JP2004029372A - マスク、結像特性計測方法、露光方法、及びデバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】投影光学系の結像特性を精度良くかつ効率良く計測する。
【解決手段】まず、同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる回折格子の山形のパターンをウエハに転写し、ウエハ上に転写像TP1Wを形成する。ウエハ上の転写像TP1Wの転写位置は、そのときのデフォーカス量に比例してY軸方向にずれる(ΔY)。次に、逆向きの山形のパターンを転写像TP1Wに重ねて転写し、転写像TP2Wを形成する。そして、ウエハ上の転写像TP1Wと転写像TP2Wとの重なり部に形成されたマーク像SM1の長い方(X軸方向)の対角線の長さを計測する。この対角線の長さに基づいて、符号付きのデフォーカス量を算出することができる。
【選択図】 図9
【解決手段】まず、同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる回折格子の山形のパターンをウエハに転写し、ウエハ上に転写像TP1Wを形成する。ウエハ上の転写像TP1Wの転写位置は、そのときのデフォーカス量に比例してY軸方向にずれる(ΔY)。次に、逆向きの山形のパターンを転写像TP1Wに重ねて転写し、転写像TP2Wを形成する。そして、ウエハ上の転写像TP1Wと転写像TP2Wとの重なり部に形成されたマーク像SM1の長い方(X軸方向)の対角線の長さを計測する。この対角線の長さに基づいて、符号付きのデフォーカス量を算出することができる。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マスク、結像特性計測方法、露光方法、及びデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、露光装置の投影光学系の結像特性の計測に用いて好適なマスク、該マスクを用いて投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法、該結像特性計測方法によって計測された投影光学系の結像特性を考慮して露光を行う露光方法、並びに該露光方法を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)に形成されたパターンを、投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の物体(以下、適宜「ウエハ」ともいう)上に転写する露光装置が用いられている。近年では、この種の装置としては、スループットを重視する観点から、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆる「ステッパ」)や、このステッパを改良したステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置などの逐次移動型の投影露光装置が、比較的多く用いられている。
【0003】
また、このような露光装置では、露光(レチクルパターンのウエハ上への転写)の際のフォーカスずれや投影光学系の収差によって投影像の精度が大きく変化してしまうため、投影光学系の最良フォーカス位置、収差等の結像特性を精度良く計測する技術が必要とされている。
【0004】
投影光学系の光学特性、例えばパターンが結像される像面の形状の正確な計測には、投影光学系の視野内の各計測点における最適なフォーカス位置(最良フォーカス位置)を正確に計測できることが前提となる。
【0005】
最良フォーカス位置を計測する1つの方法が、特開2002―55435号公報に開示されている。この方法では、+1次光と−1次光とで回折効率が異なる非対称な回折格子を用い、その非対称回折格子の像の転写位置が投影光学系のデフォーカスに比例して横方向にシフト(横ずれ)することを利用し、その横ずれ量を計測することによって投影光学系の符号つきのデフォーカス量を計測している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の計測方法にあっては、計測対象である非対称回折格子の像の横ずれ量が非常に小さく、例えば、テストレチクル上に形成された非対称回折格子のパターンの製造誤差、特にパターン線幅の誤差による影響などを無視することができないほどに小さいため、符号つきのデフォーカス量を正確に計測するのが困難であるという不都合があった。
【0007】
また、上記従来の計測方法では、その横ずれ量をSEM(走査型電子顕微鏡)で計測するため、SEMのフォーカス合わせを厳密に行う必要があった。また、SEMで計測する場合には、1点当たりの計測時間が非常に長くなり、多数点の計測を行おうとすると、数時間から数十時間が必要となる。
【0008】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、投影光学系の結像特性の計測に好適に用いることができるマスクを提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、投影光学系の結像特性を精度良くかつ効率良く計測することができる結像特性計測方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第3の目的は、高精度な露光を実現することができる露光方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第4の目的は、高集積度のデバイスの生産性を向上させることができるデバイス製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターン(TP1)を含み、同一次数の正側の回折光と負側の回折光(即ち±n次回折光(nは自然数))との回折効率が異なる第1マーク(SP1)と、前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターン(TP2)を含む第2マーク(SP2)とが、相互に重ならないように、そのパターン面(PA)に形成されたマスク基板(42)を備えるマスク(RT)である。
【0013】
このマスクを用いて、例えば投影露光装置の符号つきのデフォーカス量を計測する場合を考える。例えば、第1回目の露光により、第1マークに含まれる第1パターンの配列を物体上に転写し、次いで、第2回目の露光により、第2マークに含まれる第2パターンを、第1パターンの転写像に重ね合わせて転写する。これにより、第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部の像(潜像、レジスト像などを含む。以下「マーク像」という)が形成される。
【0014】
第1マークにおける正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なっているため、物体上の第1パターンの転写像の形成位置は、投影光学系のデフォーカス量に比例して所定軸方向(第1パターンの配列方向)にずれる。第1パターンの転写像の形成位置がずれると、第1パターンと第2パターンとの相対的な所定軸方向の重ね位置が変化し、その重なり部に形成されるマーク像の形状が変化する。したがって、マーク像の形状を計測し、計測されたマーク像の形状と、設計上のマーク像の形状とを比較すれば、そのときの投影光学系の符号つきのデフォーカス量を求めることができる。一般的に、第1パターンの転写像の形成位置の所定軸方向のずれよりも、マーク像の形状の変化の方が観測しやすい。そのため、第1パターンの転写像の形成位置の所定軸方向に沿ったずれ量を計測するよりも、マーク像の形状の変化を計測した方が、符号つきのデフォーカス量をより高精度に計測することができる。
【0015】
この場合において、マーク像の形状の計測は、物体を現像することなく物体上に形成された潜像に対して行っても良いし、上記マーク像が形成された物体を現像した後、物体上に形成されたレジスト像、あるいはレジスト像が形成された物体をエッチング処理して得られる像(エッチング像)に対して行っても良い。また、第1及び第2パターンの転写像が形成される物体上の感応層はレジスト層に限られるものでなく、例えば光磁気層などでもよい。
【0016】
また、上記マーク像の形状は観測しやすいため、例えば、その観測に、露光装置に設けられているアライメント検出系(LSA系、FIA系)などを用いることができる。
【0017】
また、本発明のマスクは、透過型マスクであってもよいし、反射型マスクであってもよい。
【0018】
この場合において、第1、第2パターンとしては、種々のパターンが考えられるが、請求項2に記載のマスクのごとく、前記第1パターンおよび前記第2パターンのいずれか一方のパターンは、前記所定軸方向のうちの一方の方向に対して時計回りに角度θ1(90°<θ1<180°)を成す第1方向に延びる線状の第1部分と、前記一方の方向に対して時計回りに角度θ2(0°<θ2<90°)を成す第2方向に延びる線状の第2部分とを有する、前記一方の方向に凸の山形のパターンであることとすることができる。この場合、請求項3に記載のマスクのごとく、前記第1パターンおよび前記第2パターンのうちの他方のパターンは、前記第1方向に延びる線状の第1部分と前記第2方向に延びる線状の第2部分とを有し、前記所定軸方向のうち他方の方向に凸の山形のパターンであるとしてもよいし、請求項4に記載のマスクのごとく、前記第1パターンおよび前記第2パターンのうちの他方のパターンは、前記第1方向および前記第2方向に対し角度(θ1−θ2)/2を成す方向に延びるラインパターンであるとしてもよい。
【0019】
本明細書において、「山形」とは、異なる方向に延びる2つの線状の部分から構成されている形状を意味し、くの字形やV字形、及びそれらを変形(例えば、回転、拡大縮小(全体及び一部分)など)した形状を含む概念である。また、第1部分と第2部分の長さは、必ずしも同一でなくとも良い。
【0020】
請求項2〜4のいずれか一項に記載のマスクを用いて、第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部に形成されるマーク像は、デフォーカス量に応じて形状が変化する菱形もしくは三角形となるが、第1方向と第2方向との成す角θ1−θ2においては、請求項5に記載のマスクのごとく、θ1−θ2<90°であることとすることができる。このようにすれば、デフォーカス量に応じた第1パターンの転写像の形成位置の所定軸方向に沿ったずれ量よりも、マーク像の所定軸方向に垂直な方向の長さの変化量の方が大きくなり、デフォーカス量の計測の分解能が向上する。
【0021】
上記請求項1〜5のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項6記載のマスクのごとく、前記第1マークには、前記第1マークにおける正側の回折光と負側の回折光との回折効率を異ならせるために、入射光の位相を異ならせる第1領域と第2領域とが設けられていることとすることができる。マスクを透過する光の位相をシフトさせる技術としては、例えば、位相シフトマスクがある。この位相シフトマスクとしては、レベンソン型や、ハーフトーン型や、クロムレス型など、様々な形態のものを採用することができる。
【0022】
この場合、請求項7に記載のマスクのごとく、前記第1マークは、前記同一次数の正側の回折光と負側の回折光との一方で回折効率がほぼ零となることとすることができる。これによれば、正側の回折光と負側の回折光のいずれか一方はほぼ完全に消滅し、デフォーカス量に応じた第1パターンの転写像の形成位置のずれ量が大きくなるので、符号つきのデフォーカス量をより高精度に計測することができる。
【0023】
上記請求項6又は7に記載のマスクにおいて、請求項8に記載のマスクのごとく、前記第1マークは、前記第1領域と前記第2領域とで前記同一次数の正側の回折光と負側の回折光との一方での位相差がほぼ(2m+1)π(mは整数)となることとすることができる。
【0024】
上記請求項6〜8のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項9に記載のマスクのごとく、前記第1マークは、前記第1領域と前記第2領域とで前記入射光の位相差を90°又はこれと同等とすることとすることができる。「90°又はこれと同等」とは、90°±(360°×k)で表される角度、例えば、450°、−270°などを指す。なおkは整数である。
【0025】
また、上記請求項6〜9のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項10に記載のマスクのごとく、前記第1マークは、前記所定軸方向に関する前記第1パターンの幅と前記第1及び第2領域の幅とがほぼ等しいこととすることができる。
【0026】
また、上記請求項6〜10のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項11に記載のマスクのごとく、前記所定間隔と、前記第1領域の前記所定軸方向の幅と、前記第2領域の前記所定軸方向の幅との比が4:1:1であることとすることができる。
【0027】
本発明では、第1マークにおける正側の回折光および負側の回折光のいずれか一方の回折効率がほぼ0であることが望ましい。上述のような諸条件を設定すれば、第1領域から透過する光の±n次の回折光(nは自然数)と、第2領域を透過する光の±n次の回折光との位相差は、0°と同等か180°と同等かのいずれかとなり、±n次の回折光のいずれか一方を、第1領域を透過する光と第2領域を透過する光とで相殺し、ほぼ完全に消滅させることができる。
【0028】
また、上記請求項1〜11のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項12に記載のマスクのごとく、前記第2マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第2パターンを含むこととすることができる。
【0029】
これによれば、複数のマーク像を形成することができるようになるため、各マーク像の計測値を平均化するなどして、デフォーカス量の計測精度をさらに高めることができる。
【0030】
この場合、請求項13に記載のマスクのごとく、前記第2マークでは、前記正側の回折光および前記負側の回折光のうち、前記第1マークにおいて回折効率が大きい方の符号の回折光の回折効率が小さく、前記第1マークにおいて回折効率が小さい方の符号の回折光の回折効率が大きくなるように各回折光の回折効率が設定されている(即ち、前記第1マークと前記第2マークとで回折効率が大きくなる回折光の符号を異ならせる)こととすることができる。
【0031】
これによれば、第2パターンの転写像の形成位置が、デフォーカス量に応じて第1パターンの転写像の形成位置がずれる方向とは逆の方向にずれるようになるので、デフォーカス量に応じたマーク像の形状の変化量がより大きくなる。そのため、デフォーカス量の計測の分解能が向上する。
【0032】
上記請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項14に記載のマスクのごとく、第3パターン(TP3)を含む第3マーク(SP3)と、前記第3パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる第4パターン(TP4)を含む第4マーク(SP4)とが、相互に重ならないように、かつ、前記第1マーク及び第2マークにも重ならないように、前記パターン面(PA)に各々形成されていることとすることができる。
【0033】
このマスクを用いて投影露光装置の符号付きのデフォーカス量を計測する場合を考える。例えば、第1回目の露光により、第1マークの第1パターンおよび第3マークの第3パターンを物体上に転写し、次いで、第2回目の露光により、第2マークの第2パターンおよび第4マークの第4パターンを、第1パターンの転写像および第3パターンの転写像にそれぞれ重ね合わせて転写する。これにより、第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部の像(潜像、レジスト像などを含む。以下「比較マーク像」という)と、第3パターンと第4パターンとの転写像同士の重なり部の像(潜像、レジスト像などを含む。以下「基準マーク像」という)とが形成される。
【0034】
前述のように、基準マーク像は、第3パターンと第4パターンの相対的な重ね位置に依存しない一定形状を有しており、比較マーク像は第1パターンと第2パターンの相対的な重ね位置に依存して変化する形状を有している。前述のように、第1パターンの転写像の形成位置は、デフォーカス量に応じて所定軸方向にずれるため、デフォーカス量に応じて比較マーク像の形状が変化する。そこで、基準マーク像と比較マーク像の形状の違いを計測することによって、符号付きのデフォーカス量を求めることができる。
【0035】
この場合において、請求項15に記載のマスクのごとく、前記第3パターンは、前記所定軸方向に対して時計回りに角度θ3(90°<θ3<180°)を成す第3方向に延びるラインパターンであり、前記第4パターンは、前記所定軸方向に対して時計回りに角度θ4(0°<θ4<90°)を成す前記第4方向に延びるラインパターンであることとすることができる。
【0036】
これによれば、第3パターンおよび第4パターンの転写像の形成位置がフォーカスずれや他の要因等によって所定軸方向に位置ずれしたとしても、第3パターンと第4パターンとの転写像同士の重なり部に形成される菱形のマーク像は、形状が一定となるので、そのマーク像をデフォーカス量の計測の際の基準とすることができる。このようにすれば、比較マーク像の形状を、設計上のマーク像の形状と比較するのでなく、像形成条件が同一の条件で形成された基準マーク像の形状と比較するので、投影光学系の諸収差や露光条件やレチクル上のパターンの製造誤差などの影響を排除して、より高精度にデフォーカス量を計測することができる。
【0037】
この場合、第3方向の角度θ3および第4方向の角度θ4については、請求項16に記載のマスクのごとく、θ1=θ3およびθ2=θ4の関係が成立することとしてもよいし、請求項17に記載のマスクのごとく、θ3−θ4=(θ1−θ2)/2の関係が成立することとしてもよい。
【0038】
これによれば、比較マーク像が菱形(一組の対角がθ1−θ2)であっても三角形(底角が(θ1−θ2)/2))であっても、基準マーク像の一組の対角をそれらの角度と同じにすれば、両方の像において、その尖った先端部分に生じるレジスト等の形成具合が同程度になり、現像処理あるいはエッチング処理におけるプロセスの影響がほぼ同程度になるとみなすことができる。したがって、結果的に精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0039】
上記請求項14〜17のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項18に記載のマスクのごとく、前記第3マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第3パターンを含むこととすることができる。
【0040】
この場合、請求項19に記載のマスクのごとく、前記第4マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第4パターンを含むこととすることができる。
【0041】
さらに、請求項20に記載のマスクのごとく、前記第3マークは、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比が、前記第1マークと同じであり、前記第4マークは、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比が、前記第2マークと同じであることとすることができる。
【0042】
これによれば、第1マークの第1パターンの形成位置と第3マークの第3パターンの形成位置とのデフォーカスに起因する所定軸方向のずれ量と、第2マークの第2パターンの形成位置と第4マークの第4パターンの形成位置とのデフォーカスに起因する所定軸方向のずれ量が同じとなる。また、第3マークの各回折光と第1マークの各回折光との回折効率が同じとなり、それらの回折光によるトータルの光の強度が同じとなり、第4マークの各回折光と第2マークの各回折光との回折効率が同じとなるため、それらの回折光によるトータルの光の強度も同じとなる。以上のことから、基準マーク像、比較マーク像の形成精度が同程度となるので、デフォーカス量をさらに精度よく計測することができるようになる。
【0043】
請求項21に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスクを用いて投影光学系(PL)の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、第1マークの第1パターンを、前記投影光学系を介して物体(W)上に転写する第1露光工程と;前記投影光学系を介して前記物体上の前記第1パターンの転写像に第2マークの第2パターンを重ねて転写する第2露光工程と;前記物体上の前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成されたマーク像(SM1)を検出する計測工程と;前記マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法である。
【0044】
これによれば、まず、第1露光工程では第1マークの第1パターンを物体上に転写した後、第2露光工程では第2パターンを第1パターンの転写像に重ね合わせて転写する。これにより、第1パターンの転写像に重ね合わせて第2パターンが転写される。上記の第1パターンと第2パターンの転写の結果、物体上の第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部にマーク像(潜像など)が形成される。そして、計測工程ではマーク像が検出され、算出工程ではその検出結果(例えば、前記マーク像の長さ又は形状などに関連する情報)に基づいて投影光学系の結像特性、例えば、符号付きのデフォーカス量が算出される。この場合、マーク像は、第1パターンと第2パターンとの相対的な重ね位置に依存して変化する形状を有している。そこで、そのマーク像を検出し、その検出結果を、デフォーカス量が0であるとき、すなわち第1パターンの転写像の形成位置のずれがないときのマーク像の設計上の値と比較し、それらの差からデフォーカス量が求められる。
【0045】
すなわち、第1マークにおける正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なっているため、物体上の第1パターンの転写像の形成位置は、投影光学系のデフォーカス量に応じて所定軸方向(第1パターンの配列方向)にずれる。第1パターンの転写像の形成位置がずれると、第1パターンと第2パターンとの相対的な所定軸方向の重ね位置が変化し、その重なり部に形成されるマーク像の形状が変化する。したがって、マーク像の形状を計測し、計測されたマーク像の形状と、設計状のマーク像の形状とを比較すれば、そのときの投影光学系の符号つきのデフォーカス量を求めることができる。一般的に、第1パターンの転写像の形成位置の所定軸方向のずれよりも、マーク像の形状の変化の方が観測しやすい。そのため、第1パターン転写像の形成位置の所定軸方向に沿ったずれ量を計測するよりも、マーク像の形状の変化を計測した方が、符号つきのデフォーカス量をより高精度に計測することができる。
【0046】
請求項22に記載の発明は、請求項14〜20のいずれか一項に記載のマスクを用いて投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、第1マークの第1パターンおよび第3マークの第3パターンを、前記投影光学系を介して物体上に転写する第1露光工程と;前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に第2マークの第2パターンを重ねて転写し、前記第3パターンの転写像に第4マークの第4パターンを重ねて転写する第2露光工程と;前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成された比較マーク像(SM1)を検出し、前記第3パターンと前記第4パターンとの転写像の重なり部に形成された基準マーク像(HM1)を検出する計測工程と;前記基準マーク像および比較マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法である。
【0047】
これによれば、まず、第1露光工程では第1マークの第1パターンおよび第3マークの第3パターンを物体上に転写した後、第2露光工程では、第2マークの第2パターンおよび第4マークの第4パターンを物体上に転写する。これにより、第1パターンおよび第3パターンの転写像に重ね合わせて第2パターンおよび第4パターンがそれぞれ転写される。
【0048】
上記の第1パターンと第2パターンの転写の結果、物体上の第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部に比較マーク像(潜像など)が形成され、第3パターンと第4パターンの転写の結果、物体上の第3パターンと第4パターンとの転写像同士の重なり部に基準マーク像(潜像など)が形成される。そして、計測工程では比較マーク像と基準マーク像とが検出され、算出工程では、それらの検出結果に基づいて投影光学系の結像特性、例えば、デフォーカス量が算出される。この場合、比較マーク像は、第1パターンと第2パターンとの相対的な重ね位置に依存して変化する形状を有しており、基準マーク像は、第3パターンと第4パターンとの相対的な重ね位置に依存せず一定形状を有している。そこで、比較マーク像と基準マーク像とを検出すれば、それらの検出結果の差に基づいて、符号付きデフォーカス量を求めることができる。すなわち、比較マーク像の形状を、設計上の比較マーク像の形状と比較せずに、実際に比較マーク像とともに形成される基準マーク像の形状と比較して符号つきフォーカス量を求めている。
【0049】
このようにすれば、比較マーク像の形状を、設計上のマーク像の形状と比較するのでなく、像形成条件が同一の条件で形成された基準マーク像の形状と比較するので、投影光学系の諸収差や露光条件やレチクル上のパターンの製造誤差などの影響を排除して、より高精度に符号付きデフォーカス量を計測することができる。
【0050】
請求項23に記載の発明は、投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる第1マークに含まれる、所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターンを、前記投影光学系を介して物体上に転写する第1露光工程と;前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターンを重ねて転写する第2露光工程と;前記物体上の第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成されたマーク像を検出する計測工程と;前記マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法である。
【0051】
ここで、第1パターンがパターン面に形成されたマスクと、第2パターンがパターン面に形成されたマスクとは、同一のマスクである必要はない。
【0052】
請求項24に記載の発明は、投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる第1マークに含まれる、所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターンと、第3パターンとを物体上に前記投影光学系を介して転写する第1露光工程と;前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターンと、前記第3パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる第4パターンとを重ねて転写する第2露光工程と;前記物体上の前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成された比較マーク像を検出し、前記第3パターンと前記第4パターンとの転写像の重なり部に形成された基準マーク像を検出する計測工程と;前記基準マーク像および比較マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法である。
【0053】
ここで、第1マークおよび第3マークがパターン面に形成されたマスクと、第2パターンおよび第4パターンがパターン面に形成されたマスクとは、同一のマスクである必要はない。
【0054】
請求項25に記載の発明は、マスクのパターンを、投影光学系を介して物体上に転写する露光方法であって、請求項21〜24のいずれか一項に記載の結像特性計測方法によって前記投影光学系の結像特性を計測する工程と;前記計測された結像特性を考慮して露光の際の各種条件を調整したうえで、前記マスクのパターンを前記物体上に転写する工程と;を含む露光方法である。
【0055】
これによれば、請求項21〜24のいずれか一項に記載の結像特性計測方法によって計測された結像特性によって投影光学系が調整されたうえで、露光が行われるため、微細パターンを物体上に高精度に転写することができる。
【0056】
請求項26に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、請求項25に記載の露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法である。
【0057】
これによれば、リソグラフィ工程で、請求項25に記載の露光方法により微細パターンを物体上に精度良く転写することができるので、結果的に高集積度のデバイス生産性(歩留まりを含む)を向上させることができる。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0059】
図1には、本発明に係る結像特性計測方法及び露光方法の実施に好適な一実施形態に係る露光装置100が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。
【0060】
この露光装置100は、照明系IOP、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージRST(マスクステージ)、レチクルRに形成されたパターンの像を感光剤(フォトレジスト)が塗布された物体としてのウエハW上に投影する投影光学系PL、ウエハWを保持して2次元平面(XY平面内)を移動するXYステージ20(物体ステージ)、XYステージ20を駆動する駆動系22、及びこれらの制御系等を備えている。この制御系は、装置全体を統括制御する主制御装置28を中心として構成されている。
【0061】
前記照明系IOPは、KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザなどから成る光源と、オプティカルインテグレータ又はホモジナイザ(フライアイレンズ又はロッド型(内面反射型)インテグレータ、又は回折光学素子など)、リレーレンズ、可変NDフィルタ、コンデンサレンズ、レチクルブラインド(又はマスキングブレード)、及びダイクロイックミラー等(いずれも図示省略)を含む照明光学系とから構成されている。この照明系IOPは、回路パターン等が描かれたレチクルR上のレチクルブラインドで規定された投影光学系PLの視野内でX軸方向に細長い長方形のスリット状の照明領域を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。
【0062】
前記レチクルステージRSTは、照明系IOPの図1における下方に配置されている。このレチクルステージRST上には不図示のバキュームチャック等を介してレチクルRが吸着保持されている。レチクルステージRSTは、Y軸方向(図1における紙面左右方向)、X軸方向(図1における紙面直交方向)及びθz方向(XY面に直交するZ軸回りの回転方向)に微小駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここではY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。なお、レチクルステージRSTはレチクルRを少なくとも3自由度(例えば、X軸及びY軸方向とθz方向)で微動する微動部と、走査方向に長いストロークを持つ粗動部とを含む構成でもよい。
【0063】
レチクルステージRST上にはレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)21からのレーザビームを反射する移動鏡15が固定されている。レチクルステージRSTの移動面内の位置はレチクル干渉計21によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。ここで、実際には、レチクルステージRST上にはY軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とX軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とが設けられ、これらの移動鏡に対応してレチクルY干渉計とレチクルX干渉計とが設けられている。しかし、図1ではこれらが代表的に移動鏡15、レチクル干渉計21として示されている。ここで、レチクルY干渉計とレチクルX干渉計の一方、例えばレチクルY干渉計は、測長軸を2軸有する2軸干渉計であり、このレチクルY干渉計の計測値に基づきレチクルステージRSTのY位置に加え、θz方向も計測できるようになっている。
【0064】
前記レチクル干渉計21からのレチクルステージRSTの位置情報は主制御装置28に送られる。主制御装置28はこのレチクルステージRSTの位置情報に基づいて駆動系29を介してレチクルステージRSTを駆動する。
【0065】
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に、その光軸AXpの方向がXY面に直交するZ軸方向となるように配置されている。この投影光学系PLとしては、ここでは両側テレセントリックな縮小系であってZ軸方向の共通の光軸AXpを有する複数枚のレンズエレメントから成る屈折光学系が用いられている。レンズエレメントのうちの特定の複数枚は、主制御装置28からの指令に基づいて、図示しない結像特性補正コントローラによって制御され、投影光学系PLの光学特性(結像特性を含む)、例えば倍率、ディストーション、コマ収差、及び像面湾曲などを調整できるようになっている。
【0066】
前記XYステージ20は、実際には不図示のベース上をY軸方向に移動するYステージと、このYステージ上をX軸方向に移動するXステージとで構成されているが、図1ではこれらがXYステージ20として示されている。このXYステージ20上にウエハテーブル18が搭載され、このウエハテーブル18上に不図示のウエハホルダを介してウエハWが真空吸着等によって保持されている。
【0067】
前記XYステージ20は、走査方向(Y軸方向)の移動のみならず、ウエハW上の複数のショット領域を前記照明領域と共役な視野内の投影領域に位置させることができるように、走査方向に直交する非走査方向(X軸方向)にも移動可能に構成されている。そして、ウエハW上の各ショット領域を走査(スキャン)露光する動作と、次ショットの露光のための走査開始位置(加速開始位置)まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作を行う。
【0068】
前記ウエハテーブル18は、ウエハWを保持するウエハホルダをZ軸方向及びXY面に対する傾斜方向に微小駆動するものである。このウエハテーブル18の上面には、移動鏡24が設けられており、この移動鏡24にレーザビームを投射して、その反射光を受光することにより、ウエハテーブル18のXY面内の位置を計測するレーザ干渉計26が移動鏡24の反射面に対向して設けられている。なお、実際には、移動鏡はX軸に直交する反射面を有するX移動鏡と、Y軸に直交する反射面を有するY移動鏡とが設けられ、これに対応してレーザ干渉計もX軸方向位置計測用のXレーザ干渉計とY軸方向位置計測用のYレーザ干渉計とが設けられているが、図1ではこれらが代表して移動鏡24、レーザ干渉計26として図示されている。なお、Xレーザ干渉計及びYレーザ干渉計は測長軸を複数有する多軸干渉計であり、ウエハテーブル18のX、Y位置の他、回転(ヨーイング(Z軸回りの回転であるθz回転)、ピッチング(X軸回りの回転であるθx回転)、ローリング(Y軸回りの回転であるθy回転))も計測可能となっている。従って、以下の説明ではレーザ干渉計26によって、ウエハテーブル18のX、Y、θz、θy、θxの5自由度方向の位置が計測されるものとする。
【0069】
レーザ干渉計26の計測値は主制御装置28に供給され、主制御装置28はこのレーザ干渉計26の計測値をモニタしつつ、駆動系22を介してXYステージ20を駆動することにより、ウエハテーブル18の位置制御が行われる。
【0070】
ウエハW表面のZ軸方向位置及び傾斜量は、例えば特開平6−283403号公報などに開示される送光系50a及び受光系50bを有する斜入射方式の多点焦点位置検出系から成るフォーカスセンサAFSによって計測されるようになっている。このフォーカスセンサAFSの計測値も主制御装置28に供給されており、主制御装置28では、フォーカスセンサAFSの計測値に基づいて駆動系22を介してウエハテーブル18を微少駆動して、投影光学系PLの光軸方向に関するウエハWの位置及び傾きを制御するようになっている。
【0071】
すなわち、このようにしてウエハテーブル18を介してウエハWがX、Y、Z、θx、θyの5自由度方向の位置及び姿勢制御がなされるようになっている。なお、残りのθz(ヨーイング)の誤差については、レーザ干渉計26で計測されたウエハテーブル18のヨーイング情報に基づいてレチクルステージRSTとウエハテーブル18との少なくとも一方を回転させることによって補正される。
【0072】
また、ウエハテーブル18上には、その表面がウエハWの表面と同じ高さになるような基準板FPが固定されている。この基準板FPの表面には、後述するアライメント検出系ASのいわゆるベースライン計測等に用いられる基準マークを含む各種の基準マークが形成されている。
【0073】
更に、本実施形態では、投影光学系PLの側面に、ウエハWに形成されたアライメントマークを検出するマーク検出系としてのオフ・アクシス方式のアライメント検出系ASが設けられている。このアライメント検出系ASは、例えば、LSA系、及びFIA系と呼ばれるアライメントセンサを有しており、基準板FP上の基準マーク及びウエハ上のアライメントマークのX、Y2次元方向の位置計測を行なうことが可能である。
【0074】
ここで、LSA系は、レーザ光をマークに照射して、回折・散乱された光を利用してマーク位置を計測する最も汎用性のあるセンサであり、従来から幅広いプロセスウエハに使用されている。FIA系は、ハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマーク画像を画像処理することによってマーク位置を計測するセンサであり、アルミ層やウエハ表面の非対称マークに有効に使用される。
【0075】
アライメント制御装置16は、アライメント検出系ASからの情報DSをA/D変換し、さらにこのデジタル化された信号を演算処理してマーク位置を検出する。この検出結果は、アライメント制御装置16から主制御装置28に供給されるようになっている。
【0076】
さらに、本実施形態の露光装置100では、レチクルRの上方に、例えば特開平7−176468号公報等に開示される、投影光学系PLを介してレチクルR上のレチクルマークまたはレチクルステージRST上の基準マーク(共に図示省略)と基準板FP上のマークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント検出系(不図示)が設けられている。これらのレチクルアライメント検出系の検出信号は、アライメント制御装置16を介して主制御装置28に供給される。露光装置100で、実際に走査露光を行う際には、これらのレチクルアライメント検出系により、レチクルR上のレチクルマークまたはレチクルステージRST上の基準マーク(共に図示省略)と基準板FP上のマークとの相対位置が検出され、そのときのレチクル干渉計21及びウエハ干渉計26の測定値とから、レチクル干渉計21の測長軸によって規定されるレチクルステージRSTの座標系とウエハ干渉計26の測長軸によって規定されるXYステージ20の座標系との関係が求められることによって、レチクルアライメントが実行される。
【0077】
次に、本発明に係る投影光学系の結像特性の計測に用いられるレチクルの一例について説明する。
【0078】
図2には、投影光学系PLの結像特性の計測に用いられるレチクルRTの一例が示されている。図2は、レチクルRTを、パターン面側(図1における下面側)から見た平面図である。このレチクルRTは、ほぼ正方形のマスク物体としてのガラス基板42の中央に、パターン領域PAが設けられ、そのパターン領域PA内に、後述する計測用パターンRP1が配置されている。レチクルRTのパターン領域PA内における計測用パターンRP1が配置されていない領域は、遮光パターンとなっている。なお、パターン領域PAの中心、すなわちレチクルRTの中心(レチクルセンタ)を通るパターン領域PAのX軸方向の両側には、例えば一対のレチクルアライメントマークRM1,RM2が形成されている。また、本実施形態では、パターン領域PA内で計測用パターンRP1が形成される領域以外を遮光部とするものとしたが、パターン領域PAの内部を光透過部としてその一部に計測用パターンRP1を形成してもよい。
【0079】
ここで、本実施形態において、レチクルRTのパターン領域PA内に配置される計測用パターンRP1について説明する。パターン領域PA内にはその一部を光透過部として、例えば、図3に拡大して示されるような計測用パターンRP1が配置されている。この計測用パターンRP1は、投影光学系の結像特性を計測するためのパターンである。計測用パターンRP1では、4種類の回折格子SP1〜SP4が、相互に重ならないように形成されている。
【0080】
回折格子SP1(第1マーク)は、Y軸方向(所定軸方向)に所定間隔dで配置された複数のパターンTP1(第1パターン)を含んでいる。各パターンTP1は、―Y方向(所定軸方向のうちの一方の方向)に対し紙面内時計回りに角度θ1(90°<θ1<180°)を成す第1方向に延びる線状の第1部分と、―Y方向に対し紙面内時計回りに角度θ2(0°<θ2<90°)を成す第2方向に延びる線状の第2部分とを有し、−Y方向に凸の全体として山形のパターンである。各パターンTP1は、光を遮光する光遮蔽部(遮光部)となっている。なお、各パターンTP1のY軸方向の線幅はLとなっており、L=d/2の関係がある。
【0081】
回折格子SP2(第2マーク)は、Y軸方向に所定間隔dで配置された複数のパターンTP2(第2パターン)を含んでいる。各パターンTP2は、前述の第1方向に延びる線状の第1部分と、前述の第2方向に延びる線状の第2部分とを有し、+Y方向(所定軸方向のうちの他方の方向)に凸の全体として山形のパターンである。すなわち、各パターンTP2は、各パターンTP1と逆向きのパターンとなっている。各パターンTP2は、光を遮光する光遮蔽部(遮光部)となっている。なお、各パターンTP2のY軸方向の線幅は、パターンTP1と同じLである。後述するように、パターンTP1とパターンTP2とは、互いに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化するような形状となっている。また、本実施形態では、パターンTP1が+Y方向に凸となっていて、パターンTP2が−Y方向に凸となっていてもよい。すなわち、パターンTP1とパターンTP2との凸のむきが互いに逆であればよい。
【0082】
回折格子SP3(第3マーク)は、Y軸方向に所定間隔dで配置された複数のパターンTP3(第3パターン)を含んでいる。各パターンTP3は、第3方向(角度θ3)に延びるラインパターンである。各パターンTP3は、光を遮光する光遮蔽部(遮光部)となっている。なお、各パターンTP3のY軸方向の線幅は、パターンTP1と同じLである。
【0083】
回折格子SP4(第4マーク)は、Y軸方向に所定間隔dで配置された複数のパターンTP4(第4パターン)を含んでいる。各パターンTP4は、第4方向(角度θ4)に延びるラインパターンである。各パターンTP4は、光を遮光する光遮蔽部(遮光部)となっている。なお、各パターンTP4のY軸方向の線幅は、パターンTP1と同じLである。本実施形態ではθ1=θ3、θ2=θ4となっている。後述するように、パターンTP3とパターンTP4とは、互いに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる。
【0084】
回折格子SP2、SP4は、回折格子SP1、SP3の紙面下方(−X方向)に配置されており、パターンTP1およびパターンTP3の中心とパターンTP2およびパターンTP4の中心とはX軸方向にΔRXだけ離れている。すなわち、回折格子SP1と回折格子SP2の位置関係は、回折格子SP3と回折格子SP4の位置関係と同一である。
【0085】
なお、本実施形態においては、計測パターンRP1の形成領域のうち、パターンTP1〜TP4以外の領域は、光を透過させる光透過部であるとする。また、Y軸方向に関する回折格子SP1とSP3との間隔、及び回折格子SP2とSP4との間隔は等しく、かつ回折格子の大きさに応じてその間隔が決定されている。
【0086】
図4(A)、図4(B)には、図2のY軸に平行な線分A−A’でレチクルRTを切断した場合の回折格子SP1付近の断面図が示されている。図4(A)、図4(B)に示されるように、ガラス基板42に、パターンTP1の形状を有する遮光部30が、Y軸方向に所定間隔dで配設されることによって、回折格子SP1が形成されている。各遮光部30の間を、光を透過させる光透過部31であるとする。遮光部30のY軸方向の線幅Lは、所定の間隔dの1/2であるため、光透過部31のY軸方向の線幅もLとなる。即ち、回折格子SP1はY軸方向に所定間隔(ピッチ)dで配列され、かつデューティ比が1:1となるラインアンドスペースパターンである。
【0087】
レチクルRTに紙面上方から垂直に光が入射すると、回折格子SP1の各光透過部31を通過した光の回折現象によって、0次光の他に、正側(紙面右側)に進むn次光(nは自然数)と負側(紙面左側)に進むn次光とが発生する。図4(A)、図4(B)では、説明を簡単にするため、0次光と±1次光が図示されている。なお、紙面下方に直進する0次光と、±1次光とのなす角度αは、所定間隔dと照明光ILの波長λによって決定され、sinα=λ/dの関係が成立する。
【0088】
+1次光と−1次光との回折効率を異ならせるため、回折格子SP1の光透過部31の一部には、入射する光の位相をシフトしないで透過する領域(第1領域)と、入射する光の位相をシフトさせて透過する領域(第2領域)とが設けられている。図4では、光透過部31のY軸方向(紙面左右方向)における右半分(幅L/2)の部分が第1領域となり、左半分(幅L/2)が第2領域となっている。第1領域を透過する光と第2領域を透過する光とは位相が異なったものとなる。なお、本実施形態では、第1領域と第2領域とで同一次数の正側の回折光及び負側の回折光(即ち±n次回折光)の一方での位相差をπとするように段差量(深さ)が設定された凹部をガラス基板42に形成した後、ガラス基板42に蒸着したクロムなどの遮光層をパターニングすることで、その凹部の一部にパターンTP1を形成し、残りを第1領域としているが、これとは逆に第2領域となるガラス基板42の一部を上記と同じ凹部とし、パターンTP1が形成されるガラス基板42の表面の一部を第1領域としてもよい。また、図4では隣接するパターンTP1に挟まれた光透過部の右半分を第1領域、左半分を第2領域としているが、これとは逆に右半分を第2領域、左半分を第1領域としてもよい。さらに、第1領域と第2領域とで±n次回折光の一方での位相差をπとするために、本実施形態では、ガラス基板42に凹部を設けるものとしているが、例えば誘電体膜などからなる位相シフタをガラス基板42に形成してもよい。また、第1及び第2領域における±n次回折光の一方での位相差はπに限られるものではなく(2m+1)π(mは整数)であればよい。以上のように、本実施形態の回折格子SP1の構成は任意で良く、要は±n次回折光の回折効率が異なればよく、特に±n次回折光の一方が実質的になくなる(即ち、第1領域と第2領域とで±n次回折光の一方での位相差がほぼ(2m+1)πとなる)ことが好ましい。
【0089】
図4(A)には、第1領域を透過する0次光および−1次光と、第2領域を透過する0次光および−1次光とがそれぞれ示されている。第2領域を透過する光は、第1領域を透過する光よりπ/2だけ位相が早まっている。さらに、−1次光については、第1領域を透過する光の−1次光と、第2領域を透過する光の−1次光との間には、光路差((L/2)sinα)が発生する。この光路差は、sinα=λ/dから(L/2)×(λ/d)となる。そして、L=d/2であるから、この光路差はλ/4となる。この光路差によって、第1領域を透過する光の−1次光と第2領域を透過する光の−1次光との位相差はキャンセルされ、両者は同位相となる。したがって、第1領域を透過する光の−1次光と、第2領域を透過する光の−1次光の間には、結果的に位相差が生じず、−1次光は、両者によって強められる。
【0090】
一方、図4(B)には、第1領域を透過する光の0次光および+1次光と、第2領域を透過する光の0次光および1次光とがそれぞれ示されている。前述のように、第2領域を透過する光は、第1領域を透過する光よりもπ/2だけ位相が早まっている。さらに、+1次光については、第1領域を透過する光の+1次光と、第2領域を透過する光の+1次光の間には光路差((L/2)sinα)が発生する。したがって、この光路差は、(L/2)×(λ/d)となる。そして、L=d/2であるから、この光路差はλ/4となる。したがって、この光路差λ/4と第1領域および第2領域の位相差とから、第1領域を透過する光の+1次光と、第2領域を透過する光の+1次光との間には結果的に位相差πが生じ、+1次光は、両者によって相殺され、ほぼ消滅する。
【0091】
すなわち、この回折格子SP1では、透過する光のうち、+1次光が消滅し、0次光と−1次光だけが残るようになる。なお、2次以上の光についても−1次光と同様に正側の回折光は消滅し、0次光と負側の回折光とが残るようになる。
【0092】
本実施形態のように、回折格子SP1の所定間隔dと、第1領域のY軸方向の幅(L/2)と、第2領域のY軸方向の幅(L/2)との比を4:1:1にすれば、第1領域を透過する光の回折光と、第2領域を透過する光の回折光との光路差の絶対値はλ/4となる。そこで、第1領域と第2領域とを透過する光の位相差をπ/2とすれば、第1領域と第2領域との同一次数の正側の回折光と負側の回折光との位相差は、πか0かのいずれかとなり、一方の回折光は消滅し、もう一方の回折光は最も強めあうようになる。
【0093】
したがって、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の差を最大にするには、本実施形態のように、回折格子の所定間隔dと、第1領域のY軸方向の幅L/2と、第2領域の幅L/2との比を4:1:1にし、第1領域を透過する光と第2領域を透過する光との位相差をπ/2、又はこれと同等(即ち、2mπ(mは整数)を加算した値)とするのが望ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、回折格子SP1における同一次数の正側の回折光と負側の回折光の回折効率が異なるように、回折格子の所定間隔dと、第1領域のY軸方向の幅と、第2領域の幅との比や、第1領域を透過する光と第2領域を透過する光との位相差が、設定されていればよい。
【0094】
図5には、デフォーカスによって回折格子SP1の転写像がずれる様子が示されている。図5に示されるように、回折格子SP1では、前述のように+1次光が消滅しており、ウエハテーブル18上のウエハWには、0次光と−1次光によって結像された回折格子SP1の像が転写される。したがって、投影光学系PLとウエハWとの距離が近いときには、ウエハW上の回折格子SP1の各パターンTP1の転写像の形成位置は−Y方向にずれ、投影光学系PLとウエハWとの距離が遠くなる方向にずれているときには、ウエハW上の回折格子SP1の各パターンTP1の転写像の形成位置は、+Y方向にずれることになる。なお、本実施形態では、他の回折格子SP2〜SP4の同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率は同じであるとする。
【0095】
次に、本実施形態の露光装置100によりレチクルパターンをウエハW上に転写して、投影光学系PLの結像特性を計測する際の動作の流れについて簡単に説明する。
【0096】
まず、ウエハWが不図示のウエハローダによりウエハテーブル18上にロードされるとともに、レチクルRTが不図示のレチクルローダによりレチクルステージRST上にロードされる。
【0097】
主制御装置28は、ウエハテーブル18上に設けられた基準板FPの表面に形成されている一対の基準マーク(不図示)の中点が投影光学系PLの光軸とほぼ一致するように、ウエハテーブル18を移動する。この移動は、主制御装置28によりレーザ干渉計26の計測結果をモニタしつつ駆動系22を介してXYステージ20を移動することにより行われる。次に、主制御装置28は、レチクルRTの中心(レチクルセンタ)が投影光学系PLの光軸とほぼ一致するように、駆動系29を介してレチクルステージRSTの位置を調整する。このとき、例えば、前述のレチクルアライメント検出系(不図示)により投影光学系PLを介してレチクルアライメントマークRM1,RM2と対応する前述の基準マークとの相対位置が検出される。
【0098】
そして、主制御装置28は、レチクルアライメント検出系によって検出された相対位置の検出結果に基づいてレチクルアライメントマークRM1,RM2と対応する前述の基準マークとの相対位置誤差がともに最小となるように駆動系29を介してレチクルステージRSTのXY面内の位置を調整する。これにより、レチクルRTの中心(レチクルセンタ)が投影光学系PLの光軸と正確にほぼ一致するとともにレチクルRTの回転角もレーザ干渉計26の測長軸で規定される直交座標系の座標軸に正確に一致する。ここで、本実施形態では、ウエハ上での照明光ILの照射領域(投影光学系PLに関して前述の照明領域と共役な細長い長方形状の投影領域)の中心(即ち、投影光学系PLの光軸位置)を計測点としてベストフォーカス位置を計測するものとし、レチクルRTの中心と投影光学系PLの光軸とが一致すると、計測用パターンRP1はその中心が投影光学系PLの物体面側でその計測点に対応する位置(ここでは光軸位置)とほぼ一致するように配置される。このとき、計測用パターンRP1は、X軸方向に関して回折格子SP1、SP3と回折格子SP2、SP4との中心点が光軸位置とほぼ一致し、かつY軸方向に関して回折格子SP1、SP2と回折格子SP3、SP4との中心点が光軸位置とほぼ一致することになる。
【0099】
次いで、主制御装置28は、レーザ干渉計26の計測結果をモニタしつつ駆動系22を介してXYステージ20を移動することにより、本実施形態では表面に感光剤としてポジ型のレジストが塗布されたウエハWを投影光学系PLの下方の位置に移動させる。なお、本実施形態の場合、レチクルRTの計測用パターンRP1が配置されている領域以外の領域は遮光パターンとなっている。即ちレチクルRT上の照明領域に照射される照明光ILの大部分は投影光学系PLに入射しないので、ウエハWへの計測用パターンRP1の転写時に照明光ILの照射により投影光学系PLに蓄積される熱エネルギが少なくて済み、その転写時における投影光学系PLの光学特性の変動を最小限に抑えることが可能となっている。但し、レチクルRTのパターン領域PA内で計測用パターンRP1の形成領域以外を遮光パターンではなく光透過部としてもよく、この場合には、ウエハWへの計測用パターンRP1の転写に先立ち、レチクルRTの計測用パターンRP1のみ、あるいは計測用パターンRP1を含む照明領域よりも狭い所定領域のみに照明光ILが照射されるように、照明系IOP内の不図示のレチクルブラインドを駆動して、レチクルRT上での照明領域の大きさ及び位置を調整することが好ましい。
【0100】
この状態で、主制御装置28は1回目の露光を行う。ここでは、投影光学系PLの結像特性を計測するのが目的であるために、露光中は、レチクルRTとウエハW、すなわちレチクルステージRSTとXYステージ20は、静止させたままとする。これにより、レチクルRTのパターンが投影光学系PLを介してウエハW上のフォトレジスト層に縮小転写される(第1露光工程)。また、このとき通常の露光ドーズ量(すなわち、レジストの感度特性に応じた適正量)で露光を行う。これにより、ウエハW上のレジスト層に図6中に点線で示されるような回折格子SP1、SP2の像SP1W、SP2Wと回折格子SP3、SP4の像SP3W、SP4Wとが転写される。ここでは、転写像SP1W〜SP4Wは、それぞれ回折格子SP1〜SP4の転写像に対応している。
【0101】
次いで、主制御装置28は、パターンTP1とパターンTP2との位置関係に基づいて、XYステージ20を所定軸方向に所定量だけ移動する。図3に示されるように、回折格子SP1、SP3の中心と回折格子SP2、SP4との中心とは、X軸方向にΔRXだけ離れていることから、投影光学系PLの倍率が、例えば1/4であれば、ΔRX/4の距離だけ−X方向にXYステージ20を移動する。このとき、主制御装置28は、レーザ干渉計26の計測値をモニタしつつ、駆動系22を介してXYステージ20を移動する。
【0102】
上述のようにして目的の位置(ΔRX/4だけ−X方向に移動した位置)へのウエハWの位置決めが完了すると、主制御装置28は、前述の露光と同様の露光(2回目の露光)を行う(第2露光工程)。なお、このときも通常の露光ドーズ量で露光を行う。これにより、図6中に実線で示される回折格子SP1〜SP4の像がウエハW上に転写される。なお、1回目の露光と2回目の露光とで投影光学系PLの光軸方向(Z軸方向)に関するウエハWの位置(フォーカス位置)は等しければよくその位置は任意で構わないが、本実施形態では、フォーカスセンサAFSを用い、例えば、投影光学系PLに関する既知の最良フォーカス位置(設計値など)にウエハWを設定しておくものとする。また、2回目の露光に先立ってウエハWを移動させるものとしたが、その代わりに、あるいはそれと組み合わせてレチクルRTを移動させてもよい。
【0103】
この場合、1回目の露光においてウエハW上のレジスト層に転写された回折格子SP1、SP3の潜像に回折格子SP2、SP4の像がそれぞれ重なる位置に転写される。すなわち、転写像SP1Wに回折パターンSP2の像が、転写像SP3Wに回折格子SP4の像がそれぞれ重なる位置に転写される。なお、回折格子SP1〜SP4の転写像SP1W〜SP4Wの中の1つ1つの転写像、すなわちパターンTP1〜TP4の転写像をそれぞれ転写像TP1W〜TP4Wとする。
【0104】
そして、2回目の露光が終了すると、主制御装置28の指示に応じて、不図示のウエハローダによって、ウエハWは、ウエハテーブル18上からアンロードされた後、不図示のウエハ搬送系により、露光装置100にインラインにて接続されている不図示のコータ・デベロッパに搬送される。
【0105】
ウエハWは、このコータ・デベロッパ内で現像される。この現像の終了により、ウエハW上には、一例として図7に示されるように、転写像TP1WとTP2Wの重なり部に比較マーク像SM1が、転写像TP3WとTP4Wの重なり部に基準マーク像HM1が形成され、比較マーク像SM1の配列と、基準マーク像HM1の配列とが形成される。なお、比較マーク像SM1と基準マーク像HM1は、投影光学系PLの結像特性を検出するためのマーク像である。なお、比較マーク像SM1は、長い方の対角線がX軸方向を向いている。そして、比較マーク像SM1は1組の対角の角度がθである。また、基準マーク像HM1は四角形の長い方の対角線がX軸方向を向いている。さらに、基準マーク像HM1は比較マーク像SM1と同様に1組の対角の角度がθである。比較マーク像SM1および基準マーク像HM1の一対の対角θの大きさは、θ1−θ2(=θ3−θ4)となる。
【0106】
ここで、基準マーク像HM1の形状が、重ね位置に依存せずに一定形状であることについて、一例として、図8を用いて説明する。図8(A)には、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が0であった場合の転写像TP3Wと転写像TP4Wの重なり状態が示され、図8(B)には、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が−Y方向にΔYであった場合の転写像TP3Wと転写像TP4Wの重なり状態が示されている。また、図8(C)には、転写像TP3Wの+Y方向のずれ量がΔYであった場合の転写像TP3WとTP4Wの重なり状態が示されている。なお、本実施形態では、回折格子SP3および回折格子SP4の正側の回折光と負側の回折光との回折効率は同じであるため、デフォーカスによって、転写像TP3Wおよび転写像TP4Wの形成位置がずれることはない。
【0107】
転写像TP3W及び転写像TP4Wは、それぞれ異なる方向に伸びる同一線幅の線状(ラインパターン)の転写像であるため、図8に示されるように、転写像TP3Wの形成位置がY軸方向にずれることによって、転写像TP3Wと転写像TP4Wとが重なるときの4つの交点(各交点を結んだ形状が基準マーク像HM1の形状である)の位置はそれぞれ異なった位置となる。しかし、各交点間の距離は変化しないため、基準マーク像HM1の形状は、重ね位置に依存せず、いずれの場合も同一形状となる。
【0108】
一方、比較マーク像SM1が、重ね位置に依存して変化することについて、一例として、図9を用いて説明する。図9(A)には、転写像TP1Wの形成位置のずれがない場合、すなわちデフォーカス量が0である場合の転写像TP1Wと転写像TP2Wの重なり状態が示されている。また、図9(B)には、転写像TP1Wの形成位置のずれ量が−Y方向にΔYであった場合、すなわち投影光学系PLとウエハWとの距離が近くなる方向にフォーカスがずれている場合の転写像TP1Wと転写像TP2Wの重なり状態が示されている。また、図9(C)には、転写像TP1WのY軸方向のずれ量が+Y方向にΔYであった場合、すなわち投影光学系PLとウエハWとの距離が遠くなる方向にフォーカスがずれている場合の転写像TP1Wの転写像TP2Wの重なり状態が示されている。ここでは、転写像TP1W及び転写像TP2Wがそれぞれ反対向きに凸の山形の像であるために、転写像TP1Wの形成位置がY軸方向にずれれば、転写像TP1WとTP2Wとが重なるときの交点の数(各交点を結んだ形状が比較マーク像SM1の形状である)や、各交点間の距離が変化する。従って、比較マーク像SM1の形状は、重ね位置に依存して変化することとなる。
【0109】
なお、比較マーク像SM1の形状は、角度θの値や、重ね位置のずれ量及びずれ方向により、四角形(菱形や平行四辺形)だけではなく、図9(C)に示されるように、四角形の一部が欠落した多角形となる場合もある。但し、以下の説明では、比較マーク像SM1の形状が、四角形の一部が欠落した多角形の場合には、便宜上、欠落がないものとして取り扱うこととする。このような取り扱いをしても、デフォーカス量の計測結果に影響はないからである。
【0110】
前述した理由から、基準マーク像HM1の形状と比較マーク像SM1の形状とを比較することにより、パターンの重ね位置のY軸方向のずれ情報(位置ずれ量)を求めることができる。例えば、正確にパターンの重ね合わせが行われると基準マーク像HM1と比較マーク像SM1とが同一形状となるような位置関係に各パターンTP1〜TP4がパターン領域PAに配置されているものとして、基準マーク像HM1と比較マーク像SM1のそれぞれ対応する部分の長さLH1、LS1を計測し、それぞれの計測値が同じであれば、Y軸方向の重ね合わせのずれ量が0であることがわかり、それぞれの計測値が異なっていれば、Y軸方向に重ね合わせがずれていることを示している。そして、このY軸方向のずれ量がデフォーカス量に比例するものであるため、両マーク像HM1、SM1の長さLH1、LS1の差に基づいてそのデフォーカス量を求めることができる。
【0111】
そこで、ウエハW上に形成された比較マーク像SM1及び基準マーク像HM1の検出(長さ計測)が、以下のようにして行われる(計測工程)。
【0112】
本実施形態では、一例としてアライメント検出系ASを用いて基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の長さ計測を行う。まず、主制御装置28は、コータ・デベロッパからの現像完了の通知を受け取ると、不図示のウエハ搬送系に指示してウエハWを露光装置内に搬送し、この搬送されたウエハWをウエハローダにより再度ウエハテーブル18上にロードする。
【0113】
そして、主制御装置28は、ウエハW上に形成された比較マーク像SM1をアライメント検出系ASの真下に移動して、例えばLSA系を用いて、比較マーク像SM1の長い方の対角線の長さLS1(図7参照)を計測する。なお、楔マーク(菱形マークはその一種)の線長等をLSA系のセンサで計測する方法は、SMP計測技術として広く知られているので、計測方法の詳細については省略する。
【0114】
同様にして、主制御装置28は、基準マーク像HM1の長い方の対角線の長さLH1(図7参照)を計測する。
【0115】
次に、このようにして計測された基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の長さLH1、LS1に基づいて、デフォーカス量を求める方法について説明する(算出工程)。
【0116】
まず、主制御装置28は、LS1及びLH1の計測値を比較し、両者が同一の値であれば、デフォーカス量が0であると判断する。
【0117】
一方、主制御装置28は、LS1とLH1の計測値が異なる場合には、デフォーカス量が0ではないと判断する。ここで、比較マーク像SM1の長さLS1と基準マーク像HM1の長さLH1との差分をΔSH1として、デフォーカス量を求める方法について説明する。なお、比較マーク像SM1が四角形の一部が欠落した多角形である場合は、仮想的に欠落がないとみなすことにより、比較マーク像SM1を四角形の場合と同様に取り扱うことが可能となる。
【0118】
比較マーク像SM1の短い方の対角線の長さをDS1とすると、DS1とLS1とは、次の(1)式の関係にある。
【0119】
DS1=LS1×tan(θ/2) ……(1)
【0120】
また、基準マーク像HM1の短い方の対角線の長さをDH1とすると、DH1とLH1とは、次の(2)式の関係にある。
【0121】
DH1=LH1×tan(θ/2) ……(2)
【0122】
ここで、DS1とDH1の差分をΔD1とすると、LS1とLH1の差分であるΔSH1とΔD1との関係は、上記(1)式と(2)式とから、次の(3)式で示される。
【0123】
ΔD1=ΔSH1×tan(θ/2) ……(3)
【0124】
このΔD1は、転写像TP1Wの中心と転写像TP2Wの中心との距離の2倍と同等の値を有する。そこで、Y軸方向の位置ずれ量をΔYとすると、ΔYとΔD1との関係は、次の(4)式で示される。
【0125】
ΔD1=ΔY×2 ……(4)
【0126】
従って、上記(3)式と(4)式とから、次の(5)式が得られる。
【0127】
ΔY=ΔSH1×tan(θ/2)÷2 ……(5)
【0128】
そこで、主制御装置28は、比較マーク像SM1の長い方の対角線の長さLS1と基準マーク像HM1の長い方の対角線の長さLH1の差分を算出し、この差分と上記(5)式とに基づいてY軸方向の位置ずれ量ΔYが求まる。
【0129】
また、主制御装置28は、基準マーク像HM1の長さLH1と比較マーク像SM1の長さLS1との大小関係から、ずれの方向(+Y方向か−Y方向か)を求める。例えば、比較マーク像SM1の長さLS1が基準マーク像HM1の長さLH1よりも小さい場合には、図10(A)に示されるように、パターンTP1Wは+Y方向にシフトしていると判断し、図10(B)に示されるように、比較マーク像SM1の長さLS1が基準マーク像HM1の長さLH1よりも大きい場合には、パターンTP1Wは−Y方向にシフトしていると判断する。すなわち、Y軸方向の位置ずれ量ΔYが同じであっても、比較マーク像SM1の形状は、Y軸方向の転写像TP1Wの形成位置のY軸方向の位置ずれの方向によって異なったものとなる。
【0130】
従って、主制御装置28は、比較マーク像SM1の長さLS1と基準マーク像HM1の長さLH1が、例えば図10(A)に示されるような関係であれば、図5に示されるように、回折格子SP1の転写像SP1Wは+Y方向にシフトしており、現在のフォーカス位置は最適フォーカス位置よりも−Z方向にあると判断する。また、主制御装置28は、比較マーク像SM1の長さLS1と基準マーク像HM1の長さLH1が、例えば図10(B)に示されるような関係であれば、回折パターンの転写像SP1Wは−Y方向にシフトしており、現在のフォーカス位置は最適フォーカス位置よりも+Z方向にあると判断する。
【0131】
次に、主制御装置28は、現在のフォーカス位置と最適フォーカス位置との関係と、Y軸方向の位置ずれ量ΔYから、符号付きデフォーカス量を求める。位置ずれ量ΔYと符号付きデフォーカス量との関係は、図5に示されるように、比例関係にあるため、符号付きデフォーカス量は、現在のフォーカス位置と最適フォーカス位置との関係と、Y軸方向の位置ずれ量ΔYから簡単に求めることができる。
【0132】
なお、上述のような符号付きデフォーカス量の計測方法を応用して、投影光学系PLの結像特性の1つである投影光学系PLの像面(像面湾曲)を求めることもできる。例えば、上述した計測用レチクルRTの代わりに、前述のスリット状の照明領域部分に収まるような範囲の領域に、計測用パターンRP1と同様のパターンが、複数形成されたレチクルを用意する。このとき、複数の計測用パターンRP1はウエハ上での照明光ILの照射領域(投影領域)内でベストフォーカス位置を検出すべき複数の計測点にそれぞれ対応して配置されるようにその間隔などが設定される。なお、図2では説明を容易にするため計測用パターンRP1を誇張して大きく示している。そして、そのレチクルを用いて、上述の第1露光工程、第2露光工程を実行すれば、ウエハWの対応する領域にそれぞれ比較マーク像SM1および基準マーク像HM1が形成される。これにより、異なる像高位置で形成された比較マーク像SM1および基準マーク像HM1によってデフォーカス量がそれぞれ計測され、それらのデフォーカス量から例えば最小二乗法などを用いて投影光学系PLの像面(像面湾曲)を算出することができる。なお、上述した像面湾曲の計測では、計測用パターンRP1が複数形成されたレチクルを用いて第1露光工程、第2露光工程を実行したが、レチクルRTを用いて、前述した複数の計測点でそれぞれ計測用パターンRP1の転写像が形成されるように、レチクルステージRSTを移動して各計測点に対応する位置に計測用パターンRP1を順次配置しながら、上述の第1露光工程、第2露光工程を実行し、異なる像高位置に比較マーク像SM1および基準マーク像HM1をそれぞれ形成するようにしてもよい。なお、図1の走査露光装置では走査方向(Y軸方向)と直交する非走査方向(X軸方向)に関するレチクルステージRSTの移動ストロークが短いので、X軸方向に離れた複数の計測用パターンRP1をレチクルRTに形成するとともに、レチクルステージRSTをY軸方向に移動してその複数の位置でそれぞれ前述の第1及び第2露光工程を実行するようにしてもよい。
【0133】
本実施形態の露光装置100では、主制御装置28が、装置各部を制御して、露光開始に先立って、これまでに説明した結像特性計測方法によって投影光学系PLの結像特性を計測する。そして、主制御装置28は、その計測された結像特性を考慮して露光の際の各種条件を調整して、XYステージ20とレチクルステージRSTの同期制御を行いつつ走査露光を行なう。
【0134】
なお、露光条件の調整としては、例えば計測された結像特性に基づく投影光学系PLの結像特性を前述の結像特性補正コントローラを介して調整することなどが代表的に挙げられる。また、例えば計測された結像特性がベストフォーカス位置又は像面湾曲などであるときは、走査露光中にレチクルRとウエハWとの少なくとも一方のZ軸方向の位置や傾斜角を調整してもよい。このとき、結像特性補正コントローラによる結像特性の調整を併用しても構わない。
【0135】
また、本実施形態の露光装置では、上述した菱形マークの線長の計測結果に基づいて投影光学系PLのベストフォーカスを検出し、この検出結果に基づいてフォーカスセンサAFSのキャリブレーションを精度良く行うことも可能である。
【0136】
また、所定の精度範囲内に結像特性の調整ができない場合には、主制御装置28はディスプレイ(モニター)への警告表示、あるいはインターネット(電子メール等)又は携帯電話などによって、オペレータなどにアシストの必要性を通知するようにしても良い。さらに、この場合に、各駆動系やセンサ類の調整に必要な情報を一緒に通知しても良い。これにより、各種データの計測などの作業時間だけでなく、その準備期間も短縮することができ、露光装置100の停止期間の短縮、すなわち稼働率の向上を図ることが可能となる。
【0137】
なお、上記(5)式を変形すると、次の(6)式となる。
【0138】
ΔSH1=ΔY×2÷tan(θ/2) ……(6)
【0139】
ここで、2÷tan(θ/2)をMとおくと、上記(6)式は次の(7)式となる。
【0140】
ΔSH1=ΔY×M ……(7)
【0141】
上記(7)式から、ΔSH1は、ΔYをM倍した値であるといえる。すなわち、本実施形態では、回折パターンの転写像SP1Wの転写位置のY軸方向の位置ずれ量ΔYを拡大して計測することができる。例えば、量を50倍(M=50)にするには、角度θを約4.6度に、又、位置ずれ量を100倍(M=100)にするには、角度θを約2.3度にすれば良い。従って、角度θを変えることによってY軸方向の位置ずれ量ΔYの拡大率Mを任意に設定することが可能となる。このことは、デフォーカス量を拡大して計測ができるということに他ならない。なお、角度θ、すなわち(θ1−θ2)は、90度より小さい値に設定しておくのが望ましい。
【0142】
以上説明したように、本実施形態では、投影光学系の結像特性の1つであるベストフォーカス位置(デフォーカス量)の計測に際し、Y軸方向に所定間隔dで配置されたパターンTP1を含み、正側の回折光と負側の回折光との回折効率がそれぞれ異なる回折格子SP1と、パターンTP1に重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化するパターンTP2が、所定間隔dで配置されることによって形成された回折格子SP2と、パターンTP3が所定軸方向に所定間隔で配置されることによって形成された回折格子SP3と、第3パターンに重ね合わせて転写した際に重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる第4パターンが所定間隔で配置されることによって形成された回折格子SP4とが、相互に重ならないように、そのパターン面に形成されたレチクルRTを用いている。
【0143】
回折格子SP1における正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なっているため、パターンTP1の転写像TP1Wの形成位置は、デフォーカス量に応じてY軸方向にずれたものとなる。第1パターンの転写像TP1Wの形成位置がY軸方向にずれると、比較マーク像SM1の形状が変化する。したがって、比較マーク像SM1の形状を計測し、計測された比較マーク像SM1の形状と、基準マーク像HM1の形状とを比較すれば、そのときのデフォーカス量(前述した1回目及び2回目の露光時におけるウエハWのZ軸方向の位置(フォーカス位置))を求めることができる。一般に、デフォーカスによるパターンTP1のY軸方向のずれ量よりも、比較マーク像SM1の形状の変化量の方が大きいため、パターンTP1の転写像の形成位置の位置ずれ量を計測するよりも、比較マーク像SM1の形状の変化を計測した方が、計測されるデフォーカス量はより高精度な値となる。
【0144】
そして、本実施形態では、各パターンTP1〜TP4の線幅が等しいために、各パターンTP1〜TP4の各転写像は、それぞれ同程度の投影光学系PLの収差の影響を受ける。そこで、各パターンTP1〜TP4の重なり部に形成される基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1における収差の影響は、それぞれほぼ同程度とみなすことができる。従って、基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1のそれぞれ対応する部分の長さから算出されるパターンのY軸方向の位置ずれ情報における収差の影響を除くことができ、結果的に、精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。このとき、前述の露光時におけるウエハWのZ軸方向の位置はフォーカスセンサAFSにて検出されているので、先に計測されたデフォーカス量が零でないときは、フォーカスセンサAFSの検出値からその計測されたデフォーカス量だけずれた位置をベストフォーカス位置として求めることができる。
【0145】
また、基準マーク像HM1と比較マーク像SM1は、いずれも一組の対角が同じ角度θとされているので、両方の像において、その尖った先端部分に生じるレジスト等の形成具合は同程度であるとともに、現像処理あるいはエッチング処理におけるプロセスの影響はほぼ同程度とみなすことができる。従って、結果的に精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0146】
また、比較マーク像SM1の長さLS1には、その対角の角度θに応じた倍率で実際のデフォーカス量が拡大されて含まれている。そこで、所定の倍率に対応する角度θが得られるように各パターンTP1、TP2を配置することにより、従来の方法では、転写像間の距離を計測する計測装置の計測限界(分解能)により計測できなかったわずかなデフォーカス量であっても、特殊な装置を必要とせずに、従来と同じ計測装置(例えば、露光装置のアライメント検出系(LSA系、FIA系)など)を用いてデフォーカス量を計測することが可能となる。すなわち、見かけ上、デフォーカス量の計測装置の分解能を上げることができる。従って、結果的に更に精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0147】
なお、上記実施形態では、比較マーク像SM1の形状と、基準マーク像HM1の形状との比較によって、デフォーカス量を求めたが、レチクルRTの代わりに、回折格子SP1と回折格子SP2のみが形成されている別のレチクルを用いて、比較マーク像SM1のみを形成してデフォーカス量を求めるようにしても良い。この場合には、デフォーカス量が0であるときの理想の比較マーク像SM1の対角線の長さLS1を予め求めておき、計測された比較マーク像SM1と理想の対角線の長さとを比較すれば、上記実施形態と同様にしてデフォーカス量を求めることができる。なお、この場合には、レチクル上のパターンの製造誤差や、比較マーク像SM1の頂角θによるレジスト像の形成の具合などを考慮して、計測された比較マーク像SM1の長さを補正しておくのが望ましいことはいうまでもない。また、この場合、第1露光工程では、回折格子SP1の各パターンTP1だけが転写され、第2露光工程では、回折格子SP2の各パターンTP2だけが転写される。
【0148】
また、上記実施形態では、回折格子SP1のみ、正側の回折光と負側の回折光の回折効率が異なるとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、回折格子SP2〜SP4においても、正側の回折光と負側の回折光の回折効率が異なるようにしてもよい。ただし、この場合、回折格子SP1の正側の回折光と負側の回折光の回折効率の比と、回折格子SP2の正側の回折光と負側の回折光の回折効率の比とは異なるようにする必要がある。もしこれらの比が同じであれば、デフォーカスによって比較マーク像SM1の形状が変化しなくなってしまうからである。なお、回折格子SP2では、正側の回折光および負側の回折光のうち、回折格子SP1において回折効率が大きい方の回折光の回折効率が小さく、回折格子SP1において回折効率が小さい方の回折光の回折効率が大きくなるように回折光の回折効率が設定されているのが望ましい。このようにすれば、同じデフォーカス量であっても、回折格子SP1および回折格子SP2の転写像の形成位置のずれる方向が反対となり、デフォーカス量の計測の分解能を上げることができるためである。
【0149】
また、回折格子SP3および回折格子SP4については、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比を任意に設定することができる。なお、回折格子SP1の正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比と、回折格子SP3の正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比とを同じにし、回折格子SP2の正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比と、回折格子SP4の正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比とを同じにしておくのがより望ましい。このようにすれば、比較マーク像SM1と基準マーク像HM1とが形成される際の全体的な露光量等の像形成条件を同一として、精度良くデフォーカス量を求めることができるからである。なお、回折格子SP2〜SP4の回折効率を設定する際にも、回折格子SP1と同様に、透過する光の位相をシフトしない第1領域と透過する光の位相をシフトさせない第2領域とを設ける方法を用いることができることはいうまでもない。
【0150】
また、上記実施形態では、投影光学系PLの結像特性計測に際して、第1露光工程と第2露光工程とで、レチクルRT上での照明領域の全体に照明光ILを照射するものとしたが、これに限らず、レチクルRTの計測用パターンRP1の形成領域にほぼ一致させて照明領域を設定してもよいし、第1露光工程に先立って回折格子SP1,SP3を含む領域にのみ照明光が照射されるような照明領域の設定を行い、第2露光工程に先立って回折格子SP2,SP4を含む領域にのみ照明光が照射されるような照明領域の設定を行うようにしても良い。
【0151】
また、上記実施形態では、レチクルステージやウエハステージの移動精度を含まないようにするために、第1露光工程および第2露光工程では、レチクルRTとウエハWを静止させて計測用パターンを転写し、光学特性を求めたが、もちろん、走査露光方式にて計測用パターンRP1を転写し、ダイナミックな光学特性を求めるようにしてもよい。
【0152】
また、特にウエハを現像処理してレジスト像を得る場合、あるいはレジスト像が形成されたウエハをエッチング処理してエッチング像を得る場合、基準マーク像HM1における一組の対角と、比較マーク像SM1における2つの内角とが同じ角度θなので、両方の像において、その尖った先端部分に生じるレジスト等の形成具合は同程度であるとともに、現像処理あるいはエッチング処理におけるプロセスの影響はほぼ同程度であるとみなすことができる。そこで、精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0153】
また、上記実施形態では、比較マーク像SM1を形成するための回折格子SP1、SP2のパターンTP1、TP2は、互いに逆向きの山形のパターンであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、パターンTP1、TP2のうち、いずれか1つのパターンは、山形ではなくラインパターンであっても良い。
例えば、パターンTP1は、前述の第1方向および第2方向に対し角度(θ1−θ2)/2を成す方向に延びるラインパターンであってもよい。
【0154】
この場合、基準マーク像HM1の形状は、従来どおりそれぞれ一組の対角が角度θである四角形(菱形)となるが、比較マーク像SM1の形状は、X軸方向の辺を底辺とし、一対の底角が角度θ/2の二等辺三角形となる。この場合でも、比較マーク像SM1の形状は、重ね位置に依存して変化する形状となる。比較マーク像SM1ではX軸方向に伸びる底辺の長さを、基準マーク像HM1の長さLH1とすることにより、計測工程と同様にして計測される基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の長さに基づいて、前述の算出工程と同様にしてデフォーカス量を求めることができる。なお、比較マーク像SM1が二等辺三角形となる場合については、θ/2=(θ1−θ2)/2となるので、両方の像において、その尖った先端部分に生じるレジスト等の具合は同程度とするとともに、現像処理あるいはエッチング処理におけるプロセスの影響はほぼ同程度とするためには、θ3−θ4=(θ1−θ2)/2の関係が成立させる必要がある。
【0155】
また、上記実施形態では、同一スリット幅のラインパターンの重ね合わせ転写で基準マーク像HM1が形成される場合について述べているが、これに限定されるものではない。例えば、異なる線幅のラインパターンを重ね合わせて転写すると、その重なり部は平行四辺形となるが、これであっても、重ね位置に依存せず一定形状となるため、基準マーク像HM1として利用することができる。すなわち、重ね合わせて転写した際に、その重なり部に形成される像が重ね位置に依存せず一定形状となれば良く、その形状は限定されない。
【0156】
また、上記実施形態では、比較マーク像SM1および基準マーク像HM1が格子のスリット数分得られるので、それらの比較マーク像SM1および基準マーク像HM1の長さLS1、LH1の平均値(単純平均又は重み付け平均)を用いることにより、更に精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0157】
また、上記実施形態では、第2マーク〜第4マークをそれぞれ回折格子SP2〜SP4であるとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2マーク〜第4マークとして、それぞれパターンTP2〜パターンTP4の孤立パターンによって形成されるマークを用いてもよい。すなわち、比較マーク像SM1と基準マーク像HM1が少なくとも1つ形成されるようにすれば良い。
【0158】
また、上記実施形態では、第1マーク〜第4マークが形成されたレチクルRTを用いたが、第1マークのみが形成されたレチクル(レチクルA:第1マスク)および第2マークのみが形成されたレチクル(レチクルB:第2マスク)の2つのマスクを用いても良く、第1マークおよび第3マークが形成されたレチクル(レチクルC:第1マスク)および第2マークおよび第4マークのみが形成されたレチクル(レチクルD:第2マスク)の2つのマスクを用いても良い。この場合、第1露光工程では、レチクルAまたはレチクルC(第1マスク)を用いて露光を行い、第2露光工程では、レチクルステージRSTに搭載するレチクルをレチクルBまたはレチクルD(第2マスク)に交換して露光を行えばよい。
【0159】
また、上記実施形態では、レチクルRTのパターン領域内に計測用パターンRP1を1つだけ配置するものとしたが、パターン領域内の小区域に計測用パターンRP1を幾つか配置し、例えば計測用パターン毎に得られるデフォーカス量の平均値(単純平均値又は重み付け平均値など)を求めるようにしても良い。これによって、更に精度良くデフォーカス量を求めることが可能となる。
【0160】
また、形成される菱形マークの向きが種々の向きとなるように、レチクルRT上に、種々の方向を向いた相互に対を成すL/Sパターン(前述の回折格子に相当し、それぞれを構成するラインパターンの延長線同士が交差角θで交差する)を形成しても良い。このようなレチクルを用いて上述した二重露光による菱形マークの像の形成を行うと、各菱形マークの長さの計測結果に基づいて非点収差をも計測することができる。
【0161】
このように、レチクルRT上の計測用パターンの形成の工夫によって、投影光学系PLのデフォーカス量だけでなく、像面湾曲、球面収差、非点収差などの種々の結像特性をも計測することができる。このとき、レチクルRTに複数の計測用パターンを形成する代わりに、あるいはそれと組み合わせてレチクルRTを移動するようにし、照明光ILの照明領域内の複数の計測点でそれぞれデフォーカス量(ベストフォーカス位置)を求めるようにしてもよい。
【0162】
また、上記実施形態では、前述したように、コータ・デベロッパをインライン接続して一連の計測動作を自動的に行うため、人的負荷の低減につながることなど大きなメリットが見込まれる。
【0163】
また、上記実施形態では、回折格子SP1〜SP4の格子の配列方向がY軸方向の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回折格子SP1の配列方向は、X軸方向であっても良いし、X−Y平面上の他の方向であっても良い。
【0164】
さらに、上記実施形態では、基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の対角線の長さLH1、LS1に基づいてデフォーカス量を計測しているが、本発明がこれに限定されるものではなく、両マーク像HM1、SM1の対応する部分の長さであれば、デフォーカス量を計測することができる。従って、それぞれ対応する複数の部分の長さに基づいて位置ずれ情報を算出し、それらの平均値(単純平均値又は重み付け平均値)からデフォーカス量を求めても良い。
【0165】
また、上記実施形態ではレジスト像の長さを計測するものとしたが、例えば潜像、あるいはレジスト像が形成されたウエハをエッチング処理して得られる像などの長さを計測するようにしても良い。また、上記実施形態では露光装置のアライメント検出系を用いて転写像の長さを計測するものとしたが、露光装置以外、例えば専用の計測装置(レジストレーション測定機など)を用いてもよい。
【0166】
さらに、上記実施形態では、転写像の長さをアライメント検出系等により光学的に検出するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えばECD(Electrical Critical Dimension:電気抵抗を利用した計測法)等で計測しても良い。
【0167】
また、第1領域および第2領域の位相差を生じさせるための位相シフトマスクとしては、レベンソン型、ハーフトーン型、クロムレス型など、様々な形態のものを用いることができることはいうまでもない。
【0168】
また、上記実施形態では、ウエハに塗布される感光剤としてのフォトレジストとして、ポジ型のフォトレジストを用いたが、ネガ型のフォトレジストを用いても良い。
【0169】
また、上記実施形態では、パターンTP1〜TP4を遮光部としたが、パターンTP1〜TP4を光透過部とし、その周りを遮光部としても良い。この場合には、ネガ型のフォトレジストを用いるのが望ましい。
【0170】
さらに、レチクルに形成される計測用パターンの描画誤差などを予め検出しておき、前述の符号付きデフォーカス量の算出時に、この検出結果を加味してその値の算出を行うようにしても良い。これによって、更に精度良くデフォーカス量を求めることが可能となる。なお、計測用パターンの潜像を検出するときは、コータ・ディベロッパにてウエハに塗布されるレジストの塗布むら(膜厚分布など)を求めておき、この塗布むらを加味してデフォーカス量の算出を行うようにしてもよい。また、計測用パターンのレジスト像(又はエッチング像)を検出するときは、前述の塗布むらに加えて、あるいはその代わりに、現像むらなどを加味してデフォーカス量の算出を行うようにしてもよい。即ち、露光装置以外の処理装置に起因した転写像の長さの変化を求めておき、この変化を加味してデフォーカス量の算出を行ってもよい。また、レチクル(計測用パターン)の描画誤差や露光装置以外の処理装置の影響などを加味してデフォーカス量を算出するとき、計測された転写像の長さを補正してもよいし、あるいは前述したY軸方向の位置ずれ量ΔYを補正してもよい。
【0171】
また、上記実施形態では、本発明がステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置に適用された場合について説明したが、本発明の適用範囲がこれに限定されないのは勿論である。すなわち、ステップ・アンド・リピート方式、ステップ・アンド・スティッチ方式、ミラープロジェクション・アライナー、及びフォトリピータなどにも好適に適用することができる。
【0172】
特に、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置の場合は、第1露光工程及び第2露光工程において、物体ステージ及びマスクステージを静止させて露光することにより、上記実施形態と同様にして、符号付きのデフォーカス量を求めることができる。
【0173】
さらに、投影光学系PLは、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれでもよいし、縮小系、等倍系、及び拡大系のいずれでも良い。また、レチクルは透過型だけでなく反射型でも構わない。
【0174】
さらに、本発明が適用される露光装置の光源は、KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザに限らず、例えばg線やi線などを発生する水銀ランプなどの連続光源でもよいし、F2レーザ(波長157nm)、あるいは他の真空紫外域のパルスレーザ光源であっても良い。この他、露光用照明光として、例えば、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、露光用照明光としてEUV光などを用いてもよい。この場合には、レチクルとして反射型が用いられる。
【0175】
さらに、本発明は、半導体素子の製造に用いられる露光装置だけでなく、液晶表示素子、プラズマディスプレイなどを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気へッドの製造に用いられる、デバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、及びDNAチップなどの製造、さらにはマスク又はレチクルの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。
【0176】
なお、上記実施形態では、符号付きのデフォーカス量の計測に際し、アライメント検出系ASのLSA系を用いて基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の長さを計測する場合について説明したが、これに限らず、例えばアライメント検出系ASのFIA系を用いて各マーク像HM1、SM1の画像を取り込み、その画像信号に基づいて各マーク像HM1、SM1の長さLH1、LS1の計測を画像処理により計測しても勿論構わない。このようにしても上記実施形態と同様にして符号付きのデフォーカス量を、上記実施形態と同程度あるいはそれ以上の精度で求めることができる。
【0177】
《デバイス製造方法》
次に、上述した露光方法を使用したデバイスの製造方法の実施形態を説明する。
【0178】
図11には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、DNAチップ、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図11に示されるように、まず、ステップ301(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ302(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ303(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0179】
次に、ステップ304(ウエハ処理ステップ)において、ステップ301〜ステップ303で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ305(デバイス組立ステップ)において、ステップ304で処理されたウエハを用いてデバイス組立を行う。このステップ305には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0180】
最後に、ステップ306(検査ステップ)において、ステップ305で作製されたデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0181】
図12には、半導体デバイスの場合における、上記ステップ304の詳細なフロー例が示されている。図12において、ステップ311(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ312(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ313(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ314(イオン打込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ311〜ステップ314それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0182】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ315(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ316(露光ステップ)において、上記実施形態の露光装置100および露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ317(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ318(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ319(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0183】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0184】
以上のような、本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光ステップで、上記実施形態の露光方法が用いられ、前述した結像特性計測方法にて計測された符号付きのデフォーカス量に基づいて精度良くフォーカスが制御されるため、高精度な露光が行われ、高集積度のデバイスを生産性良く製造することが可能となる。
【0185】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、投影光学系の結像特性の計測に好適に用いることができるマスクを提供することができる。
【0186】
また、本発明にかかる結像特性計測方法によれば、投影光学系の結像特性を精度良くかつ効率よく計測することができるという効果がある。
【0187】
また、本発明にかかる露光方法によれば、高精度な露光を実現できるという効果がある。
【0188】
また、本発明にかかるデバイス製造方法によれば、高集積度のデバイスの生産性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる露光装置100の構成を概略的に示す図である。
【図2】レチクルRTの一例を示す図である。
【図3】計測用パターンRP1を示す図である。
【図4】図4(A)は、レチクルRTを切断した場合の回折格子SP1付近の断面とともに、回折格子SP1の−1次光を示す図、図4(B)は、レチクルRTを切断した場合の回折格子SP1付近の断面とともに、回折格子SP2の+1次光を示す図である。
【図5】デフォーカスによって回折格子SP1の転写像の形成位置がずれる様子を示す図である。
【図6】ウエハW上の転写像の重ね合わせの様子を示す図である。
【図7】基準マーク像HM1および比較マーク像SM1の様子を示す図である。
【図8】図8(A)は、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が0であった場合の転写像TP3Wと転写像TP4Wの重なり状態を示す図、図8(B)は、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が−Y方向にΔYであった場合の転写像TP3Wと転写像TP4Wの重なり状態を示す図、図8(C)は、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が+Y方向にΔYであった場合の転写像TP3WとTP4Wの重なり状態を示す図である。
【図9】図9(A)は、デフォーカス量が0である場合の転写像TP1Wと転写像TP2Wの重なり状態を示す図、図9(B)は、投影光学系PLとウエハWとの距離が近くなる方向にフォーカスがずれている場合の転写像TP1Wと転写像TP2Wの重なり状態を示す図、図9(C)は、投影光学系PLとウエハWとの距離が遠くなる方向にフォーカスがずれている場合の転写像TP1Wの転写像TP2Wの重なり状態を示す図である。
【図10】図10(A)は、パターンTP1Wが+Y方向にシフトしているときの比較マーク像SM1の形状とデフォーカス量との関係を示す図、図10(B)は、パターンTP1Wが−Y方向にシフトしているときの比較マーク像SM1の形状とデフォーカス量との関係を示す図である。
【図11】本発明に係るデバイス製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図12】図11のステップ304における処理のフローチャートである。
【符号の説明】
42…ガラス基板(マスク物体)、RP1…計測用パターン、SM1…比較マーク像、HM1…基準マーク像、TP1…パターン(第1パターン)、TP2…パターン(第2パターン)、TP3…パターン(第3パターン)、TP4…パターン(第4パターン)、SP1…回折格子(第1マーク)、SP2…回折格子(第2マーク)、SP3…回折格子(第3マーク)、SP4…回折格子(第4マーク)、PA…パターン領域(パターン面)、PL…投影光学系、RT…レチクル(マスク)、W…ウエハ(物体)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、マスク、結像特性計測方法、露光方法、及びデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、露光装置の投影光学系の結像特性の計測に用いて好適なマスク、該マスクを用いて投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法、該結像特性計測方法によって計測された投影光学系の結像特性を考慮して露光を行う露光方法、並びに該露光方法を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)に形成されたパターンを、投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の物体(以下、適宜「ウエハ」ともいう)上に転写する露光装置が用いられている。近年では、この種の装置としては、スループットを重視する観点から、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆる「ステッパ」)や、このステッパを改良したステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置などの逐次移動型の投影露光装置が、比較的多く用いられている。
【0003】
また、このような露光装置では、露光(レチクルパターンのウエハ上への転写)の際のフォーカスずれや投影光学系の収差によって投影像の精度が大きく変化してしまうため、投影光学系の最良フォーカス位置、収差等の結像特性を精度良く計測する技術が必要とされている。
【0004】
投影光学系の光学特性、例えばパターンが結像される像面の形状の正確な計測には、投影光学系の視野内の各計測点における最適なフォーカス位置(最良フォーカス位置)を正確に計測できることが前提となる。
【0005】
最良フォーカス位置を計測する1つの方法が、特開2002―55435号公報に開示されている。この方法では、+1次光と−1次光とで回折効率が異なる非対称な回折格子を用い、その非対称回折格子の像の転写位置が投影光学系のデフォーカスに比例して横方向にシフト(横ずれ)することを利用し、その横ずれ量を計測することによって投影光学系の符号つきのデフォーカス量を計測している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の計測方法にあっては、計測対象である非対称回折格子の像の横ずれ量が非常に小さく、例えば、テストレチクル上に形成された非対称回折格子のパターンの製造誤差、特にパターン線幅の誤差による影響などを無視することができないほどに小さいため、符号つきのデフォーカス量を正確に計測するのが困難であるという不都合があった。
【0007】
また、上記従来の計測方法では、その横ずれ量をSEM(走査型電子顕微鏡)で計測するため、SEMのフォーカス合わせを厳密に行う必要があった。また、SEMで計測する場合には、1点当たりの計測時間が非常に長くなり、多数点の計測を行おうとすると、数時間から数十時間が必要となる。
【0008】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、投影光学系の結像特性の計測に好適に用いることができるマスクを提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、投影光学系の結像特性を精度良くかつ効率良く計測することができる結像特性計測方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第3の目的は、高精度な露光を実現することができる露光方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第4の目的は、高集積度のデバイスの生産性を向上させることができるデバイス製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターン(TP1)を含み、同一次数の正側の回折光と負側の回折光(即ち±n次回折光(nは自然数))との回折効率が異なる第1マーク(SP1)と、前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターン(TP2)を含む第2マーク(SP2)とが、相互に重ならないように、そのパターン面(PA)に形成されたマスク基板(42)を備えるマスク(RT)である。
【0013】
このマスクを用いて、例えば投影露光装置の符号つきのデフォーカス量を計測する場合を考える。例えば、第1回目の露光により、第1マークに含まれる第1パターンの配列を物体上に転写し、次いで、第2回目の露光により、第2マークに含まれる第2パターンを、第1パターンの転写像に重ね合わせて転写する。これにより、第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部の像(潜像、レジスト像などを含む。以下「マーク像」という)が形成される。
【0014】
第1マークにおける正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なっているため、物体上の第1パターンの転写像の形成位置は、投影光学系のデフォーカス量に比例して所定軸方向(第1パターンの配列方向)にずれる。第1パターンの転写像の形成位置がずれると、第1パターンと第2パターンとの相対的な所定軸方向の重ね位置が変化し、その重なり部に形成されるマーク像の形状が変化する。したがって、マーク像の形状を計測し、計測されたマーク像の形状と、設計上のマーク像の形状とを比較すれば、そのときの投影光学系の符号つきのデフォーカス量を求めることができる。一般的に、第1パターンの転写像の形成位置の所定軸方向のずれよりも、マーク像の形状の変化の方が観測しやすい。そのため、第1パターンの転写像の形成位置の所定軸方向に沿ったずれ量を計測するよりも、マーク像の形状の変化を計測した方が、符号つきのデフォーカス量をより高精度に計測することができる。
【0015】
この場合において、マーク像の形状の計測は、物体を現像することなく物体上に形成された潜像に対して行っても良いし、上記マーク像が形成された物体を現像した後、物体上に形成されたレジスト像、あるいはレジスト像が形成された物体をエッチング処理して得られる像(エッチング像)に対して行っても良い。また、第1及び第2パターンの転写像が形成される物体上の感応層はレジスト層に限られるものでなく、例えば光磁気層などでもよい。
【0016】
また、上記マーク像の形状は観測しやすいため、例えば、その観測に、露光装置に設けられているアライメント検出系(LSA系、FIA系)などを用いることができる。
【0017】
また、本発明のマスクは、透過型マスクであってもよいし、反射型マスクであってもよい。
【0018】
この場合において、第1、第2パターンとしては、種々のパターンが考えられるが、請求項2に記載のマスクのごとく、前記第1パターンおよび前記第2パターンのいずれか一方のパターンは、前記所定軸方向のうちの一方の方向に対して時計回りに角度θ1(90°<θ1<180°)を成す第1方向に延びる線状の第1部分と、前記一方の方向に対して時計回りに角度θ2(0°<θ2<90°)を成す第2方向に延びる線状の第2部分とを有する、前記一方の方向に凸の山形のパターンであることとすることができる。この場合、請求項3に記載のマスクのごとく、前記第1パターンおよび前記第2パターンのうちの他方のパターンは、前記第1方向に延びる線状の第1部分と前記第2方向に延びる線状の第2部分とを有し、前記所定軸方向のうち他方の方向に凸の山形のパターンであるとしてもよいし、請求項4に記載のマスクのごとく、前記第1パターンおよび前記第2パターンのうちの他方のパターンは、前記第1方向および前記第2方向に対し角度(θ1−θ2)/2を成す方向に延びるラインパターンであるとしてもよい。
【0019】
本明細書において、「山形」とは、異なる方向に延びる2つの線状の部分から構成されている形状を意味し、くの字形やV字形、及びそれらを変形(例えば、回転、拡大縮小(全体及び一部分)など)した形状を含む概念である。また、第1部分と第2部分の長さは、必ずしも同一でなくとも良い。
【0020】
請求項2〜4のいずれか一項に記載のマスクを用いて、第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部に形成されるマーク像は、デフォーカス量に応じて形状が変化する菱形もしくは三角形となるが、第1方向と第2方向との成す角θ1−θ2においては、請求項5に記載のマスクのごとく、θ1−θ2<90°であることとすることができる。このようにすれば、デフォーカス量に応じた第1パターンの転写像の形成位置の所定軸方向に沿ったずれ量よりも、マーク像の所定軸方向に垂直な方向の長さの変化量の方が大きくなり、デフォーカス量の計測の分解能が向上する。
【0021】
上記請求項1〜5のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項6記載のマスクのごとく、前記第1マークには、前記第1マークにおける正側の回折光と負側の回折光との回折効率を異ならせるために、入射光の位相を異ならせる第1領域と第2領域とが設けられていることとすることができる。マスクを透過する光の位相をシフトさせる技術としては、例えば、位相シフトマスクがある。この位相シフトマスクとしては、レベンソン型や、ハーフトーン型や、クロムレス型など、様々な形態のものを採用することができる。
【0022】
この場合、請求項7に記載のマスクのごとく、前記第1マークは、前記同一次数の正側の回折光と負側の回折光との一方で回折効率がほぼ零となることとすることができる。これによれば、正側の回折光と負側の回折光のいずれか一方はほぼ完全に消滅し、デフォーカス量に応じた第1パターンの転写像の形成位置のずれ量が大きくなるので、符号つきのデフォーカス量をより高精度に計測することができる。
【0023】
上記請求項6又は7に記載のマスクにおいて、請求項8に記載のマスクのごとく、前記第1マークは、前記第1領域と前記第2領域とで前記同一次数の正側の回折光と負側の回折光との一方での位相差がほぼ(2m+1)π(mは整数)となることとすることができる。
【0024】
上記請求項6〜8のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項9に記載のマスクのごとく、前記第1マークは、前記第1領域と前記第2領域とで前記入射光の位相差を90°又はこれと同等とすることとすることができる。「90°又はこれと同等」とは、90°±(360°×k)で表される角度、例えば、450°、−270°などを指す。なおkは整数である。
【0025】
また、上記請求項6〜9のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項10に記載のマスクのごとく、前記第1マークは、前記所定軸方向に関する前記第1パターンの幅と前記第1及び第2領域の幅とがほぼ等しいこととすることができる。
【0026】
また、上記請求項6〜10のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項11に記載のマスクのごとく、前記所定間隔と、前記第1領域の前記所定軸方向の幅と、前記第2領域の前記所定軸方向の幅との比が4:1:1であることとすることができる。
【0027】
本発明では、第1マークにおける正側の回折光および負側の回折光のいずれか一方の回折効率がほぼ0であることが望ましい。上述のような諸条件を設定すれば、第1領域から透過する光の±n次の回折光(nは自然数)と、第2領域を透過する光の±n次の回折光との位相差は、0°と同等か180°と同等かのいずれかとなり、±n次の回折光のいずれか一方を、第1領域を透過する光と第2領域を透過する光とで相殺し、ほぼ完全に消滅させることができる。
【0028】
また、上記請求項1〜11のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項12に記載のマスクのごとく、前記第2マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第2パターンを含むこととすることができる。
【0029】
これによれば、複数のマーク像を形成することができるようになるため、各マーク像の計測値を平均化するなどして、デフォーカス量の計測精度をさらに高めることができる。
【0030】
この場合、請求項13に記載のマスクのごとく、前記第2マークでは、前記正側の回折光および前記負側の回折光のうち、前記第1マークにおいて回折効率が大きい方の符号の回折光の回折効率が小さく、前記第1マークにおいて回折効率が小さい方の符号の回折光の回折効率が大きくなるように各回折光の回折効率が設定されている(即ち、前記第1マークと前記第2マークとで回折効率が大きくなる回折光の符号を異ならせる)こととすることができる。
【0031】
これによれば、第2パターンの転写像の形成位置が、デフォーカス量に応じて第1パターンの転写像の形成位置がずれる方向とは逆の方向にずれるようになるので、デフォーカス量に応じたマーク像の形状の変化量がより大きくなる。そのため、デフォーカス量の計測の分解能が向上する。
【0032】
上記請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項14に記載のマスクのごとく、第3パターン(TP3)を含む第3マーク(SP3)と、前記第3パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる第4パターン(TP4)を含む第4マーク(SP4)とが、相互に重ならないように、かつ、前記第1マーク及び第2マークにも重ならないように、前記パターン面(PA)に各々形成されていることとすることができる。
【0033】
このマスクを用いて投影露光装置の符号付きのデフォーカス量を計測する場合を考える。例えば、第1回目の露光により、第1マークの第1パターンおよび第3マークの第3パターンを物体上に転写し、次いで、第2回目の露光により、第2マークの第2パターンおよび第4マークの第4パターンを、第1パターンの転写像および第3パターンの転写像にそれぞれ重ね合わせて転写する。これにより、第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部の像(潜像、レジスト像などを含む。以下「比較マーク像」という)と、第3パターンと第4パターンとの転写像同士の重なり部の像(潜像、レジスト像などを含む。以下「基準マーク像」という)とが形成される。
【0034】
前述のように、基準マーク像は、第3パターンと第4パターンの相対的な重ね位置に依存しない一定形状を有しており、比較マーク像は第1パターンと第2パターンの相対的な重ね位置に依存して変化する形状を有している。前述のように、第1パターンの転写像の形成位置は、デフォーカス量に応じて所定軸方向にずれるため、デフォーカス量に応じて比較マーク像の形状が変化する。そこで、基準マーク像と比較マーク像の形状の違いを計測することによって、符号付きのデフォーカス量を求めることができる。
【0035】
この場合において、請求項15に記載のマスクのごとく、前記第3パターンは、前記所定軸方向に対して時計回りに角度θ3(90°<θ3<180°)を成す第3方向に延びるラインパターンであり、前記第4パターンは、前記所定軸方向に対して時計回りに角度θ4(0°<θ4<90°)を成す前記第4方向に延びるラインパターンであることとすることができる。
【0036】
これによれば、第3パターンおよび第4パターンの転写像の形成位置がフォーカスずれや他の要因等によって所定軸方向に位置ずれしたとしても、第3パターンと第4パターンとの転写像同士の重なり部に形成される菱形のマーク像は、形状が一定となるので、そのマーク像をデフォーカス量の計測の際の基準とすることができる。このようにすれば、比較マーク像の形状を、設計上のマーク像の形状と比較するのでなく、像形成条件が同一の条件で形成された基準マーク像の形状と比較するので、投影光学系の諸収差や露光条件やレチクル上のパターンの製造誤差などの影響を排除して、より高精度にデフォーカス量を計測することができる。
【0037】
この場合、第3方向の角度θ3および第4方向の角度θ4については、請求項16に記載のマスクのごとく、θ1=θ3およびθ2=θ4の関係が成立することとしてもよいし、請求項17に記載のマスクのごとく、θ3−θ4=(θ1−θ2)/2の関係が成立することとしてもよい。
【0038】
これによれば、比較マーク像が菱形(一組の対角がθ1−θ2)であっても三角形(底角が(θ1−θ2)/2))であっても、基準マーク像の一組の対角をそれらの角度と同じにすれば、両方の像において、その尖った先端部分に生じるレジスト等の形成具合が同程度になり、現像処理あるいはエッチング処理におけるプロセスの影響がほぼ同程度になるとみなすことができる。したがって、結果的に精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0039】
上記請求項14〜17のいずれか一項に記載のマスクにおいて、請求項18に記載のマスクのごとく、前記第3マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第3パターンを含むこととすることができる。
【0040】
この場合、請求項19に記載のマスクのごとく、前記第4マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第4パターンを含むこととすることができる。
【0041】
さらに、請求項20に記載のマスクのごとく、前記第3マークは、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比が、前記第1マークと同じであり、前記第4マークは、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比が、前記第2マークと同じであることとすることができる。
【0042】
これによれば、第1マークの第1パターンの形成位置と第3マークの第3パターンの形成位置とのデフォーカスに起因する所定軸方向のずれ量と、第2マークの第2パターンの形成位置と第4マークの第4パターンの形成位置とのデフォーカスに起因する所定軸方向のずれ量が同じとなる。また、第3マークの各回折光と第1マークの各回折光との回折効率が同じとなり、それらの回折光によるトータルの光の強度が同じとなり、第4マークの各回折光と第2マークの各回折光との回折効率が同じとなるため、それらの回折光によるトータルの光の強度も同じとなる。以上のことから、基準マーク像、比較マーク像の形成精度が同程度となるので、デフォーカス量をさらに精度よく計測することができるようになる。
【0043】
請求項21に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスクを用いて投影光学系(PL)の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、第1マークの第1パターンを、前記投影光学系を介して物体(W)上に転写する第1露光工程と;前記投影光学系を介して前記物体上の前記第1パターンの転写像に第2マークの第2パターンを重ねて転写する第2露光工程と;前記物体上の前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成されたマーク像(SM1)を検出する計測工程と;前記マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法である。
【0044】
これによれば、まず、第1露光工程では第1マークの第1パターンを物体上に転写した後、第2露光工程では第2パターンを第1パターンの転写像に重ね合わせて転写する。これにより、第1パターンの転写像に重ね合わせて第2パターンが転写される。上記の第1パターンと第2パターンの転写の結果、物体上の第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部にマーク像(潜像など)が形成される。そして、計測工程ではマーク像が検出され、算出工程ではその検出結果(例えば、前記マーク像の長さ又は形状などに関連する情報)に基づいて投影光学系の結像特性、例えば、符号付きのデフォーカス量が算出される。この場合、マーク像は、第1パターンと第2パターンとの相対的な重ね位置に依存して変化する形状を有している。そこで、そのマーク像を検出し、その検出結果を、デフォーカス量が0であるとき、すなわち第1パターンの転写像の形成位置のずれがないときのマーク像の設計上の値と比較し、それらの差からデフォーカス量が求められる。
【0045】
すなわち、第1マークにおける正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なっているため、物体上の第1パターンの転写像の形成位置は、投影光学系のデフォーカス量に応じて所定軸方向(第1パターンの配列方向)にずれる。第1パターンの転写像の形成位置がずれると、第1パターンと第2パターンとの相対的な所定軸方向の重ね位置が変化し、その重なり部に形成されるマーク像の形状が変化する。したがって、マーク像の形状を計測し、計測されたマーク像の形状と、設計状のマーク像の形状とを比較すれば、そのときの投影光学系の符号つきのデフォーカス量を求めることができる。一般的に、第1パターンの転写像の形成位置の所定軸方向のずれよりも、マーク像の形状の変化の方が観測しやすい。そのため、第1パターン転写像の形成位置の所定軸方向に沿ったずれ量を計測するよりも、マーク像の形状の変化を計測した方が、符号つきのデフォーカス量をより高精度に計測することができる。
【0046】
請求項22に記載の発明は、請求項14〜20のいずれか一項に記載のマスクを用いて投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、第1マークの第1パターンおよび第3マークの第3パターンを、前記投影光学系を介して物体上に転写する第1露光工程と;前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に第2マークの第2パターンを重ねて転写し、前記第3パターンの転写像に第4マークの第4パターンを重ねて転写する第2露光工程と;前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成された比較マーク像(SM1)を検出し、前記第3パターンと前記第4パターンとの転写像の重なり部に形成された基準マーク像(HM1)を検出する計測工程と;前記基準マーク像および比較マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法である。
【0047】
これによれば、まず、第1露光工程では第1マークの第1パターンおよび第3マークの第3パターンを物体上に転写した後、第2露光工程では、第2マークの第2パターンおよび第4マークの第4パターンを物体上に転写する。これにより、第1パターンおよび第3パターンの転写像に重ね合わせて第2パターンおよび第4パターンがそれぞれ転写される。
【0048】
上記の第1パターンと第2パターンの転写の結果、物体上の第1パターンと第2パターンとの転写像同士の重なり部に比較マーク像(潜像など)が形成され、第3パターンと第4パターンの転写の結果、物体上の第3パターンと第4パターンとの転写像同士の重なり部に基準マーク像(潜像など)が形成される。そして、計測工程では比較マーク像と基準マーク像とが検出され、算出工程では、それらの検出結果に基づいて投影光学系の結像特性、例えば、デフォーカス量が算出される。この場合、比較マーク像は、第1パターンと第2パターンとの相対的な重ね位置に依存して変化する形状を有しており、基準マーク像は、第3パターンと第4パターンとの相対的な重ね位置に依存せず一定形状を有している。そこで、比較マーク像と基準マーク像とを検出すれば、それらの検出結果の差に基づいて、符号付きデフォーカス量を求めることができる。すなわち、比較マーク像の形状を、設計上の比較マーク像の形状と比較せずに、実際に比較マーク像とともに形成される基準マーク像の形状と比較して符号つきフォーカス量を求めている。
【0049】
このようにすれば、比較マーク像の形状を、設計上のマーク像の形状と比較するのでなく、像形成条件が同一の条件で形成された基準マーク像の形状と比較するので、投影光学系の諸収差や露光条件やレチクル上のパターンの製造誤差などの影響を排除して、より高精度に符号付きデフォーカス量を計測することができる。
【0050】
請求項23に記載の発明は、投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる第1マークに含まれる、所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターンを、前記投影光学系を介して物体上に転写する第1露光工程と;前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターンを重ねて転写する第2露光工程と;前記物体上の第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成されたマーク像を検出する計測工程と;前記マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法である。
【0051】
ここで、第1パターンがパターン面に形成されたマスクと、第2パターンがパターン面に形成されたマスクとは、同一のマスクである必要はない。
【0052】
請求項24に記載の発明は、投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる第1マークに含まれる、所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターンと、第3パターンとを物体上に前記投影光学系を介して転写する第1露光工程と;前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターンと、前記第3パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる第4パターンとを重ねて転写する第2露光工程と;前記物体上の前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成された比較マーク像を検出し、前記第3パターンと前記第4パターンとの転写像の重なり部に形成された基準マーク像を検出する計測工程と;前記基準マーク像および比較マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法である。
【0053】
ここで、第1マークおよび第3マークがパターン面に形成されたマスクと、第2パターンおよび第4パターンがパターン面に形成されたマスクとは、同一のマスクである必要はない。
【0054】
請求項25に記載の発明は、マスクのパターンを、投影光学系を介して物体上に転写する露光方法であって、請求項21〜24のいずれか一項に記載の結像特性計測方法によって前記投影光学系の結像特性を計測する工程と;前記計測された結像特性を考慮して露光の際の各種条件を調整したうえで、前記マスクのパターンを前記物体上に転写する工程と;を含む露光方法である。
【0055】
これによれば、請求項21〜24のいずれか一項に記載の結像特性計測方法によって計測された結像特性によって投影光学系が調整されたうえで、露光が行われるため、微細パターンを物体上に高精度に転写することができる。
【0056】
請求項26に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、請求項25に記載の露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法である。
【0057】
これによれば、リソグラフィ工程で、請求項25に記載の露光方法により微細パターンを物体上に精度良く転写することができるので、結果的に高集積度のデバイス生産性(歩留まりを含む)を向上させることができる。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0059】
図1には、本発明に係る結像特性計測方法及び露光方法の実施に好適な一実施形態に係る露光装置100が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。
【0060】
この露光装置100は、照明系IOP、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージRST(マスクステージ)、レチクルRに形成されたパターンの像を感光剤(フォトレジスト)が塗布された物体としてのウエハW上に投影する投影光学系PL、ウエハWを保持して2次元平面(XY平面内)を移動するXYステージ20(物体ステージ)、XYステージ20を駆動する駆動系22、及びこれらの制御系等を備えている。この制御系は、装置全体を統括制御する主制御装置28を中心として構成されている。
【0061】
前記照明系IOPは、KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザなどから成る光源と、オプティカルインテグレータ又はホモジナイザ(フライアイレンズ又はロッド型(内面反射型)インテグレータ、又は回折光学素子など)、リレーレンズ、可変NDフィルタ、コンデンサレンズ、レチクルブラインド(又はマスキングブレード)、及びダイクロイックミラー等(いずれも図示省略)を含む照明光学系とから構成されている。この照明系IOPは、回路パターン等が描かれたレチクルR上のレチクルブラインドで規定された投影光学系PLの視野内でX軸方向に細長い長方形のスリット状の照明領域を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。
【0062】
前記レチクルステージRSTは、照明系IOPの図1における下方に配置されている。このレチクルステージRST上には不図示のバキュームチャック等を介してレチクルRが吸着保持されている。レチクルステージRSTは、Y軸方向(図1における紙面左右方向)、X軸方向(図1における紙面直交方向)及びθz方向(XY面に直交するZ軸回りの回転方向)に微小駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここではY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。なお、レチクルステージRSTはレチクルRを少なくとも3自由度(例えば、X軸及びY軸方向とθz方向)で微動する微動部と、走査方向に長いストロークを持つ粗動部とを含む構成でもよい。
【0063】
レチクルステージRST上にはレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)21からのレーザビームを反射する移動鏡15が固定されている。レチクルステージRSTの移動面内の位置はレチクル干渉計21によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。ここで、実際には、レチクルステージRST上にはY軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とX軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とが設けられ、これらの移動鏡に対応してレチクルY干渉計とレチクルX干渉計とが設けられている。しかし、図1ではこれらが代表的に移動鏡15、レチクル干渉計21として示されている。ここで、レチクルY干渉計とレチクルX干渉計の一方、例えばレチクルY干渉計は、測長軸を2軸有する2軸干渉計であり、このレチクルY干渉計の計測値に基づきレチクルステージRSTのY位置に加え、θz方向も計測できるようになっている。
【0064】
前記レチクル干渉計21からのレチクルステージRSTの位置情報は主制御装置28に送られる。主制御装置28はこのレチクルステージRSTの位置情報に基づいて駆動系29を介してレチクルステージRSTを駆動する。
【0065】
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に、その光軸AXpの方向がXY面に直交するZ軸方向となるように配置されている。この投影光学系PLとしては、ここでは両側テレセントリックな縮小系であってZ軸方向の共通の光軸AXpを有する複数枚のレンズエレメントから成る屈折光学系が用いられている。レンズエレメントのうちの特定の複数枚は、主制御装置28からの指令に基づいて、図示しない結像特性補正コントローラによって制御され、投影光学系PLの光学特性(結像特性を含む)、例えば倍率、ディストーション、コマ収差、及び像面湾曲などを調整できるようになっている。
【0066】
前記XYステージ20は、実際には不図示のベース上をY軸方向に移動するYステージと、このYステージ上をX軸方向に移動するXステージとで構成されているが、図1ではこれらがXYステージ20として示されている。このXYステージ20上にウエハテーブル18が搭載され、このウエハテーブル18上に不図示のウエハホルダを介してウエハWが真空吸着等によって保持されている。
【0067】
前記XYステージ20は、走査方向(Y軸方向)の移動のみならず、ウエハW上の複数のショット領域を前記照明領域と共役な視野内の投影領域に位置させることができるように、走査方向に直交する非走査方向(X軸方向)にも移動可能に構成されている。そして、ウエハW上の各ショット領域を走査(スキャン)露光する動作と、次ショットの露光のための走査開始位置(加速開始位置)まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作を行う。
【0068】
前記ウエハテーブル18は、ウエハWを保持するウエハホルダをZ軸方向及びXY面に対する傾斜方向に微小駆動するものである。このウエハテーブル18の上面には、移動鏡24が設けられており、この移動鏡24にレーザビームを投射して、その反射光を受光することにより、ウエハテーブル18のXY面内の位置を計測するレーザ干渉計26が移動鏡24の反射面に対向して設けられている。なお、実際には、移動鏡はX軸に直交する反射面を有するX移動鏡と、Y軸に直交する反射面を有するY移動鏡とが設けられ、これに対応してレーザ干渉計もX軸方向位置計測用のXレーザ干渉計とY軸方向位置計測用のYレーザ干渉計とが設けられているが、図1ではこれらが代表して移動鏡24、レーザ干渉計26として図示されている。なお、Xレーザ干渉計及びYレーザ干渉計は測長軸を複数有する多軸干渉計であり、ウエハテーブル18のX、Y位置の他、回転(ヨーイング(Z軸回りの回転であるθz回転)、ピッチング(X軸回りの回転であるθx回転)、ローリング(Y軸回りの回転であるθy回転))も計測可能となっている。従って、以下の説明ではレーザ干渉計26によって、ウエハテーブル18のX、Y、θz、θy、θxの5自由度方向の位置が計測されるものとする。
【0069】
レーザ干渉計26の計測値は主制御装置28に供給され、主制御装置28はこのレーザ干渉計26の計測値をモニタしつつ、駆動系22を介してXYステージ20を駆動することにより、ウエハテーブル18の位置制御が行われる。
【0070】
ウエハW表面のZ軸方向位置及び傾斜量は、例えば特開平6−283403号公報などに開示される送光系50a及び受光系50bを有する斜入射方式の多点焦点位置検出系から成るフォーカスセンサAFSによって計測されるようになっている。このフォーカスセンサAFSの計測値も主制御装置28に供給されており、主制御装置28では、フォーカスセンサAFSの計測値に基づいて駆動系22を介してウエハテーブル18を微少駆動して、投影光学系PLの光軸方向に関するウエハWの位置及び傾きを制御するようになっている。
【0071】
すなわち、このようにしてウエハテーブル18を介してウエハWがX、Y、Z、θx、θyの5自由度方向の位置及び姿勢制御がなされるようになっている。なお、残りのθz(ヨーイング)の誤差については、レーザ干渉計26で計測されたウエハテーブル18のヨーイング情報に基づいてレチクルステージRSTとウエハテーブル18との少なくとも一方を回転させることによって補正される。
【0072】
また、ウエハテーブル18上には、その表面がウエハWの表面と同じ高さになるような基準板FPが固定されている。この基準板FPの表面には、後述するアライメント検出系ASのいわゆるベースライン計測等に用いられる基準マークを含む各種の基準マークが形成されている。
【0073】
更に、本実施形態では、投影光学系PLの側面に、ウエハWに形成されたアライメントマークを検出するマーク検出系としてのオフ・アクシス方式のアライメント検出系ASが設けられている。このアライメント検出系ASは、例えば、LSA系、及びFIA系と呼ばれるアライメントセンサを有しており、基準板FP上の基準マーク及びウエハ上のアライメントマークのX、Y2次元方向の位置計測を行なうことが可能である。
【0074】
ここで、LSA系は、レーザ光をマークに照射して、回折・散乱された光を利用してマーク位置を計測する最も汎用性のあるセンサであり、従来から幅広いプロセスウエハに使用されている。FIA系は、ハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマーク画像を画像処理することによってマーク位置を計測するセンサであり、アルミ層やウエハ表面の非対称マークに有効に使用される。
【0075】
アライメント制御装置16は、アライメント検出系ASからの情報DSをA/D変換し、さらにこのデジタル化された信号を演算処理してマーク位置を検出する。この検出結果は、アライメント制御装置16から主制御装置28に供給されるようになっている。
【0076】
さらに、本実施形態の露光装置100では、レチクルRの上方に、例えば特開平7−176468号公報等に開示される、投影光学系PLを介してレチクルR上のレチクルマークまたはレチクルステージRST上の基準マーク(共に図示省略)と基準板FP上のマークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント検出系(不図示)が設けられている。これらのレチクルアライメント検出系の検出信号は、アライメント制御装置16を介して主制御装置28に供給される。露光装置100で、実際に走査露光を行う際には、これらのレチクルアライメント検出系により、レチクルR上のレチクルマークまたはレチクルステージRST上の基準マーク(共に図示省略)と基準板FP上のマークとの相対位置が検出され、そのときのレチクル干渉計21及びウエハ干渉計26の測定値とから、レチクル干渉計21の測長軸によって規定されるレチクルステージRSTの座標系とウエハ干渉計26の測長軸によって規定されるXYステージ20の座標系との関係が求められることによって、レチクルアライメントが実行される。
【0077】
次に、本発明に係る投影光学系の結像特性の計測に用いられるレチクルの一例について説明する。
【0078】
図2には、投影光学系PLの結像特性の計測に用いられるレチクルRTの一例が示されている。図2は、レチクルRTを、パターン面側(図1における下面側)から見た平面図である。このレチクルRTは、ほぼ正方形のマスク物体としてのガラス基板42の中央に、パターン領域PAが設けられ、そのパターン領域PA内に、後述する計測用パターンRP1が配置されている。レチクルRTのパターン領域PA内における計測用パターンRP1が配置されていない領域は、遮光パターンとなっている。なお、パターン領域PAの中心、すなわちレチクルRTの中心(レチクルセンタ)を通るパターン領域PAのX軸方向の両側には、例えば一対のレチクルアライメントマークRM1,RM2が形成されている。また、本実施形態では、パターン領域PA内で計測用パターンRP1が形成される領域以外を遮光部とするものとしたが、パターン領域PAの内部を光透過部としてその一部に計測用パターンRP1を形成してもよい。
【0079】
ここで、本実施形態において、レチクルRTのパターン領域PA内に配置される計測用パターンRP1について説明する。パターン領域PA内にはその一部を光透過部として、例えば、図3に拡大して示されるような計測用パターンRP1が配置されている。この計測用パターンRP1は、投影光学系の結像特性を計測するためのパターンである。計測用パターンRP1では、4種類の回折格子SP1〜SP4が、相互に重ならないように形成されている。
【0080】
回折格子SP1(第1マーク)は、Y軸方向(所定軸方向)に所定間隔dで配置された複数のパターンTP1(第1パターン)を含んでいる。各パターンTP1は、―Y方向(所定軸方向のうちの一方の方向)に対し紙面内時計回りに角度θ1(90°<θ1<180°)を成す第1方向に延びる線状の第1部分と、―Y方向に対し紙面内時計回りに角度θ2(0°<θ2<90°)を成す第2方向に延びる線状の第2部分とを有し、−Y方向に凸の全体として山形のパターンである。各パターンTP1は、光を遮光する光遮蔽部(遮光部)となっている。なお、各パターンTP1のY軸方向の線幅はLとなっており、L=d/2の関係がある。
【0081】
回折格子SP2(第2マーク)は、Y軸方向に所定間隔dで配置された複数のパターンTP2(第2パターン)を含んでいる。各パターンTP2は、前述の第1方向に延びる線状の第1部分と、前述の第2方向に延びる線状の第2部分とを有し、+Y方向(所定軸方向のうちの他方の方向)に凸の全体として山形のパターンである。すなわち、各パターンTP2は、各パターンTP1と逆向きのパターンとなっている。各パターンTP2は、光を遮光する光遮蔽部(遮光部)となっている。なお、各パターンTP2のY軸方向の線幅は、パターンTP1と同じLである。後述するように、パターンTP1とパターンTP2とは、互いに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化するような形状となっている。また、本実施形態では、パターンTP1が+Y方向に凸となっていて、パターンTP2が−Y方向に凸となっていてもよい。すなわち、パターンTP1とパターンTP2との凸のむきが互いに逆であればよい。
【0082】
回折格子SP3(第3マーク)は、Y軸方向に所定間隔dで配置された複数のパターンTP3(第3パターン)を含んでいる。各パターンTP3は、第3方向(角度θ3)に延びるラインパターンである。各パターンTP3は、光を遮光する光遮蔽部(遮光部)となっている。なお、各パターンTP3のY軸方向の線幅は、パターンTP1と同じLである。
【0083】
回折格子SP4(第4マーク)は、Y軸方向に所定間隔dで配置された複数のパターンTP4(第4パターン)を含んでいる。各パターンTP4は、第4方向(角度θ4)に延びるラインパターンである。各パターンTP4は、光を遮光する光遮蔽部(遮光部)となっている。なお、各パターンTP4のY軸方向の線幅は、パターンTP1と同じLである。本実施形態ではθ1=θ3、θ2=θ4となっている。後述するように、パターンTP3とパターンTP4とは、互いに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる。
【0084】
回折格子SP2、SP4は、回折格子SP1、SP3の紙面下方(−X方向)に配置されており、パターンTP1およびパターンTP3の中心とパターンTP2およびパターンTP4の中心とはX軸方向にΔRXだけ離れている。すなわち、回折格子SP1と回折格子SP2の位置関係は、回折格子SP3と回折格子SP4の位置関係と同一である。
【0085】
なお、本実施形態においては、計測パターンRP1の形成領域のうち、パターンTP1〜TP4以外の領域は、光を透過させる光透過部であるとする。また、Y軸方向に関する回折格子SP1とSP3との間隔、及び回折格子SP2とSP4との間隔は等しく、かつ回折格子の大きさに応じてその間隔が決定されている。
【0086】
図4(A)、図4(B)には、図2のY軸に平行な線分A−A’でレチクルRTを切断した場合の回折格子SP1付近の断面図が示されている。図4(A)、図4(B)に示されるように、ガラス基板42に、パターンTP1の形状を有する遮光部30が、Y軸方向に所定間隔dで配設されることによって、回折格子SP1が形成されている。各遮光部30の間を、光を透過させる光透過部31であるとする。遮光部30のY軸方向の線幅Lは、所定の間隔dの1/2であるため、光透過部31のY軸方向の線幅もLとなる。即ち、回折格子SP1はY軸方向に所定間隔(ピッチ)dで配列され、かつデューティ比が1:1となるラインアンドスペースパターンである。
【0087】
レチクルRTに紙面上方から垂直に光が入射すると、回折格子SP1の各光透過部31を通過した光の回折現象によって、0次光の他に、正側(紙面右側)に進むn次光(nは自然数)と負側(紙面左側)に進むn次光とが発生する。図4(A)、図4(B)では、説明を簡単にするため、0次光と±1次光が図示されている。なお、紙面下方に直進する0次光と、±1次光とのなす角度αは、所定間隔dと照明光ILの波長λによって決定され、sinα=λ/dの関係が成立する。
【0088】
+1次光と−1次光との回折効率を異ならせるため、回折格子SP1の光透過部31の一部には、入射する光の位相をシフトしないで透過する領域(第1領域)と、入射する光の位相をシフトさせて透過する領域(第2領域)とが設けられている。図4では、光透過部31のY軸方向(紙面左右方向)における右半分(幅L/2)の部分が第1領域となり、左半分(幅L/2)が第2領域となっている。第1領域を透過する光と第2領域を透過する光とは位相が異なったものとなる。なお、本実施形態では、第1領域と第2領域とで同一次数の正側の回折光及び負側の回折光(即ち±n次回折光)の一方での位相差をπとするように段差量(深さ)が設定された凹部をガラス基板42に形成した後、ガラス基板42に蒸着したクロムなどの遮光層をパターニングすることで、その凹部の一部にパターンTP1を形成し、残りを第1領域としているが、これとは逆に第2領域となるガラス基板42の一部を上記と同じ凹部とし、パターンTP1が形成されるガラス基板42の表面の一部を第1領域としてもよい。また、図4では隣接するパターンTP1に挟まれた光透過部の右半分を第1領域、左半分を第2領域としているが、これとは逆に右半分を第2領域、左半分を第1領域としてもよい。さらに、第1領域と第2領域とで±n次回折光の一方での位相差をπとするために、本実施形態では、ガラス基板42に凹部を設けるものとしているが、例えば誘電体膜などからなる位相シフタをガラス基板42に形成してもよい。また、第1及び第2領域における±n次回折光の一方での位相差はπに限られるものではなく(2m+1)π(mは整数)であればよい。以上のように、本実施形態の回折格子SP1の構成は任意で良く、要は±n次回折光の回折効率が異なればよく、特に±n次回折光の一方が実質的になくなる(即ち、第1領域と第2領域とで±n次回折光の一方での位相差がほぼ(2m+1)πとなる)ことが好ましい。
【0089】
図4(A)には、第1領域を透過する0次光および−1次光と、第2領域を透過する0次光および−1次光とがそれぞれ示されている。第2領域を透過する光は、第1領域を透過する光よりπ/2だけ位相が早まっている。さらに、−1次光については、第1領域を透過する光の−1次光と、第2領域を透過する光の−1次光との間には、光路差((L/2)sinα)が発生する。この光路差は、sinα=λ/dから(L/2)×(λ/d)となる。そして、L=d/2であるから、この光路差はλ/4となる。この光路差によって、第1領域を透過する光の−1次光と第2領域を透過する光の−1次光との位相差はキャンセルされ、両者は同位相となる。したがって、第1領域を透過する光の−1次光と、第2領域を透過する光の−1次光の間には、結果的に位相差が生じず、−1次光は、両者によって強められる。
【0090】
一方、図4(B)には、第1領域を透過する光の0次光および+1次光と、第2領域を透過する光の0次光および1次光とがそれぞれ示されている。前述のように、第2領域を透過する光は、第1領域を透過する光よりもπ/2だけ位相が早まっている。さらに、+1次光については、第1領域を透過する光の+1次光と、第2領域を透過する光の+1次光の間には光路差((L/2)sinα)が発生する。したがって、この光路差は、(L/2)×(λ/d)となる。そして、L=d/2であるから、この光路差はλ/4となる。したがって、この光路差λ/4と第1領域および第2領域の位相差とから、第1領域を透過する光の+1次光と、第2領域を透過する光の+1次光との間には結果的に位相差πが生じ、+1次光は、両者によって相殺され、ほぼ消滅する。
【0091】
すなわち、この回折格子SP1では、透過する光のうち、+1次光が消滅し、0次光と−1次光だけが残るようになる。なお、2次以上の光についても−1次光と同様に正側の回折光は消滅し、0次光と負側の回折光とが残るようになる。
【0092】
本実施形態のように、回折格子SP1の所定間隔dと、第1領域のY軸方向の幅(L/2)と、第2領域のY軸方向の幅(L/2)との比を4:1:1にすれば、第1領域を透過する光の回折光と、第2領域を透過する光の回折光との光路差の絶対値はλ/4となる。そこで、第1領域と第2領域とを透過する光の位相差をπ/2とすれば、第1領域と第2領域との同一次数の正側の回折光と負側の回折光との位相差は、πか0かのいずれかとなり、一方の回折光は消滅し、もう一方の回折光は最も強めあうようになる。
【0093】
したがって、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の差を最大にするには、本実施形態のように、回折格子の所定間隔dと、第1領域のY軸方向の幅L/2と、第2領域の幅L/2との比を4:1:1にし、第1領域を透過する光と第2領域を透過する光との位相差をπ/2、又はこれと同等(即ち、2mπ(mは整数)を加算した値)とするのが望ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、回折格子SP1における同一次数の正側の回折光と負側の回折光の回折効率が異なるように、回折格子の所定間隔dと、第1領域のY軸方向の幅と、第2領域の幅との比や、第1領域を透過する光と第2領域を透過する光との位相差が、設定されていればよい。
【0094】
図5には、デフォーカスによって回折格子SP1の転写像がずれる様子が示されている。図5に示されるように、回折格子SP1では、前述のように+1次光が消滅しており、ウエハテーブル18上のウエハWには、0次光と−1次光によって結像された回折格子SP1の像が転写される。したがって、投影光学系PLとウエハWとの距離が近いときには、ウエハW上の回折格子SP1の各パターンTP1の転写像の形成位置は−Y方向にずれ、投影光学系PLとウエハWとの距離が遠くなる方向にずれているときには、ウエハW上の回折格子SP1の各パターンTP1の転写像の形成位置は、+Y方向にずれることになる。なお、本実施形態では、他の回折格子SP2〜SP4の同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率は同じであるとする。
【0095】
次に、本実施形態の露光装置100によりレチクルパターンをウエハW上に転写して、投影光学系PLの結像特性を計測する際の動作の流れについて簡単に説明する。
【0096】
まず、ウエハWが不図示のウエハローダによりウエハテーブル18上にロードされるとともに、レチクルRTが不図示のレチクルローダによりレチクルステージRST上にロードされる。
【0097】
主制御装置28は、ウエハテーブル18上に設けられた基準板FPの表面に形成されている一対の基準マーク(不図示)の中点が投影光学系PLの光軸とほぼ一致するように、ウエハテーブル18を移動する。この移動は、主制御装置28によりレーザ干渉計26の計測結果をモニタしつつ駆動系22を介してXYステージ20を移動することにより行われる。次に、主制御装置28は、レチクルRTの中心(レチクルセンタ)が投影光学系PLの光軸とほぼ一致するように、駆動系29を介してレチクルステージRSTの位置を調整する。このとき、例えば、前述のレチクルアライメント検出系(不図示)により投影光学系PLを介してレチクルアライメントマークRM1,RM2と対応する前述の基準マークとの相対位置が検出される。
【0098】
そして、主制御装置28は、レチクルアライメント検出系によって検出された相対位置の検出結果に基づいてレチクルアライメントマークRM1,RM2と対応する前述の基準マークとの相対位置誤差がともに最小となるように駆動系29を介してレチクルステージRSTのXY面内の位置を調整する。これにより、レチクルRTの中心(レチクルセンタ)が投影光学系PLの光軸と正確にほぼ一致するとともにレチクルRTの回転角もレーザ干渉計26の測長軸で規定される直交座標系の座標軸に正確に一致する。ここで、本実施形態では、ウエハ上での照明光ILの照射領域(投影光学系PLに関して前述の照明領域と共役な細長い長方形状の投影領域)の中心(即ち、投影光学系PLの光軸位置)を計測点としてベストフォーカス位置を計測するものとし、レチクルRTの中心と投影光学系PLの光軸とが一致すると、計測用パターンRP1はその中心が投影光学系PLの物体面側でその計測点に対応する位置(ここでは光軸位置)とほぼ一致するように配置される。このとき、計測用パターンRP1は、X軸方向に関して回折格子SP1、SP3と回折格子SP2、SP4との中心点が光軸位置とほぼ一致し、かつY軸方向に関して回折格子SP1、SP2と回折格子SP3、SP4との中心点が光軸位置とほぼ一致することになる。
【0099】
次いで、主制御装置28は、レーザ干渉計26の計測結果をモニタしつつ駆動系22を介してXYステージ20を移動することにより、本実施形態では表面に感光剤としてポジ型のレジストが塗布されたウエハWを投影光学系PLの下方の位置に移動させる。なお、本実施形態の場合、レチクルRTの計測用パターンRP1が配置されている領域以外の領域は遮光パターンとなっている。即ちレチクルRT上の照明領域に照射される照明光ILの大部分は投影光学系PLに入射しないので、ウエハWへの計測用パターンRP1の転写時に照明光ILの照射により投影光学系PLに蓄積される熱エネルギが少なくて済み、その転写時における投影光学系PLの光学特性の変動を最小限に抑えることが可能となっている。但し、レチクルRTのパターン領域PA内で計測用パターンRP1の形成領域以外を遮光パターンではなく光透過部としてもよく、この場合には、ウエハWへの計測用パターンRP1の転写に先立ち、レチクルRTの計測用パターンRP1のみ、あるいは計測用パターンRP1を含む照明領域よりも狭い所定領域のみに照明光ILが照射されるように、照明系IOP内の不図示のレチクルブラインドを駆動して、レチクルRT上での照明領域の大きさ及び位置を調整することが好ましい。
【0100】
この状態で、主制御装置28は1回目の露光を行う。ここでは、投影光学系PLの結像特性を計測するのが目的であるために、露光中は、レチクルRTとウエハW、すなわちレチクルステージRSTとXYステージ20は、静止させたままとする。これにより、レチクルRTのパターンが投影光学系PLを介してウエハW上のフォトレジスト層に縮小転写される(第1露光工程)。また、このとき通常の露光ドーズ量(すなわち、レジストの感度特性に応じた適正量)で露光を行う。これにより、ウエハW上のレジスト層に図6中に点線で示されるような回折格子SP1、SP2の像SP1W、SP2Wと回折格子SP3、SP4の像SP3W、SP4Wとが転写される。ここでは、転写像SP1W〜SP4Wは、それぞれ回折格子SP1〜SP4の転写像に対応している。
【0101】
次いで、主制御装置28は、パターンTP1とパターンTP2との位置関係に基づいて、XYステージ20を所定軸方向に所定量だけ移動する。図3に示されるように、回折格子SP1、SP3の中心と回折格子SP2、SP4との中心とは、X軸方向にΔRXだけ離れていることから、投影光学系PLの倍率が、例えば1/4であれば、ΔRX/4の距離だけ−X方向にXYステージ20を移動する。このとき、主制御装置28は、レーザ干渉計26の計測値をモニタしつつ、駆動系22を介してXYステージ20を移動する。
【0102】
上述のようにして目的の位置(ΔRX/4だけ−X方向に移動した位置)へのウエハWの位置決めが完了すると、主制御装置28は、前述の露光と同様の露光(2回目の露光)を行う(第2露光工程)。なお、このときも通常の露光ドーズ量で露光を行う。これにより、図6中に実線で示される回折格子SP1〜SP4の像がウエハW上に転写される。なお、1回目の露光と2回目の露光とで投影光学系PLの光軸方向(Z軸方向)に関するウエハWの位置(フォーカス位置)は等しければよくその位置は任意で構わないが、本実施形態では、フォーカスセンサAFSを用い、例えば、投影光学系PLに関する既知の最良フォーカス位置(設計値など)にウエハWを設定しておくものとする。また、2回目の露光に先立ってウエハWを移動させるものとしたが、その代わりに、あるいはそれと組み合わせてレチクルRTを移動させてもよい。
【0103】
この場合、1回目の露光においてウエハW上のレジスト層に転写された回折格子SP1、SP3の潜像に回折格子SP2、SP4の像がそれぞれ重なる位置に転写される。すなわち、転写像SP1Wに回折パターンSP2の像が、転写像SP3Wに回折格子SP4の像がそれぞれ重なる位置に転写される。なお、回折格子SP1〜SP4の転写像SP1W〜SP4Wの中の1つ1つの転写像、すなわちパターンTP1〜TP4の転写像をそれぞれ転写像TP1W〜TP4Wとする。
【0104】
そして、2回目の露光が終了すると、主制御装置28の指示に応じて、不図示のウエハローダによって、ウエハWは、ウエハテーブル18上からアンロードされた後、不図示のウエハ搬送系により、露光装置100にインラインにて接続されている不図示のコータ・デベロッパに搬送される。
【0105】
ウエハWは、このコータ・デベロッパ内で現像される。この現像の終了により、ウエハW上には、一例として図7に示されるように、転写像TP1WとTP2Wの重なり部に比較マーク像SM1が、転写像TP3WとTP4Wの重なり部に基準マーク像HM1が形成され、比較マーク像SM1の配列と、基準マーク像HM1の配列とが形成される。なお、比較マーク像SM1と基準マーク像HM1は、投影光学系PLの結像特性を検出するためのマーク像である。なお、比較マーク像SM1は、長い方の対角線がX軸方向を向いている。そして、比較マーク像SM1は1組の対角の角度がθである。また、基準マーク像HM1は四角形の長い方の対角線がX軸方向を向いている。さらに、基準マーク像HM1は比較マーク像SM1と同様に1組の対角の角度がθである。比較マーク像SM1および基準マーク像HM1の一対の対角θの大きさは、θ1−θ2(=θ3−θ4)となる。
【0106】
ここで、基準マーク像HM1の形状が、重ね位置に依存せずに一定形状であることについて、一例として、図8を用いて説明する。図8(A)には、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が0であった場合の転写像TP3Wと転写像TP4Wの重なり状態が示され、図8(B)には、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が−Y方向にΔYであった場合の転写像TP3Wと転写像TP4Wの重なり状態が示されている。また、図8(C)には、転写像TP3Wの+Y方向のずれ量がΔYであった場合の転写像TP3WとTP4Wの重なり状態が示されている。なお、本実施形態では、回折格子SP3および回折格子SP4の正側の回折光と負側の回折光との回折効率は同じであるため、デフォーカスによって、転写像TP3Wおよび転写像TP4Wの形成位置がずれることはない。
【0107】
転写像TP3W及び転写像TP4Wは、それぞれ異なる方向に伸びる同一線幅の線状(ラインパターン)の転写像であるため、図8に示されるように、転写像TP3Wの形成位置がY軸方向にずれることによって、転写像TP3Wと転写像TP4Wとが重なるときの4つの交点(各交点を結んだ形状が基準マーク像HM1の形状である)の位置はそれぞれ異なった位置となる。しかし、各交点間の距離は変化しないため、基準マーク像HM1の形状は、重ね位置に依存せず、いずれの場合も同一形状となる。
【0108】
一方、比較マーク像SM1が、重ね位置に依存して変化することについて、一例として、図9を用いて説明する。図9(A)には、転写像TP1Wの形成位置のずれがない場合、すなわちデフォーカス量が0である場合の転写像TP1Wと転写像TP2Wの重なり状態が示されている。また、図9(B)には、転写像TP1Wの形成位置のずれ量が−Y方向にΔYであった場合、すなわち投影光学系PLとウエハWとの距離が近くなる方向にフォーカスがずれている場合の転写像TP1Wと転写像TP2Wの重なり状態が示されている。また、図9(C)には、転写像TP1WのY軸方向のずれ量が+Y方向にΔYであった場合、すなわち投影光学系PLとウエハWとの距離が遠くなる方向にフォーカスがずれている場合の転写像TP1Wの転写像TP2Wの重なり状態が示されている。ここでは、転写像TP1W及び転写像TP2Wがそれぞれ反対向きに凸の山形の像であるために、転写像TP1Wの形成位置がY軸方向にずれれば、転写像TP1WとTP2Wとが重なるときの交点の数(各交点を結んだ形状が比較マーク像SM1の形状である)や、各交点間の距離が変化する。従って、比較マーク像SM1の形状は、重ね位置に依存して変化することとなる。
【0109】
なお、比較マーク像SM1の形状は、角度θの値や、重ね位置のずれ量及びずれ方向により、四角形(菱形や平行四辺形)だけではなく、図9(C)に示されるように、四角形の一部が欠落した多角形となる場合もある。但し、以下の説明では、比較マーク像SM1の形状が、四角形の一部が欠落した多角形の場合には、便宜上、欠落がないものとして取り扱うこととする。このような取り扱いをしても、デフォーカス量の計測結果に影響はないからである。
【0110】
前述した理由から、基準マーク像HM1の形状と比較マーク像SM1の形状とを比較することにより、パターンの重ね位置のY軸方向のずれ情報(位置ずれ量)を求めることができる。例えば、正確にパターンの重ね合わせが行われると基準マーク像HM1と比較マーク像SM1とが同一形状となるような位置関係に各パターンTP1〜TP4がパターン領域PAに配置されているものとして、基準マーク像HM1と比較マーク像SM1のそれぞれ対応する部分の長さLH1、LS1を計測し、それぞれの計測値が同じであれば、Y軸方向の重ね合わせのずれ量が0であることがわかり、それぞれの計測値が異なっていれば、Y軸方向に重ね合わせがずれていることを示している。そして、このY軸方向のずれ量がデフォーカス量に比例するものであるため、両マーク像HM1、SM1の長さLH1、LS1の差に基づいてそのデフォーカス量を求めることができる。
【0111】
そこで、ウエハW上に形成された比較マーク像SM1及び基準マーク像HM1の検出(長さ計測)が、以下のようにして行われる(計測工程)。
【0112】
本実施形態では、一例としてアライメント検出系ASを用いて基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の長さ計測を行う。まず、主制御装置28は、コータ・デベロッパからの現像完了の通知を受け取ると、不図示のウエハ搬送系に指示してウエハWを露光装置内に搬送し、この搬送されたウエハWをウエハローダにより再度ウエハテーブル18上にロードする。
【0113】
そして、主制御装置28は、ウエハW上に形成された比較マーク像SM1をアライメント検出系ASの真下に移動して、例えばLSA系を用いて、比較マーク像SM1の長い方の対角線の長さLS1(図7参照)を計測する。なお、楔マーク(菱形マークはその一種)の線長等をLSA系のセンサで計測する方法は、SMP計測技術として広く知られているので、計測方法の詳細については省略する。
【0114】
同様にして、主制御装置28は、基準マーク像HM1の長い方の対角線の長さLH1(図7参照)を計測する。
【0115】
次に、このようにして計測された基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の長さLH1、LS1に基づいて、デフォーカス量を求める方法について説明する(算出工程)。
【0116】
まず、主制御装置28は、LS1及びLH1の計測値を比較し、両者が同一の値であれば、デフォーカス量が0であると判断する。
【0117】
一方、主制御装置28は、LS1とLH1の計測値が異なる場合には、デフォーカス量が0ではないと判断する。ここで、比較マーク像SM1の長さLS1と基準マーク像HM1の長さLH1との差分をΔSH1として、デフォーカス量を求める方法について説明する。なお、比較マーク像SM1が四角形の一部が欠落した多角形である場合は、仮想的に欠落がないとみなすことにより、比較マーク像SM1を四角形の場合と同様に取り扱うことが可能となる。
【0118】
比較マーク像SM1の短い方の対角線の長さをDS1とすると、DS1とLS1とは、次の(1)式の関係にある。
【0119】
DS1=LS1×tan(θ/2) ……(1)
【0120】
また、基準マーク像HM1の短い方の対角線の長さをDH1とすると、DH1とLH1とは、次の(2)式の関係にある。
【0121】
DH1=LH1×tan(θ/2) ……(2)
【0122】
ここで、DS1とDH1の差分をΔD1とすると、LS1とLH1の差分であるΔSH1とΔD1との関係は、上記(1)式と(2)式とから、次の(3)式で示される。
【0123】
ΔD1=ΔSH1×tan(θ/2) ……(3)
【0124】
このΔD1は、転写像TP1Wの中心と転写像TP2Wの中心との距離の2倍と同等の値を有する。そこで、Y軸方向の位置ずれ量をΔYとすると、ΔYとΔD1との関係は、次の(4)式で示される。
【0125】
ΔD1=ΔY×2 ……(4)
【0126】
従って、上記(3)式と(4)式とから、次の(5)式が得られる。
【0127】
ΔY=ΔSH1×tan(θ/2)÷2 ……(5)
【0128】
そこで、主制御装置28は、比較マーク像SM1の長い方の対角線の長さLS1と基準マーク像HM1の長い方の対角線の長さLH1の差分を算出し、この差分と上記(5)式とに基づいてY軸方向の位置ずれ量ΔYが求まる。
【0129】
また、主制御装置28は、基準マーク像HM1の長さLH1と比較マーク像SM1の長さLS1との大小関係から、ずれの方向(+Y方向か−Y方向か)を求める。例えば、比較マーク像SM1の長さLS1が基準マーク像HM1の長さLH1よりも小さい場合には、図10(A)に示されるように、パターンTP1Wは+Y方向にシフトしていると判断し、図10(B)に示されるように、比較マーク像SM1の長さLS1が基準マーク像HM1の長さLH1よりも大きい場合には、パターンTP1Wは−Y方向にシフトしていると判断する。すなわち、Y軸方向の位置ずれ量ΔYが同じであっても、比較マーク像SM1の形状は、Y軸方向の転写像TP1Wの形成位置のY軸方向の位置ずれの方向によって異なったものとなる。
【0130】
従って、主制御装置28は、比較マーク像SM1の長さLS1と基準マーク像HM1の長さLH1が、例えば図10(A)に示されるような関係であれば、図5に示されるように、回折格子SP1の転写像SP1Wは+Y方向にシフトしており、現在のフォーカス位置は最適フォーカス位置よりも−Z方向にあると判断する。また、主制御装置28は、比較マーク像SM1の長さLS1と基準マーク像HM1の長さLH1が、例えば図10(B)に示されるような関係であれば、回折パターンの転写像SP1Wは−Y方向にシフトしており、現在のフォーカス位置は最適フォーカス位置よりも+Z方向にあると判断する。
【0131】
次に、主制御装置28は、現在のフォーカス位置と最適フォーカス位置との関係と、Y軸方向の位置ずれ量ΔYから、符号付きデフォーカス量を求める。位置ずれ量ΔYと符号付きデフォーカス量との関係は、図5に示されるように、比例関係にあるため、符号付きデフォーカス量は、現在のフォーカス位置と最適フォーカス位置との関係と、Y軸方向の位置ずれ量ΔYから簡単に求めることができる。
【0132】
なお、上述のような符号付きデフォーカス量の計測方法を応用して、投影光学系PLの結像特性の1つである投影光学系PLの像面(像面湾曲)を求めることもできる。例えば、上述した計測用レチクルRTの代わりに、前述のスリット状の照明領域部分に収まるような範囲の領域に、計測用パターンRP1と同様のパターンが、複数形成されたレチクルを用意する。このとき、複数の計測用パターンRP1はウエハ上での照明光ILの照射領域(投影領域)内でベストフォーカス位置を検出すべき複数の計測点にそれぞれ対応して配置されるようにその間隔などが設定される。なお、図2では説明を容易にするため計測用パターンRP1を誇張して大きく示している。そして、そのレチクルを用いて、上述の第1露光工程、第2露光工程を実行すれば、ウエハWの対応する領域にそれぞれ比較マーク像SM1および基準マーク像HM1が形成される。これにより、異なる像高位置で形成された比較マーク像SM1および基準マーク像HM1によってデフォーカス量がそれぞれ計測され、それらのデフォーカス量から例えば最小二乗法などを用いて投影光学系PLの像面(像面湾曲)を算出することができる。なお、上述した像面湾曲の計測では、計測用パターンRP1が複数形成されたレチクルを用いて第1露光工程、第2露光工程を実行したが、レチクルRTを用いて、前述した複数の計測点でそれぞれ計測用パターンRP1の転写像が形成されるように、レチクルステージRSTを移動して各計測点に対応する位置に計測用パターンRP1を順次配置しながら、上述の第1露光工程、第2露光工程を実行し、異なる像高位置に比較マーク像SM1および基準マーク像HM1をそれぞれ形成するようにしてもよい。なお、図1の走査露光装置では走査方向(Y軸方向)と直交する非走査方向(X軸方向)に関するレチクルステージRSTの移動ストロークが短いので、X軸方向に離れた複数の計測用パターンRP1をレチクルRTに形成するとともに、レチクルステージRSTをY軸方向に移動してその複数の位置でそれぞれ前述の第1及び第2露光工程を実行するようにしてもよい。
【0133】
本実施形態の露光装置100では、主制御装置28が、装置各部を制御して、露光開始に先立って、これまでに説明した結像特性計測方法によって投影光学系PLの結像特性を計測する。そして、主制御装置28は、その計測された結像特性を考慮して露光の際の各種条件を調整して、XYステージ20とレチクルステージRSTの同期制御を行いつつ走査露光を行なう。
【0134】
なお、露光条件の調整としては、例えば計測された結像特性に基づく投影光学系PLの結像特性を前述の結像特性補正コントローラを介して調整することなどが代表的に挙げられる。また、例えば計測された結像特性がベストフォーカス位置又は像面湾曲などであるときは、走査露光中にレチクルRとウエハWとの少なくとも一方のZ軸方向の位置や傾斜角を調整してもよい。このとき、結像特性補正コントローラによる結像特性の調整を併用しても構わない。
【0135】
また、本実施形態の露光装置では、上述した菱形マークの線長の計測結果に基づいて投影光学系PLのベストフォーカスを検出し、この検出結果に基づいてフォーカスセンサAFSのキャリブレーションを精度良く行うことも可能である。
【0136】
また、所定の精度範囲内に結像特性の調整ができない場合には、主制御装置28はディスプレイ(モニター)への警告表示、あるいはインターネット(電子メール等)又は携帯電話などによって、オペレータなどにアシストの必要性を通知するようにしても良い。さらに、この場合に、各駆動系やセンサ類の調整に必要な情報を一緒に通知しても良い。これにより、各種データの計測などの作業時間だけでなく、その準備期間も短縮することができ、露光装置100の停止期間の短縮、すなわち稼働率の向上を図ることが可能となる。
【0137】
なお、上記(5)式を変形すると、次の(6)式となる。
【0138】
ΔSH1=ΔY×2÷tan(θ/2) ……(6)
【0139】
ここで、2÷tan(θ/2)をMとおくと、上記(6)式は次の(7)式となる。
【0140】
ΔSH1=ΔY×M ……(7)
【0141】
上記(7)式から、ΔSH1は、ΔYをM倍した値であるといえる。すなわち、本実施形態では、回折パターンの転写像SP1Wの転写位置のY軸方向の位置ずれ量ΔYを拡大して計測することができる。例えば、量を50倍(M=50)にするには、角度θを約4.6度に、又、位置ずれ量を100倍(M=100)にするには、角度θを約2.3度にすれば良い。従って、角度θを変えることによってY軸方向の位置ずれ量ΔYの拡大率Mを任意に設定することが可能となる。このことは、デフォーカス量を拡大して計測ができるということに他ならない。なお、角度θ、すなわち(θ1−θ2)は、90度より小さい値に設定しておくのが望ましい。
【0142】
以上説明したように、本実施形態では、投影光学系の結像特性の1つであるベストフォーカス位置(デフォーカス量)の計測に際し、Y軸方向に所定間隔dで配置されたパターンTP1を含み、正側の回折光と負側の回折光との回折効率がそれぞれ異なる回折格子SP1と、パターンTP1に重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化するパターンTP2が、所定間隔dで配置されることによって形成された回折格子SP2と、パターンTP3が所定軸方向に所定間隔で配置されることによって形成された回折格子SP3と、第3パターンに重ね合わせて転写した際に重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる第4パターンが所定間隔で配置されることによって形成された回折格子SP4とが、相互に重ならないように、そのパターン面に形成されたレチクルRTを用いている。
【0143】
回折格子SP1における正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なっているため、パターンTP1の転写像TP1Wの形成位置は、デフォーカス量に応じてY軸方向にずれたものとなる。第1パターンの転写像TP1Wの形成位置がY軸方向にずれると、比較マーク像SM1の形状が変化する。したがって、比較マーク像SM1の形状を計測し、計測された比較マーク像SM1の形状と、基準マーク像HM1の形状とを比較すれば、そのときのデフォーカス量(前述した1回目及び2回目の露光時におけるウエハWのZ軸方向の位置(フォーカス位置))を求めることができる。一般に、デフォーカスによるパターンTP1のY軸方向のずれ量よりも、比較マーク像SM1の形状の変化量の方が大きいため、パターンTP1の転写像の形成位置の位置ずれ量を計測するよりも、比較マーク像SM1の形状の変化を計測した方が、計測されるデフォーカス量はより高精度な値となる。
【0144】
そして、本実施形態では、各パターンTP1〜TP4の線幅が等しいために、各パターンTP1〜TP4の各転写像は、それぞれ同程度の投影光学系PLの収差の影響を受ける。そこで、各パターンTP1〜TP4の重なり部に形成される基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1における収差の影響は、それぞれほぼ同程度とみなすことができる。従って、基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1のそれぞれ対応する部分の長さから算出されるパターンのY軸方向の位置ずれ情報における収差の影響を除くことができ、結果的に、精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。このとき、前述の露光時におけるウエハWのZ軸方向の位置はフォーカスセンサAFSにて検出されているので、先に計測されたデフォーカス量が零でないときは、フォーカスセンサAFSの検出値からその計測されたデフォーカス量だけずれた位置をベストフォーカス位置として求めることができる。
【0145】
また、基準マーク像HM1と比較マーク像SM1は、いずれも一組の対角が同じ角度θとされているので、両方の像において、その尖った先端部分に生じるレジスト等の形成具合は同程度であるとともに、現像処理あるいはエッチング処理におけるプロセスの影響はほぼ同程度とみなすことができる。従って、結果的に精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0146】
また、比較マーク像SM1の長さLS1には、その対角の角度θに応じた倍率で実際のデフォーカス量が拡大されて含まれている。そこで、所定の倍率に対応する角度θが得られるように各パターンTP1、TP2を配置することにより、従来の方法では、転写像間の距離を計測する計測装置の計測限界(分解能)により計測できなかったわずかなデフォーカス量であっても、特殊な装置を必要とせずに、従来と同じ計測装置(例えば、露光装置のアライメント検出系(LSA系、FIA系)など)を用いてデフォーカス量を計測することが可能となる。すなわち、見かけ上、デフォーカス量の計測装置の分解能を上げることができる。従って、結果的に更に精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0147】
なお、上記実施形態では、比較マーク像SM1の形状と、基準マーク像HM1の形状との比較によって、デフォーカス量を求めたが、レチクルRTの代わりに、回折格子SP1と回折格子SP2のみが形成されている別のレチクルを用いて、比較マーク像SM1のみを形成してデフォーカス量を求めるようにしても良い。この場合には、デフォーカス量が0であるときの理想の比較マーク像SM1の対角線の長さLS1を予め求めておき、計測された比較マーク像SM1と理想の対角線の長さとを比較すれば、上記実施形態と同様にしてデフォーカス量を求めることができる。なお、この場合には、レチクル上のパターンの製造誤差や、比較マーク像SM1の頂角θによるレジスト像の形成の具合などを考慮して、計測された比較マーク像SM1の長さを補正しておくのが望ましいことはいうまでもない。また、この場合、第1露光工程では、回折格子SP1の各パターンTP1だけが転写され、第2露光工程では、回折格子SP2の各パターンTP2だけが転写される。
【0148】
また、上記実施形態では、回折格子SP1のみ、正側の回折光と負側の回折光の回折効率が異なるとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、回折格子SP2〜SP4においても、正側の回折光と負側の回折光の回折効率が異なるようにしてもよい。ただし、この場合、回折格子SP1の正側の回折光と負側の回折光の回折効率の比と、回折格子SP2の正側の回折光と負側の回折光の回折効率の比とは異なるようにする必要がある。もしこれらの比が同じであれば、デフォーカスによって比較マーク像SM1の形状が変化しなくなってしまうからである。なお、回折格子SP2では、正側の回折光および負側の回折光のうち、回折格子SP1において回折効率が大きい方の回折光の回折効率が小さく、回折格子SP1において回折効率が小さい方の回折光の回折効率が大きくなるように回折光の回折効率が設定されているのが望ましい。このようにすれば、同じデフォーカス量であっても、回折格子SP1および回折格子SP2の転写像の形成位置のずれる方向が反対となり、デフォーカス量の計測の分解能を上げることができるためである。
【0149】
また、回折格子SP3および回折格子SP4については、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比を任意に設定することができる。なお、回折格子SP1の正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比と、回折格子SP3の正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比とを同じにし、回折格子SP2の正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比と、回折格子SP4の正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比とを同じにしておくのがより望ましい。このようにすれば、比較マーク像SM1と基準マーク像HM1とが形成される際の全体的な露光量等の像形成条件を同一として、精度良くデフォーカス量を求めることができるからである。なお、回折格子SP2〜SP4の回折効率を設定する際にも、回折格子SP1と同様に、透過する光の位相をシフトしない第1領域と透過する光の位相をシフトさせない第2領域とを設ける方法を用いることができることはいうまでもない。
【0150】
また、上記実施形態では、投影光学系PLの結像特性計測に際して、第1露光工程と第2露光工程とで、レチクルRT上での照明領域の全体に照明光ILを照射するものとしたが、これに限らず、レチクルRTの計測用パターンRP1の形成領域にほぼ一致させて照明領域を設定してもよいし、第1露光工程に先立って回折格子SP1,SP3を含む領域にのみ照明光が照射されるような照明領域の設定を行い、第2露光工程に先立って回折格子SP2,SP4を含む領域にのみ照明光が照射されるような照明領域の設定を行うようにしても良い。
【0151】
また、上記実施形態では、レチクルステージやウエハステージの移動精度を含まないようにするために、第1露光工程および第2露光工程では、レチクルRTとウエハWを静止させて計測用パターンを転写し、光学特性を求めたが、もちろん、走査露光方式にて計測用パターンRP1を転写し、ダイナミックな光学特性を求めるようにしてもよい。
【0152】
また、特にウエハを現像処理してレジスト像を得る場合、あるいはレジスト像が形成されたウエハをエッチング処理してエッチング像を得る場合、基準マーク像HM1における一組の対角と、比較マーク像SM1における2つの内角とが同じ角度θなので、両方の像において、その尖った先端部分に生じるレジスト等の形成具合は同程度であるとともに、現像処理あるいはエッチング処理におけるプロセスの影響はほぼ同程度であるとみなすことができる。そこで、精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0153】
また、上記実施形態では、比較マーク像SM1を形成するための回折格子SP1、SP2のパターンTP1、TP2は、互いに逆向きの山形のパターンであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、パターンTP1、TP2のうち、いずれか1つのパターンは、山形ではなくラインパターンであっても良い。
例えば、パターンTP1は、前述の第1方向および第2方向に対し角度(θ1−θ2)/2を成す方向に延びるラインパターンであってもよい。
【0154】
この場合、基準マーク像HM1の形状は、従来どおりそれぞれ一組の対角が角度θである四角形(菱形)となるが、比較マーク像SM1の形状は、X軸方向の辺を底辺とし、一対の底角が角度θ/2の二等辺三角形となる。この場合でも、比較マーク像SM1の形状は、重ね位置に依存して変化する形状となる。比較マーク像SM1ではX軸方向に伸びる底辺の長さを、基準マーク像HM1の長さLH1とすることにより、計測工程と同様にして計測される基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の長さに基づいて、前述の算出工程と同様にしてデフォーカス量を求めることができる。なお、比較マーク像SM1が二等辺三角形となる場合については、θ/2=(θ1−θ2)/2となるので、両方の像において、その尖った先端部分に生じるレジスト等の具合は同程度とするとともに、現像処理あるいはエッチング処理におけるプロセスの影響はほぼ同程度とするためには、θ3−θ4=(θ1−θ2)/2の関係が成立させる必要がある。
【0155】
また、上記実施形態では、同一スリット幅のラインパターンの重ね合わせ転写で基準マーク像HM1が形成される場合について述べているが、これに限定されるものではない。例えば、異なる線幅のラインパターンを重ね合わせて転写すると、その重なり部は平行四辺形となるが、これであっても、重ね位置に依存せず一定形状となるため、基準マーク像HM1として利用することができる。すなわち、重ね合わせて転写した際に、その重なり部に形成される像が重ね位置に依存せず一定形状となれば良く、その形状は限定されない。
【0156】
また、上記実施形態では、比較マーク像SM1および基準マーク像HM1が格子のスリット数分得られるので、それらの比較マーク像SM1および基準マーク像HM1の長さLS1、LH1の平均値(単純平均又は重み付け平均)を用いることにより、更に精度良くデフォーカス量を計測することが可能となる。
【0157】
また、上記実施形態では、第2マーク〜第4マークをそれぞれ回折格子SP2〜SP4であるとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2マーク〜第4マークとして、それぞれパターンTP2〜パターンTP4の孤立パターンによって形成されるマークを用いてもよい。すなわち、比較マーク像SM1と基準マーク像HM1が少なくとも1つ形成されるようにすれば良い。
【0158】
また、上記実施形態では、第1マーク〜第4マークが形成されたレチクルRTを用いたが、第1マークのみが形成されたレチクル(レチクルA:第1マスク)および第2マークのみが形成されたレチクル(レチクルB:第2マスク)の2つのマスクを用いても良く、第1マークおよび第3マークが形成されたレチクル(レチクルC:第1マスク)および第2マークおよび第4マークのみが形成されたレチクル(レチクルD:第2マスク)の2つのマスクを用いても良い。この場合、第1露光工程では、レチクルAまたはレチクルC(第1マスク)を用いて露光を行い、第2露光工程では、レチクルステージRSTに搭載するレチクルをレチクルBまたはレチクルD(第2マスク)に交換して露光を行えばよい。
【0159】
また、上記実施形態では、レチクルRTのパターン領域内に計測用パターンRP1を1つだけ配置するものとしたが、パターン領域内の小区域に計測用パターンRP1を幾つか配置し、例えば計測用パターン毎に得られるデフォーカス量の平均値(単純平均値又は重み付け平均値など)を求めるようにしても良い。これによって、更に精度良くデフォーカス量を求めることが可能となる。
【0160】
また、形成される菱形マークの向きが種々の向きとなるように、レチクルRT上に、種々の方向を向いた相互に対を成すL/Sパターン(前述の回折格子に相当し、それぞれを構成するラインパターンの延長線同士が交差角θで交差する)を形成しても良い。このようなレチクルを用いて上述した二重露光による菱形マークの像の形成を行うと、各菱形マークの長さの計測結果に基づいて非点収差をも計測することができる。
【0161】
このように、レチクルRT上の計測用パターンの形成の工夫によって、投影光学系PLのデフォーカス量だけでなく、像面湾曲、球面収差、非点収差などの種々の結像特性をも計測することができる。このとき、レチクルRTに複数の計測用パターンを形成する代わりに、あるいはそれと組み合わせてレチクルRTを移動するようにし、照明光ILの照明領域内の複数の計測点でそれぞれデフォーカス量(ベストフォーカス位置)を求めるようにしてもよい。
【0162】
また、上記実施形態では、前述したように、コータ・デベロッパをインライン接続して一連の計測動作を自動的に行うため、人的負荷の低減につながることなど大きなメリットが見込まれる。
【0163】
また、上記実施形態では、回折格子SP1〜SP4の格子の配列方向がY軸方向の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回折格子SP1の配列方向は、X軸方向であっても良いし、X−Y平面上の他の方向であっても良い。
【0164】
さらに、上記実施形態では、基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の対角線の長さLH1、LS1に基づいてデフォーカス量を計測しているが、本発明がこれに限定されるものではなく、両マーク像HM1、SM1の対応する部分の長さであれば、デフォーカス量を計測することができる。従って、それぞれ対応する複数の部分の長さに基づいて位置ずれ情報を算出し、それらの平均値(単純平均値又は重み付け平均値)からデフォーカス量を求めても良い。
【0165】
また、上記実施形態ではレジスト像の長さを計測するものとしたが、例えば潜像、あるいはレジスト像が形成されたウエハをエッチング処理して得られる像などの長さを計測するようにしても良い。また、上記実施形態では露光装置のアライメント検出系を用いて転写像の長さを計測するものとしたが、露光装置以外、例えば専用の計測装置(レジストレーション測定機など)を用いてもよい。
【0166】
さらに、上記実施形態では、転写像の長さをアライメント検出系等により光学的に検出するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えばECD(Electrical Critical Dimension:電気抵抗を利用した計測法)等で計測しても良い。
【0167】
また、第1領域および第2領域の位相差を生じさせるための位相シフトマスクとしては、レベンソン型、ハーフトーン型、クロムレス型など、様々な形態のものを用いることができることはいうまでもない。
【0168】
また、上記実施形態では、ウエハに塗布される感光剤としてのフォトレジストとして、ポジ型のフォトレジストを用いたが、ネガ型のフォトレジストを用いても良い。
【0169】
また、上記実施形態では、パターンTP1〜TP4を遮光部としたが、パターンTP1〜TP4を光透過部とし、その周りを遮光部としても良い。この場合には、ネガ型のフォトレジストを用いるのが望ましい。
【0170】
さらに、レチクルに形成される計測用パターンの描画誤差などを予め検出しておき、前述の符号付きデフォーカス量の算出時に、この検出結果を加味してその値の算出を行うようにしても良い。これによって、更に精度良くデフォーカス量を求めることが可能となる。なお、計測用パターンの潜像を検出するときは、コータ・ディベロッパにてウエハに塗布されるレジストの塗布むら(膜厚分布など)を求めておき、この塗布むらを加味してデフォーカス量の算出を行うようにしてもよい。また、計測用パターンのレジスト像(又はエッチング像)を検出するときは、前述の塗布むらに加えて、あるいはその代わりに、現像むらなどを加味してデフォーカス量の算出を行うようにしてもよい。即ち、露光装置以外の処理装置に起因した転写像の長さの変化を求めておき、この変化を加味してデフォーカス量の算出を行ってもよい。また、レチクル(計測用パターン)の描画誤差や露光装置以外の処理装置の影響などを加味してデフォーカス量を算出するとき、計測された転写像の長さを補正してもよいし、あるいは前述したY軸方向の位置ずれ量ΔYを補正してもよい。
【0171】
また、上記実施形態では、本発明がステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置に適用された場合について説明したが、本発明の適用範囲がこれに限定されないのは勿論である。すなわち、ステップ・アンド・リピート方式、ステップ・アンド・スティッチ方式、ミラープロジェクション・アライナー、及びフォトリピータなどにも好適に適用することができる。
【0172】
特に、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置の場合は、第1露光工程及び第2露光工程において、物体ステージ及びマスクステージを静止させて露光することにより、上記実施形態と同様にして、符号付きのデフォーカス量を求めることができる。
【0173】
さらに、投影光学系PLは、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれでもよいし、縮小系、等倍系、及び拡大系のいずれでも良い。また、レチクルは透過型だけでなく反射型でも構わない。
【0174】
さらに、本発明が適用される露光装置の光源は、KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザに限らず、例えばg線やi線などを発生する水銀ランプなどの連続光源でもよいし、F2レーザ(波長157nm)、あるいは他の真空紫外域のパルスレーザ光源であっても良い。この他、露光用照明光として、例えば、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、露光用照明光としてEUV光などを用いてもよい。この場合には、レチクルとして反射型が用いられる。
【0175】
さらに、本発明は、半導体素子の製造に用いられる露光装置だけでなく、液晶表示素子、プラズマディスプレイなどを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気へッドの製造に用いられる、デバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、及びDNAチップなどの製造、さらにはマスク又はレチクルの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。
【0176】
なお、上記実施形態では、符号付きのデフォーカス量の計測に際し、アライメント検出系ASのLSA系を用いて基準マーク像HM1及び比較マーク像SM1の長さを計測する場合について説明したが、これに限らず、例えばアライメント検出系ASのFIA系を用いて各マーク像HM1、SM1の画像を取り込み、その画像信号に基づいて各マーク像HM1、SM1の長さLH1、LS1の計測を画像処理により計測しても勿論構わない。このようにしても上記実施形態と同様にして符号付きのデフォーカス量を、上記実施形態と同程度あるいはそれ以上の精度で求めることができる。
【0177】
《デバイス製造方法》
次に、上述した露光方法を使用したデバイスの製造方法の実施形態を説明する。
【0178】
図11には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、DNAチップ、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図11に示されるように、まず、ステップ301(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ302(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ303(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0179】
次に、ステップ304(ウエハ処理ステップ)において、ステップ301〜ステップ303で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ305(デバイス組立ステップ)において、ステップ304で処理されたウエハを用いてデバイス組立を行う。このステップ305には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0180】
最後に、ステップ306(検査ステップ)において、ステップ305で作製されたデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0181】
図12には、半導体デバイスの場合における、上記ステップ304の詳細なフロー例が示されている。図12において、ステップ311(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ312(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ313(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ314(イオン打込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ311〜ステップ314それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0182】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ315(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ316(露光ステップ)において、上記実施形態の露光装置100および露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ317(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ318(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ319(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0183】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0184】
以上のような、本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光ステップで、上記実施形態の露光方法が用いられ、前述した結像特性計測方法にて計測された符号付きのデフォーカス量に基づいて精度良くフォーカスが制御されるため、高精度な露光が行われ、高集積度のデバイスを生産性良く製造することが可能となる。
【0185】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、投影光学系の結像特性の計測に好適に用いることができるマスクを提供することができる。
【0186】
また、本発明にかかる結像特性計測方法によれば、投影光学系の結像特性を精度良くかつ効率よく計測することができるという効果がある。
【0187】
また、本発明にかかる露光方法によれば、高精度な露光を実現できるという効果がある。
【0188】
また、本発明にかかるデバイス製造方法によれば、高集積度のデバイスの生産性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる露光装置100の構成を概略的に示す図である。
【図2】レチクルRTの一例を示す図である。
【図3】計測用パターンRP1を示す図である。
【図4】図4(A)は、レチクルRTを切断した場合の回折格子SP1付近の断面とともに、回折格子SP1の−1次光を示す図、図4(B)は、レチクルRTを切断した場合の回折格子SP1付近の断面とともに、回折格子SP2の+1次光を示す図である。
【図5】デフォーカスによって回折格子SP1の転写像の形成位置がずれる様子を示す図である。
【図6】ウエハW上の転写像の重ね合わせの様子を示す図である。
【図7】基準マーク像HM1および比較マーク像SM1の様子を示す図である。
【図8】図8(A)は、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が0であった場合の転写像TP3Wと転写像TP4Wの重なり状態を示す図、図8(B)は、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が−Y方向にΔYであった場合の転写像TP3Wと転写像TP4Wの重なり状態を示す図、図8(C)は、転写像TP3Wの形成位置のY軸方向へのずれ量が+Y方向にΔYであった場合の転写像TP3WとTP4Wの重なり状態を示す図である。
【図9】図9(A)は、デフォーカス量が0である場合の転写像TP1Wと転写像TP2Wの重なり状態を示す図、図9(B)は、投影光学系PLとウエハWとの距離が近くなる方向にフォーカスがずれている場合の転写像TP1Wと転写像TP2Wの重なり状態を示す図、図9(C)は、投影光学系PLとウエハWとの距離が遠くなる方向にフォーカスがずれている場合の転写像TP1Wの転写像TP2Wの重なり状態を示す図である。
【図10】図10(A)は、パターンTP1Wが+Y方向にシフトしているときの比較マーク像SM1の形状とデフォーカス量との関係を示す図、図10(B)は、パターンTP1Wが−Y方向にシフトしているときの比較マーク像SM1の形状とデフォーカス量との関係を示す図である。
【図11】本発明に係るデバイス製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図12】図11のステップ304における処理のフローチャートである。
【符号の説明】
42…ガラス基板(マスク物体)、RP1…計測用パターン、SM1…比較マーク像、HM1…基準マーク像、TP1…パターン(第1パターン)、TP2…パターン(第2パターン)、TP3…パターン(第3パターン)、TP4…パターン(第4パターン)、SP1…回折格子(第1マーク)、SP2…回折格子(第2マーク)、SP3…回折格子(第3マーク)、SP4…回折格子(第4マーク)、PA…パターン領域(パターン面)、PL…投影光学系、RT…レチクル(マスク)、W…ウエハ(物体)。
Claims (26)
- 所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターンを含み、同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる第1マークと、前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターンを含む第2マークとが、相互に重ならないように、そのパターン面に形成されたマスク基板を備えるマスク。
- 前記第1パターンおよび前記第2パターンのいずれか一方のパターンは、前記所定軸方向のうちの一方の方向に対して時計回りに角度θ1(90°<θ1<180°)を成す第1方向に延びる線状の第1部分と、前記一方の方向に対して時計回りに角度θ2(0°<θ2<90°)を成す第2方向に延びる線状の第2部分とを有する、前記一方の方向に凸の山形のパターンであることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
- 前記第1パターンおよび前記第2パターンのうちの他方のパターンは、前記第1方向に延びる線状の第1部分と前記第2方向に延びる線状の第2部分とを有し、前記所定軸方向のうちの他方の方向に凸の山形のパターンであることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
- 前記第1パターンおよび前記第2パターンのうちの他方のパターンは、前記第1方向および前記第2方向に対し角度(θ1−θ2)/2を成す方向に延びるラインパターンであることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
- θ1−θ2<90°であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のマスク。
- 前記第1マークには、前記第1マークにおける正側の回折光と負側の回折光との回折効率を異ならせるために、入射光の位相を異ならせる第1領域と第2領域とが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のマスク。
- 前記第1マークは、前記同一次数の正側の回折光と負側の回折光との一方で回折効率がほぼ零となることを特徴とする請求項6に記載のマスク。
- 前記第1マークは、前記第1領域と前記第2領域とで前記同一次数の正側の回折光と負側の回折光との一方での位相差がほぼ(2m+1)π(mは整数)となることを特徴とする請求項6又は7に記載のマスク。
- 前記第1マークは、前記第1領域と前記第2領域とで前記入射光の位相差を90°又はこれと同等とすることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のマスク。
- 前記第1マークは、前記所定軸方向に関する前記第1パターンの幅と前記第1及び第2領域の幅とがほぼ等しいことを特徴とする請求項6〜9のいずか一項に記載のマスク。
- 前記所定間隔と、前記第1領域の前記所定軸方向の幅と、前記第2領域の前記所定軸方向の幅との比が4:1:1であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載のマスク。
- 前記第2マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第2パターンを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のマスク。
- 前記第2マークでは、前記正側の回折光および前記負側の回折光のうち、前記第1マークにおいて回折効率が大きい方の符号の回折光の回折効率が小さく、前記第1マークにおいて回折効率が小さい方の符号の回折光の回折効率が大きくなるように各回折光の回折効率が設定されていることを特徴とする請求項12に記載のマスク。
- 第3パターンを含む第3マークと、前記第3パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる第4パターンを含む第4マークとが、相互に重ならないように、かつ、前記第1マーク及び第2マークにも重ならないように、前記パターン面に各々形成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスク。
- 前記第3パターンは、前記所定軸方向に対して時計回りに角度θ3(90°<θ3<180°)を成す第3方向に延びるラインパターンであり、前記第4パターンは、前記所定軸方向に対して時計回りに角度θ4(0°<θ4<90°)を成す前記第4方向に延びるラインパターンであることを特徴とする請求項14に記載のマスク。
- θ1=θ3およびθ2=θ4の関係が成立することを特徴とする請求項15に記載のマスク。
- θ3−θ4=(θ1−θ2)/2の関係が成立することを特徴とする請求項15に記載のマスク。
- 前記第3マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第3パターンを含むことを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載のマスク。
- 前記第4マークは、前記所定間隔で配置された複数の前記第4パターンを含むことを特徴とする請求項18に記載のマスク。
- 前記第3マークは、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比が前記第1マークと同じであり、前記第4マークは、正側の回折光と負側の回折光との回折効率の比が前記第2マークと同じであることを特徴とする請求項19に記載のマスク。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスクを用いて投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、
第1マークの第1パターンを、前記投影光学系を介して物体上に転写する第1露光工程と;
前記投影光学系を介して前記物体上の前記第1パターンの転写像に第2マークの第2パターンを重ねて転写する第2露光工程と;
前記物体上の前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成されたマーク像を検出する計測工程と;
前記マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法。 - 請求項14〜20のいずれか一項に記載のマスクを用いて投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、
第1マークの第1パターンおよび第3マークの第3パターンを、前記投影光学系を介して物体上に転写する第1露光工程と;
前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に第2マークの第2パターンを重ねて転写し、前記第3パターンの転写像に第4マークの第4パターンを重ねて転写する第2露光工程と;
前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成された比較マーク像を検出し、前記第3パターンと前記第4パターンとの転写像の重なり部に形成された基準マーク像を検出する計測工程と;
前記基準マーク像および比較マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法。 - 投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、
同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる第1マークに含まれる、所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターンを、前記投影光学系を介して物体上に転写する第1露光工程と;
前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターンを重ねて転写する第2露光工程と;
前記物体上の第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成されたマーク像を検出する計測工程と;
前記マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法。 - 投影光学系の結像特性を計測する結像特性計測方法であって、
同一次数の正側の回折光と負側の回折光との回折効率が異なる第1マークに含まれる、所定軸方向に所定間隔で配置された複数の第1パターンと、第3パターンとを物体上に前記投影光学系を介して転写する第1露光工程と;
前記投影光学系を介して、前記第1パターンの転写像に前記第1パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が相対的な重ね位置に依存して変化する第2パターンと、前記第3パターンに重ね合わせて転写した際の重なり部の形状が重ね位置に依存せず一定形状となる第4パターンとを重ねて転写する第2露光工程と;
前記物体上の前記第1パターンと前記第2パターンとの転写像の重なり部に形成された比較マーク像を検出し、前記第3パターンと前記第4パターンとの転写像の重なり部に形成された基準マーク像を検出する計測工程と;
前記基準マーク像および比較マーク像の検出結果に基づいて前記投影光学系の結像特性を算出する算出工程と;を含む結像特性計測方法。 - マスクのパターンを、投影光学系を介して物体上に転写する露光方法であって、
請求項21〜24のいずれか一項に記載の結像特性計測方法によって前記投影光学系の結像特性を計測する工程と;
前記計測された結像特性を考慮して露光の際の各種条件を調整したうえで、前記マスクのパターンを前記物体上に転写する工程と;を含む露光方法。 - リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程では、請求項25に記載の露光方法を用いることを特徴とするデバイス製造方法。
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