JP2004020284A - 事故点標定装置 - Google Patents

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JP2004020284A
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松田 明洋
Kenji Ito
伊藤 健司
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Abstract

【課題】回線分離しているPCM電流差動リレー装置を用いた事故点標定を可能とする。
【解決手段】少なくとも2回線1L、2Lからなる送電線を保護するために各回線毎に設置されたPCM電流差動リレー装置2A〜2D、回線の事故を検出して上記PCM電流差動リレー装置に各回線データの記憶保存開始用の起動信号を出力する第1の手段(52TXリレー)、回線分離している上記各PCM電流差動リレー装置で記憶保存されたデータに対し、上記両回線間の同期補正処理を施す第2の手段11、上記第2の手段で同期補正処理が施されたデータから事故点までの距離を標定演算する第3の手段12、および上記第3の手段で算出された結果を出力する第4の手段13を備え、上記第2の手段による同期補正処理は、上記送電線の母線電圧を基準にして行う。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、事故点標定装置、特に、電力系統の系統電流を入力として系統事故を検出し、回路遮断器をトリップする信号を出力するPCM電流差動リレー装置を用いた事故点標定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は、一般的なPCM電流差動リレー装置による保護電力系統を示す図である。図7において、1L、2Lは同一系統の第1、第2の送電線回線、2A〜2DはPCM電流差動リレー装置、3A〜3Dは各回線に流れる電流を測定する変流器、4A〜4Dは各回線の電圧を測定する変成器、5A〜5Dは遮断器、6A、6Bは相手端情報を伝送する伝送路である。
【0003】
図8は一般的なPCM電流差動リレー装置のトリップ回路図である。図8において、7Aは52TXリレー、7Bは87リレーのトリップ出力接点、7Cは故障検出リレー(FDリレーと呼ぶ)のトリップ出力接点、7Dは切替スイッチ、7Eは遮断器のトリップコイル(TC)である。
【0004】
次に動作を説明する。PCM電流差動リレー装置2A〜2Dは、図7に示すように、送電線回線1L、2Lの各端子に設置される。87リレーは、端子電流のベクトル和つまり差動電流に対して応動リレーであり、外部事故では応動せず、保護区間内の系統事故のみを確実に検出することができる。内部事故が発生したとき、この87リレー7BとFDリレー7Cが動作となり、図8の87リレー7Bと87リレー7Cが閉となるため、切替スイッチ7Dが「閉」時において、トリップコイル7Eに電流が流れ、遮断器がトリップすることになる。ここで87リレー7Bは、差動電流に応動するため、同一回線の各端子の同期がとれていなければ位相差により差動電流が発生し、リレー誤動作となる。よって、各端子を流れる電流の位相同期が正確にとれていなければならない。現状では、各端子間は距離が離れているため、図7におけるPCM電流差動リレー2Aと2B、PCM電流差動リレー2Cと2Dを伝送路6A、6Bでそれぞれ結び、伝送遅延時間を考慮して端子間の同期補正を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
事故点標定には、2回線の分流比を用いる手法においてベクトル差を使用している。これは、事故電流が健全回線にも流れるため、隣回線の電磁誘導の影響を考慮する必要があるためである。よって、回線間のサンプリング同期が必要である。しかしながら、従来の回線分離をしているPCM電流差動リレー装置では、同回線の自端と相手端の情報については同期がとれているが、隣回線との同期がとられていない。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、隣回線との同期合わせを簡単な方法で行い、事故点標定を容易に行えるようにしたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る事故点標定装置は、少なくとも2回線からなる送電線を保護するために各回線毎に設置されたPCM電流差動リレー装置、回線の事故を検出して上記PCM電流差動リレー装置に各回線データの記憶保存開始用の起動信号を出力する第1の手段、回線分離している上記各PCM電流差動リレー装置で記憶保存されたデータに対し、上記両回線間の同期補正処理を施す第2の手段、上記第2の手段で同期補正処理が施されたデータから事故点までの距離を標定演算する第3の手段、および上記第3の手段で算出された結果を出力する第4の手段を備え、上記第2の手段による同期補正処理は、上記送電線の母線電圧を基準にして行うようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明に係る事故点標定装置は、少なくとも2回線からなる送電線を保護するために各回線毎に設置されたPCM電流差動リレー装置、回線の事故を検出して上記PCM電流差動リレー装置に各回線データの記憶保存開始用の起動信号を出力する第1の手段、回線分離している上記各PCM電流差動リレー装置で記憶保存されたデータに対し、上記両回線間の同期補正処理を施す第2の手段、上記第2の手段で同期補正処理が施されたデータから事故点までの距離を標定演算する第3の手段、上記第3の手段で算出された結果を出力する第4の手段、および上記各PCM電流差動リレー装置のデータに絶対時刻情報を付すための第5の手段を備え、上記第2の手段による同期補正処理は、上記データに付された絶対時刻情報を基準にして行うようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項1または請求項2に記載の事故点標定装置において、第1の手段は、回線保護用遮断器の開放信号をピックアップするリレーであることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項1または請求項2に記載の事故点標定装置において、第1の手段は、差動電流に応動するリレーであることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の事故点標定装置において、差動電流に応動するリレーは、誤・不動作防止のため二系列化されていることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるPCM電流差動リレー装置を用いた事故点標定装置を示すブロック構成図である。図1において、21は変流器や変成器(例えばPCM電流差動リレー装置2Aの場合には変流器3A、変成器4A)からの回線のアナログデータをデジタルデータに変換する入力変換処理部、22は52TXリレー(第1の手段)の出力を受けてデータの記憶保存を開始する起動信号(データセーブ起動信号)を出力するDI(ディジタル入力)処理部、23は入力変換処理部21で受信したデータを常時記憶しておき、DI処理部22からのデータセーブ起動信号を受け付けたときに、既に記憶していたデータの事故発生中のある所定の範囲を記憶保存するデータ記憶部、24はデータ記憶部23で記憶保存したデータを出力するデータ入出力部である。
【0013】
1は事故点標定部であり、11はPCM電流差動リレー装置2A〜2Dから出力されたデータから第1の回線1Lと第2の回線2L間の同期補正を行う同期補正処理部(第2の手段)、12は同期補正処理されたデータから事故点標定を行う事故点標定演算処理部(第3の手段)、13は事故点標定演算結果を出力する標定結果出力部(第4の手段)である。なお、詳細図示を省略しているが、PCM電流差動リレー装置2B〜2Dは、上述したPCM電流差動リレー装置2Aと同様に構成され、それぞれの出力データが事故点標定部1の同期補正処理部11に加えられる。
【0014】
次に実施の形態1における動作を説明する。回線分離しているPCM電流差動リレー装置を用いた事故点の標定においては、前述のとおり回線間の同期合わせが必要である。PCM電流差動リレー装置のデータセーブ起動には、内部故障時に確実に動作する52TXリレーを使用しているが、この52TXリレーの動作時間やDI処理時間にはバラツキがある。また、回線間のデータのサンプリングタイミングも異なる。よって事故点標定において、図5に示すように、回線1Lにおけるデータセーブの起動タイミングと回線2Lにおけるデータセーブの起動タイミングにはΔtのズレが生じるため、データセーブ起動時点を基準として回線1Lと2L間のデータの付け合わせを行うとズレを生じることになり、このズレをなくすため、同期合わせが必要になる。
【0015】
本実施の形態では、この同期合わせに母線電圧を利用するものである。図7において、例えば回線1Lの遮断器5Aと5B間に事故が発生したとき、図5(a)(b)に示すように回線1Lと2Lに流れる電流Iの値は異なるが、系統が分離されていなければ両回線の母線電圧Vの値は回線1L、2Lとも同じであるため、変成器4Aと変成器4Cの出力電圧は同じである。このことを利用し、同期補正処理部11では、図5(b)に示すように、回線間の電圧が同じ時点における両回線のデータをもって事故標定演算処理部12へのデータとする。このように、事故点標定において、データセーブ起動時点のデータをそのまま利用せず、回線間の電圧を一致させたときのデータを使用することにより回線間のデータセーブ起動時のズレや、サンプリングタイミングのズレによる同期ズレを無くし(同期合わせをし)、正確な事故点標定を可能とする。
【0016】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係る事故点標定装置を示す構成図である。実施の形態2が実施の形態1の図1と異なるのは、各PCM電流差動リレー装置2A〜2DにはGPS等からの絶対時刻を電気信号に変換し、データ記憶部23に加える変換部25(第5の手段)を有し、さらに、同期補正処理部11で上記絶対時刻を利用して同期補正を行う点である。その他の構成、及び各要素の動作は図1のものと同じである。
【0017】
回線の変流器3A、変成器4Aから得られるデータはデータ記憶部23に送られるが、データ記憶部23では、図6に示すように、電圧、電流データに、変換部25から与えられる絶対時刻を付して記憶する。これは他のPCM電流差動リレー装置2B〜2Dについても同様である。
【0018】
事故が発生した場合、DI処理部22からのデータセーブ起動信号により、データ記憶部23で既に記憶していたデータの事故発生中のある所定の範囲を記憶保存するデータをデータ入出力部24から出力する。なお、絶対時刻情報を与えるものとしては、GPS信号、電波時計、公衆電話回線の絶対時刻信号を利用できる。
【0019】
同期補正処理部11では、PCM電流差動リレー装置2Aと2Cからの入力信号データに付された絶対時刻を手がかりに、時刻の一致するデータを付け合せることで、回線間のデータセーブ起動時のズレや、サンプリングタイミングのズレによる回線間の同期ズレを無くし(同期合わせをし)、正確な事故点標定を可能とする。
【0020】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3に係る事故点標定装置を示す構成図である。一般に、保護リレーは信頼度の面から誤不動作を防ぐためA系、B系と二系列化されている。保守点検時には、片系をリレーロックするが、この片系リレーロック時に事故が発生した場合、前述の実施の形態1で使用した、遮断器に対しての開放信号をピックアップするリレー(52TXリレー)により起動信号を与えるものでは、52TXリレーが動作しない。
【0021】
本実施の形態3では、A系、B系の片系がリレーロック状態であっても確実に動作するよう差動電流に応動するリレー(87リレー=第1の手段)を用いて起動信号を加えるようにしたもので、その他の構成、動作は実施の形態1と同じである。これにより、保守点検時の事故に対しても、事故点標定を確実に行うことができる。
【0022】
実施の形態4.
図4は、この発明の実施の形態4に係る事故点標定装置を示す構成図である。実施の形態4では、実施の形態2におけるデータセーブ起動には、A系、B系の片系がリレーロック状態であっても確実に動作する87リレー(第1の手段)の動作を利用する。その他の構成、動作は実施の形態2と同じである。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、回線分離しているPCM電流差動リレーにおける回線間の同期合わせを、母線電圧を基準にして行うものであるから、同期補正処理が簡単となり、効果的に、正確な事故点標定が可能となる。
【0024】
また、回線分離しているPCM電流差動リレーにおける回線間の同期合わせを、データに付された絶対時刻情報を基準にして行うものであるから、同期補正処理が簡単となり、効果的に、正確な事故点標定が可能となる。
【0025】
また、差動電流で動作するリレー(87リレー)を用いてデータの記憶保存開始の起動信号を得ているため、上記リレーが二系列化されていて上記リレーの片方の系がリレーロック状態であっても、事故発生時には確実に動作し、事故点の標定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係るPCM電流差動リレー装置を用いた事故点標定装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係るPCM電流差動リレー装置を用いた事故点標定装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3に係るPCM電流差動リレー装置を用いた事故点標定装置を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態4に係るPCM電流差動リレー装置を用いた事故点標定装置を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1および3に係る母線電圧を用いた回線間同期合わせを説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態2および4に係る絶対時刻を用いた回線同期合わせを説明する図である。
【図7】一般的なPCM電流差動リレー装置による保護電力系統を示す図である。
【図8】一般的なPCM電流差動リレー装置のトリップ回路である。
【符号の説明】
1 事故点標定部、   2A〜2D PCM電流差動リレー装置、
3A〜3D 変流器、      4A〜4D 変成器、
5A〜5D 遮断器、      6A、6B 伝送路、
7A 52TXリレー、
7B 87リレーのトリップ出力接点、
7C FDリレーのトリップ出力接点、
7D 切替スイッチ、
7E トリップコイル、
11 同期補正処理部、     12 事故点標定演算処理部、
13 標定結果出力部、     21 入力変換処理部、
22 DI処理部、       23 データ記憶部、
24 データ入出力部、     25 変換部。

Claims (5)

  1. 少なくとも2回線からなる送電線を保護するために各回線毎に設置されたPCM電流差動リレー装置、回線の事故を検出して上記PCM電流差動リレー装置に各回線データの記憶保存開始用の起動信号を出力する第1の手段、回線分離している上記各PCM電流差動リレー装置で記憶保存されたデータに対し、上記両回線間の同期補正処理を施す第2の手段、上記第2の手段で同期補正処理が施されたデータから事故点までの距離を標定演算する第3の手段、および上記第3の手段で算出された結果を出力する第4の手段を備え、上記第2の手段による同期補正処理は、上記送電線の母線電圧を基準にして行うようにしたことを特徴とする事故点標定装置。
  2. 少なくとも2回線からなる送電線を保護するために各回線毎に設置されたPCM電流差動リレー装置、回線の事故を検出して上記PCM電流差動リレー装置に各回線データの記憶保存開始用の起動信号を出力する第1の手段、回線分離している上記各PCM電流差動リレー装置で記憶保存されたデータに対し、上記両回線間の同期補正処理を施す第2の手段、上記第2の手段で同期補正処理が施されたデータから事故点までの距離を標定演算する第3の手段、上記第3の手段で算出された結果を出力する第4の手段、および上記各PCM電流差動リレー装置のデータに絶対時刻情報を付すための第5の手段を備え、上記第2の手段による同期補正処理は、上記データに付された絶対時刻情報を基準にして行うようにしたことを特徴とする事故点標定装置。
  3. 上記第1の手段は、回線保護用遮断器の開放信号をピックアップするリレーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の事故点標定装置。
  4. 上記第1の手段は、差動電流に応動するリレーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の事故点標定装置。
  5. 上記差動電流に応動するリレーは、誤・不動作防止のため二系列化されていることを特徴とする請求項4に記載の事故点標定装置。
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