JP2004026963A - 分散安定性に優れる高分子化合物/平板状ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液およびその製造方法と用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の手法では困難であったナノメートルオーダーのヒドロキシアパタイトの平板状粒子を水溶性ポリマーと凝集・分離などを起こさず安定に分散させることにより、成形加工性に優れ、透明なフイルムをつくり、各種用途に利用可能な高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の提供およびそれから得られるフィルムおよびそれらの用途を提供すること。
【解決手段】カルシウム化合物とリン酸(塩)との反応系を一旦pH7以下で短時間保持させた後に、pH7以上で反応を継続させることで、500nmの板状の微粒子でありながら、凝集することなく均一な高分子化合物の分散水溶液となり、さらに溶媒を乾燥すると透明性に優れたフィルムになることを見出した。
【選択図】なし
【解決手段】カルシウム化合物とリン酸(塩)との反応系を一旦pH7以下で短時間保持させた後に、pH7以上で反応を継続させることで、500nmの板状の微粒子でありながら、凝集することなく均一な高分子化合物の分散水溶液となり、さらに溶媒を乾燥すると透明性に優れたフィルムになることを見出した。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は特定の形状および大きさを有するヒドロキシアパタイトが安定に分散した有機重合体/無機微粒子分散水溶液およびその製造法、さらに分散水溶液から乾燥により形成される複合フィルムおよびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシアパタイトは骨や歯などの硬組織を構成する無機材料であり、生体内ではコラーゲンとの複合体として存在することが知られている。ヒドロキシアパタイトの純品を焼結すると高強度の材料となるのであるが、耐衝撃性に問題がある。この無機材料の欠点である脆性を免れるために、生物は有機物との複合化により靭性を改善しているものと解釈できる。このように有機と無機とを複合化によりバランスのとれた材料となるような設計思想を持って、最近の人工骨開発は進められている。
【0003】
一方、ヒドロキシアパタイトを従来の生体材料に限定した素材ではなく、それをナノレベルで合成高分子化合物とコンポジット化することで新材料を創り出す試みがなされており、特開2001−31877ではカルボキシル基を持つ高分子化合物の存在下にヒドロキシアパタイトを合成することで、ポリマー中にヒドロキシアパタイトの微粒子が均一に分散した複合体フィルムを形成する技術が開示されている。これはヒドロキシアパタイトを高濃度で複合化しても透明で加工性に優れており、高いガスバリア能を有する点に特徴がある。この技術で使用されるヒドロキシアパタイト粒子は紡錘型または針状の形状をしている。粒子をナノレベルの大きさに保ちながら、その形態を平板状にすると透過分子の遮蔽効果が高くなり、バリア性がさらに高くなることが予測される。
【0004】
平板状のヒドロキシアパタイトを製造する方法は、特開昭63−159207、特開平9−40408に板状の結晶形態を有するリン酸水素カルシウムと炭酸カルシウムとの反応により平板状のヒドロキシアパタイト結晶を製造する技術が開示されている。この技術を用いると平板状のヒドロキシアパタイトを製造できるが、例えばこの技術を使ってカルボキシル基を持つ高分子化合物の存在下にリン酸水素カルシウムと炭酸カルシウムとを反応させても、一次粒子径が500nm以下で高分子化合物と分散性の良い複合体を作ることはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の手法では困難であったナノメートルオーダーのヒドロキシアパタイトの平板状粒子を水溶性ポリマーと凝集・分離などを起こさず安定に分散させることにより、成形加工性に優れ、透明なフイルムをつくり、各種用途に利用可能な高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の提供およびそれから得られるフィルムおよびそれらの用途を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、カルシウム化合物とリン酸(塩)との反応系を一旦pH7以下で短時間保持させた後に、pH7以上で反応を継続させることで、500nmの板状の微粒子でありながら、凝集することなく均一な高分子化合物の分散水溶液となり、さらに溶媒を乾燥すると透明性に優れたフィルムになることを見出した。すなわち本発明は、
(1) 粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液、
(2) (1)に記載の複合分散水溶液から溶媒を乾燥することにより得られる、透明性およびバリア性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体フィルム、
(3) カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物存在下、カルシウム化合物とリン酸(塩)との反応溶液をpH7以下で短時間保持した後に、pH7以上で反応を継続することによる、粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の製造方法、
(4) (3)に記載の方法で製造される、粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液、
(5) エチレン性不飽和化合物の重合体または多糖類誘導体が、(メタ)アクリルアミド系重合体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン系重合体、またはカルボキシメチルセルロースのいずれかである(4)に記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液、
(6) 水酸化カルシウムとリン酸とを反応させて平板状ヒドロキシアパタイトを製造することを特徴とする、(3)に記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の製造方法、
(7) 水酸化カルシウムとリン酸とを反応させてヒドロキシアパタイトを製造することを特徴とする(4)または(5)に記載の分散安定性に優れる高分子化合物/無機微粒子複合分散水溶液、
(8) (4)、(5)または(7)に記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液から溶媒を乾燥することにより得られる、透明性およびバリア性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体フィルムからなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は特定の形状および大きさを有するヒドロキシアパタイトが安定に分散した高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液およびその製造法、さらに分散水溶液から乾燥により形成される複合フィルムおよびその用途に関する。
【0008】
本発明は、カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物存在下に、特定のpH条件下でカルシウム化合物とリン酸(塩)との反応を行うことにより、粒子径が制御された平板状のヒドロキシアパタイトが均一に分散した高分子化合物との複合分散液が合成できる点に特徴がある。
【0009】
本発明で使用される水溶性または水分散性の高分子化合物は、天然高分子化合物、半合成高分子化合物(天然高分子化合物を変性したもの)、合成高分子化合物の何れかであり、分子内にカルボキシル基を持つものであれば種類を問わず適用できる。
【0010】
本発明で使用される半合成高分子化合物の例として、カルボキキシメチルセルロース、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールなどがあげられる。
【0011】
合成高分子化合物には、主鎖構造の違いにより、ポリオレフィン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリアミン鎖、ポリアミド鎖、ポリウレタン鎖、ポリシリルエーテル鎖、ポリスルホン鎖をもつものに分類される。これらの主鎖構造の側鎖にカルボキシル基を含むものまたは、末端にカルボキシル基を含むものが本願の対象とする合成高分子化合物の基本構造である。これらの基本構造を持つ高分子化合物の中で、水溶性あるいは水分散性を示すものが本願の対象とする合成高分子化合物である。本願で用いられる合成高分子化合物は特定の構造を持つものには限定されない。一般的に水溶性あるいは水分散性を示す合成高分子化合物の中で広く使用されているものの一つに、ポリオレフィン鎖を主鎖にもつ化合物があげられる。これらの化合物は、エチレン性不飽和化合物をラジカル重合またはイオン重合することにより合成できる。何れの方法も使用することができるが、経済的な観点から見ればラジカル重合が有利である。
【0012】
水溶性または水分散性を示すポリオレフィン鎖を主鎖に持つ高分子化合物には、アクリルアミド類やN−ビニル−2−ピロリドンに代表されるような親水性モノマーを重合したものと、ポリビニルアルコール類に代表されるような、重合体を得た後で化学反応により親水基を生成するものとがある。
【0013】
前者の例として、使用可能な親水性モノマーには、エチレン性の非イオン性親水性不飽和化合物とエチレン性のイオン性不飽和化合物がある。エチレン性の非イオン性親水性不飽和化合物の例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−n−ヘキシルアクリルアミド、N−n−ヘキシルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−n−オクチルアクリルアミド、N−n−オクチルメタクリルアミド、N−tert−オクチルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−n−ドデシルメタクリルアミド、N,N−ジグリシジルアクリルアミド、N,N−ジグリシジルメタクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)アクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)メタクリルアミド、N−(5−グリシドキシペンチル)アクリルアミド、N−(6−グリシドキシヘキシル)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド化合物類、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニル−5−メチルオキサゾリドン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール等をあげることができる。
【0014】
エチレン性の親水性不飽和化合物のイオン性化合物のなかで、アニオン性を示す化合物の例としては不飽和カルボン酸化合物、不飽和スルホン酸化合物、その他のアニオン性不飽和化合物からなる群より選択された一種以上の化合物であり、その中で不飽和カルボン酸化合物は必須成分であるが、不飽和カルボン酸アミド化合物や不飽和カルボン酸エステル化合物などのように、加水分解等の後反応によりカルボキシル基を生成することが可能なものを共重合成分として含有するものについてはその限りではなく、後反応によりカルボキシル基を生成させても良い。不飽和カルボン酸化合物は不飽和化合物総量に対して概ね0.1〜80モル%、好ましくは0.5〜50モル%共重合される。
【0015】
不飽和カルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、β−メチルクロトン酸、β−メチルチグリン酸、α−メチル−2−ペンテン酸、β−メチル−2−ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸、2−メチルグルタコン酸、3−メチルグルタコン酸、2−メチル−α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチル−α−ジヒドロムコン酸等の酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0016】
不飽和スルホン酸化合物としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸等のスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0017】
その他のアニオン性不飽和化合物としては、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリルエステル等のリン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0018】
エチレン性の親水性不飽和化合物のイオン性化合物のなかで、カチオン性を示す化合物の例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)等の塩基性ビニル化合物とそれらの塩および、アリルアミン、N−メチルアリルアミン、2−メチルアリルアミン、ジアリルアミン等のアリルアミン類とそれらの塩等がある。さらには、DA、DM、DMAPAA、DMAPMA等をジメチル硫酸、メチルクロライドやメチルブロマイド等のハロゲン化アルキル類、アリルクロライド、ベンジルクロライドやベンジルブロマイド等のハロゲン化ベンジル類、エピクロヒドリンやエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリン類、プロピレンオキシドやスチレンオキシド等のエポキシ類で四級化したビニル化合物や、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドなどをあげることができる。
【0019】
上記エチレン性の親水性不飽和化合物には、水溶性あるいは水分散性を損なわない程度にエチレン性の疎水性不飽和化合物を共重合することが可能である。疎水性不飽和化合物の共重合比率はモノマーの種類や共重合の組み合わせ等により変わるので特定できないが、比率が高くなると水溶性を失うため、疎水性不飽和化合物の量は概ね99〜0重量%の範囲であって、しかも共重合体の水溶性を失わない程度に抑える必要がある。
【0020】
エチレン性の疎水性不飽和化合物の例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、ジエン化合物、不飽和カルボン酸エステル化合物、アルキルビニルエーテル化合物、その他のビニル化合物、および疎水性アリル化合物からなる群より選択された一種以上の化合物である。
【0021】
芳香族ビニル化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン等をあげることができる。
【0022】
シアン化ビニル化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等をあげることができる。
【0023】
ジエン化合物は、アレン、ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン化合物および、クロロプレン等をあげることができる。
【0024】
不飽和カルボン酸エステル化合物は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソプロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびエポキシアクリレート類やウレタンアクリレート類のジビニル化合物等をあげることができる。
【0025】
ビニルアルキルエーテル化合物は、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルn−オクタデシルエーテル等をあげることができる。
【0026】
その他のビニル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、エチレン、プロピレン、ブテン、α−オレフィン等のオレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、ジエチルフマレート、ジメチルイタコネート等のカルボン酸ジアルキルエステル類、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等をあげることができる。さらに、疎水性のアリル化合物としては、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジエチレングリコールジアリルカーボネート、トリアリルシアヌレート等をあげることができる。
【0027】
本発明に用いられる親水性モノマーの重合体を製造する方法は公知の重合方法、例えば水溶液重合、沈殿重合、乳化重合等を用いることが出来る。回分重合、半回分重合の何れの組み合わせでもよく、重合方法は何等制限されない。
【0028】
ラジカル重合を行う場合、通常はラジカル重合開始剤の存在下、重合溶液を所定温度に保つことにより重合を行う。重合中同一温度に保つ必要はなく、重合の進行にともない適宜変えてよく、必要に応じて加熱あるいは除熱しながら行う。重合温度は使用するモノマーの種類や重合開始剤の種類などにより異なり、単一開始剤の場合には概ね30〜100℃の範囲であり、レドックス系重合開始剤の場合にはより低く、一括で重合を行う場合には概ね−5〜50℃であり、逐次添加する場合には概ね30〜90℃である。重合器内の雰囲気は特に限定はないが、重合を速やかに行わせるには窒素ガスのような不活性ガスで置換した方がよい。重合時間は特に限定はないが、概ね1〜40時間である。
【0029】
重合溶媒としては水を用いるが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の有機溶剤を併用してもよい。
【0030】
ラジカル重合開始剤としては一般の水溶性の開始剤が使用できる。過酸化物系では、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、tert−ブチルパーオキサイド等があげられる。この場合、単独でも使用できるが、還元剤と組み合わせてレドックス系重合剤としても使える。還元剤としては、例えば亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルト等の低次のイオンの塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、更にはアルドース、ケトース等の還元糖等をあげることができる。また、アゾ化合物系では、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレイン酸及びその塩等を使用することができる。更に上記した重合開始剤を2種以上併用してもよい。重合開始剤の添加量は単量体に対して0.0001〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.01〜8重量%である。また、レドックス系の場合には、重合開始剤に対して還元剤の添加量はモル基準で0.1〜100%、好ましくは0.2〜80%である。
【0031】
親水性モノマーの重合は、分子量あるいは重合速度を調整するなどの目的で、必要に応じてpH調整剤、連鎖移動剤等を使用してもよい。
【0032】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類、エタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基類、及び炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の塩類等があげられる。
【0033】
連鎖移動剤としては、イソプロピルアルコール、α−チオグリセロール、メルカプトコハク酸、チオグリコール酸、トリエチルアミン、次亜リン酸ナトリウム等のなかから1種または2種以上の混合物を適宜使用することができる。
【0034】
また、金属イオンを封止するあるいは重合速度を調整する等の目的で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム(EDTA−Na)や尿素、チオ尿素等の化合物を併用してもよい。pH調整剤、連鎖移動剤等の使用量は、使用目的に応じて異なるが、概ねモノマー重量に対してpH調整剤は100ppm〜10%、連鎖移動剤やその他の添加剤は1.0ppm〜5.0%の範囲にある。
【0035】
本発明で使用される(メタ)アクリルアミド系重合体やビニルピロリドン系重合体のような、親水性モノマーの重合体の分子量は、ポリマー構造(直鎖/分岐など)により異なるが、概ね1.0×103〜5.0×106の範囲に及ぶ。1.0×103以下の分子量ではポリマー自体の特性低下に加えて、無機微粒子への吸着力が低いため安定な分散溶液とならず、5.0×106以上の分子量では粒子間の架橋反応が優先するため、安定な分散溶液とならない。また、重合体に含まれるカルボキシル基量は、概ね0.1〜60モル%、好ましくは0.5〜50モル%の範囲にある。
【0036】
重合体を得た後で化学反応により親水基を生成する例には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミンなどがあり、カルボキシル基を分子内に持つ化合物であれば何れも使用できるのであるが、それらの中でもPVAが特に好ましい。PVAとしては分子内にカルボキシル基を有するポリビニルアルコール系重合体(カルボキシル基変性ポリビニルアルコール)が用いられ、通常はビニルエステル化合物とエチレン性不飽和カルボン酸との共重合体をケン化したもの、および/または末端にチオール基を有するポリビニルアルコール系重合体の存在下、エチレン性不飽和カルボン酸をラジカル共重合したものが使用される。
【0037】
上記のビニルエステル化合物としては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等をあげることができるが、工業的には酢酸ビニルが好ましい。
【0038】
上記エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、β−メチルクロトン酸、β−メチルチグリン酸、α−メチル−2−ペンテン酸、β−メチル−2−ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸、2−メチルグルタコン酸、3−メチルグルタコン酸、2−メチル−α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチル−α−ジヒドロムコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0039】
また、エチレン性不飽和カルボン酸の代りに、ケン化反応時にカルボキシル基を生成するエチレン性不飽和カルボン酸エステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、エチレン性不飽和カルボン酸アミドなどを共重合してもよい。また、エチレン性不飽和カルボン酸とこれらのケン化反応時にカルボキシル基を生成する化合物を共重合しても差し支えない。さらには、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの水溶性や安定性等に支障をきたさない程度に他の共重合可能なモノマーと共重合させることも可能である。
【0040】
重合およびケン化方法は特に制限はなく、例えば特開昭53−91995号公報に開示されているような、公知の方法に従ってカルボキシル基変性ポリビニルアルコールを製造することができる。
【0041】
末端にチオール基を有するポリビニルアルコール系重合体は、チオ酢酸のようなチオール基を含有する連鎖移動剤の存在下にビニルエステル化合物を重合し、その後ケン化反応を行うことにより得られる。重合の際には、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの水溶性や安定性等に支障をきたさない程度に共重合可能なモノマーと共重合させることも可能である。この末端にチオール基を有するポリビニルアルコール系重合体存在下にエチレン性不飽和カルボン酸をラジカル共重合すれば、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(ブロック共重合体)が製造される。これらのブロック重合の際にも、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの水溶性や安定性等に支障をきたさない程度に共重合可能なモノマーを共重合させることが可能である。その量は使用するモノマーの種類により異なるが、ケン化反応前のビニルエステル化合物に対して概ね1〜50重量%の範囲にある。
【0042】
共重合可能なモノマーには、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸エステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、エチレン性不飽和カルボン酸アミド、アニオン性のエチレン性不飽和化合物、カチオン性のエチレン性不飽和化合物、非イオン性のエチレン性親水性不飽和化合物、エチレン性疎水性不飽和化合物がある。
【0043】
本発明で使用されるエチレン性不飽和カルボン酸エステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソプロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびエポキシアクリレート類やウレタンアクリレート類のジビニル化合物等をあげることができる。
【0044】
本発明で使用されるエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル等が例示される。
【0045】
本発明で使用されるエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルは、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、シトラコン酸ジアルキルエステル等が例示される。
【0046】
本発明で使用されるエチレン性不飽和カルボン酸アミドの例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−n−ヘキシルアクリルアミド、N−n−ヘキシルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−n−オクチルアクリルアミド、N−n−オクチルメタクリルアミド、N−tert−オクチルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−n−ドデシルメタクリルアミド、N,N−ジグリシジルアクリルアミド、N,N−ジグリシジルメタクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)アクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)メタクリルアミド、N−(5−グリシドキシペンチル)アクリルアミド、N−(6−グリシドキシヘキシル)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド等をあげることができる。
【0047】
本発明で使用される前記したエチレン性不飽和カルボン酸以外のアニオン性のエチレン性不飽和化合物には、エチレン性不飽和スルホン酸、およびその他のアニオン性不飽和化合物があげられ、これらの群より選択される一種以上の化合物が用いられる。
【0048】
エチレン性不飽和スルホン酸としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸等のスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0049】
その他のアニオン性不飽和化合物としては、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリルエステル等のリン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0050】
カチオン性のエチレン性不飽和化合物は、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)等の塩基性ビニル化合物とそれらの塩および、アリルアミン、N−メチルアリルアミン、2−メチルアリルアミン、ジアリルアミン等のアリルアミン類とそれらの塩等がある。さらには、DA、DM、DMAPAA、DMAPMA等をジメチル硫酸、メチルクロライドやメチルブロマイド等のハロゲン化アルキル類、アリルクロライド、ベンジルクロライドやベンジルブロマイド等のハロゲン化ベンジル類、エピクロヒドリンやエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリン類、プロピレンオキシドやスチレンオキシド等のエポキシ類で四級化したビニル化合物や、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドなどをあげることができる。
【0051】
非イオン性のエチレン性親水性不飽和化合物は、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニル−5−メチルオキサゾリドン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール等をあげることができる。
【0052】
また、エチレン性不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステル化合物以外のエチレン性疎水性不飽和化合物は、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、ジエン化合物、ビニルアルキルエーテル化合物、その他のビニル化合物、および疎水性アリル化合物からなる群より選択された一種以上の化合物である。
【0053】
芳香族ビニル化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン等をあげることができる。
【0054】
シアン化ビニル化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等をあげることができる。
【0055】
ジエン化合物は、アレン、ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン化合物および、クロロプレン等をあげることができる。
【0056】
ビニルアルキルエーテル化合物は、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルn−オクタデシルエーテル等をあげることができる。
【0057】
その他のビニル化合物としては、エチレン、プロピレン、ブテン、α−オレフィン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、ジエチルフマレート、ジメチルイタコネート等のカルボン酸ジアルキルエステル類、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等をあげることができる。
【0058】
疎水性のアリル化合物としては、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジエチレングリコールジアリルカーボネート、トリアリルシアヌレート等をあげることができる。
【0059】
本発明で使用されるカルボキシル基変性ポリビニルアルコールの重合度は概ね100〜5000、好ましくは200〜3000、ケン化度はケン化前のビニルエステル化合物に対して60〜100モル%、カルボキシル基含量は0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜30モル%の範囲にある。
【0060】
水分散性の合成高分子化合物のなかには、所謂合成ラテックス、エマルションの形態をとるものも含まれる。ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、メチルメタアクリレート−ブタジエン系ラテックス、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンラテックス、クロロプレンラテックス、イソプレンラテックス、ポリスチレンエマルション、ウレタンエマルション、アクリルエマルション、酢酸ビニル系エマルション、酢酸ビニル−エチレン(EVA)系エマルション、アクリレート−スチレン系エマルション、塩化ビニルラテックス、塩化ビニリデンラテックス、エポキシ系エマルション等で称されるもののなかで、カルボキシル基変性されているものが本願の水分散性の合成高分子化合物に該当する。
【0061】
本発明の分散水溶液中に含まれるヒドロキシアパタイトは、リン酸に由来する部分とカルシウム原子の合計が50重量%以上含まれるものである。例としてはヒドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、炭酸含有アパタイト、マグネシウム含有アパタイト、鉄含有アパタイト等のアパタイト化合物、リン酸三カルシウム等が挙げられる。
【0062】
本発明のヒドロキシアパタイトに含まれるアパタイト化合物は、基本組成がMx(RO4)yXzで表される。Mサイトがカルシウムイオン(Ca2+)、RO4サイトがリン酸イオン(PO4 3−)、Xサイトが水酸イオン(OH−)の場合には、x=10、y=6、z=2となり、一般的にヒドロキシアパタイトと呼ばれる化合物である。M、RO4、Xの各サイトは種々のイオン等と置換が可能であり、また、空孔ともなり得るものである。置換量および空孔量はそのイオン等の種類により異なるが、リン酸に由来する部分とカルシウム原子の合計が50重量%以上含まれていれば他のイオン等と置換されていても、空孔であっても差し支えない。
【0063】
リン酸に由来する部分とカルシウム原子の合計が50重量%を下回るとヒドロキシアパタイトとしての特性が失われることがあるために好ましくない。Mサイトは基本的にCa2+であるが、置換可能なイオン種の例として、H+、Na+、K+、H3O+、Sr2+、Ba2+、Cd2+、Pb2+、Zn2+、Mg2+、Fe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Hg2+、Ra2+、Al3+、Fe3+、Y3+、Ce3+、Nd3+、La3+、Dy3+、Eu3+、Zr4+等があげられる。RO4サイトは基本的にPO4 3−であるが、置換可能なイオン種の例として、SO4 2−、CO3 2−、HPO4 2−、PO3F2−、AsO4 3−、VO4 3−、CrO4 3−、BO3 3−、SiO4 4−、GeO4 4−、BO4 5−、AlO4 5−、H4O4 4−等があげられる。Xサイトに入るイオン種や分子の例として、OH−、F−、Cl−、Br−、I−、O2−、CO3 2−、H2O等があげられる。
【0064】
本発明の平板状ヒドロキシアパタイトの粒径は500nm以下である。粒径が500nmを越えると粒子が複合体分散水溶液から沈降分離しやすくなり、分散水溶液の安定性に欠けるため適当ではない。また、ヒドロキシアパタイト結晶構造についてはいかなるものでもよく、非晶質でもよい。粒径分布についても、粒径が500nm以下であれば特に制限はない。ここで用いる粒径とは、粒子の長軸径を示す。
【0065】
カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/平板状ヒドロキシアパタイト微粒子分散水溶液を製造する方法(複合化)のなかで、分散安定性の優れた分散液を得るためには、ヒドロキシアパタイトをカルボキシル基を含有する水溶性または水分散性の高分子化合物存在下に、特定のpH条件下で製造すれば良く、そこに本発明の特徴がある。板状ヒドロキシアパタイトの製造方法はカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物存在下に製造可能な方法であればいかなる製造方法でもかまわないが、500nm以下の粒子サイズにするためには、水酸化カルシウムとリン酸とを反応する方法が有効である。反応は一般的には両原料を同時に添加するか、一方の原料溶液の中へ他方の原料を添加する方式がとられる。ヒドロキシアパタイトを製造するには通常pH8以上で反応を行うことが知られているが、板状のヒドロキシアパタイトを製造するためには、いったんpH7未満、好ましくは6.5以下に短時間保持させた後、pH7以上、好ましくは8.0以上で反応を継続するとよい。具体的な方法としては、先にリン酸とカルボキシル基を有する高分子化合物とを混合した水溶液中に、所定量の水酸化カルシウムを短時間に混合・撹拌させる方法や、逆に先に水酸化カルシウムとカルボキシル基を有する高分子化合物とを混合した水溶液中に、所定量のリン酸を短時間で混合して反応させる方法、あるいは高分子化合物水溶液中に、リン酸と水酸化カルシウムとを同時に添加して反応させる方法など、添加順序や組み合わせは自由であるが、リン酸と水酸化カルシウムとの反応は初期の段階でpH7未満になるようにし、その後pH7以上で反応が進行するようにすればよい。ここでいう短時間あるいは初期の段階とは、原料であるリン酸または水酸化カルシウムの全量の70%以上を混合するのに要する時間で表され、撹拌方法により変化するが、概ね10min以内になるように混合することにより実施される。
【0066】
カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物はヒドロキシアパタイトが生成する反応液中に存在させればよく、カルシウム化合物(懸濁)水溶液、リン酸あるいはリン酸塩水溶液いずれかに混合しておいてもよいし、両方に混合しておいてもよい。また、両者とは別に独立して反応器の中へ連続的あるいは断続的に添加してもよい。但し、未ケン化部含量が多い(概ね5〜60モル%)カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを複合化する場合など、アルカリ加水分解反応をうける成分を高分子化合物の中に含有するものに関しては、特に原料として水酸化カルシウム等のアルカリ性の高い物質をカルシウム源として用いる場合には注意が必要である。例えば水酸化カルシウムとカルボキシル基変性ポリビニルアルコールとを混合しておくと、未ケン化部の加水分解反応が副反応として生じるため問題となることがある。このような場合には、水酸化カルシウムが加水分解反応で消費される分量のリン酸が過剰になるため反応液のpH低下を招き、ヒドロキシアパタイトの生成が不完全になるとともに、複合化が不良になり、反応液の分離、沈降を生じることがある。この問題を解決するには水酸化カルシウムとカルボキシル基変性ポリビニルアルコールを分けて両者あるいは一方を滴下すればよく、ヒドロキシアパタイトの反応が優先するため副反応を抑えることができる。この方法により未ケン化部を含有するカルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト分散水溶液が製造できる。ケン化により生じる酢酸ナトリウム等の影響が問題にならない場合には、未ケン化部に相当する量のアルカリを添加して予めケン化反応を行った後に複合化反応を行ってもよいが、不純物による着色などの影響を抑えることができるため、完全ケン化タイプのカルボキシル基変性ポリビニルアルコールを用いるほうが好ましい。
【0067】
しかしながら、アクリルアミド系重合体のように、加水分解反応によりカルボキシル基を生成するものは、複合化反応の際に加水分解反応をむしろ積極的に起こしても良いことがある。
【0068】
ヒドロキシアパタイトの中でもアパタイト構造をとるものはその構造の柔軟さから前述のように各種イオンと置換できることが知られており、必要に応じてカルシウムおよびリン酸以外のイオン種を含む化合物を併用することもできる。
【0069】
カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物とヒドロキシアパタイトの重量比は10:90〜99.99:0.01、好ましくは20:80〜99.99:0.01の範囲である。ヒドロキシアパタイトの量が0.01%より少ないとヒドロキシアパタイトを添加する効果が乏しく、90%を越えると分散安定性が不良で沈降、分離を起こしやすくなり、均一な複合体を形成できなくなるため好ましくない。
【0070】
通常はカルシウム化合物とリン酸(塩)との反応溶液を所定温度に保つことにより反応を行う。反応中同一温度に保つ必要はなく、反応の進行にともない適宜変えてよく、必要に応じて加熱あるいは冷却しながら行う。反応温度により生成するヒドロキシアパタイト粒子の大きさが変化するため、反応温度を変えることにより粒径を変えることができ、その結果分散水溶液から作成されるフィルムの透明性を加減することも可能である。反応温度は概ね5〜95℃の範囲にある。反応器内の雰囲気は特に限定はなく通常は空気中で行われるが、ヒドロキシアパタイトの組成をコントロールするには窒素ガスのような不活性ガスで置換した方がよい。合成時間は特に限定はないが、滴下、熟成時間を合わせて概ね1〜120時間である。
【0071】
攪拌方法については、均一に混合される方法であれば特に制限はなく、例として回転による方法、超音波による方法等があげられる。攪拌羽根を用いたバッチ式の反応容器を用いる場合、攪拌羽根の形状や溶液粘度等に影響されるため一概にはいえないが、攪拌速度は概ね30〜10000rpmの範囲である。
【0072】
反応溶媒としては水を用いるが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の有機溶剤を併用してもよい。
【0073】
合成する際の濃度は特に制限はないが、ヒドロキシアパタイトとカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物の固形分を合わせて概ね0.5〜60重量%の範囲であり、好ましくは1〜50重量%の範囲にある。50重量%を越えると分散溶液の粘度が高くなり、取り扱いが困難となる場合がある。
【0074】
かくして得られる安定性に優れるカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト微粒子分散水溶液は均一なエマルション溶液であり、長時間静置しておいても沈降、分離を起こさない。ここで言う安定性に優れるものとは、製造後1週間経過した時点で沈降あるいは分離する固形物重量が1重量%以下のものを言う。
【0075】
本発明の透明性に優れるカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体は、このようにして得られる分散安定性に優れるカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト微粒子分散溶液から水を除去することにより成形体となる。成形体は用途により、フィルム状、シート状、粉末状、発泡体状、糸状など、公知の方法や機器類を用いて任意の形状に加工することができる。
【0076】
また、温度変化により物理的に架橋構造をつくる方法や、架橋剤を用いて化学的な結合(イオン結合、共有結合)で架橋構造をつくる方法により、ゲル状の成形物に加工することも可能である。
【0077】
例えば、フィルムに加工する場合には、複合体の分散水溶液をそのまま、あるいは濃縮処理やpH調整、必要に応じてエチレングリコールやグリセリン等の公知の可塑剤や、架橋剤、増粘剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の添加剤を混合した後に、ガラス、石英、金属、セラミックス、プラスチック、ゴム等の基板、ロール、ベルト等の上に上記の安定な分散液を塗布・製膜し、必要に応じて加熱、減圧、送気、赤外線照射、極超短波照射等の処理を行って水および/または水系の溶剤を蒸発させることにより製造することができる。塗布方法は特に制限はなく、流し塗り法、浸漬法、スプレー法等があり、バーコーター、スピンコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等の公知の塗工機を使用できる。塗布厚み(乾燥前の厚み)は概ね1μm〜10mmで、塗布法の選択により任意に厚みを設定できる。水および/または水系の溶剤を蒸発させる温度は0〜150℃の温度範囲で行い、常圧あるいは減圧下に行う。その際に乾燥空気あるいは乾燥窒素を流通させて乾燥時間を短縮することができる。さらに、耐水性を付与する等の目的で架橋反応を促進する場合には、40〜200℃で数秒〜数十分間熱処理を行う。このフィルムを基材から剥がして使用する場合には、プラスチック製の基材を用いると離型性が良好であるが、その他の基材を用いる場合にも必要に応じて各素材に公知の離型剤を予め塗布するとよい。このようにして製造されるフィルムは透明性に優れる特徴を有する。これは、ヒドロキシアパタイト微粒子のサイズが可視光の波長領域以下であり、個々の粒子が凝集を起こすことなくポリマーマトリックス中に均一に分散していることを示す。透明性については、400nmと700nmでの可視光透過率により定量的に評価できる。ここでいう透明性に優れるとは膜厚が30〜300μmにおける700nm波長の光透過率が50%以上を示すものをいう。このフイルムは水分を吸収すると白濁し、乾燥すると透明になる。この変化は可逆的であり、透明性に優れるとの表現は乾燥条件下(含水量10重量%以下)についての記述である。
【0078】
フィルムは親水性が高いため、耐水性に問題が生じる場合があるが、このような場合、(1)物理的に水や湿気の侵入を防ぐ方法と、(2)フィルム作製時に耐水性を付与する方法がある。(1)は疎水性のフィルムをラミネートする方法が有効である。(2)は、カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散溶液自身に架橋反応性を持たせる方法と、耐水化剤を添加する方法がある。具体的には、前者は(I)(メタ)アクリルアミド系重合体を製造する際に共重合により架橋性の官能基を導入する方法、(II)カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物と反応可能な架橋剤を添加する方法がある。具体的には、(I)では官能基として、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基などが用いられ、これらの官能基同士の反応あるいは多価金属イオンによる架橋反応により耐水性がもたらされる。(II)は、ホルマリンや尿素−ホルマリン樹脂、ポリアミド−ポリアミン樹脂やそれらの変性物などが挙げられる。また、後者は分散溶液に硬化性のエマルション樹脂を混合する方法などがあり、公知のアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系のエマルションが利用できる。
【0079】
カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/無機微粒子の水分散水溶液から複合体を粉末化する方法は、フィルム加工と同様に複合体の分散水溶液をそのまま、あるいは濃縮処理やpH調整、必要に応じてエチレングリコールやグリセリン等の公知の可塑剤や、架橋剤、増粘剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の添加剤を混合した後に、スプレードライ、凍結乾燥のように溶媒を分散液から直接気化する方法や、あるいは水と混和するが複合体を溶解しないメタノールのような有機溶剤または硫酸ナトリウムのような塩斥効果の高い化合物を用いることにより固体分離処理を行い、乾燥後粉末化する方法も可能であるが、本発明の主旨から言えば前者の方が好ましい。
【0080】
その他の形状加工についても、フィルム加工と同様に、複合体の分散水溶液をそのまま、あるいは濃縮処理やpH調整、必要に応じてエチレングリコールやグリセリン等の公知の可塑剤や、架橋剤、増粘剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の添加剤を混合した後に、公知の方法により実施できる。
【0081】
本発明のカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/無機微粒子複合体は、特にポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどに関しては安全性の高いポリマー材料であることが知られており、そのヒドロキシアパタイト複合体は、「生体親和性の高い粒子がナノメートルサイズで均一に混合分散しているポリマー複合材料」という点で特徴づけられ、種々の用途がある。これらの複合体は前述のように種々の形状に加工可能である点から、特に医用あるいは化粧用材料として非常に有用な材料である。医用材料としては人工骨材料、骨充填剤、歯科材料、DDS担体、皮膚疾患治療薬等に利用できる。
【0082】
本発明のカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/無機微粒子複合体は、複合前のポリマー単独のフイルムに比べて、引張強度、硬度、熱特性、バリア性などが向上する。ここでいうバリア性は、気体分子の遮蔽性や、香料やガソリン等の揮発性分子の透過を抑える性質を言う。特に本発明では粒子の形態を平板状にしたため、バリア性の向上が著しい。これらの特性を利用するには、このフィルム単独でも用いられるが、バリア性の劣る基材表面にコートまたは貼り合わせる、または中間層になるように多層ラミネートフィルムとして利用できる。さらに種々の基材に塗布、含浸させることにより、基材の強度等の特性をを向上させる目的でも使用することができる。
【0083】
本発明のカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体は透明性が高い点と、有機体・生体に対して親和性の高いヒドロキシアパタイトを幅広い比率で含有させることができる特長を持つことから、上記以外にも塗料、接着剤、顔料バインダー、セラミックス粘結剤、経糸剤、乳化剤、クロマトグラフィー用充填剤、フィルター材料、樹脂改質剤、排水処理剤、抗菌剤、難燃剤、湿度や炭酸ガス等のセンサー材料、細胞培養用基材、分離膜、食品添加剤等の広い分野にわたって使用することができる。
【0084】
【実施例】
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の例において用いる%は特記のない限り重量基準を示す。粘度は25℃においてB型粘度計〔(株)トキメック社製〕により計測した値である。FT−IR測定は、日本分光社製のFT/IR−8300フーリエ変換赤外分光光度計を用いて行った。透過型電子顕微鏡観察はJEM−2010型透過型電子顕微鏡(日本電子社製)を用いて行った。
【0085】
[複合化実施例1]
予め蒸留水で溶解しておいたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール(PVA KM−118;(株)クラレ社製、ケン化度 97.4モル%、重合度 1,800 )水溶液(15.0%)66.49g、蒸留水256.14g、イソプロピルアルコール10.0gを日本精機社製のマキシムホモジナイザー容器に入れ、10%水酸化ナトリウム0.18g を加えた後に、水酸化カルシウム7.375gを攪拌しながら加えて懸濁液とした。懸濁液の温度を40℃に調整し、攪拌速度10000rpmで攪拌しながら、10.5%リン酸水溶液55.63g 、蒸留水4.37gを混合溶解した水溶液を、ミクロチューブポンプを用いて連続的に5分間で添加した。添加後さらに40℃で55分間反応を行ない、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト(50:50)複合体分散水溶液(a)を得た。5分で添加した時点でpHは6以下になり、その後10分間程度pH7以下の領域で反応が進行した後、反応の継続とともに漸次pHは7以上に上昇して、最終的に得られた分散水溶液のpHは11.29であった。25℃におけるブルックフィールド粘度は13.8mPa・s であり、沈降物の生成はほとんど認められず、1週間静置しても分離、沈降等の変化を起こさずに安定であった。反応液の固形分濃度は5.2 %であった。分散水溶液から水を蒸発させると透明なフィルムとなった。
【0086】
[複合化比較例1]
予め蒸留水で溶解しておいたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール(PVA KM−118;(株)クラレ社製、ケン化度 97.4モル%、重合度 1,800 )水溶液(15.0%)66.49g 、蒸留水256.14g、イソプロピルアルコール10.0gを日本精機社製のマキシムホモジナイザー容器に入れ、10%水酸化ナトリウム0.18g を加えた後に、水酸化カルシウム7.375gを攪拌しながら加えて懸濁液とした。懸濁液の温度を40℃に調整し、攪拌速度10000rpmで攪拌しながら、10.5%リン酸水溶液55.63g 、蒸留水4.37gを混合溶解した水溶液を、ミクロチューブポンプを用いて連[図1]続的に60分間で添加した。pHは添加終了直前から次第に低下し始め添加直後に一時pH7以下になったが、反応は概ね添加終了前の7以上のpH領域で進行した。添加後さらに40℃で15分間反応を行ない、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト(50:50)複合体分散水溶液(b)を得た。得られた分散水溶液のpHは7.24であり、沈降物の生成はほとんど認められず、1週間静置しても分離、沈降等の変化を起こさずに安定であった。反応液の固形分濃度は5.2 %であった。
【0087】
[電子顕微鏡観察/分散液]
・平板状ヒドロキシアパタイト粒子
複合化実施例1で得られたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト複合体分散溶液(a)を希釈し、コロジオン膜張銅メッシュ上で乾燥して撮影した透過型電子顕微鏡写真を図1(a)[図1]に示した。図1(a)を見ると明らかなように、ヒドロキシアパタイト微粒子は500nm以下の不定形の平板状粒子となっており、これらの1次粒子が凝集なくコロジオン膜上に均一に分散している像が観察された。UTW(Ultra Thin Window)型EDS検出器(Energy Dispersive Spectroscopy:エネルギー分散型分光法)による粒子の局所元素分析の結果、Ca/Pの元素比は3点の平均で1.50の値を示した。ヒドロキシアパタイトのCa/P比は1.67であることから、平板状粒子はカルシウム欠損型のヒドロキシアパタイトであることが示された。
・紡錘状ヒドロキシアパタイト粒子
複合化比較例1で得られたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト複合体分散溶液(b)を希釈し、コロジオン膜張銅メッシュ上で乾燥して撮影した透過型電子顕微鏡写真を図1(b)[図2]に示した。図1(b)[図2]ではヒドロキシアパタイトが紡錘状粒子となって、これらの1次粒子が凝集することなくコロジオン膜上に均一に分散している像が観察された。
【0088】
[フィルム作成例1]
複合化実施例1で得られた分散水溶液(a)を直径90mmのポリメチルペンテン樹脂製のシャーレに入れ、水平台上にのせて乾燥窒素を流すことによって、透明性に優れる複合フィルムを製造した。液量を調節することにより、種々の厚みを持つフイルムを作成した。乾燥フイルムは更に110℃で4min熱処理を行った後にガス透過試験を行った。
【0089】
[フイルム作成比較例1]
複合化実施例1で得られた分散水溶液(b)からフイルム作成例1と同様の方法でフィルムを作成した。
【0090】
[ヘリウムガスバリア測定]
フイルム作成例1およびフイルム作成比較例1で作成したフイルムに関して、ヘリウムガス透過試験を実施した。ヘリウムの透過度は、特開平6−241978に開示されている四重極型質量分析計を検出器としたフイルム用ガス透過率測定装置を用いて、10cm2のフイルムを透過するヘリウムガス量を測定した。フィルム作成例1で作成したフィルム厚さが23.6、69.3μmの透過量はそれぞれ1.58、0.38cm3/m2・day・atmであり、50μmに換算すると0.89cm3/m2・day・atmであった。一方、フィルム作成比較例で作成したフィルム厚さが37.1、56.5μmの透過量はそれぞれ1.47、1.09cm3/m2・day・atmであり、50μmに換算すると1.22cm3/m2・day・atmであった。
【0091】
【発明の効果】
本発明の平板状のヒドロキシアパタイトを複合化したフイルムは、高いガスバリア能を有する事が知られている紡錘状のヒドロキシアパタイトを複合化したフィルムに比べても、同じ膜厚で比較すると1.22から0.89cm3/m2・day・atmにヘリウムガス透過量を抑えることができ、バリアフィルムとして極めて高い能力を有することが示される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)平板状ヒドロキシアパタイト粒子の透過型電子顕微鏡写真
【図2】図1(b)紡錘状ヒドロキシアパタイト粒子の透過型電子顕微鏡写真
【発明の属する技術分野】
本発明は特定の形状および大きさを有するヒドロキシアパタイトが安定に分散した有機重合体/無機微粒子分散水溶液およびその製造法、さらに分散水溶液から乾燥により形成される複合フィルムおよびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシアパタイトは骨や歯などの硬組織を構成する無機材料であり、生体内ではコラーゲンとの複合体として存在することが知られている。ヒドロキシアパタイトの純品を焼結すると高強度の材料となるのであるが、耐衝撃性に問題がある。この無機材料の欠点である脆性を免れるために、生物は有機物との複合化により靭性を改善しているものと解釈できる。このように有機と無機とを複合化によりバランスのとれた材料となるような設計思想を持って、最近の人工骨開発は進められている。
【0003】
一方、ヒドロキシアパタイトを従来の生体材料に限定した素材ではなく、それをナノレベルで合成高分子化合物とコンポジット化することで新材料を創り出す試みがなされており、特開2001−31877ではカルボキシル基を持つ高分子化合物の存在下にヒドロキシアパタイトを合成することで、ポリマー中にヒドロキシアパタイトの微粒子が均一に分散した複合体フィルムを形成する技術が開示されている。これはヒドロキシアパタイトを高濃度で複合化しても透明で加工性に優れており、高いガスバリア能を有する点に特徴がある。この技術で使用されるヒドロキシアパタイト粒子は紡錘型または針状の形状をしている。粒子をナノレベルの大きさに保ちながら、その形態を平板状にすると透過分子の遮蔽効果が高くなり、バリア性がさらに高くなることが予測される。
【0004】
平板状のヒドロキシアパタイトを製造する方法は、特開昭63−159207、特開平9−40408に板状の結晶形態を有するリン酸水素カルシウムと炭酸カルシウムとの反応により平板状のヒドロキシアパタイト結晶を製造する技術が開示されている。この技術を用いると平板状のヒドロキシアパタイトを製造できるが、例えばこの技術を使ってカルボキシル基を持つ高分子化合物の存在下にリン酸水素カルシウムと炭酸カルシウムとを反応させても、一次粒子径が500nm以下で高分子化合物と分散性の良い複合体を作ることはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の手法では困難であったナノメートルオーダーのヒドロキシアパタイトの平板状粒子を水溶性ポリマーと凝集・分離などを起こさず安定に分散させることにより、成形加工性に優れ、透明なフイルムをつくり、各種用途に利用可能な高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の提供およびそれから得られるフィルムおよびそれらの用途を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、カルシウム化合物とリン酸(塩)との反応系を一旦pH7以下で短時間保持させた後に、pH7以上で反応を継続させることで、500nmの板状の微粒子でありながら、凝集することなく均一な高分子化合物の分散水溶液となり、さらに溶媒を乾燥すると透明性に優れたフィルムになることを見出した。すなわち本発明は、
(1) 粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液、
(2) (1)に記載の複合分散水溶液から溶媒を乾燥することにより得られる、透明性およびバリア性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体フィルム、
(3) カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物存在下、カルシウム化合物とリン酸(塩)との反応溶液をpH7以下で短時間保持した後に、pH7以上で反応を継続することによる、粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の製造方法、
(4) (3)に記載の方法で製造される、粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液、
(5) エチレン性不飽和化合物の重合体または多糖類誘導体が、(メタ)アクリルアミド系重合体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン系重合体、またはカルボキシメチルセルロースのいずれかである(4)に記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液、
(6) 水酸化カルシウムとリン酸とを反応させて平板状ヒドロキシアパタイトを製造することを特徴とする、(3)に記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の製造方法、
(7) 水酸化カルシウムとリン酸とを反応させてヒドロキシアパタイトを製造することを特徴とする(4)または(5)に記載の分散安定性に優れる高分子化合物/無機微粒子複合分散水溶液、
(8) (4)、(5)または(7)に記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液から溶媒を乾燥することにより得られる、透明性およびバリア性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体フィルムからなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は特定の形状および大きさを有するヒドロキシアパタイトが安定に分散した高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液およびその製造法、さらに分散水溶液から乾燥により形成される複合フィルムおよびその用途に関する。
【0008】
本発明は、カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物存在下に、特定のpH条件下でカルシウム化合物とリン酸(塩)との反応を行うことにより、粒子径が制御された平板状のヒドロキシアパタイトが均一に分散した高分子化合物との複合分散液が合成できる点に特徴がある。
【0009】
本発明で使用される水溶性または水分散性の高分子化合物は、天然高分子化合物、半合成高分子化合物(天然高分子化合物を変性したもの)、合成高分子化合物の何れかであり、分子内にカルボキシル基を持つものであれば種類を問わず適用できる。
【0010】
本発明で使用される半合成高分子化合物の例として、カルボキキシメチルセルロース、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールなどがあげられる。
【0011】
合成高分子化合物には、主鎖構造の違いにより、ポリオレフィン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリアミン鎖、ポリアミド鎖、ポリウレタン鎖、ポリシリルエーテル鎖、ポリスルホン鎖をもつものに分類される。これらの主鎖構造の側鎖にカルボキシル基を含むものまたは、末端にカルボキシル基を含むものが本願の対象とする合成高分子化合物の基本構造である。これらの基本構造を持つ高分子化合物の中で、水溶性あるいは水分散性を示すものが本願の対象とする合成高分子化合物である。本願で用いられる合成高分子化合物は特定の構造を持つものには限定されない。一般的に水溶性あるいは水分散性を示す合成高分子化合物の中で広く使用されているものの一つに、ポリオレフィン鎖を主鎖にもつ化合物があげられる。これらの化合物は、エチレン性不飽和化合物をラジカル重合またはイオン重合することにより合成できる。何れの方法も使用することができるが、経済的な観点から見ればラジカル重合が有利である。
【0012】
水溶性または水分散性を示すポリオレフィン鎖を主鎖に持つ高分子化合物には、アクリルアミド類やN−ビニル−2−ピロリドンに代表されるような親水性モノマーを重合したものと、ポリビニルアルコール類に代表されるような、重合体を得た後で化学反応により親水基を生成するものとがある。
【0013】
前者の例として、使用可能な親水性モノマーには、エチレン性の非イオン性親水性不飽和化合物とエチレン性のイオン性不飽和化合物がある。エチレン性の非イオン性親水性不飽和化合物の例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−n−ヘキシルアクリルアミド、N−n−ヘキシルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−n−オクチルアクリルアミド、N−n−オクチルメタクリルアミド、N−tert−オクチルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−n−ドデシルメタクリルアミド、N,N−ジグリシジルアクリルアミド、N,N−ジグリシジルメタクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)アクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)メタクリルアミド、N−(5−グリシドキシペンチル)アクリルアミド、N−(6−グリシドキシヘキシル)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド化合物類、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニル−5−メチルオキサゾリドン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール等をあげることができる。
【0014】
エチレン性の親水性不飽和化合物のイオン性化合物のなかで、アニオン性を示す化合物の例としては不飽和カルボン酸化合物、不飽和スルホン酸化合物、その他のアニオン性不飽和化合物からなる群より選択された一種以上の化合物であり、その中で不飽和カルボン酸化合物は必須成分であるが、不飽和カルボン酸アミド化合物や不飽和カルボン酸エステル化合物などのように、加水分解等の後反応によりカルボキシル基を生成することが可能なものを共重合成分として含有するものについてはその限りではなく、後反応によりカルボキシル基を生成させても良い。不飽和カルボン酸化合物は不飽和化合物総量に対して概ね0.1〜80モル%、好ましくは0.5〜50モル%共重合される。
【0015】
不飽和カルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、β−メチルクロトン酸、β−メチルチグリン酸、α−メチル−2−ペンテン酸、β−メチル−2−ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸、2−メチルグルタコン酸、3−メチルグルタコン酸、2−メチル−α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチル−α−ジヒドロムコン酸等の酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0016】
不飽和スルホン酸化合物としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸等のスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0017】
その他のアニオン性不飽和化合物としては、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリルエステル等のリン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0018】
エチレン性の親水性不飽和化合物のイオン性化合物のなかで、カチオン性を示す化合物の例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)等の塩基性ビニル化合物とそれらの塩および、アリルアミン、N−メチルアリルアミン、2−メチルアリルアミン、ジアリルアミン等のアリルアミン類とそれらの塩等がある。さらには、DA、DM、DMAPAA、DMAPMA等をジメチル硫酸、メチルクロライドやメチルブロマイド等のハロゲン化アルキル類、アリルクロライド、ベンジルクロライドやベンジルブロマイド等のハロゲン化ベンジル類、エピクロヒドリンやエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリン類、プロピレンオキシドやスチレンオキシド等のエポキシ類で四級化したビニル化合物や、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドなどをあげることができる。
【0019】
上記エチレン性の親水性不飽和化合物には、水溶性あるいは水分散性を損なわない程度にエチレン性の疎水性不飽和化合物を共重合することが可能である。疎水性不飽和化合物の共重合比率はモノマーの種類や共重合の組み合わせ等により変わるので特定できないが、比率が高くなると水溶性を失うため、疎水性不飽和化合物の量は概ね99〜0重量%の範囲であって、しかも共重合体の水溶性を失わない程度に抑える必要がある。
【0020】
エチレン性の疎水性不飽和化合物の例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、ジエン化合物、不飽和カルボン酸エステル化合物、アルキルビニルエーテル化合物、その他のビニル化合物、および疎水性アリル化合物からなる群より選択された一種以上の化合物である。
【0021】
芳香族ビニル化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン等をあげることができる。
【0022】
シアン化ビニル化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等をあげることができる。
【0023】
ジエン化合物は、アレン、ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン化合物および、クロロプレン等をあげることができる。
【0024】
不飽和カルボン酸エステル化合物は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソプロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびエポキシアクリレート類やウレタンアクリレート類のジビニル化合物等をあげることができる。
【0025】
ビニルアルキルエーテル化合物は、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルn−オクタデシルエーテル等をあげることができる。
【0026】
その他のビニル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、エチレン、プロピレン、ブテン、α−オレフィン等のオレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、ジエチルフマレート、ジメチルイタコネート等のカルボン酸ジアルキルエステル類、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等をあげることができる。さらに、疎水性のアリル化合物としては、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジエチレングリコールジアリルカーボネート、トリアリルシアヌレート等をあげることができる。
【0027】
本発明に用いられる親水性モノマーの重合体を製造する方法は公知の重合方法、例えば水溶液重合、沈殿重合、乳化重合等を用いることが出来る。回分重合、半回分重合の何れの組み合わせでもよく、重合方法は何等制限されない。
【0028】
ラジカル重合を行う場合、通常はラジカル重合開始剤の存在下、重合溶液を所定温度に保つことにより重合を行う。重合中同一温度に保つ必要はなく、重合の進行にともない適宜変えてよく、必要に応じて加熱あるいは除熱しながら行う。重合温度は使用するモノマーの種類や重合開始剤の種類などにより異なり、単一開始剤の場合には概ね30〜100℃の範囲であり、レドックス系重合開始剤の場合にはより低く、一括で重合を行う場合には概ね−5〜50℃であり、逐次添加する場合には概ね30〜90℃である。重合器内の雰囲気は特に限定はないが、重合を速やかに行わせるには窒素ガスのような不活性ガスで置換した方がよい。重合時間は特に限定はないが、概ね1〜40時間である。
【0029】
重合溶媒としては水を用いるが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の有機溶剤を併用してもよい。
【0030】
ラジカル重合開始剤としては一般の水溶性の開始剤が使用できる。過酸化物系では、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、tert−ブチルパーオキサイド等があげられる。この場合、単独でも使用できるが、還元剤と組み合わせてレドックス系重合剤としても使える。還元剤としては、例えば亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルト等の低次のイオンの塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、更にはアルドース、ケトース等の還元糖等をあげることができる。また、アゾ化合物系では、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレイン酸及びその塩等を使用することができる。更に上記した重合開始剤を2種以上併用してもよい。重合開始剤の添加量は単量体に対して0.0001〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.01〜8重量%である。また、レドックス系の場合には、重合開始剤に対して還元剤の添加量はモル基準で0.1〜100%、好ましくは0.2〜80%である。
【0031】
親水性モノマーの重合は、分子量あるいは重合速度を調整するなどの目的で、必要に応じてpH調整剤、連鎖移動剤等を使用してもよい。
【0032】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類、エタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基類、及び炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の塩類等があげられる。
【0033】
連鎖移動剤としては、イソプロピルアルコール、α−チオグリセロール、メルカプトコハク酸、チオグリコール酸、トリエチルアミン、次亜リン酸ナトリウム等のなかから1種または2種以上の混合物を適宜使用することができる。
【0034】
また、金属イオンを封止するあるいは重合速度を調整する等の目的で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム(EDTA−Na)や尿素、チオ尿素等の化合物を併用してもよい。pH調整剤、連鎖移動剤等の使用量は、使用目的に応じて異なるが、概ねモノマー重量に対してpH調整剤は100ppm〜10%、連鎖移動剤やその他の添加剤は1.0ppm〜5.0%の範囲にある。
【0035】
本発明で使用される(メタ)アクリルアミド系重合体やビニルピロリドン系重合体のような、親水性モノマーの重合体の分子量は、ポリマー構造(直鎖/分岐など)により異なるが、概ね1.0×103〜5.0×106の範囲に及ぶ。1.0×103以下の分子量ではポリマー自体の特性低下に加えて、無機微粒子への吸着力が低いため安定な分散溶液とならず、5.0×106以上の分子量では粒子間の架橋反応が優先するため、安定な分散溶液とならない。また、重合体に含まれるカルボキシル基量は、概ね0.1〜60モル%、好ましくは0.5〜50モル%の範囲にある。
【0036】
重合体を得た後で化学反応により親水基を生成する例には、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミンなどがあり、カルボキシル基を分子内に持つ化合物であれば何れも使用できるのであるが、それらの中でもPVAが特に好ましい。PVAとしては分子内にカルボキシル基を有するポリビニルアルコール系重合体(カルボキシル基変性ポリビニルアルコール)が用いられ、通常はビニルエステル化合物とエチレン性不飽和カルボン酸との共重合体をケン化したもの、および/または末端にチオール基を有するポリビニルアルコール系重合体の存在下、エチレン性不飽和カルボン酸をラジカル共重合したものが使用される。
【0037】
上記のビニルエステル化合物としては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等をあげることができるが、工業的には酢酸ビニルが好ましい。
【0038】
上記エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、β−メチルクロトン酸、β−メチルチグリン酸、α−メチル−2−ペンテン酸、β−メチル−2−ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸、2−メチルグルタコン酸、3−メチルグルタコン酸、2−メチル−α−ジヒドロムコン酸、2,3−ジメチル−α−ジヒドロムコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0039】
また、エチレン性不飽和カルボン酸の代りに、ケン化反応時にカルボキシル基を生成するエチレン性不飽和カルボン酸エステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、エチレン性不飽和カルボン酸アミドなどを共重合してもよい。また、エチレン性不飽和カルボン酸とこれらのケン化反応時にカルボキシル基を生成する化合物を共重合しても差し支えない。さらには、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの水溶性や安定性等に支障をきたさない程度に他の共重合可能なモノマーと共重合させることも可能である。
【0040】
重合およびケン化方法は特に制限はなく、例えば特開昭53−91995号公報に開示されているような、公知の方法に従ってカルボキシル基変性ポリビニルアルコールを製造することができる。
【0041】
末端にチオール基を有するポリビニルアルコール系重合体は、チオ酢酸のようなチオール基を含有する連鎖移動剤の存在下にビニルエステル化合物を重合し、その後ケン化反応を行うことにより得られる。重合の際には、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの水溶性や安定性等に支障をきたさない程度に共重合可能なモノマーと共重合させることも可能である。この末端にチオール基を有するポリビニルアルコール系重合体存在下にエチレン性不飽和カルボン酸をラジカル共重合すれば、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(ブロック共重合体)が製造される。これらのブロック重合の際にも、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの水溶性や安定性等に支障をきたさない程度に共重合可能なモノマーを共重合させることが可能である。その量は使用するモノマーの種類により異なるが、ケン化反応前のビニルエステル化合物に対して概ね1〜50重量%の範囲にある。
【0042】
共重合可能なモノマーには、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸エステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、エチレン性不飽和カルボン酸アミド、アニオン性のエチレン性不飽和化合物、カチオン性のエチレン性不飽和化合物、非イオン性のエチレン性親水性不飽和化合物、エチレン性疎水性不飽和化合物がある。
【0043】
本発明で使用されるエチレン性不飽和カルボン酸エステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソプロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびエポキシアクリレート類やウレタンアクリレート類のジビニル化合物等をあげることができる。
【0044】
本発明で使用されるエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルは、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル等が例示される。
【0045】
本発明で使用されるエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルは、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、シトラコン酸ジアルキルエステル等が例示される。
【0046】
本発明で使用されるエチレン性不飽和カルボン酸アミドの例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−n−ヘキシルアクリルアミド、N−n−ヘキシルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−n−オクチルアクリルアミド、N−n−オクチルメタクリルアミド、N−tert−オクチルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−n−ドデシルメタクリルアミド、N,N−ジグリシジルアクリルアミド、N,N−ジグリシジルメタクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)アクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)メタクリルアミド、N−(5−グリシドキシペンチル)アクリルアミド、N−(6−グリシドキシヘキシル)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド等をあげることができる。
【0047】
本発明で使用される前記したエチレン性不飽和カルボン酸以外のアニオン性のエチレン性不飽和化合物には、エチレン性不飽和スルホン酸、およびその他のアニオン性不飽和化合物があげられ、これらの群より選択される一種以上の化合物が用いられる。
【0048】
エチレン性不飽和スルホン酸としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸等のスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0049】
その他のアニオン性不飽和化合物としては、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリルエステル等のリン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等をあげることができる。
【0050】
カチオン性のエチレン性不飽和化合物は、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)等の塩基性ビニル化合物とそれらの塩および、アリルアミン、N−メチルアリルアミン、2−メチルアリルアミン、ジアリルアミン等のアリルアミン類とそれらの塩等がある。さらには、DA、DM、DMAPAA、DMAPMA等をジメチル硫酸、メチルクロライドやメチルブロマイド等のハロゲン化アルキル類、アリルクロライド、ベンジルクロライドやベンジルブロマイド等のハロゲン化ベンジル類、エピクロヒドリンやエピブロモヒドリン等のエピハロヒドリン類、プロピレンオキシドやスチレンオキシド等のエポキシ類で四級化したビニル化合物や、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドなどをあげることができる。
【0051】
非イオン性のエチレン性親水性不飽和化合物は、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニル−5−メチルオキサゾリドン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール等をあげることができる。
【0052】
また、エチレン性不飽和カルボン酸エステルおよびビニルエステル化合物以外のエチレン性疎水性不飽和化合物は、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、ジエン化合物、ビニルアルキルエーテル化合物、その他のビニル化合物、および疎水性アリル化合物からなる群より選択された一種以上の化合物である。
【0053】
芳香族ビニル化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン等をあげることができる。
【0054】
シアン化ビニル化合物は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等をあげることができる。
【0055】
ジエン化合物は、アレン、ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン化合物および、クロロプレン等をあげることができる。
【0056】
ビニルアルキルエーテル化合物は、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルn−オクタデシルエーテル等をあげることができる。
【0057】
その他のビニル化合物としては、エチレン、プロピレン、ブテン、α−オレフィン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、ジエチルフマレート、ジメチルイタコネート等のカルボン酸ジアルキルエステル類、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等をあげることができる。
【0058】
疎水性のアリル化合物としては、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジエチレングリコールジアリルカーボネート、トリアリルシアヌレート等をあげることができる。
【0059】
本発明で使用されるカルボキシル基変性ポリビニルアルコールの重合度は概ね100〜5000、好ましくは200〜3000、ケン化度はケン化前のビニルエステル化合物に対して60〜100モル%、カルボキシル基含量は0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜30モル%の範囲にある。
【0060】
水分散性の合成高分子化合物のなかには、所謂合成ラテックス、エマルションの形態をとるものも含まれる。ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、メチルメタアクリレート−ブタジエン系ラテックス、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンラテックス、クロロプレンラテックス、イソプレンラテックス、ポリスチレンエマルション、ウレタンエマルション、アクリルエマルション、酢酸ビニル系エマルション、酢酸ビニル−エチレン(EVA)系エマルション、アクリレート−スチレン系エマルション、塩化ビニルラテックス、塩化ビニリデンラテックス、エポキシ系エマルション等で称されるもののなかで、カルボキシル基変性されているものが本願の水分散性の合成高分子化合物に該当する。
【0061】
本発明の分散水溶液中に含まれるヒドロキシアパタイトは、リン酸に由来する部分とカルシウム原子の合計が50重量%以上含まれるものである。例としてはヒドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、炭酸含有アパタイト、マグネシウム含有アパタイト、鉄含有アパタイト等のアパタイト化合物、リン酸三カルシウム等が挙げられる。
【0062】
本発明のヒドロキシアパタイトに含まれるアパタイト化合物は、基本組成がMx(RO4)yXzで表される。Mサイトがカルシウムイオン(Ca2+)、RO4サイトがリン酸イオン(PO4 3−)、Xサイトが水酸イオン(OH−)の場合には、x=10、y=6、z=2となり、一般的にヒドロキシアパタイトと呼ばれる化合物である。M、RO4、Xの各サイトは種々のイオン等と置換が可能であり、また、空孔ともなり得るものである。置換量および空孔量はそのイオン等の種類により異なるが、リン酸に由来する部分とカルシウム原子の合計が50重量%以上含まれていれば他のイオン等と置換されていても、空孔であっても差し支えない。
【0063】
リン酸に由来する部分とカルシウム原子の合計が50重量%を下回るとヒドロキシアパタイトとしての特性が失われることがあるために好ましくない。Mサイトは基本的にCa2+であるが、置換可能なイオン種の例として、H+、Na+、K+、H3O+、Sr2+、Ba2+、Cd2+、Pb2+、Zn2+、Mg2+、Fe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Hg2+、Ra2+、Al3+、Fe3+、Y3+、Ce3+、Nd3+、La3+、Dy3+、Eu3+、Zr4+等があげられる。RO4サイトは基本的にPO4 3−であるが、置換可能なイオン種の例として、SO4 2−、CO3 2−、HPO4 2−、PO3F2−、AsO4 3−、VO4 3−、CrO4 3−、BO3 3−、SiO4 4−、GeO4 4−、BO4 5−、AlO4 5−、H4O4 4−等があげられる。Xサイトに入るイオン種や分子の例として、OH−、F−、Cl−、Br−、I−、O2−、CO3 2−、H2O等があげられる。
【0064】
本発明の平板状ヒドロキシアパタイトの粒径は500nm以下である。粒径が500nmを越えると粒子が複合体分散水溶液から沈降分離しやすくなり、分散水溶液の安定性に欠けるため適当ではない。また、ヒドロキシアパタイト結晶構造についてはいかなるものでもよく、非晶質でもよい。粒径分布についても、粒径が500nm以下であれば特に制限はない。ここで用いる粒径とは、粒子の長軸径を示す。
【0065】
カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/平板状ヒドロキシアパタイト微粒子分散水溶液を製造する方法(複合化)のなかで、分散安定性の優れた分散液を得るためには、ヒドロキシアパタイトをカルボキシル基を含有する水溶性または水分散性の高分子化合物存在下に、特定のpH条件下で製造すれば良く、そこに本発明の特徴がある。板状ヒドロキシアパタイトの製造方法はカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物存在下に製造可能な方法であればいかなる製造方法でもかまわないが、500nm以下の粒子サイズにするためには、水酸化カルシウムとリン酸とを反応する方法が有効である。反応は一般的には両原料を同時に添加するか、一方の原料溶液の中へ他方の原料を添加する方式がとられる。ヒドロキシアパタイトを製造するには通常pH8以上で反応を行うことが知られているが、板状のヒドロキシアパタイトを製造するためには、いったんpH7未満、好ましくは6.5以下に短時間保持させた後、pH7以上、好ましくは8.0以上で反応を継続するとよい。具体的な方法としては、先にリン酸とカルボキシル基を有する高分子化合物とを混合した水溶液中に、所定量の水酸化カルシウムを短時間に混合・撹拌させる方法や、逆に先に水酸化カルシウムとカルボキシル基を有する高分子化合物とを混合した水溶液中に、所定量のリン酸を短時間で混合して反応させる方法、あるいは高分子化合物水溶液中に、リン酸と水酸化カルシウムとを同時に添加して反応させる方法など、添加順序や組み合わせは自由であるが、リン酸と水酸化カルシウムとの反応は初期の段階でpH7未満になるようにし、その後pH7以上で反応が進行するようにすればよい。ここでいう短時間あるいは初期の段階とは、原料であるリン酸または水酸化カルシウムの全量の70%以上を混合するのに要する時間で表され、撹拌方法により変化するが、概ね10min以内になるように混合することにより実施される。
【0066】
カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物はヒドロキシアパタイトが生成する反応液中に存在させればよく、カルシウム化合物(懸濁)水溶液、リン酸あるいはリン酸塩水溶液いずれかに混合しておいてもよいし、両方に混合しておいてもよい。また、両者とは別に独立して反応器の中へ連続的あるいは断続的に添加してもよい。但し、未ケン化部含量が多い(概ね5〜60モル%)カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを複合化する場合など、アルカリ加水分解反応をうける成分を高分子化合物の中に含有するものに関しては、特に原料として水酸化カルシウム等のアルカリ性の高い物質をカルシウム源として用いる場合には注意が必要である。例えば水酸化カルシウムとカルボキシル基変性ポリビニルアルコールとを混合しておくと、未ケン化部の加水分解反応が副反応として生じるため問題となることがある。このような場合には、水酸化カルシウムが加水分解反応で消費される分量のリン酸が過剰になるため反応液のpH低下を招き、ヒドロキシアパタイトの生成が不完全になるとともに、複合化が不良になり、反応液の分離、沈降を生じることがある。この問題を解決するには水酸化カルシウムとカルボキシル基変性ポリビニルアルコールを分けて両者あるいは一方を滴下すればよく、ヒドロキシアパタイトの反応が優先するため副反応を抑えることができる。この方法により未ケン化部を含有するカルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト分散水溶液が製造できる。ケン化により生じる酢酸ナトリウム等の影響が問題にならない場合には、未ケン化部に相当する量のアルカリを添加して予めケン化反応を行った後に複合化反応を行ってもよいが、不純物による着色などの影響を抑えることができるため、完全ケン化タイプのカルボキシル基変性ポリビニルアルコールを用いるほうが好ましい。
【0067】
しかしながら、アクリルアミド系重合体のように、加水分解反応によりカルボキシル基を生成するものは、複合化反応の際に加水分解反応をむしろ積極的に起こしても良いことがある。
【0068】
ヒドロキシアパタイトの中でもアパタイト構造をとるものはその構造の柔軟さから前述のように各種イオンと置換できることが知られており、必要に応じてカルシウムおよびリン酸以外のイオン種を含む化合物を併用することもできる。
【0069】
カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物とヒドロキシアパタイトの重量比は10:90〜99.99:0.01、好ましくは20:80〜99.99:0.01の範囲である。ヒドロキシアパタイトの量が0.01%より少ないとヒドロキシアパタイトを添加する効果が乏しく、90%を越えると分散安定性が不良で沈降、分離を起こしやすくなり、均一な複合体を形成できなくなるため好ましくない。
【0070】
通常はカルシウム化合物とリン酸(塩)との反応溶液を所定温度に保つことにより反応を行う。反応中同一温度に保つ必要はなく、反応の進行にともない適宜変えてよく、必要に応じて加熱あるいは冷却しながら行う。反応温度により生成するヒドロキシアパタイト粒子の大きさが変化するため、反応温度を変えることにより粒径を変えることができ、その結果分散水溶液から作成されるフィルムの透明性を加減することも可能である。反応温度は概ね5〜95℃の範囲にある。反応器内の雰囲気は特に限定はなく通常は空気中で行われるが、ヒドロキシアパタイトの組成をコントロールするには窒素ガスのような不活性ガスで置換した方がよい。合成時間は特に限定はないが、滴下、熟成時間を合わせて概ね1〜120時間である。
【0071】
攪拌方法については、均一に混合される方法であれば特に制限はなく、例として回転による方法、超音波による方法等があげられる。攪拌羽根を用いたバッチ式の反応容器を用いる場合、攪拌羽根の形状や溶液粘度等に影響されるため一概にはいえないが、攪拌速度は概ね30〜10000rpmの範囲である。
【0072】
反応溶媒としては水を用いるが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の有機溶剤を併用してもよい。
【0073】
合成する際の濃度は特に制限はないが、ヒドロキシアパタイトとカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物の固形分を合わせて概ね0.5〜60重量%の範囲であり、好ましくは1〜50重量%の範囲にある。50重量%を越えると分散溶液の粘度が高くなり、取り扱いが困難となる場合がある。
【0074】
かくして得られる安定性に優れるカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト微粒子分散水溶液は均一なエマルション溶液であり、長時間静置しておいても沈降、分離を起こさない。ここで言う安定性に優れるものとは、製造後1週間経過した時点で沈降あるいは分離する固形物重量が1重量%以下のものを言う。
【0075】
本発明の透明性に優れるカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体は、このようにして得られる分散安定性に優れるカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト微粒子分散溶液から水を除去することにより成形体となる。成形体は用途により、フィルム状、シート状、粉末状、発泡体状、糸状など、公知の方法や機器類を用いて任意の形状に加工することができる。
【0076】
また、温度変化により物理的に架橋構造をつくる方法や、架橋剤を用いて化学的な結合(イオン結合、共有結合)で架橋構造をつくる方法により、ゲル状の成形物に加工することも可能である。
【0077】
例えば、フィルムに加工する場合には、複合体の分散水溶液をそのまま、あるいは濃縮処理やpH調整、必要に応じてエチレングリコールやグリセリン等の公知の可塑剤や、架橋剤、増粘剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の添加剤を混合した後に、ガラス、石英、金属、セラミックス、プラスチック、ゴム等の基板、ロール、ベルト等の上に上記の安定な分散液を塗布・製膜し、必要に応じて加熱、減圧、送気、赤外線照射、極超短波照射等の処理を行って水および/または水系の溶剤を蒸発させることにより製造することができる。塗布方法は特に制限はなく、流し塗り法、浸漬法、スプレー法等があり、バーコーター、スピンコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等の公知の塗工機を使用できる。塗布厚み(乾燥前の厚み)は概ね1μm〜10mmで、塗布法の選択により任意に厚みを設定できる。水および/または水系の溶剤を蒸発させる温度は0〜150℃の温度範囲で行い、常圧あるいは減圧下に行う。その際に乾燥空気あるいは乾燥窒素を流通させて乾燥時間を短縮することができる。さらに、耐水性を付与する等の目的で架橋反応を促進する場合には、40〜200℃で数秒〜数十分間熱処理を行う。このフィルムを基材から剥がして使用する場合には、プラスチック製の基材を用いると離型性が良好であるが、その他の基材を用いる場合にも必要に応じて各素材に公知の離型剤を予め塗布するとよい。このようにして製造されるフィルムは透明性に優れる特徴を有する。これは、ヒドロキシアパタイト微粒子のサイズが可視光の波長領域以下であり、個々の粒子が凝集を起こすことなくポリマーマトリックス中に均一に分散していることを示す。透明性については、400nmと700nmでの可視光透過率により定量的に評価できる。ここでいう透明性に優れるとは膜厚が30〜300μmにおける700nm波長の光透過率が50%以上を示すものをいう。このフイルムは水分を吸収すると白濁し、乾燥すると透明になる。この変化は可逆的であり、透明性に優れるとの表現は乾燥条件下(含水量10重量%以下)についての記述である。
【0078】
フィルムは親水性が高いため、耐水性に問題が生じる場合があるが、このような場合、(1)物理的に水や湿気の侵入を防ぐ方法と、(2)フィルム作製時に耐水性を付与する方法がある。(1)は疎水性のフィルムをラミネートする方法が有効である。(2)は、カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散溶液自身に架橋反応性を持たせる方法と、耐水化剤を添加する方法がある。具体的には、前者は(I)(メタ)アクリルアミド系重合体を製造する際に共重合により架橋性の官能基を導入する方法、(II)カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物と反応可能な架橋剤を添加する方法がある。具体的には、(I)では官能基として、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基などが用いられ、これらの官能基同士の反応あるいは多価金属イオンによる架橋反応により耐水性がもたらされる。(II)は、ホルマリンや尿素−ホルマリン樹脂、ポリアミド−ポリアミン樹脂やそれらの変性物などが挙げられる。また、後者は分散溶液に硬化性のエマルション樹脂を混合する方法などがあり、公知のアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系のエマルションが利用できる。
【0079】
カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/無機微粒子の水分散水溶液から複合体を粉末化する方法は、フィルム加工と同様に複合体の分散水溶液をそのまま、あるいは濃縮処理やpH調整、必要に応じてエチレングリコールやグリセリン等の公知の可塑剤や、架橋剤、増粘剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の添加剤を混合した後に、スプレードライ、凍結乾燥のように溶媒を分散液から直接気化する方法や、あるいは水と混和するが複合体を溶解しないメタノールのような有機溶剤または硫酸ナトリウムのような塩斥効果の高い化合物を用いることにより固体分離処理を行い、乾燥後粉末化する方法も可能であるが、本発明の主旨から言えば前者の方が好ましい。
【0080】
その他の形状加工についても、フィルム加工と同様に、複合体の分散水溶液をそのまま、あるいは濃縮処理やpH調整、必要に応じてエチレングリコールやグリセリン等の公知の可塑剤や、架橋剤、増粘剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の添加剤を混合した後に、公知の方法により実施できる。
【0081】
本発明のカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/無機微粒子複合体は、特にポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどに関しては安全性の高いポリマー材料であることが知られており、そのヒドロキシアパタイト複合体は、「生体親和性の高い粒子がナノメートルサイズで均一に混合分散しているポリマー複合材料」という点で特徴づけられ、種々の用途がある。これらの複合体は前述のように種々の形状に加工可能である点から、特に医用あるいは化粧用材料として非常に有用な材料である。医用材料としては人工骨材料、骨充填剤、歯科材料、DDS担体、皮膚疾患治療薬等に利用できる。
【0082】
本発明のカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/無機微粒子複合体は、複合前のポリマー単独のフイルムに比べて、引張強度、硬度、熱特性、バリア性などが向上する。ここでいうバリア性は、気体分子の遮蔽性や、香料やガソリン等の揮発性分子の透過を抑える性質を言う。特に本発明では粒子の形態を平板状にしたため、バリア性の向上が著しい。これらの特性を利用するには、このフィルム単独でも用いられるが、バリア性の劣る基材表面にコートまたは貼り合わせる、または中間層になるように多層ラミネートフィルムとして利用できる。さらに種々の基材に塗布、含浸させることにより、基材の強度等の特性をを向上させる目的でも使用することができる。
【0083】
本発明のカルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体は透明性が高い点と、有機体・生体に対して親和性の高いヒドロキシアパタイトを幅広い比率で含有させることができる特長を持つことから、上記以外にも塗料、接着剤、顔料バインダー、セラミックス粘結剤、経糸剤、乳化剤、クロマトグラフィー用充填剤、フィルター材料、樹脂改質剤、排水処理剤、抗菌剤、難燃剤、湿度や炭酸ガス等のセンサー材料、細胞培養用基材、分離膜、食品添加剤等の広い分野にわたって使用することができる。
【0084】
【実施例】
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の例において用いる%は特記のない限り重量基準を示す。粘度は25℃においてB型粘度計〔(株)トキメック社製〕により計測した値である。FT−IR測定は、日本分光社製のFT/IR−8300フーリエ変換赤外分光光度計を用いて行った。透過型電子顕微鏡観察はJEM−2010型透過型電子顕微鏡(日本電子社製)を用いて行った。
【0085】
[複合化実施例1]
予め蒸留水で溶解しておいたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール(PVA KM−118;(株)クラレ社製、ケン化度 97.4モル%、重合度 1,800 )水溶液(15.0%)66.49g、蒸留水256.14g、イソプロピルアルコール10.0gを日本精機社製のマキシムホモジナイザー容器に入れ、10%水酸化ナトリウム0.18g を加えた後に、水酸化カルシウム7.375gを攪拌しながら加えて懸濁液とした。懸濁液の温度を40℃に調整し、攪拌速度10000rpmで攪拌しながら、10.5%リン酸水溶液55.63g 、蒸留水4.37gを混合溶解した水溶液を、ミクロチューブポンプを用いて連続的に5分間で添加した。添加後さらに40℃で55分間反応を行ない、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト(50:50)複合体分散水溶液(a)を得た。5分で添加した時点でpHは6以下になり、その後10分間程度pH7以下の領域で反応が進行した後、反応の継続とともに漸次pHは7以上に上昇して、最終的に得られた分散水溶液のpHは11.29であった。25℃におけるブルックフィールド粘度は13.8mPa・s であり、沈降物の生成はほとんど認められず、1週間静置しても分離、沈降等の変化を起こさずに安定であった。反応液の固形分濃度は5.2 %であった。分散水溶液から水を蒸発させると透明なフィルムとなった。
【0086】
[複合化比較例1]
予め蒸留水で溶解しておいたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール(PVA KM−118;(株)クラレ社製、ケン化度 97.4モル%、重合度 1,800 )水溶液(15.0%)66.49g 、蒸留水256.14g、イソプロピルアルコール10.0gを日本精機社製のマキシムホモジナイザー容器に入れ、10%水酸化ナトリウム0.18g を加えた後に、水酸化カルシウム7.375gを攪拌しながら加えて懸濁液とした。懸濁液の温度を40℃に調整し、攪拌速度10000rpmで攪拌しながら、10.5%リン酸水溶液55.63g 、蒸留水4.37gを混合溶解した水溶液を、ミクロチューブポンプを用いて連[図1]続的に60分間で添加した。pHは添加終了直前から次第に低下し始め添加直後に一時pH7以下になったが、反応は概ね添加終了前の7以上のpH領域で進行した。添加後さらに40℃で15分間反応を行ない、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト(50:50)複合体分散水溶液(b)を得た。得られた分散水溶液のpHは7.24であり、沈降物の生成はほとんど認められず、1週間静置しても分離、沈降等の変化を起こさずに安定であった。反応液の固形分濃度は5.2 %であった。
【0087】
[電子顕微鏡観察/分散液]
・平板状ヒドロキシアパタイト粒子
複合化実施例1で得られたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト複合体分散溶液(a)を希釈し、コロジオン膜張銅メッシュ上で乾燥して撮影した透過型電子顕微鏡写真を図1(a)[図1]に示した。図1(a)を見ると明らかなように、ヒドロキシアパタイト微粒子は500nm以下の不定形の平板状粒子となっており、これらの1次粒子が凝集なくコロジオン膜上に均一に分散している像が観察された。UTW(Ultra Thin Window)型EDS検出器(Energy Dispersive Spectroscopy:エネルギー分散型分光法)による粒子の局所元素分析の結果、Ca/Pの元素比は3点の平均で1.50の値を示した。ヒドロキシアパタイトのCa/P比は1.67であることから、平板状粒子はカルシウム欠損型のヒドロキシアパタイトであることが示された。
・紡錘状ヒドロキシアパタイト粒子
複合化比較例1で得られたカルボキシル基変性ポリビニルアルコール/ヒドロキシアパタイト複合体分散溶液(b)を希釈し、コロジオン膜張銅メッシュ上で乾燥して撮影した透過型電子顕微鏡写真を図1(b)[図2]に示した。図1(b)[図2]ではヒドロキシアパタイトが紡錘状粒子となって、これらの1次粒子が凝集することなくコロジオン膜上に均一に分散している像が観察された。
【0088】
[フィルム作成例1]
複合化実施例1で得られた分散水溶液(a)を直径90mmのポリメチルペンテン樹脂製のシャーレに入れ、水平台上にのせて乾燥窒素を流すことによって、透明性に優れる複合フィルムを製造した。液量を調節することにより、種々の厚みを持つフイルムを作成した。乾燥フイルムは更に110℃で4min熱処理を行った後にガス透過試験を行った。
【0089】
[フイルム作成比較例1]
複合化実施例1で得られた分散水溶液(b)からフイルム作成例1と同様の方法でフィルムを作成した。
【0090】
[ヘリウムガスバリア測定]
フイルム作成例1およびフイルム作成比較例1で作成したフイルムに関して、ヘリウムガス透過試験を実施した。ヘリウムの透過度は、特開平6−241978に開示されている四重極型質量分析計を検出器としたフイルム用ガス透過率測定装置を用いて、10cm2のフイルムを透過するヘリウムガス量を測定した。フィルム作成例1で作成したフィルム厚さが23.6、69.3μmの透過量はそれぞれ1.58、0.38cm3/m2・day・atmであり、50μmに換算すると0.89cm3/m2・day・atmであった。一方、フィルム作成比較例で作成したフィルム厚さが37.1、56.5μmの透過量はそれぞれ1.47、1.09cm3/m2・day・atmであり、50μmに換算すると1.22cm3/m2・day・atmであった。
【0091】
【発明の効果】
本発明の平板状のヒドロキシアパタイトを複合化したフイルムは、高いガスバリア能を有する事が知られている紡錘状のヒドロキシアパタイトを複合化したフィルムに比べても、同じ膜厚で比較すると1.22から0.89cm3/m2・day・atmにヘリウムガス透過量を抑えることができ、バリアフィルムとして極めて高い能力を有することが示される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)平板状ヒドロキシアパタイト粒子の透過型電子顕微鏡写真
【図2】図1(b)紡錘状ヒドロキシアパタイト粒子の透過型電子顕微鏡写真
Claims (8)
- 粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液。
- 請求項1記載の複合分散水溶液から溶媒を乾燥することにより得られる、透明性およびバリア性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体フィルム。
- カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物存在下、カルシウム化合物とリン酸(塩)との反応溶液をpH7以下で短時間保持した後に、pH7以上で反応を継続することによる、粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の製造方法。
- 請求項3記載の方法で製造される、粒径500nm以下の平板状ヒドロキシアパタイト微粒子が均一に分散した、分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液。
- カルボキシル基を含む水溶性または水分散性の高分子化合物が、(メタ)アクリルアミド系重合体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン系重合体、またはカルボキシメチルセルロースのいずれかである請求項4記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液。
- 水酸化カルシウムとリン酸とを反応させて平板状ヒドロキシアパタイトを製造することを特徴とする、請求項3記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液の製造方法。
- 水酸化カルシウムとリン酸とを反応させてヒドロキシアパタイトを製造することを特徴とする請求項4〜5記載の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液。
- 請求項4、5または7の分散安定性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体分散水溶液から溶媒を乾燥することにより得られる、透明性およびバリア性に優れる高分子化合物/ヒドロキシアパタイト複合体フィルム。
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