JP2004034216A - 研磨機および研磨方法 - Google Patents

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Jiro Kajiwara
梶原 治郎
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Abstract

【課題】被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域に対し、スラリーが確実に供給され、研磨ムラが生じない研磨機及び研磨方法を得る。
【解決手段】上面に研磨パッド25を設けた下定盤を一方向に回転させ、板状の被研磨材Wを、上定盤によって一方向に回転させつつ研磨パッド面25a内で、下定盤の回転中心を中心に一方向に公転させながら研磨パッド面25a上に押付け、同時に研磨パッド面25a上にスラリーを供給して被研磨材Wの研磨パッド接触面を研磨する研磨機21において、研磨パッド面25aに、研磨パッド外円周上の任意の点p1を通り研磨パッド25の内方に向かって延在するスリット溝37を形成し、かつこのスリット溝37を、任意の点p1と研磨パッド25の回転中心を通る直線39に対して、任意の点p1を中心に、研磨パッド25の回転方向と反対側に傾斜させた。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、平面表示装置等に使用される前面ガラスパネル等の平坦な薄板である被研磨材を研磨する研磨機および研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置やプラズマディスプレイ等の平面表示装置は、液晶を封入したり、放電セルを真空密閉する構造から透明薄板が使用される。透明薄板としては樹脂フィルムやガラス板等が用いられるが、耐熱性、高い平面度の維持という点ではガラス板が有利となる。このような平面表示装置の前面パネルとして使用されるガラス板等は、光透過性に優れ、かつ平坦化されていることが要求される。
【0003】
従来、この種のガラス板等の被研磨材は、化学機械的研磨法(CMP法)によって研磨されていた。CMP法は、SiOを用いたアルカリ性スラリーやCeOを用いた中性スラリー、或いはAlを用いた酸性スラリー、砥粒剤等を用いたスラリー等を用いて化学的・機械的に被研磨材を研磨し、平坦化する方法である。
【0004】
従来、この種のCMP法は、図4にその構成の概略を示す研磨機1によって行われていた。即ち、上面に研磨パッド3を設けた下定盤5を回転させ、板状の被研磨材Wを、上定盤7によって回転させつつ研磨パッド面内で移動させながら研磨パッド面上に押付ける。同時に、研磨パッド面上に配設したスラリー供給管9からスラリーをパッド面上に供給し、被研磨材Wの研磨パッド接触面をスラリー及び研磨パッド3によって研磨していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、平面表示装置は、大型化の傾向にある。一方で、加工熱の影響を受け易い下定盤を、高い平面度を維持しながら大型化させるのにも限界がある。例えば、900mm×700mmの大型の被研磨材を研磨する場合においても、現在のところ下定盤の直径はφ1700mm程度が熱影響に耐えて高い平面度を維持する上での限度となっている。このような状況下において、上記の大型の被研磨材を研磨した場合には、パッド面上を移動する被研磨材によって常に接することとなる図4に示す研磨パッド3の被り領域11が発生する。この被り領域11は、常に被研磨材Wが接触することとなるため、スラリーが供給され難くなる。このようにして被研磨材の研磨面に、スラリー供給量の不均一があると、研磨ムラが生じ易くなって、均等な研磨結果が得難くなった。これに対し、被り領域に対してもスラリーの供給が可能となるように、上定盤を、下定盤に対してオーバーハングするように移動させれば、撓み等による他の理由から研磨ムラの生じ易くなる虞があった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域に対してもスラリーが確実に供給され、研磨ムラが生じない研磨機および研磨方法を提供し、もって、大きな被研磨材であっても均等な研磨結果が得られるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る請求項1記載の研磨機は、上面に研磨パッドを設けた下定盤を一方向に回転させ、板状の被研磨材を、上定盤によって一方向に回転させつつ研磨パッド面内で、前記下定盤の回転中心を中心に一方向に公転させながら該研磨パッド面上に押付け、同時に前記研磨パッド面上にスラリーを供給して前記被研磨材の研磨パッド接触面を研磨する研磨機において、研磨パッド面に、研磨パッド外円周上の任意の点を通り該研磨パッドの内方に向かって延在するスリット溝が形成され、かつ該スリット溝が、前記任意の点と前記研磨パッドの回転中心を通る直線に対して、前記任意の点を中心に、前記研磨パッドの回転方向と反対側に傾斜していることを特徴とする。
この研磨機では、研磨パッド面上のスラリーが、被研磨材の接していない研磨パッド領域で慣性力によって、又被研磨材の接している研磨パッド領域で被研磨材との付着による摩擦力によって研磨パッドの回転速度より低速となる。したがって、スラリーが研磨パッドと相対回転することとなり、スラリーには、スリット溝に沿って研磨パッドの回転中心方向へと移動しようとする力が作用する。つまり、回転するスリット溝によってスラリーが呼び込まれるようになる。これにより、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域において、スラリーが滞留し易くなり、研磨ムラが生じ難くなる。
【0007】
請求項2記載の研磨機は、板状の被研磨材を、上定盤によって一方向に回転させつつ下定盤の上面に設けた研磨パッド面内で、前記下定盤の中心を中心に一方向に公転させながら該研磨パッド面上に押付け、同時に前記研磨パッド面上にスラリーを供給して前記被研磨材の研磨パッド接触面を研磨する研磨機において、上定盤によって前記被研磨材と同じ押付け力で前記研磨パッド面上に押付けられる枠状のリテーナを前記被研磨材の周囲に嵌装し、該リテーナの前記研磨パッドに対する対向面に、リテーナ外円周上の任意の点を通り該リテーナの内方にかって延在するスリット溝が形成され、かつ該スリット溝が、前記任意の点と前記リテーナの回転中心を通る直線に対して、前記任意の点を中心に、前記リテーナの回転方向と反対側に傾斜していることを特徴とする。
この研磨機では、研磨パッド面上のスラリーが、リテーナの接していない研磨パッド領域でリテーナの外周に開口するスリット溝によって研磨パッドとリテーナとの間に呼び込まれ、又リテーナの接している研磨パッド領域でスリット溝に沿ってリテーナの回転中心方向へと移動しようとする力が作用する。これにより、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域において、スラリーが滞留し易くなり、研磨ムラが生じ難くなる。
【0008】
請求項3記載の研磨機は、請求項1又は請求項2記載の研磨機において、前記スラリーが、前記研磨パッドの下面側から該研磨パッドを通過して研磨パッド面上へ供給されることを特徴とする。
この研磨機では、被研磨材と研磨パッドとの間にスラリーが直接供給されることになり、被研磨材が常に接することとなる研磨パッドの被り領域に対してもスラリーが確実に供給される。そして、被り領域に供給されたスラリーは、請求項1記載の研磨パッドに形成したスリット溝、又は請求項2記載のリテーナに形成したスリット溝によって、この被り領域に滞留し易くなる。これにより、被り領域におけるスラリーの供給がより確実となり、研磨ムラが生じ難くなる。
【0009】
請求項4記載の研磨機は、請求項1から3のいずれかに記載の研磨機において、前記上定盤を一方向に公転させる機構を有することを特徴とする。また、請求項5記載の研磨機は、請求項1から3のいずれかに記載の研磨機において、前記上定盤を揺動させる機構を有することを特徴とする。
これらの研磨機では、上定盤を公転又は揺動させるので、より一層研磨ムラの発生を抑えることができる。
【0010】
請求項6記載の研磨方法は、上面に研磨パッドを設けた下定盤を一方向に回転させ、板状の被研磨材を、上定盤によって一方向に回転させつつ研磨パッド面内で該研磨パッド面上に押付け、同時に前記研磨パッド面上にスラリーを供給して前記被研磨材の研磨パッド接触面を研磨する研磨方法において、前記研磨パッドとして、研磨パッド外周に開口するスリット溝が研磨パッド面に形成された研磨パッドを用い、前記研磨パッド面上に供給されたスラリーの一部を前記スリット溝内に流入させて研磨することを特徴とする。
この研磨方法では、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域にスラリーを供給し、該スラリーを被り領域に滞留させた状態で研磨するので、研磨ムラが生じ難くなる。
【0011】
請求項7記載の研磨方法は、板状の被研磨材を、上定盤によって一方向に回転させつつ下定盤の上面に設けた研磨パッド面内で該研磨パッド面上に押付け、同時に前記研磨パッド面上にスラリーを供給して前記被研磨材の研磨パッド接触面を研磨する研磨方法において、上定盤によって前記被研磨材と同じ押付け力で前記研磨パッド面上に押付けられる枠状体であって、その外周に開口するスリット溝が前記被研磨材に対する対向面に形成されてなるリテーナを前記被研磨材の周囲に嵌装し、前記研磨パッド面上に供給されたスラリーの一部を前記スリット溝内に流入させて研磨することを特徴とする。
この研磨方法では、リテーナを使用して研磨する場合においても、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域にスラリーを供給し、該スラリーを被り領域に滞留させた状態で研磨するので、研磨ムラが生じ難くなる。
【0012】
請求項8記載の研磨方法は、請求項6又は請求項7記載の研磨方法において、前記スラリーが、前記研磨パッドの下面側から該研磨パッドを通過して研磨パッド面上へ供給されることを特徴とする。
この研磨方法では、被り領域におけるスラリーの供給がより確実となり、研磨ムラが生じ難くなる。
【0013】
請求項9記載の研磨方法は、請求項6から8のいずれかに記載の研磨方法において、前記上定盤を一方向に公転させながら研磨することを特徴とする。また、請求項10記載の研磨方法は、請求項6から8のいずれかに記載の研磨方法において、前記上定盤を揺動させながら研磨することを特徴とする。
これらの研磨方法では、上定盤を公転又は揺動させるので、より一層研磨ムラの発生を抑えることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る研磨機の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る研磨機の第一の実施の形態を概念的に表した平面図、図2は図1に示した研磨機の直径方向一端側に被研磨材が移動された状態を(a)、直径方向他端側に被研磨材が移動された状態を(b)に表した断面図である。
【0015】
本実施の形態による研磨機21は、図示しない回転軸に、円板状の下定盤23の中心部が支持されている。つまり、下定盤23は、この回転軸の回転駆動によって略水平となって例えば一方向(図1の矢印a方向)に回転する。下定盤23の上面には、例えば、合成樹脂繊維、不織布、或いは硬質ウレタン等からなる研磨パッド25を貼着している。
【0016】
この研磨パッド25には、下面側から上面側へとスラリーを通過させる通過手段が設けられている。この通過手段は、例えば研磨パッド25がフェルト状の合成繊維からなるものである場合には、この繊維同士の間の間隙とすることができる。したがって、この場合には、スラリーは、研磨パッド25の全面から浸透するように通過する。また、通過手段は、研磨パッド25が多孔質材料からなる場合には、この微細孔であってもよい。この場合においても、スラリーは、研磨パッド25の全面から通過する。
【0017】
さらに、通過手段は、研磨パッド25に貫通して穿設した複数の吐出孔であってもよい。この場合の吐出孔は、多数のものを不規則に離散させたもの、格子状に点在させたもの、放射状に散在させたもの、或いは複数の同心円の円周方向に、所定間隔で配設したもの等とすることができる。本実施の形態では、この通過手段として、同心円の円周方向に、所定間隔で複数配設された吐出孔27の場合を例に説明する。
【0018】
下定盤23の上方には、研磨パッド25に対向して中心軸の偏芯した上定盤29を配設している。上定盤29は、図示しない定盤駆動機構によって例えば一方向(図1の矢印b方向)に回転駆動(自転)されると共に、研磨パッド面25aに沿って移動されるようになっている。この移動は、直線往復移動、或いは任意の回動点を中心とした円弧状の軌跡となる揺動移動であってもよい。本実施の形態では、上定盤29が、下定盤23の回転中心を中心に一方向(図1の矢印c方向)に公転する場合を例に説明する。この上定盤29は、下面に、被研磨材Wを保持する図示しない保持部を有している。なお、図1中30は、被研磨材Wの周囲に嵌装され(外周に嵌めた状態で装着され)、上定盤29によって被研磨材Wと同じ押付け力で研磨パッド面25a上に押付けられる枠状体をなすリテーナを示す。
【0019】
上定盤29と研磨パッド25との間には、スラリー供給溝31を形成している。スラリー供給溝31は、各吐出孔27と連通して、かつ相互が接続されるように、同心円状の複数の周溝と、下定盤23の回転中心から半径方向に放射状に延在する直溝からなる。このスラリー供給溝31は、一箇所、或いは複数箇所でスラリー供給路33に接続している。このスラリー供給路33は、下定盤23の本体中に穿設され、例えば下定盤23を回転自在に支承する上記の回転軸を介して外部へと導出されている。外部へ導出されたこのスラリー供給路33は、図示しないスラリー圧送手段に接続されたスラリー供給配管35と接続する。
【0020】
したがって、スラリー圧送手段からのスラリーがスラリー供給配管を介してスラリー供給路33に達すると、スラリーは、吐出孔27に沿うにようにして形成したスラリー供給溝31の全域に行き渡り、内部に残留していた空気を吐出孔27から排気した後、均一な圧力となって、それぞれの吐出孔27から同一流量で吐出される。このため、吐出孔27は、研磨パッド25の任意な位置で、単位面積あたりの供給量が等しくなるように、その内側の同心円上のものと、外側の同心円上のものとでその配設間隔を異なるものとすることが好ましい。
【0021】
研磨パッド面25aには、研磨パッド外周に開口し該外周から内方へ延びるスリット溝37、より詳細には、研磨パッド25の外円周上の任意の点p1を通り、この研磨パッド25の内方に向かって延在する複数のスリット溝37が形成されている。また、このスリット溝37は、上記の任意の点p1と研磨パッド25の回転中心を通る直線39に対して、任意の点p1を中心に、研磨パッド25の回転方向(矢印a方向)と反対側に角度θ1で傾斜している。
【0022】
本実施の形態では、スリット溝37が直線状に形成される場合を例に説明するが、スリット溝37はよりスラリーを呼び込み易くするために、曲線としてもよい。さらに、この場合の曲線状のスリット溝37は、中心への接近量が徐々に増加する螺旋状(渦巻状)としてもよい。また、スリット溝37の断面形状の図示は省略するが、例えばV溝、U溝、溝底が平坦な溝とすることができる。要するに、スリット溝37は、スラリーが研磨パッド面25a上から落ち込んで、かつ溝延在方向に容易に移動が可能となるものであればよい。
【0023】
このように構成される研磨機21を用いた研磨方法では、まず、被研磨材Wを上定盤29の下面に設けた付着シート(図示せず)に付着させる。そして、被研磨材Wの下面を研磨パッドに当接させる。この状態で、スラリー圧送手段を駆動し、スラリーをスラリー供給配管35、スラリー供給路33を介してスラリー供給溝31に圧送する。
【0024】
次いで、上定盤29の研磨パッド25への押圧圧力を調節しつつ、被研磨材Wを回転させるとともに、研磨パッド25を自転させる。この状態で、スラリーは、研磨パッド25の下面側から、研磨パッド25を通過して研磨パッド面25a上へ供給されている。したがって、スラリーは、研磨パッド面25aの全面から吐出されるので、移動する被研磨材Wによって常に接することとなる研磨パッド面25aの被り領域36においても供給されることになる。
【0025】
そして、この実施の形態による研磨機21では、研磨パッド面25a上のスラリーは、被研磨材Wが接していない研磨パッド領域W1においては慣性力によって、又被研磨材Wが接している研磨パッド領域W2においては被研磨材Wとの付着による摩擦力によって研磨パッド25の回転に比べ低速となる。したがって、スラリーが研磨パッド25と相対回転することとなり、スラリーには、スリット溝37に沿って研磨パッド25の回転中心方向へと移動しようとする力が作用する。つまり、回転するスリット溝37によってスラリーが研磨パッド25の回転中心方向へ向かって呼び込まれるようになる。これにより、被研磨材Wによって常に接することとなる研磨パッドの被り領域36において、スラリーが滞留し易くなり、研磨ムラが生じ難くなる。
【0026】
また、被研磨材Wと研磨パッド25との間にスラリーが直接供給されることになり、被研磨材Wが常に接することとなる研磨パッド25の被り領域W2に対してもスラリーが確実に供給される。そして、被り領域36に供給されたスラリーは、スリット溝37によって、この被り領域36に滞留し易くなる。これにより、被り領域36におけるスラリーの供給がより確実となり、研磨ムラが生じ難くなる。
【0027】
次に、本発明に係る研磨機の第二の実施の形態を説明する。
図3は本発明に係る研磨機の第二の実施の形態を概念的に表した平面図である。なお、図1及び図2に示した部材と同等の部材には同一の符号を付して、重複する説明は省略するものとする。
【0028】
本実施の形態による研磨機41は、上定盤29によって被研磨材Wと同じ押付け力で研磨パッド面25a上に押付けられる枠状体をなすリテーナ43を被研磨材Wの周囲に嵌装している。そして、このリテーナ43の研磨パッド25に対する対向面には、リテーナ外周に開口し該外周から内方へ延びるスリット溝45、より詳細には、リテーナ外円周上の任意の点p2を通り、リテーナ43の内方に向かって延在する複数のスリット溝45が形成されている。また、このスリット溝45は、任意の点p2とリテーナ43の回転中心を通る直線に対して、任意の点p2を中心に、リテーナ43の回転方向(矢印b方向)と反対側に角度θ2で傾斜している。
【0029】
このスリット溝45の場合も、上記のスリット溝37と同様に、よりスラリーを呼び込み易くするために、曲線としてもよい。さらに、この場合の曲線状のスリット溝45は、中心への接近量が徐々に増加する螺旋状(渦巻状)としてもよい。また、スリット溝45の断面形状の図示は省略するが、例えばV溝、U溝、溝底が平坦な溝とすることができる。要するに、スリット溝45は、研磨パッド面25a上のスラリーが容易に進入して、かつ溝延在方向に容易に移動が可能となるものであればよい。
【0030】
この実施の形態による研磨機41では、研磨パッド面25a上のスラリーは、リテーナ43が接していない研磨パッド領域W1においてはリテーナ43の外周に開口するスリット溝45によって研磨パッド25とリテーナ43との間に呼び込まれ、又リテーナ43が接している研磨パッド領域W2においてはスリット溝45に沿ってリテーナ43の回転中心方向へと移動しようとする力が作用する。これにより、被研磨材Wによって常に接することとなる研磨パッド25の被り領域36(図2参照)において、スラリーが滞留し易くなり、研磨ムラが生じ難くなる。
【0031】
なお、上記の実施の形態では、スラリーが、研磨パッド25の下面側から研磨パッド面25a上に供給される場合を例に説明したが、本発明に係る研磨機は、図4に示したように、スラリーが研磨パッドの上方から研磨パッド面25aに供給されるものであってもよい。すなわち、研磨パッドに設けたスリット溝、又はリテーナに設けたスリット溝だけを主要な構成として有するものであっても、上記した各実施の形態で述べた本願特有の効果を奏するものである。
【0032】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る請求項1記載の研磨機によれば、研磨パッド面に、内方に向かって延在するスリット溝が形成され、かつこのスリット溝が、研磨パッド外円周上の任意の点と研磨パッドの回転中心を通る直線に対して、研磨パッドの回転方向と反対側に傾斜しているので、研磨パッド面上のスラリーは、被研磨材が接していない研磨パッド領域においては慣性力によって、又被研磨材が接している研磨パッド領域においては被研磨材との付着による摩擦力によって研磨パッドの回転より低速となる。したがって、スラリーが研磨パッドと相対回転することとなり、スラリーには、スリット溝に沿って研磨パッドの回転中心方向へと移動しようとする力が作用する。つまり、回転するスリット溝によってスラリーが呼び込まれるようになる。この結果、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域において、スラリーが滞留し易くなり、研磨ムラが生じ難くなって、大きな被研磨材であっても均等な研磨結果を得ることができる。
【0033】
請求項2記載の研磨機によれば、枠状のリテーナを被研磨材の周囲に嵌装し、リテーナの研磨パッド対向面に、内方にかって延在するスリット溝が形成され、かつこのスリット溝が、リテーナ外円周上の任意とリテーナの回転中心を通る直線に対して、リテーナの回転方向と反対側に傾斜しているので、研磨パッド面上のスラリーは、リテーナが接していない研磨パッド領域においてはスリット溝によって研磨パッドとリテーナとの間に呼び込まれ、又リテーナが接している研磨パッド領域においてはスリット溝に沿ってリテーナの回転中心方向へと移動しようとする力が作用する。この結果、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域において、スラリーが滞留し易くなり、研磨ムラが生じ難くなって、大きな被研磨材であっても均等な研磨結果を得ることができる。
【0034】
請求項3記載の研磨機によれば、スラリーが、研磨パッドの下面側から研磨パッドを通過して研磨パッド面上へ供給されるので、被研磨材と研磨パッドとの間にスラリーが直接供給されることになり、被研磨材が常に接することとなる研磨パッドの被り領域に対してもスラリーが確実に供給される。そして、被り領域に供給されたスラリーは、請求項1記載の研磨パッドに形成したスリット溝、又は請求項2記載のリテーナに形成したスリット溝によって、この被り領域に滞留し易くなる。この結果、被り領域におけるスラリーの供給がより確実となり、研磨ムラが生じ難くなって、大きな被研磨材であっても均等な研磨結果を得ることができる。
【0035】
請求項4又は請求項5記載の研磨機によれば、上定盤を公転又は揺動させるので、より一層研磨ムラの発生を抑えることができる。
【0036】
請求項6記載の研磨方法によれば、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域にスラリーを供給し、該スラリーを被り領域に滞留させた状態で研磨でき、研磨ムラが生じ難くなる。
【0037】
請求項7記載の研磨方法によれば、リテーナを使用して研磨する場合においても、被研磨材によって常に接することとなる研磨パッドの被り領域にスラリーを供給し、該スラリーを被り領域に滞留させた状態で研磨するので、研磨ムラが生じ難くなる。
【0038】
請求項8記載の研磨方法によれば、被り領域におけるスラリーの供給がより確実となり、研磨ムラが生じ難くなる。
【0039】
請求項9,請求項10記載の研磨方法によれば、上定盤を公転又は揺動させるので、より一層研磨ムラの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る研磨機の第一の実施の形態を概念的に表した平面図である。
【図2】図1に示した研磨機の直径方向一端側に被研磨材が移動された状態を(a)、直径方向他端側に被研磨材が移動された状態を(b)に表した断面図である。
【図3】本発明に係る研磨機の第二の実施の形態を概念的に表した平面図である。
【図4】従来の研磨機の直径方向一端側に被研磨材が移動された状態を(a)、直径方向他端側に被研磨材が移動された状態を(b)に表した断面図である。
【符号の説明】
21、41…研磨機
23…下定盤
25…研磨パッド
25a…研磨パッド面
29…上定盤
36…被り領域
37、45…スリット溝
39…任意の点と研磨パッドの回転中心を通る直線
43…リテーナ
47…任意の点とリテーナの回転中心を通る直線
P1、p2…任意の点
W…被研磨材

Claims (10)

  1. 上面に研磨パッドを設けた下定盤を一方向に回転させ、板状の被研磨材を、上定盤によって一方向に回転させつつ研磨パッド面内で該研磨パッド面上に押付け、同時に前記研磨パッド面上にスラリーを供給して前記被研磨材の研磨パッド接触面を研磨する研磨機において、
    研磨パッド面に、研磨パッド外円周上の任意の点を通り該研磨パッドの内方に向かって延在するスリット溝が形成され、かつ該スリット溝が、前記任意の点と前記研磨パッドの回転中心を通る直線に対して、前記任意の点を中心に、前記研磨パッドの回転方向と反対側に傾斜していることを特徴とする研磨機。
  2. 板状の被研磨材を、上定盤によって一方向に回転させつつ下定盤の上面に設けた研磨パッド面内で該研磨パッド面上に押付け、同時に前記研磨パッド面上にスラリーを供給して前記被研磨材の研磨パッド接触面を研磨する研磨機において、
    上定盤によって前記被研磨材と同じ押付け力で前記研磨パッド面上に押付けられる枠状のリテーナを前記被研磨材の周囲に嵌装し、
    該リテーナの前記研磨パッドに対する対向面に、リテーナ外円周上の任意の点を通り該リテーナの内方にかって延在するスリット溝が形成され、かつ該スリット溝が、前記任意の点と前記リテーナの回転中心を通る直線に対して、前記任意の点を中心に、前記リテーナの回転方向と反対側に傾斜していることを特徴とする研磨機。
  3. 請求項1又は請求項2記載の研磨機において、
    前記スラリーが、前記研磨パッドの下面側から該研磨パッドを通過して研磨パッド面上へ供給されることを特徴とする研磨機。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の研磨機において、
    前記上定盤を一方向に公転させる機構を有することを特徴とする研磨機。
  5. 請求項1から3のいずれかに記載の研磨機において、
    前記上定盤を揺動させる機構を有することを特徴とする研磨機。
  6. 上面に研磨パッドを設けた下定盤を一方向に回転させ、板状の被研磨材を、上定盤によって一方向に回転させつつ研磨パッド面内で該研磨パッド面上に押付け、同時に前記研磨パッド面上にスラリーを供給して前記被研磨材の研磨パッド接触面を研磨する研磨方法において、
    前記研磨パッドとして、研磨パッド外周に開口するスリット溝が研磨パッド面に形成された研磨パッドを用い、
    前記研磨パッド面上に供給されたスラリーの一部を前記スリット溝内に流入させて研磨することを特徴とする研磨方法。
  7. 板状の被研磨材を、上定盤によって一方向に回転させつつ下定盤の上面に設けた研磨パッド面内で該研磨パッド面上に押付け、同時に前記研磨パッド面上にスラリーを供給して前記被研磨材の研磨パッド接触面を研磨する研磨方法において、
    上定盤によって前記被研磨材と同じ押付け力で前記研磨パッド面上に押付けられる枠状体であって、その外周に開口するスリット溝が前記被研磨材に対する対向面に形成されてなるリテーナを前記被研磨材の周囲に嵌装し、
    前記研磨パッド面上に供給されたスラリーの一部を前記スリット溝内に流入させて研磨することを特徴とする研磨方法。
  8. 請求項6又は請求項7記載の研磨方法において、
    前記スラリーが、前記研磨パッドの下面側から該研磨パッドを通過して研磨パッド面上へ供給されることを特徴とする研磨方法。
  9. 請求項6から8のいずれかに記載の研磨方法において、
    前記上定盤を一方向に公転させながら研磨することを特徴とする研磨方法。
  10. 請求項6から8のいずれかに記載の研磨方法において、
    前記上定盤を揺動させながら研磨することを特徴とする研磨方法。
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