JP2004033069A - 植栽用充填材料及びそれを含む植栽用ブロック - Google Patents
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Abstract
【課題】ポーラスコンクリート等の多孔質硬化体の連続空隙内に充填した場合に、排水性、吸水性、保水性の全てについて良好な物性を有し、かつ、降雨による流出が生じ難く、植物が良好に生育し得る材料として好適に用いられる植栽用充填材料を提供する。
【解決手段】植栽用充填材料は、黒土、マサ土等の土壌100重量部、セメント等の無機系結合材5〜30重量部、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト、カオリン、ハロイサイト等の粘土鉱物3〜20重量部、及び、珪石粉、石灰石粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカ微粉末等の無機系植物育成助剤0〜100重量部を混合してなる。
【選択図】 なし
【解決手段】植栽用充填材料は、黒土、マサ土等の土壌100重量部、セメント等の無機系結合材5〜30重量部、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト、カオリン、ハロイサイト等の粘土鉱物3〜20重量部、及び、珪石粉、石灰石粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカ微粉末等の無機系植物育成助剤0〜100重量部を混合してなる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポーラスコンクリート等の多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための植栽用充填材料、及び該植栽用充填材料を含む植栽用ブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、河川の護岸や、法面の崩壊跡等の施工面に、ポーラスコンクリート等の多孔質硬化体を敷設するに際して、当該多孔質硬化体の連続空隙内に、多孔質硬化体の表面を緑化するための植栽用充填材料を充填することが行なわれている。
ここで、植栽用充填材料としては、土壌、パーライト、緩効性肥料等の混合物が用いられている。
多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料を充填する方法としては、(a)多孔質硬化体を敷設した後、該多孔質硬化体の表面に植栽用充填材料を直接吹き付ける現場施工方法、あるいは、(b)プレキャスト製品として多孔質硬化体を出荷する前に、該多孔質硬化体の表面から振動をかけながら植栽用充填材料を連続空隙内に充填する工場施工方法が採られている。
【0003】
このうち、(a)の現場施工方法では、混練水を少なくすると、植栽用充填材料が硬くなって、多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料が十分に入らなくなる。
逆に、混練水を多くすると、植栽用充填材料が柔らかくなって、多孔質硬化体の表面から1〜2cm程度は充填されるようになるが、植栽用充填材料内の種子が発芽して根茎が充填深さより深い連続空隙内にまで達した場合に、当該根茎の端部は、多孔質硬化体が接している地山にまで到達せずに宙に浮いた状態となるため、十分な水分及び栄養を摂取することができず、枯れてしまうことが多いという問題があった。また、混練水を多くした場合には、植栽用充填材料が、多孔質硬化体の連続空隙内に入らずに、多孔質硬化体の外表面に沿って下方に流下してしまい、無駄になる割合が大きいという問題もあった。
【0004】
さらに、植栽用充填材料を直接吹き付ける際に固定助剤として用いられる有機系の樹脂接着剤は、充填後の植栽用充填材料の透水性を低下させ、植物に十分な水分を与えることが困難になるという問題の他に、環境ホルモンを含有するものについては環境上の問題もあった。
また、(b)の工場施工方法では、振動を加えて充填作業を行なっても、多孔質硬化体の連続空隙内の隅々にまで植栽用充填材料を充填することができないという問題に加えて、運搬等の過程で多孔質硬化体の上面以外の面から植栽用充填材料が漏れ出ないように、工場内で予めシート材あるいはプライマー等の有機系シール材を用いて多孔質硬化体の上面以外の面を被覆しておき、運搬後に敷設現場にて当該シート材を剥がす等の一連の作業を要するという問題があった。
【0005】
さらに、(a)の現場施工方法と(b)の工場施工方法に共通する問題点として、土壌、パーライト、緩効性肥料等の混合物からなる植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填された状態において、当該連続空隙内に固定されているわけではないため、降雨によって多孔質硬化体の下方に流出し易いという問題があった。
また、土壌、パーライト、緩効性肥料等の混合物からなる植栽用充填材料は、良好な排水性及び吸水性を有する反面、保水性が劣るという欠点があった。つまり、排水性及び吸水性の特性と、保水性の特性は、互いに相反する性質であり、これらの特性が全て優れている材料を作製することは困難であった。
さらに、従来から、敷設された多孔質硬化体の法面における排水手段として、法面に沿って上下方向に延びる断面略U字状の排水溝を複数並列させて設けることが行なわれている。しかしながら、これらの排水溝が障害となって、昆虫類等の微小生物が多孔質硬化体の法面上を自由に移動することができず、生態系の乱れが懸念されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の植栽用充填材料は、良好な排水性及び吸水性を有する反面、保水性が劣るという欠点を有する他、降雨によって多孔質硬化体の下方に流出し易く、また、多孔質硬化体の敷設現場で充填する現場施工方法においては、多孔質硬化体の連続空隙内に十分に充填することができない等の問題があり、工場内で予め多孔質硬化体に充填する工場施工方法においては、植栽用充填材料の漏出の防止のためにシート材あるいはプライマー等の有機系シール材を多孔質硬化体の表面に貼付しなければならない等、種々の問題があった。
したがって、本発明は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填した際に、排水性、吸水性、保水性の全てについて良好な物性を有し、かつ、降雨による流出が生じ難い等の特性を有する植栽用充填材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、黒土等の土壌と、セメント等の無機系結合材と、モンモリロナイト等の粘土鉱物と、必要に応じて配合される石灰石粉末等の無機系植物育成助剤とを混合してなる材料が、ポーラスコンクリート等の多孔質硬化体の連続空隙内に充填されたときに優れた保水性、排水性等の特性を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明(請求項1)の植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための植栽用充填材料であって、土壌と、セメントの如き無機系結合材と、モンモリロナイトの如き粘土鉱物と、必要に応じて配合される石灰石粉末の如き無機系植物育成助剤とを含むことを特徴とする。
本発明の植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填した場合に、排水性、吸水性、保水性の全てについて良好な物性を有し、かつ、降雨による流出が生じ難く、植物が良好に生育し得る材料として好適に用いられる。また、本発明の植栽用充填材料は、工場内で予め多孔質硬化体に充填した場合であっても、連続空隙内に固定された状態で保持されるため、運搬過程等において漏出することがない。
【0009】
上記植栽用充填材料の好ましい組成は、土壌100重量部、無機系結合材5〜30重量部、粘土鉱物3〜20重量部、無機系植物育成助剤0〜100重量部を含むものである(請求項2)。
上記無機系結合材の典型例としては、セメントが挙げられる(請求項3)。
上記無機系植物育成助剤としては、例えば、珪石粉、石灰石粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカ微粉末からなる群より選ばれる1種以上からなるものを用いることができる(請求項4)。
上記粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト、カオリン、及びハロイサイトからなる群より選ばれる1種以上からなるものを用いることができる(請求項5)。
本発明(請求項6)の植栽用ブロックは、多孔質硬化体であるプレキャストブロックの連続空隙内に、上記植栽用充填材料と、種子と、水との混練物を充填してなることを特徴とする。
このように構成すれば、事前に充填材料を充填しておくだけで、植栽用ブロックを現場で位置を定めて敷設する作業を行なえば、植栽用ブロックから植物が発芽及び生育し、緑化による生態系の維持及び景観の向上を図ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための材料であって、土壌、無機系結合材、粘土鉱物、及び必要に応じて配合される無機系植物育成助剤を混合してなるものである。
ここで、多孔質硬化体の典型例としては、連続空隙が無数に形成されるように粗骨材同士を比較的少量のセメントペーストで結合してなるポーラスコンクリートが挙げられる。
多孔質硬化体中の連続空隙の体積割合は、植栽性及び多孔質硬化体の強度の面から、好ましくは20〜25%である。
【0011】
土壌としては、適度の空隙を有し、水及び空気の流通性に優れるものが好ましく用いられる。例えば、黒土やマサ土は、水と混練した後においても酸素の流通性を有し、植物の発芽及び生育に適する性状を有するため、好ましく用いられる。
無機系結合材は、多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料を固定し、降雨等による外部への流出を防止するために配合される。
無機系結合材の典型例としては、セメントが挙げられる。セメントの具体例としては、超速硬セメント、普通ポルトランドセメント、超早強セメント、早強セメント、高炉セメント等が挙げられる。中でも、超速硬セメントは、工場内で多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料を充填する場合に、当該充填材料の硬化を促進し、充填から出荷までの時間を短縮化することができるので、好ましい。
【0012】
無機系結合材の配合量は、土壌100重量部当たり、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは10〜28重量部、特に好ましくは15〜25重量部である。該配合量が5重量部未満では、多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料が固定されずに、外部に流出するおそれがあり、該配合量が30重量部を超えると、多孔質硬化体の連続空隙内における水分及び空気の流通性が低下するおそれがあるほか、連続空隙内の水分のpHがアルカリ性になって、植物の発芽及び生育に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0013】
粘土鉱物は、その増粘性によって、多孔質硬化体の連続空隙内における植栽用充填材料の固定性を向上させる作用を有するとともに、その保水性によって、植物の発芽及び生育に必要な水分を長時間に亘って連続空隙内に保持する作用を有する。また、粘土鉱物は、セメントを中和し、pHを中性領域(例えば、7.0〜8.0)に調整する作用を有する。
粘土鉱物の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト、カオリン、ハロイサイト等が挙げられる。中でも、モンモリロナイトは、長期に亘って徐々に水分を放出する傾向が強く、好ましく用いられる。
粘土鉱物の配合量は、土壌100重量部当たり、好ましくは3〜20重量部、より好ましくは5〜18重量部、特に好ましくは7〜15重量部である。該配合量が3重量部未満では、多孔質硬化体の連続空隙内に水分が十分に保持されずに、植物の生育が阻害されるおそれがあり、該配合量が20重量部を超えると、多孔質硬化体の連続空隙内における水分及び空気の流通性が低下するおそれがあるほか、植栽用充填材料のコストを増大させるので、好ましくない。
【0014】
無機系植物育成助剤は、増量剤としての役割を有するほか、Mg、Ca等の微量成分によって植物の生育を促進させる作用を有する。
無機系植物育成助剤の具体例としては、例えば、珪石粉、石灰石粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカ微粉末等が挙げられる。
無機系植物育成助剤の配合量は、土壌100重量部当たり、0〜100重量部、好ましくは15〜90重量部、より好ましくは30〜80重量部である。該配合量が100重量部を超えると、無機系結合材(セメント)の配合割合が相対的に低下するので、植栽用充填材料の固定性が低下し、連続空隙から植栽用充填材料が外部に流出するおそれがあり、好ましくない。
【0015】
本発明の植栽用充填材料を多孔質硬化体の連続空隙内に充填する際には、植栽用充填材料と水とを混練し、スラリー状にする。水の量は、土壌を除く植栽用充填材料(無機系結合材、粘土鉱物、無機系植物育成助剤)の合計量100重量部当たり、好ましくは、100〜250重量部である。該量が100重量部未満では、植栽用充填材料を連続空隙内に充填することが困難になることがあり、該量が250重量部を超えると、植栽用充填材料を構成する成分の材料分離が生じたり、あるいは、植栽用充填材料が連続空隙内に入らずに、多孔質硬化体の外表面に沿って流下する量が増加する。
本発明の植栽用充填材料と水とを混練する際には、減水剤を用いることができる。減水剤の具体例としては、ナフタリン系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の高性能減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられる。減水剤の配合量は、無機系結合材(セメント)100重量部当たり、0〜2重量部程度である。
本発明の植栽用充填材料と水とを混練してなるスラリー状の混練物の初期流動性は、J14ロート流下時間で、好ましくは2.0〜3.2秒であり、より好ましくは2.2〜3.0秒である。該流下時間が2.0秒未満では、連続空隙内における混練物(植栽用充填材料)の固定性が低下することがあり、該流下時間が3.2秒を超えると、植栽用充填材料を連続空隙の隅々にまで充填させることが困難になる。
【0016】
本発明の植栽用充填材料は、工場内において、多孔質硬化体からなるプレキャストブロックの連続空隙内に予め充填することができる。
このように植栽用充填材料を予め充填したプレキャストブロック(植栽用ブロック)を作製するには、例えば、植栽用ブロックの出荷の一日以上前に、土壌と、プレミックスされた植栽用充填材料(ただし、土壌を除く。)と、種子と、水とを混練し、得られた混練物を、プレキャストブロックの上方から自然流下でまたは振動を加えながら、当該プレキャストブロックの連続空隙内に充填すればよい。こうして得られた植栽用ブロックは、出荷時に、連続空隙内に植栽用充填材料が固定されているため、運搬の途中で植栽用充填材料が漏出することがなく、また、現場で敷設した後においても降雨によって植栽用充填材料が流出することがない。
【0017】
なお、プレキャストブロックは、施工現場の法面に設けられる排水溝の蓋として作製することもできる。それによって、現場に棲息する微小生物は、排水溝の蓋の内部の連続空隙を通って、排水溝によって隔絶された隣接する区画間を自由に移動することができる。この場合、排水溝の蓋の上に緑化のための吹き付けを行なえば、更に微小生物が移動し易くなり、好ましい。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実験例によって説明する。
[1.植栽用充填材料の組成例及び初期流動性]
植栽用充填材料を構成する成分として、以下の材料を用いた。
(a)土壌: 黒土
(b)無機系結合剤: セメント(高炉B種)
(c)無機系植物育成助剤: 石灰石粉末、フライアッシュ
(d)粘土鉱物: モンモリロナイト
(e)水
上記(a)〜(e)の材料を用いて、植栽用充填材料と水とを混練してなるスラリー状の充填物を調製した。なお、混練に際しては、まず、20リットルの円筒容器内に水を入れた後、黒土、セメント、石灰石粉末、フライアッシュ、モンモリロナイトを投入し、ハンドミキサ(回転数:1300rpm)で2分間練り混ぜた。
表1に、本発明の植栽用充填材料の組成例(組成No.1、No.2)及び初期流動性(J14ロート流下時間)を示す。表1から、組成No.1、No.2のいずれにおいても、良好な流動性が得られていることがわかる。
【0019】
【表1】
【0020】
[2.多孔質硬化体の連続空隙内における植栽用充填材料の固定性の評価]
実施例1として、表1中の組成No.1の植栽用充填材料を用い、比較例1として、黒土とパーライトを70:30の重量比で配合し、かつ、水/パーライトの重量比が実施例と同様(143重量%)である量の水を用いて調製した植栽用充填材料を用いて、ポーラスコンクリートの連続空隙内における固定性(水の通過に抵抗して定位置に保持される性能)を評価した。評価方法は、次のとおりである。
【0021】
植栽用充填材料(実施例1、比較例1)をポーラスコンクリート(粗骨材の最大寸法:20mm、連続空隙の体積割合:25%、縦寸法:300mm、横寸法:300mm、厚さ:50mm)の連続空隙内に充填して、試験体を作製した。これらの試験体を7日間、20℃、相対湿度60%の環境下で乾燥した後、試験体の質量を測定し、それに基づいて植栽用充填材料の質量(以下、質量aという。)を算出した。
次に、試験体を水平に設置し、20リットルの水をジョウロにて試験体の上方から散布して、植栽用充填材料の流出の程度を観察した。散布後、試験体を7日間、20℃、相対湿度60%の環境下で乾燥した後、試験体の質量を測定し、それに基づいて植栽用充填材料の質量(以下、質量bという。)を算出した。
以上の結果を表2に示す。表2に示すように、本発明の植栽用充填材料(実施例1)は、従来の植栽用充填材料(比較例1)と比べて、ポーラスコンクリートの連続空隙内の水の通過に伴う流出量が少ないことがわかる。
【0022】
【表2】
【0023】
[3.植栽用充填材料の保水性の評価]
実施例1及び比較例1の植栽用充填材料と同様の材料を用いて、各々、保水性を評価した。評価方法は、次のとおりである。
直径50mm、高さ100mmのプラスチック製型枠内に植栽用充填材料225g(実施例1、比較例1)を入れ、温度20℃、相対湿度60%の環境下で7日間乾燥した後、乾燥によって減少した分の水を補給し、その後も、7日間の乾燥と、水の補給を繰り返し行なった。その間、植栽用充填材料の質量の測定を行ない、質量減少率を算出して、保水性を評価した。
図1に、植栽用充填材料の質量減少率の経時的変化を示す。図1から、本発明の植栽用充填材料(実施例1)は、黒土及びパーライトからなる植栽用充填材料(比較例1)よりも質量減少率が小さく、保水性に優れていることがわかる。
【0024】
[4.植栽用充填材料の排水性]
実施例1及び比較例1の植栽用充填材料と同様の材料を用いて、各々、排水性を評価した。評価方法は、次のとおりである。
直径50mm、高さ100mmのプラスチック製型枠の底面に、直径3mmの孔を3つ穿設した後、このプラスチック製型枠内に植栽用充填材料225gを入れ、次いで、型枠の上面の開口部を樹脂フィルムで覆った後、温度20℃、相対湿度60%の環境下に置いた。その後、プラスチック製型枠の底面からの水の流出量を測定し、植栽用充填材料の質量の減少率を算出した。結果を図2に示す。
図2から、本発明の植栽用充填材料(実施例1)は、黒土及びパーライトからなる植栽用充填材料(比較例1)とほぼ同程度の質量減少率を示し、排水性に優れていることがわかる。
【0025】
[5.多孔質硬化体の連続空隙内に充填された植栽用充填材料の吸水性]
実施例1及び比較例1の植栽用充填材料と同様の材料を用いて、各々、ポーラスコンクリートの下面からの吸水性を評価した。評価方法は、次のとおりである。
植栽用充填材料をポーラスコンクリート(粗骨材の最大寸法:20mm、連続空隙の体積割合:25%、縦:300mm、横:300mm、厚さ:50mm)の連続空隙内に充填し、24時間静置した後、乾燥機を用いて24時間乾燥した。次に、透明アクリル樹脂容器(縦:450mm、横:450mm、高さ:100mm)に1,000mLの水を入れ、該容器の中央付近に、乾燥処理済みの試験体を置いた。その後、該容器の底面から水面までの距離(水深)を経時的に測定し、試験体を設置した直後の水深との差を吸水量(吸水パラメータ)とした。なお、透明アクリル樹脂容器の上面は、樹脂フィルムで覆い、水の蒸散を防ぐようにした。結果を図3に示す。
図3から、ポーラスコンクリートの連続空隙内に本発明の植栽用充填材料(実施例1)を充填した場合におけるポーラスコンクリートの下面からの吸水量は、比較例1の吸水量とほぼ同程度であり、吸水性に優れていることがわかる。
【0026】
[6.植栽用充填材料のpH]
植栽用充填材料(表3に示す組成のもの;実施例1〜4、比較例2〜4)を調製し、水素イオン濃度(pH)を測定した。なお、実施例1は、上述の各評価試験で用いたものと同様の材料である。
結果を表3に示す。表3から、本発明の植栽用充填材料(実施例1〜4)は、セメントを含むものの、pHが7.2〜7.8とほぼ中性領域にあり、植物の発芽及び生育に悪影響を与えるおそれのないことがわかった。
【0027】
【表3】
【0028】
[7.洋芝の発芽及び生育状況の観察]
植栽用充填材料(実施例1〜4;比較例2〜4)を用いて、洋芝の発芽及び生育状況を観察した。その結果、いずれの植栽用充填材料を用いた場合であっても、播種後1週間程度で発芽し、その後も順調な生育が認められた。
この結果から、本発明の植栽用充填材料が洋芝等の植物の発芽及び生育に好適であることがわかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填した場合に、排水性、吸水性、保水性の全てについて良好な物性を有し、かつ、降雨による流出が生じ難く、植物が良好に生育し得る材料として好適に用いることができる。特に、本発明の植栽用充填材料は、従来の充填材料では相反する特性とされていた排水性・吸水性と、保水性の両方に優れているため、乾燥状態と湿潤状態が交互に繰り返し発生する場合であっても、植物の良好な生育を期待することができる。
また、本発明の植栽用充填材料は、工場内で予め多孔質硬化体に充填して植栽用ブロックを作製した場合であっても、連続空隙内に固定された状態で保持されているため、運搬過程等において漏出することがない。この場合、植栽用ブロックは、低コストで、かつ容易に作製することができ、しかも、現場での敷設作業を容易かつ迅速に行なうことができる。
【0030】
また、本発明の植栽用充填材料は、有機系接着剤を含まないため、環境ホルモン等の汚染物質を周囲に拡散するおそれがなく、環境保護の見地からも安心して使用することができる。
さらに、本発明の植栽用充填材料を多孔質硬化体の連続空隙内に充填した後、多孔質硬化体の上面に緑化のための吹き付けを施すことによって、河川の護岸や法面の崩壊跡等の表面(露出面)を良好な状態で保護することができる。この場合、植栽用充填材料が、多孔質硬化体の地山との接触面から毛細管現象によって水分及び栄養分を吸収することから、植物の良好な発芽及び生育を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】植栽用充填材料の質量減少率(保水性)の経時的変化を示すグラフである。
【図2】植栽用充填材料の質量減少率(排水性)の経時的変化を示すグラフである。
【図3】植栽用充填材料の吸水パラメータ(吸水性)の経時的変化を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポーラスコンクリート等の多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための植栽用充填材料、及び該植栽用充填材料を含む植栽用ブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、河川の護岸や、法面の崩壊跡等の施工面に、ポーラスコンクリート等の多孔質硬化体を敷設するに際して、当該多孔質硬化体の連続空隙内に、多孔質硬化体の表面を緑化するための植栽用充填材料を充填することが行なわれている。
ここで、植栽用充填材料としては、土壌、パーライト、緩効性肥料等の混合物が用いられている。
多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料を充填する方法としては、(a)多孔質硬化体を敷設した後、該多孔質硬化体の表面に植栽用充填材料を直接吹き付ける現場施工方法、あるいは、(b)プレキャスト製品として多孔質硬化体を出荷する前に、該多孔質硬化体の表面から振動をかけながら植栽用充填材料を連続空隙内に充填する工場施工方法が採られている。
【0003】
このうち、(a)の現場施工方法では、混練水を少なくすると、植栽用充填材料が硬くなって、多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料が十分に入らなくなる。
逆に、混練水を多くすると、植栽用充填材料が柔らかくなって、多孔質硬化体の表面から1〜2cm程度は充填されるようになるが、植栽用充填材料内の種子が発芽して根茎が充填深さより深い連続空隙内にまで達した場合に、当該根茎の端部は、多孔質硬化体が接している地山にまで到達せずに宙に浮いた状態となるため、十分な水分及び栄養を摂取することができず、枯れてしまうことが多いという問題があった。また、混練水を多くした場合には、植栽用充填材料が、多孔質硬化体の連続空隙内に入らずに、多孔質硬化体の外表面に沿って下方に流下してしまい、無駄になる割合が大きいという問題もあった。
【0004】
さらに、植栽用充填材料を直接吹き付ける際に固定助剤として用いられる有機系の樹脂接着剤は、充填後の植栽用充填材料の透水性を低下させ、植物に十分な水分を与えることが困難になるという問題の他に、環境ホルモンを含有するものについては環境上の問題もあった。
また、(b)の工場施工方法では、振動を加えて充填作業を行なっても、多孔質硬化体の連続空隙内の隅々にまで植栽用充填材料を充填することができないという問題に加えて、運搬等の過程で多孔質硬化体の上面以外の面から植栽用充填材料が漏れ出ないように、工場内で予めシート材あるいはプライマー等の有機系シール材を用いて多孔質硬化体の上面以外の面を被覆しておき、運搬後に敷設現場にて当該シート材を剥がす等の一連の作業を要するという問題があった。
【0005】
さらに、(a)の現場施工方法と(b)の工場施工方法に共通する問題点として、土壌、パーライト、緩効性肥料等の混合物からなる植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填された状態において、当該連続空隙内に固定されているわけではないため、降雨によって多孔質硬化体の下方に流出し易いという問題があった。
また、土壌、パーライト、緩効性肥料等の混合物からなる植栽用充填材料は、良好な排水性及び吸水性を有する反面、保水性が劣るという欠点があった。つまり、排水性及び吸水性の特性と、保水性の特性は、互いに相反する性質であり、これらの特性が全て優れている材料を作製することは困難であった。
さらに、従来から、敷設された多孔質硬化体の法面における排水手段として、法面に沿って上下方向に延びる断面略U字状の排水溝を複数並列させて設けることが行なわれている。しかしながら、これらの排水溝が障害となって、昆虫類等の微小生物が多孔質硬化体の法面上を自由に移動することができず、生態系の乱れが懸念されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の植栽用充填材料は、良好な排水性及び吸水性を有する反面、保水性が劣るという欠点を有する他、降雨によって多孔質硬化体の下方に流出し易く、また、多孔質硬化体の敷設現場で充填する現場施工方法においては、多孔質硬化体の連続空隙内に十分に充填することができない等の問題があり、工場内で予め多孔質硬化体に充填する工場施工方法においては、植栽用充填材料の漏出の防止のためにシート材あるいはプライマー等の有機系シール材を多孔質硬化体の表面に貼付しなければならない等、種々の問題があった。
したがって、本発明は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填した際に、排水性、吸水性、保水性の全てについて良好な物性を有し、かつ、降雨による流出が生じ難い等の特性を有する植栽用充填材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、黒土等の土壌と、セメント等の無機系結合材と、モンモリロナイト等の粘土鉱物と、必要に応じて配合される石灰石粉末等の無機系植物育成助剤とを混合してなる材料が、ポーラスコンクリート等の多孔質硬化体の連続空隙内に充填されたときに優れた保水性、排水性等の特性を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明(請求項1)の植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための植栽用充填材料であって、土壌と、セメントの如き無機系結合材と、モンモリロナイトの如き粘土鉱物と、必要に応じて配合される石灰石粉末の如き無機系植物育成助剤とを含むことを特徴とする。
本発明の植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填した場合に、排水性、吸水性、保水性の全てについて良好な物性を有し、かつ、降雨による流出が生じ難く、植物が良好に生育し得る材料として好適に用いられる。また、本発明の植栽用充填材料は、工場内で予め多孔質硬化体に充填した場合であっても、連続空隙内に固定された状態で保持されるため、運搬過程等において漏出することがない。
【0009】
上記植栽用充填材料の好ましい組成は、土壌100重量部、無機系結合材5〜30重量部、粘土鉱物3〜20重量部、無機系植物育成助剤0〜100重量部を含むものである(請求項2)。
上記無機系結合材の典型例としては、セメントが挙げられる(請求項3)。
上記無機系植物育成助剤としては、例えば、珪石粉、石灰石粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカ微粉末からなる群より選ばれる1種以上からなるものを用いることができる(請求項4)。
上記粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト、カオリン、及びハロイサイトからなる群より選ばれる1種以上からなるものを用いることができる(請求項5)。
本発明(請求項6)の植栽用ブロックは、多孔質硬化体であるプレキャストブロックの連続空隙内に、上記植栽用充填材料と、種子と、水との混練物を充填してなることを特徴とする。
このように構成すれば、事前に充填材料を充填しておくだけで、植栽用ブロックを現場で位置を定めて敷設する作業を行なえば、植栽用ブロックから植物が発芽及び生育し、緑化による生態系の維持及び景観の向上を図ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための材料であって、土壌、無機系結合材、粘土鉱物、及び必要に応じて配合される無機系植物育成助剤を混合してなるものである。
ここで、多孔質硬化体の典型例としては、連続空隙が無数に形成されるように粗骨材同士を比較的少量のセメントペーストで結合してなるポーラスコンクリートが挙げられる。
多孔質硬化体中の連続空隙の体積割合は、植栽性及び多孔質硬化体の強度の面から、好ましくは20〜25%である。
【0011】
土壌としては、適度の空隙を有し、水及び空気の流通性に優れるものが好ましく用いられる。例えば、黒土やマサ土は、水と混練した後においても酸素の流通性を有し、植物の発芽及び生育に適する性状を有するため、好ましく用いられる。
無機系結合材は、多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料を固定し、降雨等による外部への流出を防止するために配合される。
無機系結合材の典型例としては、セメントが挙げられる。セメントの具体例としては、超速硬セメント、普通ポルトランドセメント、超早強セメント、早強セメント、高炉セメント等が挙げられる。中でも、超速硬セメントは、工場内で多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料を充填する場合に、当該充填材料の硬化を促進し、充填から出荷までの時間を短縮化することができるので、好ましい。
【0012】
無機系結合材の配合量は、土壌100重量部当たり、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは10〜28重量部、特に好ましくは15〜25重量部である。該配合量が5重量部未満では、多孔質硬化体の連続空隙内に植栽用充填材料が固定されずに、外部に流出するおそれがあり、該配合量が30重量部を超えると、多孔質硬化体の連続空隙内における水分及び空気の流通性が低下するおそれがあるほか、連続空隙内の水分のpHがアルカリ性になって、植物の発芽及び生育に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0013】
粘土鉱物は、その増粘性によって、多孔質硬化体の連続空隙内における植栽用充填材料の固定性を向上させる作用を有するとともに、その保水性によって、植物の発芽及び生育に必要な水分を長時間に亘って連続空隙内に保持する作用を有する。また、粘土鉱物は、セメントを中和し、pHを中性領域(例えば、7.0〜8.0)に調整する作用を有する。
粘土鉱物の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト、カオリン、ハロイサイト等が挙げられる。中でも、モンモリロナイトは、長期に亘って徐々に水分を放出する傾向が強く、好ましく用いられる。
粘土鉱物の配合量は、土壌100重量部当たり、好ましくは3〜20重量部、より好ましくは5〜18重量部、特に好ましくは7〜15重量部である。該配合量が3重量部未満では、多孔質硬化体の連続空隙内に水分が十分に保持されずに、植物の生育が阻害されるおそれがあり、該配合量が20重量部を超えると、多孔質硬化体の連続空隙内における水分及び空気の流通性が低下するおそれがあるほか、植栽用充填材料のコストを増大させるので、好ましくない。
【0014】
無機系植物育成助剤は、増量剤としての役割を有するほか、Mg、Ca等の微量成分によって植物の生育を促進させる作用を有する。
無機系植物育成助剤の具体例としては、例えば、珪石粉、石灰石粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカ微粉末等が挙げられる。
無機系植物育成助剤の配合量は、土壌100重量部当たり、0〜100重量部、好ましくは15〜90重量部、より好ましくは30〜80重量部である。該配合量が100重量部を超えると、無機系結合材(セメント)の配合割合が相対的に低下するので、植栽用充填材料の固定性が低下し、連続空隙から植栽用充填材料が外部に流出するおそれがあり、好ましくない。
【0015】
本発明の植栽用充填材料を多孔質硬化体の連続空隙内に充填する際には、植栽用充填材料と水とを混練し、スラリー状にする。水の量は、土壌を除く植栽用充填材料(無機系結合材、粘土鉱物、無機系植物育成助剤)の合計量100重量部当たり、好ましくは、100〜250重量部である。該量が100重量部未満では、植栽用充填材料を連続空隙内に充填することが困難になることがあり、該量が250重量部を超えると、植栽用充填材料を構成する成分の材料分離が生じたり、あるいは、植栽用充填材料が連続空隙内に入らずに、多孔質硬化体の外表面に沿って流下する量が増加する。
本発明の植栽用充填材料と水とを混練する際には、減水剤を用いることができる。減水剤の具体例としては、ナフタリン系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の高性能減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられる。減水剤の配合量は、無機系結合材(セメント)100重量部当たり、0〜2重量部程度である。
本発明の植栽用充填材料と水とを混練してなるスラリー状の混練物の初期流動性は、J14ロート流下時間で、好ましくは2.0〜3.2秒であり、より好ましくは2.2〜3.0秒である。該流下時間が2.0秒未満では、連続空隙内における混練物(植栽用充填材料)の固定性が低下することがあり、該流下時間が3.2秒を超えると、植栽用充填材料を連続空隙の隅々にまで充填させることが困難になる。
【0016】
本発明の植栽用充填材料は、工場内において、多孔質硬化体からなるプレキャストブロックの連続空隙内に予め充填することができる。
このように植栽用充填材料を予め充填したプレキャストブロック(植栽用ブロック)を作製するには、例えば、植栽用ブロックの出荷の一日以上前に、土壌と、プレミックスされた植栽用充填材料(ただし、土壌を除く。)と、種子と、水とを混練し、得られた混練物を、プレキャストブロックの上方から自然流下でまたは振動を加えながら、当該プレキャストブロックの連続空隙内に充填すればよい。こうして得られた植栽用ブロックは、出荷時に、連続空隙内に植栽用充填材料が固定されているため、運搬の途中で植栽用充填材料が漏出することがなく、また、現場で敷設した後においても降雨によって植栽用充填材料が流出することがない。
【0017】
なお、プレキャストブロックは、施工現場の法面に設けられる排水溝の蓋として作製することもできる。それによって、現場に棲息する微小生物は、排水溝の蓋の内部の連続空隙を通って、排水溝によって隔絶された隣接する区画間を自由に移動することができる。この場合、排水溝の蓋の上に緑化のための吹き付けを行なえば、更に微小生物が移動し易くなり、好ましい。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実験例によって説明する。
[1.植栽用充填材料の組成例及び初期流動性]
植栽用充填材料を構成する成分として、以下の材料を用いた。
(a)土壌: 黒土
(b)無機系結合剤: セメント(高炉B種)
(c)無機系植物育成助剤: 石灰石粉末、フライアッシュ
(d)粘土鉱物: モンモリロナイト
(e)水
上記(a)〜(e)の材料を用いて、植栽用充填材料と水とを混練してなるスラリー状の充填物を調製した。なお、混練に際しては、まず、20リットルの円筒容器内に水を入れた後、黒土、セメント、石灰石粉末、フライアッシュ、モンモリロナイトを投入し、ハンドミキサ(回転数:1300rpm)で2分間練り混ぜた。
表1に、本発明の植栽用充填材料の組成例(組成No.1、No.2)及び初期流動性(J14ロート流下時間)を示す。表1から、組成No.1、No.2のいずれにおいても、良好な流動性が得られていることがわかる。
【0019】
【表1】
【0020】
[2.多孔質硬化体の連続空隙内における植栽用充填材料の固定性の評価]
実施例1として、表1中の組成No.1の植栽用充填材料を用い、比較例1として、黒土とパーライトを70:30の重量比で配合し、かつ、水/パーライトの重量比が実施例と同様(143重量%)である量の水を用いて調製した植栽用充填材料を用いて、ポーラスコンクリートの連続空隙内における固定性(水の通過に抵抗して定位置に保持される性能)を評価した。評価方法は、次のとおりである。
【0021】
植栽用充填材料(実施例1、比較例1)をポーラスコンクリート(粗骨材の最大寸法:20mm、連続空隙の体積割合:25%、縦寸法:300mm、横寸法:300mm、厚さ:50mm)の連続空隙内に充填して、試験体を作製した。これらの試験体を7日間、20℃、相対湿度60%の環境下で乾燥した後、試験体の質量を測定し、それに基づいて植栽用充填材料の質量(以下、質量aという。)を算出した。
次に、試験体を水平に設置し、20リットルの水をジョウロにて試験体の上方から散布して、植栽用充填材料の流出の程度を観察した。散布後、試験体を7日間、20℃、相対湿度60%の環境下で乾燥した後、試験体の質量を測定し、それに基づいて植栽用充填材料の質量(以下、質量bという。)を算出した。
以上の結果を表2に示す。表2に示すように、本発明の植栽用充填材料(実施例1)は、従来の植栽用充填材料(比較例1)と比べて、ポーラスコンクリートの連続空隙内の水の通過に伴う流出量が少ないことがわかる。
【0022】
【表2】
【0023】
[3.植栽用充填材料の保水性の評価]
実施例1及び比較例1の植栽用充填材料と同様の材料を用いて、各々、保水性を評価した。評価方法は、次のとおりである。
直径50mm、高さ100mmのプラスチック製型枠内に植栽用充填材料225g(実施例1、比較例1)を入れ、温度20℃、相対湿度60%の環境下で7日間乾燥した後、乾燥によって減少した分の水を補給し、その後も、7日間の乾燥と、水の補給を繰り返し行なった。その間、植栽用充填材料の質量の測定を行ない、質量減少率を算出して、保水性を評価した。
図1に、植栽用充填材料の質量減少率の経時的変化を示す。図1から、本発明の植栽用充填材料(実施例1)は、黒土及びパーライトからなる植栽用充填材料(比較例1)よりも質量減少率が小さく、保水性に優れていることがわかる。
【0024】
[4.植栽用充填材料の排水性]
実施例1及び比較例1の植栽用充填材料と同様の材料を用いて、各々、排水性を評価した。評価方法は、次のとおりである。
直径50mm、高さ100mmのプラスチック製型枠の底面に、直径3mmの孔を3つ穿設した後、このプラスチック製型枠内に植栽用充填材料225gを入れ、次いで、型枠の上面の開口部を樹脂フィルムで覆った後、温度20℃、相対湿度60%の環境下に置いた。その後、プラスチック製型枠の底面からの水の流出量を測定し、植栽用充填材料の質量の減少率を算出した。結果を図2に示す。
図2から、本発明の植栽用充填材料(実施例1)は、黒土及びパーライトからなる植栽用充填材料(比較例1)とほぼ同程度の質量減少率を示し、排水性に優れていることがわかる。
【0025】
[5.多孔質硬化体の連続空隙内に充填された植栽用充填材料の吸水性]
実施例1及び比較例1の植栽用充填材料と同様の材料を用いて、各々、ポーラスコンクリートの下面からの吸水性を評価した。評価方法は、次のとおりである。
植栽用充填材料をポーラスコンクリート(粗骨材の最大寸法:20mm、連続空隙の体積割合:25%、縦:300mm、横:300mm、厚さ:50mm)の連続空隙内に充填し、24時間静置した後、乾燥機を用いて24時間乾燥した。次に、透明アクリル樹脂容器(縦:450mm、横:450mm、高さ:100mm)に1,000mLの水を入れ、該容器の中央付近に、乾燥処理済みの試験体を置いた。その後、該容器の底面から水面までの距離(水深)を経時的に測定し、試験体を設置した直後の水深との差を吸水量(吸水パラメータ)とした。なお、透明アクリル樹脂容器の上面は、樹脂フィルムで覆い、水の蒸散を防ぐようにした。結果を図3に示す。
図3から、ポーラスコンクリートの連続空隙内に本発明の植栽用充填材料(実施例1)を充填した場合におけるポーラスコンクリートの下面からの吸水量は、比較例1の吸水量とほぼ同程度であり、吸水性に優れていることがわかる。
【0026】
[6.植栽用充填材料のpH]
植栽用充填材料(表3に示す組成のもの;実施例1〜4、比較例2〜4)を調製し、水素イオン濃度(pH)を測定した。なお、実施例1は、上述の各評価試験で用いたものと同様の材料である。
結果を表3に示す。表3から、本発明の植栽用充填材料(実施例1〜4)は、セメントを含むものの、pHが7.2〜7.8とほぼ中性領域にあり、植物の発芽及び生育に悪影響を与えるおそれのないことがわかった。
【0027】
【表3】
【0028】
[7.洋芝の発芽及び生育状況の観察]
植栽用充填材料(実施例1〜4;比較例2〜4)を用いて、洋芝の発芽及び生育状況を観察した。その結果、いずれの植栽用充填材料を用いた場合であっても、播種後1週間程度で発芽し、その後も順調な生育が認められた。
この結果から、本発明の植栽用充填材料が洋芝等の植物の発芽及び生育に好適であることがわかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の植栽用充填材料は、多孔質硬化体の連続空隙内に充填した場合に、排水性、吸水性、保水性の全てについて良好な物性を有し、かつ、降雨による流出が生じ難く、植物が良好に生育し得る材料として好適に用いることができる。特に、本発明の植栽用充填材料は、従来の充填材料では相反する特性とされていた排水性・吸水性と、保水性の両方に優れているため、乾燥状態と湿潤状態が交互に繰り返し発生する場合であっても、植物の良好な生育を期待することができる。
また、本発明の植栽用充填材料は、工場内で予め多孔質硬化体に充填して植栽用ブロックを作製した場合であっても、連続空隙内に固定された状態で保持されているため、運搬過程等において漏出することがない。この場合、植栽用ブロックは、低コストで、かつ容易に作製することができ、しかも、現場での敷設作業を容易かつ迅速に行なうことができる。
【0030】
また、本発明の植栽用充填材料は、有機系接着剤を含まないため、環境ホルモン等の汚染物質を周囲に拡散するおそれがなく、環境保護の見地からも安心して使用することができる。
さらに、本発明の植栽用充填材料を多孔質硬化体の連続空隙内に充填した後、多孔質硬化体の上面に緑化のための吹き付けを施すことによって、河川の護岸や法面の崩壊跡等の表面(露出面)を良好な状態で保護することができる。この場合、植栽用充填材料が、多孔質硬化体の地山との接触面から毛細管現象によって水分及び栄養分を吸収することから、植物の良好な発芽及び生育を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】植栽用充填材料の質量減少率(保水性)の経時的変化を示すグラフである。
【図2】植栽用充填材料の質量減少率(排水性)の経時的変化を示すグラフである。
【図3】植栽用充填材料の吸水パラメータ(吸水性)の経時的変化を示すグラフである。
Claims (6)
- 多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための植栽用充填材料であって、土壌、無機系結合材、及び粘土鉱物を含むことを特徴とする植栽用充填材料。
- 多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための植栽用充填材料であって、土壌100重量部、無機系結合材5〜30重量部、粘土鉱物3〜20重量部、及び無機系植物育成助剤0〜100重量部を含むことを特徴とする植栽用充填材料。
- 上記無機系結合材がセメントである請求項1又は2に記載の植栽用充填材料。
- 上記粘土鉱物が、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト、カオリン、及びハロイサイトからなる群より選ばれる1種以上からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の植栽用充填材料。
- 上記無機系植物育成助剤が、珪石粉、石灰石粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカ微粉末からなる群より選ばれる1種以上からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の植栽用充填材料。
- 多孔質硬化体であるプレキャストブロックの連続空隙内に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の植栽用充填材料と、種子と、水との混練物を充填してなることを特徴とする植栽用ブロック。
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- 2002-07-01 JP JP2002192687A patent/JP2004033069A/ja active Pending
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