JP2004019468A - 軸流ポンプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ハウジング1と、該ハウジング内に収容された羽根車と、該羽根車を回転駆動する駆動機構Dとを備え、ハウジング1内にその軸線方向から取り込んだ液体を羽根車の回転により、その回転軸線方向に圧送する軸流ポンプにおいて、前記羽根車は、該羽根車の下流側に配設された静翼部2の固定軸4に回転自在に支持され、前記羽根車が、固定軸4と前記羽根車との間に形成された隙間内を前記圧送の方向に対して下流側から上流側へ流れる潤滑液体により、固定軸4に浮上状態に回転支持される支持構造を有する構成とした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体を圧送する軸流ポンプに係り、特に、粒子を含む液体の圧送に用いて好適な軸流ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、軸線方向から取り込んだ液体を、羽根車の回転によってその回転軸線方向へ圧送する軸流ポンプが知られている。このような軸流ポンプは、たとえば医療用の代替えあるいは補助心臓として、血液をその回転軸線方向に圧送する人工心臓ポンプとして用いられている。この人工心臓ポンプは、ハウジングと、該ハウジング内に収容された羽根車と、該羽根車を回転駆動する駆動機構とを備えた構成が一般的である。
【0003】
前記ハウジングは、直線状の血液(液体)流路を有し、該血液流路内に、前記羽根車が回転可能に装着されている。
そして、前記駆動機構は、前記羽根車に設けられた永久磁石と、ハウジングに設けられた回転磁界発生器とによって構成されている。
【0004】
図4は、本願出願人が先に出願した前述した人工心臓ポンプの一例を示すものである。
この人工心臓ポンプは、直線状の血液流路Rが形成されたハウジング1と、前記血液流路Rの下流側に配設された静翼部2と、該静翼部2の上流側に配設された動翼部3と、該動翼部3を回転駆動する駆動機構Dとによって構成されている。
【0005】
前記動翼部3は、前記血液流路Rの中心部に配設されたノーズコーン6と、該ノーズコーン6の外周に放射状に突設された動翼7と、これらの動翼7の外周端部を連結するように設けられた環状のシュラウド8とによって構成されており、前記ノーズコーン6と動翼7とによって羽根車が構成されている。
【0006】
そして、前記シュラウド8の両端面および外周面とハウジング1との対向面間には、隙間が形成されており、羽根車やシュラウド8の回転に伴って圧送される血液の一部が前記隙間内に流入して、シュラウド8や羽根車を浮かした状態に保持するようになっている。
また、前記駆動機構Dは、前記シュラウド8内に埋設された永久磁石9と、この永久磁石9を取り囲むように前記ハウジング1内に配設された回転磁界発生器10とによって構成されている。
【0007】
このように構成された人工心臓ポンプは、回転磁界発生器10によって発生される回転磁界によって、前記永久磁石9が吸引されることにより、前記シュラウド8とともにノーズコーン6や動翼8が回転させられ、前記血液流路R内の血液が、軸線方向に圧送される(図示例では、右側から左側へ向かって圧送される)ようになっている。
また、前記血液流路R内を圧送される血液の一部が、前記シュラウド8の下流側の端部とハウジング1との対向面間の隙間から流れ込み、前記シュラウド8の外周面とハウジング1との対向面間の隙間から、前記シュラウド8の上流側の端部とハウジング1との対向面間の隙間を経て、前記血液流路Rへ循環させられる。
このような血液の循環によって、前記シュラウド8がハウジングに1に対して浮いた状態に保持されるようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した人工心臓ポンプのように構成された軸流ポンプにあっては、液体(血液)による動圧軸受け構造が、シュラウド8の外周部に形成されていることにより、この軸受け部における液体(血液)の静止壁と回転壁近傍との周速差が大きくなることから、摩擦損失が大きくなり、ポンプ効率の低下を招くことが予測される。
また、液体が血液となる人工心臓ポンプの場合、血液の静止壁と回転壁近傍の周速差が大きいことにより剪断力が大きくなり、血液中の粒子成分(血球)が破壊されることも予測される。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポンプ効率が高い軸流ポンプの提供を目的としている。特に、血液のように液体中に粒子成分を含む液体を効率よく圧送し、しかも、液体中に含まれる粒子成分の破壊が少ない人工心臓ポンプ等に適した軸流ポンプの提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1に記載の軸流ポンプは、ハウジングと、該ハウジング内に収容された羽根車と、該羽根車を回転駆動する駆動機構とを備え、前記ハウジング内にその軸線方向から取り込んだ液体を前記羽根車の回転により、その回転軸線方向に圧送する軸流ポンプにおいて、前記羽根車は、該羽根車の下流側に配設された静翼部の固定軸に回転自在に支持され、前記羽根車が、前記固定軸と前記羽根車との間に形成された隙間内を前記圧送の方向に対して下流側から上流側へ流れる潤滑液体により、前記固定軸に浮上状態に回転支持される支持構造を有し、前記駆動機構は、前記羽根車の外周部に設けられたシュラウド内に設けられた永久磁石と、前記ハウジング側でかつ前記シュラウドを周囲より覆う位置に配置された回転磁界発生器とによって構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
上記請求項1に記載の軸流ポンプによれば、ハウジング側の回転磁界発生器に電流を流すと回転磁界が発生し、永久磁石を備えたシュラウド及び羽根車を回転させる。そして、ハウジング内に取り込まれた液体の流れのうちの一部が、羽根車と固定軸との間に導かれて潤滑液体として機能し、軸線回りに回転する羽根車及びシュラウドを浮上状態に軸支する。このような構成であるため、従来のような軸シールが不要となる。
また、羽根車のジャーナル軸受を回転軸線近傍に位置させて、その内部を流れる液体の静止壁と回転壁近傍の周速差を低くすることにより、軸受の摩擦損失低下と、液体に生じる剪断力を小さくさせ、液体中の粒子の破壊を抑制する。
【0012】
請求項2に記載の軸流ポンプは、請求項1に記載の軸流ポンプにおいて、前記シュラウドの、少なくとも前記圧送方向上流側の端部と、前記ハウジングとに、それぞれ永久磁石を配設し、これらの永久磁石の反発力により、前記シュラウドを下流側へ向けて押圧するようになされていることを特徴とするものである。
【0013】
上記請求項2に記載の軸流ポンプによれば、羽根車及びシュラウドが回転している状態で、羽根車に作用する上流側へ向かうスラスト力を上記反発力及びシュラウド内に設けられた永久磁石と回転磁界発生器との間の軸方向復元力により相殺して、羽根車の回転軸線方向への位置ずれを抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の軸流ポンプは、請求項2に記載の軸流ポンプにおいて、前記シュラウドの前記圧送方向両端部と、前記ハウジングとに、それぞれ永久磁石を配設し、これらの永久磁石の反発力により、前記シュラウドの前記ハウジングに対する軸線方向の位置ずれを防止するようになされていることを特徴とするものである。
【0015】
上記請求項3に記載の軸流ポンプによれば、シュラウドの回転軸線方向両側に配設された永久磁石の反発力、及びシュラウド内に設けられた永久磁石と回転磁界発生器との間の軸方向復元力により、羽根車の回転軸線方向における位置ずれを抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の軸流ポンプは、請求項1ないし請求項3の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、前記ハウジングの、圧送方向下流側において前記シュラウドと対向する位置に、これらの隙間を流れる液体の旋回を抑制する旋回抑止板を放射状に設けたことを特徴とするものである。
【0017】
上記請求項4に記載の軸流ポンプによれば、シュラウドの圧送方向下流側において、液流の旋回を抑制することにより、シュラウドとハウジングとの間を流れる循環量を低減させることができる。また、循環量を低減できるため、シュラウド〜ハウジング間の隙間C(図1参照)を大きく設定でき、当該部の摩擦損失も低減することができる。
【0018】
請求項5に記載の軸流ポンプは、請求項1から請求項4の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、前記固定軸の上流側は、回転軸線に対して垂直をなす断面形状が、上流側から下流側に向かって大きくなる形状を有することを特徴とするものである。
【0019】
上記請求項5に記載の軸流ポンプによれば、固定軸の表面に沿った液体の流れは斜流となるため、揚程を稼ぐことができるようになる。
【0020】
請求項6に記載の軸流ポンプは、請求項1ないし請求項5の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、前記ハウジングは、互いに接合される上流側ハウジング及び下流側ハウジングを有し、該下流側ハウジングの上流側に、前記液体の動圧を静圧に変換する静翼が一体成形されていることを特徴とするものである。
【0021】
上記請求項6に記載の軸流軸流ポンプによれば、下流側ハウジングに対する静翼の位置調整や、組み付け工程が不要となる。
【0022】
請求項7に記載の軸流ポンプは、請求項1ないし請求項6の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、前記ハウジングは、前記羽根車の回転軸線方向に沿って互いに嵌合される複数のハウジング部品からなることを特徴とするものである。
【0023】
上記請求項7に記載の軸流ポンプによれば、例えば、各ハウジング部品の分割構成を、回転軸線を含む断面で割る分割構造としてしまうと、これらの接合部分が、回転体であるシュラウドや羽根車に面してしまう恐れがあり、このような場合には、接合部分の修正加工もしくは被覆加工などの後加工が必要になる。これに対し、本発明のような部品構成とすることで、各ハウジング部品間の接合部分がシュラウドや羽根車に面しないように配置することができる。
【0024】
請求項8に記載の軸流ポンプは、請求項1ないし請求項7の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、前記液体を血液とし、該血液と接する部分が生体適合性を有する材質からなる人工心臓ポンプとして使用されることを特徴としている。
【0025】
上記請求項8に記載の軸流ポンプによれば、羽根車のジャーナル軸受が回転軸線近傍に位置して内部を流れる液体の静止壁と回転壁近傍の周速差を低くできるので、人工心臓ポンプの摩擦損失低減と、圧送する液体となる血液中に含まれる粒子成分の破壊を抑制することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の軸流ポンプは、たとえば人工心臓ポンプとして使用される。この人工心臓ポンプは、心臓の代替えとして血液の流れを生じせしめるものである。
以下では、軸流ポンプの一例として人工心臓ポンプの一実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこの人工心臓ポンプのみに限定解釈されるものではなく、軸流ポンプ一般に適用されることは勿論である。
【0027】
ここで、図1は本実施形態の人工心臓ポンプを示す図であって、羽根車の回転軸線を含む断面で見た場合の断面図である。
また、図2は、同人工心臓ポンプのハウジングについて、図1におけるII−II線に沿う断面の矢視図、図3は、ハウジングの主要部品について分割構造を示す断面図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態の人工心臓ポンプは、円筒状のハウジング1と、該ハウジング1内に収容された羽根車及びシュラウド8及び静翼部2と、羽根車及びシュラウド8を回転駆動する駆動機構Dと、該駆動機構Dに電力供給する電源(図示せず)と、該電源及び駆動機構D間を接続する電線(図示せず)とを備えて概略構成されており、ハウジング1内に取り込んだ血液(液体)を羽根車の回転により回転軸線方向に圧送するものとなっている。
なお、ハウジング1及び羽根車及びシュラウド8及び静翼部2など、血液と接する部分を有する部品には、生体適合性を有する材質として、純チタン金属またはチタン合金が採用されている。
【0029】
ハウジング1は、上流側ハウジング11と下流側ハウジング12とを組み合わせ、その接合部分を溶接W1により接合して一体化させた部品であり、上流側ハウジング11の側に形成された吸入側接続口11aと、下流側ハウジング12の側に形成された吐出側接続口12aとの間をつなぐ、略円柱形状の血液流路Rが内部に形成されている。
さらに、上流側ハウジング11は、上流側ハウジング本体11bと、該上流側ハウジング本体11bの周囲に嵌合した状態で溶接W2,W3により接合された回転磁界発生器カバー11cとで構成されている。
【0030】
ハウジング1の血液流路R内には、その中心軸線と同じ中心軸線を有してかつ略環状をなすハウジング環状室14(環状室)が形成されている。
このハウジング環状室14は、上流側ハウジング11に対して、下流側ハウジング12を、羽根車の回転軸線方向に挿入することで形成されるものである。そして、このハウジング環状室14の内部に、シュラウド8が同軸に収容されるようになっている。
【0031】
図1に示すように、羽根車は、血液の流れの上流側に向かって先細り形状をなすハブ15と、該ハブ15の周囲に一体に設けられた複数枚の動翼7とを備えて構成されている。
前記静翼部2を構成する固定軸4は、動翼部3側へ延設されており、この延設部に、前記ハブ15が所定隙間を形成した状態で被嵌されており、この隙間に、圧送の方向(血液の流れ方向)に対して下流側から上流側へと潤滑血液が逆流することにより、ハウジング1内において羽根車が浮上状態に回転支持される支持構造となされている。すなわち、羽根車の内周面となるハブ15の内周面15aと、これに対向する固定軸4の外周面4aとの間に形成された隙間を潤滑血液が逆流することによって、羽根車の支持構造が形成されている。
【0032】
また、シュラウド8の回転軸線方向に形成されている各端面8aと、それらに対向するハウジング1の各内側面1aとの間にも隙間が形成され、この隙間を潤滑血液が流れるようになっている。
【0033】
また、羽根車は、その回転中心となる固定軸4の上流側が固定軸先端部6となっている。この固定軸先端部6は、回転軸線に対して垂直をなす断面形状が、圧送方向(流体の流れ方向)において上流側から下流側に向かって滑らかに大きくなる形状を有している。このような形状の固定軸線端部6とすれば、その表面に沿った血液は回転軸線に対して概ね斜流方向に近い流れとなるため、これがない場合と比較して軸流ポンプの揚程を稼ぐことができるようになり、羽根車を小さくしてポンプ形状の小型化及び高効率化に有効である。
羽根車に複数枚設けられている動翼7は、いずれも捻り形状を有しており、単純な平坦形状の場合に比較して高効率で血液を圧送することが可能である。
【0034】
また、本実施形態の人工心臓ポンプとして使用される軸流ポンプは、図3に示すように、ハウジング1の部品構造を、羽根車の回転軸線方向(紙面左右方向)に沿って互いに嵌合される下流側ハウジング12、上流側ハウジング本体11b、回転磁界発生器カバー11c(複数のハウジング部品)の3分割構造にすることにより、製造容易となっている。すなわち、この3分割構造によれば、回転磁界発生器10の設置を可能とし、また、軸受面加工がしやすく、また、羽根車の組み込みを可能とし、また、静翼5を一体成形した固定軸4の加工がしやすくなっている。
【0035】
前記静翼部5は、羽根車の下流側に同軸に配置固定されており、吐出側接続口12aに向かって先細りとなる固定軸(胴体部)4と、該固定軸4の周囲に固定された複数枚の静翼5とを備えて構成されている。各静翼5は、前記各動翼7とは反対方向に螺旋形状を有する捻り羽根となっており、その中心部に、固定軸4を支持している。そして、各静翼5は、血液が羽根車より得た動圧を静圧に変換することにより、圧送する血液の圧力を効率よく昇圧する役目をなしている。
なお、固定軸4及び各静翼5は、下流側ハウジング12内部の上流側(上流側ハウジング11との接合面側)に、一体成形されている。
【0036】
上述した本実施形態では、羽根車、動翼7及び静翼5の形状として3次元形状が採用されており、負荷分布を最適化してポンプ効率の向上が図られている。また、このような3次元形状翼を採用することにより、血液に加える剪断力を低減させることができるので、赤血球などの血液組織破壊を防止することも可能となっている。
【0037】
また、図1に示す本実施形態において、シュラウド8には、永久磁石9が埋設されており、前記上流側ハウジング本体11bと回転磁界発生器カバー11cとの間に形成される空間部に、回転磁気発生器10が収納されている。
【0038】
さらに、本実施形態においては、前記シュラウド8の両端部と、このシュラウド8の両端部に対峙するハウジング1内には、永久磁石16、17が埋設されており、これらの永久磁石16,17は、その対向部分が逆の磁極となるようにセットされている。
【0039】
したがって、これらの永久磁石16,17の反発力によって、前記シュラウド8や羽根車が、ハウジング1に対して、回転軸線方向の位置ずれを防止するようになっている。
【0040】
さらに、前記下流側ハウジング12の、前記シュラウド8の端面との対向面には、回転軸線から放射状に伸びる旋回抑止板18が、図1および図2に示すように形成されており、下流側ハウジング12とシュラウド8との隙間を流れる血液の旋回を抑制するようになっている。
このような血液の旋回抑制機能によって、シュラウド8の下流側ハウジング12内の内周側から外周側へ向かう圧力上昇を小さくすることができ、これによって、シュラウド8の外周側を通って血液流路Rの上流側へ環流される血液量を減少させることができる。
【0041】
このように構成された本実施形態に係わる人工心臓ポンプにあっては、羽根車を浮いた状態で支持する軸受部が、固定軸4とハブ15との間で、前記羽根車の回転軸線に近い位置に設けられていることから、ハブ15と固定軸4との間に流入して前記ハブ15を浮かした状態に保持する血流の静止壁と回転壁近傍との周速差が低く抑えられる。
この結果、この軸受け部分における摩擦損失が抑制されて、ポンプ効率が高められるとともに、軸受け部分の血液に作用する剪断力を小さくして、この血液中の粒子成分の破壊を抑制することができる。
【0042】
また、両永久磁石16,17によって、前記シュラウド8が回転軸線方向の両側から反発されていることにより、このシュラウド8の回転軸線方向の位置ずれが防止され、円滑な回転が確保される。
特に、本発明の軸流ポンプを人工心臓ポンプに適用した場合、人工心臓ポンプそのものの姿勢(体内に埋め込まれるため、体の姿勢によって変わる)による回転体(動翼7及びハブ15)の自重が加わったり、あるいは、振動が加わったりするが、いずれの場合においても、回転体の軸ずれが適切に調芯されるようになっている。
【0043】
さらに、旋回抑止板18により、シュラウド8の下流側の端面の内周側から外周側へ向かう圧力上昇を小さく抑えることにより、シュラウド8とハウジング1との隙間Cを介して血液流路Rの上流側に還流される血液量を減少させることができる。
この結果、吸入側接続口11aから吐出側接続口12aへ流れる血液量が増加するので、前述した還流量の減少分ポンプ効率をさらに向上させることが可能となる。
【0044】
なお、前記永久磁石16,17は、前記シュラウド8の上流側のみに設けるようにしてもよいものである。
【0045】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の軸流ポンプによれば、ハウジング側の回転磁界発生器に電流を流すと回転磁界が発生し、永久磁石を備えたシュラウド及び羽根車を回転させる。そして、ハウジング内に取り込まれた液体の流れのうちの一部が、羽根車と固定軸との間に導かれて潤滑液体として機能し、軸線回りに回転する羽根車及びシュラウドを浮上状態に軸支する。このような構成であるため、従来のような軸シールが不要となる。
また、羽根車のジャーナル軸受を回転軸線近傍に位置させて、その内部を流れる液体の流れの静止壁と回転壁近傍の周速差を低下させることにより、液体に生じる剪断力を小さく抑えて、この液体中の粒子の破壊を抑制する。このことは、粒子成分が含まれている血液を圧送する人工心臓ポンプとして、特に好ましいことである。
【0046】
次に、請求項1に記載の軸流ポンプにおいて、前記シュラウドの、少なくとも前記圧送方向上流側の端部と、前記ハウジングとに、それぞれ永久磁石を配設し、これらの永久磁石の反発力により、前記シュラウドを下流側へ向けて押圧するようになされていることから、羽根車及びシュラウドが回転している状態で、羽根車に作用する上流側へ向かうスラスト力を相殺して、羽根車の回転軸線方向への位置ずれを抑制することができる。
【0047】
また、請求項3に記載の軸流ポンプによれば、請求項2に記載の軸流ポンプにおいて、前記シュラウドの前記圧送方向両端部と、前記ハウジングとに、それぞれ永久磁石を配設し、これらの永久磁石の反発力により、前記シュラウドの前記ハウジングに対する軸線方向の位置ずれを防止するようになされている。
【0048】
また、請求項4に記載の軸流ポンプによれば、請求項1ないし請求項3の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、前記ハウジングの、圧送方向下流側において前記シュラウドと対向する位置に、これらの隙間を流れる液体(血液)の旋回を抑制する旋回抑止板を放射状に設けたことにより、シュラウドとハウジングとの隙間Cを介して液体流路上流側に環流される流体量を減少させることができる。従って、環流される液体量の減少により、吸入側接続口から吐出側接続口へ流出する実質的な流体流量が増してポンプ効率が向上する。
【0049】
また、請求項5に記載の軸流ポンプは、請求項1ないし請求項4の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、固定軸の上流側(固定軸先端部)の断面形状が、上流側から下流側に向かって大きくなる形状を有する構成を採用した。
この構成によれば、固定軸の表面に沿った液体の流れが概ね斜流となるため、このような断面形状とした固定軸先端部のない軸流と比較して揚程を稼ぐことが可能となる。
【0050】
また、請求項6に記載の軸流ポンプは、請求項1ないし請求項5の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、下流側ハウジングの上流側に静翼を一体成形する構成を採用した。
この構成によれば、下流側ハウジングに対する静翼の位置調整や、組み付け工程が不要となるので、これらを別体に製作する場合に比較して、製造容易とすることが可能となる。
【0051】
また、請求項7に記載の軸流ポンプは、請求項1ないし請求項6の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、前記ハウジングが、羽根車の回転軸線方向に沿って互いに嵌合される複数のハウジング部品からなる構成を採用した。
この構成によれば、各ハウジング部品間の接合部分の後加工が不要となることから、ハウジングの組み立てを容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による軸流ポンプの一実施形態として人工心臓ポンプの構成例を示しており、羽根車の回転軸線を含む断面で見た場合の断面図である。
【図2】同軸流ポンプのハウジングを、図1におけるII−II線に沿って見た断面の矢視図である。
【図3】同軸流ポンプを示す図であって、ハウジングの部品分割構造を示す断面図である。
【図4】軸流ポンプの従来例として、先の出願にかかる人工心臓ポンプを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 静翼部
3 動翼部
4 固定軸
4a 外周面
5 静翼
6 固定軸線端部
7 動翼(羽根車)
8 シュラウド
9 永久磁石
10 回転磁界発生器
11 上流側ハウジング
11a 吸入側接続口
11b 上流側ハウジング本体
11c 回転磁界発生器カバー
12 下流側ハウジング
12a 吐出側接続口
14 環状室
15 ハブ(羽根車)
15a 内周面
16,17 永久磁石
18 旋回抑止板
D 駆動機構
R 液体(血液)流路
W1,W2,W3 溶接
Claims (8)
- ハウジングと、該ハウジング内に収容された羽根車と、該羽根車を回転駆動する駆動機構とを備え、前記ハウジング内にその軸線方向から取り込んだ液体を前記羽根車の回転により、その回転軸線方向に圧送する軸流ポンプにおいて、
前記羽根車は、該羽根車の下流側に配設された静翼部の固定軸に回転自在に支持され、前記羽根車が、前記固定軸と前記羽根車との間に形成された隙間内を前記圧送の方向に対して下流側から上流側へ流れる潤滑液体により、前記固定軸に浮上状態に回転支持される支持構造を有し、
前記駆動機構は、前記羽根車の外周部に設けられたシュラウド内に設けられた永久磁石と、前記ハウジング側でかつ前記シュラウドを周囲より覆う位置に配置された回転磁界発生器とによって構成されている
ことを特徴とする軸流ポンプ。 - 請求項1に記載の軸流ポンプにおいて、
前記シュラウドの、少なくとも前記圧送方向上流側の端部と、前記ハウジングとに、それぞれ永久磁石を配設し、これらの永久磁石の反発力により、前記シュラウドを下流側へ向けて押圧するようになされている
ことを特徴とする軸流ポンプ。 - 請求項2に記載の軸流ポンプにおいて、
前記シュラウドの前記圧送方向両端部と、前記ハウジングとに、それぞれ永久磁石を配設し、これらの永久磁石の反発力により、前記シュラウドの前記ハウジングに対する軸線方向の位置ずれを防止するようになされている
ことを特徴とする軸流ポンプ。 - 請求項1ないし請求項3の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、
前記ハウジングの、圧送方向下流側において前記シュラウドと対向する位置に、これらの隙間を流れる液体の旋回を抑制する旋回抑止板を放射状に設けた
ことを特徴とする軸流ポンプ。 - 請求項1ないし請求項4の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、
前記固定軸の上流側は、回転軸線に対して垂直をなす断面形状が、上流側から下流側に向かって大きくなる形状を有する
ことを特徴とする軸流ポンプ。 - 請求項1ないし請求項5の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、
前記ハウジングは、互いに接合される上流側ハウジング及び下流側ハウジングを有し、該下流側ハウジングの上流側に、前記液体の動圧を静圧に変換する静翼が一体成形されている
ことを特徴とする軸流ポンプ。 - 請求項1ないし請求項6の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、
前記ハウジングは、前記羽根車の回転軸線方向に沿って互いに嵌合される複数のハウジング部品からなる
ことを特徴とする軸流ポンプ。 - 請求項1ないし請求項7の何れかに記載の軸流ポンプにおいて、
前記液体を血液とし、該血液と接する部分が生体適合性を有する材質からなる人工心臓ポンプとして使用されることを特徴とする軸流ポンプ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002171760A JP4107886B2 (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 軸流ポンプ |
Applications Claiming Priority (1)
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