塩に比較して溶解度が低く、容易に沈殿し、固体として取得することができる。
【0050】
かかるアルカリ土類金属の水溶性塩としては、特に限定するものではなく、例えば、BeF、BeCl、BeBr、BeI、Be(NO、MgCl、MgBr、MgI、MgSO、Mg(NO、CaCl、CaBr、CaI、Ca(NO、SrCl、Sr(ClO、SrBr、SrI、Sr(NO、BaCl、Ba(ClO、BaBr、BaI、Ba(NO、RaCl、RaBr、Ra(NO等が好適に使用可能であり、なかでも、BeCl、MgCl、CaCl、SrCl、BaCl、RaCl等が最も好ましい。
【0051】
なお、場合により、あるアルカリ金属塩を、他のアルカリ金属の水溶性塩と接触させて同様にイオン交換反応し、当該他のアルカリ金属塩とすることもできる。かかる目的に使用されるアルカリ金属の水溶性塩としては、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiNO、KF、KCl、KBr、KI、KClO、RbF、RbCl、RbClO、RbBr、RbI、RbSO、RbNO、RbCO、CsF、CsCl、CsClO,CsBr、CsI、CsSO等が例示される。
【0052】
本発明の式(1)で示されるオクタポリリン酸塩の構造は、後記実施例で詳述するように、HPLC、及び31P NMR分析により確認することができる。
【0053】
すなわち、図2は、後記実施例におけるオクタポリリン酸塩濃度がピークになる点での反応溶液のHPLCプロファイルの一例であるが、従来公知の鎖状及び環状のリン酸塩のピークとの比較から、当該オクタポリリン酸塩のピーク(P8)(分離時間60分)は、既知のリン酸塩のピークのいずれにも該当しないことが確認される。
【0054】
また、31P NMRにより、このP8のピークが、オクタポリリン酸塩のピークであることが確認できる。
【0055】
すなわち、図3は、実施例における当該反応液の31P NMRスペクトルの一例であるが、オクタポリリン酸イオンの化学式においては、α、β、γ、δの表示で示した4種類の異なるPOが存在する。これら構造の相違を、NMRスペクトルに対応させると、αは末端基であり、予想どおり−5ppmにダブレットとして観察され、また、βからγまでのPO基は中間基で、それぞれ異なった磁場環境にあり、図に示すように3つのグループのピークに分かれるが、予想されるとおり、βとγ基は、トリプレットと、δ基はダブレットとして観察されることから、P8のピークは、オクタポリリン酸塩のピークであることが、確認される。
【0056】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、例中の「%」は、特に断らない限り「質量%」を表す。なお、生成物の分析は、以下の方法によって行った。
【0057】
(a)リン化学分析
リンバナドモリブデンブルー吸光光度法によった。なお、図中における反応液中の各リン酸塩成分の濃度〔P%〕とは、当該反応液中すなわち系内に存在する全リン量に対するそれぞれの成分のリン量の割合を百分率で表示したものである。
【0058】
(b)高速液体クロマトグラフ(HPLC)
高速液体クロマトグラフLC−10A(島津製作所製)を用い、反応液を分析した。なお、溶離液として、濃度を段階的に変化させた塩化カリウム水溶液を用いた。
【0059】
(c)31P NMR
JNM−GX270(日本電子社製)により、反応溶液の31P NMRスペクトルを測定した。なお、核種31Pの化学シフトの基準物質として85%HPOを用いた。
【0060】
〔実施例1〕
(1)出発物質となるシクロオクタリン酸ナトリウム〔(NaPO・7HO 〕は、シクロテトラリン酸ナトリウム〔(NaPO・4HO 〕を経て、以下の方法により合成した。
【0061】
(a)まず、シクロテトラリン酸ナトリウムを合成した。撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた500mLのガラス製反応容器において、水200cmに、無水リン酸(P)60gを、8℃以下に保持しながら撹拌下添加して溶解させた。これに70gの塩化ナトリウムを加え、1時間撹拌し加水分解反応を行った。生成した加水分解生成物を濾過し、当該濾過ケーキを塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄後、さらに水40cmに溶解し、再度濾過し、沈殿物を除去した。濾液に120gの塩化ナトリウムを添加、撹拌し、生成した沈殿を再度濾過分離した。得られた濾過ケーキを塩化ナトリウム飽和水溶液及びアセトンで洗浄し、(NaPO・4HOを得た。
【0062】
(b)上記と同じ反応容器中で、得られた(NaPO・4HOの5gを水140cmに溶解し、これに硝酸亜鉛〔Pb(NO〕7g(2倍モル)の200cm水溶液を加えて撹拌反応させ、シクロテトラリン酸鉛〔Pb(PO・2HO〕を生成・沈殿させた。
【0063】
このシクロテトラリン酸鉛を電気炉にセットし、340℃で45分加熱焼成した。
上記当該加熱焼成物5gを、反応容器中で、3%のEDTA水溶液200cmに溶解し、1時間撹拌後、塩化ナトリウム40gを添加して、鉛とナトリウムのイオン交換反応を行わしめた。不溶固体を濾過で除いた後、濾液に沈殿剤としてアセトン60cmを添加し、シクロオクタリン酸ナトリウムを沈殿させた。収量は2.3gであった。
【0064】
(2)このシクロオクタリン酸ナトリウム〔(NaPO・7HO 〕を0℃に保持した恒温水槽中で、10MのKOH水溶液100cm中で加水分解反応を行わせた。一定時間毎に反応液をサンプリングしてHPLC及びリンの化学分析により、組成を分析した結果を図1に示す。
【0065】
(a)図1から明らかなように、シクロオクタリン酸ナトリウムbが加水分解し、オクタリン酸ナトリウムaが生成する反応は、典型的な逐次反応と思われ、液中のシクロオクタリン酸ナトリウムb濃度が減少するとともに、オクタリン酸ナトリウムaの濃度が増加し、約2日(48時間)でその濃度は、最大(65P%)に達するが、以後は、緩やかに低下し、他のリン酸のナトリウム塩cが徐々に増加する。すなわち、生成したシクロオクタリン酸ナトリウムは、さらに加水分解を受けて、より低分子のリン酸塩が生成すると推定される。
【0066】
(b)また、図2は、このオクタリン酸ナトリウム濃度が最大になる点における反応液のHPLC分析結果を、既知の鎖状及び環状のリン酸ナトリウムのピークと比較して示したものである。図において、P1はオルトリン酸塩、P2はピロリン酸塩、P3はトリリン酸塩、P4はテトラリン酸塩、P5はペンタリン酸塩、P6はヘキサリン酸塩、P7はヘプタリン酸塩、cP8はシクロオクタリン酸塩のピークである。
【0067】
これら従来公知のリン酸ナトリウムのピークとの比較から、分離時間60分における本発明の目的物質であるオクタポリリン酸塩のピーク(P8)に該当する既知のリン酸塩のピークは無く、これは従来知られていない新規化合物であると考えられる。
【0068】
(c)さらに、31P NMRにより、このP8のピークがオクタリン酸塩のピークであることを確認した。
【0069】
図3は、反応液の31P NMRスペクトルである。
オクタリン酸塩の化学式は図3に示すとおりであり、α、β、γ、δの表示で示した4種類のPOが存在する。αは末端基であり、予想どおり−5ppmにダブレットとして観察された。また、βからγまでのPO基は中間基で、それぞれ異なった磁場環境にあり、図に示すように3つのグループのピーク分かれるが、予想されるとおり、βとγ基は、トリプレットと、δ基はダブレットとして観察された(なお、δ基は一見トリプレットのように見えるが、最も低磁場側のピーク(3つのピークのうち、最も左のピーク)は、シクロオクタリン酸塩のピークであり、残りの2つがオクタリン酸塩のピークである。)。
【0070】
すなわち、P8のピークは、オクタポリリン酸塩のピークであることが、確認された。
【0071】
〔実施例2〕
シクロオクタリン酸ナトリウムの加水分解を−5℃で行う他は、実施例1と同様な実験を行った。一定時間毎に反応液をサンプリングして、組成を分析した結果を図4に示す。生成するオクタポリリン酸塩aの濃度がピークに達する時間は、0℃の場合と比較して遅くなることから、反応速度が低くなることが確認された。また、この濃度ピークにおける反応液について実施例1と同様に、HPLC及び31P NMRスペクトルを測定したが、実施例1とほぼ同様な結果が得られた。
【0072】
〔実施例3〕
シクロオクタリン酸ナトリウムの加水分解を−7℃で行う他は、実施例1と同様な実験を行った。一定時間毎に反応液をサンプリングして、組成を分析した結果を図5に示す。生成するオクタポリリン酸塩aの濃度がピークに達する時間は、0℃及び−5℃の場合と比較してさらに遅くなり、反応速度は一層低くなることが確認された。また、この濃度ピークにおける反応液について実施例1と同様にHPLC及び31P NMRスペクトルを測定したが実施例1とほぼ同様な結果が得られた。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、新規な線状ポリリン酸塩であるオクタポリリン酸塩が創出され提供される。当該オクタポリリン酸塩は、従来知られているポリリン酸塩よりさらに高縮合のポリリン酸塩であるから、生体材料、電子材料、光学セラミックスとして、さらには医薬品や医薬品原料としてより有用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるシクロオクタリン酸ナトリウムを0℃で加水分解した反応液中の各成分の組成変化を示す図である。
【図2】実施例における反応液のHPLC分析結果を示す図である。
【図3】実施例における反応液の31P NMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例におけるシクロオクタリン酸ナトリウムを−5℃で加水分解した反応液中の各成分の組成変化を示す図である。
【図5】実施例におけるシクロオクタリン酸ナトリウムを−7℃で加水分解した反応液中の各成分の組成変化を示す図である。

Claims (4)

  1. 式(1)で表される構造を有することを特徴とするオクタポリリン酸塩。
    Figure 2004035348
    (式中、Mは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を示す。ただし、アルカリ土類金属の場合は、Mは1/2モル数を表す。)
  2. 式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩を、
    Figure 2004035348
    (式中、M’は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を示す。ただし、アルカリ土類金属の場合は、M’は1/2モル数を表す。)
    アルカリ金属又はアルカリ土類金属(M)の水酸化物の水溶液中で加水分解することを特徴とする式(1)で表される構造を有するオクタポリリン酸塩の製造方法。
    Figure 2004035348
    (式中、MとM’は同じでも異なっていてもよい。ただし、アルカリ土類金属の場合は、MとM’はそれぞれ1/2モル数を表す。)
  3. 前記式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩の加水分解を、アルカリ金属水酸化物の水溶液中で行って、オクタポリリン酸のアルカリ金属塩を得、これをさらにアルカリ土類金属の水溶性塩と接触させ、イオン交換することを特徴とする請求項2に記載のオクタポリリン酸のアルカリ土類金属塩の製造方法。
  4. 前記式(2)で表されるシクロオクタリン酸塩の加水分解を、水酸化カリの水溶液中、−15〜10℃の温度で行うことを特徴とする請求項2又は3に記載のオクタポリリン酸塩の製造方法。
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