JP2004028024A - 筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】機関始動時には、当初、気筒内へ直接的に燃料を噴射する主燃料噴射弁7により燃料を噴射することなく、機関吸気系へ燃料を噴射する副燃料噴射弁9により燃料噴射を開始して均質燃焼を実施し、初爆後における蓄圧室20内の燃料圧力の上昇に伴って主燃料噴射弁により圧縮行程後半の燃料噴射が可能となった以降に、主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧縮行程において気筒内へ直接的に燃料を噴射することにより、点火時点において点火プラグ近傍だけに着火性の良好な混合気(以下、可燃混合気)を形成し、気筒内全体としては希薄な混合気の燃焼を可能にする成層燃焼が公知である。この成層燃焼は、希薄燃焼に加えて、スロットル弁により吸気を絞る必要がないためにポンピング損失が少なく、均質燃焼に比較して、燃料消費をかなり低減することができる。このような成層燃焼を実施する筒内噴射式火花点火内燃機関において、燃料噴射弁は、圧縮行程における高い筒内圧に対して燃料を噴射するために高圧の燃料を噴射しなければならず、そのために、燃料噴射弁は、機関駆動式の高圧ポンプにより加圧された高圧燃料を蓄える蓄圧室から燃料供給されるようになっている。
【0003】
機関始動時には、機関駆動式の高圧ポンプが良好に作動せず、蓄圧室内の燃料圧力が十分に高まる以前に燃料噴射を開始しなければならない。それにより、圧縮行程噴射は困難であるとして、一般的には、成層燃焼ではなく、吸気行程で気筒内へ燃料を噴射して気筒内に形成される均質混合気を燃焼させる均質燃焼が実施される。
【0004】
しかしながら、機関始動時には筒内温度が低く、吸気行程で気筒内へ噴射された燃料は、シリンダボア及びピストン頂面等の気筒内壁に付着して点火までに十分に気化せず、確実な着火性を確保する均質混合気を気筒内に形成するためには、気筒内壁への燃料付着量を考慮して多量に燃料を噴射することが必要となり、燃料消費率を悪化させる。さらに、付着燃料は未燃燃料として排出され排気エミッションを悪化させる。
【0005】
このような問題を解決することを意図して、特開2001−73854号公報には、気筒内へ燃料を噴射する主燃料噴射弁とは別にサージタンク内へ燃料を噴射する副燃料噴射弁を設け、機関始動時には、副燃料噴射弁によりサージタンクを介して気筒内へ燃料を供給し、初爆前後において、主燃料噴射弁により気筒内への燃料噴射を開始することが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来技術において、初爆前後では、蓄圧室内の燃料圧力は十分に高められておらず、主燃料噴射弁による燃料噴射は吸気行程で実施されることとなる。主燃料噴射弁により燃料噴射が開始される時には、副燃料噴射弁により噴射された燃料が気筒内へ供給されているために、均質燃焼に際して主燃料噴射弁により噴射される燃料量を少なくすることがでる。それにより、確かに、気筒内壁への付着燃料は減少し、燃料消費率及び排気エミッションを改善することができる。しかしながら、機関始動時の燃料消費率及び排気エミッションをさらに改善する余地が残されている。
【0007】
従って、本発明の目的は、筒内噴射式火花点火内燃機関において機関始動時の燃料消費率及び排気エミッションを十分に改善することができる燃料噴射制御装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置は、気筒内へ直接的に燃料を噴射する主燃料噴射弁と、機関吸気系へ燃料を噴射する副燃料噴射弁と、前記主燃料噴射弁へ高圧燃料を供給するための蓄圧室とを具備し、成層燃焼のためには前記主燃料噴射弁により圧縮行程後半においてピストン頂面のキャビティ内へ燃料を噴射する筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置であって、機関始動時には、当初、前記主燃料噴射弁により燃料を噴射することなく前記副燃料噴射弁により燃料噴射を開始して均質燃焼を実施し、初爆後における前記蓄圧室内の燃料圧力の上昇に伴って前記主燃料噴射弁により圧縮行程後半の燃料噴射が可能となった以降に、前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による請求項2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置は、請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記蓄圧室内の燃料圧力の上昇に伴って前記主燃料噴射弁により圧縮行程後半の燃料噴射が可能となった以降で前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射により前記キャビティ内への燃料付着量が設定量未満となると推定される時に、前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による請求項3に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置は、請求項2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施するに先だって前記主燃料噴射弁は吸気行程前半又は圧縮行程後半において少量の燃料を噴射することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による請求項4に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置は、請求項2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施する時に、吸入空気量に応じて前記主燃料噴射弁による燃料噴射量を減少させることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による燃料噴射制御装置が取り付けられた筒内噴射式火花点火内燃機関を示す概略縦断面図であり、図2は図1におけるピストンの平面図である。これらの図において、1は吸気ポート、2は排気ポートである。吸気ポート1は吸気弁3を介して、排気ポート2は排気弁4を介して、それぞれ気筒内へ通じている。5はピストンであり、凹状のキャビティ8がピストン頂面に形成されている。6は気筒上部中心近傍に配置された点火プラグである。7は気筒上部周囲の吸気ポート側に配置された主燃料噴射弁である。本筒内噴射式火花点火内燃機関では、この主燃料噴射弁7に加えて、吸気ポート1内へ燃料を噴射する副燃料噴射弁9が設けられている。
【0013】
主燃料噴射弁7は、スリット状の噴孔を有し、比較的厚さの薄い略扇形状噴霧10として燃料を噴射するものである。成層燃焼を実施するためには、図1及び2に示すように、圧縮行程後半において燃料をピストン5頂面に形成されたキャビティ8内へ噴射する。こうしてキャビティ8内へ噴射された斜線で示す液状燃料10は、飛行中に気筒内の吸気との摩擦によって微粒化されてキャビティ8内へ侵入し、キャビティ8の底壁8aに沿って進行してキャビティ8の燃料噴射弁に対向する対向側壁8bによって点火プラグ6近傍に導かれるまでには気化し、点火時点においては、ドットで示すように点火プラグ6近傍だけに可燃混合気を形成する。この可燃混合気を着火燃焼させることにより、成層燃焼として気筒内全体としてはリーンな混合気が燃焼可能となる。
【0014】
厚さの薄い扇状の燃料噴霧は、キャビティ8の底壁8aに沿って進行する際に幅方向に拡がるために、キャビティ8の底壁8aの広範囲部分から良好に熱を吸収することができる。キャビティ8の底壁8a上を幅方向に拡がった燃料において、燃料中央部は、キャビティ8の対向側壁8bによって上方向に向かう速度成分が付与されて点火プラグ6近傍へ向かい、燃料両側部は、ピストン平面視において円弧状とされたキャビティ8の対向側壁8bに対してそれぞれ鋭角に衝突して、上方向へ向かう速度成分が付与されると共に中央方向へ向かう速度成分も付与され、点火プラグ6近傍へ向かう。
【0015】
こうして、厚さの薄い扇状の燃料噴霧は、従来の円錐状の燃料噴霧に比較して、点火プラグ6近傍に気化程度の良好な一塊の可燃混合気を形成することができる。それにより、成層燃焼時の燃料噴射量を増加させることが可能となり、燃料消費率の良好な成層燃焼を高負荷側へ拡大することができる。必要燃料量が多量となる機関高負荷時には、吸気行程で燃料を噴射して均質混合気を気筒内に形成し、均質燃焼を実施するようにしても良い。
【0016】
20は、高圧ポンプ(図示せず)により加圧された高圧燃料を蓄える蓄圧室であり、各気筒の主燃料噴射弁7へ接続される。各主燃料噴射弁7には蓄圧室20内の高圧燃料が供給され、こうして、各気筒の主燃料噴射弁7は、圧縮行程後半の高い筒内圧に対して前述したように燃料を噴射することが可能となる。21は、蓄圧室20内の燃料圧力を監視するための圧力センサである。
【0017】
前述の高圧ポンプは、一般的には、機関駆動式であり、機関運転中には蓄圧室20内の燃料圧力を所望高圧力(例えば、12MPa)に維持することができる。しかしながら、機関始動時には、蓄圧室20内の燃料圧力は、通常、大気圧まで低下しており、高圧ポンプによって蓄圧室20内の燃料圧力を圧縮行程後半の燃料噴射を可能とする圧力(例えば、8MPa)に瞬間的に昇圧することができない。それにより、一般的には、主燃料噴射弁7により筒内圧の低い吸気行程で燃料を噴射して均質燃焼を実施することとなる。
【0018】
こうして、特に、吸気行程後半で噴射された燃料は、ピストン頂面に加えてシリンダボアへも付着し、機関始動時には気筒内温度が低いために、これら付着燃料は点火までに気化せず、スモーク等のように未燃燃料として排出され、排気エミッションを悪化させる。また、気筒内への燃料付着量を考慮して確実に着火する均質混合気を形成するためには、多量の燃料を噴射しなければならず、燃料消費率も悪化させる。
【0019】
本燃料噴射制御装置では、機関始動時において、図3に示すフローチャートによって主燃料噴射弁7及び副燃料噴射弁9による燃料噴射を制御し、燃料消費率及び排気エミッションの悪化を防止している。
【0020】
先ず、ステップ101において、機関始動時であるか否かが判断される。ここで、機関始動時とは、クランクキング、初爆、及び、早期暖機のための燃料増量運転を含んでいる。冷却水温が設定温度以下又は機関回転数が設定回転数以下等の条件から機関始動時であるか否かが判断される。この判断が否定される時、すなわち、機関始動時ではない時には、ステップ108に進み、通常の成層燃焼を実施するために、機関負荷及び機関回転数等によって定まる機関状態に基づき、主燃料噴射弁7の燃料噴射量Q1が算出され、ステップ109において、前述した成層燃焼を実施するために主燃料噴射弁7により圧縮行程後半に燃料が噴射される。
【0021】
ステップ101における判断が肯定される時、すなわち、機関始動時である時には、当初、ステップ102において、副燃料噴射弁8によって初爆に適した量の燃料が噴射され、均質燃焼が実施される。副燃料噴射弁8による燃料噴射は、吸気弁3の開弁以前の吸気非同期噴射とすることが好ましい。こうして、主な燃料が吸気弁3の開弁以前に吸気ポート1内に噴射されていれば、吸気弁3の開弁後に吸気流によって微粒化及び気化された燃料しか気筒内へ供給されない。それにより、気筒内へ供給された燃料は、シリンダボア又はピストン頂面に付着し難く、付着燃料による排気エミッションの悪化を十分に抑制することができる。
【0022】
この時の副燃料噴射弁8による燃料噴射は、吸気非同期噴射でなく、吸気弁1の開弁後に主な燃料が噴射される吸気同期噴射としても良い。吸気同期噴射でも、噴射された燃料は、直接的ではなく、吸気ポート1内壁に付着してから吸気により気筒内へ供給されることとなるために、やはり、微粒化及び気化された燃料しか気筒内へ供給されない。燃料噴射終了から点火までの燃料気化時間を考えれば、良好な均質燃焼には前述の吸気非同期噴射が有利であるが、吸気同期噴射でも気筒内への燃料付着を十分に抑制することができる。
【0023】
次いで、ステップ103では、圧力センサ21の出力に基づき蓄圧室20内の燃料圧力Pが設定圧力P’以上に昇圧されたか否かが判断される。この設定圧力P’は、主燃料噴射弁7により圧縮行程後半の高圧の気筒内への燃料噴射を可能とする燃料圧力の下限値である。前述の副燃料噴射弁8の燃料噴射によって初爆が完了して機関回転数が設定回転数まで上昇すれば、機関駆動式の高圧ポンプが良好に作動して蓄圧室20内の燃料圧力を設定圧力に昇圧することができる。こうして、ステップ103における判断は、機関回転数又は初爆からの経過時間等に基づいても判断可能である。
【0024】
当初は、ステップ103における判断は否定され、副燃料噴射弁8による燃料噴射によって前述の均質燃焼が継続される。この均質燃焼の継続によって機関回転数が上昇し、ステップ103における判断が肯定されると、ステップ104に進む。この時において、蓄圧室20内の燃料圧力Pは設定圧力P’まで昇圧されており、主燃料噴射弁7による圧縮行程後半での燃料噴射が可能である。しかしながら、冷間始動時のように、この段階においては依然として筒内温度が低い場合があり、この場合において、通常時のように主燃料噴射弁7によって圧縮行程後半での燃料噴射を開始すると、噴射燃料は、ピストン5頂面のキャビティ8内へ侵入するが、キャビティ8からの受熱が不十分であるために良好に気化せず、多量の液状燃料がキャビティ8内に付着したままとなる。この付着燃料は、燃焼せずに未燃燃料として排出され、意図するように排気エミッションを改善することができない。
【0025】
それにより、ステップ104では、現在の機関温度(冷却水温)等に基づき、主燃料噴射弁7により圧縮行程後半に必要量(Q1)の燃料を噴射した場合のキャビティ8内の付着燃料量Sを推定し、この推定付着燃料量Sが設定量S’以下であるか否かが判断される。機関温度が低いと筒内温度も低く、この場合には、付着燃料量Sは多くなり、多量の未燃燃料が排出されるとして、ステップ104における判断は否定され、副燃料噴射弁8による燃料噴射によって前述の均質燃焼が依然として継続される。
【0026】
こうして、副燃料噴射弁8による燃料噴射によって均質燃焼が継続されれば、筒内温度も上昇して、推定付着燃料量Sが設定量S’とほぼ等しくなり、ステップ104における判断が肯定され、ステップ105に進む。ステップ105では、フラグFが1であるか否かが判断される。このフラグFは機関停止と共に0にリセットされるものであり、当初は、この判断は否定されてステップ106に進む。
【0027】
設定量S’は、多量の未燃燃料が排出されるとした付着燃料量の下限値であり、次回処理では、さらに筒内温度が上昇して、推定付着燃料量Sは、少量の未燃燃料しか排出されない量となる。それにより、最初にステップ104における判断が肯定された段階では、依然として、主燃料噴射弁7による圧縮行程後半の燃料噴射を開始しないが、次回の処理では、主燃料噴射弁7により圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施することとなる。この成層燃焼の開始時において、機関暖機が完了したわけではなく、排気エミッションを大幅に悪化させる程度ではないが、依然としてキャビティ8には少量の燃料が付着することとなる。それにより、均質燃焼から成層燃焼へ切り換えるために、主燃料噴射弁7により圧縮行程後半で燃料を噴射しても、この少量の付着燃料分だけ点火プラグ6近傍に形成される可燃混合気が希薄となり、確実な着火性を確保することが困難となる。もし、失火が発生すれば、多量の未燃燃料が排出され、排気エミッションを返って悪化させてしまう。
【0028】
本フローチャートでは、これを防止するために、主燃料噴射弁7により成層燃焼のための燃料噴射が開始される直前に、主燃料噴射弁7により圧縮行程後半で少量の燃料を噴射し、予め少量の燃料をキャビティ8へ付着させるようにしている。それにより、ステップ106では、少量の燃料をキャビティ8へ付着させるための燃料噴射量Q1’が算出され、ステップ107においてフラグFを1にセットした後に、ステップ109において、ステップ106で算出された燃料噴射量Q1’がキャビティ8内へ確実に侵入するように主燃料噴射弁7によって圧縮行程後半に噴射される。この少量の燃料は、主燃料噴射弁7によって吸気行程前半に噴射されても良く、それによっても、キャビティ8内へ確実に侵入する。また、この少量の燃料は、複数回に分けて主燃料噴射弁7により圧縮行程後半又は吸気行程前半に噴射するようにしても良い。
【0029】
こうして、次回の処理では、ステップ104における判断は依然として肯定され、次いで、ステップ105における判断も肯定される。それにより、ステップ108において、主燃料噴射弁7により成層燃焼を実施するための燃料噴射量Q1が算出され、ステップ109において、主燃料噴射弁7により燃料噴射量Q1が圧縮行程後半に噴射されて成層燃焼が実施される。この主燃料噴射弁7による圧縮行程後半の燃料噴射の開始時からステップ102における副燃料噴射弁9による燃料噴射は停止される。
【0030】
この成層燃焼では、前述したように、キャビティ8内の付着燃料は少量となるために、スモーク等による排気エミッションの悪化を十分に抑制することができる。こうして、前述した副燃料噴射弁9による均質燃焼を含めて主燃料噴射弁7による成層燃焼は、未燃燃料の排出量が十分に抑制されるために、その分、燃料消費率をかなり改善することができる。また、均質燃焼に比較して燃料消費率が良好な成層燃焼をかなり早い時期から実施するようになっているために、これによっても燃料消費率をかなり改善することができる。
【0031】
前述のフローチャートにおいて、前述したように、主燃料噴射弁7により圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施する際には、副燃料噴射弁9による燃料噴射を停止するようになっている。しかしながら、これまでの副燃料噴射弁9による燃料噴射によって吸気ポート1内へは燃料が付着しており、燃料噴射が副燃料噴射弁9から主燃料噴射弁7へ切り換えられても、吸気と共に吸気ポート1内の付着燃料が気化及び微粒化して気筒内へ供給され、この燃料により気筒内には希薄な均質混合気が形成される。
【0032】
この機関始動時の成層燃焼は、機関早期暖機及び機関排気系に設けられた触媒装置の早期暖機のために、通常の成層燃焼よりは燃料が増量される。しかしながら、点火プラグ6近傍の可燃混合気の回りが空気であるとして燃料噴射量を設定すると、実際には、前述したように可燃混合気回りは希薄な均質混合気であるために、必要以上に機関回転数が上昇してしまう。それにより、成層燃焼に切り換えられた直後は、吸気ポート1内の付着燃料がなくなるまで、吸気量に応じて気筒内には吸気ポート1内の付着燃料の一部が供給されることを考慮して、ステップ108において算出される主燃料噴射弁7の燃料噴射量Q1を減少させることが好ましい。
【0033】
また、機関始動時の成層燃焼における燃料増量分を、主燃料噴射弁7による燃料噴射量を増量せずに、副燃料噴射弁9により吸気ポート1を介して気筒内へ供給して、可燃混合気回りの希薄な均質混合気としても良く、この場合には、成層燃焼のために主燃料噴射弁7により圧縮行程後半での燃料噴射が開始されても、副燃料噴射弁9は、燃料噴射量を減少させるものの依然として吸気ポート1内に燃料を噴射することとなる。
【0034】
本発明による燃料噴射制御装置が適用される筒内噴射式火花点火内燃機関において、主燃料噴射弁により圧縮行程後半に噴射された燃料は、ピストン頂面に形成されたキャビティ内へ侵入して、点火プラグ近傍に可燃混合気を形成するようになっていれば良く、燃料噴霧形状は、扇形状である必要はなく、円錐形状又は柱状であっても良い。また、副燃料噴射弁9の燃料噴霧形状も任意であり、副燃料噴射弁9は、機関吸気系に配置されれば良く、気筒毎に吸気ポート1に配置せずに各気筒共通にサージタンクに配置しても良い。
【0035】
【発明の効果】
このように、本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置は、機関始動時において、当初、気筒内へ直接的に燃料を噴射する主燃料噴射弁により燃料を噴射することなく、機関吸気系へ燃料を噴射する副燃料噴射弁により燃料噴射を開始して均質燃焼を実施する。それにより、機関始動時の当初は、副燃料噴射弁により機関吸気系へ噴射された燃料により均質燃焼が実施され、気筒内へ直接的に燃料を噴射する場合に比較して気筒内への付着燃料量が少なく、未燃燃料の排出量を低減することができる。また、この均質燃焼により初爆して、その後、蓄圧室内の燃料圧力の上昇に伴って主燃料噴射弁により圧縮行程後半の燃料噴射が可能となった以降には、主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施するようになっている。それにより、主燃料噴射弁により吸気行程で燃料を噴射して均質燃焼を実施する場合に比較して、噴射燃料の付着はピストン頂面のキャビティ内に限られるために、付着燃料量を少なくすることができ、やはり、未燃燃料の排出量を低減することができる。こうして、機関始動時の未燃燃料による排気エミッションの悪化を十分に改善することができる。また、未燃燃料の排出量が少ない分、燃料消費率の悪化が改善可能であることに加えて、均質燃焼に比較して燃料消費率が良好な成層燃焼が機関始動時の早期から実施されるために、燃料消費率を十分に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による燃料噴射制御装置が取り付けられる筒内噴射式火花点火内燃機関の概略縦断面図である。
【図2】図1のピストンの平面図である。
【図3】本発明による燃料噴射制御装置により実施される燃料噴射制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
5…ピストン
6…点火プラグ
7…主燃料噴射弁
8…キャビティ
9…副燃料噴射弁
Claims (4)
- 気筒内へ直接的に燃料を噴射する主燃料噴射弁と、機関吸気系へ燃料を噴射する副燃料噴射弁と、前記主燃料噴射弁へ高圧燃料を供給するための蓄圧室とを具備し、成層燃焼のためには前記主燃料噴射弁により圧縮行程後半においてピストン頂面のキャビティ内へ燃料を噴射する筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置であって、機関始動時には、当初、前記主燃料噴射弁により燃料を噴射することなく前記副燃料噴射弁により燃料噴射を開始して均質燃焼を実施し、初爆後における前記蓄圧室内の燃料圧力の上昇に伴って前記主燃料噴射弁により圧縮行程後半の燃料噴射が可能となった以降に、前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施することを特徴とする筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記蓄圧室内の燃料圧力の上昇に伴って前記主燃料噴射弁により圧縮行程後半の燃料噴射が可能となった以降で前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射により前記キャビティ内への燃料付着量が設定量未満となると推定される時に、前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施することを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施するに先だって前記主燃料噴射弁は吸気行程前半又は圧縮行程後半において少量の燃料を噴射することを特徴とする請求項2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記主燃料噴射弁による圧縮行程後半の燃料噴射を開始して成層燃焼を実施する時に、吸入空気量に応じて前記主燃料噴射弁による燃料噴射量を減少させることを特徴とする請求項2に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
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