JP2004029704A - 光走査制御方法・光走査装置および液晶偏向素子装置・液晶偏向素子列装置および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光源側からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により被走査面に向かって集光させ、被走査面上に光スポットを形成し、被走査面の光走査を行う光走査装置において、光スポットによる走査を制御する方法であって、主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段21Yを、光源から被走査面に至る光路中に配置し、光走査に応じて光束を主走査方向及び/または副走査方向に偏向させることにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光走査制御方法・光走査装置および液晶偏向素子装置・液晶偏向素子列装置および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光源側からの光束を、回転多面鏡等の「光偏向走査手段」により偏向させ、偏向される光束をfθレンズ等の「走査結像光学系」により被走査面に向けて集光させることにより、被走査面上に光スポットを形成し、この光スポットにより被走査面を光走査する光走査装置は、レーザプリンタや光プロッタ、デジタル複写機等の画像形成装置に関連して広く知られている。
【0003】
光走査装置では一般に「光走査により画像の書込みを行う画像形成プロセス」が実行されるが、形成される画像の良否は光走査の良否にかかっている。光走査の良否は、光走査装置の「主走査方向や副走査方向の走査特性」に依存する。主走査方向の走査特性としては例えば、光走査の等速性がある。
【0004】
光偏向走査手段として、例えば、回転多面鏡を用いる場合、光束の偏向は等角速度的に行われるので、光走査の等速性を実現するために、走査結像光学系としてfθ特性を持つものを用いている。しかしながら、走査結像光学系に要請される他の性能との関係もあって、完全なfθ特性を実現することは容易でない。
【0005】
副走査方向の走査特性としては「走査線曲がり」がある。走査線は「被走査面上における光スポットの移動軌跡」であり、直線であることが理想で、光走査装置の設計も、走査線が直線となるように行われるが、実際には、加工誤差や組立誤差等が原因して、走査線に曲がりが発生するのが普通である。走査線曲がりの1つの形態として、走査線が副走査方向に対して正しく直交しない「走査線の傾き」がある。
【0006】
また、走査結像光学系として「結像ミラー」を用い、偏向光束の、結像ミラーへの入射方向と反射光方向との間に、副走査方向で角度を持たせる場合には、原理的に走査線曲がりが発生するし、走査結像光学系をレンズ系として構成する場合でも、被走査面を「副走査方向に分離した複数の光スポットで光走査」するマルチビーム走査方式では走査線曲がりの発生が不可避的である。
【0007】
光走査の等速性が完全でないと、形成された画像に主走査方向の歪みが生じ、また、走査線曲がりがあると、形成された画像に副走査方向の歪みが生じる。 画像が所謂モノクロで、単一の光走査装置により形成される場合には、走査線曲がりや等速性の不完全さが「ある程度抑えられ」ていれば、形成された画像に、目視でわかるほどの歪みは生じないが、それでも、このような画像の歪みは少ないに超したことはない。
【0008】
マゼンタ・シアン・イエローの3色、あるいはこれに黒を加えた4色の画像を色成分画像として形成し、これらの色成分画像を重ね合せることにより合成的にカラー画像を形成することは、従来から、カラー複写機等で行われているところである。
【0009】
このようなカラー画像形成を行うのに、各色の成分画像を異なる光走査装置で異なる感光体に形成する所謂「タンデム型」と呼ばれる画像形成方式があるが、このような画像形成方式の場合、光走査装置相互で「走査線曲がりが異なる(光走査装置相互の走査線の曲がり具合が異なる)」と、各光走査装置ごとの走査線曲がりは十分に補正されていたとしても、形成されたカラー画像に「色ずれ」と呼ばれる画像異常が現れて、カラー画像の画質を劣化させる。
色ずれ現象の現われ方には、カラー画像における色合いが所望のものにならないという現象もある。
【0010】
近来、走査特性の向上を目して、光走査装置の結像光学系に、非球面に代表される特殊な面を採用することが一般化しており、このような特殊な面を容易に形成でき、なおかつコストも安価な「樹脂材料の結像光学系」が多用されている。
【0011】
樹脂材料の結像光学系は、温度や湿度の変化の影響を受けて光学特性が変化し易く、このような光学特性の変化は「走査線の曲がり具合や等速性」をも変化させる。そうすると、例えば、数十枚のカラー画像形成を連続して行う場合に、画像形成装置の連続運転により機内温度が上昇し、結像光学系の光学特性が変化して、各光走査装置の書込む走査線の曲がり具合や等速性が次第に変化し、色ずれの現象により、初期に得られたカラー画像と、終期に得られたカラー画像とで色合いが全く異なるものになる。
【0012】
カラー画像形成を行うタンデム式の画像形成装置では、例えば、4つのドラム状の感光体を記録紙の搬送方向に配列し、各感光体を、対応する光走査装置により露光して潜像を形成し、これら潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、黒など各々異なる色の可視像として可視像化し、これら可視像を同一の記録紙上に順次重ね合わせて転写してカラー画像を得るが、このような画像形成装置は、デジタルカラー複写機やカラーレーザプリンタとして実用化されつつある。
【0013】
4ドラムタンデム方式の画像形成装置は「単一の感光体に単一の光走査装置を用いて順次に潜像を形成し、形成される潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、黒の可視像として順次可視化し、可視像の転写を同一の記録紙に対して繰返してカラー画像を得る1ドラム方式の画像形成装置」に比して、カラー画像もモノクロ画像も同じ速度で出力でき「高速プリント」に有利であるが、その反面、感光体の個々に対して走査結像光学系を有するため装置が大型化しやすく、また、可視像を別個の感光体から同一の記録紙に転写する際に「色ずれ」を発生し易い。
【0014】
光走査装置に用いられる光学素子はプラスチック材料によるものが多い。プラスチックによる光学素子は量産性に優れる一方、環境変化、特に温度変化による光学特性の変化を避けがたい。
【0015】
タンデム方式の画像形成装置の「副走査方向における色ずれ」の発生原因としては「ドラム状の感光体の回転速度むら」や「各色成分画像を書込む光走査装置の走査線相互の位置ずれ、走査線曲がり相互の不一致」あるいは「環境変動や連続画像形成プロセスによる温度変動による走査線ずれ、走査線曲がりの変動(これらは、プラスチック光学素子の光学特性変化に起因するものが多い)」等が考えられる。
【0016】
「色ずれ」を軽減する方法として、装置内の温度変化が閾値を越えた場合に転写のレジストずれ量を検知し、それに基づきアクチュエータを駆動させて走査線相互の位置ずれを補正するもの(特許文献1)や、各感光体ドラムに対する光走査装置をハウジングごと対応する感光体ドラムに対して位置調整するもの(特許文献2)、光走査装置に含まれる長尺レンズを歪ませて走査線曲がりを補正するもの(特許文献3)等が提案されている。
【0017】
特許文献1に開示された方法は、装置内の温度変化が比較的緩やかである場合は効果的であるが、長尺の重いミラーで構成されたアクチュエータを高速駆動することが難しく、連続画像形成時に機内温度が急激に変化すると応答を追従させることが困難である。
【0018】
特許文献2に開示された方法は、調整のための機構が複雑になり易くコストアップを招来し易い。また、温度変化などによる「走査線の曲がりの経時的な変化」は補正対象外である。
【0019】
特許文献3に開示された方法は、初期設定状態での走査線曲がりは有効に補正可能であるが、温度変化などによる経時的な変化に対応することは困難である。
【0020】
なお、この明細書中において説明する「液晶偏向素子」は、特許文献4、5に記載がある。
【0021】
【特許文献1】
第3262409号特許公報
【特許文献2】
特開2001−133718号公報
【特許文献3】
特開平10−268217号公報
【特許文献4】
特開昭63−240533号公報
【特許文献5】
特開平 8−313941号公報
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上述の事情に鑑みてなされたものであって、光走査を制御することにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を有効に補正し、良好な光走査、延いては良好な画像形成を可能ならしむることを課題とする。
【0023】
この発明はまた、カラー画像を形成するタンデム方式の画像形成装置において、急激な温度変動などで、副走査方向に走査線相互の位置ずれ、走査線曲がり相互の不一致が生じた場合においても、各色成分画像間の色ずれを効果的に補正し、良好なカラー画像を出力できるようにすることを課題とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の光走査制御方法は「光源側からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により被走査面に向かって集光させて被走査面上に光スポットを形成し、この光スポットにより被走査面の光走査を行う光走査装置において、光スポットによる走査を制御する方法」であって、以下の点を特徴とする。
【0025】
即ち、主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を、光源から被走査面に至る光路中に配置し、光走査に応じて光束の、主走査方向及び/または副走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する。
【0026】
「光偏向走査手段」は、光源側からの光束を光走査のために偏向させる手段であり、ポリゴンミラーを回転させる回転多面鏡を始めとし、ピラミダルミラー、ホゾ型ミラー等の回転1面鏡や回転2面鏡、あるいはガルバノミラー等、従来から知られた各種のものを用いることができる。
【0027】
「走査結像光学系」は、光偏向走査手段により偏向された光束を被走査面に向けて集光させ、被走査面上に光スポットを形成するための光学系であり、fθレンズ等のレンズ系として構成することも、fθミラー等の結像ミラー系として構成することもでき、レンズ系とミラー系の複合系として構成することもできる。
【0028】
走査結像光学系は、光スポットによる光走査を等速化するための「等速化機能」を有する。即ち、例えば、光偏向走査手段にる光束の偏向が、等角速度的である場合には、走査結像光学系として「光スポットによる走査を等速化するためにfθ機能を有するもの」が用いられる。この場合は「fθ特性」が「光走査の等速性」である。
【0029】
液晶偏向素子手段は、後述する「液晶偏向素子」と呼ばれる素子を用いるものである。液晶偏向素子に光束を透過させた状態において、液晶偏向素子を電気的あるいは磁気的な信号で駆動することにより、透過光束の向きを変化させることができる。液晶偏向素子により透過光束の向きが変化する方向を「偏向方向」と呼ぶ。
【0030】
請求項2記載の光走査制御方法は、上記請求項1記載の光走査制御方法において、液晶偏向素子手段として「副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した副走査液晶偏向素子列」を用い、この副走査液晶偏向素子列を光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、光走査ごとに、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御することにより、副走査方向の走査特性である「走査線曲がり(前述の「走査線の傾き」を含む。以下の説明においても同じである。)」を補正することを特徴とする。
【0031】
「副走査液晶偏向素子」は、偏向方向が副走査方向となるように設定された液晶偏向素子である。
【0032】
副走査液晶偏向素子列を構成するべく「主走査方向に配列される複数の副走査液晶偏向素子」は、そのサイズが、同一でも異なっても良い。例えば、走査線曲がりを、光スポットの像高:Hの関数としてf(H)とするとき、|df/dH|が大きいところ、即ち、「走査線の曲がり具合の大きい領域」では、主走査方向のサイズの小さい副走査液晶偏向素子を多数配列して、走査線の曲がりを細かく補正し、|df/dH|が小さく「走査線の曲がり具合(「走査線の傾き具合」を含む)が小さい領域」では、主走査方向のサイズの比較的大きい副走査液晶偏向素子を用いて補正を行うようにできる。
【0033】
また、走査線に「実質的に曲がりの無い領域」がある場合には、この領域に対応する部分に副走査液晶偏向素子がなくてもよい。即ち、副走査液晶偏向素子列を構成する副走査液晶偏向素子のサイズ・配列は同一・等間隔とは限らない。
【0034】
請求項3記載の光走査制御方法は、請求項1または2記載の光走査制御方法において、液晶偏向素子手段もしくはその一部として「主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列」を用い、この主走査液晶偏向素子列を光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、光走査ごとに、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向の走査特性である「光走査の等速性」を補正することを特徴とする。
【0035】
「主走査液晶偏向素子」は、偏向方向が主走査方向となるように設定された液晶偏向素子である。主走査液晶偏向素子列は「液晶偏向素子手段もしくはその一部」として用いられる。即ち、主走査液晶偏向素子列が単独で液晶偏向素子手段として用いられる場合には、主走査方向の走査特性である等速性が補正される。また、主走査液晶偏向素子列が「液晶偏向素子手段」の一部として用いられる場合とは、主走査液晶偏向素子列が副走査液晶偏向素子列とともに用いられる場合であり、この場合には、液晶偏向素子手段により、走査線曲がりと等速性との補正が実行される。
【0036】
主走査液晶偏向素子列を構成するべく主走査方向に配列される複数の主走査液晶偏向素子も、そのサイズは同一でもよいし異なっても良い。例えば、光走査の等速性(fθ特性等)の「変化の大きい領域」では、主走査方向のサイズの小さい主走査液晶偏向素子を多数配列して等速性を細かく補正し、等速性の変化が小さい領域では、主走査方向のサイズの比較的大きい主走査液晶偏向素子を用いて補正を行うようにできる。
【0037】
また、等速性が「実質的に達成されている領域」がある場合、この領域に対応する部分には主走査液晶偏向素子がなくてもよい。即ち、主走査液晶偏向素子列を構成する主走査液晶偏向素子のサイズ・配列も同一・等間隔とは限らない。
【0038】
液晶偏向素子手段として、主走査液晶偏向素子列と副走査液晶偏向素子列とを用いる場合、これらは一体として用いることもできるし、別体として互いに離れた位置に配置することもできる。
【0039】
請求項1〜3記載の光走査制御方法で、走査特性の補正は「光走査ごと」に行われる。即ち、光スポットの1走査ごと(走査線1本ごと。マルチビーム走査方式では、同時走査される複数走査線の本数ごと)に行われる。
【0040】
また、請求項2、3記載の光走査制御方法においては、液晶偏向素子手段が、光偏向走査手段と被走査面との間に配置され、複数の主・副走査液晶偏向素子が「補正領域を分担」するが、請求項1記載の光走査制御方法ではこれに限らず、単一の主走査液晶偏向素子および/または単一の副走査液晶偏向素子を「液晶偏向素子手段」として、光源と光偏向走査手段との間に配置し、光走査ごとに偏向量を「光スポットの像高に応じて時間的に制御」して走査特性の補正を行うようにすることもできる。
【0041】
この発明の光走査装置は「1以上の光源からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により、光源に応じた被走査面に向けて集光させて、被走査面上に光スポットを形成して光走査を行う光走査装置」であって、以下の点を特徴とする。
【0042】
即ち、主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を「光源から、この光源に対応する被走査面に至る光路」の1以上に配置し、光走査制御手段により液晶偏向素子手段を制御して、光走査に応じて光束を主走査方向及び/または副走査方向に偏向させることにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する(請求項4)。
【0043】
「光偏向走査手段」、「走査結像光学系」、「液晶偏向素子手段」は、上に説明したものである。
この光走査装置は1以上の光源を有するから、光源は1個であることも複数個であることもできる。光源が1個の場合には、この光源から放射された光束により、この光源に対応する1面の被走査面が光走査される。
【0044】
光源が複数個ある場合、各光源に対応して被走査面が設定され、各光源から放射された光束により、各光源に対応する被走査面が光走査される。この場合、各光源から対応する被走査面に至る光路上に配設される「走査光学系」は、光源・被走査面ごとに「独立したもの」であってもよいし、「一部が共用されるもの」であってもよい。
【0045】
上記請求項4記載の光走査装置において、液晶偏向素子手段を「副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した副走査液晶偏向素子列」とし、この副走査液晶偏向素子列を光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、光走査制御手段により、光走査ごとに、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正するように、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御することができる(請求項5)。即ち、この請求項5記載の光走査装置では、請求項2記載の光走査制御方法が実施される。
【0046】
上記請求項4または5記載の光走査装置において、液晶偏向素子手段もしくはその一部として「主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列」を光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、光走査制御手段により、光走査ごとに、主走査方向の走査特性である等速性を補正するように、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御することができる(請求項6)。即ち、この請求項6記載の光走査装置では、請求項3記載の光走査制御方法が実施される。
【0047】
上記「光走査制御手段」は、上記の如く、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正するために「液晶偏向素子手段を制御して、光走査に応じて光束を主走査方向及び/または副走査方向に偏向」させる制御を行う。
【0048】
光走査制御手段は、マイクロコンピュータあるいはCPUとして構成することができるが、光走査装置が組込まれる画像形成装置のシステム全体を制御するコントローラ(コンピュータ等)の機能の一部として設定することもできる。
【0049】
上記請求項4または5または6記載の光走査装置の液晶偏向素子手段が副走査液晶偏向素子列を有する場合、「走査結像光学系による結像光束の一部を、光束分離手段により分離して被走査面と略等価な検出面に導光し、検出面上における走査線の曲がり量を走査線曲がり検出手段により検出する」ようにできる(請求項7)。
【0050】
このように「走査線曲がり検出手段」により走査線曲がりを検出することにより、副走査液晶偏向素子列の各副走査液晶偏向素子における副走査方向の偏向量を「検出された走査線曲がり」に応じて調整することにより、走査線曲がりの適正な補正を行うことができる。
【0051】
上記「光束分離手段」としては、専用のもの(例えば、1〜2%の反射膜を形成した断面楔状の透明板)を用いることもできるが、副走査液晶偏向素子列を、走査結像光学系と被走査面との間の光路中に配置し、副走査液晶偏向素子列に入射する光束のうち、副走査液晶偏向素子列により反射される成分を検出面上において、走査線曲がり検出手段により検出することができる(請求項8)。即ち、この場合は、副走査液晶偏向素子列を「光束分離手段」として用いるのである。
【0052】
上記請求項7または8記載の光走査装置における「走査線曲がり検出手段」は、副走査液晶偏向素子列の「副走査液晶偏向素子数と同数個」の光センサを、各副走査液晶偏向素子と対応的に検出面上に配置し、光スポットの副走査方向の位置を検出するように構成することができる(請求項9)。
【0053】
光スポットの副走査方向の位置を検出する光センサとしては、長手方向を副走査方向に対応させたラインセンサ(CCDラインセンサ等)を用いることができる。また、位置センサやエリアセンサを用いることもできる。位置センサやエリアセンサを複数個、各副走査液晶偏向素子と対応的に検出面上に配置する場合は、走査線の曲がりの検出を行う際、光源を「検出面上の光スポット」が、各光センサの受光面の主走査方向中心位置となる時刻ごとに発光させるようにする。
【0054】
請求項7、8、9記載の光走査装置のように、走査線曲がりを検出するようにすると、前述した「樹脂材料による走査結像光学系」を用いるような場合、環境変動により走査線曲がりが経時的に変化しても、変化した走査線曲がりに応じて補正量を適応させることにより、常に適正な走査線曲がりの補正が可能になる。
【0055】
このように、環境変動による走査線曲がりの変動に対処できるようにするためには、光センサ群を支持する支持部材(支持された各光センサの受光面が、被走査面と略等価な検出面である)自体として、熱変形量の小さいものを用いることが好ましく、この場合、支持部材の材料として「熱膨張係数:1.0×10−5/℃以下」のものを用いることが好ましい(請求項10)。
【0056】
上には、「走査線の曲がり具合(「走査線の傾き具合」を含む)を検出し、その結果に基づいて走査線曲がり(「走査線の曲がり」を含む)を補正する場合を説明したが、検出面上における光スポットの主走査方向の位置を検出して、光走査の等速性を補正するようにすることもできる。この場合には、検出面上に配置する光センサとして、例えば「エリアセンサ」を用いることができる。
【0057】
走査結像光学系として、ガラスレンズ等「温・湿度変化により光学特性が実質的に変化しないもの」を用いる場合のように、走査特性が経時や環境変動で実質的に変動しないことが分かっている場合であれば、上記のような走査特性の検出を行うことなく、「予め測定により決定された走査特性を補正できるようなデータ(液晶偏向素子手段における各主・副走査液晶偏向素子の偏向量)」を、テーブルや演算式としてメモリに記憶させておき、これらのデータを用いて補正を行うようにすれば良い。
【0058】
上記請求項4〜10の任意の1に記載の光走査装置は、光源として複数の発光部を有するもの(合成プリズムを用いて複数の半導体レーザからの光束を合成させる方式のものや、半導体レーザアレイ等)を用い、光源から複数光束を放射して、被走査面を2以上の光スポットで光走査する「マルチビーム方式の光走査装置」とすることができる(請求項11)。
【0059】
上記請求項4〜11の任意の1に記載の光走査装置において、複数の光源を用い、各光源から「各光源に対応する被走査面」に至る光路を構成する走査光学系を「各光源からの光束の形成する光スポットによる走査線が、実質的に互いに平行となる」ように構成することができる(請求項12)。この場合、液晶偏向素子手段を「各光源ごとに設ける」ようにしても良い(請求項13)。
【0060】
上記請求項4〜12の任意の1に記載の光走査装置において、光源を複数とし、各光源から、これに対応する被走査面に至る光路を構成する走査光学系を互いに等価なものとし、走査光学系の1つを基準とし、他の走査光学系の光路中には液晶偏向素子手段を設け、これら他の走査光学系による走査特性を、基準となる走査光学系の走査特性に合わせるように補正することができる(請求項14)。補正される走査特性は「走査線曲がり及び/又は走査等速性」である。
【0061】
請求項14記載の光走査装置において、基準となる走査光学系の光路中に「液晶偏向素子手段に起因する他の走査光学系との光路差を補正するための透明板部材」を配置することができる(請求項15)。
【0062】
上記請求項14または15記載の光走査装置においては、走査光学系の走査結像光学系をレンズ系とし、基準となる走査光学系の上記レンズ系を熱膨張係数:1.0×10−5/℃以下の材質で形成することが好ましい。このようにすると、基準となる走査光学系に「温・湿度変化等による光学特性の変動が、実質的に生じない」ようにできるので、基準となる走査光学系の走査特性を基準として、他の走査光学系(樹脂材料で構成できる)の走査特性を合わせることができる。
【0063】
請求項12〜16の任意の1に記載の光走査装置のように、複数の光源を用いる場合、例えば光源の数を2個とし、各光源からの光束で互いに色の異なる画像を書込み、各画像を合成して2色画像とすることもできるが、光源の数を3もしくは4とし「各光源から放射される光束が、カラー画像を構成する各色成分の画像情報で変調される」ようにすることにより、カラー画像形成に供することができる。カラー画像を構成する各色成分とは、例えば、マゼンタ・シアン・イエローあるいは赤・緑・青(光源の数が3の場合)もしくはこれらと黒(光源の数が4である場合)である。
【0064】
この発明の画像形成装置は「感光媒体に光走査を行って、画像形成を行う画像形成装置」であって、感光媒体に光走査を行う光走査装置として、請求項4〜17の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする(請求項18)。
【0065】
感光媒体としては種々のものが可能である。例えば、感光媒体として「銀塩フィルム」を用いることができる。この場合、光走査による書込みで潜像が形成されるが、この潜像は通常の銀塩写真プロセスによる処理で可視化することができる。このような画像形成装置は「光製版装置」や、CTスキャン画像等を描画する「光描画装置」として実施できる。
【0066】
感光媒体としてはまた、光走査の際に光スポットの熱エネルギにより発色する発色媒体を用いることもでき、この場合には、光走査により直接に可視画像を形成できる。
【0067】
請求項18記載の画像形成装置はまた、光導電性の感光体を感光媒体として用いることができる(請求項19)。光導電性の感光体としては、酸化亜鉛紙のようにシート状のものを用いることもできるし、セレン感光体や有機光半導体等「ドラム状あるいはベルト状のもの」を用いることができる。
【0068】
このように光導電性の感光体を感光媒体として用いる場合には、感光体の均一帯電と、光走査装置による光走査により静電潜像が形成される。静電潜像は現像によりトナー画像として可視化される。トナー画像は、感光媒体が酸化亜鉛紙のようにシート状のものである場合は感光媒体上に直接的に定着され、感光媒体が繰り返し使用可能なものである場合には、転写紙やOHPシート(オーバヘッドプロジェクタ用のプラスチックシート)等のシート状記録媒体に転写・定着される。
【0069】
感光体からシート状記録媒体へのトナー画像の転写は、感光体からシート状記録媒体へ直接的に転写しても良いし、感光体から一旦中間転写ベルト等の中間転写媒体に転写した後、この中間転写媒体からシート状記録媒体へ転写するようにしてもよい。
【0070】
このような画像形成装置は、光プリンタや光プロッタ、デジタル複写機等として実施できる。
【0071】
上記請求項19記載の画像形成装置は、光走査装置を請求項17記載のものとし、各光源からの光束により光走査すべき被走査面の実体を成す「3もしくは4個の光導電性の感光体」を、互いに並列に配置した構成とすることができる(請求項20)。このような画像形成装置は周知の「タンデム式のカラー画像形成装置」として実施できる。
【0072】
請求項21記載の光走査装置は「カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を、光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置」である。
【0073】
「色成分画像」は、カラー画像を形成するための各色の成分画像である。
「カラー画像」は、フルカラー画像のみならず、2色画像、多色画像であることができる。フルカラー画像を形成する場合の各色成分画像は、フルカラー画像を色分解したときの色分解各色による画像で、これら重畳することにより「カラー画像」が形成され、具体的には、例えば、前述のマゼンタ、イエロー、シアン、黒の各色画像である。
【0074】
「光偏向走査手段」としては、ポリゴンミラー、回転2面鏡、回転単面鏡等、偏向反射面を回転させる方式のものや、ガルバノミラー等、偏向反射面を揺動させる方式のものを用いることができる。
【0075】
「各色成分画像に対応する被走査面」は、個々の色成分画像を光走査により書込まれる面であり、実体的には「光導電性の像担持体」である。被走査面は、色成分画像ごとに別個であることもできるし(例えば、前述の4ドラムタンデム方式の場合では、各感光体ドラムの感光面が別個の被走査面である)、単一の感光体ドラムの感光面を周方向において複数領域に分け、各領域を被走査面としてもよい(単一ドラムタンデム方式)。
【0076】
以下の説明において「走査線相互の位置ずれ」は、各被走査面に光走査により書込まれた走査線相互の「副走査方向における相対的なずれ」をいう。
【0077】
「走査線曲がり」は、前述の如く、直線となるべき走査線(光走査に伴う光スポットの変位軌跡)が曲線となることを言い、「走査線が、主走査方向に対して傾く」ことを前述の如く「走査線の傾き」と言い、「走査線曲がり」は前述したように「走査線の傾き」を含む。
【0078】
請求項21等に記載の光走査装置のように「走査線相互の位置ずれ」を問題とする場合は、走査線の傾きと同様に「走査線相互の位置ずれ」も「走査線曲がりの1態様」として考え、走査線曲がりが、その態様として「走査線相互の位置ずれ、走査線傾き」を含むものとする。
【0079】
請求項21記載の光走査装置は以下の点を特徴とする。
即ち、所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを「基準走査線曲がり」とし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、基準走査線曲がり略合致させるように、他の色成分画像を書きこむ光束の走査線曲がりを補正するための「走査線補正手段」を有する。
【0080】
「所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がり」は、所望の色成分画像を書込む光束の光走査により書込まれる走査線の曲がりである。
「他の色の成分画像」は上記「所望の色成分画像」以外の色成分画像である。
【0081】
前述の如く、走査線曲がりはその態様として「走査線相互の位置ずれ、走査線の傾き」を含むから、走査線補正手段が走査線曲がりを補正すると、他の色の成分画像を書込む光束の走査線曲がりは、走査線の傾きも含めて「基準走査線曲がり」と略同形状となり、なおかつ、各走査線曲がりと基準走査線曲がりの「副走査方向における走査線相互の位置ずれ」も補正される。ここに「他の色の成分画像を書込む光束の走査線曲がりは走査線の傾きも含めて、基準走査線曲がりと略同形状となる」は、その態様として、他の色の成分画像を書き込む1以上の光束の走査線曲がりが、走査線の傾きも含めて、基準走査線曲がりと同一形状となる場合を含む。
【0082】
「副走査方向の色ずれ」は、各色成分画像を書込む光束の走査線相互の位置ずれ・走査線曲がり・走査線の傾きを、それぞれゼロに近くなるように補正することで除去できることは明らかであるが、このような補正は実際上きわめて難しく、仮に一定の環境条件において「色ずれの無い状態」を達成できたとしても、温度変化等により環境が変化すると、上記状態が破綻して色ずれが発生する。
【0083】
一方「走査線曲がり」は、モノクロ画像で観察した場合、その影響を視認することは実際上できない。即ち、個々の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりは微弱であるが、各色成分画像が異なる色の可視像となった場合には、走査線曲がり相互の僅かな相対的なずれが、色調の変化として視認されるようになる。
【0084】
請求項21記載の光走査装置では、色成分画像(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、黒)のうちの「所望のもの」を書込む光束の走査線曲がりを基準とし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを「基準の走査線曲がり」に合わせることにより「走査線相互の相対的なずれ」を補正するので、各色成分画像ごとの「走査線曲がり」が相互に異なることに起因して生じる色ずれが有効に解消され、色調の変化を十分に抑えた色再現性の高い画像が得られる。
【0085】
走査線曲がり発生の原因の1に、プラスチックによる光学素子の焦線曲がりや形状曲がり(副走査方向への反りや、レンズ面母線の曲がり)があるが、プラスチックによる光学素子は、同じ加工プロセスで量産されるため「同程度・同方向の、焦線曲がり・形状の曲がり」を発生し易く、各色成分画像を書込む光束の走査線曲がりは互に大きく異なることが無いので、基準の走査線曲がりに合わせることは容易である。
【0086】
このようにすると、走査線相互の位置ずれ・走査線曲がり・走査線の傾きを、それぞれ、ゼロもしくはゼロに近くなるように補正する場合に比して、調整箇所・調整量も減るため、基準走査線曲がり自体は大きくても「色ずれ」を容易に解消できる。
尚、発明者らの研究によれば、走査線間の相対的なずれを30μm以下に抑えれば、色ずれが実際上目立たないカラー画像が得られる。
【0087】
上記請求項1記載の光走査装置が、カラー画像を構成する複数の色成分画像の1として黒色成分画像を含む場合、黒色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを「基準走査線曲がり」とすることができる(請求項22)。
【0088】
フルカラー画像は基本的には3原色、例えば、イエロー、マゼンタ、シアンの3色を色成分画像として合成可能であるが、フルカラー画像の鮮鋭性、文字画像の解像度を考慮すると上記3色の色成分画像に黒色成分画像を加えることが好ましい。しかし黒色は他の色に比してコントラストが高いため、「振動、温度変動などの外乱によるスポット径変動、光スポット位置変動の影響」が、画像形成されたカラー画像に現れやすい。
【0089】
請求項22記載の光走査装置のように、黒色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを「基準走査線曲がり」とすることにより、黒色成分画像を書込む光走査装置の各光学部品を剛性高く固定でき、外乱の影響を受け難くできる。
【0090】
上記請求項21または22記載の光走査装置に用いられる「走査線補正手段」は、独立して制御可能な液晶偏向素子を複数個、主走査方向へ配列してなり、走査線の曲がりを補正すべき偏向光束の光路中に配置され、光走査に応じて光束の副走査方向の調整偏向量を液晶偏向素子ごとに制御される「液晶偏向素子列手段」であることができる(請求項23)。
「液晶偏向素子列手段」については後述する。
【0091】
上記請求項23記載の光走査装置において、走査線の曲がりを補正すべき各偏向光束に対する液晶偏向素子列手段を「互いに一体化」できる(請求項24)。上記請求項21〜24の任意の1に記載の光走査装置は、「複数の光源装置から放射され、光偏向走査手段により偏向された各光束が、走査結像光学系を構成する光学素子の少なくとも1つを共通に透過する」ように構成できる(請求項25)。
【0092】
このようにすると、走査結像光学系に用いられるレンズの「製造ばらつきや温度変動による光学特性の変化」に起因する走査線の位置ずれ・走査線曲がり・走査線の傾きの変動を効果的に軽減できる。また、各色成分画像を書込む偏向光束が共通の光学素子を透過すると、走査線曲がり自体がある程度大きくても、各光束の走査線曲がりが「同程度のもの」となるので色ずれを抑制し易い。また、走査光学系の一部が共通化されることにより、光走査装置のコンパクト化が可能である。
【0093】
請求項26記載の画像形成装置は「カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行い、各被走査面に書込まれた各色成分画像により、シート状記録媒体上にカラー画像を形成する画像形成装置」であって、光走査装置として請求項21〜25の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする。
【0094】
「シート状記録媒体」は、最終的にカラー画像を担持するシート状の媒体であり、前述の「記録紙」や所謂「転写紙」あるいはオーバヘッドプロジェクタ用のプラスチックシート(OHPシート)等である。
【0095】
請求項25記載の画像形成装置は、カラー画像を形成できることは勿論であるが、例えば、所望の画像を所望の色成分画像として書込んで可視化することにより、所望の色のモノクロ画像として得ることもできるし、2色あるいは多色の画像を形成することもできる。このような画像形成装置は、カラー複写機、カラープリンタ、カラープロッタ、カラーファクシミリ装置等として実施できる。
【0096】
請求項26記載の画像形成装置は「画像形成プロセス開始後、画像形成プロセスの継続中に1回以上、走査線補正手段による走査線曲がりの補正を行う」ことが好ましい(請求項27)。
【0097】
画像形成プロセスを連続して行う場合、光走査装置内部では光偏向走査手段の偏向反射面を駆動するモータ(例えば「ポリゴンミラー用モータ」)や光源での発熱等により、光走査装置外部では、例えば画像を熱定着する定着部の発熱等により、画像形成装置内部の温度は急激に上昇する。
【0098】
走査結像光学系にプラスチックによる光学素子が含まれる場合、温度変化による光学特性の変化が生じ、被走査面上の光スポットの移動軌跡である走査線の曲がりも急激に変化する。この影響により色ずれが発生・変化し、1枚目から数枚目、数10枚目と次第に出力されるカラー画像の色合いが変化する。
【0099】
請求項27記載の画像形成装置のように、画像形成プロセス開始後、画像形成プロセスの継続中に1回以上、走査線補正手段により走査線曲がりを補正すれば、1枚目のカラー画像を出力してから、温度が激しく変動しても、少なくとも1回は補正できるため、色ずれを軽減できる。
【0100】
この請求項27記載の画像形成装置において、走査線補正手段による補正を「出力されるシート状記録媒体のシート間時間以内」で可能とし、制御時間:TA、シート間距離:D、シート状記録媒体の搬送速さ:Vが、条件:
TA<0.8×(D/V)
を満足することが好ましい(請求項28)。
【0101】
「シート間時間」は上記D/Vである。制御時間:TAは、走査線補正手段による補正の実行を開始してから補正のための制御を完了するまでの時間である。制御時間:TAが「0.8×(D/V)」を越えると、画像形成プロセスを連続して行いつつ走査線補正手段による補正を行った場合に、書込み工程中に制御が実行され、走査線が移動してカラー画像の画質が著しく劣化する虞があるため、一旦、画像形成プロセスを停止して補正動作を行う必要があり、タンデム式の持つ高速性のメリットを十分に生かせない。
【0102】
走査線補正手段として液晶偏向素子列手段を用いる場合、液晶偏向素子の偏向角が5分以下で、液晶偏向素子に入射する光束径が5mm以下であれば、上記条件式を満足させることが可能である。
【0103】
請求項26〜28の任意の1に記載の画像形成装置は、走査線相互のずれを検出する「走査線ずれ検出手段」を有し、走査線補正手段が、走査線ずれ検出手段の情報に基づいて補正を行うことが好ましい。
【0104】
「走査線相互のずれ」は、基準走査線曲がりと他の光束の走査線曲がりとの間の「形状差」および「副走査方向の相対的なずれ」である。
【0105】
走査線ずれ検出手段の検出時間:TS、シート状記録媒体の搬送方向の長さ:L、搬送速さ:Vは、条件:
TS<10×(L/V)
を満足することが好ましい(請求項29)。
【0106】
検出時間:TSは「走査線ずれ検出開始から検出完了までの時間」である。検出時間:TSは「補正量を演算する時間」も含んでいる。この演算は「ノイズ低減のための平均化、異常値処理などを行って検出精度を高め、走査線補正手段にフィードバックする補正量を算出する」演算である。
【0107】
上記条件が満足されると、カラー画像を10枚以上出力する場合、10枚が出力される間に走査線相互のずれ検出が行われ、走査線補正手段による補正が可能となるから、急激な温度変動を生じた場合でも、10枚以下の出力単位で走査線曲がりを補正して色ずれによる色調変化を軽減できる。
【0108】
請求項30記載の光走査方法は「光源側からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により被走査面に向かって集光させ、上記被走査面上に光スポットを形成し、この光スポットにより上記被走査面の光走査を行う光走査装置において、光スポットによる光走査を制御する方法」であって、以下の点を特徴とする。
【0109】
即ち、主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を、光源から被走査面に至る光路中に配置し、光走査に応じて光束の、主走査方向及び/または副走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する。
【0110】
そして「主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する必要が無いとき」には、液晶偏向素子手段による、光束の主走査方向および/または副走査方向への偏向を行うことなく、液晶偏向素子手段を透過させる。
【0111】
この請求項30記載の光走査制御方法において、液晶偏向素子手段として「副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した副走査液晶偏向素子列」を用い、この副走査液晶偏向素子列を「光偏向走査手段と被走査面との間の光路中」に配置し、光走査ごとに、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御することにより、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正し、副走査方向の走査特性を補正する必要が無いときには、液晶偏向素子手段による、光束の副走査方向への偏向を行うことなく、光束が、液晶偏向素子手段を素通りして透過するようにできる(請求項31)。
【0112】
請求項30または31記載の光走査制御方法においては、液晶偏向素子手段もしくはその一部として「主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列」を用い、この主走査液晶偏向素子列を、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、光走査ごとに、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向の走査特性である光走査の等速性を補正し、主走査方向の走査特性を補正する必要が無いときには、主走査液晶偏向素子列による、光束の主走査方向への偏向を行うことなく、光束が、主走査液晶偏向素子列を素通りして透過するようにできる(請求項32)。
【0113】
即ち、請求項30〜32に記載の光走査制御方法では、液晶偏向素子手段は用いるが、この液晶偏向素子手段による補正が不要な場合には、液晶偏向素子手段を不作動状態にし、光偏向走査手段により偏向された光束が、液晶偏向素子手段を素通りに透過するようにするのである。
【0114】
請求項33記載の光走査装置は、1以上の光源からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により、光源に応じた被走査面に向けて集光させて、被走査面上に光スポットを形成して光走査を行う光走査装置において、「主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段」を、光源からこの光源に対応する被走査面に至る光路の1以上に配置し、光走査制御手段による液晶偏向素子手段の制御により、光走査に応じて光束を主走査方向および/または副走査方向に偏向させ得るようにし、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を、必要に応じて補正する。
【0115】
請求項34記載の液晶偏向素子装置は、請求項33記載の光走査装置において「液晶偏向素子手段として、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置される液晶偏向素子装置」であって、副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向にアレイ配列した副走査液晶偏向素子列であり、光走査制御手段により制御され、光走査ごとに、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正するように、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御する装置である。
【0116】
請求項35記載の液晶偏向素子装置は、請求項33記載の光走査装置において「液晶偏向素子手段もしくはその一部として、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置される液晶偏向素子装置」であって、主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列であり、光走査制御手段により制御され、光走査ごとに、主走査方向の走査特性である等速性を補正するように、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御する装置である。
【0117】
請求項36記載の液晶偏向素子装置は、上記請求項34に記載の「副走査液晶偏向素子列」と、請求項35記載の「主走査液晶偏向素子列」とを、光偏向走査手段により偏向される光束の光路方向へ順次に配列したことを特徴とする。
【0118】
この請求項36記載の液晶偏向素子装置は「副走査液晶偏向素子列と、主走査液晶偏向素子列が一体化され」た構成とすることができる(請求項37)。
【0119】
請求項38記載の光走査装置は、請求項33記載の光走査装置において、請求項34または35または36または37記載の液晶偏向素子装置を有することを特徴とする。
【0120】
請求項39記載の液晶偏向素子列装置は「カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を、光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により、各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置において、所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、基準走査線曲がりと略合致させるように、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを補正するための走査線補正手段である液晶偏向素子列装置」であって、独立して制御可能な液晶偏向素子を複数個、主走査方向へ配列してなり、走査線の曲がりを補正すべき偏向光束の光路中に配置され、光走査に応じて光束の副走査方向の調整偏向量を液晶偏向素子ごとに制御されることを特徴とする。
【0121】
請求項39記載の液晶偏向素子列装置は「基準走査線曲がりを有する偏向光束を除いた他の偏向光束に対する液晶偏向素子列が、互いに一体化され」た構成とすることができる(請求項40)。
【0122】
この請求項40記載の液晶偏向素子列装置はまた「基準走査線曲がりを有する偏向光束が素通りする部分として一体化され」た構成とすることができる(請求項41)。
【0123】
請求項42記載の光走査装置は「カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を、光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により、上記各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置」において、所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、基準走査線曲がりと略合致させるように、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを補正するための走査線補正手段である液晶偏向素子列装置として、請求項39または40または41記載の液晶偏向素子列装置を有することを特徴とする。
【0124】
請求項43記載の画像形成装置は、感光媒体に光走査を行って、画像形成を行う画像形成装置において、感光媒体に光走査を行う光走査装置として、請求項33または38記載のものを有することを特徴とする。
【0125】
請求項43記載の画像形成装置は、感光媒体として前述の「銀塩フィルム」を用い、このような画像形成装置は「光製版装置」や、CTスキャン画像等を描画する「光描画装置」として実施できる。また、感光媒体として「光走査の際に光スポットの熱エネルギにより発色する発色媒体」を用いることもできるし、請求項19のように、光導電性の感光体を感光媒体として用いることができ、光プリンタや光プロッタ、デジタル複写機、ファクシミリ装置等として実施することもでき、請求項20記載の画像形成装置のように、各光源からの光束により光走査すべき被走査面の実体を成す「3もしくは4個の光導電性の感光体」を、互いに並列に配置したタンデム型の構成とすることができる。
【0126】
請求項44記載の画像形成装置は、カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により上記各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行い、各被走査面に書込まれた各色成分画像により、シート状記録媒体上にカラー画像を形成する画像形成装置において、光走査装置として請求項42記載のものを用いることを特徴とする。
【0127】
請求項44記載の画像形成装置も、カラー画像を形成できることは勿論であるが、例えば、所望の画像を所望の色成分画像として書込んで可視化することにより、所望の色のモノクロ画像として得ることもできるし、2色あるいは多色の画像を形成することもできる。このような画像形成装置は、カラー複写機、カラープリンタ、カラープロッタ、カラーファクシミリ装置等として実施できる。
【0128】
請求項44記載の画像形成装置も、請求項27記載の画像形成装置と同様に、「画像形成プロセス開始後、画像形成プロセスの継続中に1回以上、液晶偏向素子列装置による走査線曲がりの補正を行う」ことが好ましく、その場合、請求項28記載の画像形成装置と同じく、液晶偏向素子列装置による補正を「出力されるシート状記録媒体のシート間時間以内」で可能とし、制御時間:TA、シート間距離:D、シート状記録媒体の搬送速さ:Vが、条件:
TA<0.8×(D/V)
を満足することが好ましい。
【0129】
請求項44記載の画像形成装置はまた、請求項29記載の画像形成装置と同じく、走査線相互のずれを検出する「走査線ずれ検出手段」を有し、走査線補正手段が、走査線ずれ検出手段の情報に基づいて補正を行うことが好ましく、走査線ずれ検出手段の検出時間:TS、シート状記録媒体の搬送方向の長さ:L、搬送速さ:Vは、条件:
TS<10×(L/V)
を満足することが好ましい。
【0130】
ここで「液晶偏向素子」について簡単に説明する。液晶偏向素子は、電気的な信号で駆動されるものと、磁気的な信号で駆動されるものとが知られているが、以下では、電気的な信号で駆動されるものを例にとって説明する。
【0131】
電気的な信号による駆動で光束を偏向させる液晶偏向素子は、大別すると、電気信号により「屈折率を変化させる」ものと、電気信号により「回折作用を起こさせる」ものとの2種に分けられる。
【0132】
まず、屈折率の変化を利用する液晶偏向素子につき説明すると、この種のものは、例えば、前述の特許文献4に記載されている。1例を示すと、図1の如くである。
【0133】
図1(b)において、液晶1は「誘電異方性が正のネマチック液晶」であり、スペーサ3により所定間隙に保持された1対の透明配向膜2A、2B間に薄層状に密封されている。符号1Aで示すのは液晶分子で「分子軸方向に長い形状」である。配向膜2Aは、液晶分子1Aの分子軸が「配向膜表面に対して直交方向となる」ように配向処理され、配向膜2Bは、液晶分子1Aの分子軸が「配向膜表面に対して平行方向となる」ように配向処理されている。
【0134】
配向膜2Aの外側にはZnO等による透明な電気抵抗膜4が形成されている。透明な電気抵抗膜4、配向膜2A、2Bおよび液晶1は、図1(b)に示す如く、1対の透明なガラス基板5A、5Bにより挟持されている。ガラス基板5Bの、配向膜2B側の面にはITO等による透明な電極膜6が、一面に形成されている。
【0135】
一方、ガラス基板5Aの、配向膜2A側の面には、図1(a)に示すようなパターンの電極7A、7Bが形成され、これら電極7A、7Bは(b)に示す如く、電気抵抗膜4に接している。
【0136】
電極7A、7Bは、これらが「光束の透過領域にかかる場合」にはITO等により透明電極として形成されるが、電極7A、7Bが光束の透過領域にかからなければ(電極7A、7Bが光束を遮らなければ)金属薄膜等により不透明な電極として形成しても良い。図1の例では、電極7A、7Bは透明電極として形成されている。
【0137】
図1(b)の状態において、電極膜6と電極7Bを接地し、図1(a)に示す電極7A、7Bの端子A、B間に電圧:Vを印加すると、電気抵抗膜4の電位は、電極7Aの側から電極7Bの側へ直線的に低下する。このため、電気抵抗膜4と透明な電極膜6との間には「図1(b)の上方から下方へ向って直線的に減少する電界(向きは図の左右方向を向いている)」が作用する。
【0138】
この電界は液晶1に作用し、液晶分子1Aを「その分子軸が電界に平行になるよう」に回転させる。液晶分子1Aの回転角は「電界の強さに直線的に比例」するので、上記電界が作用すると、電極7Aの側では液晶分子1Aの分子軸は電界の方向(図の左右方向)に「より近く」なるが、電極7Bの側では電界が実質的に0であるので、液晶分子1Aの分子軸は「殆ど電極膜6に平行」のままである。
【0139】
液晶分子1Aの誘電率は、分子軸に平行な方向において大きく、分子軸に直交する方向において小さい。このため、屈折率は分子軸に平行な方向において「より大きく」なる。上記電界の作用により、上述の如き「液晶分子1Aの、分子軸の向きの分布」が生じると、液晶1における「屈折率」は、分子軸が電界に略平行となる電極7Aの側で高く、電極7Bの側では低くなり、図1(c)に示すように電極7Aの側から電極7Bの側へ直線的に減少する。
【0140】
従って、このような屈折率分布が生じている液晶偏向素子に、図1(b)の右側から光束を入射させて液晶偏向素子を透過させると、透過光束は屈折率分布の作用により、屈折率の高い側(図1(b)で上方)へ曲がる。
【0141】
接地する電極を電極7Bから7Aに変えて、端子A、B間に印加する電圧の向きを上記と逆にすれば、図1の場合と逆に、電極7Bの側から電極7Aの側へ向かって減少する屈折率分布が得られ、透過光束を図1の下方へ偏向させることができる。
【0142】
以上が、屈折率変化を利用した液晶偏向素子による光束偏向の原理である。 偏向の程度である偏向量、即ち「偏向角」は、液晶偏向素子に固有の値で飽和し、飽和するとそれより大きな偏向角は生じない。液晶偏向素子を駆動する電気信号として「直流電圧」を用いても良いが、液晶偏向素子の寿命の面から考えると、電気信号は「パルス状または正弦波状に変調された信号で、平均電圧が0V近傍であるもの」が好ましい。偏向角を変化させるには、端子A、B間の電位差:Vの増減によって行うこともできるが、上記パルス信号を駆動信号とする場合は「パルスのデュ−ティ比」を変えることによっても行うことができる。
【0143】
図2は「電気信号により屈折率を変化させる方式の液晶偏向素子」の別例である。繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われるものについては図1におけると同一の符号を用いた。この素子は図1の素子の変形例であり、図1の素子との差異は、ガラス基板5Aの側において、透明な電気抵抗膜を3つの部分4A、4B、4Cに分割し、透明電極を図2(a)の如くにパターニングし、電気抵抗膜4Aに電極7A1と7B1が対応し、電気抵抗膜4Bに電極7A2と7B2が対応し、電気抵抗膜4Cに電極7A3と7B3が対応するようにした。
【0144】
端子Aと端子Bとの間に駆動信号を印加すると、図2(c)の如き屈折率分布が得られる。この場合、端子A、Bに印加する電圧:Vに対する電界の変化率が大きくなるので、図1の素子に比してより「大きな屈折率勾配」が得られ、より大きな偏向角(偏向量)を得ることができる。
【0145】
図3は、液晶偏向素子の別の例を示している。この液晶偏向素子は「電気信号により回折作用を起こさせるもの」である。この型の液晶偏向素子は、例えば、特許文献5に詳しく記載されている。図3においても、繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われるものについては、図1におけると同一の符号を用いた。
【0146】
図3(a)において、液晶1は例えば「液晶分子1Aの分子軸方向の誘電率が、分子軸に直交する方向の誘電率よりも小さい、誘電異方性が負のネマチック液晶」であり、スペーサ3により所定間隙に保持された1対の透明配向膜2A、2Bの間に薄層状に密封されている。
【0147】
配向膜2A、2Bは、透明電極6Aを有するガラス基板5Aと、透明電極6Bを有するガラス基板5Bとにより挟持されている。透明電極6A、6BはITO等で薄膜状に形成され、それぞれガラス基板5A、5Bの面に所定の形状(例えば矩形形状)で一様に形成されている。
【0148】
配向膜2A、2Bは、液晶1の液晶分子1Aの分子軸方向が図面に直交する方向となるように液晶1に対する配向を行う。
このような状況で、透明電極6A、6B間に「直流もしくは300Hz程度以下の低周波の電圧」を印加させると、液晶1内に、図の上下方向(前記「配向方向」と直交する方向)を格子配列方向とする回折格子パターンが形成される(特許文献5の段落「0054」)。図3(b)は、このように形成された回折格子パターンにおける屈折率分布である。
【0149】
この状態で、光束を液晶偏向素子に入射させると、透過光は上記回折格子パターンにより(図3(a)の上下方向に)回折光を生じる。上記低周波の電圧の電圧値を変化させると、形成される回折格子パターンの格子ピッチが変化し、回折角が変化する(特許文献5の段落「0057」)。
【0150】
従って、例えば上記回折の±1次光に着目すれば、これら1次光の偏向角を調整することにより、光束を所定方向(上に説明した場合では、図1(a)の上下方向)に所望の偏向角で偏向させることができる。
【0151】
また、図3の上記液晶偏向素子における透明電極6A、6B間に印加する電圧を高周波電圧にすると、液晶1の配向方向に直交する方向の回折格子パターンが現れ、図3(a)の図面に直交する方向の回折光を得ることができる。この場合は、液晶に印加する高周波電圧の「包絡電圧」を増減させることにより、回折角を変化させることができる(特許文献5の段落「0060」)。
【0152】
以上、従来から知られた「電気信号により光束を偏向させるタイプの液晶偏向素子」につき簡単に説明した。
【0153】
この発明は、これら公知の液晶偏向素子(電気信号により駆動するものに限らず、上には説明しなかったが、公知の磁気信号により駆動するものでもよい)を用い、光束の偏向により光走査における走査特性の補正や、走査線の傾き、走査線位置ずれを態様として含む走査線曲がりの補正を行うのである。
【0154】
液晶偏向素子は、これを光偏向走査手段より光源側に設ける方法と、光偏向走査手段よりも被走査面側に設ける方法が考えられる。前者は後者に比して、液晶偏向素子を小型化でき低コスト化に有利であるが、走査線曲がりを補正するには、走査周波数に対して十分速い速度で偏向駆動させる必要がある。
【0155】
一般に液晶偏向素子は、偏向角が大きいほど応答速度が遅く(偏向角の略2乗に比例して遅い)、高速補正が難しいため光偏向走査手段よりも光源側に設ける場合は、この点を考慮する必要がある。
【0156】
液晶偏向素子を光偏向走査手段よりも被走査面側に設ける場合は、走査線の補正量は1度設定すれば比較的長時間その値が保持されるし、補正を行うのに必要な時間も、例えば上記「0.8×(D/V)」より短ければ良く、偏向角の可変量幅が5分以内であれば、約0.1Sec以下での高速応答が可能であるから、補正動作に要する応答速さとしては十分である。
【0157】
この点を考慮して、請求項23記載の光走査装置では走査線補正手段として、上述した「独立して制御可能な液晶偏向素子を複数個、主走査方向へ配列してなり、走査線の曲がりを補正すべき偏向光束の光路中に配置され、光走査に応じて光束の副走査方向の調整偏向量を液晶偏向素子ごとに制御される液晶偏向素子列手段」を用いるのである。
【0158】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を説明する。
図4は画像形成装置の実施の1形態を示している。
図4の画像形成装置は、光導電性の感光体を感光媒体とし、カラー画像を形成するためのものである。
【0159】
形成されるべきカラー画像は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の4色の成分画像を形成し、これら成分画像を同一のシート状記録媒体上で重ね合せることにより得られる。
【0160】
この種のカラー画像形成装置の基本的な構成は従来から公知であるので、図4には、発明の説明に必要な部分のみを示した。
符号11Y、11M、11C、11Kはそれぞれ光源装置であって、半導体レーザを光源とし、各々平行光束化したレーザ光束を放射する。この実施の形態において、各光源装置に用いられている光源は半導体レーザアレイであって、2つの半導体レーザ発光部が所定の間隔で(副走査方向に)配置されている。したがって、各光源装置からは2本の平行光束が射出することになる。
【0161】
光源装置11Yはイエロー成分画像を書込むためのものである。
光源装置11Yの各発光部をイエロー成分画像の画像情報で駆動すると、イエロー成分画像情報で強度変調された2本の平行光束が放射される。これら光束はシリンドリカルレンズ12Yで副走査方向にのみ集光され、反射鏡13により反射され、ポリゴンミラー15Bの偏向反射面位置に、各々「主走査方向に長い線像」として集光する。
【0162】
ポリゴンミラー15Bの偏向反射面により反射された2光束はそれぞれ偏向光束となって走査結像光学系であるfθレンズを構成するレンズ16A2、16B2を透過し、光路折曲げミラー18Y、19Yに順次反射され、上記fθレンズの作用により、光導電性の感光体20Y上に、副走査方向に互いに分離した2つの光スポットを形成する。
【0163】
これら光スポットは、ポリゴンミラー15Bの等速回転に伴ない、被走査面の実体をなす感光体20Yを2走査線同時にマルチビーム走査(主走査)する。このときの各光スポットの移動速さはfθレンズの作用により等速化される。
【0164】
感光体20Yは円筒状に形成され、光走査に先だって周面を均一帯電されて矢印方向へ等速回転する。感光体20Yの等速回転に伴ない副走査が行われ、感光体20Yにイエロー成分画像に対する「イエロー潜像」が静電潜像として形成される。
【0165】
光源装置11Mはマゼンタ成分画像を書きこむためのものである。
光源装置11Mの各発光部をマゼンタ成分画像の画像情報で駆動すると、マゼンタ成分画像情報で強度変調された2本の平行光束が放射される。これら光束はシリンドリカルレンズ12Mで副走査方向にのみ集光され、ポリゴンミラー15A(ポリゴンミラー15Bと同じもので、ポリゴンミラー15Bと共通の軸に設けられ、ポリゴンミラー15Bと一体となって回転される。ポリゴンミラー15A、15Bとこれらを回転駆動する(図示されない)モータは「光偏向走査手段15」を構成する)の偏向反射面位置に各々「主走査方向に長い線像」として集光する。
【0166】
ポリゴンミラー15Aの偏向反射面により反射された2光束はそれぞれ偏向光束となって、走査結像光学系であるfθレンズを構成するレンズ16A1、16B1を透過し、光路折曲げミラー18M、19Mに順次反射され、上記fθレンズの作用により、光導電性の感光体20M上に、副走査方向に互いに分離した2つの光スポットを形成する。
【0167】
これら光スポットはポリゴンミラー15Aの等速回転に伴ない被走査面の実体をなす感光体20Mを、2走査線同時にマルチビーム走査(主走査)する。このときの各光スポットの移動速さはfθレンズの作用により等速化される。感光体20Mは円筒状に形成され、光走査に先だって周面を均一帯電されて矢印方向へ等速回転する。感光体20Mのこの回転により副走査が行われ、感光体20Mにマゼンタ成分画像に対する「マゼンタ潜像」が静電潜像として形成される。
【0168】
光源装置11Cはシアン成分画像を書きこむためのものである。
光源装置11Cの各発光部をシアン成分画像の画像情報で駆動すると、シアン成分画像情報で強度変調された2本の平行光束が放射される。これら光束はシリンドリカルレンズ12Cで副走査方向にのみ集光され、ポリゴンミラー15Aの偏向反射面位置に各々「主走査方向に長い線像」として集光する。
【0169】
ポリゴンミラー15Aの偏向反射面により反射された2光束は、それぞれ偏向光束となる。そして、ポリゴンミラー15Aに関して「マゼンタ成分画像書込み用の光学系と略対称的」に配置された、一部図示されない光学系(fθレンズの一部を構成するレンズ17A1が図示されている)を介して光導電性の感光体20C上に導光され、副走査方向に互いに分離した2つの光スポットを形成する。
【0170】
これら光スポットはポリゴンミラー15Aの等速回転に伴ない被走査面の実体をなす感光体20Cを2走査線同時にマルチビーム走査(主走査)する。このときの各光スポットの移動速さは、fθレンズの作用により等速化される。感光体20Cは円筒状に形成され、光走査に先だって周面を均一帯電されて矢印方向へ等速回転する。感光体20Cのこの回転により副走査が行われ、感光体20Cにシアン成分画像に対する「シアン潜像」が静電潜像として形成される。
【0171】
光源装置11Kは黒成分画像を書きこむためのものである。
光源装置11Kの各発光部を黒成分画像の画像情報で駆動すると、黒成分画像情報で強度変調された2本の平行光束が放射される。これら光束はシリンドリカルレンズ12Kで副走査方向にのみ集光され、反射鏡14により反射され、ポリゴンミラー15Bの偏向反射面位置に各々「主走査方向に長い線像」として集光する。
【0172】
ポリゴンミラー15Bの偏向反射面により反射された2光束は、それぞれ偏向光束となる。そして、ポリゴンミラー15Bに関して「イエロー成分画像書込み用の光学系と略対称的」に配置された、一部図示されない光学系(fθレンズの一部を構成するレンズ17A2が図示されている)を介して、図示されない光導電性の感光体(感光体20Y〜20Cと同様のもので、これらと軸を平行にして配設されている)上に導光され副走査方向に互いに分離した2つの光スポットを形成する。
【0173】
これら光スポットはポリゴンミラー15Bの等速回転に伴ない、被走査面の実体をなす感光体(不図示)を、2走査線同時にマルチビーム走査(主走査)する。このときの各光スポットの移動速さは、fθレンズの作用により等速化される。この感光体も、光走査に先だって周面を均一帯電されて、他の感光体と同方向へ等速回転する。感光体の回転により副走査が行われ、上記図示されない感光体に黒成分画像に対する「黒潜像」が静電潜像として形成される。
【0174】
このようにして各感光体に形成されたイエロー潜像・マゼンタ潜像・シアン潜像・黒潜像はそれぞれ、図示されない現像装置により現像され、イエロー・マゼンタ・シアン・黒のトナー画像となる。
【0175】
これら、各色トナー画像は、図示されない同一のシート状記録媒体(例えば転写紙)上に、互いに位置合わせして重ね合せられ「カラー画像」となり、図示されない定着装置によりシート状記録媒体に定着される。カラー画像を定着されたシート状記録媒体は画像形成装置外へ排出される。
【0176】
上記各色トナー画像のシート状記録媒体への転写は「公知の種々の方法」で行うことができる。例えば、特開2001−228416号公報の図1に示された例のように、感光体20Y〜20K(感光体20Kは図4に図示されていない)に接するように「無端ベルト状の中間転写ベルト」を設け、中間転写ベルトの内周面側において、各感光体に対応する部分に転写手段(転写チャージャ等)を設け、中間転写ベルトを定速回転させつつ、各感光体に対応する部位において、対応する転写手段の作用によりトナー画像を順次、互いに重なり合うように転写して転写ベルト上にカラー画像を得、転写ベルト上からシート状記録媒体へ転写するようにできる。
【0177】
あるいは、上記転写ベルトに変えて「無端ベルト状の搬送ベルト」を、感光体20Y〜20K(感光体20Kは図4に図示されていない)に接するように設け、搬送ベルトの内周面側において、各感光体に対応する部分に転写チャージャ等の転写手段を設け、搬送ベルトに支持させたシート状記録媒体をして、順次の転写部を通過せしめ、各感光体に対応する転写部において、対応する転写手段の作用によりトナー画像を順次、互いに重なり合うように転写するようにもできる。
【0178】
上に説明した図4のカラー画像形成装置において、各感光体の光走査であるマルチビーム走査は、2つの光スポットが隣接する走査線を光走査する「線順次方式」で行っても良いし、1以上の走査線を飛び越して走査する「飛び越し走査方式」で行っても良い。上には2走査線を同時に光走査する場合を説明したが、光源における発光源の数を3以上として、同時に3以上の走査線を同時に光走査するようにできることは言うまでも無い。勿論、各感光体を単一の光スポットで光走査する「シングルビーム走査」を行うことも可能である。
【0179】
なお、各マルチビーム走査において「同一感光体を同時に光走査する各光スポットの移動軌跡、即ち走査線曲がりは、相互に実質的に同一」である。
【0180】
図4に示す実施の形態では、各fθレンズは何れも樹脂材料で形成され、イエロー潜像書込み用のfθレンズを構成するレンズ16A1、16B1はそれぞれ、マゼンタ潜像書込み用のfθレンズを構成するレンズ16A2、16B2と一体成形で形成されている。レンズ16A1と16A2、レンズ16B1と16B2は、これらを互いに別体に形成して相互に貼り合わせても良いが、上記の如く一体成形で形成するようにすると、別体のレンズを貼り合わせる構成とするよりも低コストで実現できる。
【0181】
シアン潜像書込み用のfθレンズおよび黒潜像書込み用のfθレンズも同様である。
【0182】
これらfθレンズを樹脂材料で構成したことに伴ない、fθレンズの光学特性は温・湿度変化により変化し、走査線曲がりや等速性も変動する。このうち、走査線曲がりの補正は以下のように行われる。
【0183】
図4において、符号21Yは「液晶偏向素子手段」を示している。液晶偏向素子手段21Yは、長手方向を主走査方向に平行にして、光路折曲げミラー18Yと19Yの間の光路上に設けられている。また、符号22Yは「走査線曲がり検出手段」を示している。走査線曲がり検出手段22Yも長手方向を主走査方向と平行にして設けられている。
【0184】
液晶偏向素子手段21Yは若干「副走査方向に傾け」て配置され、このため、光路折曲げミラー18Yから液晶偏向素子手段21Yに入射する偏向光束の一部は、液晶偏向素子手段21Yの入射側のガラス基板面で反射される。
【0185】
走査線曲がり検出手段22Yは、その受光部を「液晶偏向素子手段21Yによる反射偏向光束部分LYが光スポットを形成する検出面(被走査面である感光体20Yの光走査される面部分と光学的に略等価な面である)」の位置に合致させて配置されており、上記反射偏向光束部分LYを受光する。
【0186】
走査線曲がり検出手段22Yの出力は「光走査制御手段」としてコンピュータ等で構成されたコントローラ23に入力される。コントローラ23は、走査線曲がり検出手段22Yからの入力に基づき、感光体20Y上における「走査線曲がり」を特定し、特定された走査線曲がりを補正するのに必要な補正信号を生成して、液晶偏向素子手段21Yに入力する。そして、液晶偏向素子手段21Yにより感光体20Yに対する走査線曲がりが補正される。
【0187】
図の繁雑を避けるために図4には示されていないが、液晶偏向素子手段21Yと走査線曲がり検出手段22Yと同様の「液晶偏向素子手段と走査線曲がり検出手段との対」が、各感光体20M、20C、20K(図4に図示されていない)を光走査する偏向光束の各光路中に配置されており、これらの「対」における各走査線曲がり検出手段の出力もコントローラ23に入力され、コントローラ23は入力情報に基づき、対応する液晶偏向素子手段を制御して各感光体に対する走査線曲がりを補正する。
【0188】
このように、図4の実施の形態では、各感光体ごとにこれを光走査する光スポットの走査線曲がりが検出されるので、fθレンズにおける経時や環境変動に起因する「走査線曲がりの変動」が生じても、常に適正な走査線曲がり補正を行うことができる。
【0189】
走査線曲がりの検出は例えば、カラー画像形成プロセスを行うたびに、画像形成プロセスに先だって行うようにしても良いし、1日1回、あるいは3日に1回の割合というように「一定の期間ごと」に行ってもよく、また、カラー画像形成プロセスが連続して繰り返される場合には、各プロセスごと、あるいは複数回プロセスごとに行うことにより、連続画像形成プロセスによる機内温度上昇に起因する走査線曲がりの変動に対処するようにできる。
【0190】
図5を参照し、図4における感光体20Yに対する走査線曲がりの補正を例にとって説明する。
図5(a)において「左右方向は主走査方向」で、符号21Yは「液晶偏向素子手段」を示している。液晶偏向素子手段21Yは「副走査液晶偏向素子列」で、副走査方向(図5(a)における上下方向)を偏向方向とする、複数個(図の例では10個)の副走査液晶偏向素子を主走査方向(図の左右方向)に、互いに密接して連続的に配列してなる。先に説明したように、液晶偏向素子は電気的もしくは磁気的な駆動信号に応じて透過光束を偏向させる機能を持ち、その偏向方向は任意に設定できる。また、この例において、液晶偏向素子Liは「互いに同サイズ」で等ピッチに配列されている。
【0191】
各副走査液晶偏向素子は「液晶偏向素子Liとこれらを駆動するドライバ回路Di(i=1〜10)」により構成され、各ドライバ回路Diはコントローラ23により制御されるようになっている。液晶偏向素子Liは、例えば、図1に即して説明した如きもの(電気信号で駆動されるもの)である。
【0192】
図1を参照して若干補足すると、図5(a)における個々の液晶偏向素子Liは、対応するドライバ回路Diにより、個別独立に駆動されるが、この例において、図1に示す「液晶とこれを挟持する配向膜、さらに透明電極6」は互いに共通している。そして、図1に示す「駆動電圧を印加される電極7A、7Bとこれらを連結する透明抵抗膜4の部分」が、各液晶偏向素子Li(i=1〜10)ごとに独立している。
【0193】
一方、図4に示した、走査線曲がり検出手段22Yの、受光側の面には、図5(b)に示すように、副走査液晶偏向素子列を構成する副走査液晶偏向素子数と同数の光センサP1〜P10の受光面が主走査方向に配列している。これら受光面は、副走査液晶偏向素子列21Yにおける各液晶偏向素子Liと対応し、光センサPiの中心で光スポットが検出されるとき、この光スポットを形成する偏向光束が「対応する液晶偏向素子Liの中心」を通るようになっている。なお、図5(b)における領域RYは、感光体20Yにおける「有効書込幅に対応する領域」である。
【0194】
走査線曲がり検出手段22Yの各光センサPiは、入射光束の光スポットの、副走査方向(図5(b)の上下方向)の位置を検出するようになっている。
【0195】
光センサPiは固定板22Sに固定的に設けられているが、固定板22Sは熱膨張率:1.0×10−5/℃以下の材質、具体的には、ガラス(熱膨張率0.5×10−5/℃)、セラミック材質(アルミナ(熱膨張率):0.7×10−5/℃、炭化珪素(熱膨張率):0.4×10−5/℃)等からなり、温度変動による影響(光センサPiの受光面位置の移動、相対位置関係の変動により正確な検出が妨げられる)を実質的になくしている。
【0196】
また、光センサPi相互間に発生する電気ノイズの影響をなくすために、固定板22Sの材質は上記の如き「非導電性材料」が好適である。例えば、固定板22Sを、熱膨張率:2.4×10−5/℃のアルミ合金で形成した場合は、温度変動により走査線曲がり検出精度が劣化する。
【0197】
走査線曲がり検出と走査線曲がり補正とは以下の手順で行われる。
図4において、カラー画像形成プロセスを行うに先立って、光偏向走査手段15を回転させ、光源11Yにおける一つの発光源を発光させる。このとき、発光源の発光は時間的に間欠的に行い、各発光ごとに液晶偏向素子手段21Yにより反射された光束LYの光スポットが、走査線曲がり検出手段22Yの各光センサP1〜D10に順次に入射するようにする。
【0198】
走査線曲がり検出手段22Yは、各光センサPi(i=1〜10)が検出する光スポットの「副走査方向の位置」をコントローラ23に向けて出力する。図5(c)において「10個の黒丸」が、このようにして検出された副走査方向の位置を示している。この図における破線は「理想上の走査線」で、主走査方向に直線的である。
【0199】
コントローラ23は、このように検出された10個の「副走査方向の光スポット位置」に基づき、最小2乗法等により、走査線の形態を「多項式」として近似する。この多項式が「検出された走査線曲がり」であり、これを図5(c)に実線で示す。
【0200】
コントローラ23は次いで、このような走査線曲がりを補正するために、液晶偏向素子手段(副走査液晶偏向素子列)21Yの、各液晶偏向素子Liにおける副走査方向の光束偏向の向きと偏向量(偏向角)とを算出する。図5(c)における領域Si(i=1〜10)は、副走査液晶偏向素子列21Yにおける液晶偏向素子Liが、偏向光束を偏向させるべき走査領域を示し、各領域Siにおける上向き若しくは下向きの矢印は「偏向の向き」を表している。
【0201】
コントローラ23は、各液晶偏向素子Liに上記「偏向の向きと偏向量」とを実現するべき信号を決定し、ドライバ回路Di(i=1〜10)に印加する。この例では、各液晶偏向素子Liにおける「偏向の向き」を(図1における「端子A、B間に印加する電圧の向き」により)制御し、この電圧をパルス電圧として印加し、パルス電圧のデュ−ティ比を調整することにより「偏向量」を制御する。
【0202】
このようにして、カラー画像形成プロセスの開始される以前に、副走査液晶偏向素子列21Yにおける各液晶偏向素子Liにおける偏向の向きと偏光量とを、副走査液晶偏向素子列21Yに実現する。図4において、他の感光体20M、20C等に関して用いられる「走査線曲がり検出手段・液晶偏向素子手段の対」においても同様である。
【0203】
上記「走査線曲がり補正」において、各液晶偏向素子Liにより制御される偏向量は、変更が必要となるまでは、同じ値が用いられる。即ち、偏向量が変更される必要が生じるまでは、各液晶偏向素子Liは、各光走査ごとに、同じ偏向量で偏向光束を偏向して走査線曲がりを補正する。
【0204】
勿論、ある感光体を光走査する光スポットについて検出された走査線曲がりが「補正を必要としない程度に微小」である場合には、対応する液晶偏向素子手段による走査線曲がりの補正を行う必要は無く、この場合は、上記液晶偏向素子手段が「偏向光束を偏向させることなく透過させる(駆動信号を0とする)」ようにすれば良い。
【0205】
この状態で各感光体に対して光走査(マルチビーム走査)を実行することにより、各感光体に対し「走査線曲がりを補正した状態」で光走査を実行できる。各感光体に対する光走査は、マルチビーム走査であるが、前述したように、各マルチビーム走査において「同一感光体を同時に光走査する各光スポットの、走査線の曲がり具合は相互に実質的に同一」であるので、上記の如くして各光スポットの走査線曲がりを補正できる。
【0206】
図5(d)は、補正された走査線の状態を示している。Yi(i=1〜10)は、感光体20Yの走査領域における「各液晶偏向素子Liが補正を担当する部分(補正担当領域)」を示している。
【0207】
実線で示す走査線は、若干「ギクシャク」しているように見えるが、これは図5(c)において、走査線曲がりを「極端に強調」して描いたことに起因する。現実の走査線曲がりは最大の場合でも、0.1〜0.2mm程度であるので、例えば、1個の液晶偏向素子Liが「30mmの走査領域」を担当するものとしても、実質的に直線状態の走査線を実現できる。
【0208】
液晶偏向素子列手段における液晶偏向素子Liの数を更に増やし、液晶偏向素子Liの「補正担当領域」を小さくすることにより走査線曲がりを「より精緻」に補正できることは当然である。
【0209】
特に、液晶偏向素子列手段における液晶偏向素子Liの主走査方向の幅を十分に小さく(例えば2〜5mm程度)することにより、隣接する液晶偏向素子間の偏向量変化を「実質的に連続的な変化」と見なし得るようにでき、走査線を「実質的に連続した直線」に補正することもできる。
【0210】
走査線曲がりの他の形態である「走査線の傾き」や「走査線の位置ずれ」も、上記と同様にして補正できることは容易に理解されよう。
【0211】
また走査結像光学系(fθレンズ)の特性により、温度変動などで走査位置ずれが発生しやすい箇所で、液晶偏向素子の主走査方向サイズを小さくして配列数を増やし、それ以外の箇所では液晶偏向素子の主走査方向のサイズを大きく、配列数を小さくすることにより、全体としての液晶偏向素子の配列数を増加させること無く、従って「走査線曲がり検出手段における光センサ数を必要以上に多くすること無く」適性な走査線曲がり補正を実行できる。
【0212】
図4のカラー画像形成装置では、上記の如くして「各感光体ごとに、光走査における走査線曲がり」が補正されているので、各感光体における走査線の不一致に起因する前記「副走査方向の色ずれ」の現象を有効に軽減し、実質的に副走査方向の色ずれのない良好なカラー画像を得ることができる。
【0213】
上に説明した実施の形態においては、液晶偏向素子手段が副走査液晶偏向素子列を有し、走査結像光学系(fθレンズ)による結像光束の一部を、走査線曲がり検出手段で検出しているが、「走査結像光学系による結像光束の一部を分離して、被走査面と略等価な検出面に導光する光束分離手段」としては、液晶偏向素子手段自体を用い、これを結像光束に対して傾けることにより、入射側のガラス基板での反射光束を検出面に導光するようにした。
【0214】
このようにする代わりに、例えば、1〜2%程度の反射率を持つ「半透膜」を持つプリズム等を「専用の光束分離手段」として用い、これを結像光束の光路上に配置して光束分離を行うようにしても良い。
【0215】
あるいは、上記実施の形態の場合におけるように、液晶偏向素子手段自体を光束分離手段として用いる場合においても、図6(a)に示すように、液晶を封入するためのスペーサ3A、3Bの大きさを異ならせることにより、ガラス基板5a(透明電極や透明抵抗膜、配向膜が形成されている)とガラス基板5b(透明電極や配向膜が形成されている)とに角度を持たせるようにすれば、液晶偏向素子手段自体を傾けなくても、ガラス基板5aの傾きにより「検出面へ導光させる反射光束」を得ることができる。
【0216】
上に説明した実施の形態では、液晶偏向素子手段として「副走査液晶偏向素子列」を用い、走査線曲がりの補正を行った。「走査特性」は副走査方向については走査線曲がりであるが、主走査方向に関しては光走査の等速性である。前述の如く、光走査の等速性が完全でないと、形成された画像に主走査方向の歪みが生じ、各色成分画像を合成してカラー画像を形成する場合、色成分画像相互の主走査方向の歪みが互いにずれると、主走査方向にも色ずれの問題が発生する。
【0217】
このような場合、前記実施の形態における走査線曲がり検出手段における各光センサとしてエリアセンサ等を用いることにより、各光センサの位置における光スポットの主走査方向の位置を検出すれば、その結果により光走査の等速性の不完全さを知ることができる。このような等速性検出手段は、図5(b)における光センサPiをエリアセンサとしたものとすればよく、走査線曲がり検出手段を兼ねることができる。
【0218】
光走査の等速性の不完全さを補正するには「主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列(図5(a)に示す各液晶偏向素子Liの、偏向方向を主走査方向に設定したもの)」を用い、上述の走査線曲がりの補正と同様にして、偏向光束を主走査方向に「偏向調整」すれば良い。
【0219】
上記走査線曲がり検出手段に代えて、あるいは走査線曲がり検出手段を兼ねた「等速性検出手段」を用い、上記副走査液晶偏向素子列に代えて主走査液晶偏向素子列を用いることにより「光走査の等速性の不完全さ」を補正できる。
【0220】
また、上記走査線曲がり検出手段を兼ねた等速性検出手段により「走査線曲がり」と「等速性の不完全さ」とを検出し、副走査液晶偏向素子列と主走査液晶偏向素子列とを併用することにより、走査線曲がり補正と等速性補正とを同時に行うこともできる。
【0221】
この場合、主走査液晶偏向素子列と副走査液晶偏向素子列とは、結像光束の光路中に別個に配置しても良いが、図6(b)に示すように、副走査液晶偏向素子列21Aと主走査液晶偏向素子列21B(副走査液晶偏向素子・主走査液晶偏向素子は、各素子列21A、21Bとも、図面に直交する方向である主走査方向へ配列されている)とを、光束透過方向(図の左右方向)に重ね合せて一体化した「液晶偏向素子手段」を用い、この液晶偏向素子手段により走査線曲がり補正と等速性補正とを行うようにすることもできる。
【0222】
図7に、画像形成装置の実施の別形態を示す。この画像形成装置も、図4に示すものと同様「タンデム式のカラー画像形成装置」である。
【0223】
符号51、52はポリゴンミラーを示す。これらポリゴンミラー51、52は同一形状のものであって、共通の軸に固定的に設けられ、一体として回転するようになっており、図示されない駆動手段と共に「光偏向走査手段」を構成する。図示されていないが4つの光源装置が設けられている。4つの光源装置のうち2つからの光束はポリゴンミラー51に入射し、他の2つの光源装置からの光束はポリゴンミラー52に入射する。各光源装置の配置および、各光源装置からポリゴンミラー51、52に至る光路上の光学配置は図4のものと同様である。
【0224】
ポリゴンミラー52により偏向される偏向光束LSY、LSKはそれぞれ、イエロー成分画像、黒成分画像を書込むための光束である。
偏向光束LSYは、走査結像光学系としてのfθレンズを構成するレンズLNY1、LNY2を透過し、光路折曲げミラーMY1、MY2、MY3により順次反射され、光導電性の感光体50Yの感光面(被走査面の実体を成す)に導光され、上記感光面を光走査する。
【0225】
感光体50Yは円筒状で、矢印方向へ回転しつつ帯電器CYにより均一帯電された状態で、偏向光束LSYの光スポットで光走査され、イエロー成分画像を書込まれてイエロー潜像を形成される。
【0226】
偏向光束LSKは、fθレンズを構成するレンズLNK1、LNK2を透過し、光路折曲げミラーMK1、MK2、MK3により順次反射され、光導電性の感光体50Kの感光面に導光され、上記感光面を光走査する。
【0227】
感光体50Kは円筒状で、矢印方向へ回転しつつ帯電器CKにより均一帯電された状態で、偏向光束LSKの光スポットで光走査され、黒成分画像を書き込まれて黒潜像を形成される。
【0228】
ポリゴンミラー51により偏向される偏向光束LSM、LSCはそれぞれ、マゼンタ成分画像、シアン成分画像を書込むための光束である。
偏向光束LSMは、fθレンズを構成するレンズLNM1、LNM2を透過し、光路折曲げミラーMM1、MM2、MM3により順次反射され、光導電性の感光体50Mの感光面に導光され、上記感光面を光走査する。
【0229】
感光体50Mは円筒状で、矢印方向へ回転しつつ帯電器CMにより均一帯電された状態で、偏向光束LSMの光スポットで光走査され、マゼンタ成分画像を書き込まれてマゼンタ潜像を形成される。
【0230】
偏向光束LSCは、fθレンズを構成するレンズLNC1、LNC2を透過し、光路折曲げミラーMC1、MC2、MC3により順次反射され光導電性の感光体50Cの感光面に導光され、上記感光面を光走査する。
【0231】
感光体50Cは円筒状で、矢印方向へ回転しつつ帯電器CCにより均一帯電された状態で、偏向光束LSCの光スポットで光走査され、シアン成分画像を書き込まれてシアン潜像を形成される。
【0232】
各感光体の光走査はシングルビーム走査方式で行っても良いし、マルチビーム走査方式で行ってもよい。また、各感光体を帯電する帯電器として、コロナ放電式のものを例示したが、帯電ローラや帯電ブラシ等の接触式のものを用いても良い。
【0233】
感光体50Y、50M、50C、50Kに形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各潜像は、それぞれ対応する現像装置53Y、53M、53C、53Kにより対応する色のトナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、黒トナー)により現像されて可視化される。
【0234】
このようにして、感光体50Yにはイエロートナー画像、感光体50Mにはマゼンタトナー画像、感光体50Cにはシアントナー画像、感光体50Kには黒トナー画像がそれぞれ形成される。これら各色トナー画像は、以下のようにしてシート状記録媒体である転写紙S上に転写される。
【0235】
即ち、感光体50Y、50M、50C、50Kに、図の下方から接するように無端状の搬送ベルト54がプーリ55、56に掛け回されて設けられており、搬送ベルト54の内周面側において、転写器57Y、57M、57C、57K(コロナ放電式のものを例示したが、転写ローラ等の接触式のものを用いることもできる)が、ベルト面を介して対応する感光体50Y〜50Kに対向するように設けられている。
【0236】
転写紙Sは、積載収納されているカセット58内から給紙されて、送り込みローラ59により搬送ベルト54上に乗せ掛けられ、帯電器60による帯電を受けて搬送ベルト54の外周面に静電吸着されて保持される。搬送ベルト54は反時計回りに回転し、転写紙Sを周面に保持して搬送する。
【0237】
転写紙Sは上記の如く搬送されつつ、先ず、感光体50Y上のイエロートナー画像を転写器57Yにより転写され、続いて、感光体50M、50C、50K上の、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー画像を順次、転写器57M、57C、57Kにより転写される。各色トナー画像の転写は、これらトナー画像が互いに位置合わせされて重なり合うように行われる。
【0238】
このようにして転写紙S上にカラー画像が形成される。カラー画像を形成された転写紙Sは、除電器61により除電され、自身の腰の強さにより搬送ベルト54から剥離し、定着装置62によりカラー画像を定着され、排出ローラ63により、画像形成装置の天板を兼ねたトレイ64上に排出される。
【0239】
トナー画像を転写された後の各感光体は、対応するクリーナ65Y、65M、65C、65Kにより「残留トナーや紙粉等」を除去される。また、搬送ベルト54は除電器66により除電され、クリーナ67によりクリーニングされる。
【0240】
以上が画像形成プロセスのあらましである。
なお、図7に示した実施の形態における各色トナー画像の転写紙への転写方式は「図4に示した実施の形態において、各感光体から転写紙への各色トナー画像の転写」にも適用できるし、逆に、図4の実施の形態において説明した「中間転写ベルトに各色トナー画像を転写してカラー画像とし、このカラー画像を転写紙に転写する転写方式」を、図7の転写方式に代えて行うようにしてもよい。
【0241】
前述の如く、このカラー画像形成装置において、走査結像光学系はfθレンズであり各偏向光束ごとに1組ずつ、全部で4組のfθレンズが設けられ、各組のfθレンズは2枚のレンズで構成されている。これら4組のfθレンズは「互いに光学的に等価」であり、各光源装置から対応する感光体に至る光路長も互いに等しく設定されている。また、各fθレンズは各々プレートPTY、PTM、PTC、PTKに保持されて光学ハウジング75に固定されている。各プレートは保持するレンズの当接面側の全面又は一部と接触している。
【0242】
レンズLNY1、LNM1、LNC1は同一の樹脂材料で構成され、レンズLNY2、LNM2、LNC2も同一の樹脂材料で構成されている。これらレンズの材料樹脂としては、低吸水性や高透明性、成形性に優れたポリカーボネートやポリカーボネートを主成分とする合成樹脂が好適である。樹脂材料で構成すると非球面の形成も容易であるし、材料費も安いため、カラー画像形成装置の低コスト化上有利である。
【0243】
一方、レンズLNK1、LNK2は「走査位置基準となる光学系」であり、温度変動による影響をなくすため熱膨張率の小さい材質(ガラス(熱膨張率:0.5×10−5/℃))で構成されている。なお、ポリカーボネートのようなプラスチックレンズ(熱膨張率:7.0×10−5/℃)で構成した場合は、温度変動により、光スポットの結像位置が大きく変動するので基準となり得ない。
【0244】
偏向光束LSY、LSM、LSCの光路内には、液晶偏向素子手段70Y、70M、70Cが図の如く配置され、偏向光束LSKの光路中には、透明平行平板ガラス70Kが配置されている。
【0245】
液晶偏向素子手段70Y、70M、70Cは、図4の実施の形態に即して説明したような「副走査液晶偏向素子列」あるいは「主走査液晶偏向素子列」さらには、これらを一体化した図6(b)に示す如きものであり、偏向光束を主走査方向および/または副走査方向に偏向させることができるものである。
【0246】
また、図7に図示されていないが、液晶偏向素子手段70Y、70M、70Cの入射側のガラス基板による反射光を被走査面と等価な検出面に導光し、走査線曲がり検出手段等により、各偏向光束LSY、LSM、LSCによる走査特性(等速性や走査線曲がり)を検出できるようになっている。このような走査特性の検出は、図4に示した実施の形態の場合と同様に行うことができる。
【0247】
偏向光束LSKの光路内に配置された透明平行平板ガラス70Kは、光路長を調整するためのものである。前述したように、4組のfθレンズは互いに光学的に等価であり、各光源装置から対応する感光体に至る光路長も互いに等しく設定されている。
【0248】
しかるに、偏向光束LSY、LSM、LSCの光路中には、液晶偏向素子手段70Y、70M、70Cが配設されるので、これらの光束の光路長は「光学的には現実の光路長より短く」なる。透明平行平板ガラス70Yは、偏向光束LSKの光路長を「他の偏向光束の光学的な光路長」と合わせるために配設される。
【0249】
従って、透明平行平板ガラス70Kの光学的厚さ(物理的な厚さに屈折率を掛けたもの)は「液晶偏向素子手段70Y等の光学的厚さと等価」になるように設定される。
【0250】
この実施の形態において、偏向光束LSKの光路を構成する光学系は「熱膨張率の小さいガラス材料」で形成され、温・湿度変動によっては光学特性が不変であるので、偏向光束LSKによる光走査の走査特性(走査線曲がり、等速性)を基準として設定する。
【0251】
偏向光束LSY、LSM、LSCによる光走査の走査特性は、これらの光束の光路を構成するfθレンズが樹脂製であるため、温・湿度の変動で変動する。 そこで「温・湿度変動に伴なう走査特性の変化」を、前記検出手段により検出し、液晶偏向素子手段により補正するが、この補正は、偏向光束LSY、LSM、LSCの各々の走査特性を「基準の走査特性」である偏向光束LSKの走査特性に合致させるように行われる(制御は図示されないコントローラによる、液晶偏向素子手段70Y、70M、70Cの制御により行う)。
【0252】
このようにすると、液晶偏向素子手段を「全ての偏向光束の光路上に搭載する必要」が無く、また高価なガラスレンズは「基準となる走査結像光学系」のみに使用され、他の走査結像光学系は安価なプラスチックレンズを使用できるので、全体として安価なカラー画像形成装置を実現でき、色ずれの少ない高品質のカラー画像を得ることが可能になる。
【0253】
図4、図7に示した光走査装置は、1以上の光源からの光束を光偏向走査手段(15等)により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により、光源に応じた被走査面に向けて集光させて、被走査面上に光スポットを形成して光走査を行う光走査装置において、主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段(21Y、70Y等)を、光源からこの光源に対応する被走査面に至る光路の1以上に配置し、光走査制御手段(コントローラ)により液晶偏向素子手段を制御して、光走査に応じて光束を主走査方向及び/または副走査方向に偏向させることにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する光走査装置(請求項4)である。
【0254】
また、図4の実施の形態における液晶偏向素子手段21Y等は、図5(a)に示すように、副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子(Li、Di)を複数個、主走査方向にアレイ配列した副走査液晶偏向素子列であり、この副走査液晶偏向素子列が光偏向走査手段15と被走査面との間の光路中に配置され、光走査制御手段(コントローラ)により、光走査ごとに、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正するように、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御する光走査装置(請求項5)である。
【0255】
また、図4、図7に示した光走査装置は、主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列(例えば、図6(b)に示す主走査液晶偏向素子列21B)を、液晶偏向素子手段もしくはその一部として、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、光走査制御手段により、光走査ごとに、主走査方向の走査特性である走査等速性を補正するように、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御することができるものである(請求項6)。
【0256】
上記実施の各形態とも、液晶偏向素子手段が副走査液晶偏向素子列を有し、走査結像光学系による結像光束の一部を、光束分離手段により分離して被走査面と略等価な検出面に導光し、検出面上における走査線の曲がり量を走査線曲がり検出手段(22Y等)により検出するものであり(請求項7)、副走査液晶偏向素子列に入射する光束のうち、副走査液晶偏向素子列により反射される成分を検出面上において走査線曲がり検出手段(22Y等)により検出するものである(請求項8)。
【0257】
また、図4に示した光走査装置では、走査線曲がり検出手段(22Y等)が、副走査液晶偏向素子列(21Y等)を構成する副走査液晶偏向素子数と同数の光センサ(Pi)を有し、これら光センサが、副走査液晶偏向素子列における各副走査液晶偏向素子と対応的に検出面上に配置されて、光スポットの副走査方向の位置を検出し(請求項9)、光センサ群(Pi)を支持する支持部材(22S)が、熱膨張係数:1.0×10−5/℃以下の材質で構成されている(請求項10)。
【0258】
図4に示す光走査装置は、光源から複数光束が放射され、被走査面が2以上の光スポットで光走査される(請求項11)。また、図4、図7に示す光走査装置は、光源が複数(4個)で、各光源から各光源に対応する被走査面に至る光路を構成する走査光学系が、各光源からの光束の形成する光スポットによる走査線を実質的に互いに平行となるように構成されている(請求項12)。
【0259】
図4の光走査装置では、液晶偏向素子手段(21Y等)が、各光源ごとに設けられ(請求項13)、図7の光走査装置は、光源が複数であり、各光源から、これに対応する被走査面に至る光路を構成する走査光学系が互いに等価であり、走査光学系の1つが基準とされ、他の走査光学系の光路中に液晶偏向素子手段70Y、70M、70Cが設けられ、他の走査光学系による走査特性を、基準となる走査光学系の走査特性に合わせるように補正が行われる(請求項14)。
【0260】
図7の光走査装置では、基準となる走査光学系の光路中に、液晶偏向素子手段に起因する他の走査光学系との光路差を補正するための透明板部材(70K)が配置され(請求項15)、基準となる走査光学系のレンズ系(LNK1、LNK2)が、熱膨張係数:1.0×10−5/℃以下の材質で形成されている(請求項16)。
【0261】
図4、図7の光走査装置は光源の数が4であり、各光源から放射される光束が、カラー画像を構成する各色成分の画像情報で変調される(請求項17)。
【0262】
図4、図7の画像形成装置は、感光媒体に光走査を行って、画像形成を行う画像形成装置であって、感光媒体に光走査を行う光走査装置として、請求項4〜17の何れかに記載のものが用いられ(請求項18)、感光媒体が光導電性の感光体で(請求項19)、各光源からの光束により光走査すべき被走査面の実体を成す4個の光導電性の感光体が、互いに並列に配置されている(請求項20)。
【0263】
そして上記実施の各形態においては、光源側からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により被走査面に向かって集光させ、被走査面上に光スポットを形成し、この光スポットにより被走査面の光走査を行う光走査装置において、光スポットによる走査を制御する方法であって、主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を、光源から被走査面に至る光路中に配置し、光走査に応じて光束を主走査方向及び/または副走査方向に偏向させることにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する光走査制御方法(請求項1)が行われ、図4の実施の形態では、液晶偏向素子手段(21Y等)として、副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した副走査液晶偏向素子列を用い、この副走査液晶偏向素子列を光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、光走査ごとに、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御することにより、副走査方向の走査特性である走査線曲がりが補正され、また、図4、図7の実施の形態とも、液晶偏向素子手段もしくはその一部として、主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列を用い、この主走査液晶偏向素子列を光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、光走査ごとに、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向の走査特性である光走査の等速性を補正することが可能である(請求項3)。
【0264】
なお、図4の実施の形態においては、各感光体の光走査をマルチビーム走査で行ったが、シングルビーム走査で行って良いことは言うまでもない。また、図4、図7の実施の形態において、感光体の数を3個以下としても良い。感光体数を2とすれば2色画像形成を行うことができるし、感光体数を1としてモノクロームの画像形成を行うことができることは当然である。
【0265】
また、図4、図7の実施の形態において、液晶偏向素子手段を、偏向光束の光路中における光路折り曲げミラー間に配置したが、液晶偏向素子手段の配置位置はこれに限らず、最後の光路折り曲げミラーと被走査面との間に配置してもよいし、走査結像光学系と最初の光路折り曲げミラーとの間に配置してもよく、さらには光偏向走査手段と走査結像光学系との間に配置してもよい。
【0266】
主走査液晶偏向素子列と副走査液晶偏向素子列を別体にして別個に設ける場合には、例えば、主走査液晶偏向素子を走査結像光学系よりも光偏向走査手段側に設け、副走査液晶偏向素子を走査結像光学系よりも被走査面の側に設けるようにしてもよい。
【0267】
上に説明した、図4の実施の形態では「走査線曲がりを補正して走査線を直線に近」づけた。以下に説明する請求項21以下の発明の実施の形態では、「走査線ずれ検出手段」を用い、各被走査面を光走査する光束の光走査による走査線の曲がり(走査線の傾き、走査線相互の位置ずれを含む)を検出し、検出される走査線曲がりの1つを「基準走査線曲がり」とし、他の走査線が「基準走査線曲がりに実質的に合致する」ように走査線の補正を行う。
【0268】
「走査線ずれ検出手段」は、図5に即して説明した「走査線曲がり検出手段」を用いることができるほか、後述の図10の実施の形態で用いられるものを用いることもできる。
【0269】
図8は、走査線の補正の様子の1例を示している。
図8(a)は「走査線ずれ検出手段」により検出された各走査線(夫々を可視化して共通の媒体に転写した状態)を示している。符号Mは「マゼンタ色成分画像を書込む光束の走査線」、符号Kは「黒色成分画像を書込む光束の走査線」、符号Cは「シアン色成分画像を書込む光束の走査線」、符号Yは「イエロー色成分画像を書込む光束の走査線」をそれぞれ示している。
【0270】
図8(a)で、各走査線Y、M、C、Kは「走査線曲がり」を生じ、副走査方向(図の上下方)に相対的にずれている(走査線相互の位置ずれ)。ここで、走査線Kの走査線曲がりを「基準走査線曲がり」とし、他の走査線M、C、Yを走査線補正手段により補正して、図5(b)に示すように、走査線Y、M、Cを補正した走査線Y’、M’、C’がそれぞれ、基準走査線曲がり(走査線K)と略合致する走査線曲がりとなるように、かつ、その副走査方向(図の上下方向)の相対的な位置ずれがなくなるようにする。
【0271】
換言すれば「基準走査線曲がりを持つ走査線以外の走査線Y、M、C」に対して、前述の走査線曲がりの補正を行って、これら走査線Y、M、Cの「走査線の形状(曲がり具合)」を基準走査線曲がりに近づけると共に、さらに、走査線Y、M、Cが「形成されるカラー画像上で互いに実質的に重なり合うように」走査線の位置ずれを補正して、上記「走査線相互の位置ずれ」を実質的に解消するのである。
【0272】
補正後の走査線Y’、M’、C’を「完全に走査線Kに合致させる」ことは困難であっても、これらを走査線に略合致させることは容易であり、図5(b)のように、補正後において走査線K、Y’、M’、C’の間に「ずれ」が存在しても、この「ずれ」の大きさが30μm以下であれば、色ずれが実際上目立たないカラー画像を得ることができる。
【0273】
図8(b)は、走査線Kの走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、走査線Y、M、Cの走査線曲がりを補正して「走査線Kに略合致させた」例であるが、基準走査線曲がりを持つ走査線は走査線Kに限らず、走査線Y、M、Cの何れでもよい。図9の(a)には、走査線Mの走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、走査線Y、K、Cの走査線曲がりを補正して「走査線Mに略合致させた」例を、同図(b)には、走査線Cの走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、走査線Y、M、Kの走査線曲がりを補正して「走査線Cに略合致させた」例を、同図(c)には、走査線Yの走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、走査線K、M、Cの走査線曲がりを補正して「走査線Yに略合致させた」例を示す。図9(a)〜(c)において、符号K’、Y’、M’、C’が、補正後の走査線を示している。
【0274】
図9(a)、(b)、(c)における走査線M、C、Yは、図8(a)に示すものである。図8(a)に示す各走査線Y、M、C、Kのうちでは「走査線の曲がり具合」が最も少ないもの(直線に近いもの)は走査線Yであるので、図9(c)のように、走査線Yの走査線曲がりを「基準走査線曲がり」とし、他の走査線K、M、Cを「走査線K’、M’、C’のように補正」して走査線Yに略合致させた場合は、全体として各走査線の曲がりがもっとも少ないものとなる。
【0275】
図10に、画像形成装置の実施の他の形態を、説明に必要な部分のみ示す。 図10(a)に符号110で示す光源は、半導体レーザとカップリングレンズとシリンドリカルレンズとにより構成される「光源装置」を4組有している。各半導体レーザから放射される光束は、カップリングレンズにより以後の光学系に適合する光束形態(平行光束あるいは弱い発散性もしくは集束性の光束)に変換され、シリンドリカルレンズにより副走査方向に集束されて光偏向走査手段であるポリゴンミラー112の偏向反射面近傍に「主走査方向に長い線像」として結像される。
【0276】
光源における4つの半導体レーザは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色成分画像を書込むための光束を放射する。
【0277】
ポリゴンミラー112の回転により同時に偏向された4本の偏向光束は、レンズ114を透過する。黒色成分画像を書込む光束はミラー116Kで反射され、レンズ117Kを透過し、ハーフミラー119Kを透過して被走査面の実態を成すドラム状の光導電性の感光体20K上に光スポットとして集光し、感光体20Kを矢印方向に光走査する。
【0278】
イエロー、マゼンタ、シアンの各色成分画像を書込む光束はそれぞれ、ミラー116Y、116M、116Cで反射され、レンズ117Y、117M、117Cを透過し、ミラー118Y、118M、118Cで反射され、ハーフミラー119Y、119M、119Cを透過してドラム状の光導電性の感光体20Y、20M、20C上に光スポットとして集光し、感光体20Y、20M、20Cを矢印方向に光走査する。この光走査により各感光体に対応する色成分画像の静電潜像が形成される。
【0279】
これら静電潜像は、図示されない現像装置により対応する色のトナーで可視化され、中間転写ベルト121上に転写される。転写の際、各色トナー画像は互いに重ね合わせられカラー画像を構成する。このカラー画像は図示されないシート状記録媒体上ヘ転写され、定着される。カラー画像転写後の中間転写ベルト121は図示されないクリーニング装置でクリーニングされる。
【0280】
即ち、この実施の形態において、上に説明した部分は、カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を、光偏向走査手段112により偏向走査し、各偏向光束を走査結像光学系114、117Y、17M、117C、117Kにより、各色成分画像に対応する被走査面20Y、20M、20C、20Kに向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置である。走査結像光学系はレンズ114、117Y、117M、117C、117Kにより構成される。複数の光源装置から放射され、光偏向走査手段12により偏向された各光束は、走査結像光学系を構成する光学素子の少なくとも1つ(レンズ114)を共通に透過する(請求項25)。
【0281】
なお、各偏向光束はハーフミラーにより分離された部分が、走査領域の開始側・終了側で受光素子P1Y、P2Y、P1M、P2M、P1C、P2C、P1K、P2Kにより検出される。開始側での検出に基づき、各光束による書込み開始の同期がとられる。また、開始側と終了側の検出時間差に基づき、各光束に対する駆動クロックの周波数が調整され、各光束の書込幅を同一とされる。
【0282】
また、図10(a)において、符号111はポリゴンミラー112を収納する防音ハウジング(図示されず)の窓ガラスを示しており、光源110側からの各光束は窓ガラス111を介してポリゴンミラー112に入射し、偏向光束は窓ガラス111を介してレンズ114に入射する。
【0283】
図10(a)において符号22A、23A、24Aは「走査線ずれ検出手段」を構成する検出部を示す。検出部22A、23A、24Aは、半導体レーザからの光束を集光レンズで集光して中間転写ベルト121の定位置を照射し、反射光をレンズにより受光素子上に結像するようになっている。
【0284】
「走査線ずれ検出」を行うときは、各光束により1ラインの3つの部分が書込まれ、可視化されて中間転写ベルト121に転写される。このとき、各色の「部分ライン画像」は、中間転写ベルト121上において「互いに副走査方向に等間隔」となるように形成される。
【0285】
これら部分ライン画像は、走査線ずれ検出手段の各検出部で検出され、その結果に基づき、各走査線の走査線曲がり(走査線の傾き、走査線相互の位置ずれを含む)が決定される。前述した図8(a)の各走査線Y、M、C、Kはこのようにして決定されたものである。
【0286】
図10(a)に示すようにレンズ114の直後には、走査線補正手段115が配置されている。走査線補正手段115は、図10(b)に示すように4つの部分15K、15C、15M、15Yを有している。符号15Kで示す部分は「素通し」であり、符号15Y、15M、15Cで示す部分は、先に図5を参照して説明したような「液晶偏向素子列手段」である(請求項23)。
【0287】
液晶偏向素子列手段15Y、15M、15Cにおける接地電極、液晶層、カバーガラスなど殆どの液晶素子が共通に構成されている。
即ち、この実施の形態においては、走査線曲がりを補正すべき各偏向光束に対する液晶偏向素子列手段15Y、15M、15Cが互いに一体化されている(請求項24)。
【0288】
従って、走査線補正手段115は、黒色成分画像を書込む光束は素通させ、イエロー、マゼンタ、シアンの各色成分画像を書込む光束に対しては、走査線曲がりの補正(補正量の演算・設定は、図示されないコントローラが行う)を行い、これらの光束の走査線曲がりを基準走査線曲がり(黒色成分画像書込み用の光束の走査線曲がり)に略合致させる(請求項21、22)。
【0289】
図10の実施の形態では、共通の光路(レンズ114)を透過した後に、液晶偏向素子列手段による走査線補正手段115を配置することにより、各色の液晶偏向素子列手段15Y、15M、15Cを容易に一体構成できている。
【0290】
図11は、画像形成装置の実施の別形態を示している。
この画像形成装置も、光導電性の感光体を用いてカラー画像を形成する4ドラムタンデム式のものである。形成されるべきカラー画像は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の4色の色成分画像を形成し、これら色成分画像を同一のシート状記録媒体上で重ね合せることにより得られる。この種のカラー画像形成装置の基本的な構成は従来から公知であるので、図11には、発明の説明に必要な部分のみを示した。
【0291】
符号151、152はポリゴンミラーを示す。ポリゴンミラー151、152は同一形状で共通の軸に固定的に設けられ、一体として回転するようになっており、図示されない駆動手段と共に「光偏向走査手段」を構成する。
【0292】
図示されていないが「4つの光源装置」が設けられ、そのうち2つからの光束はポリゴンミラー151に入射し、他の2つからの光束はポリゴンミラー152に入射し、それぞれ偏向反射面近傍に主走査方向に長い線像として結像する。
【0293】
ポリゴンミラー152により偏向される偏向光束LSY、LSKはそれぞれ、イエロー、黒の各色成分画像を書込むための光束である。
偏向光束LSYはイエロー色成分の画像情報で強度変調され、走査結像光学系としてのfθレンズを構成するレンズLNY1、LNY2(保持体PTYに保持されている)を透過し、光路折曲げミラーMY1、MY2、MY3により順次反射され、光導電性の感光体150Yの感光面(被走査面の実体を成す)に導光され、上記感光面を光走査する。
【0294】
感光体150Yはドラム状で、矢印方向へ回転しつつ帯電器CYにより均一帯電された状態で、偏向光束LSYの光スポットで光走査され、イエロー色成分画像を書込まれてイエロー潜像を形成される。
【0295】
偏向光束LSKは黒色成分の画像情報で強度変調され、fθレンズを構成するレンズLNK1、LNK2(保持体PTKに保持されている)を透過し、光路折曲げミラーMK1、MK2、MK3により順次反射され、光導電性の感光体150Kの感光面に導光され、上記感光面を光走査する。
【0296】
感光体150Kはドラム状で、矢印方向へ回転しつつ帯電器CKにより均一帯電された状態で、偏向光束LSKの光スポットで光走査され、黒色成分画像を書込まれて黒潜像を形成される。
【0297】
ポリゴンミラー151により偏向される偏向光束LSM、LSCはそれぞれ、マゼンタ色成分画像、シアン色成分画像を書込むための光束である。
偏向光束LSMはマゼンタ色成分の画像情報で強度変調され、fθレンズを構成するレンズLNM1、LNM2(保持体PTMに保持されている)を透過し、光路折曲げミラーMM1、MM2、MM3により順次反射され、光導電性の感光体150Mの感光面に導光され、上記感光面を光走査する。
【0298】
感光体150Mはドラム状で、矢印方向へ回転しつつ帯電器CMにより均一帯電された状態で、偏向光束LSMの光スポットで光走査され、マゼンタ色成分画像を書込まれてマゼンタ潜像を形成される。
【0299】
偏向光束LSCはシアン色成分の画像情報で強度変調され、fθレンズを構成するレンズLNC1、LNC2(保持体PTCに保持されている)を透過し、光路折曲げミラーMC1、MC2、MC3により順次反射され光導電性の感光体150Cの感光面に導光され、上記感光面を光走査する。
【0300】
感光体150Cは円筒状で、矢印方向へ回転しつつ帯電器CCにより均一帯電された状態で、偏向光束LSCの光スポットで光走査され、シアン色成分画像を書込まれてシアン潜像を形成される。
【0301】
各感光体の光走査は、説明中の例では「シングルビーム走査方式」で行うが、「マルチビーム走査方式」で行ってもよい。また、各感光体を帯電する帯電器としてコロナ放電式のものを例示したが、帯電ローラや帯電ブラシ等の接触式のものを用いても良い。
【0302】
感光体150Y、150M、150C、150Kに形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各潜像は、それぞれ対応する現像装置153Y、153M、153C、153Kにより、対応する色のトナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、黒トナー)により現像されて可視化される。
【0303】
このようにして、感光体150Yにはイエロートナー画像、感光体150Mにはマゼンタトナー画像、感光体150Cにはシアントナー画像、感光体150Kには黒トナー画像がそれぞれ形成される。これら各色トナー画像は、以下のようにしてシート状の記録媒体である転写紙P上に転写される。
【0304】
感光体150Y、150M、150C、150Kに、図の下方から接するように無端状の搬送ベルト154がプーリ155、156に掛け回されて設けられており、搬送ベルト154の内周面側において、転写器157Y、157M、157C、157K(コロナ放電式のものを例示したが、転写ローラ等の接触式のものを用いることもできる)が、ベルト面を介して対応する感光体150Y〜150Kに対向するように設けられている。
【0305】
シート状記録媒体としての転写紙Pは積載収納されているカセット158内から給紙され、送り込みローラ159により搬送ベルト154上に乗せ掛けられ、帯電器160による帯電を受けて搬送ベルト154の外周面に静電吸着されて保持される。搬送ベルト154は反時計回りに回転し、転写紙Pを周面に保持して搬送する。
【0306】
転写紙Pは上記の如く搬送されつつ、先ず、感光体150Y上のイエロートナー画像を転写器157Yにより転写され、続いて、感光体150M、150C、150K上の、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー画像を順次、転写器157M、157C、157Kにより転写される。各色トナー画像の転写は、これらトナー画像が互いに位置合わせされて重なり合うように行われる。
【0307】
このようにして転写紙P上にカラー画像が形成される。カラー画像を形成された転写紙Pは、除電器161により除電され、自身の腰の強さにより搬送ベルト154から剥離し、定着装置162によりカラー画像を定着され、排出ローラ163により、画像形成装置の天板を兼ねたトレイ164上に排出される。
【0308】
トナー画像を転写された後の各感光体は、対応するクリーナ165Y、165M、165C、165Kにより残留トナーや紙粉等を除去される。また、搬送ベルト154は除電器166により除電され、クリーナ167によりクリーニングされる。
【0309】
以上がフルカラー画像形成プロセスのあらましである。モノクローム画像を画像形成する場合には、所望の色の画像形成を行う部分のみを駆動して、他の部分の駆動を停止して、上記プロセスを行えばよい。
前述の如く、このカラー画像形成装置において、走査結像光学系はfθレンズであり偏向光束ごとに1組ずつ、全部で4組が設けられ、各組は2枚のレンズで構成されている。これら4組のfθレンズは「互いに光学的に等価」で、各光源装置から対応する感光体に至る光路長も互いに等しく設定されている。これらは光学ハウジング175内に設けられている。
【0310】
各レンズは同一の樹脂材料で構成されている。これらレンズの材料樹脂としては、低吸水性や高透明性、成形性に優れたポリカーボネートやポリカーボネートを主成分とする合成樹脂が好適である。樹脂材料で構成すると非球面の形成も容易で、材料費も安いため、カラー画像形成装置の低コスト化上有利である。反面、樹脂レンズは温・湿度変化の影響で光学特性が変化するので、走査線曲がりも環境変化に応じて変化する。
【0311】
そこで、図5(a)に即して説明したような液晶偏向素子列手段170Y、170M、170Cを、各感光体150Y、150M、150Cを光走査する偏向光束の光路上に図の如く設け、先に説明した如くして、各感光体上における光スポットの位置を副走査方向に調整することにより走査線曲がりを補正し、イエロー、マゼンタ、シアンの各色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、黒色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりである「基準走査線曲がり」に略合致させる(請求項21、22、23)。
【0312】
なお、黒色成分画像の書込みに用いられる光束LSKの光路上に設けられたガラス板170Kは、他の光束の光路上に設けられた液晶偏向素子列手段170Y、170M、170Cによる光路長差を補正するためのものである。
【0313】
このようにして「色ずれ」の問題を有効に軽減若しくは防止できる。
なお、図11に図示していないが、各偏向光束LSY〜LSKが対応感光体上に形成する光スポットの走査位置はそれぞれ、図5(b)に即して説明した走査位置検出手段23と同様のもの(各被走査面と光学的に等価な位置に配置される)により検出され、偏向光束の一部を走査位置検出手段に導くため、液晶偏向素子列手段170Y〜170C、ガラス板170Kを(図では明らかでないが)光路上で副走査方向に対して若干傾けて配置し、検出光束を各走査位置検出手段に向けて反射する。
【0314】
上記図10、図11に実施の形態を説明した画像形成装置は、カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行い、各被走査面に書込まれた各色成分画像により、シート状記録媒体上にカラー画像を形成する画像形成装置において、光走査装置として請求項21〜25の任意の1に記載のものを用い得るものである(請求項26)。
【0315】
図10や図11のカラー画像形成装置で、画像形成プロセスを連続して行い、多数枚のカラー画像を出力する場合、光走査装置内のポリゴンミラーを回転させるモータの発熱や定着装置での発熱により、例えば、図12に示すように、急激な温度変動を発生する。
【0316】
このような温度変動は、走査結像光学系の樹脂製光学素子の光学特性を変化させ、色ずれを発生する。このためファーストプリントと複数枚(例えば、図のA枚)出力した後のカラー画像とで色調が変化する。
【0317】
従って、このような場合、画像形成プロセス開始後、画像形成プロセスの継続中に1回以上、走査線補正手段による走査線曲がりの補正(走査線曲がりの補正量の改定)を行う(請求項27)のがよく、その場合、タンデム式の高速性のメリットを活かすためには、走査線補正手段による補正の制御時間:TA、シート間距離:D、シート状記録媒体の搬送速さ:Vが、条件:
TA<0.8×(D/V)
を満足するようにすることにより、補正(上記「補正量の改定」)を「シート間時間内」で行い、画像形成プロセスを中断することなく走査線曲がりの補正を行うことができる。
【0318】
また、上記画像形成装置では、走査線補正手段による走査線曲がりの補正、走査線ずれ検出手段の情報に基づいて行われるが、走査線ずれ検出手段の検出時間:TS、シート状記録媒体の搬送方向の長さ:L、搬送速さ:Vが、条件:
TS<10×(L/V)
を満足するようにして、急激な温度変動を生じた場合でも、10枚以下の出力単位で走査線曲がりを補正して色ずれによる色調変化を軽減できるようにしている(請求項29)。
【0319】
また、上に説明した実施の各形態でも、主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を、光源から被走査面に至る光路中に配置し、光走査に応じて光束の、主走査方向及び/または副走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正することができるが、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する必要が無いときには、液晶偏向素子手段による、光束の主走査方向および/または副走査方向への偏向を行うことなく、液晶偏向素子手段を透過させることができ(請求項30、31、32)、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を「必要に応じて補正する」ことができる(請求項33)。
【0320】
また、図5に即して説明した「副走査液晶偏向素子列」は、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置される液晶偏向素子装置であって、副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向にアレイ配列してなり、光走査制御手段23により制御され、光走査ごとに、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正するように、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御する(請求項34)。
【0321】
また、図6(b)に示す主走査液晶偏向素子列21Bは、液晶偏向素子手段もしくはその一部として、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置される液晶偏向素子装置であって、主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列してなり、光走査制御手段により制御され、光走査ごとに、主走査方向の走査特性である等速性を補正するように、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御する液晶偏向素子装置(請求項35)である。
【0322】
また、図6(b)に示す、副走査液晶偏向素子列21Aと、主走査液晶偏向素子列21Bとを、光偏向走査手段により偏向される光束の光路方向へ順次に配列したものは、請求項36記載の液晶偏向素子装置であり、副走査液晶偏向素子列21Aと、主走査液晶偏向素子列21Bが一体化されている(請求項38)。
【0323】
図4、図7、図10、図11に示した実施の形態において用いられている光走査装置は、請求項34または35または36または37記載の液晶偏向素子装置を有するものであり(請求項38)、また、図10(b)に示した走査線補正手段115はまた「カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を、光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により、各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置において、所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、基準走査線曲がりと略合致させるように、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを補正するための走査線補正手段である液晶偏向素子列装置であって、独立して制御可能な液晶偏向素子を複数個、主走査方向へ配列してなり、走査線の曲がりを補正すべき偏向光束の光路中に配置され、光走査に応じて光束の副走査方向の調整偏向量を液晶偏向素子ごとに制御される液晶偏向素子列装置(請求項39)」である。
【0324】
この液晶偏向素子列装置115は「基準走査線曲がりを有する偏向光束を除いた他の偏向光束に対する液晶偏向素子列15Y、15M、15Cが、互いに一体化されており(請求項40)、基準走査線曲がりを有する偏向光束が素通りする部分115Kとして一体化されている(請求項41)。
【0325】
図10に実施の形態を示す画像形成装置に用いられる光走査装置は、カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置110から放射された各光束を、光偏向走査手段112により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系114、117K、117Y、117M、117Cにより、各色成分画像に対応する被走査面20K、20Y、20M、20Cに向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置において、所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、基準走査線曲がりと略合致させるように、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを補正するための走査線補正手段である液晶偏向素子列装置115として、請求項39また40または41記載の液晶偏向素子列装置を有するものである(請求項42)。
【0326】
図4、図7に実施の形態を示した画像形成装置は、感光媒体に光走査を行って、画像形成を行う画像形成装置において、感光媒体に光走査を行う光走査装置として、請求項33または38記載のものを有するものであり(請求項43)、図10に実施の形態を示した画像形成装置は、カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を光偏向走査手段112により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系114、117K、117Y、117M、117Cにより各色成分画像に対応する被走査面20K、20Y、20M、20Cに向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行い、各被走査面に書込まれた各色成分画像により、シート状記録媒体上にカラー画像を形成する画像形成装置において、光走査装置として、請求項42記載のものを用いたものである(請求項44)。
【0327】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明によれば、新規な光走査制御方法・光走査装置および液晶偏向素子装置・液晶偏向素子列装置および画像形成装置を実現できる。この発明の光走査制御方法は、液晶偏向素子手段を用いて、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を容易且つ確実に制御して良好な走査特性を実現でき、このような光走査制御方法を実施する光走査装置により良好な光走査を実現できる。
【0328】
そして、このような光走査装置を用いる画像形成装置では良好な画像形成を実現できる。
【0329】
「液晶偏向素子手段を光偏向走査手段よりも光源側に設け、1走査ごとに、時間的に偏光量を制御して走査特性を補正するようにした場合」には、液晶偏向素子手段は小型ですむものの、駆動を極めて高速に行わねばならないが、上の実施の形態に示したように、液晶偏向素子手段を、光偏向走査手段と被走査面との間に設けるようにすると、液晶の駆動が比較的ゆっくりでよいため、偏向量の制御が容易である。
【0330】
請求項21〜25に記載の発明の光走査装置は何れも、色ずれを軽減・防止するのに、その原因となる各色成分画像を書込む光束の走査線曲がり・走査線の傾き、走査線相互の位置ずれをそれぞれ0とするように補正するのではなく、基準となる色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを基準として、他の光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりに合致させるように補正を行うので、補正が容易であり、温度の急激な変化にも十分に補正を追従させることができる。
【0331】
従って、かかる光走査装置を用いる画像形成装置は、色ずれを有効に軽減・防止して良好なカラー画像を得ることができる。
【0332】
また、この発明の液晶偏向素子装置・液晶偏向素子列装置は、上記走査線曲がり・走査線の傾き・走査線相互の位置ずれの有効な解消を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶偏向素子の1例を説明するための図である。
【図2】液晶偏向素子の別の例を説明するための図である。
【図3】液晶偏向素子の他の例を説明するための図である。
【図4】画像形成装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図5】走査線曲がりの補正を説明するための図である。
【図6】液晶偏向素子手段の2例を説明するための図である。
【図7】画像形成装置の実施の別形態を説明するための図である。
【図8】カラー画像形成における複数走査線間の走査線曲がりの補正を説明するための図である。
【図9】カラー画像形成における複数走査線間の走査線曲がりの補正を説明するための図である。
【図10】画像形成装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図11】画像形成装置の実施のさらに他の形態を説明するための図である。
【図12】連続画像形成プロセス時における光走査装置内の温度変化の1例を示す図である。
【符号の説明】
21Y 副走査液晶偏向素子列
Y イエロー色成分画像を書込む光束の走査線
M マゼンタ色成分画像を書込む光束の走査線
C シアン色成分画像を書込む光束の走査線
K 黒色成分画像を書込む光束の走査線
Claims (44)
- 光源側からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により被走査面に向かって集光させ、上記被走査面上に光スポットを形成し、この光スポットにより上記被走査面の光走査を行う光走査装置において、光スポットによる光走査を制御する方法であって、
主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を、光源から被走査面に至る光路中に配置し、光走査に応じて光束の、主走査方向及び/または副走査方向の偏向量を制御することにより、
主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正することを特徴とする光走査制御方法。 - 請求項1記載の光走査制御方法において、
液晶偏向素子手段として、副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した副走査液晶偏向素子列を用い、この副走査液晶偏向素子列を光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、
光走査ごとに、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御することにより、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正することを特徴とする光走査制御方法。 - 請求項1または2記載の光走査制御方法において、
液晶偏向素子手段もしくはその一部として、主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列を用い、この主走査液晶偏向素子列を、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、
光走査ごとに、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向の走査特性である光走査の等速性を補正することを特徴とする光走査制御方法。 - 1以上の光源からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により、光源に応じた被走査面に向けて集光させて、上記被走査面上に光スポットを形成して光走査を行う光走査装置において、
主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を、光源からこの光源に対応する被走査面に至る光路の1以上に配置し、
光走査制御手段により上記液晶偏向素子手段を制御して、光走査に応じて光束を主走査方向および/または副走査方向に偏向させることにより、
主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正することを特徴とする光走査装置。 - 請求項4記載の光走査装置において、
液晶偏向素子手段が、副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向にアレイ配列した副走査液晶偏向素子列であり、この副走査液晶偏向素子列が光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置され、
光走査制御手段により、光走査ごとに、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正するように、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御することを特徴とする光走査装置。 - 請求項4または5記載の光走査装置において、
主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列が、液晶偏向素子手段もしくはその一部として、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置され、
光走査制御手段により、光走査ごとに、主走査方向の走査特性である等速性を補正するように、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御することを特徴とする光走査装置。 - 請求項4または5または6記載の光走査装置において、
液晶偏向素子手段が副走査液晶偏向素子列を有し、走査結像光学系による結像光束の一部を、光束分離手段により分離して被走査面と略等価な検出面に導光し、上記検出面上における走査線の曲がり量を走査線曲がり検出手段により検出することを特徴とする光走査装置。 - 請求項7記載の光走査装置において、
副走査液晶偏向素子列を、走査結像光学系と被走査面との間の光路中に有し、副走査液晶偏向素子列に入射する光束のうち、上記副走査液晶偏向素子列により反射される成分を検出面上において、走査線曲がり検出手段により検出することを特徴とする光走査装置。 - 請求項7または8記載の光走査装置において、
走査線曲がり検出手段が、副走査液晶偏向素子列を構成する副走査液晶偏向素子数と同数の光センサを有し、これら光センサが、副走査液晶偏向素子列における各副走査液晶偏向素子と対応的に検出面上に配置されて、光スポットの副走査方向の位置を検出することを特徴とする光走査装置。 - 請求項9記載の光走査装置において、
光センサ群を支持する支持部材が、熱膨張係数:1.0×10−5/℃以下の材質で構成されていることを特徴とする光走査装置。 - 請求項4〜10の任意の1に記載の光走査装置において、
光源から複数光束が放射され、被走査面が2以上の光スポットで光走査されることを特徴とするマルチビーム方式の光走査装置。 - 請求項4〜11の任意の1に記載の光走査装置において、
光源が複数であり、各光源から各光源に対応する被走査面に至る光路を構成する走査光学系が、各光源からの光束の形成する光スポットによる走査線を実質的に互いに平行とするように構成されていることを特徴とする光走査装置。 - 請求項12記載の光走査装置において、
液晶偏向素子手段が、各光源ごとに設けられていることを特徴とする光走査装置。 - 請求項4〜12の任意の1に記載の光走査装置において、
光源が複数であり、各光源から、これに対応する被走査面に至る光路を構成する走査光学系が互いに等価であり、
走査光学系の1つを基準とし、他の走査光学系の光路中に液晶偏向素子手段を設け、これら他の走査光学系による走査特性を、上記基準となる走査光学系の走査特性に合わせるように補正することを特徴とする光走査装置。 - 請求項14記載の光走査装置において、
基準となる走査光学系の光路中に、液晶偏向素子手段に起因する他の走査光学系との光路差を補正するための透明板部材を配置したことを特徴とする光走査装置。 - 請求項14または15記載の光走査装置において、
走査光学系の走査結像光学系をレンズ系とし、基準となる走査光学系の上記レンズ系を熱膨張係数:1.0×10−5/℃以下の材質で形成したことを特徴とする光走査装置。 - 請求項12〜16の任意の1に記載の光走査装置において、
光源の数を3もしくは4とし、各光源から放射される光束が、カラー画像を構成する各色成分の画像情報で変調されることを特徴とする光走査装置。 - 感光媒体に光走査を行って、画像形成を行う画像形成装置において、
感光媒体に光走査を行う光走査装置として、請求項4〜17の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする画像形成装置。 - 請求項18記載の画像形成装置において、
感光媒体が光導電性の感光体であることを特徴とする画像形成装置。 - 請求項19記載の画像形成装置において、
光走査装置が請求項17記載のものであり、
各光源からの光束により光走査すべき被走査面の実体を成す3もしくは4個の光導電性の感光体を、互いに並列に配置したことを特徴とする画像形成装置。 - カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を、光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により、上記各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置において、
所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、上記基準走査線曲がりと略合致させるように、上記他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを補正するための走査線補正手段を有することを特徴とする光走査装置。 - 請求項21記載の光走査装置において、
カラー画像を構成する複数の色成分画像の1として黒成分画像を含み、
上記黒成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりとすることを特徴とする光走査装置。 - 請求項21または22記載の光走査装置において、
走査線補正手段が、独立して制御可能な液晶偏向素子を複数個、主走査方向へ配列してなり、走査線の曲がりを補正すべき偏向光束の光路中に配置され、光走査に応じて光束の副走査方向の調整偏向量を液晶偏向素子ごとに制御される液晶偏向素子列手段であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項23記載の光走査装置において、
走査線曲がりを補正すべき各偏向光束に対する液晶偏向素子列手段が、互いに一体化されていることを特徴とする光走査装置。 - 請求項21〜24の任意の1に記載の光走査装置において、
複数の光源装置から放射され、光偏向走査手段により偏向された各光束が、走査結像光学系を構成する光学素子の少なくとも1つを共通に透過することを特徴とする光走査装置。 - カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により上記各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行い、各被走査面に書込まれた各色成分画像により、シート状記録媒体上にカラー画像を形成する画像形成装置において、光走査装置として、請求項21〜25の任意の1に記載のものを用いることを特徴とする画像形成装置。
- 請求項26記載の画像形成装置において、
画像形成プロセス開始後、画像形成プロセスの継続中に1回以上、走査線補正手段による走査線曲がりの補正を行うことを特徴とする画像形成装置。 - 請求項27記載の画像形成装置において、
走査線補正手段による補正が、出力されるシート状記録媒体のシート間時間内で可能であり、制御時間:TA、シート間距離:D、シート状記録媒体の搬送速さ:Vが、条件:
TA<0.8×(D/V)
を満足することを特徴とする画像形成装置。 - 請求項26〜28の任意の1に記載の画像形成装置において、
各光走査装置が書込む走査線相互のずれを検出する走査線ずれ検出手段を有し、走査線補正手段が上記走査線ずれ検出手段の情報に基づいて補正を行い、上記走査線ずれ検出手段の検出時間:TS、シート状記録媒体の搬送方向の長さ:L、搬送速さ:Vが、条件:
TS<10×(L/V)
を満足することを特徴とする画像形成装置。 - 光源側からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により被走査面に向かって集光させ、上記被走査面上に光スポットを形成し、この光スポットにより上記被走査面の光走査を行う光走査装置において、光スポットによる光走査を制御する方法であって、
主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を、光源から被走査面に至る光路中に配置し、光走査に応じて光束の、主走査方向及び/または副走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正し、
上記主走査方向および/または副走査方向の走査特性を補正する必要が無いときには、上記液晶偏向素子手段による、光束の主走査方向および/または副走査方向への偏向を行うことなく、上記液晶偏向素子手段を透過させることを特徴とする光走査制御方法。 - 請求項30記載の光走査制御方法において、
液晶偏向素子手段として、副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した副走査液晶偏向素子列を用い、この副走査液晶偏向素子列を光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、
光走査ごとに、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御することにより、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正し、
上記副走査方向の走査特性を補正する必要が無いときには、上記液晶偏向素子手段による、光束の副走査方向への偏向を行うことなく、上記液晶偏向素子手段を透過させることを特徴とする光走査制御方法。 - 請求項30または31記載の光走査制御方法において、
液晶偏向素子手段もしくはその一部として、主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列を用い、この主走査液晶偏向素子列を、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置し、
光走査ごとに、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御することにより、主走査方向の走査特性である光走査の等速性を補正し、
上記主走査方向の走査特性を補正する必要が無いときには、上記主走査液晶偏向素子列による、光束の主走査方向への偏向を行うことなく、上記主走査液晶偏向素子手段を透過させることを特徴とする光走査制御方法。 - 1以上の光源からの光束を光偏向走査手段により偏向させ、偏向された光束を走査結像光学系により、光源に応じた被走査面に向けて集光させて、上記被走査面上に光スポットを形成して光走査を行う光走査装置において、
主走査方向および/または副走査方向を偏向方向とする液晶偏向素子手段を、光源からこの光源に対応する被走査面に至る光路の1以上に配置し、
光走査制御手段による上記液晶偏向素子手段の制御により、光走査に応じて光束を主走査方向および/または副走査方向に偏向させ得るようにし、
主走査方向および/または副走査方向の走査特性を、必要に応じて補正することを特徴とする光走査装置。 - 請求項33記載の光走査装置において、液晶偏向素子手段として、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置される液晶偏向素子装置であって、
副走査方向を偏向方向とする副走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向にアレイ配列した副走査液晶偏向素子列であり、
光走査制御手段により制御され、光走査ごとに、副走査方向の走査特性である走査線曲がりを補正するように、各副走査液晶偏向素子の副走査方向の偏向量を制御する液晶偏向素子装置。 - 請求項33記載の光走査装置において、液晶偏向素子手段もしくはその一部として、光偏向走査手段と被走査面との間の光路中に配置される液晶偏向素子装置であって、
主走査方法を偏向方向とする主走査液晶偏向素子を複数個、主走査方向に配列した主走査液晶偏向素子列であり、
光走査制御手段により制御され、光走査ごとに、主走査方向の走査特性である等速性を補正するように、各主走査液晶偏向素子の主走査方向の偏向量を制御する液晶偏向素子装置。 - 請求項34に記載の副走査液晶偏向素子列と、請求項35記載の主走査液晶偏向素子列とを、光偏向走査手段により偏向される光束の光路方向へ順次に配列したことを特徴とする液晶偏向素子装置。
- 請求項36記載の液晶偏向素子装置において、
副走査液晶偏向素子列と、主走査液晶偏向素子列が一体化されていることを特徴とする液晶偏向素子装置。 - 請求項33記載の光走査装置において、
請求項34または35または36または37記載の液晶偏向素子装置を有することを特徴とする光走査装置。 - カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を、光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により、上記各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置において、所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、上記基準走査線曲がりと略合致させるように、上記他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを補正するための走査線補正手段である液晶偏向素子列装置であって、
独立して制御可能な液晶偏向素子を複数個、主走査方向へ配列してなり、走査線の曲がりを補正すべき偏向光束の光路中に配置され、光走査に応じて光束の副走査方向の調整偏向量を液晶偏向素子ごとに制御されることを特徴とする液晶偏向素子列装置。 - 請求項39記載の液晶偏向素子列装置において、
基準走査線曲がりを有する偏向光束を除いた他の偏向光束に対する液晶偏向素子列が、互いに一体化されていることを特徴とする液晶偏向素子列装置。 - 請求項40記載の液晶偏向素子列装置において、
基準走査線曲がりを有する偏向光束が素通りする部分として一体化されたことを特徴とする液晶偏向素子列装置。 - カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を、光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により、上記各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行う光走査装置において、
所望の色成分画像の書込みを行う光束の走査線曲がりを基準走査線曲がりとし、他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを、上記基準走査線曲がりと略合致させるように、上記他の色成分画像を書込む光束の走査線曲がりを補正するための走査線補正手段である液晶偏向素子列装置として、請求項39または40または41記載の液晶偏向素子列装置を有することを特徴とする光走査装置。 - 感光媒体に光走査を行って、画像形成を行う画像形成装置において、
感光媒体に光走査を行う光走査装置として、請求項33または38記載のものを有することを特徴とする画像形成装置。 - カラー画像を構成する2以上の色成分画像に対応する複数の光源装置から放射された各光束を光偏向走査手段により偏向走査し、各偏向光束を、走査結像光学系により上記各色成分画像に対応する被走査面に向かって個別的に集光させて光走査を行い、各色成分画像の書込みを行い、各被走査面に書込まれた各色成分画像により、シート状記録媒体上にカラー画像を形成する画像形成装置において、光走査装置として、請求項42記載のものを用いることを特徴とする画像形成装置。
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