JP2004032769A - 高効率結合線路フィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】RF回路の設計自由度を増加し、より具体的には、2つのポートと結合共振線路を有するフィルタにおける性能を向上する為に誘電体回路基板材料を最適化する方法及び装置を提供する。
【解決手段】無線周波数信号を処理する印刷回路は、印刷回路をその上に取付けることのできるサブストレート領域を含むサブストレートを含む。回路は、複数の共振器素子を含む結合線路フィルタである。複数の共振器線路素子は、それぞれ独自にカスタマイズ化可能なサブストレート特性を有するそれぞれのサブストレート領域に少なくとも部分的に接続する。回路は更に、サブストレートに接続する少なくとも1つの接地又は接地面(50)を含む。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的に、RF回路の設計自由度を増加し、より具体的には、2つのポートと結合共振線路を有するフィルタにおける性能を向上する為に誘電体回路基板材料を最適化する方法及び装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
RF回路、伝送線路、及びアンテナ素子は、一般的に、特別設計されるサブストレート基板上に形成される。このようなタイプの回路の目的のために、インピーダンス特性に関し、注意深い制御を維持することが重要である。回路の異なる部分のインピーダンスが整合しなければ、非効率的な電力伝達、構成要素の不必要な加熱、及び、他の問題が結果として生じる。これらの回路における伝送線路、及び、放射器の電気長も、重要な設計要素となり得る。
【0003】
サブストレート材料の性能に影響を及ぼす2つの重要な要素は、誘電率(時に、比誘電率、又は、εと称する)と、損失正接(時に、散逸率と称する)である。比誘電率は、信号速度を決定し、従って、伝送線路、及び、サブストレート上に実装される他の構成要素の電気長を決定する。損失正接は、サブストレート材料を通る信号に生じる損失の量を特徴付ける。従って、低損失材料は、周波数が増加するに従いより重要となり、特に、受信器のフロントエンド、及び、低雑音増幅器回路を設計する際に、重要となる。
【0004】
RF回路に使用する印刷された伝送線路、受動回路、及び、放射素子は、一般的に、3つの方法のうちいずれかによって形成される。マイクロストリップとして知られる1つの構成は、信号線路を基板面に置き、一般的に、接地面と称する第2の導電層を与える。埋め込みマイクロストリップとして知られる第2のタイプの構成は、信号線路が、誘電体サブストレート材料によって覆われる以外は同様である。ストリップラインとして知られる第3の構成では、信号線路は、2つの導電面(接地面)の間に挟まれる。損失を無視すると、ストリップライン又はマイクロストリップといった伝送線路の特性インピーダンスは、
【0005】
【数1】
Figure 2004032769
に等しい。ただし、Lは、単位長あたりのインダクタンスであり、Cは、単位長あたりのキャパシタンスである。L及びCの値は、一般的に、線路構造の物理的な幾何学、及び、間隔、また、伝送線路構造を絶縁するために用いる誘電材料の誘電率によって決まる。従来のサブストレート材料は、一般的に、1.0の比透磁率を有する。
【0006】
従来のRF設計では、その設計に適した比誘電率値を有するサブストレート材料が選択される。サブストレート材料が一度選択されると、伝送線路の特性インピーダンス値は、伝送線路の幾何学、及び、物理的構造を制御することによって、排他的に調節される。
【0007】
無線周波数(RF)回路は、一般的に、セラミックサブストレートといった絶縁基板サブストレートの表面上に、複数の能動回路素子及び受動回路素子が取付けられ、且つ、互いに接続されるハイブリッド回路に具現化される。様々な素子は、一般的に、ストリップライン構造、又は、マイクロストリップ構造、又は、ツインライン構造としての伝送線路といった、銅、金、又は、タンタルからなる印刷金属導体によって相互に接続される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
伝送線路、受動RFデバイス、又は、放射素子について選択されるサブストレート材料の誘電率は、その線路構造の所与の周波数におけるRFエネルギーの物理的波長に影響を与える。ミクロ電子工学RF回路を設計する際に遭遇する1つの問題は、基板上に形成される様々な受動素子、放射素子、及び、伝送線路回路の全てに対し最適化される誘電体基板サブストレート材料の選択である。特に、特定の回路素子の幾何学は、その素子に必要とされる独自の電気的又はインピーダンス特性によって、物理的に大きいか、又は、小型化される。例えば、多くの回路素子、又は、同調回路は、電気的な1/4波長である必要がある。更に、非常に高い、又は、低い特性インピーダンス値に必要とされる伝送線路の幅は、所与のサブストレートに実際に実施するには、それぞれ、幅が細すぎるか、又は、広すぎる場合がある。マイクロストリップ又はストリップラインの物理寸法は、誘電体の比誘電率に反比例するので、伝送線路の寸法は、サブストレート基板材料の選択によって大きく影響を受ける。
【0009】
更に、一部の素子に対し最適な基板サブストレート材料の設計選択は、例えば、アンテナ素子といった他の素子に対し最適な基板サブストレート材料と一致しない場合がある。また、1つの回路素子に対する幾つかの設計目的が、互いに一致しない場合がある。例えば、アンテナ素子の寸法を小さくすることが望ましい場合がある。このことは、比較的高い誘電体を有する基板材料を選択することによって達成することが可能である。しかし、高い比誘電率を有する誘電体を使用することは、一般的に、アンテナの放射効率を減少するという望ましくない影響を有する。従って、選択された相対誘電特性を有する回路基板サブストレートの制約は、回路全体の電気的性能、及び/又は、物理的特性に悪影響を与えることのできる設計上の妥協を、結果としてもたらす。
【0010】
上述の取り組み方法に特有の問題は、少なくともサブストレートに関し、伝送線路のインピーダンスに対する制御変数は、比誘電率、即ち、εのみであることである。この制限は、従来のサブストレート材料における重要な問題をハイライトする。即ち、従来のサブストレート材料は、特性インピーダンスを決定するもう1つの要素、即ち、L、伝送線路の単位長さあたりのインダクタンスを有利に活用することができない。
【0011】
更に、RF回路設計において遭遇するもう1つの問題は、異なるRF周波数帯域における動作に対し回路素子の最適化である。第1のRF周波数帯域に対し最適化される伝送線路インピーダンス及び長さは、他の周波数帯域に対し用いた場合に、インピーダンス変動、及び/又は、電気長における変動のいずれかによって、性能が低下してしまう場合がある。このような制限は、所与のRFシステムの有効な動作周波数範囲を制限してしまう。
【0012】
従来の回路基板サブストレートは、一般的に、誘電率を含む、サブストレート物理特性を結果として均一にするキャスティング、又は、噴霧コーティングといった処理によって形成される。従って、RF回路用の従来の誘電体サブストレート配置は、電気的及び物理寸法特性の両方について最適化される回路を設計するには、制限を課すことが分かった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の実施例では、無線周波数信号処理用の回路は、回路を取付け可能なサブストレートを含む。サブストレートは、第1の領域に第1のサブストレート特性のセットを有し、第2の領域に少なくとも1つの第2のサブストレート特性のセットを有する、少なくとも1つの誘電体層を含む。第2のサブストレート特性のセットは、第1のサブストレート特性のセットとは異なることが可能である。回路は更に、サブストレート及び結合線路フィルタに接続される少なくとも1つの接地面を含み、結合線路フィルタの少なくとも一部は、第2の領域に接続される。
【0014】
本発明の第2の実施例では、無線周波数信号処理用の印刷回路は、回路をその上に取付け可能なサブストレートを含む。このサブストレートは、第1の領域に第1の誘電特性のセットを有し、第2の領域に少なくとも1つの第2の誘電特性のセットを有する、少なくとも1つの誘電体層を含む。第2の誘電特性のセットは、第1の誘電特性のセットと比較して、異なる誘電体誘電率又は磁気透磁率、或いは、異なる誘電体誘電率及び磁気透磁率を提供する。印刷回路は更に、サブストレート内又はサブストレート上に配置される少なくとも1つの接地と、結合線路フィルタを含む。結合線路フィルタは、第2の領域の少なくとも一部に接続される複数の共振器素子を含む。
【0015】
本発明の第3の実施例では、無線周波数信号処理用の印刷回路は、回路をその上に取付けることが可能なサブストレート領域を含むサブストレートを含む。回路は、複数の共振器線素子と、サブストレートに接続される少なくとも1つの接地とを含む結合線路フィルタである。複数の共振器線素子は、それぞれ個々にカスタマイズ可能なサブストレート特性を有する夫々のサブストレート領域に少なくとも部分的に接続される。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1を参照するに、櫛型(combline)帯域通過フィルタとして機能する結合線路フィルタ10は、サブストレート材料、又は、誘電材料の層(誘電体層)11上に取付けられる。図1では、結合線路フィルタ10は、入力ポート13と、出力ポート14と、複数の(1乃至n個の)互いに結合される共振器素子15、16、17、18、19、20、及び、21を有するとして構成される。7個の共振器を示すが、本発明では、7個以上および7個以下の数の共振器素子を用いることも可能であることを理解するものとする。櫛型帯域通過フィルタは、互いに結合される共振器から構成されることが好適であり、これらの共振器は、物理的に4分の1波長長以下であり、一端が接地され(接地点25、26、27、28、29、30、及び31として示す)、共振器素子の反対の端に容量性負荷が与えられる。接地点は、一般的に、図2の断面図に示すように、金属化ビア(via)35を介して接地面50に接地される。本発明は、共振器素子に結合される、異なるサブストレート特性を有するサブストレート材料を使用する。特に、異なる誘電特性及び磁気特性を有するサブストレート材料(12及び40)が、複数の共振器15−21の下で、各共振器の間で結合される。図2は、線A−Aについての結合線路フィルタの断面図を示し、磁性材料40は、共振器(15−21)の下に置かれて、フィルタの線路を短く、且つ、幅を広げる。線路と接地との間の磁性材料は、線路の幅を制御する追加の手段を与える。図2は更に、高い結合(密接な間隔)が所望される場所には、結合を向上することが可能であることを示す(即ち、偶数及び奇数モードインピーダンスがより良好に整合する)。
【0017】
共振器間の内側の線路間隔は、比較的広い帯域幅に対しても任意の許容差問題を回避するよう十分に大きいことが可能である。帯域幅は、設計制約であり、製造制約と交換される。共振器長も、設計選択ではあるが、90度以下でなければならない。というのは、90度の長さでは、磁気及び静電結合が完全に相殺するからである。90度より下では、磁気結合が優位となる。45度から30度以下の共振器線路長は、最高の拒絶帯性能を有するコンパクトな構造をもたらす。最小の実用線路長は、減少した無負荷Qと、重い容量性負荷の要件とに制限される。負荷のための一塊のコンデンサの要件も、実現を妨害する要素となる。
【0018】
図3は、別の実施例を示す線A−Aについての図1の断面図であり、異なるサブストレート材料12及び40が、サブストレート11の上面と接地面50の間に結合される。特に、サブストレート材料40は、共振器線路又はトレースと接地面50との間を結合する。しかし、当業者は、本発明は上述に制限されるものではなく、結合線路は、結合線路に結合されるサブストレートの所望の機能及び特性に基づいて異なる形状に構成することも可能であることを理解するものとする。
【0019】
素子15乃至21は、共振線路である。共振線路は、無線周波数(RF)回路に、一般的に用いる伝送線路である。共振線路は、有限長を有し、その特性インピーダンス(Z)で終端されない。Zと終端におけるインピーダンス(負荷インピーダンス、Z)との不整合は、エネルギー反射を発生する。このエネルギー反射は、印加電圧の周波数と、その電圧が測定される線路上の位置に依存して、線路上の電圧を増加又は減少することが可能である。従って、一部の周波数において、所与の長さを有する共振線路は、共振する並列共振回路に類似して、高い入力インピーダンスを有し、一方で、他の周波数において、共振線路は、共振する直列共振回路に類似して、低い入力インピーダンスを有し得る。この他の周波数では、共振線路は、更に、複素又は反応インピーダンスも有し得る。
【0020】
印刷回路基板又はサブストレート上では、シングルポート共振線路は、一般的に、入力において1つのポートを有し、開回路にされるか、又は、終端において接地に短絡される伝送線路を作成することにより実装される。シングルポート共振線路の電気長は、一般的に、選択周波数の4分の1波長の数倍である。短絡された線路では、終端から奇数の4分の1波長における各点は、高いインピーダンス及び最大相対電圧を有し、終端から偶数の4分の1波長における各点は、低いインピーダンス及び最小相対電圧を有する。最大電圧位置及び最小電圧位置は、開回路共振線路では反対にされる。シングルポート共振線路へ入力インピーダンスは、一般的に、共振線路の長さが、動作周波数の4分の1波長の偶数、又は、奇数の倍数であるときに、抵抗性である。つまり、シングルポート共振線路への入力は、最大電圧、又は、最小電圧の位置にある。
【0021】
シングルポート共振線路への入力が、最大電圧点と最小電圧点との間の位置にあるとき、入力インピーダンスは、有用な特徴であり得る無効成分を有することが可能である。例えば、共振線路は、略純粋なキャパシタンス又はインダクタンスとして機能し得る。例えば、開回路線路は、1/8波長の長さにおいて、純粋なキャパシタンスとして機能し、1/4波長の長さにおいて、直列LCインピーダンスとして機能し、3/8波長の長さにおいて、純粋なインダクタンスとして機能し、1/2波長の長さにおいて、並列LC回路として機能する。このサイクルは、半波長毎に、上述した各点の間を滑らかに移行して繰り返される。従って、適切に選択されるシングルポート共振線路セグメントは、並列共振回路、直列共振回路、誘導回路、又は、容量性回路として用いられ得る。
【0022】
短絡線路は、1/8波長の長さにおいて、純粋なインダクタンスとして機能し、1/4波長の長さにおいて、並列LCインピーダンスとして機能し、3/8波長の長さにおいて、純粋なキャパシタンスとして機能し、1/2波長の長さにおいて直列LC回路として機能する。このサイクルは、半波長毎に、上述した各点を滑らかに移行して繰り返される。従って、適切に選択されるシングルポート共振線路セグメントは、並列共振回路、直列共振回路、誘導回路、又は、容量性回路として用いられ得る。
【0023】
共振線路が、キャパシタンスに終端されると、コンデンサは、エネルギーを吸収しないが、全てのエネルギーを回路に戻す。線路インピーダンスと終端間のインピーダンスの不連続性は、定在波を生成するよう入射波に加わる反射波を生成する。定在波の電圧は、終端容量性リアクタンスが、Zと同じ絶対値を有する時に、端から正確に1/8波長の距離において最小である。容量性リアクタンスが、Z(小さいキャパシタンス)より大きい場合、終端は、開回路のように見え、最小電圧は、端から離れるよう動く。容量性リアクタンスが、Zより小さい場合、最小電圧は、端に近づくよう動く。
【0024】
シングルポート共振線路は、一般的に、特別設計される印刷回路基板上に形成される。共振線路は、多くの異なる方法で形成することが可能である。3つの一般的な構成を次に説明する。マイクロストリップとして知られる1つの構成は、共振線路を、基板面上に置き、基板に接続される第2の導電層を与える。この第2の導電層は、一般的に、接地面と称する。埋め込みマイクロストリップとして知られる第2のタイプの構成は、共振線路が、誘電体サブストレート材料によって覆われる以外は同様である。ストリップラインとして知られる第3の構成では、共振線路は、2つの導電面(接地面)の間に挟まれる。導電面は、基板に近接する、又は、基板に結合することが可能である。本願にて記載するように、「基板に結合する」は、基板の表面に取付ける、又は、基板内に含まれることを意味する。
【0025】
低誘電定数印刷回路基板材料は、RF回路設計に、一般的に選択される。例えば、RT/デュロイド(duroid)(登録商標)6002(2.94の誘電定数、0.009の損失正接)、及び、RT/デュロイド(登録商標)5880(2.2の誘電定数、0.0007の損失正接)といったポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に基づいた合成物が、ロジャース・マイクロウェイブ・プロダクツ社(100 S.Roosevelt Ave.,Chandler,AZ85226)の高性能回路材料部から入手可能である。これらの材料はどちらも、一般的な基板材料選択である。上述した基板材料は、低い損失正接を伴った比較的低い誘電定数を有する誘電体層を与える。
【0026】
しかし、従来の基板材料の使用は、回路素子の小型化を譲歩しなくてはならず、更に、高誘電定数層から享受できる回路の性能面も譲歩しなくてはならない場合がある。通信回路における一般的なトレードオフは、アンテナ素子の物理的寸法と、効率の間で行われる。これに対し、本発明は、局所的に高い誘電定数の誘電体層部と、局所的に低い誘電定数の誘電体層部を使用することを可能にすることにより、回路設計者に対し、追加された自由度レベルを提供する。更に、局所的な基板部は、局所的な磁性基板特性を選択できることによって、効率の点から最適化することが可能である。この追加された自由度は、性能の向上、及び、線路素子の高密度化を可能にし、これらは、本発明の追加された自由度がない限り不可能である。
【0027】
局所的且つ選択可能な磁気特性及び誘電特性を与えるメタ材料部を有する誘電体サブストレート基板は、以下の方法で用意することができる。本願にて記載するように、「メタ材料」という用語は、例えば、オングストローム又はナノメートルレベルの非常に細かいレベルにおいて、2つ以上の異なる材料の混合又は配置から形成される合成材料を示す。メタ材料は、合成物の電磁気特性を調整することを可能にする。合成物の電磁気特性は、実効電気的誘電率、εeff(又は誘電定数)、及び、実効磁気透磁率、μeffを含む実効電磁気パラメータによって決められる。
【0028】
適切なバルクの誘電体セラミックサブストレート材料は、例えば、デュポン(Dupont)社及びフェロ(Ferro)社といった材料製造業者から入手することが可能である。一般的に、グリーンテープ(商標)と称する未処理の材料は、バルクの誘電体テープから、例えば、6平方インチの断片に切断されることが可能である。例えば、デュポン・マイクロサーキット・マテリアルズは、951ロー・テンプレチュア・コファイア・ダイエレクトリック・テープ(低温焼成誘電テープ)といった、グリーンテープ材料系を提供し、フェロ・エレクトロニック・マテリアルズは、ULF28−30ウルトラ・ロー・ファイアCOG・ダイエレクトリック・フォーミュレーション(超低温焼成COG誘電フォーミュレーション)を提供する。これらのサブストレート材料は、一度焼成されると、マイクロ波振動数での回路動作に対し、比較的低い損失正接が伴われる比較的中程度の誘電率を有する誘電体層を供給するために用いられる。
【0029】
誘電体サブストレート材料からなる多数のシートを用いてマイクロ波回路を作成する処理では、ビア(via)、ボイド(void)、孔、又は、空隙といった特徴は、1つ以上のテープ層を通して形成されることが可能である。ボイドは、機械的手段(例えば、孔開け器)、又は、指向エネルギー手段(例えば、レーザドリル、光リソグラフィ)を用いて画成可能であるが、ボイドは、任意の他の好適な方法を用いても画成可能である。寸法が決められたサブストレートの厚さ全体を通されるビアもあれば、サブストレートの厚さの異なる部分のみに到達するビアもある。
【0030】
次に、ビアには、一般的に、充填材料を正確に配置するステンシルを用いて、金属材料、又は、他の誘電材料、又は、磁性材料、或いは、それらの組合せが充填される。テープの個々の層は、従来の方法通りに積層されて、完全な多層サブストレートを生成することが可能である。或いは、テープの個々の層は、積層されて、一般的にサブスタックと呼ばれる部分的な多層サブストレートを生成することが可能である。
【0031】
ボイドが設けられた領域は、空のままにされることも可能である。選択材料が充填される場合は、選択材料には、メタ材料を含むことが好適である。メタ材料組成の選択は、2以下から約2,650までの比較的連続的な範囲に亘る調整可能な実効誘電定数を提供することが可能である。調整可能な磁性特性も、特定のメタ材料から入手可能である。例えば、好適な材料を選択することにより、相対的な実効磁気透磁率は、一般的に、最も実用的なRF適用に対し、約4乃至116の範囲に及ぶことが可能である。しかし、相対実効磁気透磁率は、約2まで低く、又は、数千に到達することも可能である。
【0032】
本願にて用いる「差別的に変更する」という表現は、サブストレートの1つの領域において、別の領域と比較して異なる誘電特性、及び、磁気特性の少なくとも一方の特性を結果としてもたらす、ドーパントを含む、誘電体サブストレート層への変更を意味する。差別的に変更される基板サブストレートは、1つ以上のメタ材料を含有する領域を含むことが好適である。
【0033】
例えば、変更は、特定の誘電体層領域は、第1の誘電特性又は磁気特性のセットを生成するよう変更され、一方、他の誘電体層領域は、第1の特性のセットとは異なる誘電特性及び/又は磁気特性を与えるよう差別的に変更されるか又は変更されない選択的な変更であってよい。差別化変更は、様々に異なる方法によって達成することが可能である。
【0034】
1つの実施例によると、補助誘電体層を、誘電体層に追加することが可能である。様々な噴霧技術、スピンオン技術、様々な蒸着技術、又は、スパッタリング技術といった当該技術において周知である技術を用いて、補助誘電体層を追加することが可能である。補助誘電体層は、ボイド又は孔の内側を含む局所領域、又は、既にある誘電体層全体に選択的に追加することが可能である。例えば、補助誘電体層は、増加された実効誘電定数を有するサブストレート領域を提供するよう用いることが可能である。
【0035】
所与のエネルギー刺激に対する誘電体層の応答は、全体又は一部において略永久的であり得る。永久応答は、適切な刺激の1回の付加が、1つ以上の所望の物理誘電体層特性を達成することを可能にする。物理特性も、例えば、誘電体層全体に時間変動する電界を印加することを可能にする放電電極を用いることによって、動的に制御することが可能である。誘電定数といった誘電体層特性の動的制御は、誘電体層の物理特性を再調整して、例えば、動作周波数の変化といった変動する信号特性に応答して、共振線路の性能を最適化することが可能である。
【0036】
差別的変更段階は、更に、誘電体層、又は、補助誘電体層に追加の材料を、局所的に追加する段階を含む。材料の追加は、誘電体層の実効誘電定数又は磁気特性を更に制御し、所与の設計目的を達成するよう用いることが可能である。
【0037】
追加の材料は、複数の金属、及び/又は、セラミック粒子を含むことが可能である。金属粒子は、鉄、タングステン、コバルト、バナジウム、マンガン、特定の希土類金属、ニッケル、又は、ニオブの粒子を含むことが好適である。これらの粒子は、ナノメートルの粒子、即ち、一般的に、サブミクロンの物理寸法を有する粒子であることが好適であり、以下、ナノ粒子と称する。
【0038】
ナノ粒子といった粒子は、有機機能化(organofunctionalized)された合成粒子であることが好適である。例えば、有機機能化された合成粒子は、絶縁コーティングが設けられた金属コア、又は、金属コーティングが設けられた絶縁コアを有する粒子を含むことが可能である。
【0039】
一般的に、本願に説明した様々な適用における誘電体層の磁気特性を制御するのに好適である磁性メタ材料粒子は、フェライトの有機セラミック(FexCyHz)−(Ca/Sr/Ba−Ceramic)を含むことが可能である。これらの粒子は、8乃至40GHzの周波数範囲の適用において良好に作用する。或いは、又は、更に、ニオブの有機セラミック(NbCyHz)−(Ca/Sr/Ba−Ceramic)が、12乃至40GHzの周波数範囲に有用である。高周波数に指定される材料は、低周波数適用にも適用可能である。これらの合成粒子及び他の種類の合成粒子は、市販されている。
【0040】
一般的に、コーティングされた粒子は、ポリマーマトリクス、又は、側鎖部分(Side chain moiety)との結合を促進するので、本発明で使用するには好適である。誘電体の磁気特性の制御に加えて、追加された粒子は、材料の実効誘電定数を制御するためにも使用することができる。約1乃至70%の合成粒子の充填率を用いて、サブストレート誘電体層及び/又は補助誘電体層領域の誘電定数を上げて、更に、下げることが可能である。例えば、有機機能化されたナノ粒子を、誘電体層に追加することは、変更された誘電体層領域の誘電定数を上げるために利用することが可能である。
【0041】
粒子は、ポリブレンド法、ミキシング法、及び、攪拌して充填する方法を含む様々な技術を用いて加えることが可能である。例えば、誘電定数は、最大約70%までの充填率を有する様々な粒子を用いて、2から最大10の値まで上げられ得る。
【0042】
この目的に有用な金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、及び、酸化ニオブ(II、IV、及び、V)を含む。ニオブ酸リチウム(LiNbO)、及び、ジルコン酸カルシウム及びジルコン酸マグネシウムといったジルコン酸塩も使用することが可能である。
【0043】
選択可能な誘電特性は、最小約10ナノメートルの領域まで局所的にされるか、又は、基板サブストレート面全体を含む大きい領域をカバーすることが可能である。堆積技術に関するリソグラフィ、及び、エッチングといった従来の技術を用いて、局所的な誘電特性及び磁気特性の取扱に用いることが可能である。
【0044】
材料は、他の材料と混ぜ合わされて、又は、様々な密度のボイド領域(一般的に空気を導入する)を含むものとして用意され、それにより、2乃至約2,650の略連続的な範囲の実効誘電定数、及び、他の潜在的に所望されるサブストレート特性を生成することができる。例えば、低誘電定数(<2乃至約4)を示す材料は、密度の異なるボイド領域を有するシリカを含む。密度の異なるボイド領域を有するアルミナは、約4乃至9の誘電定数を与えることが可能である。シリカ及びアルミナはいずれも、任意の顕著な磁気透磁率を有さない。しかし、磁性粒子を、最大で20重量パーセントまで追加し、これらの材料又は他の材料をかなり磁気的にすることが可能である。例えば、磁気特性は、有機機能性で調整され得る。磁性材料を追加することによる誘電定数への影響は、一般的に、誘電定数の増加をもたらす。
【0045】
中位の誘電定数材料は、一般的に、70乃至500+/−10%の範囲の誘電定数を有する。上述したように、この材料は、他の材料、又は、ボイドと混合されて、所望の実効誘電定数値を提供し得る。この材料は、フェライトがドープされたチタン酸カルシウムを含むことが可能である。ドーピング金属は、マグネシウム、ストロンチウム、及び、ニオブを含むことが可能である。この材料は、45乃至600の範囲の相対磁気透磁率を有する。
【0046】
高誘電定数適用には、フェライト、又は、ニオブがドープされたチタン酸ジルコン酸カルシウム又はバリウムを用いることが可能である。これらの材料は、約2,200乃至2,650の誘電定数を有する。これらの材料のドーピング率は、一般的に、約1乃至10パーセントである。他の材料に関して、これらの材料は、他の材料、又は、ボイドと混合されて、所望の実効誘電定数値を与え得る。
【0047】
これらの材料は、一般的に、様々な分子修飾(molecular modification)処理を介して変更されることが可能である。修飾処理には、ボイド形成と、その後に続く、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような炭素及びフッ素に基づいた有機機能材料といった材料の充填が含まれ得る。
【0048】
有機機能的組込み(integration)の代わりに、又は、有機機能的組込みに追加して、処理は、固体自由形式形成(SFF:solid freeform fabrication)、光、紫外線(uv)、X線、電子ビーム、又はイオンビーム放射を含むことが可能である。リソグラフィも、光、uv、X線、電子ビーム、又は、イオンビーム放射を用いて行うことが可能である。
【0049】
メタ材料を含む異なる材料を、サブストレート層(サブスタック)上の異なる領域に加えて、複数のサブストレート層(サブスタック)の領域が、異なる誘電特性及び磁気特性を有するようにすることが可能である。上述したような充填材料を、1つ以上の追加の処理段階と同時に使用して、バルクサブストレート領域の局所、又は、全体に、所望の誘電特性及び/又は磁気特性が得られる。
【0050】
次に、一般的に、上部層導体プリントが、変更されたサブストレート層、サブスタック、又は、完全なスタックに塗布される。導体トレースを、薄膜技術、厚膜技術、電気メッキ、又は、任意の他の好適な技術を用いて設けることが可能である。導体パターンを画成するために用いる処理は、以下に制限されないが、標準リソグラフィ及びステンシルを含む。
【0051】
次に、一般的に、ベースプレートが、複数の変更された基板サブストレートをまとめて整列するために得られる。この目的のために使用する、複数のサブストレート基板のそれぞれに形成される整列孔を用いることが可能である。
【0052】
複数のサブストレート層、1つ以上のサブスタック、又は、層とサブスタックの組合せは、次に、材料に全ての方向から圧力を加える平衡圧力、又は、材料に1つの方向のみから圧力を加える1軸圧力を用いて、(例えば、機械的に加圧されることによって)ラミネートされ得る。次に、ラミネートサブストレートは、上述したように更に処理されるか、又は、オーブン内で処理サブストレートに適した温度(上述の材料では、約850℃乃至900℃)まで焼成される。
【0053】
複数のセラミックテープ層及び積層されたサブストレートサブスタックは、次に、使用するサブストレート材料に適した速度で温度を上昇するよう制御可能な燃焼炉を用いて焼成される。温度上昇率、最終温度、冷却特性、及び、任意の必要な一時停止といった処理条件は、サブストレート材料と、サブストレートに充填される、又は、サブストレート上に蒸着される材料を考慮して選択される。焼成の後、積層されたサブストレート基板は一般的に、光学顕微鏡を用いて、欠陥を見つけるべく検査される。
【0054】
積層されるセラミックサブストレートは、次に、選択的に、回路機能要件を満たすために必要とされる寸法の帯状片に裁断される。最終検査の後、帯状のサブストレート片は、試験装置に取付けられ、誘電特性、磁気特性、及び、電気的性質が、特定の制限内にあることを確認するよう様々な特性が評価される。
【0055】
従って、誘電体サブストレート材料には、局所的に調整可能な誘電特性及び/又は磁気特性が与えられて、シングルポート共振線路を有する回路を含む回路の密度及び性能を向上することが可能である。誘電体の自由度は、線路インピーダンスと、結合線路フィルタを構成する様々な素子の電磁結合の独立した最適化を可能にする。
【0056】
しかし、従来の基板材料の使用は、回路素子の小型化を譲歩しなくてはならず、更に、高誘電定数層から享受できる回路の性能面も譲歩しなくてはならない場合がある。通信回路における一般的なトレードオフは、共振線路の物理的寸法と、動作周波数の間で行われる。これに対し、本発明は、特定の周波数で動作するための共振線路及び/又は変成器線路の長さの減少に最適化される磁気特性を有する高誘電定数誘電体層部を使用することを可能にすることにより、回路設計者に対し、追加された自由度レベルを提供する。更に、本発明は、2つのポートを有する共振線路の共振線路面の尖鋭度(Q)を制御する手段を、回路設計者に提供する。この追加された自由度は、性能の向上、及び、共振線路の高密度化を可能にし、これらは、本発明の追加された自由度がない限り無線周波数(RF)回路には不可能である。本願に記載する無線周波数とは、電磁波を伝搬するために用いることが可能な任意の周波数を意味する。
【0057】
図1及び図2を再び参照するに、結合線路フィルタは、第1の誘電定数を含む1つの第1のサブストレート特性(例えば、誘電特性)のセットを有する少なくとも1つの第1の領域9と、第2の誘電定数を含む第2のサブストレート特性を有する少なくとも1つの第2の領域12を含むサブストレート、又は、誘電材料からなる層(誘電体層)11上に取付けられる。第1の誘電定数は、第2の誘電定数と異なることが好適である。この場合、第2の領域12は、共振器線路セクション15−21の間に位置することが可能である。サブストレートは、更に別のサブストレート特性のセットを有する領域40といった他の領域も有することが可能である。図示するように、領域40は、それぞれの共振器素子と接地面50との間の面積を占有する。本発明は、各領域9、12、及び、40が、独自の誘電特性を有するが、3つの領域のうち2つの領域は、等価のサブストレート特性を有することが可能であると考える。
【0058】
領域12及び/又は領域40の誘電定数は、第1の領域9より高い誘電率及び/又は透磁率を有することが可能である。従って、共振器素子15−21の寸法は、それぞれの共振器素子と接地面50との間で選択されたキャパシタンスを達成するのに必要であるより小さいことが可能である。更に、変成器線路セクション112の寸法も小さくすることが可能である。従って、このことは、結合線路フィルタが組込まれるサブストレート11の面積が、従来の回路基板上で要求される面積より小さいことが可能にされる。
【0059】
共振線路を進行する信号の伝搬速度は、
【0060】
【数2】
Figure 2004032769
と略反比例する。従って、領域12又は14における誘電率及び/又は透磁率を増加することは、共振線路上の信号の伝搬速度、従って、信号波長を減少する。それゆえに、共振線路の4分の1波長(又は、4分の1波長の任意の倍数)は、透磁率及び/又は誘電率を増加することによって減少することが可能となる。従って、結合線路フィルタが組込まれる誘電体層又はサブストレート11の面積は、従来の回路基板上で必要とされる面積より小さくすることが可能である。
【0061】
領域12及び40は、共振線路の一部又は全体に対し特定のキャパシタンスを達成するよう選択される誘電率を有することが可能である。更に、透磁率も、特定の共振器素子に対し特定のインダクタンスを結果としてもたらすよう選択されることが可能である。誘電率及び透磁率は、所望のZ、又は、特定のフィルタ特性をもたらすよう選択されることが可能である。Zは、共振線路部上の特定の共振に対する所望のQを達成する、フィルタの共振応答を形作る、及び/又は、最大電圧及び最小電圧を調節するよう選択されることが可能である。更に、Zは、高い共振モードを抑え、及び/又は、結合線路フィルタのインピーダンスと自由空間のインピーダンスとの間に不整合を形成するよう選択されることが可能である。このインピーダンス不整合は、結合線路フィルタからのRF放射を最小限にし、電磁妨害(EMI)を減少することを促進することが可能である。
【0062】
2つのポートを有する結合線路フィルタ10の共振特性は、第1の領域及び第2の領域を介して、これらの領域に形成される電界及び磁界がエネルギーを蓄積し且つ放出することによって、分布することが可能である。これらの電界及び磁界によって蓄えられ且つ放出されるエネルギーの量は、誘電体層の異なる領域に関連付けられる誘電率及び透磁率を制御することによって調節することが可能である。例えば、特定の領域における誘電率が高ければ、その領域に形成される電界に蓄えられるエネルギーは大きくなる。同様に、特定の領域における透磁率が高ければ、その領域に形成される磁界に蓄えられるエネルギーは大きくなる。
【0063】
共振素子又は共振線路の寸法は、一般的に、従来の回路基板上の共振素子又は共振線路の寸法より小さいので、結合線路フィルタに沿っての所望の場所に、最小電圧及び最小電圧を位置付けるようキャパシタンスをより容易に調節することが可能である。更に、共振線路がインダクタンス、又は、キャパシタンスとして機能する領域も、より容易に制御することが可能である。従って、本発明は、従来技術と比較して、より大きい共振線路の構造可能性を可能にする。
【0064】
図4は、ヘアピン型通過帯域フィルタの形である別の結合線路フィルタ400を示す。フィルタ400は、サブストレート材料、又は、誘電材料の層(誘電体層)401上に取付けられる。フィルタ400は、入力ポート、出力ポート、及び、その間に複数の結合線路素子を有するよう構成される。結合線路素子のほとんどは、例えば、素子404、406、408、410、及び412のように略U字型である。入力における素子402及び出力における素子414は、略L字型である。本発明は、結合線路素子に結合される、異なるサブストレート特性を有するサブストレート材料を使用する。特に、図4に示すように、(サブストレート401の残りの部分とは)異なる誘電特性及び磁気特性を有するサブストレート材料420は、各略U字型素子の間で結合され、サブストレート材料430は、セクション402と404の間と、セクション412と414との間に結合される。図1に関連して上述したように、磁性及び/又は誘電材料を、フィルタ400の素子(402−414)の下に置いて、フィルタの線路の長さを短くし、幅を広くすることも可能である。線路の幅は、線路と接地との間に、磁性及び/又は誘電材料を追加することによって制御することが可能である。
【0065】
図5は、エッジ結合線路帯域通過フィルタの形である別の結合線路フィルタ500を示す。フィルタ500は、サブストレート材料、又は、誘電材料の層(誘電体層)501上に取付けられる。フィルタ500は、図示するように、入力ポート502、出力ポート516、及び、素子504、506、508、510、512、及び、514といったようにエッジからエッジに結合される複数の結合線路素子を有するよう構成される。本発明は、結合線路素子に結合される、異なるサブストレート特性を有するサブストレート材料を使用する。特に、(サブストレート501の残りの部分とは)異なる誘電特性及び磁気特性を有するサブストレート材料520は、素子504のエッジ部と素子506のエッジ部との間で結合され、素子512のエッジ部と素子514のエッジ部との間で結合される。もう1つのサブストレート材料530は、セクション506のエッジ部とセクション508のエッジ部との間、セクション508のエッジ部とセクション510のエッジ部との間、及び、セクション510のエッジ部とセクション512のエッジ部との間で結合される。図1に関連して上述したように、磁性及び/又は誘電材料を、フィルタ500の素子(504−514)の下に置いて、フィルタの線路の長さを短くし、幅を広くすることも可能である。線路の幅は、線路と接地との間に、磁性及び/又は誘電材料を追加することによって制御することが可能である。
【0066】
本発明の1つの実施例では、基板サブストレート誘電体層の透磁率は、結合線路フィルタの一部のインダクタンスを増加するよう第2の領域に強磁性材料、反磁性材料、又は、常磁性材料を追加することによって制御することが可能である。強磁性材料の導電率は、損失を最小限にし、共振器セクションを、誘電体層内又は誘電体層上の任意の線路、又は、接地面に短絡させないよう低いことが好適である。
【0067】
尚、結合線路フィルタ構成は、示した例示的な図に制限されるものではない。例えば、結合線路フィルタは、異なる形状の共振器素子を有し、共振器素子線路と接地面又は回路層面との間に異なる距離を有するよう位置付けられることが可能である。更に、任意の数の誘電材料、強磁性材料、反磁性材料、及び/又は、常磁性材料を、サブストレートの任意の領域に組込むことが可能である。1つの実施例では、Zは、線路の異なる領域に亘ってZを変動させる多数の誘電体及び磁性混合体又は濃度を用いて、結合線路フィルタの長さ全体、又は、任意の一部に亘って制御されることが可能である。例えば、Zは、結合線路フィルタからのRFエネルギーの放射又は電磁妨害(EMI)を最小限にするよう制御されることが可能である。更に、誘電特性及び磁性特性は、誘電体層の選択領域において差別的に変更されて、共振線路性能を最適化することが可能である。更に別の実施例では、全ての誘電体領域が、誘電体層の全ての領域における誘電特性及び磁気特性を差別的に変更することにより、変更することが可能である。
【0068】
本願にて記載する「差別的に変更する」という表現は、誘電特性及び磁気特性のうち少なくとも一方の特性が、サブストレートの1つの領域において、他の領域と比較して異なるよう誘電体層に対する、追加を含む、任意の変更を意味する。例えば、変更は、特定の誘電体層部が、第1の誘電特性又は磁気特性のセットを生成するよう変更され、一方で、他の誘電体層部は、変更の結果もたらされる第1の特性のセットとは異なる誘電特性及び磁気特性を有するよう変更されない選択的な変更であることが可能である。
【0069】
寸法及び性能が最適化された共振線路を提供する方法の実施例を、以下のテキスト、及び、図6に示すフローチャートを参照して説明する。図6を参照するに、段階610において、基板誘電材料は、変更の為に用意される。基板材料には、例えば、RT/デュロイド(登録商標)6002といった市販される規格品の基板材料、又は、ポリマー材料から形成されるカスタマイズされた基板材料、又は、それらの組合せを含むことが可能である。用意する処理は、選択される基板材料のタイプに応じる。
【0070】
段階620において、第1の領域9又は第2の領域12といった1つ以上の誘電体層部は、第2の領域12における誘電定数又は磁気特性が、第1の領域9の誘電定数又は磁気特性と比較して異なるよう差別的に変更される。段階630では、金属層が塗布されて、結合線路フィルタを形成する。段階620において、差別化変更は、幾つか異なる方法で達成することが可能である。
【0071】
1つの実施例によると、補助誘電体層を、誘電体層11に追加することが可能である。様々な噴霧技術、スピンオン技術、様々な蒸着技術、又は、スパッタリング技術といった当該技術において周知である技術を用いて、補助誘電体層を追加することが可能である。補助層は、領域12又は40、又は、既にある誘電体層全体に選択的に追加することが可能である。
【0072】
差別的変更段階620は、更に、誘電体層11に追加の材料を追加する段階を含むことが可能である。材料の追加は、共振線路効率を向上し、又は、特定の共振線路寸法を達成するよう誘電体層11の誘電定数、又は、磁気特性を更に制御するよう用いることが可能である。
【0073】
誘電体層に追加される追加材料は、複数の粒子を含むことが可能である。粒子は、金属、及び/又は、セラミックの粒子であることが好適である。金属粒子は、鉄、タングステン、コバルト、バナジウム、マンガン、特定の希土類金属、ニッケル、又は、ニオブの粒子を含むことが好適である。これらの粒子は、ナノ寸法の粒子、即ち、一般的に、サブミクロンの物理寸法を有する粒子であることが好適であり、以下、ナノ粒子と称する。
【0074】
ナノ粒子といった粒子は、有機機能化された合成粒子であることが好適である。例えば、有機機能化された合成粒子は、絶縁コーティングが設けられた金属コア、又は、金属コーティングが設けられた絶縁コアを有する粒子を含むことが可能である。
【0075】
候補の磁性メタ材料粒子は、本願に記載した共振線路適用用の誘電層11の磁気特性を制御するのに適した磁性メタ材料粒子は、フェライトの有機セラミック(FexCyHz)−(Ca/Sr/Ba−Ceramic)を含む。これらの粒子は、8乃至40GHzの周波数範囲の適用において良好に作用する。或いは、又は、更に、ニオブの有機セラミック(NbCyHz)−(Ca/Sr/Ba−Ceramic)が、12乃至40GHzの周波数範囲に有用である。これらの合成粒子及び他の種類の合成粒子は、市販されている。
【0076】
一般的に、コーティングされた粒子は、ポリマーマトリクス、又は、側鎖部分との結合を促進するので、本発明で使用するには好適である。誘電体層11の磁気特性の制御に加えて、追加された粒子は、材料の誘電定数を制御するためにも使用することができる。約1乃至70%の合成粒子の充填率を用いて、サブストレート誘電体層及び/又は補助誘電体層部の誘電定数を上げて、更に、下げることが可能である。例えば、有機機能化されたナノ粒子を、誘電体層に追加することは、変更された誘電体層部の誘電定数を上げるために利用することが可能である。
【0077】
粒子は、ポリブレンド法、ミキシング法、及び、攪拌して充填する方法を含む様々な技術を用いて加えることが可能である。例えば、誘電体層がポリマーを含む場合、誘電定数は、最大約70%までの充填率を有する様々な粒子を用いて、2である公称値から最大10の値まで上げられ得る。
【0078】
この目的に有用な金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、及び、酸化ニオブ(II、IV、及び、V)を含む。ニオブ酸リチウム(LiNbO)、及び、ジルコン酸カルシウム及びジルコン酸マグネシウムといったジルコン酸塩も使用することが可能である。
【0079】
本発明の好適な実施例を例示的に説明したが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではないことは明らかである。当業者は、本発明の目的及び範囲から逸脱することなく、多数の改修、変更、変形、置換、及び、等価を考え付くであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって結合線路フィルタの寸法を小さくするようサブストレート上に形成される結合線路フィルタを示す平面図である。
【図2】線A−Aについての図1の結合線路フィルタを示す断面図である。
【図3】線A−Aについての図1の結合線路フィルタの別の実施例を示す断面図である。
【図4】本発明によりサブストレート上に形成されるヘアピン型帯域通過フィルタの形の結合線路フィルタを示す平面図である。
【図5】本発明によりサブストレート上に形成されるエッジ結合帯域通過フィルタの形の結合線路フィルタを示す平面図である。
【図6】本発明により小さくされた物理寸法を有する結合線路フィルタを製造する方法を説明するのに有用なフローチャートである。
【符号の説明】
9 第1の領域
10 結合線路フィルタ
11 誘電体層
12 第2の領域
13 入力ポート
14 出力ポート
15、16、17、18、19、20、21 共振器素子
25、26、27、28、29、30、31 接地点
40 サブストレート材料
50 接地面
400 結合線路フィルタ
401 誘電体層
402、404、406、408、410、412、414 結合線路素子
420、430 サブストレート材料
500 結合線路フィルタ
501 誘電体層
502 入力ポート
516 出力ポート
504、506、508、510、512、514 結合線路素子
520、530 サブストレート材料

Claims (5)

  1. 無線周波数信号を処理する回路であって、
    第1の領域に第1のサブストレート特性のセットを有し、第2の領域に、上記第1のサブストレート特性のセットとは異なる少なくとも1つの第2のサブストレート特性のセットを有する少なくとも1つの誘電体層を含み、上記回路を取付けることができるサブストレートと、
    上記サブストレートに接続される少なくとも1つの接地面と、
    結合線路フィルタと、を含み、
    上記結合線路フィルタの少なくとも一部は、上記第2の領域に接続される回路。
  2. 上記結合線路フィルタは、櫛型帯域通過フィルタであり、
    上記櫛型帯域通過フィルタは、接地に接続され、且つ、上記第2の領域の少なくとも一部に接続される複数の共振器素子を含む請求項1記載の回路。
  3. 上記結合線路フィルタは、ヘアピン型帯域通過フィルタであり、
    上記ヘアピン型帯域通過フィルタは、複数の共振器素子を含み、
    上記複数の共振器素子は、上記第1の領域及び上記複数の共振器素子の少なくとも一部の間の上記第2の領域の誘電層を有する、請求項1記載の回路。
  4. 上記結合線路フィルタは、エッジ結合帯域通過フィルタであり、
    上記エッジ結合帯域通過フィルタは、複数の共振器素子を含み、
    上記複数の共振器素子は、上記第1の領域及び上記複数の共振器素子の少なくとも一部の間の上記第2の領域の誘電体層を有する、請求項1記載の回路。
  5. 上記第1のサブストレート特性のセット、及び、上記第2のサブストレート特性のセットは、誘電率及び透磁率を含むグループから選択される特性である請求項1記載の回路。
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