JP2004019495A - 動力伝達機構の位置決め構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転機械のハウジングにおける動力伝達機構の位置決め構造を簡素化すること。
【解決手段】圧縮機Cのハウジング11における動力伝達機構PTの位置決め構造は、プーリ用ベアリング57を回転軸13のスラスト方向前後に位置決めするベアリング位置決め手段と、電動モータ部38のステータブラケット48をスラスト方向前後に位置決めするブラケット位置決め手段とを備えている。ベアリング位置決め手段とブラケット位置決め手段とにおいては、スラスト方向の前方側の位置決め面78a及び後方側の位置決め面41aの両方が共用されている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転機械のハウジングに装着されて回転機械の回転軸に動力を入力するための動力伝達機構に関し、特に回転機械のハウジングにおける動力伝達機構の位置決め構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の動力伝達機構としては、例えば図4に示すように、車両用空調装置の冷媒圧縮機101 において、車両の走行駆動源たるエンジンとの間の動力伝達経路上に配設されたものが存在する。
【0003】
すなわち、前記圧縮機101 のハウジング102 には、回転軸104 用のボス部102aが突設されている。ボス部102aには、エンジンからの動力を回転軸104 に入力するためのプーリ105 が、ベアリング113 を介して回転可能に支持されている。プーリ105 内において回転軸104 には、電動モータ部106 を構成するロータ106aが一体回転可能に支持されている。プーリ105 内においてボス部102aには、電動モータ部106 を構成するステータ106bが、ステータブラケット109 を介して支持されている。
【0004】
前記ベアリング113 のスラスト方向への位置決めは、ボス部102aに形成された段差部の壁面がなすスラスト方向の後方側の位置決め面114 と、ボス部102aに嵌合固定されたサークリップ116 が有する前方側の位置決め面116aとによって行われている。ステータブラケット109 のスラスト方向への位置決めは、ボス部102aに形成された前記とは別の段差部の壁面がなすスラスト方向の後方側の位置決め面110 と、ボス部102aに嵌合固定された前記とは別のサークリップ112 が有する前方側の位置決め面112aとによって行われている。つまり、ベアリング113 及びステータブラケット109 のスラスト方向への位置決めには、それぞれ専用の位置決め手段が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記ベアリング113 の位置決め手段及びステータブラケット109 の位置決め手段は、スラスト方向の前方側の位置決め面112a,116a 及び後方側の位置決め面110,114 をそれぞれ専用に備えている。従って、圧縮機101 のハウジング102 における動力伝達機構の位置決め構造(取付構造)が複雑となり、様々な問題を生ずることとなっていた。
【0006】
すなわち、例えば、前記ベアリング113 の位置決め手段及びステータブラケット109 の位置決め手段のそれぞれにサークリップ112,116 が必要で、動力伝達機構を有する圧縮機101 の部品点数及び組付工数が多くなっていた。また、各位置決め手段毎にサークリップ112,116 が嵌め込まれる環状溝111,115 が必要で、そのハウジング102 への加工が面倒であった。さらに、各位置決め手段毎に位置決め用の段差部(後方側の位置決め面110,114 )が必要で、そのハウジング102 への加工が面倒となっていた。
【0007】
また、前記ベアリング113 の位置決め手段及びステータブラケット109 の位置決め手段を専用化することは、それらのハウジング102 における配置スペースを考慮すると、ベアリング113 及びステータブラケット109 をスラスト方向に大きくずらして配置する必要がある。従って、動力伝達機構がスラスト方向へ大型化する問題を生じていた。
【0008】
本発明の目的は、回転機械のハウジングにおける動力伝達機構の位置決め構造を簡素化することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、回転機械のハウジングに対して、回転体用ベアリングを回転軸のスラスト方向前後に位置決めするベアリング位置決め手段と、ハウジングに対してステータブラケットを回転軸のスラスト方向前後に位置決めするブラケット位置決め手段とを備えている。ベアリング位置決め手段及びブラケット位置決め手段は、スラスト方向の前方側の位置決め面及び後方側の位置決め面からなっている。
【0010】
そして、前記ベアリング位置決め手段とブラケット位置決め手段とにおいては、スラスト方向の前方側及び後方側の位置決め面のうちの少なくとも一方が共用されている。従って、回転機械のハウジングにおける動力伝達機構の位置決め構造を簡素化することができ、この位置決め構造の複雑化に起因した、加工面倒等の様々な問題を解消することができる。
【0011】
請求項2の発明は請求項1において、前記ベアリング位置決め手段とブラケット位置決め手段とは、スラスト方向の前方側及び後方側の両方の位置決め面を共用している。これは、回転機械のハウジングにおける動力伝達機構の位置決め構造のさらなる簡素化につながる。
【0012】
請求項3の発明は請求項1又は2において、前記スラスト方向の前方側及び後方側の少なくとも一方の位置決め面は、ハウジングに装着された位置決め専用の位置決め部材によって提供されている。この位置決め部材によって提供される位置決め面が、ベアリング位置決め手段とブラケット位置決め手段とで共用されている。つまり、ベアリング位置決め手段とブラケット位置決め手段とにおいては、位置決め部材が共用されている。位置決め専用の部材を共用することは位置決め構造の部品点数の削減に直結し、動力伝達機構を備えた回転機械の安価提供に大きく貢献されることとなる。
【0013】
請求項4の発明は請求項1〜3のいずれかにおいて、前記電動モータ部は回転体内に設けられた密閉空間に収容されている。回転体用ベアリングは回転体内の密閉空間と外方との境界に位置されており、この回転体用ベアリングとハウジングとの間の隙間は、例えば外方から密閉空間内への浸水経路となり得る。
【0014】
そこで本発明においては、前記回転体用ベアリングがシール部材を介して位置決め面に当接されており、このシール部材によって前述した浸水経路が遮断されている。回転体用ベアリングの位置決め部分にシール部材を配置することで、この位置決め部分に作用する部材間の押圧力を利用してシール部材のシール圧力を確保でき、例えばシール部材を位置決め部分とは別に配設する場合と比較して、シール部材のシール圧力を専用の部材の組付けによって確保する面倒がなくなる。
【0015】
請求項5の発明は請求項1〜4のいずれかにおいて、前記回転体用ベアリングの固定側レースとハウジングとの間には、回転体の軸線を中心とした両者間の相対回転を阻止する回り止め手段が設けられている。従って、回転体の回転に固定側レースが連れ回りされることを防止でき、例えばこの固定側レースとハウジングとの相対回転による摺動摩耗に起因した回転体用ベアリングのガタつきを防止できる。
【0016】
請求項6の発明は請求項5において、前記回り止め手段は、回転体用ベアリングの固定側レースに挿嵌固定され回転体の軸線回りに係合凸部及び係合凹部の一方を有するカラーと、ハウジング側において回転体の軸線回りに設けられた係合凸部及び係合凹部の他方とからなっている。そして、カラーがハウジング側に凹凸係合することで、固定側レースとハウジングとの回り止めが達成されている。このように、回り止め手段として、回転体用ベアリングとハウジングとの間に係合部形成用のカラーを介在させることで、例えば固定側レースへの係合凸部又は係合凹部の直接形成によって回転体用ベアリングが特殊な形状となることがなく、汎用品のベアリングをそのまま用いることができる。これは動力伝達機構を備えた回転機械の安価提供につながる。
【0017】
請求項7の発明は請求項6において、前記ハウジング側の係合凸部又は係合凹部はステータブラケットに形成されている。上述したように、回転体用ベアリングとステータブラケットとは関連性を以てハウジングに位置決めされている。従って、回転体用ベアリング及びステータブラケットの位置決め作業と同時に、係合凸部と係合凹部の係合作業を行うことが可能となり、動力伝達機構の回転機械に対する組付性を向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両用空調装置の冷凍サイクルを構成する回転機械としての冷媒圧縮機(以下単に圧縮機とする)Cは、ハウジング11内にピストン式の圧縮機構12が収容されてなる。ピストン式の圧縮機構12は、回転軸13の回転に伴う斜板14の回転運動が、シュー15を介してピストン16の往復運動に変換されることで冷媒ガスの圧縮を行う周知の構成を有している。
【0019】
前記圧縮機Cにおいてハウジング11の外側には、回転軸13と同軸位置に、この回転軸13へ動力を入力するための動力伝達機構PTが装着されている。動力伝達機構PTは、回転体としてのプーリ17と電動モータ部38とを備えている。プーリ17は、ハウジング11に回転可能に支持され、外部駆動源としての車両走行駆動源たるエンジンEからの動力を回転軸13に伝達する。電動モータ部38は、例えば、エンジンEの停止時において回転軸13を駆動する場合に用いられ、この電動モータ部38を備えることによって、エンジンEの停止時においても空調(冷房)が可能となる。
【0020】
次に、前記動力伝達機構PT及びこの動力伝達機構PTの圧縮機Cに対する取付構造について詳述する。なお、図面において左方を圧縮機Cの前方とし右方を圧縮機Cの後方とする。
【0021】
図1及び図2に示すように、前記圧縮機構12の回転軸13はハウジング11に回転可能に支持されており、その前端部はハウジング11の前壁を貫通して外部に突出されている。ハウジング11の前壁には、回転軸13用のボス部35が一体に突設されている。ボス部35は、基端側たる後方側が大径(大径部35a)で先端側たる前方側が小径(小径部35b)となっている。
【0022】
前記ボス部35の大径部35aには、円筒状のブラシユニットホルダ37が外嵌固定されている。ハウジング11において前壁面の外周部には、ブラシユニットホルダ37の後側を取り囲むようにして給電リング41が固定されている。ハウジング11の前壁面と給電リング41との間の接触環状領域には、第1シール部材43が介在されている。
【0023】
前記プーリ17は、同軸位置に配置された上流側プーリ部材18と下流側プーリ部材19とからなっている。上流側プーリ部材18は、エンジンEからのベルト20が掛けられる溝18aを外周面に有している。上流側プーリ部材18は、回転体用ベアリングとしてのプーリ用ベアリング57を介して、ハウジング11のブラシユニットホルダ37に回転可能に支持されている。プーリ用ベアリング57は、プーリ部材18側たる外側の可動側レース59と、ブラシユニットホルダ37側たる内側の固定側レース58と、両レース58,59間に介在された転動ボール60とを備えたボールベアリングよりなっている。
【0024】
前記下流側プーリ部材19は、回転軸13の前端部に固定されたハブ30に、回転体用ワンウェイクラッチ31を介して支持されている。上流側プーリ部材18と下流側プーリ部材19とは、破断タイプのトルクリミッタとしても機能する動力伝達ピン28と、両プーリ部材18,19間での伝達トルクの変動を緩和するためのゴムダンパ29とを介して連結されている。
【0025】
前記回転体用ワンウェイクラッチ31は、クラッチ機構部31a及び軸受部31bを備えている。クラッチ機構部31aは、一方向の回転に関し、下流側プーリ部材19からハブ30への動力伝達は許容するが、ハブ30から下流側プーリ部材19への動力伝達は許容しない。従って、エンジンEの駆動によって上流側プーリ部材18が一方向に回転されると、動力伝達ピン28及びゴムダンパ29を介して下流側プーリ部材19も一方向に回転し、この回転力は回転体用ワンウェイクラッチ31及びハブ30を介して回転軸13に入力される。
【0026】
逆に、前記エンジンEの停止時において、電動モータ部38によって回転軸13が一方向に回転駆動されると、この回転力はハブ30を介して回転体用ワンウェイクラッチ31に伝達される。しかし、回転体用ワンウェイクラッチ31のクラッチ機構部31aは、ハブ30から下流側プーリ部材19への動力伝達は許容しないため、電動モータ部38の動力がエンジンEに伝達されてしまうこと、言い換えれば電動モータ部38の発生した動力が圧縮機構12の駆動以外で消費されてしまうことを防止できる。
【0027】
前記プーリ17内には、上流側プーリ部材18と下流側プーリ部材19との接合によって密閉空間88が形成されている。この密閉空間88内には、プーリ17と同軸位置に電動モータ部38が収容配置されている。
【0028】
すなわち、前記プーリ17の密閉空間88内において回転軸13には、ロータ45がモータ用ワンウェイクラッチ44を介して装着されている。ロータ45は、鉄心45aとこの鉄心45aに巻回されたコイル45bとからなっている。ロータ45の後側には整流子50が固定されている。密閉空間88内においてロータ45の外周側には、マグネットからなるステータ49が配置されている。ステータ49は、ステータブラケット48を介してハウジング11に支持されている。
【0029】
前記プーリ17の密閉空間88内においてブラシユニットホルダ37の前端部には、凹部37aが形成されている。凹部37aは、プーリ17の軸線回りに等間隔で複数(図1及び図2には1箇所のみ示す)が形成されている。各凹部37aには給電ブラシユニット39が保持されている。給電ブラシユニット39のブラシ39aは、整流子50に押圧接触されている。給電リング41には、外部からの電力をブラシ39aに供給するための配線(図示しない)が埋設されている。従って、外部からの電力が、給電リング41(埋設配線)、給電ブラシユニット39及び整流子50を介してコイル45bへ供給されることで、ロータ45が回転される。
【0030】
前記モータ用ワンウェイクラッチ44は回転体用ワンウェイクラッチ31と同様に、クラッチ機構部44a及び軸受け部44bからなっている。クラッチ機構部44aは、回転体用ワンウェイクラッチ31の説明で述べた「一方向の回転」に関し、ロータ45から回転軸13への動力伝達は許容するが、回転軸13からロータ45への動力伝達は許容しない。従って、エンジンEの停止時において電動モータ部38が起動されると、その回転力はモータ用ワンウェイクラッチ44を介して回転軸13に伝達される。逆に、エンジンEの稼働時においてこのエンジンEの駆動によって回転軸13が回転されても、この回転力がロータ45に入力されることはなく、エンジンEのロータ駆動負荷を削減することができる。
【0031】
次に、本実施形態の特徴点である、ハウジング11におけるプーリ用ベアリング57及びステータブラケット48の位置決め構造について詳述する。
図2に示すように、前記ブラシユニットホルダ37の前端側の外周面は、凹部37aの形成によって環状が離断されている。給電ブラシユニット39は、このブラシユニットホルダ37の離断された環状を補うようにして凹部37aに収容されている。ブラシユニットホルダ37の前端側の外面及び給電ブラシユニット39の外面によって提供される円筒面には、それを覆うようにしてカラー51が遊嵌されている。
【0032】
前記カラー51は、ブラシユニットホルダ37及び給電ブラシユニット39に嵌合される円筒部52と、この円筒部52の後端縁に設けられたフランジ部53とからなっている。プーリ用ベアリング57は、固定側レース58を以てカラー51の円筒部52に圧入固定され、固定側レース58の後端面がフランジ部53に当接する位置まで押し込められている。固定側レース58と円筒部52との間には、両者52,58間の接触環状領域をシールするための第2シール部材61が介在されている。
【0033】
前記カラー51はそのフランジ部53の後面53aを以て、給電リング41の前面41aの円環状領域に、シール部材としての第3シール部材56を介して当接されている。つまり、給電リング41の前面41aは、カラー51が回転軸13のスラスト方向の後方側へ移動することを当接規制するための言い換えればプーリ用ベアリング57(固定側レース58)をスラスト方向に位置決めするための後方側の位置決め面41aをなしている。
【0034】
前記ステータブラケット48は、円環状の基部67と、この基部67の外周側に延設された円環状の板状部68と、この板状部68の外周縁から前方に向けて延在された円筒状のステータ固定部69とを備えている。ステータ49はステータ固定部69の内周面に固定されている。ステータブラケット48は、その基部67を以てボス部35の小径部35bに遊嵌されている。ステータブラケット48は、その基部67とブラシユニットホルダ37との間に介在されたピン76によって、ブラシユニットホルダ37つまりハウジング11に対して回り止めされている。
【0035】
前記ボス部35の小径部35bの外周面において、ステータブラケット48の基部67の前方側には、環状溝77が形成されている。環状溝77にはサークリップ78が嵌め込まれている。ステータブラケット48はその基部67の前面67aを以て、サークリップ78の後面78aに環状領域で当接されている。つまり、サークリップ78の後面78aは、回転軸13のスラスト方向の前方側へステータブラケット48が移動することを当接規制するための前方側の位置決め面78aをなしている。
【0036】
前記カラー51はその円筒部52の前端面52aを以て、ステータブラケット48の板状部68の後面68aに当接されている。従って、スラスト方向の前方側へのカラー51の移動は、直接的には、円筒部52の前端面52aがステータブラケット48の板状部68の後面68aに当接することで規制されている。そして結果的には、ステータブラケット48の基部67の前面67aがサークリップ78の前方側位置決め面78aに当接することで規制されていることとなる。また、スラスト方向の後方側へのステータブラケット48の移動は、直接的には、板状部68の後面68aがカラー51の円筒部52の前端面52aに当接することで規制されている。そして結果的には、カラー51のフランジ部53の後面53aが第3シール部材56を介して給電リング41の後方側位置決め面41aに当接することで規制されていることとなる。
【0037】
前記サークリップ78はテーパサークリップよりなり、環状溝77に嵌め込まれることで、ステータブラケット48の基部67に対してスラスト方向の後方側への押圧力を作用させる。従って、この押圧力がステータブラケット48の板状部68を介してカラー51の円筒部52に作用し、カラー51のフランジ部53は給電リング41が提供する後方側の位置決め面41aに第3シール部材56を介して圧接されている。
【0038】
つまり、本実施形態においては、プーリ用ベアリング57のスラスト方向への位置決め手段と、ステータブラケット48のスラスト方向への位置決め手段とが、各手段の構成要素たるスラスト方向の前方側の位置決め面78a及び後方側の位置決め面41aの両方を共用している。
【0039】
なお、本実施形態では、カラー51(前端面52a)、ステータブラケット48(後面68a、前面67a)及びサークリップ78(後面78a)は、プーリ用ベアリング57を前方向に位置決めするベアリング位置決め手段を構成する。そして給電リング41(前面41a)、第3シール部材56、及び、カラー51(後面53a)は、プーリ用ベアリング57を後方向に位置決めするベアリング位置決め手段を構成する。また、サークリップ78(後面78a)はステータブラケット48を前方向に位置決めするブラケット位置決め手段となっている。そして給電リング41(前面41a)、第3シール部材56、及び、カラー51(後面53a、前端面52a)は、ステータブラケット48を後方向に位置決めするブラケット位置決め手段を構成する。
【0040】
図2及び図3に示すように、前記円筒部52の前端面52aには、係合凸部54が前方側に向かって突設されている。係合凸部54は、円筒部52の周方向に等間隔で複数(図2には1箇所のみ示す)が設けられている。ステータブラケット48の板状部68には、カラー51の係合凸部54に対応する位置に、係合凹部としての係合孔68bが穿設されている。
【0041】
そして、プーリ用ベアリング57及びステータブラケット48をスラスト方向へ位置決めした状態で係合孔68bに係合凸部54が凹凸係合されることで、カラー51とステータブラケット48とは、言い換えれば、固定側レース58とハウジング11とは、プーリ17の軸線を中心とした相対回転が不可能となっている。
【0042】
上記構成の本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)プーリ用ベアリング57の位置決め手段とステータブラケット48の位置決め手段とは、位置決め面41a,78aを共用している。従って、圧縮機Cのハウジング11における動力伝達機構PTの位置決め構造(取付構造)を簡素化することができ、この位置決め構造の複雑化に起因した、加工面倒や部品点数増や動力伝達機構PTのスラスト方向への大型化等の様々な問題を解消することができる。
【0043】
(2)プーリ用ベアリング57の位置決め手段とステータブラケット48の位置決め手段とは、スラスト方向の前方側の位置決め面78a及び後方側の位置決め面41aの両方を共用している。これは、圧縮機Cのハウジング11における動力伝達機構PTの位置決め構造のさらなる簡素化につながる。
【0044】
(3)位置決め専用の部材たるサークリップ78が、プーリ用ベアリング57の位置決め手段とステータブラケット48の位置決め手段とで共用されている。位置決め専用のサークリップ78を共用することは位置決め構造の部品点数の削減に直結し、動力伝達機構PTを備えた圧縮機Cの安価提供に大きく貢献される。
【0045】
(4)電動モータ部38はプーリ17内に設けられた密閉空間88に収容されている。プーリ用ベアリング57は密閉空間88と外方との境界に位置されており、このプーリ用ベアリング57に一体化されたカラー51(フランジ部53の後面53a)とハウジング11側たる給電リング41(後方側位置決め面41a)との間の隙間は、例えば外方から密閉空間88内への浸水経路となり得る。
【0046】
そこで本実施形態においては、前記プーリ用ベアリング57が第3シール部材56を介して後方側位置決め面41aに当接されており、この第3シール部材56によって前述した浸水経路が遮断されている。従って、密閉空間88の防水性が高められ、電動モータ部38を浸水から保護することができる。このように、プーリ用ベアリング57の位置決め部分に第3シール部材56を配置することで、この位置決め部分に作用する部材41,51間の押圧力を利用して第3シール部材56のシール圧力を確保できる。したがって、例えば第3シール部材56を位置決め部分とは別に配設する場合と比較して、第3シール部材56のシール圧力を専用の部材の組付けによって確保する面倒がなくなる。
【0047】
(5)プーリ用ベアリング57の固定側レース58とハウジング11との間には、プーリ17の軸線を中心とした両者11,58間の相対回転を阻止する回り止め手段54,68bが設けられている。従って、プーリ17の回転に固定側レース58が連れ回りされることを防止でき、例えばこの固定側レース58とハウジング11との相対回転による摺動摩耗に起因したプーリ用ベアリング57のガタつきを防止できる。
【0048】
(6)回り止め手段54,68bは、プーリ用ベアリング57の固定側レース58に挿嵌固定されプーリ17の軸線回りに係合凸部54を有するカラー51と、ハウジング11側においてプーリ17の軸線回りに設けられた係合孔68bとからなっている。そして、カラー51がハウジング11側に凹凸係合することで、固定側レース58とハウジング11との回り止めが達成されている。このように、回り止め手段としてプーリ用ベアリング57とハウジング11との間に係合凸部54を形成するためのカラー51を介在させることで、例えば固定側レース58への係合凸部54の直接形成によってプーリ用ベアリング57が特殊な形状となることがなく、汎用品のベアリングをそのまま用いることができる。これは動力伝達機構PTを備えた圧縮機Cの安価提供につながる。
【0049】
(7)回り止め手段54,68bにおいてハウジング11側の係合孔68bは、ステータブラケット48に形成されている。上述したように、プーリ用ベアリング57とステータブラケット48とは関連性を以てハウジング11に位置決めされている。従って、プーリ用ベアリング57及びステータブラケット48の位置決め作業と同時に、係合凸部54と係合孔68bの係合作業を行うことが可能となり、動力伝達機構PTの圧縮機Cに対する組付性を向上させることができる。
【0050】
なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で例えば以下の態様でも実施できる。○上記実施形態においてプーリ用ベアリング57の位置決め手段とステータブラケット48の位置決め手段とにおいては、スラスト方向の前方側の位置決め面78a及び後方側の位置決め面41aの両方が共用されていた。これを変更し、プーリ用ベアリング57の位置決め手段とステータブラケット48の位置決め手段とで、スラスト方向の前方側の位置決め面78a及び後方側の位置決め面41aの一方のみを共用するように構成すること。例えば、上記実施形態を変更し、スラスト方向の後方側へのステータブラケット48の位置決めを、ボス部35において大径部35aと小径部35bとの境界に位置する段差の壁面によって行うこと。
【0051】
○上記実施形態において位置決め専用の部材は、サークリップ78に具体化されていた。しかしこれに限定されるものではなく、例えば、ボス部35において小径部35bの外周面にネジ面を形成し、このネジ面に螺合されたナットによって前方側位置決め面を提供すること。
【0052】
○上記実施形態において回り止め手段は、カラー51に設けられた係合凸部54とステータブラケット48に設けられた係合孔(係合凹部)68bとによって構成されていた。これを変更し、カラー51に係合凹部を設けるとともにステータブラケット48に係合凸部を設けるようにしてもよい。
【0053】
○上記実施形態において回り止め手段は、カラー51に設けられた係合凸部54とステータブラケット48に設けられた係合孔(係合凹部)68bとによって構成されていた。これを変更し、カラー51とブラシユニットホルダ37又は給電リング41とを凹凸係合させることで、回り止め手段としてもよい。
【0054】
○上記実施形態において回り止め手段の係合凸部54は、カラー51に設けられていた。これを変更し、係合凸部54をプーリ用ベアリング57の固定側レース58に直接設けてもよい。
【0055】
○上記実施形態においてカラー51は、ブラシユニットホルダ37及び給電ブラシユニット39に遊嵌されていた。これを変更し、カラー51を、ブラシユニットホルダ37及び給電ブラシユニット39に圧入固定してこれら部材37,39に一体化し、この一体化によってプーリ用ベアリング57(固定側レース58)をハウジング11に対して回り止めすること。この場合、カラー51のブラシユニットホルダ37及び給電ブラシユニット39に対する圧入構造が、回り止め手段をなしている。
【0056】
○上記実施形態からカラー51を削除し、プーリ用ベアリング57をブラシユニットホルダ37及び給電ブラシユニット39に直接外嵌すること。この場合、回り止め手段の係合凸部54は、プーリ用ベアリング57の固定側レース58に直接設けられることとなる。
【0057】
○上記実施形態において電動モータ部38は、ステータ49の内側にロータ45が配置されたインナロータタイプに具体化されていた。しかし、電動モータ部はインナロータタイプに限定されるものではなく、ステータの外周側にロータが配置されたアウタロータタイプや、ステータ及びロータを平板状に構成して軸線方向前後に配置したフラットロータタイプに具体化してもよい。
【0058】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載すると、前記位置決め専用の部材はテーパサークリップである請求項3に記載の動力伝達機構の位置決め構造。
【0059】
【発明の効果】
上記構成の本発明によれば、回転機械のハウジングにおける動力伝達機構の位置決め構造を簡素化することができ、この位置決め構造の複雑化に起因した、加工面倒等の様々な問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】動力伝達機構を備えた圧縮機の縦断面図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】従来の動力伝達機構を備えた圧縮機の要部拡大断面図。
【符号の説明】
11…ハウジング、13…回転軸、17…回転体としてのプーリ、38…電動モータ部、41…給電リング、41a…スラスト方向の後方側の位置決め面としての前面、48…ステータブラケット、49…ステータ、51…カラー、52a…前端面、53a…後面、54…回り止め手段を構成する係合凸部、56…シール部材としての第3シール部材、57…回転体用ベアリングとしてのプーリ用ベアリング、58…プーリ用ベアリングの固定側レース、67a…前面、68a…後面、68b…回り止め手段を構成する係合凹部としての係合孔、78…位置決め専用の位置決め部材としてのサークリップ、78a…スラスト方向の前方側の位置決め面としての後面(41(41a),48(67a,68a),51(52a,53a),56,78(78a)はベアリング位置決め手段を構成し、41(41a),51(52a,53a),56,78(78a)はブラケット位置決め手段を構成する)、88…密閉空間、C…回転機械としての圧縮機、E…外部駆動源としてのエンジン、PT…動力伝達機構。

Claims (7)

  1. 回転機械のハウジングに装着されて回転機械の回転軸に動力を入力するための動力伝達機構であって、ハウジングに回転体用ベアリングを介して回転可能に支持され、外部駆動源からの動力を回転軸に伝達するための回転体と、ハウジングにおいて回転体と同軸位置に配置され、ステータがステータブラケットを介してハウジングに支持された電動モータ部とからなり、外部駆動源の停止時においても電動モータ部によって回転軸を駆動可能な動力伝達機構において、
    前記回転機械のハウジングに対して、回転体用ベアリングを回転軸のスラスト方向前後に位置決めするベアリング位置決め手段と、ハウジングに対してステータブラケットを回転軸のスラスト方向前後に位置決めするブラケット位置決め手段とを備え、ベアリング位置決め手段とブラケット位置決め手段とが、各手段の構成要素たるスラスト方向の前方側及び後方側の位置決め面のうちの少なくとも一方を共用したことを特徴とする動力伝達機構の位置決め構造。
  2. 前記ベアリング位置決め手段とブラケット位置決め手段とが、スラスト方向の前方側及び後方側の両方の位置決め面を共用した請求項1に記載の動力伝達機構の位置決め構造。
  3. 前記スラスト方向の前方側及び後方側の少なくとも一方の位置決め面は、ハウジングに装着された位置決め専用の位置決め部材によって提供されており、この位置決め部材によって提供される位置決め面がベアリング位置決め手段とブラケット位置決め手段とで共用されている請求項1又は2に記載の動力伝達機構の位置決め構造。
  4. 前記電動モータ部は回転体内に設けられた密閉空間に収容されており、この密閉空間と外方との境界に位置する回転体用ベアリングは、密閉空間をシールするためのシール部材を介して位置決め面に当接されている請求項1〜3のいずれかに記載の動力伝達機構の位置決め構造。
  5. 前記回転体用ベアリングの固定側レースとハウジングとの間には、回転体の軸線を中心とした両者間の相対回転を阻止する回り止め手段が設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の動力伝達機構の位置決め構造。
  6. 前記回り止め手段は、回転体用ベアリングの固定側レースに挿嵌固定され回転体の軸線回りに係合凸部及び係合凹部の一方を有するカラーと、ハウジング側において回転体の軸線回りに設けられた係合凸部及び係合凹部の他方とからなり、係合凸部と係合凹部との凹凸係合によって固定側レースとハウジングとを回り止めする構成である請求項5に記載の動力伝達機構の位置決め構造。
  7. 前記ハウジング側の係合凸部又は係合凹部はステータブラケットに形成されている請求項6に記載の動力伝達機構の位置決め構造。
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