JP2004027062A - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents

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水野 恭宏
Takafumi Sumiyoshi
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Abstract

【課題】ハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まず、難燃性、信頼性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、及び(E)モリブデン酸亜鉛で被覆された溶融球状シリカ、モリブデン酸亜鉛で被覆されたタルク、及びほう酸亜鉛の中から選ばれる1種以上を必須成分とし、(A)エポキシ樹脂、及び/又は(B)フェノール樹脂が一般式(1)で示される構造を含有し、(E)成分としてモリブデン酸亜鉛で被覆された溶融球状シリカ、モリブデン酸亜鉛で被覆されたタルクが選ばれる場合のモリブデン酸亜鉛の配合量が全樹脂組成分中0.05〜5重量%であり、(E)成分としてほう酸亜鉛が選ばれる場合のほう酸亜鉛の配合量が全樹脂組成分中1〜20重量%であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン系難燃剤、アンチモン化合物を含まず、難燃性、信頼性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いて半導体素子を封止してなる半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイオード、トランジスタ、集積回路等の電子部品は、主にエポキシ樹脂組成物で封止されている。これらの樹脂組成物中には、難燃性を付与するためにハロゲン系難燃剤、及びアンチモン化合物が配合されている。しかしながら、世界的な環境保護意識の高まりの中、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物の環境への負荷が懸念されており、これらを一切使用しないで、難燃性に優れたエポキシ樹脂組成物の開発が要求されている。
またハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含むエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置を高温下で保管した場合、これらの難燃剤成分から熱分解し遊離したハロゲン化物やアンチモン化合物が半導体素子の接合部を腐食し、半導体装置の信頼性を損なうことが知られており、この点からも難燃剤としてハロゲン系難燃剤とアンチモン化合物を使用しなくても難燃グレードがUL−94のV−0を達成できるエポキシ樹脂組成物が要求されている。この要求に対して、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の水酸化物が検討されてきたが、多量に配合しないと難燃性の効果が発現せず、また、不純物が多く耐湿信頼性に問題があることから実用化されていない。また、赤リン系の難燃剤は少量の添加で効果があり、樹脂組成物の難燃化に有用であるが、赤リンは微量の水分と反応し、ホスフィンや腐食性のリン酸を生じるため、耐湿信頼性に問題がある。難燃性、高温保管特性、及び耐湿信頼性が両立し、ハロゲン系難燃剤、及びアンチモン化合物を使用しない樹脂組成物が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲン系難燃剤、及びアンチモン化合物を使用せずに、成形性、難燃性、高温保管特性、及び耐湿信頼性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、及び(E)モリブデン酸亜鉛で被覆された溶融球状シリカ、モリブデン酸亜鉛で被覆されたタルク、及びほう酸亜鉛の中から選ばれる1種以上を必須成分とし、(A)エポキシ樹脂、及び、または(B)フェノール樹脂が一般式(1)で示される構造を含有し、(E)成分としてモリブデン酸亜鉛で被覆された溶融球状シリカ、モリブデン酸亜鉛で被覆されたタルクが選ばれる場合のモリブデン酸亜鉛の配合量が全樹脂組成分中0.05〜5重量%であり、(E)成分としてほう酸亜鉛が選ばれる場合のほう酸亜鉛の配合量が全樹脂組成分中1〜20重量%であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【化2】
Figure 2004027062
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Xは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、互いに同一もしくは異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜10の正数、Yは水素またはグリシジル基。)
【0005】
[2]一般式(1)で示される構造を含有するエポキシ樹脂及び一般式(1)で示される構造を含有するフェノール樹脂の合計量が、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂の合計量に対して、25重量%以上である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[3]第[1]〜[2]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる一般式(1)で示される構造を含有するエポキシ樹脂は、硬化物の架橋点間距離が長くなるため半田リフロー温度での弾性率が低い特長を有し、このため発生する応力が低く密着性にも優れるため、耐半田リフロー性が良好であり好ましい。また、エポキシ基間の疎水性構造により架橋点間距離が長いことで、エポキシ樹脂組成物の硬化物は燃焼時の温度では非常に軟らかくなっているため、燃焼時に硬化物の内部で発生する熱分解ガスが、硬化物の層をゴムのように膨張させて発泡層を形成し、この発泡層による未燃焼部への酸素の遮断と断熱作用によって、難燃性が非常に高いという特徴を有している。この場合、燃焼時の温度域での弾性率が重要であり、硬化物の層が硬すぎると硬化物の内部で発生する熱分解ガスにより発泡層が形成されずに硬化物中に亀裂が発生してしまい、逆に硬化物の層が軟らかすぎると発泡層は形成されるものの発泡層が容易に壊れてしまうため、難燃性が低下するものと考えられる。更に、樹脂骨格に占める芳香族環含有率が高いために、樹脂そのものの難燃性も高く、難燃剤の配合量を低く抑えることができるという特長を有する。
【0007】
【化3】
Figure 2004027062
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Xは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、互いに同一もしくは異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜10の正数、Yはグリシジル基。)
【0008】
また本発明では、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の特徴を損なわない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用してもよい。併用できるエポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマー全般を言う。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0009】
本発明に用いる一般式(1)で示される構造を含有するフェノール樹脂は、硬化物の架橋点間距離が長くなるため半田リフロー温度での弾性率が低い特長を有し、このため発生する応力が低く密着性にも優れるため、耐半田リフロー性が良好であり好ましい。また、フェノール基間の疎水性構造により架橋点間距離が長いことで、フェノール樹脂組成物の硬化物は燃焼時の温度では非常に軟らかくなっているため、燃焼時に硬化物の内部で発生する熱分解ガスが、硬化物の層をゴムのように膨張させて発泡層を形成し、この発泡層による未燃焼部への酸素の遮断と断熱作用によって、難燃性が非常に高いという特徴を有している。この場合、燃焼時の温度域での弾性率が重要であり、硬化物の層が硬すぎると硬化物の内部で発生する熱分解ガスにより発泡層が形成されずに硬化物中に亀裂が発生してしまい、逆に硬化物の層が軟らかすぎると発泡層は形成されるものの発泡層が容易に壊れてしまうため、難燃性が低下するものと考えられる。更に、樹脂骨格に占める芳香族環含有率が高いために、樹脂そのものの難燃性も高く、難燃剤の配合量を低く抑えることができるという特長を有する。一般式(1)で示されるフェノール樹脂は、樹脂骨格が疎水性を示すので硬化物が低吸湿性を示すと共に、硬化物の架橋点間距離が長くなるため半田リフロー温度での弾性率が低い特長を有し、このため発生する応力が低く密着性にも優れるため、耐半田リフロー性が良好であり好ましい。またこれらのフェノール樹脂は樹脂骨格に占める芳香族環含有率が高いために、樹脂そのものの難燃性も高く、難燃剤の配合量を低く抑えることができるという特長も有する。
【0010】
【化4】
Figure 2004027062
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Xは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、互いに同一もしくは異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜10の正数、Yは水素。)
【0011】
また、これら本発明で用いられる一般式(1)で示されるフェノール樹脂は、その他のフェノール樹脂と併用することができる。併用するフェノール樹脂としては、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、ビフェニレン骨格等を有するフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられる。
【0012】
本発明におけるエポキシ樹脂ならびにフェノール樹脂に関しては、エポキシ樹脂、及び、またはフェノール樹脂が一般式(1)で示される構造を1種類以上含有することが必須である。これらの樹脂を1種類以上含有することにより、良好な耐半田性や難燃性を発現させることができ、性能良好な半導体封止樹脂組成物を得ることが可能となる。本発明の効果を得るためには、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂の合計量に対する一般式(1)で示されるエポキシ樹脂とフェノール樹脂の合計量は、好ましくは25重量%以上、より好ましく40重量%以上である。また、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比が0.8〜1.3の範囲にあるのが好ましい。比が下限値を下回ると硬化性と硬化物の耐熱性が低下し、吸湿率が増大するという問題があり、上限値を越えると硬化物の耐熱性と耐燃性が低下するという問題がある。
【0013】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを使用することができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0014】
本発明に用いる無機充填材としては、一般に封止材料に使用されているものを使用することができる。例えば、溶融シリカ粉末、結晶シリカ粉末、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。これらの配合量としては、後述のモリブデン酸亜鉛のコア材として用いる無機系物質も含め、成形性と耐半田クラック性のバランスから、全樹脂組成物中に60〜95重量%含有することが好ましい。下限値を下回ると、吸水率の上昇に伴い耐半田クラック性が低下し、上限値を越えると、ワイヤースィープ及びパッドシフト等の成形性の問題が生じ、好ましくない。
【0015】
本発明に用いるモリブデン酸亜鉛は、難燃剤として作用するものである。モリブデン酸亜鉛の難燃機構については、燃焼時にモリブデン酸亜鉛が、硬化した樹脂成分の炭化を促進することが知られており、これにより空気中の酸素との遮断が起こり、燃焼が止まり難燃化が達成されると考えられる。
モリブデン酸亜鉛は吸湿し易い傾向があるため、モリブデン酸亜鉛のみで難燃性を得ようとしてその配合量を多くすると、半導体装置の吸湿率が高くなり、耐湿信頼性が低下するおそれがあり、また、成形性も低下する。従って、本発明では、モリブデン酸亜鉛を多量に配合せずに難燃性を得るため、溶融球状シリカ又はタルクをコア材として、このコア材にモリブデン酸亜鉛を被覆する方法を用いる。この方法により、難燃剤として作用しない無駄なモリブデン酸亜鉛を減らせることになり、モリブデン酸亜鉛を多量に配合せずに済むので吸湿率の上昇を抑え、成形性も改良することができる。
【0016】
溶融球状シリカ又はタルクに対するモリブデン酸亜鉛の被覆量としては、5〜40重量%が好ましい。下限値を下回ると十分な難燃性が得られないため好ましくなく、上限値を超えると半導体装置の吸湿率が高くなり、耐湿信頼性が低下するため好ましくない。溶融球状シリカ又はタルクをモリブデン酸亜鉛で被覆したものの平均粒径としては、0.5〜30μmが好ましい。平均粒径が下限値を下回ると分散性が悪化して凝集し流動性が低化するため好ましくなく、上限を超えると粘度上昇し流動性が低下するため好ましくない。全樹脂組成物中のモリブデン酸亜鉛の配合量は、0.05〜5重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜3重量%である。下限値を下回ると難燃性が得られず、上限値を越えると樹脂組成物中のイオン性不純物が増加し、プレッシャークッカーテスト等における耐湿信頼性が低下し、成形性も低下するので好ましくない。本発明の、溶融球状シリカ又はタルクをモリブデン酸亜鉛で被覆したものは、例えば、以下のようにして得られる。酸化モリブデンと溶融球状シリカ又はタルクを水に混合してスラリーを作り、70℃に加熱し、このスラリーに酸化亜鉛のスラリーをゆっくり混合し、1時間ほど攪拌する。濾過により固形物を取り出し、110℃で水分を除去した後、粉砕する。その後550℃で8時間焼成することにより得られる。
【0017】
本発明に用いるほう酸亜鉛は、モリブデン酸亜鉛と同様に、難燃剤として作用する。ほう酸亜鉛は難燃性と耐湿信頼性との兼ね合いから4ZnO・B・HOや2ZnO・3B・3.5HOが好ましく、特に、成形性との兼ね合いから4ZnO・B・HOがより好ましい。本発明のほう酸亜鉛は、市場より容易に入手することができる。ほう酸亜鉛の配合量としては、全樹脂組成物中に1〜20重量%含有することが好ましく、更に好ましくは1〜5重量%である。下限値を下回ると難燃性が不足し、上限値を超えると耐湿信頼性、成形性が低下するので好ましくない。モリブデン酸亜鉛の難燃機構は硬化した樹脂成分の炭化の促進であり、ほう酸亜鉛の難燃機構は水分の放出とガラス状被覆の形成である。これらは単独でも難燃性を付与できるものであるが、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂のような熱分解が起こりにくい樹脂と併用することにより、それぞれの難燃機構が助長され、飛躍的に高い難燃性を得ることができる。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(E)成分を必須成分とするが、これ以外に必要に応じてシランカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、及びシリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤等の種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。また、本発明の樹脂組成物は、(A)〜(E)成分、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて充分に均一に混合した後、更に熱ロール又はニーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。本発明の樹脂組成物を用いて、半導体等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0019】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。なお、実施例、及び比較例で用いたエポキシ樹脂、フェノール樹脂の略号及び構造を以下にまとめて示す。
【0020】
エポキシ樹脂1(E−1):式(2)で示されるエポキシ樹脂(エポキシ当量227g/eq、軟化点62℃)
【化5】
Figure 2004027062
【0021】
エポキシ樹脂2(E−2):式(3)で示されるエポキシ樹脂(エポキシ当量269g/eq、軟化点73℃)
【化6】
Figure 2004027062
【0022】
エポキシ樹脂3(E−3):式(4)を主成分とするエポキシ樹脂(エポキシ当量177g/eq、融点105℃)
【化7】
Figure 2004027062
【0023】
フェノール樹脂1(H−1):式(5)で示されるフェノール樹脂(水酸基当量174g/eq、軟化点77℃)
【化8】
Figure 2004027062
【0024】
フェノール樹脂2(H−2):式(6)で示されるフェノール樹脂(水酸基当量104g/eq、軟化点80℃)
【化9】
Figure 2004027062
【0025】
Figure 2004027062
を常温でスーパーミキサーを用いて混合し、70〜100℃でロール混練し、冷却後粉砕して樹脂組成物とした。得られた樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0026】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。
硬化性:(株)オリエンテック製、キュラストメーターV型を用いて、ダイスの直径35mm、成形温度175℃、成形開始90秒後及び飽和したトルク値を測定し、次式により硬化性とした。
硬化性(%)=成形開始90秒後のトルク値/飽和したトルク値×100
難燃性:低圧トランスファー成形機を用いて175℃、6.9MPa、120秒で試験片(127mm×12.7mm×3.2mm)を成形し、175℃で8時間処理した後、UL94垂直法に準じてΣF、Fmaxを測定し、難燃性の判定を行った。
高温保管特性:低圧トランスファー成形機を用いて175℃、6.9MPa、120秒で16pDIP(チップサイズ3.0mm×3.5mm)を成形し、175℃で8時間処理した後、高温保管試験(185℃、1000時間)を行い、配線間の電気抵抗値が初期値に対し20%以上増加したパッケージを不良と判定した。15パッケージ中の不良率を百分率で示した。単位は%。
耐湿信頼性:低圧トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.3MPa、硬化時間120秒で、16pSOP(模擬素子のTEG3使用、配線幅20μm)を成形し、175℃、8時間で後硬化した後、耐湿信頼性評価(140℃/相対湿度85%のプレッシャークッカー釜で10Vの印加電圧をかけて処理)を行い、配線間のオープン不良を確認した。15個のパッケージについて、処理500時間後と1000時間後での不良パッケージ個数を不良率として百分率で示した。単位は%。
【0027】
実施例2〜8、比較例1〜5
表1の配合に従い、実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
以下に実施例1以外で用いた原材料を示す。
実施例2の難燃剤Bは、タルク10重量部当たり、モリブデン酸亜鉛1重量部で被覆したもの(平均粒径2.1μm、最大粒径10μm)である。
【0028】
実施例3、4、及び10のほう酸亜鉛は、2ZnO・3B・3.5HO(BORAX社製、Firebreak ZB)である。
実施例9では硬化促進剤として、トリフェニルホスフィンを使用した。
比較例1では、難燃剤として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本インキ社製、エピクロン−152S、エポキシ当量365g/eq)、難燃助剤として三酸化二アンチモンを使用した。
比較例6、7では、モリブデン酸亜鉛を、無機物に被覆せず単独で用いた。
【0029】
【表1】
Figure 2004027062
【0030】
【発明の効果】
本発明に従うと、ハロゲン、及びアンチモンを含まず、成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られ、これを用いた半導体装置は難燃性、高温保管特性、耐湿信頼性に優れる。

Claims (3)

  1. (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、及び(E)モリブデン酸亜鉛で被覆された溶融球状シリカ、モリブデン酸亜鉛で被覆されたタルク、及びほう酸亜鉛の中から選ばれる1種以上を必須成分とし、(A)エポキシ樹脂、及び/又は(B)フェノール樹脂が一般式(1)で示される構造を含有し、(E)成分としてモリブデン酸亜鉛で被覆された溶融球状シリカ、モリブデン酸亜鉛で被覆されたタルクが選ばれる場合のモリブデン酸亜鉛の配合量が全樹脂組成分中0.05〜5重量%であり、(E)成分としてほう酸亜鉛が選ばれる場合のほう酸亜鉛の配合量が全樹脂組成分中1〜20重量%であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 2004027062
    (式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Xは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、互いに同一もしくは異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜10の正数、Yは水素またはグリシジル基。)
  2. 一般式(1)で示される構造を含有するエポキシ樹脂及び一般式(1)で示される構造を含有するフェノール樹脂の合計量が、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂の合計量に対して、25重量%以上である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
  3. 請求項1〜2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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