JP2004024062A - 真珠の養殖方法 - Google Patents

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Akihiro Matsushita
松下 明弘
Hisaya Sawai
沢井 寿哉
Takashi Henmi
辺見 隆
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Abstract

【課題】外とう膜切片を切り出すためのピース貝として、その内殻層(いわゆる真珠貝)が赤色系干渉色を有するものを用いることで、調色を一切施すことなく真珠本来のうすいピンク色をもった干渉色(虹色)を有する高品質の真珠を歩留りよく確保することができる真珠の養殖方法の提供を目的とする。
【解決手段】ピース貝1の外とう膜の切片2と、真珠核3とを母貝に移植して真珠を養殖する真珠の養殖方法であって、上記ピース貝1はその内殻層が赤色系干渉色を有するものに設定された真珠の養殖方法であることを特徴とする。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ピース貝の外とう膜の切片と、真珠核とを母貝に移植して真珠を養殖するような真珠の養殖方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上述例の真珠の養殖方法は、ピース貝から切り取った外とう膜の切片(小片)と、真珠核(いわゆる核)との両者を密着させてアコヤ貝などの真珠貝(養殖用母貝)に移植すると、外とう膜切片から生じる遊走細胞が移植挿入した真珠核を包み込み、真珠核表面に炭酸カルシウム結晶の真珠層を分泌することを利用して、この分泌状態にある真珠貝(母貝)を、養殖いかだに取付けて、海中に一定期間吊り下げて飼養すると、真珠核の表面に真珠層が形成されて、養殖真珠となる。
【0003】
上述の母貝から回収された真珠は装飾品と成すために、穴あけ、しみ抜き、漂白、調色等の加工が施されて製品化されるが、上述の調色工程で用いられる染料の影響により真珠本来の干渉色(虹色)が損なわれ、場合によっては染料の退色により真珠が変色し、高品質の真珠を歩留りよく確保することが困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、外とう膜切片を切り出すためのピース貝として、その内殻層(いわゆる真珠貝)が赤色系干渉色を有するものを用いることで、調色を一切施すことなく真珠本来のうすいピンク色をもった干渉色(虹色)を有する高品質の真珠を歩留りよく確保することができる真珠の養殖方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明による真珠の養殖方法は、ピース貝の外とう膜の切片と、真珠核とを母貝に移植して真珠を養殖する真珠の養殖方法であって、上記ピース貝はその内殻層が赤色系干渉色を有するものに設定されたものである。
【0006】
上記構成のピース貝は外殻層が紅色系を有するアコヤ貝に設定してもよく、真珠核を得る貝としてはイシガイ科の淡水貝が望ましく、母貝としては通常のアコヤ貝や外殻層が紅色系を有するアコヤ貝を用いることができるが、所謂生命力の強い母貝が望ましい。
【0007】
上記構成によれば、ピース貝の外とう膜切片と真珠核(いわゆる核)とを母貝に移植挿入すると、外とう膜切片から生じる遊走細胞が真珠核を包み込み、このパールサックによる所謂真珠層分泌状態下の母貝を海中で所定期間飼養すると、真珠核の表面に真珠層が形成されて、養殖真珠となる。
【0008】
この場合、真珠の形質はピース貝の内殻層(真珠層)の影響を強く受けるので、このピース貝はその内殻層が赤色干渉色を有し、さらに詳しくは黄色系の干渉色を有さないものに特定したので、回収された真珠は光の干渉作用により、うすいピンク色をもった干渉色を呈することになる。
【0009】
このように、外とう膜切片を切り出すためのピース貝として、その内殻層が赤色系干渉色を有するものを用いたので、加工処理としての調色を一切施すことなく真珠本来のうすいピンク色をもった干渉色(虹色)を有する高品質の真珠を歩留りよく確保することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記ピース貝の外殻層が紅色系を有するものである。
上記構成のピース貝としては、外側の外殻層(最外層としての殻皮層のこと)および稜柱層が紅色を呈する紅アコヤ(商標)貝を用いてもよい。
【0011】
上記構成によれば、ピース貝の外殻層が紅色系を呈するので、管理中においてピース貝と母貝との混合が回避され、作業性が向上すると共に、上記ピース貝の内殻層は優れた赤色系干渉色(詳しくは、うすいピンク色の干渉色)をもっているので、回収された真珠の品質をさらに高めることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記内殻層の赤色系干渉色はCIE−XYZ表色系のx=0.25〜0.34,y=0.25〜0.32の範囲に設定されたものである。
【0013】
上記構成によれば、2つの数値(x,y)範囲を特定したので、真珠として最適な色彩および透明感をもった極めて高品質の真珠を歩留りよく確保することができる。
つまりxの値が0.25未満の場合には青みを帯び、xの値が0.34を超過する場合には過度の赤色となり、yの値が0.25未満の場合には青みを帯び、yの値が0.32を超過する場合には黄色を帯びて好ましくないため、上記範囲に設定するものである。
【0014】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は真珠の養殖方法を示し、図1に示す工程図においてピース貝1から外とう膜の切片2を切り取って、この切片2を淡水貝から切り出した真珠核3と密着させて母貝に移植挿入する(核入れ工程S1)。
【0015】
ここで、上述のピース貝1としてはその外殻層が紅色系を有し、かつ内殻層(つまり真珠層)が赤色系干渉色(つまり、うすいピンク色をもった干渉色)を有するアコヤ貝を用いる。
【0016】
詳しくは、上述の内殻層の赤色系干渉色は図2にCIE色度図(いわゆるxy色度図)で、図3にその要部の拡大図で示すようにx=0.25〜0.34,y=0.25〜0.32の範囲に設定し、多数の外殻層が紅色系を有するアコヤ貝のうちから当該範囲となるアコヤ貝のみを選択し、この外殻層が紅色系を有するアコヤ貝をピース貝1として、このピース貝1から外とう膜の切片2を切り取るものである。
【0017】
さらに詳しくは、この実施例においては内殻層の赤色系干渉色がCIE−XYZ赤色系のx=0.340,y=0.255(図3のa点参照)のものと、x=0.310,y=0.285(図3のb点参照)のものとを用いた。
【0018】
また上述の真珠核3の核材としての淡水貝としては例えばアメリカ・ミシシッピー産のイシガイ科の淡水貝を用い、この淡水貝から真珠核3を切り出す。淡水貝は塩分を有さないので、真珠の加工工程においてドリル等で穴あけを行なう際、ドリル等の工具の折損を防止することができる。なお、淡水貝としては上記のものに限定されるものではないが、1〜2個の核3が入るようにする。
【0019】
一方、母貝としては能力(成長の早さ、環境変化に対する強さ、真珠の巻きのよさ)が高く生命力の強いアコヤ貝を用いるが、上記外殻層が紅色系を有するアコヤ貝を母貝として用いてもよい。
【0020】
上述の核入れ工程S1で、母貝に外とう膜の切片2と真珠核3とが移植挿入されると、外とう膜は真珠層の分泌能力をもっているので、この外とう膜切片2から生じる遊走細胞が移植挿入した真珠核3を包み込み、真珠核3の表面に炭酸カルシウム結晶の真珠層を分泌する。
【0021】
つまり、移植片が母貝の体内で細胞分裂し、真珠核3の周りを取り巻くように成長して、パールサック(真珠袋)が形成され、このパールサックが真珠核3に真珠層を分泌するものである。
【0022】
次に、図1に示す工程図の飼養工程S2で、上述の分泌状態にある母貝を養殖いかだに取付けて、海中(または淡水中)に一定期間(半年以上)吊下げて飼養すると、真珠核3の表面に真珠層が形成されて、球状の養殖真珠となる。
この真珠を母貝から回収(図1に示す工程図の回収工程S3参照)して、真珠を得るものである。
【0023】
次に上記実施例の養殖方法(特定のピース貝を用いたもの)により取得したx=0.25〜0.34,y=0.25〜0.32の範囲の赤色系干渉色を有する真珠の個数と、従来例として一般のピース貝(天然貝)を用いて養殖した場合の上記範囲内の真珠の個数と、これら両者の収得率(つまり歩留り)とを比較した結果を次表に示す。
【0024】
【表1】
Figure 2004024062
【0025】
上述の[表1]の比較から明らかなように、この実施例においては、うすいピンク色の干渉色を呈する真珠個数の収得率つまり歩留りが極めて高いという良好な結果を得ることができた。これは、養殖された真珠の形質(特に品質、光沢、色調)は移植片としてのピース貝の内殻層(いわゆる真珠層)の形質の影響を強く受けることに起因するものである。
【0026】
このように上記実施例の真珠の養殖方法は、ピース貝1の外とう膜の切片2と、真珠核3とを母貝に移植して真珠を養殖する真珠の養殖方法であって、上記ピース貝1はその内殻層が赤色系干渉色を有するものに設定されたものである。
【0027】
この構成によれば、ピース貝1の外とう膜切片2と真珠核(いわゆる核)3とを母貝に移植挿入すると、外とう膜切片2から生じる遊走細胞が真珠核3を包み込み、この真珠層分泌状態下の母貝を海中で所定期間飼養すると、真珠核3の表面に真珠層が形成されて、養殖真珠となる。
【0028】
この場合、真珠の形質はピース貝1の内殻層(真珠層)の影響を強く受けるので、このピース貝1はその内殻層が赤色干渉色を有し、さらに詳しくは黄色系の干渉色を有さないものに特定したので、回収された真珠は光の干渉作用により、うすいピンクをした干渉色を呈することになる。
【0029】
このように、外とう膜切片2を切り出すためのピース貝1として、その内殻層が赤色系干渉色を有するものを用いたので、加工処理としての調色を一切施すことなく真珠本来のうすいピンク色をもった干渉色(虹色)を有する高品質の真珠を歩留りよく確保することができる。
【0030】
また、上記ピース貝1の外殻層が紅色系を有するものである。
上述のピース貝1としては、外側の外殻層および稜柱層が紅色を呈する紅アコヤ(商標)貝を用いることができる。
【0031】
この構成によれば、ピース貝1の外殻層が紅色系を呈するので、管理中においてピース貝1と母貝との混合が回避され、作業性が向上すると共に、上記ピース貝1の内殻層は優れた赤色系干渉色を有するので、回収された真珠の品質をさらに高めることができる。
【0032】
しかも、上記内殻層の赤色系干渉色はCIE−XYZ表色系のx=0.25〜0.34,y=0.25〜0.32の範囲に設定されたものである。
【0033】
この構成によれば、2つの数値(x,y)範囲を特定したので、真珠として最適な色彩および透明感をもった極めて高品質の真珠を歩留りよく確保することができる。
なお、真珠核3を取出すための核材としてはイケチョウ貝、カキ、カラス貝、ドブ貝などの淡水産の貝を用いることができる。
【0034】
【発明の効果】
この発明によれば、外とう膜切片を切り出すためのピース貝として、その内殻層(いわゆる真珠貝)が赤色系干渉色を有するものを用いたので、調色を一切施すことなく真珠本来のうすいピンク色をもった干渉色(虹色)を有する高品質の真珠を歩留りよく確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の真珠の養殖方法を示す工程図。
【図2】内殻層の数値範囲を説明するためのCIE色度図。
【図3】図2の要部拡大図。
【符号の説明】
1…ピース貝
2…外とう膜の切片
3…真珠核
S1…核入れ工程
S2…飼養工程
S3…回収工程

Claims (3)

  1. ピース貝の外とう膜の切片と、真珠核とを母貝に移植して真珠を養殖する真珠の養殖方法であって、
    上記ピース貝はその内殻層が赤色系干渉色を有するものに設定された
    真珠の養殖方法。
  2. 上記ピース貝の外殻層が紅色系を有する
    請求項1記載の真珠の養殖方法。
  3. 上記内殻層の赤色系干渉色はCIE−XYZ表色系のx=0.25〜0.34,y=0.25〜0.32の範囲に設定された
    請求項1または2記載の真珠の養殖方法。
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