JP2004025118A - 透明無機塗膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明無機塗膜を、基材表面に均一に積層形成することのできる透明無機塗膜の形成方法を提供する。
【解決手段】低光沢無機塗膜3の光沢より高い光沢の有機塗膜2を、スレート板1表面に形成し、その後、その有機塗膜2の表面に低光沢無機塗膜3を形成し、その後、そのスレート板1表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう低光沢無機塗膜3を形成し直し、その光沢を均一化させた後、低光沢無機塗膜3の表面に高光沢無機塗膜4を形成し、その後、スレート板1表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測する。
【選択図】 図1
【解決手段】低光沢無機塗膜3の光沢より高い光沢の有機塗膜2を、スレート板1表面に形成し、その後、その有機塗膜2の表面に低光沢無機塗膜3を形成し、その後、そのスレート板1表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう低光沢無機塗膜3を形成し直し、その光沢を均一化させた後、低光沢無機塗膜3の表面に高光沢無機塗膜4を形成し、その後、スレート板1表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材表面に、透明無機塗膜を積層形成することのできる透明無機塗膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物等に用いられるタイルなどの基材には、その基材表面の機能向上を目的として無機塗料を塗布していた。無機塗料を基材の表面に塗布することにより、基材表面には無機塗料の塗膜が形成されることになり、この無機塗膜が基材自体を風雨等から防護する機能を果たしていた。その防護機能を十分に奏させるためには、無機塗膜を基材表面に均一に形成することが必要であった。
【0003】
その形成しようとする無機塗膜が有色であった場合には、その色により、無機塗膜の形成部分と未形成部分とを識別することができるので、ムラなく均一に仕上げることは容易となる。しかし、その形成しようとする無機塗膜が透明であった場合には、色による識別が困難であるため、無機塗膜の形成部分と未形成部分の識別が困難になり、塗り残しや厚塗りが発生することが多かった。しかしながら、透明無機塗膜を用いると、基材の表面自体の色使い、風合い等をそのまま活かすことができるため、透明無機塗膜を形成することが多かった。
【0004】
また、透明無機塗膜を積層することにより、基材表面の機能を更に向上させることも可能になる。その機能向上の一つとして、光触媒を含有させた透明無機塗膜を基材表面に形成することにより、基材表面に防汚機能を持たせるようにするものがある。しかし、この光触媒は、有機材料を劣化させる特性を有するため、有機基材や基材表面に形成した有機塗膜には、接触することがないようにしておく必要がある。そこで、この光触媒を含有する透明無機塗膜と、有機基材や有機塗膜との間には、透明無機塗膜を均一にムラなく形成する必要があると共に、防汚機能を奏させるために、光触媒を含有する透明無機塗膜をも均一に形成することが必要となる。しかしながら、透明無機塗膜を積層形成すること自体が非常に困難であり、均一にムラなく積層形成することは容易ならざることであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、透明な無機塗膜を、基材表面に均一に積層形成することのできる透明無機塗膜の形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る透明無機塗膜の形成方法は、基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る透明無機塗膜の形成方法は、基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より低い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、退色性染料を含有させて有色に着色した第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記退色性染料が有色の状態において、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記第2の透明無機塗膜は、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測するときに、前記基材表面に対する色差を5以上有することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0010】
本発明の請求項1に係る透明無機塗膜の形成方法における一実施の形態を、図1を参照して以下に説明する。本実施の形態における透明無機塗膜の形成方法は、第1の透明無機塗膜としての低光沢無機塗膜3より高い光沢の有機塗膜2を、スレート板1表面に形成し、その後、その有機塗膜2の表面に、低光沢無機塗膜3を形成し、その後、そのスレート板1表面の塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう低光沢無機塗膜3を形成し直して、その光沢を均一化させた後、低光沢無機塗膜3の表面に、第2の透明無機塗膜としての高光沢無機塗膜4を形成し、その後、スレート板1表面の塗膜全体の光沢のバラツキを観測する。
【0011】
以下に、この透明無機塗膜の形成方法の工程を詳述する。まず、スレート板1の表面に、有機塗料を塗布して、低光沢無機塗膜3の光沢より大きな光沢の有機塗膜2を形成する。この有機塗料は、その上層となる透明な無機塗膜に比較して厚く塗布することができるので、塗布ムラが発生しにくい。また、有色に着色してあれば、有機塗料の塗布状態を目視で確認しながら塗布することができ、塗り残しなく均一に塗布することができ好ましい。
【0012】
次に、この有機塗膜2の上からスレート板1の表面に、透明な低光沢無機塗料を塗布して、低光沢無機塗膜3を形成する。この低光沢無機塗膜3は、有機塗膜2を十分に被覆できる程度の厚みに形成すればよいが、好ましくは、その厚みが最低1μm以上になるように形成する。これ以上薄く形成すると、有機塗膜2表面に低光沢無機塗膜3をムラなく形成できていたとしても、低光沢無機塗膜3の全体における光沢が不均一になり易くなって、ムラなく形成できているかどうかの判断が困難になることがあるからである。
【0013】
次に、透明な低光沢無機塗膜3がスレート板1の表面に均一にムラなく形成できたかどうかを、スレート板1表面全体の光沢のバラツキを目視により観測することで行う。その観測を行った結果、スレート板1表面全体の光沢に、バラツキがなければ、低光沢無機塗膜3は、スレート板1の表面に均一にムラなく形成できていることになる。逆に、スレート板1表面全体の光沢に、バラツキがあれば、低光沢無機塗膜3は、その形成状態が不均一でムラがあることになる。これは、低光沢無機塗膜3が形成されていない部分は、その下層である有機塗膜2が露出して光沢が高くなっているためであって、低光沢無機塗膜3が形成されている部分との間で、光沢度に差が発生しているためである。なお、この塗膜の形成部分と未形成部分との光沢差は、十分大きいもので、目視により明瞭に識別することができる程度の大きさのものとしており、塗膜の膜厚の差異によって生じる小さな光沢のバラツキとは、目視で十分区別できるものとしている。
【0014】
光沢が不均一であった場合には、光沢の高い部分に低光沢無機塗料を塗布して、低光沢無機塗膜3を形成し直し、その後、再度目視で確認して光沢が均一になるまで繰り返すことで、低光沢無機塗膜3を均一にムラなく形成することができる。
【0015】
次に、この均一にムラなく形成された透明な低光沢無機塗膜3の表面に、透明な高光沢無機塗料を塗布して、透明な高光沢無機塗膜4を形成する。この高光沢無機塗膜4の形成状態の確認は、上記した低光沢無機塗膜3と同じように、スレート板1表面全体の光沢のバラツキを目視により観測することで行う。高光沢無機塗膜4は、その下層の低光沢無機塗膜3より光沢が大きいので、未形成部分においては、スレート板1表面の光沢度が、その周囲の部分に比較して小さくなっている。
【0016】
もし、スレート板1の表面全体に亘って、その光沢が均一であれば、高光沢無機塗膜4は、スレート板1の表面に均一にムラなく形成されていることになる。逆に、光沢が不均一である場合には、その光沢の小さい部分が未形成部分となるので、その未形成部分に再度、高光沢無機塗料を塗布して、高光沢無機塗膜4を形成し直す。そして、その塗布した高光沢無機塗料の乾燥後に、再度、スレート板1表面全体の光沢を目視観測する。スレート板1の表面全体に亘って、その光沢が均一になるまで、この作業を繰り返すことで、高光沢無機塗料を塗り残しなく塗布することができ、高光沢無機塗膜4を均一に形成することができる。これにより、透明な無機塗膜を、基材表面に積層形成することができる。以上が、本実施の形態における透明無機塗膜の形成方法としている。
【0017】
なお、上記工程で、低光沢無機塗膜3を形成するのに用いた低光沢無機塗料は、耐候性や耐熱性に優れる透明なシリコーン系塗料としており、このシリコーン系塗料に添加するつや消し剤の量を調製することにより、低光沢無機塗膜3の光沢度を調整している。すなわち、シリコーン系塗料に添加するつや消し剤の添加量が多ければ、その添加前に比較して光沢度の低下が大きくなり、逆に添加量が少なければ、添加前に比較して光沢度の低下が小さくなる。このつや消し剤を添加する量としては、有機塗膜2及び高光沢無機塗膜4のいずれの光沢よりも小さくなる程度の量としている。
【0018】
また、高光沢無機塗膜4を形成するのに用いた高光沢無機塗料は、耐候性や耐熱性に優れるシリコーン系塗料としている。この高光沢無機塗膜4は、その光沢度が低光沢無機塗膜3の光沢よりも大きければよいが、もし、低光沢無機塗膜3の光沢に比較して、光沢差が十分にないようであれば、このシリコーン系塗料につや出し剤を添加して、光沢を大きくするようにしてもよい。これは、高光沢無機塗膜4の光沢度と低光沢無機塗膜3の光沢度とは、その差が大きくなるほど、基材表面に形成したとき表面全体の光沢のバラツキの識別がより明瞭になるためである。
【0019】
また、有機塗膜2の形成に用いた有機塗料は、透明なウレタン系塗料としているが、無機塗料との相性が良いものであればどのようなものでもよく、ウレタン系塗料の他に、例えばアクリルシリコン系塗料、フッ素樹脂系塗料等を用いることができる。また、この有機塗料は、透明なまま塗布してもよいが、着色剤を添加して有色に着色してもよい。有色に着色すれば、スレート板1の表面に塗布する際、その塗りムラの確認が容易となり、塗り残しの発生を防止することが可能となり好ましい。着色する色としては、基材表面の色に対して色差の大きいものを用いるようにすると、その既塗布部分と未塗布部分とのコントラストをより大きくすることができるので、塗り残しの発生をより防止することができる。また、有機塗料は、透明な塗料に着色剤を添加するのではなく、初めから有色の塗料を用いるようにしてもよい。
【0020】
また、基材としてはスレート板1を用いたが、このスレート板1の他に、タイル、金属、プラスチックなど多種多様なものを任意に用いることができる。また、基材の表面に有機塗料を塗布する前に、プライマー又はプライマーサフェーサー(プラサフ)を施しておくことも好ましい。このプライマー又はプラサフは、基材表面が凸凹状態であるときには、その凸凹を滑らかにして有機塗料を塗り易くしたり、金属系基材等でその表面が錆びる可能性があるときには、錆びを防ぐ、という効果を奏する下地塗料として用いられている。
【0021】
また、高光沢無機塗料、低光沢無機塗料のそれぞれに添加するつや消し剤の重量比率としては、基材表面に塗布されて塗膜として形成したときに、それぞれの下層に位置する塗膜の光沢度との差が20以上になるように調製するのが好ましい。下層の塗膜に対する光沢度の差が20以上であれば、日射や天候、施工場所、有機塗膜2の色、スレート板1の形状など塗布環境によって光沢の見え方が変化したとしても、透明無機塗膜を形成した部分と、形成していない部分とを、その光沢の差により適確に識別することができる。光沢度の差が30以上であれば、より一層明瞭に識別でき、なお好ましい。なお、下層に位置する塗膜というのは、高光沢無機塗膜4であれば、その下層の塗膜は低光沢無機塗膜3、また、低光沢無機塗膜3であれば、その下層の塗膜は有機塗膜2を指すこととしている。
【0022】
また、塗膜の光沢度は、その観測しようとする塗膜表面に対して、20°、60°、85°のいずれの入射角(反射角)における値でもよいが、光沢の差を目視で観測する場合には、塗膜表面に対して60°の角をなすように見たときの光沢度を採用するのが好ましい。これは、光沢度の差は、入射角が大きいほうがより確認し易くなるためであり、その上限は特に設定されるものではないが、入射角70°程度が実用上の上限である。また、上記の20°、60°、85°以外のあらゆる入射角での光沢度を採用してもよい。
【0023】
また、光沢の観測は、目視により行うようにしていたが、光沢度を数値的に計測できる光沢計(グロスメーター)を使用して観測するようにしてもよい。
【0024】
また、別の実施形態として、透明な高光沢無機塗膜4に、光触媒を含有させるようにして、基材の表面に防汚機能を持たせるようにしてもよい。光触媒としては、光触媒作用を奏するものであればどのようなものでもよいが、入手の容易さ、安全性、無機塗料への分散性等を考慮すると、酸化チタンを用いるのが好ましい。この場合にも、基材表面に形成した有機塗膜2と、光触媒を含有させた高光沢無機塗膜4との間に、ガード層となる透明な低光沢無機塗膜3をムラなく均一に形成しているので、光触媒が有機塗膜2を劣化させることなく、安定した防汚機能を奏させることが可能となる。
【0025】
以上のように、スレート板1表面に、透明な無機塗料を塗布して2層の透明無機塗膜を積層させるときに、塗膜の光沢を相互に異ならせたので、それぞれの塗膜の形成状態を確認しながら形成でき、均一にムラなく透明無機塗膜を2層積層形成することが可能となる。
【0026】
本発明の請求項2及び請求項3に係る透明無機塗膜の形成方法における一実施の形態について、図2を参照して、以下に説明する。本実施の形態では、第1の透明無機塗膜としての高光沢無機塗膜6の光沢より低い光沢の有機塗膜5を、基材としてのスレート板1表面に形成し、その後、その有機塗膜5の表面に、高光沢無機塗膜6を形成し、その後、スレート板1表面の塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう、高光沢無機塗膜6を形成し直し、その光沢を均一化させた後、高光沢無機塗膜6の表面に、退色性染料を含有させて有色に着色した第2の透明無機塗膜としての高光沢退色無機塗膜7を形成し、その後、その退色性染料が有色の状態において、スレート板1表面の塗膜全体の色のバラツキを観察する。なお、上述した本発明の請求項1に係る透明無機塗膜の形成方法における一実施の形態と同じものには、同じ符号を付している。
【0027】
以下に、この形成方法の工程を詳述する。まず、基材としてのスレート板1の表面に、中塗り塗装を行って、スレート板1の表面の凹凸を滑らかにする。次に、その中塗り塗装の表面に有機塗料を塗布して、低光沢な有機塗膜5を形成する。
【0028】
次に、この有機塗膜5の表面に、高光沢無機塗料を塗布して、透明な高光沢無機塗膜6を形成する。高光沢無機塗膜6の形成後、スレート板1表面全体の光沢のバラツキを目視により観測する。
【0029】
その観測を行った結果、スレート板1表面全体の光沢に、バラツキがなければ、高光沢無機塗膜6は、スレート板1の表面に均一にムラなく形成できていることになる。逆に、スレート板1表面全体の光沢に、バラツキがあれば、高光沢無機塗膜6は、その形成状態が不均一でムラがあることになる。これは、高光沢無機塗膜6が形成されていない部分は、その下層である有機塗膜5が露出して光沢が低くなっているためであって、高光沢無機塗膜6が形成されている部分との間で、光沢度に差が発生しているためである。なお、この塗膜の形成部分と未形成部分との光沢差は、十分大きいもので、目視により明瞭に識別することができる程度の大きさのものとしており、塗膜の膜厚の差異によって生じる小さな光沢のバラツキとは、目視で十分区別できるものとしている。
【0030】
もし、スレート板1表面の光沢が、その全体に亘って均一であれば、高光沢無機塗膜6は均一に形成されていることになる。しかし、スレート板1表面全体の光沢の一部にムラがあれば、そのムラのある部分において、高光沢無機塗膜6の未形成部分があることになる。この場合には、再度、高光沢無機塗料を塗布し直し、スレート板1表面で高光沢無機塗膜6が均一になるよう形成し直す。
【0031】
高光沢無機塗膜6を均一に形成できていることが確認できたら、高光沢無機塗膜6の表面に、高光沢退色無機塗料を塗布して高光沢退色無機塗膜7を形成する。この高光沢退色無機塗料は、退色性染料により有色に着色しているので、その塗布状態を確認しながら塗り残しなく均一に塗布することができる。その塗布した高光沢退色無機塗料を乾燥させた後、スレート板1表面に高光沢退色無機塗膜7が均一に形成できているかを、スレート板1表面の色ムラを目視により観測することで行なう。
【0032】
もし、スレート板1表面が、その全体に亘って退色性染料の色で均一であれば、高光沢退色無機塗膜7は、均一に形成できていることになる。逆に、スレート板1表面の一部に色ムラがあれば、その部分において、下地の有機塗膜5の色が、下層の高光沢無機塗膜6を介して見えていることになるので、その部分が未形成部分となる。そこで、その未形成部分に、高光沢退色無機塗料を塗布して、高光沢退色無機塗膜7を形成し直してから、再度、色ムラの有無の確認を行う。このようにして、スレート板1表面の色が、その全体に亘って均一になるまで繰り返すことで、高光沢退色無機塗料をスレート板1表面に塗り残しなく塗布することができ、高光沢退色無機塗膜7を、スレート板1表面に均一にムラなく形成することができる。
【0033】
なお、退色性染料を含有させて有色に着色した高光沢退色無機塗膜7は、その塗布からの時間の経過と共に、退色して色が消えて透明になっていくので、最終的には、スレート板1表面には、透明無機塗膜が積層形成できている状態となる。以上が、本実施の形態における透明無機塗膜の形成方法としている。
【0034】
なお、上記工程で、高光沢無機塗膜6を形成するのに用いた高光沢無機塗料は、耐候性や耐熱性に優れる透明なシリコーン系塗料としている。その光沢度の調整としては、透明なシリコーン系塗料に、つや出し剤を添加することで行っている。つや出し剤の添加量を多くするほど、シリコーン系塗料は、その添加前に比較して光沢が大きくなる。
【0035】
また、高光沢退色無機塗膜7を形成するのに用いた高光沢退色無機塗料は、耐候性や耐熱性に優れる透明なシリコーン系塗料に、退色性染料を含有させて有色に着色したものとしている。この含有させる退色性染料は、耐候性が低く、太陽光の照射を受けたり、高温になったりすると、その色が消えて透明になる特性を有する染料としている。この退色性染料としては、耐候性を有するものであればどのようなものでもよいが、その中でも塩基性染料が、その色調の鮮明さ、着色力の強さ、耐候性の低さの点において優れており、好ましい。例えば、日光堅牢度1〜7の色素としては、次のようなものがあり、これらの色素の中から任意のものを選択して用いることができる。
日光堅牢度1:Basic Blue BC
日光堅牢度2:Rhodamine B
日光堅牢度3:NP Blue 613
日光堅牢度4:NP Blue BOS
日光堅牢度5:NP Blue GN
日光堅牢度6:Oil violet 1
日光堅牢度7:NP Blue 1607
また、高光沢退色無機塗膜7は、その膜厚が20μm以下になるように形成することが好ましい。これは、高光沢退色無機塗膜7は、その膜厚が厚いと、含有している退色性染料の色が抜けにくくことがあるためであり、より好ましくは、膜厚10μm以下である。また、この高光沢退色無機塗膜7の膜厚の下限は特に設定されるものではないが、基材表面を保護する塗膜としての機能を発揮させるためにも、目視による形成状態の観測を容易にするためにも、0.1μm以上の膜厚を有するように高光沢退色無機塗膜を形成するのが好ましい。
【0036】
また、有機塗膜5を形成するのに用いた有機塗料は、透明なウレタン系塗料としているが、無機塗料との相性が良いものであればどのようなものでもよく、ウレタン系塗料の他に、例えばアクリルシリコン系塗料、フッ素樹脂系塗料等を用いることができる。また、この有機塗料は、透明なまま塗布してもよいが、着色剤を添加して、有色に着色してから塗布してもよい。有色に着色すれば、スレート板1表面に有機塗料を塗布する際、その塗りムラの確認が容易となり、塗り残しの発生を防止することができ、好ましい。着色する色としては、基材表面の色としての有機塗膜5の色に対して色差の大きいものを用いるようにすると、その既塗布部分と未塗布部分とのコントラストがより大きくなるので、塗り残しの発生をより一層防止することが可能となる。また、この有機塗料には、つや消し剤を添加しており、有機塗膜5の光沢が、高光沢無機塗膜6の光沢より小さくなるように、つや消し剤の添加量を調製してある。なお、有機塗料を有色にする際、透明な塗料に着色剤を添加して着色していたが、初めから有色の有機塗料を用いるようにしてもよい。
【0037】
また、退色性染料の色としては、基材表面の色としての有機塗膜5の色に対して色差の大きいものを用いるようにすると、高光沢退色無機塗膜7の形成部分と未形成部分との色のコントラストがより大きくなるので、さらに塗り残しの発生を防止することが可能となり、好ましい。その退色性染料の色としては例えば、下地としての有機塗膜5が暗色系の色(黒色等)であれば、退色性染料の色を明色系の色(白色等)にすればよい。
【0038】
上記のように、退色性染料を含有させて有色に着色した高光沢退色無機塗膜7を、高光沢無機塗膜6の表面に形成するようにしたので、その高光沢退色無機塗膜7の形成部分と未形成部分との識別を、スレート板1表面に形成された塗膜の色のバラツキを目視により観測することで容易に行え、未形成部分があった場合には、その未形成部分に高光沢退色無機塗膜7を形成し直すことにより、スレート板1表面に透明無機塗膜を均一に積層形成することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限らず、種々の形態で実施することができる。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
基材としてスレート板を用い、そのスレート板表面に下塗り塗料として「ニッペ浸透性シーラー」(日本ペイント社製)を、150g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生した。次に、つや消し剤を添加して光沢を調整した有機塗料「マイティラックG−II」(日本ペイント社製アクリルウレタン塗料)を、250g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生して有機塗膜を形成した。この後、この有機塗膜上に、シリコーン系透明無機塗料「フレッセラNA100」(松下電工社製)を、30g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生して、透明な低光沢無機塗膜を形成した。
【0041】
ここで、シリコーン系透明無機塗料「フレッセラNA100」(松下電工社製)へのつや消し剤の添加量を、表1に示すように設定して調製した透明な低光沢無機塗料を用いて低光沢無機塗膜を形成したものを、実施例1−1、1−2、1−3とした。またつや消し剤を添加しないシリコーン系透明無機塗料「フレッセラNA100」(松下電工社製)を用いて透明無機塗膜を形成したものを比較例1とした。
【0042】
そして実施例1−1、1−2、1−3、比較例1について、有機塗膜と、低光沢無機塗膜と、つや消し剤無しの透明無機塗膜のそれぞれの光沢値を、光沢計(入射角60°)で測定し、その結果も表1に示した。また、透明な低光沢無機塗料とつや消し剤無しの透明無機塗料とを、スレート板表面の一部に塗り残しが発生するように意図的に塗布したとき、スレート板の表面全体の外観を目視で観察して、スレート板表面に部分的な光沢の差異が発生していることが識別できるかどうかを評価した。光沢差のあることがよく分かるレベルを「○」、分かりにくいレベルを「×」で、表1の「外観評価」の欄に示した。
【0043】
次に、透明な低光沢無機塗膜又はつや消し剤無しの透明無機塗膜を形成したスレート板の表面に、シリコーン系透明無機塗料「フレッセラPS1000」(松下電工社製)を塗布し、24時間養生して、透明な高光沢無機塗膜を形成した。その高光沢無機塗膜を形成したスレート板表面の光沢値を測定し、表1に示した。また、スレート板表面の一部に塗り残しが発生するように意図的に高光沢無機塗料を塗布したときに、スレート板の表面全体で光沢差が発生していることが、目視によりよく分かるレベルを「○」、分かりにくいレベルを「×」で、表1の「外観評価」の欄に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
この表1の最下欄の「高光沢無機塗膜と低光沢無機塗膜との光沢差」にも示すように、光沢の異なる透明無機塗膜を積層させて形成するようにすることで、その形成部分と未形成部分とを、光沢の差異により容易に識別することができるので、透明な無機塗膜を均一に積層形成することが可能となる。
【0046】
(実施例2)
基材としてスレート板を用い、そのスレート板表面に下塗り塗料として「ニッペ浸透性シーラー」(日本ペイント社製)を、150g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生した。次に、有機塗料「マイティラックG−II」(日本ペイント社製アクリルウレタン塗料)を、250g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生して有機塗膜を形成した。この後、この有機塗膜の上に、つや消し剤により光沢を調整したシリコーン系透明無機塗料「フレッセラNA100」(松下電工社製)を、30g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生して、透明な高光沢無機塗膜を形成した。この後、シリコーン系透明無機塗料「フレッセラPS1000」(松下電工社製)100質量部に、退色性の塩基性染料「NP BLUE GN」(保土ヶ谷化学工業社製)を、0.005質量部配合した高光沢退色無機塗料を塗布し、24時間養生して高光沢退色無機塗膜を形成した。
【0047】
ここで、高光沢退色無機塗膜を膜厚0.1μmに形成したものを実施例2−1、膜厚0.2μmに形成したものを実施例2−2、膜厚0.4μmに形成したものを実施例2−3とし、退色性染料を配合しないシリコーン系透明無機塗料「フレッセラPS1000」を用いて膜厚0.2μmの透明無機塗膜を形成したものを比較例2とした。
【0048】
そして実施例2−1、2−2、2−3、比較例2について、高光沢退色無機塗料をスレート板表面に塗布する際に、その一部に塗り残しが発生するように意図的に塗布したときに、そのスレート板表面に部分的な色ムラが発生していることが分かるかどうかを、目視により評価した。色ムラがあることがよく分かるレベルを「○」、分かりにくいレベルを「×」で、表2の「外観評価」の欄に示した。また、実施例2−1、2−2、2−3について、高光沢退色無機塗膜の形成後に対する、その形成前の色差(ΔE)を、表2に示した。また実施例2−1、2−2、2−3について、1ヶ月後の高光沢退色無機塗膜の脱色レベルを目視により観察した。高光沢退色無機塗膜が透明無色であるものを「○」、有色であるものを「×」として評価し、表2の「1ヶ月後の外観」の欄に示した。
【0049】
【表2】
【0050】
この表2の「色差(ΔE)」にも示すように、透明無機塗膜に退色性染料を含有させて有色に着色したことにより、その形成部分と未形成部分とを容易に識別することができ、透明無機塗膜を均一に積層形成することが可能となる。
【0051】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に記載の透明無機塗膜の形成方法は、基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測するので、透明無機塗膜を、基材表面に均一に積層形成することが可能になる、という効果を奏する。
【0052】
本発明の請求項2に記載の透明無機塗膜の形成方法は、基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より低い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、退色性染料を含有させて有色に着色した第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記退色性染料が有色の状態において、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測するので、透明無機塗膜を、基材表面に均一に積層形成することが可能になる、という効果を奏する。
【0053】
本発明の請求項3に記載の2層透明透明無機塗膜の形成方法によれば、上記の効果に加えて、前記第2の透明無機塗膜は、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測するときに、前記基材表面に対する色差を5以上有するので、第2の透明無機塗膜を形成した部分と形成していない部分とをより明瞭に識別することができ、より均一に透明無機塗膜を、基材表面に積層形成することが可能になる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の請求項1に係る透明無機塗膜の形成方法の一実施の形態を示す図である
【図2】本発明の請求項2及び請求項3に係る透明無機塗膜の形成方法の一実施の形態を示す図である
【符号の説明】
1 スレート板
2 有機塗膜
3 低光沢無機塗膜
4 高光沢無機塗膜
5 有機塗膜
6 高光沢無機塗膜
7 高光沢退色無機塗膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材表面に、透明無機塗膜を積層形成することのできる透明無機塗膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物等に用いられるタイルなどの基材には、その基材表面の機能向上を目的として無機塗料を塗布していた。無機塗料を基材の表面に塗布することにより、基材表面には無機塗料の塗膜が形成されることになり、この無機塗膜が基材自体を風雨等から防護する機能を果たしていた。その防護機能を十分に奏させるためには、無機塗膜を基材表面に均一に形成することが必要であった。
【0003】
その形成しようとする無機塗膜が有色であった場合には、その色により、無機塗膜の形成部分と未形成部分とを識別することができるので、ムラなく均一に仕上げることは容易となる。しかし、その形成しようとする無機塗膜が透明であった場合には、色による識別が困難であるため、無機塗膜の形成部分と未形成部分の識別が困難になり、塗り残しや厚塗りが発生することが多かった。しかしながら、透明無機塗膜を用いると、基材の表面自体の色使い、風合い等をそのまま活かすことができるため、透明無機塗膜を形成することが多かった。
【0004】
また、透明無機塗膜を積層することにより、基材表面の機能を更に向上させることも可能になる。その機能向上の一つとして、光触媒を含有させた透明無機塗膜を基材表面に形成することにより、基材表面に防汚機能を持たせるようにするものがある。しかし、この光触媒は、有機材料を劣化させる特性を有するため、有機基材や基材表面に形成した有機塗膜には、接触することがないようにしておく必要がある。そこで、この光触媒を含有する透明無機塗膜と、有機基材や有機塗膜との間には、透明無機塗膜を均一にムラなく形成する必要があると共に、防汚機能を奏させるために、光触媒を含有する透明無機塗膜をも均一に形成することが必要となる。しかしながら、透明無機塗膜を積層形成すること自体が非常に困難であり、均一にムラなく積層形成することは容易ならざることであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、透明な無機塗膜を、基材表面に均一に積層形成することのできる透明無機塗膜の形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る透明無機塗膜の形成方法は、基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る透明無機塗膜の形成方法は、基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より低い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、退色性染料を含有させて有色に着色した第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記退色性染料が有色の状態において、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記第2の透明無機塗膜は、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測するときに、前記基材表面に対する色差を5以上有することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0010】
本発明の請求項1に係る透明無機塗膜の形成方法における一実施の形態を、図1を参照して以下に説明する。本実施の形態における透明無機塗膜の形成方法は、第1の透明無機塗膜としての低光沢無機塗膜3より高い光沢の有機塗膜2を、スレート板1表面に形成し、その後、その有機塗膜2の表面に、低光沢無機塗膜3を形成し、その後、そのスレート板1表面の塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう低光沢無機塗膜3を形成し直して、その光沢を均一化させた後、低光沢無機塗膜3の表面に、第2の透明無機塗膜としての高光沢無機塗膜4を形成し、その後、スレート板1表面の塗膜全体の光沢のバラツキを観測する。
【0011】
以下に、この透明無機塗膜の形成方法の工程を詳述する。まず、スレート板1の表面に、有機塗料を塗布して、低光沢無機塗膜3の光沢より大きな光沢の有機塗膜2を形成する。この有機塗料は、その上層となる透明な無機塗膜に比較して厚く塗布することができるので、塗布ムラが発生しにくい。また、有色に着色してあれば、有機塗料の塗布状態を目視で確認しながら塗布することができ、塗り残しなく均一に塗布することができ好ましい。
【0012】
次に、この有機塗膜2の上からスレート板1の表面に、透明な低光沢無機塗料を塗布して、低光沢無機塗膜3を形成する。この低光沢無機塗膜3は、有機塗膜2を十分に被覆できる程度の厚みに形成すればよいが、好ましくは、その厚みが最低1μm以上になるように形成する。これ以上薄く形成すると、有機塗膜2表面に低光沢無機塗膜3をムラなく形成できていたとしても、低光沢無機塗膜3の全体における光沢が不均一になり易くなって、ムラなく形成できているかどうかの判断が困難になることがあるからである。
【0013】
次に、透明な低光沢無機塗膜3がスレート板1の表面に均一にムラなく形成できたかどうかを、スレート板1表面全体の光沢のバラツキを目視により観測することで行う。その観測を行った結果、スレート板1表面全体の光沢に、バラツキがなければ、低光沢無機塗膜3は、スレート板1の表面に均一にムラなく形成できていることになる。逆に、スレート板1表面全体の光沢に、バラツキがあれば、低光沢無機塗膜3は、その形成状態が不均一でムラがあることになる。これは、低光沢無機塗膜3が形成されていない部分は、その下層である有機塗膜2が露出して光沢が高くなっているためであって、低光沢無機塗膜3が形成されている部分との間で、光沢度に差が発生しているためである。なお、この塗膜の形成部分と未形成部分との光沢差は、十分大きいもので、目視により明瞭に識別することができる程度の大きさのものとしており、塗膜の膜厚の差異によって生じる小さな光沢のバラツキとは、目視で十分区別できるものとしている。
【0014】
光沢が不均一であった場合には、光沢の高い部分に低光沢無機塗料を塗布して、低光沢無機塗膜3を形成し直し、その後、再度目視で確認して光沢が均一になるまで繰り返すことで、低光沢無機塗膜3を均一にムラなく形成することができる。
【0015】
次に、この均一にムラなく形成された透明な低光沢無機塗膜3の表面に、透明な高光沢無機塗料を塗布して、透明な高光沢無機塗膜4を形成する。この高光沢無機塗膜4の形成状態の確認は、上記した低光沢無機塗膜3と同じように、スレート板1表面全体の光沢のバラツキを目視により観測することで行う。高光沢無機塗膜4は、その下層の低光沢無機塗膜3より光沢が大きいので、未形成部分においては、スレート板1表面の光沢度が、その周囲の部分に比較して小さくなっている。
【0016】
もし、スレート板1の表面全体に亘って、その光沢が均一であれば、高光沢無機塗膜4は、スレート板1の表面に均一にムラなく形成されていることになる。逆に、光沢が不均一である場合には、その光沢の小さい部分が未形成部分となるので、その未形成部分に再度、高光沢無機塗料を塗布して、高光沢無機塗膜4を形成し直す。そして、その塗布した高光沢無機塗料の乾燥後に、再度、スレート板1表面全体の光沢を目視観測する。スレート板1の表面全体に亘って、その光沢が均一になるまで、この作業を繰り返すことで、高光沢無機塗料を塗り残しなく塗布することができ、高光沢無機塗膜4を均一に形成することができる。これにより、透明な無機塗膜を、基材表面に積層形成することができる。以上が、本実施の形態における透明無機塗膜の形成方法としている。
【0017】
なお、上記工程で、低光沢無機塗膜3を形成するのに用いた低光沢無機塗料は、耐候性や耐熱性に優れる透明なシリコーン系塗料としており、このシリコーン系塗料に添加するつや消し剤の量を調製することにより、低光沢無機塗膜3の光沢度を調整している。すなわち、シリコーン系塗料に添加するつや消し剤の添加量が多ければ、その添加前に比較して光沢度の低下が大きくなり、逆に添加量が少なければ、添加前に比較して光沢度の低下が小さくなる。このつや消し剤を添加する量としては、有機塗膜2及び高光沢無機塗膜4のいずれの光沢よりも小さくなる程度の量としている。
【0018】
また、高光沢無機塗膜4を形成するのに用いた高光沢無機塗料は、耐候性や耐熱性に優れるシリコーン系塗料としている。この高光沢無機塗膜4は、その光沢度が低光沢無機塗膜3の光沢よりも大きければよいが、もし、低光沢無機塗膜3の光沢に比較して、光沢差が十分にないようであれば、このシリコーン系塗料につや出し剤を添加して、光沢を大きくするようにしてもよい。これは、高光沢無機塗膜4の光沢度と低光沢無機塗膜3の光沢度とは、その差が大きくなるほど、基材表面に形成したとき表面全体の光沢のバラツキの識別がより明瞭になるためである。
【0019】
また、有機塗膜2の形成に用いた有機塗料は、透明なウレタン系塗料としているが、無機塗料との相性が良いものであればどのようなものでもよく、ウレタン系塗料の他に、例えばアクリルシリコン系塗料、フッ素樹脂系塗料等を用いることができる。また、この有機塗料は、透明なまま塗布してもよいが、着色剤を添加して有色に着色してもよい。有色に着色すれば、スレート板1の表面に塗布する際、その塗りムラの確認が容易となり、塗り残しの発生を防止することが可能となり好ましい。着色する色としては、基材表面の色に対して色差の大きいものを用いるようにすると、その既塗布部分と未塗布部分とのコントラストをより大きくすることができるので、塗り残しの発生をより防止することができる。また、有機塗料は、透明な塗料に着色剤を添加するのではなく、初めから有色の塗料を用いるようにしてもよい。
【0020】
また、基材としてはスレート板1を用いたが、このスレート板1の他に、タイル、金属、プラスチックなど多種多様なものを任意に用いることができる。また、基材の表面に有機塗料を塗布する前に、プライマー又はプライマーサフェーサー(プラサフ)を施しておくことも好ましい。このプライマー又はプラサフは、基材表面が凸凹状態であるときには、その凸凹を滑らかにして有機塗料を塗り易くしたり、金属系基材等でその表面が錆びる可能性があるときには、錆びを防ぐ、という効果を奏する下地塗料として用いられている。
【0021】
また、高光沢無機塗料、低光沢無機塗料のそれぞれに添加するつや消し剤の重量比率としては、基材表面に塗布されて塗膜として形成したときに、それぞれの下層に位置する塗膜の光沢度との差が20以上になるように調製するのが好ましい。下層の塗膜に対する光沢度の差が20以上であれば、日射や天候、施工場所、有機塗膜2の色、スレート板1の形状など塗布環境によって光沢の見え方が変化したとしても、透明無機塗膜を形成した部分と、形成していない部分とを、その光沢の差により適確に識別することができる。光沢度の差が30以上であれば、より一層明瞭に識別でき、なお好ましい。なお、下層に位置する塗膜というのは、高光沢無機塗膜4であれば、その下層の塗膜は低光沢無機塗膜3、また、低光沢無機塗膜3であれば、その下層の塗膜は有機塗膜2を指すこととしている。
【0022】
また、塗膜の光沢度は、その観測しようとする塗膜表面に対して、20°、60°、85°のいずれの入射角(反射角)における値でもよいが、光沢の差を目視で観測する場合には、塗膜表面に対して60°の角をなすように見たときの光沢度を採用するのが好ましい。これは、光沢度の差は、入射角が大きいほうがより確認し易くなるためであり、その上限は特に設定されるものではないが、入射角70°程度が実用上の上限である。また、上記の20°、60°、85°以外のあらゆる入射角での光沢度を採用してもよい。
【0023】
また、光沢の観測は、目視により行うようにしていたが、光沢度を数値的に計測できる光沢計(グロスメーター)を使用して観測するようにしてもよい。
【0024】
また、別の実施形態として、透明な高光沢無機塗膜4に、光触媒を含有させるようにして、基材の表面に防汚機能を持たせるようにしてもよい。光触媒としては、光触媒作用を奏するものであればどのようなものでもよいが、入手の容易さ、安全性、無機塗料への分散性等を考慮すると、酸化チタンを用いるのが好ましい。この場合にも、基材表面に形成した有機塗膜2と、光触媒を含有させた高光沢無機塗膜4との間に、ガード層となる透明な低光沢無機塗膜3をムラなく均一に形成しているので、光触媒が有機塗膜2を劣化させることなく、安定した防汚機能を奏させることが可能となる。
【0025】
以上のように、スレート板1表面に、透明な無機塗料を塗布して2層の透明無機塗膜を積層させるときに、塗膜の光沢を相互に異ならせたので、それぞれの塗膜の形成状態を確認しながら形成でき、均一にムラなく透明無機塗膜を2層積層形成することが可能となる。
【0026】
本発明の請求項2及び請求項3に係る透明無機塗膜の形成方法における一実施の形態について、図2を参照して、以下に説明する。本実施の形態では、第1の透明無機塗膜としての高光沢無機塗膜6の光沢より低い光沢の有機塗膜5を、基材としてのスレート板1表面に形成し、その後、その有機塗膜5の表面に、高光沢無機塗膜6を形成し、その後、スレート板1表面の塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう、高光沢無機塗膜6を形成し直し、その光沢を均一化させた後、高光沢無機塗膜6の表面に、退色性染料を含有させて有色に着色した第2の透明無機塗膜としての高光沢退色無機塗膜7を形成し、その後、その退色性染料が有色の状態において、スレート板1表面の塗膜全体の色のバラツキを観察する。なお、上述した本発明の請求項1に係る透明無機塗膜の形成方法における一実施の形態と同じものには、同じ符号を付している。
【0027】
以下に、この形成方法の工程を詳述する。まず、基材としてのスレート板1の表面に、中塗り塗装を行って、スレート板1の表面の凹凸を滑らかにする。次に、その中塗り塗装の表面に有機塗料を塗布して、低光沢な有機塗膜5を形成する。
【0028】
次に、この有機塗膜5の表面に、高光沢無機塗料を塗布して、透明な高光沢無機塗膜6を形成する。高光沢無機塗膜6の形成後、スレート板1表面全体の光沢のバラツキを目視により観測する。
【0029】
その観測を行った結果、スレート板1表面全体の光沢に、バラツキがなければ、高光沢無機塗膜6は、スレート板1の表面に均一にムラなく形成できていることになる。逆に、スレート板1表面全体の光沢に、バラツキがあれば、高光沢無機塗膜6は、その形成状態が不均一でムラがあることになる。これは、高光沢無機塗膜6が形成されていない部分は、その下層である有機塗膜5が露出して光沢が低くなっているためであって、高光沢無機塗膜6が形成されている部分との間で、光沢度に差が発生しているためである。なお、この塗膜の形成部分と未形成部分との光沢差は、十分大きいもので、目視により明瞭に識別することができる程度の大きさのものとしており、塗膜の膜厚の差異によって生じる小さな光沢のバラツキとは、目視で十分区別できるものとしている。
【0030】
もし、スレート板1表面の光沢が、その全体に亘って均一であれば、高光沢無機塗膜6は均一に形成されていることになる。しかし、スレート板1表面全体の光沢の一部にムラがあれば、そのムラのある部分において、高光沢無機塗膜6の未形成部分があることになる。この場合には、再度、高光沢無機塗料を塗布し直し、スレート板1表面で高光沢無機塗膜6が均一になるよう形成し直す。
【0031】
高光沢無機塗膜6を均一に形成できていることが確認できたら、高光沢無機塗膜6の表面に、高光沢退色無機塗料を塗布して高光沢退色無機塗膜7を形成する。この高光沢退色無機塗料は、退色性染料により有色に着色しているので、その塗布状態を確認しながら塗り残しなく均一に塗布することができる。その塗布した高光沢退色無機塗料を乾燥させた後、スレート板1表面に高光沢退色無機塗膜7が均一に形成できているかを、スレート板1表面の色ムラを目視により観測することで行なう。
【0032】
もし、スレート板1表面が、その全体に亘って退色性染料の色で均一であれば、高光沢退色無機塗膜7は、均一に形成できていることになる。逆に、スレート板1表面の一部に色ムラがあれば、その部分において、下地の有機塗膜5の色が、下層の高光沢無機塗膜6を介して見えていることになるので、その部分が未形成部分となる。そこで、その未形成部分に、高光沢退色無機塗料を塗布して、高光沢退色無機塗膜7を形成し直してから、再度、色ムラの有無の確認を行う。このようにして、スレート板1表面の色が、その全体に亘って均一になるまで繰り返すことで、高光沢退色無機塗料をスレート板1表面に塗り残しなく塗布することができ、高光沢退色無機塗膜7を、スレート板1表面に均一にムラなく形成することができる。
【0033】
なお、退色性染料を含有させて有色に着色した高光沢退色無機塗膜7は、その塗布からの時間の経過と共に、退色して色が消えて透明になっていくので、最終的には、スレート板1表面には、透明無機塗膜が積層形成できている状態となる。以上が、本実施の形態における透明無機塗膜の形成方法としている。
【0034】
なお、上記工程で、高光沢無機塗膜6を形成するのに用いた高光沢無機塗料は、耐候性や耐熱性に優れる透明なシリコーン系塗料としている。その光沢度の調整としては、透明なシリコーン系塗料に、つや出し剤を添加することで行っている。つや出し剤の添加量を多くするほど、シリコーン系塗料は、その添加前に比較して光沢が大きくなる。
【0035】
また、高光沢退色無機塗膜7を形成するのに用いた高光沢退色無機塗料は、耐候性や耐熱性に優れる透明なシリコーン系塗料に、退色性染料を含有させて有色に着色したものとしている。この含有させる退色性染料は、耐候性が低く、太陽光の照射を受けたり、高温になったりすると、その色が消えて透明になる特性を有する染料としている。この退色性染料としては、耐候性を有するものであればどのようなものでもよいが、その中でも塩基性染料が、その色調の鮮明さ、着色力の強さ、耐候性の低さの点において優れており、好ましい。例えば、日光堅牢度1〜7の色素としては、次のようなものがあり、これらの色素の中から任意のものを選択して用いることができる。
日光堅牢度1:Basic Blue BC
日光堅牢度2:Rhodamine B
日光堅牢度3:NP Blue 613
日光堅牢度4:NP Blue BOS
日光堅牢度5:NP Blue GN
日光堅牢度6:Oil violet 1
日光堅牢度7:NP Blue 1607
また、高光沢退色無機塗膜7は、その膜厚が20μm以下になるように形成することが好ましい。これは、高光沢退色無機塗膜7は、その膜厚が厚いと、含有している退色性染料の色が抜けにくくことがあるためであり、より好ましくは、膜厚10μm以下である。また、この高光沢退色無機塗膜7の膜厚の下限は特に設定されるものではないが、基材表面を保護する塗膜としての機能を発揮させるためにも、目視による形成状態の観測を容易にするためにも、0.1μm以上の膜厚を有するように高光沢退色無機塗膜を形成するのが好ましい。
【0036】
また、有機塗膜5を形成するのに用いた有機塗料は、透明なウレタン系塗料としているが、無機塗料との相性が良いものであればどのようなものでもよく、ウレタン系塗料の他に、例えばアクリルシリコン系塗料、フッ素樹脂系塗料等を用いることができる。また、この有機塗料は、透明なまま塗布してもよいが、着色剤を添加して、有色に着色してから塗布してもよい。有色に着色すれば、スレート板1表面に有機塗料を塗布する際、その塗りムラの確認が容易となり、塗り残しの発生を防止することができ、好ましい。着色する色としては、基材表面の色としての有機塗膜5の色に対して色差の大きいものを用いるようにすると、その既塗布部分と未塗布部分とのコントラストがより大きくなるので、塗り残しの発生をより一層防止することが可能となる。また、この有機塗料には、つや消し剤を添加しており、有機塗膜5の光沢が、高光沢無機塗膜6の光沢より小さくなるように、つや消し剤の添加量を調製してある。なお、有機塗料を有色にする際、透明な塗料に着色剤を添加して着色していたが、初めから有色の有機塗料を用いるようにしてもよい。
【0037】
また、退色性染料の色としては、基材表面の色としての有機塗膜5の色に対して色差の大きいものを用いるようにすると、高光沢退色無機塗膜7の形成部分と未形成部分との色のコントラストがより大きくなるので、さらに塗り残しの発生を防止することが可能となり、好ましい。その退色性染料の色としては例えば、下地としての有機塗膜5が暗色系の色(黒色等)であれば、退色性染料の色を明色系の色(白色等)にすればよい。
【0038】
上記のように、退色性染料を含有させて有色に着色した高光沢退色無機塗膜7を、高光沢無機塗膜6の表面に形成するようにしたので、その高光沢退色無機塗膜7の形成部分と未形成部分との識別を、スレート板1表面に形成された塗膜の色のバラツキを目視により観測することで容易に行え、未形成部分があった場合には、その未形成部分に高光沢退色無機塗膜7を形成し直すことにより、スレート板1表面に透明無機塗膜を均一に積層形成することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限らず、種々の形態で実施することができる。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
基材としてスレート板を用い、そのスレート板表面に下塗り塗料として「ニッペ浸透性シーラー」(日本ペイント社製)を、150g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生した。次に、つや消し剤を添加して光沢を調整した有機塗料「マイティラックG−II」(日本ペイント社製アクリルウレタン塗料)を、250g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生して有機塗膜を形成した。この後、この有機塗膜上に、シリコーン系透明無機塗料「フレッセラNA100」(松下電工社製)を、30g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生して、透明な低光沢無機塗膜を形成した。
【0041】
ここで、シリコーン系透明無機塗料「フレッセラNA100」(松下電工社製)へのつや消し剤の添加量を、表1に示すように設定して調製した透明な低光沢無機塗料を用いて低光沢無機塗膜を形成したものを、実施例1−1、1−2、1−3とした。またつや消し剤を添加しないシリコーン系透明無機塗料「フレッセラNA100」(松下電工社製)を用いて透明無機塗膜を形成したものを比較例1とした。
【0042】
そして実施例1−1、1−2、1−3、比較例1について、有機塗膜と、低光沢無機塗膜と、つや消し剤無しの透明無機塗膜のそれぞれの光沢値を、光沢計(入射角60°)で測定し、その結果も表1に示した。また、透明な低光沢無機塗料とつや消し剤無しの透明無機塗料とを、スレート板表面の一部に塗り残しが発生するように意図的に塗布したとき、スレート板の表面全体の外観を目視で観察して、スレート板表面に部分的な光沢の差異が発生していることが識別できるかどうかを評価した。光沢差のあることがよく分かるレベルを「○」、分かりにくいレベルを「×」で、表1の「外観評価」の欄に示した。
【0043】
次に、透明な低光沢無機塗膜又はつや消し剤無しの透明無機塗膜を形成したスレート板の表面に、シリコーン系透明無機塗料「フレッセラPS1000」(松下電工社製)を塗布し、24時間養生して、透明な高光沢無機塗膜を形成した。その高光沢無機塗膜を形成したスレート板表面の光沢値を測定し、表1に示した。また、スレート板表面の一部に塗り残しが発生するように意図的に高光沢無機塗料を塗布したときに、スレート板の表面全体で光沢差が発生していることが、目視によりよく分かるレベルを「○」、分かりにくいレベルを「×」で、表1の「外観評価」の欄に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
この表1の最下欄の「高光沢無機塗膜と低光沢無機塗膜との光沢差」にも示すように、光沢の異なる透明無機塗膜を積層させて形成するようにすることで、その形成部分と未形成部分とを、光沢の差異により容易に識別することができるので、透明な無機塗膜を均一に積層形成することが可能となる。
【0046】
(実施例2)
基材としてスレート板を用い、そのスレート板表面に下塗り塗料として「ニッペ浸透性シーラー」(日本ペイント社製)を、150g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生した。次に、有機塗料「マイティラックG−II」(日本ペイント社製アクリルウレタン塗料)を、250g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生して有機塗膜を形成した。この後、この有機塗膜の上に、つや消し剤により光沢を調整したシリコーン系透明無機塗料「フレッセラNA100」(松下電工社製)を、30g/m2の塗布量で塗布し、24時間養生して、透明な高光沢無機塗膜を形成した。この後、シリコーン系透明無機塗料「フレッセラPS1000」(松下電工社製)100質量部に、退色性の塩基性染料「NP BLUE GN」(保土ヶ谷化学工業社製)を、0.005質量部配合した高光沢退色無機塗料を塗布し、24時間養生して高光沢退色無機塗膜を形成した。
【0047】
ここで、高光沢退色無機塗膜を膜厚0.1μmに形成したものを実施例2−1、膜厚0.2μmに形成したものを実施例2−2、膜厚0.4μmに形成したものを実施例2−3とし、退色性染料を配合しないシリコーン系透明無機塗料「フレッセラPS1000」を用いて膜厚0.2μmの透明無機塗膜を形成したものを比較例2とした。
【0048】
そして実施例2−1、2−2、2−3、比較例2について、高光沢退色無機塗料をスレート板表面に塗布する際に、その一部に塗り残しが発生するように意図的に塗布したときに、そのスレート板表面に部分的な色ムラが発生していることが分かるかどうかを、目視により評価した。色ムラがあることがよく分かるレベルを「○」、分かりにくいレベルを「×」で、表2の「外観評価」の欄に示した。また、実施例2−1、2−2、2−3について、高光沢退色無機塗膜の形成後に対する、その形成前の色差(ΔE)を、表2に示した。また実施例2−1、2−2、2−3について、1ヶ月後の高光沢退色無機塗膜の脱色レベルを目視により観察した。高光沢退色無機塗膜が透明無色であるものを「○」、有色であるものを「×」として評価し、表2の「1ヶ月後の外観」の欄に示した。
【0049】
【表2】
【0050】
この表2の「色差(ΔE)」にも示すように、透明無機塗膜に退色性染料を含有させて有色に着色したことにより、その形成部分と未形成部分とを容易に識別することができ、透明無機塗膜を均一に積層形成することが可能となる。
【0051】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に記載の透明無機塗膜の形成方法は、基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測するので、透明無機塗膜を、基材表面に均一に積層形成することが可能になる、という効果を奏する。
【0052】
本発明の請求項2に記載の透明無機塗膜の形成方法は、基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より低い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、退色性染料を含有させて有色に着色した第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記退色性染料が有色の状態において、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測するので、透明無機塗膜を、基材表面に均一に積層形成することが可能になる、という効果を奏する。
【0053】
本発明の請求項3に記載の2層透明透明無機塗膜の形成方法によれば、上記の効果に加えて、前記第2の透明無機塗膜は、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測するときに、前記基材表面に対する色差を5以上有するので、第2の透明無機塗膜を形成した部分と形成していない部分とをより明瞭に識別することができ、より均一に透明無機塗膜を、基材表面に積層形成することが可能になる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の請求項1に係る透明無機塗膜の形成方法の一実施の形態を示す図である
【図2】本発明の請求項2及び請求項3に係る透明無機塗膜の形成方法の一実施の形態を示す図である
【符号の説明】
1 スレート板
2 有機塗膜
3 低光沢無機塗膜
4 高光沢無機塗膜
5 有機塗膜
6 高光沢無機塗膜
7 高光沢退色無機塗膜
Claims (3)
- 基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、前記第1の透明無機塗膜の光沢より高い光沢の第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測することを特徴とする透明無機塗膜の形成方法。
- 基材表面に、第1の透明無機塗膜と第2の透明無機塗膜とを積層形成する方法であって、前記第1の透明無機塗膜の光沢より低い光沢の有機塗膜を前記基材表面に形成し、その後、その有機塗膜の表面に、前記第1の透明無機塗膜を形成し、その後、前記基材表面に形成した塗膜全体の光沢のバラツキを観測し、その光沢にバラツキがある場合には、その光沢が均一化するよう前記第1の透明無機塗膜を形成し直し、その光沢を均一化させた後、退色性染料を含有させて有色に着色した第2の透明無機塗膜を、前記第1の透明無機塗膜の表面に形成し、その後、前記退色性染料が有色の状態において、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測することを特徴とする透明無機塗膜の形成方法。
- 前記第2の透明無機塗膜は、前記基材表面に形成した塗膜全体の色のバラツキを観測するときに、前記基材表面に対する色差を5以上有することを特徴とする請求項2に記載の透明無機塗膜の形成方法。
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JP2009235326A (ja) * | 2008-03-28 | 2009-10-15 | Asahi Kasei Chemicals Corp | 有機・無機複合体 |
JP2011083679A (ja) * | 2009-10-14 | 2011-04-28 | Fujikura Kasei Co Ltd | 塗装方法 |
JP2014123033A (ja) * | 2012-12-21 | 2014-07-03 | Dainippon Toryo Co Ltd | 基材とレンズ状粒子との複合材料及びその製造方法 |
-
2002
- 2002-06-27 JP JP2002188385A patent/JP2004025118A/ja active Pending
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