JP2004020135A - 蓄熱装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱媒体との間で熱の伝達が可能であり、熱媒体から伝達された熱を蓄える蓄熱装置において、熱媒体との間で熱の伝達をおこなう第1の蓄熱部10と、第1の蓄熱部10と伝熱壁7を介して設けられた第2の蓄熱部11とを有し、伝熱壁7が熱電変換素子14を有し、熱電変換素子14への通電状態に応じて伝熱壁7が伝熱状態と断熱状態に切換えられることにより、第1の蓄熱部10の熱容量が可変に構成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱媒体から伝達された熱を蓄えたり、蓄えた熱を熱媒体に伝達することが可能な蓄熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両用の空調装置などにおいては、熱媒体と空気とを熱伝達可能に流通させる通路が設けられているとともに、熱媒体と空気との間で熱伝達をおこなって空気を加熱もしくは冷却した後、その空気を車両の室内に送り込んで、室内を冷房または暖房するように構成されている。このような空調装置の一例としての自動車用冷房装置が、特開平6−211036号公報に記載されている。
【0003】
この公報に記載されている自動車用冷房装置においては、冷媒の循環経路に、コンプレッサ、コンデンサ、蓄熱装置としての蓄冷器、膨張弁、エバポレータなどが配置されている。コンデンサと膨張弁との間に蓄冷器が配置されており、膨張弁とエバポレータとの間には、2つの三方弁が配置されている。第1の三方弁は、1つの吸込口と、第1の吐出口および第2の吐出口とを備えている。第2の三方弁は、第1の吸込口および第2の吸込口と、1つの吐出口とを有している。そして、第1の三方弁の吸込口が膨張弁に接続され、第1の三方弁の第1の吐出口と、第2の三方弁の第1の吸込口とが接続されている。また、第1の三方弁の第2の吐出口と、蓄冷器の入口部とが接続されている。さらに第2の三方弁の第2の吸込口と、蓄冷器の出口部とが接続されている。さらにまた、第2の三方弁の吐出口と、エバポレータとが接続されている。
【0004】
一方、上記蓄冷器は、並列に配置された複数の冷媒室と、各冷媒室に連通する第1分岐管と、各冷媒室の入口に設けた複数の第1ストップ弁とを有している。また、蓄冷器は、各冷媒室に対応し、かつ、入口部に対して分岐管を介して接続された複数の冷媒通路と、各冷媒通路の入口に配置された第2ストップ弁とを有している。これら複数の冷媒通路は並列に配置されており、出口部に連通されている。
【0005】
上記公報の冷房装置においては、コンプレッサにより冷媒が圧縮されて高温・高圧のガスとなってコンデンサに送られる。コンデンサに送られた冷媒は、その潜熱を奪われて冷却され、かつ、凝縮(液化)する。液化された冷媒は蓄冷器を経由して膨張弁に送られ、膨張弁により冷媒が膨張されて低温・低圧の霧状冷媒となり、その冷媒がエバポレータに流れ込む。エバポレータでは冷媒が蒸発するのに必要な潜熱を、室内側の空気から奪い、室内空気を冷却すると同時に冷媒が気化し、その後、冷媒はコンプレッサに吸入される。
【0006】
蓄冷器の機能を具体的に説明すると、蓄冷時には、冷媒が蓄冷器を通過する際に蓄冷室に蓄冷される。この蓄冷時には、第1ストップ弁を選択的に開弁することで、蓄冷される蓄冷室の数、言い換えれば、蓄冷器全体としての熱容量が制御される。これに対して、放冷時には、膨張弁を通過した冷媒が、三方弁を介して蓄冷器の冷媒通路に送られて、各蓄冷室と、冷媒通路を通過する冷媒との間で熱伝達がおこなわれる。この放冷時には、蓄冷が完了している冷媒室に対応する冷媒通路のみに冷媒を送るように、第2ストップ弁を選択的に開弁させる制御がおこなわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載された冷房装置においては、蓄冷器の熱容量を制御し、かつ、蓄冷が完了した蓄冷室にのみ冷媒を送るために、第1の分岐管および第2の分岐管を設ける必要がある。このため、冷房装置の部品点数が増加して、構造が複雑化および大型化および大重量化するとともに、製造コストが上昇する問題があった。
【0008】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、熱容量を変更でき、かつ、部品点数の増加を抑制することのできる蓄熱装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、熱媒体との間で熱の伝達が可能であり、前記熱媒体から伝達された熱を蓄える蓄熱装置において、前記熱媒体との間で熱の伝達をおこなう第1の蓄熱部と、この第1の蓄熱部と伝熱壁を介して設けられた第2の蓄熱部とを有し、前記伝熱壁が熱電変換素子を有し、この熱電変換素子への通電状態に応じて前記伝熱壁が熱伝導状態と断熱状態に切換えられることにより、前記第1の蓄熱部の熱容量が可変に構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項1の発明によれば、熱電変換素子への通電状態に応じて伝熱壁が熱伝導状態と断熱状態に切換えられて、第1の蓄熱部の熱容量が変更される。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記伝熱壁を断熱状態にしたときに、前記第1の蓄熱部と第2の蓄熱部との温度差に応じて、前記熱電変換素子で起電力が発生することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、第1の蓄熱部と第2の蓄熱部との温度差に応じて、熱電変換素子で起電力が発生する。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明を図面に基づいて説明する。図1は、蓄熱装置1を、車両の空調装置の一部品として用いた場合の概略構成を示す断面図である。図1において、蓄熱装置1の外壁を構成する断熱層2は、その断面形状がほぼ四角形に構成されている。すなわち、断熱層2は、相互に平行に配置された第1の壁部3および第2の壁部4と、相互に平行に配置された第3の壁部5および第4の壁部6とを有している。前記断熱層2は、例えば、発泡材など、保温効果のある断熱材で構成される。なお、第1の壁部3ないし第4の壁部6以外にも壁部(図示せず)が設けられており、断熱層2の内部と外部とが、気密に遮断されている。
【0014】
断熱層2の内部には、複数の伝熱壁、この実施例では、3つの伝熱壁7,8,9が配置されている。これらの伝熱壁7,8,9は板形状に構成され、その伝熱壁7,8,9の端部が第1の壁部3および第4の壁部4に接触(密着)している。これら3つの伝熱壁7,8,9により、断熱層2の内部が、第1蓄熱槽(蓄熱槽No1)10と第2蓄熱槽(蓄熱槽No2)11と第3蓄熱槽(蓄熱槽No3)12と第4蓄熱槽(蓄熱槽No4)13とに区画されている。具体的には、第1蓄熱槽10と第2蓄熱槽11とが伝熱壁7により仕切られ、第2蓄熱槽11と第3蓄熱槽12とが伝熱壁8により仕切られ、第3蓄熱槽12と第4蓄熱槽13とが伝熱壁9により仕切られている。なお、各蓄熱槽10,11,12,13内には、蓄熱材として、パラフィン、水、LLC、無機化合物、有機化合物を充填することもできる。
【0015】
伝熱壁7は、板形状の第1熱電変換素子(熱電変換素子No1)14と、第1熱電変換素子14の両面に接触して設けられた第1の電極(電極板No1)15および第2の電極(電極板No2)16とを有している。第1の電極15と第2の電極16とは極性が異なる。第1熱電変換素子14は、一方の面が第1蓄熱槽10に臨んで配置され、他方の面が第2蓄熱槽11に臨んで配置されている。また、第1熱電変換素子14および第1の電極15および第2の電極16により、電気回路の一部が構成されている。
【0016】
そして、蓄電装置46と電気回路とが電気的に接続されており、熱電変換素子14は、導電性の材料により構成されている。第1熱電変換素子14は、第1の電極15と第2の電極16との間における通電状態、具体的には電位差に応じて、熱伝導性能が変化する特性を備えている。
【0017】
また、伝熱壁8は、板形状の第2熱電変換素子(熱電変換素子No2)40と、第2熱電変換素子40の両面に接触された第3の電極(電極板No3)41および第4の電極(電極板No4)42とを有している。第3の電極41と第4の電極42とでは極性が異なる。第2熱電変換素子40は、一方の面が第2蓄熱槽11に臨んで配置され、他方の面が第3蓄熱槽12に臨んで配置されている。また、第2熱電変換素子40および第3の電極41および第4の電極42により、電気回路の一部が構成されている。
【0018】
そして、蓄電装置46と電気回路とが電気的に接続されており、第2熱電変換素子40は導電性の材料により構成されている。第2熱電変換素子40は、第3の電極41と第4の電極42との間における通電状態、具体的には電位差に応じて、熱伝導性能が変化する特性を備えている。
【0019】
さらに、伝熱壁9は、板形状の第3熱電変換素子(熱電変換素子No3)43と、第3熱電変換素子43の両面に接触された第5の電極(電極板No5)44および第6の電極(電極板No6)45とを有している。第5の電極44と第6の電極45とでは極性が異なる。第3熱電変換素子43は、一方の面が第3蓄熱槽12に臨んで配置され、他方の面が第4蓄熱槽13に臨んで配置されている。また、第3熱電変換素子43および第5の電極44および第4の電極46により、電気回路の一部が構成されている。
【0020】
そして、蓄電装置46と電気回路とが電気的に接続されており、第3熱電変換素子43は導電性の材料により構成されている。第3熱電変換素子43は、第5の電極44と第6の電極45との間における通電状態、具体的には電位差に応じて、熱伝導性能が変化する特性を備えている。
【0021】
ここで、各第1熱電変換素子14,40,43の熱伝導性能としては、熱伝導率、熱流速(言い換えれば伝熱面負荷)などが挙げられる。この各第1熱電変換素子14,40,43としては、例えば、ペルチェ素子などを用いることができる。
【0022】
図1においては、便宜上、各熱電変換素子の両面が、各電極により覆われているが、実際には各熱電変換素子の両面全域が電極により覆われている訳ではなく、各熱電変換素子の両面の一部が、各蓄熱槽内に熱伝達可能に露出している。なお、各電極として熱伝導性に優れた金属材料を用いた場合は、熱電変換素子の表面全域を電極で覆ってもよい。
【0023】
また、各熱電変換素子の両面には薄板形状の放熱フィン17が複数形成されている。具体的には、第1熱電変換素子14に形成された放熱フィン17は、第1蓄熱槽10および第2蓄熱槽11に配置されている。また、第2熱電変換素子40に形成された放熱フィン17は、第2蓄熱槽11および第3蓄熱槽12に配置されている。さらに、第3熱電変換素子43に形成された放熱フィン17は、第3蓄熱槽12および第4蓄熱槽13に配置されている。各放熱フィン17は、熱伝導性能に優れた金属材料、例えば、アルミニウム、銅などにより構成されている。各放熱フィン17は、各熱電変換素子の表面に対してほぼ垂直に形成されており、各放熱フィン17同士は、相互に平行に配置されている。
【0024】
さらに、第2蓄熱槽11においては、第1熱電変換素子14に形成されている複数の放熱フィン17と、第2熱電変換素子40に形成されている複数の放熱フィン17とが、交互に配置されている。さらにまた、第3蓄熱槽12においては、第2熱電変換素子40に形成されている複数の放熱フィン17と、第3熱電変換素子43に形成されている複数の放熱フィン17とが、交互に配置されている。上記の構成において、第1熱電変換素子14の制御により伝熱壁7が熱伝導可能な状態になったときに、第1熱電変換素子14に設けられたフィン17が、第2蓄熱部11に熱を、均一、かつ早期に供給し、蓄熱が速やかにおこなわれる。また、これとは逆に熱媒体に熱を与える場合も、蓄熱部の熱を、均一、かつ早期に供給することができる。第2熱電変換素子40および第3熱電変換素子43に設けられた放熱フィン17も、これと同じ働きをする。
【0025】
さらにまた、熱電変換素子の表面全域を電極で覆う構成が採用されている場合は、電極の表面に放熱フィンを設けることもできる。なお、第1蓄熱槽10には第1温度センサ(No1温度センサ)18が配置され、第2蓄熱槽11には第2温度センサ(No2温度センサ)19が配置され、第3蓄熱槽12には第3温度センサ(No3温度センサ)20が配置され、第4蓄熱槽13には第4温度センサ(No4温度センサ)21が配置されている。
【0026】
一方、断熱層2の内部から外部に亘って冷媒配管22およびブライン配管23が設けられている。冷媒配管22の内部は熱媒体である冷媒が流通するものであり、冷媒配管22は、冷媒が循環する経路A1の一部を構成している。経路A1には、コンプレッサ24、コンデンサ25、膨張弁26などが配置されている。冷媒配管22は、コンデンサ25の出口に接続される入口部27と、膨張弁26の入り口に接続される出口部28とを有している。そして、冷媒配管22の入口部27と出口部28との間の領域が、断熱層2を貫通して第1蓄熱槽10内に配置されている。
【0027】
これに対して、ブライン配管23は、熱媒体(例えば、水、LLC、無機化合物、有機化合物)が循環する経路の一部を構成するものであり、ブライン配管23は、入口部29および出口部30を有している。そして、ブライン配管23であって、入口部29と出口部30との間の領域が、第1蓄熱槽10内に配置されている。また、ブライン配管23であって、断熱槽2の外部に配置されている領域と、エバポレータ(図示せず)との間で、熱伝達が可能である。なお、冷媒配管22およびブライン配管23は、熱伝導性に優れた金属材料、例えば、アルミニウム、銅などにより構成されている。
【0028】
さらに、蓄熱装置1の制御系統について説明する。蓄熱装置1の全体を制御するコントローラとしての電子制御装置(ECU)31が設けられている。電子制御装置31には、各温度センサ18,19,20,21の検知情報が入力される。これに対して、電子制御装置31からは、第1の電極15および第2の電極16を含む電気回路に通電される電力と、第3の電極41および第4の電極42を含む電気回路に通電される電力と、第5の電極44および第6の電極45を含む電気回路に通電される電力とを、個々に制御する信号が出力される。
【0029】
つぎに、蓄熱装置1の作用および制御例を、図2のフローチャートを用いて説明する。冷媒配管22の入口部27から出口部28に向けて、冷媒、例えば、低温・低圧で霧状の冷媒が流れる。すると、冷媒の温度と第1蓄熱槽10との温度差に基づいて、熱が冷媒配管22を経由して第1蓄熱槽10内に伝達されて、その熱が第1蓄熱槽10内に蓄熱される。このような状況において、システム、すなわち、蓄熱装置1を作動させる要求があるか否かが判断される(ステップS1)。
【0030】
このステップS1で肯定的に判断された場合は、第1温度センサ18の検知情報が読み込まれて(ステップS2)、第1温度センサ18により検知された温度が、判定値未満であるか否かが判断される(ステップS3)。このステップS3で肯定的に判断された場合は、伝熱壁7の第1の電極15に印可する電圧と、伝熱壁7の第2の電極16に印可する電圧とが、異なる値(電圧1と電圧2)に設定される(ステップS4)。このように、蓄熱装置1の第1蓄熱層10に十分蓄熱がおこなわれた状態であると判断されて、第1蓄熱層10の熱容量を増加させる制御をおこなう。
【0031】
このステップS4の制御により、伝熱壁7の第1の電極15と第2の電極16とに電位差が発生し、伝熱壁7の第1熱電変換素子14が熱伝壁として機能する。その結果、第1蓄熱槽10の温度と、第2蓄熱槽11の温度との差に基づいて、第1蓄熱槽10の熱が、第1熱電変換素子14を介して第2蓄熱槽11に伝達され、その熱が第2蓄熱槽11に蓄熱される。
【0032】
前記ステップ4についで、第2温度センサ19の検知情報が読み込まれるとともに(ステップS5)、第2温度センサ19により検知された温度が、判定値未満であるか否かが判断される(ステップS6)。このステップS6で肯定的に判断された場合は、第2蓄熱層10が十分蓄熱をおこなった状態であると考えられるため、伝熱壁8の第3の電極41に印可する電圧と、伝熱壁8の第4の電極42に印可する電圧とが、異なる値(電圧1と電圧2)に設定される(ステップS7)。このステップS7の制御により、伝熱壁8の第3の電極41と第4の電極42とに電位差が発生し、第2熱電変換素子40が伝熱壁として機能する。その結果、第2蓄熱槽11の温度と、第3蓄熱槽12の温度との差に基づいて、第2蓄熱槽11の熱が第2熱電変換素子40を介して第3蓄熱槽12に伝達され、その熱が第3蓄熱槽12に蓄熱される。
【0033】
前記ステップ7についで、第3温度センサ20の検知情報が読み込まれるとともに(ステップS8)、第3温度センサ20により検知された温度が、判定値未満であるか否かが判断される(ステップS9)。このステップS9で肯定的に判断された場合は、第3蓄熱層12が十分蓄熱をおこなった状態であると考えられるため、伝熱壁9の第5の電極44に印可する電圧と、伝熱壁9の第6の電極45に印可する電圧とが、異なる値(電圧1と電圧2)に設定され(ステップS10)、リターンされる。このステップS10の制御により、伝熱壁9の第5の電極44と第6の電極45とに電位差が発生し、第3熱電変換素子43が伝熱壁として機能する。その結果、第3蓄熱槽12の温度と、第4蓄熱槽13の温度との差に基づいて、第3蓄熱槽12の熱が第3熱電変換素子43を介して第4蓄熱槽13に伝達され、その熱が第4蓄熱槽13に蓄熱される。
【0034】
これに対して、前記ステップS9で否定的に判断された場合は、伝熱壁9の第5の電極44に印可する電圧と、伝熱壁9の第6の電極16に印可する電圧とを同じ(電圧2)に設定し(ステップS11)、リターンされる。このステップ11の制御により、第3熱電変換素子43が断熱壁として機能するため、第3蓄熱槽12の熱は、第4蓄熱槽13に伝達されない。
【0035】
また、前記ステップS6で否定的に判断された場合は、伝熱壁8の第3の電極41に印可する電圧と、伝熱壁8の第4の電極42に印可する電圧とを同じ(電圧2)に設定するとともに、伝熱壁9の第5の電極44に印可する電圧と、伝熱壁9の第6の電極45に印可する電圧とを同じ(電圧2)に設定し(ステップS12)、リターンされる。このステップ12の制御により、第2熱電変換素子40が断熱壁として機能するため、第2蓄熱槽11の熱は、第3蓄熱槽12に伝達されない。また、ステップS12のその他の作用は、ステップS11と同じである。
【0036】
一方、前記ステップS3またはステップS1で否定的に判断された場合は、伝熱壁7の第1の電極15に印可する電圧と、伝熱壁7の第2の電極16に印可する電圧と、伝熱壁8の第3の電極41に印可する電圧と、伝熱壁8の第4の電極42に印可する電圧と、伝熱壁9の第5の電極44に印可する電圧と、伝熱壁9の第6の電極45に印可する電圧とを、全て同じ(電圧2)に設定し(ステップS13)、リターンされる。このステップ13の制御により、伝導素子14が断熱壁として機能するため、第1蓄熱槽10の熱は、第2蓄熱槽11に伝達されない。ステップS13のその他の作用は、ステップS12と同じである。なお、図2のフローチャートで用いる判定値を、各蓄熱槽に収納される蓄冷剤の蓄冷特性に基づいて、変更することができる。さらに、第4温度センサ21の検知信号は、例えば、第1温度センサ18ないし第4温度センサ21の検知信号は、伝熱壁7,8,9の制御に利用されるだけでなく、各蓄熱層の蓄熱量の監視をおこなうために使用される。
【0037】
このように、図1に示す蓄熱装置1によれば、伝熱壁7,8,9の各電極15,16,41,42,44,45に印可する電圧を制御することにより、各第1熱電変換素子14,40,43を、伝熱壁と断熱壁とに切り替えることができる。言い換えれば、伝熱壁を隔てた蓄熱槽同士の間における熱伝達性能、具体的には熱伝達率、熱流束、熱貫流率(熱通過率)、全熱抵抗などを制御できる。したがって、蓄熱装置1の全体としての熱容量を変更(言い換えれば、制御、調整)することができる。また、熱媒体である冷媒の熱が第1蓄熱槽10に蓄熱されるとともに、ブライン配管23を流通する熱媒体の温度と、第1蓄熱槽10の温度との差に基づいて、第1蓄熱槽10とブライン配管23の内部の熱媒体との間で熱交換がおこなわれて、熱媒体が加熱または冷却される。
【0038】
このとき、冷媒配管22およびブライン配管23が、共に第1蓄熱槽10に配置され、第2蓄熱槽11,12,13には、冷媒配管およびブライン配管は配置されていない。言い換えれば、蓄熱層と熱媒体との間の熱の伝達作用は、第1蓄熱槽10で発生し、第2蓄熱槽11,12,13では発生しない。つまり、冷媒配管およびブライン配管を第2蓄熱槽11および第3蓄熱槽12および第4蓄熱槽,13に設ける必要はなく、冷媒配管22およびブライン配管23を、第2蓄熱槽11および第3蓄熱槽12および第4蓄熱槽13に配置するための分岐管などを設ける必要もない。したがって、蓄熱装置1を構成する部品点数の増加を抑制でき、蓄熱装置1の構造の複雑化、大型化、大重量化を抑制でき、かつ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0039】
また、ブライン配管23で必要な熱量に応じて、蓄熱装置1の熱容量を増減できるため、システムの作動初期に、第1蓄熱槽10に蓄熱して、第2蓄熱槽11および第3蓄熱槽12および第4蓄熱槽13に蓄熱しないように制御すれば、システムの作動初期に、蓄熱装置1の全体に熱を伝達せずに済む。すなわち、第1蓄熱槽10温度を迅速に変化させることができる。したがって、第1蓄熱槽10の熱がブライン配管23の熱媒体に伝達されないという熱のロスを防止でき、第1蓄熱槽10とブライン配管23内の熱媒体との間の熱伝達効率が向上する。
【0040】
さらに、システムの不作動時は、第1熱電変換素子14が断熱壁として機能するため、第2蓄熱槽11および第3蓄熱槽12および第4蓄熱槽13に蓄熱されている熱が、冷媒配管22およびブライン配管23に伝達されること、言い換えれば放熱量を最小限に止めることができ、保熱効率が向上する。さらに、蓄熱装置1の熱容量を変更するための構成として、バルブなどのように、機械的に開閉される開閉装置を用いていないため、開閉装置の作動空間を確保する必要もなく、蓄熱装置1の小型化を一層促進できる。
【0041】
さらに、前述したように、コンプレッサ24を有する経路A1を冷媒が循環することで、蓄熱がおこなわれるため、コンプレッサ24を作動する必要があり、車両のエンジンによりコンプレッサ24が駆動されている時に、蓄熱がおこなわれる。また、蓄熱された熱を利用して車室内の冷房をおこなうか否かは、車両の走行状態や蓄熱装置1の蓄熱状態を検出して決定される。蓄熱装置1における蓄熱は、第1蓄熱層10に対してのみおこなわれ、第2蓄熱層11ではおこなわれない場合もある。
【0042】
この場合、システムが不作動となり、冷房が不要となることもある。すると、伝熱壁7,8,9は断熱壁として機能する状態で、第1蓄熱層10と第2蓄熱層11との間で温度差が発生する。この温度差に基づき第1熱電変換素子14は、起電力を発生するので、発生した電力を蓄電装置46に蓄電し、その電力を電気装置(図示せず)に供給することができる。これにより、蓄熱した熱を、熱源として利用できないときに、起電力発生源として利用することになり、蓄熱装置1で蓄えられた熱が無駄になることを低減できる。
【0043】
なお、図1に示す例では、第1蓄熱槽に対して、他の複数の蓄熱槽が直列に配置されているが、第1蓄熱槽に対して、他の複数の蓄熱槽が並列に配置されていてもよい。また、この実施例において、各蓄熱槽10,11,12,13の容積は、全て同じでもよいし、各蓄熱槽の容積が相互に異なっていてもよい。また、この実施例においては、第1の物体および第2の物体の一例として挙げている冷媒および熱媒体がいずれも流体(液体・気体)となっているが、第1の物体または第2の物体のうちの少なくとも一方が、固体である場合にも、この発明を適用できる。この場合は、その固体が蓄熱部を“通過”することなく、“配置”される。さらに、第1蓄熱部および第2蓄熱部の一例として、第1蓄熱槽10および第2蓄熱槽11の内部の空気という流体、または内部に収容された蓄冷剤(ゲル状物)が挙げられているが、第1蓄熱部および第1蓄熱部の少なくとも一方が、固体であってもよい。
【0044】
ここで、この実施例の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、冷媒およびブラインが、この発明の熱媒体に相当し、第1蓄熱層10が第1蓄熱部に相当し、第2蓄熱槽11が、この発明の第2蓄熱部に相当する。
【0045】
ここで、上記の具体例に基づいて開示された特徴的な構成を列挙すれば以下のとおりである。すなわち、熱媒体との間で熱の伝達が可能であり、前記熱媒体から伝達された熱を蓄える蓄熱装置において、前記熱媒体との間で熱の伝達をおこなう第1の蓄熱部と、この第1の蓄熱部と伝熱壁を介して設けられた第2の蓄熱部とを有し、前記伝熱壁の熱伝導性能を制御することにより、第1蓄熱部の熱容量を制御する熱容量制御手段を備えていることを特徴とする蓄熱装置の制御装置である。
【0046】
そして、前記図2に示されたステップS1ないしステップS4、およびステップS13が、熱容量制御手段に相当する。この蓄熱装置の制御装置における作用効果は、実施例で説明した蓄熱装置の作用効果と同じである。また、熱溶量制御手段を、熱容量制御器または熱容量制御用コントローラと読み替えることもできる。この場合、図1に示された電子制御装置31が、熱容量制御器または熱容量制御用コントローラに相当する。また、熱溶量制御手段を、熱容量制御ステップと読み替え、蓄熱装置の制御装置を、蓄熱装置の制御方法と読み替えることもできる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、熱電変換素子への通電状態に応じて伝熱壁を伝導状態と断熱状態に切換えれば、第1の蓄熱部の熱容量を変更できる。つまり、熱媒体と第2蓄熱部に向けて移動させるための分岐部は不要である。したがって、蓄熱装置を構成する部品点数の増加を抑制でき、蓄熱装置の構造の複雑化、大重量化、大型化を抑制でき、かつ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0048】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、蓄熱装置内に残留している熱エネルギを電気エネルギに変換して、その電力を蓄電装置に蓄電することができ、エネルギの無駄を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示す概念図である。
【図2】図1のシステムの制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…蓄熱装置、 7,8,9…伝熱壁、 10…第1蓄熱槽、 11…第2蓄熱槽、 12…第3蓄熱槽、 13…第4蓄熱槽、 14,40,43…熱電変換素子、 15,16…電極、 22…冷媒配管、 23…ブライン配管、 46…蓄電装置。
Claims (2)
- 熱媒体との間で熱の伝達が可能であり、前記熱媒体から伝達された熱を蓄える蓄熱装置において、
前記熱媒体との間で熱の伝達をおこなう第1の蓄熱部と、この第1の蓄熱部と伝熱壁を介して設けられた第2の蓄熱部とを有し、
前記伝熱壁が熱電変換素子を有し、この熱電変換素子への通電状態に応じて前記伝熱壁が熱伝導状態と断熱状態に切換えられることにより、前記第1の蓄熱部の熱容量が可変に構成されていることを特徴とする蓄熱装置。 - 前記伝熱壁を断熱状態にしたときに、前記第1の蓄熱部と第2の蓄熱部との温度差に応じて、前記熱電変換素子で起電力が発生することを特徴とする請求項1に記載の蓄熱装置。
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