JP2004018812A - エチレン系重合体からなる中空成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、特定の条件を満たすエチレン系重合体をブロー成形して成り、該成形体の最小肉厚が1〜4mmであることを特徴とする中空成形体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なエチレン系重合体からなる中空成形体に関する。詳しくは、従来公知のエチレン系重合体に比較して、機械的特性、特に耐環境応力亀裂性(ESCR)と剛性のバランスに優れ、更には、中空成形における成形加工特性に優れたエチレン系重合体からなる中空成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種工業分野において、プラスチック製のパイプ、フィルム、射出成形体、及び中空成形体が盛んに用いられるようになった。特に安価・軽量であり、成形加工性、耐薬品性・リサイクル性に優れるなどの理由からポリエチレン系樹脂からなる中空成形体が広範に用いられている。
成形加工特性を良くするための努力は、成形加工がポリエチレンを溶融状態にして実施されることから、溶融流動性(易押出性)、溶融延伸性、溶融張力などの溶融流動特性の改良に重点が置かれ、例えば、▲1▼従来のチーグラー触媒を用いた多段重合法により分子量分布を広げたり、更には特定の分子量成分を含有させる方法(特開平2−53811号公報、特開平2−132109号公報、特開平10−182742号公報等)、▲2▼従来のCr系触媒を用いて長鎖分岐を有するポリエチレンを製造したり、樹脂にラジカル発生剤と架橋助剤を添加することにより長鎖分岐を導入する方法(特公平2−52654号公報等)、▲3▼溶融伸長応力の大きいポリエチレンを使用することで均一延伸性を向上させる方法(特開平10−7726号公報)等が提案されている。しかしながら、▲1▼の方法は低分子量成分の増加による成形体のべたつきの悪化や衝撃強度が低下したり、高分子量体の増加によるゲル発生を招く等多くの問題を生じ、▲2▼の方法は衝撃強度が低下する等の問題を生じ、▲3▼の方法は成形加工性と衝撃強度は改善されるものの、ESCRが未だ十分ではない等の問題を有していた。
【0003】
また、機械的物性を向上させる努力は、▲1▼従来のチーグラー触媒を用いる重合体においては多段重合や触媒の改良によって分子量分布は広いながら低分子量成分のみ削減する等の制御を行って成形加工性は維持したままで衝撃強度を向上させる方法(特開平7−90021号公報等)、▲2▼多段重合によってα−オレフィンを特定の分子量成分に導入してESCRを向上させる方法(特開平10−17619号公報)、▲3▼近年開発されたメタロセン触媒を使用して機械的物性を向上させる方法(特開平8−59741号公報、特開平11−60633号公報等)等が提案されている。しかしながら、これらの方法においても機械的物性および成形加工特性を優れた性能で高度に両立させたエチレン系重合体は得られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、均一延伸性・耐ドローダウン性・スウェルに代表される成形加工性と、剛性・耐衝撃性・ESCRに代表される機械的物性とに優れ、製品に要求される最小厚みを確保しながら製品重量を軽くできる、新規なエチレン系重合体からなる成形体を提供することにある。中空成形においては、目的の製品において要求される最小厚みが規定されることが一般的である。その最小厚みを確保するために成形条件を調節し、製品重量が決定されるが、最小厚みを確保するために他の部位の厚みを必要以上に増すことが多いため全体の製品重量が増してしまう。
最小厚みを確保しながら、他の部位の厚み増加を抑えることにより全体の製品重量を軽くできる。そのためには、成形加工性及び厚み均一性に優れる新規なエチレン系重合体が必要である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を種々行った結果、エチレン単独、またはエチレンと他のα−オレフィンとの重合体であって、21.6kg荷重でのメルトインデックス(HLMI)と密度(d)が特定の範囲にあり、かつ、溶融状態で伸長変形を加えた場合に破断を伴うことなく延展可能な変形速度の限界を表す溶融延展性比(R)が特定の値以上であり、オリフィスから押し出された溶融ストランドに荷重をかけて一定時間放置した場合の延伸比を表す溶融ドローダウン指標(Lm)とHLMIの関係が特定の範囲にあるエチレン系重合体が、成形加工性及び機械的特性に優れており、中空成形品における最小厚みを確保しながら、他の部位の厚み増加を抑えること、すなわち最小厚みと最大厚みの差であるΔtが小さいことを見出した。特に、曲げ弾性率(M)に代表される剛性とESCRのバランスは従来に例を見ない優れたレベルで両立していることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、下記条件(イ)〜(ホ)を満たすエチレン系重合体をブロー成形して成り、該成形体の最小肉厚が1〜4mmであることを特徴とする中空成形体に存する。
(イ)190℃における21.6kg荷重でのメルトインデックス(HLMI)が1〜15g/10分、
(ロ)密度(d)が0.935〜0.985g/cm3、
(ハ)溶融延展性比(R)が3.5以上、
(ニ)溶融ドローダウン指標(Lm)とHLMIの関係が下記式(i)を満たす、
Lm≦0.238×Log(HLMI)+1.32・・・(i)
(ホ)曲げ弾性率(M)と耐環境応力亀裂性(ESCR)の関係が下記式(ii)を満たす。
M≧−7310×Log(ESCR)+32300・・・(ii)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
本発明の成形体に用いるエチレン系重合体は、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、好ましくはランダム共重合体である。ここで用いられる共重合成分であるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、 ペンテン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等が挙げられる。更にビニルシクロヘキサンあるいはスチレンおよびその誘導体などのビニル化合物も使用することができる。また、これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。これらのうち、より好ましいα−オレフィンはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等の炭素数3〜10のものである。本発明のエチレン系重合体は、好ましくはエチレン単独重合体である。ここでエチレン単独重合体とは、モノマー原料としてエチレンのみを反応器に供給することによって製造された重合体をいう。
【0008】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体中におけるエチレンとα−オレフィンの割合は、好ましくは、エチレン90〜100重量%、α−オレフィン0〜10重量%であり、更に好ましくはエチレン95〜100重量%、α−オレフィン0〜5重量%である。α−オレフィンの含有量がこれより多くなると、エチレン系重合体の剛性が低下するなどして好ましくない。
【0009】
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、該重合体の物性として、下記条件(イ)〜(ホ)を満たすことを特徴としている。好ましくは条件(イ)〜(ホ)に加えて、条件(ヘ)〜(ヲ)、更には条件(ワ)及び/又は(カ)を満たすことを特徴としている。
【0010】
<重合体の物性>
(イ)メルトインデックス(HLMI)
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、その190℃、21.6kg荷重下におけるメルトインデックス(HLMI;単位=g/10分)が1〜15g/10分である。このHLMIが1g/10分未満では押出性が悪く、中空成形の場合、パリソン形成時に肌荒れが生じたり、ブローアップ工程で吹き破れが生じて好ましくなく、15g/10分を超えるとドローダウンが著しく起こり好ましくない。従って、HLMIは好ましくは2〜12g/10分、更に好ましくは3〜10g/10分、最も好ましくは4〜8g/10分の範囲である。
尚、HLMIの測定はASTM−D−1238−57Tに準拠し、190℃、21.6kg荷重で測定したものをいう。通常、メルトインデックスは2.16kg荷重で測定されるが、本発明のエチレン系重合体のメルトインデックスの範囲は測定限界以下(通常<0.01、即ち10分間の流出量が10mg未満)〜30程度と低い数値となることから、測定誤差を小さくするためには、その10倍荷重の条件下で測定する必要がある。高荷重(High Load)下のメルトインデックスという意味で、HLMIの略称を使用した。
条件(イ)において、HLMIを所望の値に制御するためには、重合系内に分子量調節剤として適当量の水素等の連鎖移動剤を存在させることによってHLMIを高くする方法、重合温度を高くすることによってHLMIを高くする方法等が挙げられる。
【0011】
(ロ)密度(d)
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、その密度(d)が0.935〜0.985g/cm3である。この密度が0.935g/cm3未満では、剛性が小さく、好ましくない。また、密度が0.985g/cm3より大きい場合には、耐衝撃性が低下したり、ESCRが低下したりするので好ましくない。上記密度は好ましくは0.945〜0.980g/cm3、更に好ましくは0.950〜0.975g/cm3である。
【0012】
<密度の測定>
JIS−K6760に準拠して密度勾配管法で測定したものをいう。ただし、密度測定のサンプルとして、エチレン系重合体を温度190℃でプレス成形して得られたプレスシートを温度100℃にて1時間アニーリングした後、およそ20℃/時間の速度で室温まで冷却したものを使用する。
条件(ロ)において、密度を所望の値に制御するためには、エチレンに上述のα−オレフィン等を共重合させて結晶化度を低下させることにより密度を所望の値に制御する方法、メルトインデックスを低下させることによって結晶化度を低下させて密度を低下させる方法、分子量の高い成分を導入して結晶化の進行を阻害することによって結晶化度を低下させ、密度を低下させる方法等が採用できる。
【0013】
(ハ)溶融延展性比(R)
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、溶融状態で延展変形を加えた場合に破断を伴うことなく延展可能な変形速度の限界を表す溶融延展性比(R)が、3.5以上である。エチレン系重合体は一般的に溶融状態にして成形加工が実施される。特に、中空成形、フィルム成形(インフレーション成形)等の溶融延展(延伸)工程を伴う成形を実施する場合、この延展工程で破断あるいは吹き破れを防止することが重要であり、延展可能な変形速度の限界が大きい、すなわち、Rが大きくなければならない。
本発明のエチレン系重合体は、従来公知のエチレン系重合体に比べて大きなRを有するのが大きな特徴であり、Rが3.5以上の場合、優れた成形加工性が発現される。Rが3.5未満の場合、溶融延展工程で破断あるいは吹き破れが生じるので好ましくない。
さらに詳しくは、Rは分子量依存性を有するため、
▲1▼ HLMI<8.0の場合、Rが下記式(ix)を満たし、
▲2▼ HLMI≧8.0の場合、Rが5.7以上であることが好ましい。
R≧−63.1×Log(HLMI)+62.7・・・(ix)
溶融延展性比(R)は、分子量分布および長鎖分岐度を制御して、粘弾性挙動の最適化をおこなうことにより調整できる。例えば、分子量分布が広くなるとRは大きくなり、長鎖分岐度が増加するとRは大きくなる。
【0014】
<Rの測定>
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、ノズル径1.0mmφ、ノズル長10mm、流入角90度のオリフィスから温度190℃で測定サンプルを押し出し(押出線速度(V0)1.82m/分)、この溶融ストランドを引取速度(V)で引き取り試験を行う。Vは1.3m/分からスタートし、その後40m/分で増加させていって、溶融ストランドが破断した時のVをVkとし、VkとV0の比、Vk/V0を溶融延展性比(R)とする。
【0015】
(ニ)溶融ドローダウン指標(Lm)とHLMIの関係
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、オリフィスから押し出された溶融ストランドに荷重をかけて一定時間放置した場合の延伸比を表す溶融ドローダウン指標(Lm)とHLMIの関係が下記式(i)を満たす。
Lm≦0.238×Log(HLMI)+1.32・・・(i)
Lmの下限は0.950、好ましくは0.980、更に好ましくは1.00である。
エチレン系重合体を中空成形、押出成形する場合、成形ダイから押し出された状態の溶融樹脂に自重による垂れ下がり(ドローダウン)、変形が生じて、成形体の肉厚、形状に支障を来す。特に、プラスチック製自動車用ガソリンタンク等の燃料容器やドラム缶といった大型中空成形分野においては、ブローアップ前の成形前駆体(パリソン)の重量が数kg〜数十kgにも及ぶため大きな問題となるので、自重による垂れ下がりが特に小さくなければならない。すなわち耐ドローダウン性が優れていることが必要である。
【0016】
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、従来公知のエチレン系重合体に比べて耐ドローダウン性が優れているのが大きな特徴であり、LmとHLMIの関係が上記式(i)を満たす。LmとHLMIの関係が上記式(i)を満たさないと、成形時のドローダウンが大きくなり、ブローアップ後の製品形状の制御が困難となったり、特殊なダイギャップの制御が必要となったり、また、寸法が精度良く制御された製品を得ることができなくなる。製品重量の軽量化のための薄肉化や、複雑形状を付与するためにはLmとHLMIの関係が下記式(i−a)の範囲にあることが好ましい。
Lm≦0.238×Log(HLMI)+1.13・・・(i−a)
【0017】
<Lmの測定>
(株)東洋精機製作所製キャピログラフにレーザースキャンスウェル測定装置を装着するものを使用する。ノズル径2.78mmφ、ノズル長80mm、流入角3.74度のオリフィスから温度230℃で、充填後15分予熱を行った測定サンプルをロッド速度15mm/分で押し出す。この溶融ストランドのダイ下初期長さ(L0)30mmの区間に対して8kPa相当の荷重を加える。荷重加え始めの時刻をt(秒)=0とし、時刻t=0秒でL0=30mmであった区間の、t=30秒時の長さL(mm)を測定する。L0に対するLの比、すなわち、伸び率L/L0を溶融ドローダウン指標(Lm)と定義する。
溶融ドローダウン指標(Lm)とHLMIの関係を式(i)を満たす範囲内に収めるためには、分子量分布および長鎖分岐度を制御して、粘弾性挙動の最適化をおこなう。
【0018】
(ホ)曲げ弾性率(M)と耐環境応力亀裂性(ESCR)の関係
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、曲げ弾性率(M)と耐環境応力亀裂性(ESCR)が従来達成不可能であった高いレベルで実現し、式(ii)を満たす。
M≧−7310×Log(ESCR)+32300・・・(ii)
一般に、曲げ弾性率(M)と耐環境応力亀裂性の常用対数Log(ESCR)とは、逆相関の関係を有する。従来、成形体の耐衝撃性やESCR等の機械的強度の向上を狙ってα−オレフィンとの共重合を行う場合、共重合体の密度を比較的低く設定するため、曲げ弾性率(剛性)が低下するという欠点が生ずる。特に製品の軽量化、薄肉化を図ろうとする場合、剛性の低下は歪み等の変形を起こしたり、融点が低下して熱変形しやすくなったりして不十分な状況であった。
式(ii)を満たす本発明のエチレン系重合体は、極めて高い剛性を有するため、大型容器やパイプ等の成型品に使用した場合、歪み等の変形が生じにくく、従来より製品の肉厚を薄くすることが可能であり、更には高いESCRを有するため耐薬品性や耐候性に優れている等、実用上極めて有効である。
曲げ弾性率(M)と耐環境応力亀裂性(ESCR)の関係を式(ii)を満たす範囲内に収めるためには、高結晶化成分の量といわゆるタイ分子(tie molecules)の数を制御することにより達成できる。高結晶化成分の量は曲げ弾性率の値の高低を左右し、タイ分子は非晶部の強度を左右するからである。タイ分子とは非晶部中に1つの結晶ラメラと他の結晶ラメラの間にまたがって存在する分子のことをいう。一般に高い分子量の成分ほど、タイ分子となる確率が高い。このときHLMI、密度の値も変化するので、条件(イ)、(ロ)、及び(ニ)を満たす範囲内で、変化させることが必要である。
式(ii)を満たさない場合、機械的物性が低下するので好ましくない。エチレン系重合体の曲げ弾性率が15000kgf/cm2以上の場合、あらゆる用途に極めて有用である。ESCRが500時間以上の場合、耐薬品性や耐光性を特に要求される用途に極めて有用である。
曲げ弾性率とESCRの関係が式(ii−a)を満たすとより好ましく、式(ii−b)を満たすと更に好ましい。曲げ弾性率とESCRの関係が式(ii−c)を満たすと最も好ましい。
M≧−7310×Log(ESCR)+34000・・・(ii−a)
M≧−7310×Log(ESCR)+35300・・・(ii−b)
M≧−7310×Log(ESCR)+37000・・・(ii−c)
【0019】
<ESCRの測定>
JIS−K6760に準拠して、50℃で測定する。界面活性剤として、リポノックスNC(ライオン社製商品名)の10重量%水溶液を使用する。ノッチ深さは0.3mmで行う。
【0020】
<曲げ弾性率の測定>
JIS−K7203に準拠した3点曲げ法によっておこなう。使用するテストピースの仕様、成型法、および試験条件は以下の通り。
[テストピースの仕様]
長さ 80mm以上
幅 25±0.5mm
厚さ 2±0.2mm
[テストピースの成形法]
ペレットから次の(1)〜(5)に従ってプレスシートを成形する。なお、(3)〜(5)の圧力はいずれも60kgf/cm2(588N/cm2)とする。
(1)170±5℃のプレス機に5分間放置
(2)20秒間脱気
(3)1分間加圧
(4)100±2℃のプレス機で5分間加圧
(5)30±2℃のプレス機で5分間加圧
[試験条件] 支点間距離 35.0mm
試験速度 1.0mm/分
支持台半径 2±0.2mm
たわみが2.0mmのときの荷重を測定する。
【0021】
(へ)密度(d)とメルトインデックス(HLMI)の関係
本発明の成形体に用いるエチレン系重合体は、dとHLMIの関係が式(iii)を満たすことが好ましい。
d≧0.00900×Log(HLMI)+0.951・・・(iii)式(iii)中、Logは常用対数を表わす。エチレン系重合体は、一般的に分子量が大きいほど、すなわちHLMIが小さいほど、密度が低下することが知られている。また、『新世代高機能ポリマーの創製と最新触媒技術』(寺野稔編集・技術教育出版有限会社発行。発行年月 2001年5月)128ページには、「従来のm−PEでは、ZN−PEでは生産可能な高密度のポリマーが製造できない」ことが記載されている。しかしながら、本発明では、特定のメタロセン触媒を使用し、および/または特定の重合方法を使用することによって、特徴的な分子量分布構造を設計し、同一HLMIでの比較において、従来公知のエチレン系重合体に比べて、より高い密度を有し、式(iii)を満たすことが特徴であり、この場合、優れた機械的物性が発現される。
条件(へ)において、密度とHLMIの関係を式(iii)を満たす範囲内に収めるためには、従来知られていた密度とHLMIの相関関係とは相反する物性を同時に満足させる必要があるが、本発明では、HLMIを低い値に維持するに十分な高溶融粘度を有する成分、および密度を高い値に維持するに十分な高結晶成分を、本発明主題のエチレン系重合体中に所定の割合で存在させることにより達成することが可能となる。その存在割合を変えることによって式(iii)を満足する範囲内で、密度とHLMIを制御することができる。このときHLMI、密度、曲げ弾性率、ESCRの値も変化するので、条件(イ)、(ロ)、(二)、及び(ホ)を満たす範囲内で、変化させることが必要である。
式(iii)を満たさない場合、剛性が低下したり、耐衝撃性が低下したり、ESCRが低下したり、クリープ特性が悪化したりするので好ましくない。密度とHLMIの関係が式(iii−a)を満たすことがより好ましく、更に好ましくは式(iii−b)を満たすときに優れた機械的物性が発現される。
d≧0.00697×Log(HLMI)+0.956・・・(iii−a)
d≧0.00697×Log(HLMI)+0.957・・・(iii−b)
【0022】
(ト)溶融延展性比(R)と溶融張力(MT)の関係
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、前記条件(ハ)にある溶融延展性比(R)の値と、190℃で測定される溶融張力(MT)の関係が下記式(iv)を満たす時、更に優れた成形特性を有することとなるため好ましい。
R≧35.5×Log(MT)−22.2・・・(iv)
【0023】
<MTの測定>
(株)東洋精機製作所製のメルトテンションテスターを使用し、ノズル径1.0mmφ、ノズル長5mm、流入角90度、190℃の温度で、押出速度0.44g/分、引取速度0.94m/分、ダイ出口から張力検出器のVプーリー下端までの距離40cmの条件で測定する。ドラフト率(引取速度/ノズル線速度)は1.25でおこなう。
条件(ト)において、RとMTの関係を式(iv)を満たす範囲内に収めるためには、分子量分布および長鎖分岐度を制御して、粘弾性挙動の最適化をおこなう。
【0024】
(チ)スウェル
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、スウェルが1.8以下であると、成形時にダイから押し出された溶融樹脂が大きく膨らみ、製品寸法制御が困難となることを防止できるので好ましい。スウェルが1.8よりも大きいと特殊なダイギャップの制御が必要となったり、また、寸法が精度良く制御された製品を得ることができなくなるので好ましくない。スウェルはより好ましくは1.6以下、更に好ましくは1.5以下である。スウェルの下限は1.0である。
【0025】
<スウェルの測定>
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、ノズル径1.0mmφ、ノズル長10mm、流入角90度のオリフィスから温度190℃で測定サンプルを押出線速度(V0)1.82m/分で押し出した時のストランド外径とノズル径の比をスウェルとする。
スウェルを上記範囲内に収めるためには、分子量分布および長鎖分岐度を制御して、粘弾性挙動の最適化をおこなう。
上述のような成形性に関する優れた性質は、以下に記述するG’やηに代表されるように、その特異な溶融粘弾性挙動で説明されると考えられる。
【0026】
(リ)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による分子量分布曲線における最大ピーク位置の分子量(M1 max )とメルトインデックス (HLMI)の関係
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体のGPC測定による分子量分布曲線における最大ピーク位置の分子量(M1max)とHLMIの関係が、式(v)を満たす範囲にあると好ましい。
Log(M1max)≦−0.307×Log(HLMI)+4.87・・・(v)
式(v)中、Logは常用対数を表わす。一般に、GPCは分子量数百から数百万程度の成分を含むポリマーの分子量分布を測定するのに、簡便かつ比較的精度の高い測定方法である。一方、HLMIは高荷重であることから、分子量が百万を超えるいわゆる超高分子量を相当量含むポリマーであってもポリマーの溶融時の流動性を最も簡便に知ることができる測定方法の一つである。
【0027】
M1maxはGPCで測定されるポリマーの分子量分布の中で最も存在比率の高い分子量を表すので、分子量に関してのポリマー物性を支配する指標となる。本発明のエチレン系重合体は、GPC測定で求められる分子量分布曲線が、好ましくは20万以下、より好ましくは5万以下、更に好ましくは2万以下、最も好ましくは1万未満の低分子量側に最大ピーク位置を有する分子量分布の狭い主ピーク成分と、好ましくは100万、より好ましくは200万、更に好ましくは300万、最も好ましくは400万を越える高分子量側にまで広く裾を引く高分子量成分の、少なくとも2つの成分を有する場合、機械的物性に優れることはもちろんのこと、成形加工性が向上するため好ましい。また、式(v)の関係を満たすことにより、M1maxに代表される分子量分布の狭い低分子量の主ピーク成分の寄与による溶融流動性(易押出性)の向上と、HLMIに代表される高分子量成分の寄与による耐衝撃性等の機械的物性の向上が同時に実現されるので好ましい。一方、式(v)の関係が満たされないと、溶融流動性が悪化したり、耐衝撃性等の機械的強度が悪化したりする場合がある。
M1maxとHLMIの関係は、更に好ましくは式(v−a)を、特に好ましくは式(v−b)を満たす場合である。
Log(M1max)≦−0.307×Log(HLMI)+4.60・・・(v−a)
Log(M1max)≦−0.307×Log(HLMI)+4.50・・・(v−b)
M1maxの下限は好ましくは1000、より好ましくは2000、更に好ましくは3000である。M1maxが上記下限より小さいと低分子量ポリマーが多くなって、耐衝撃性が低下したり、成形時の発煙や成形機内の汚れが激しくなったり、製品表面がべと付いたり、食品容器として使用した場合に味や臭いの悪化を招くので好ましくない。
【0028】
また、低分子量側の分子量分布の狭い主ピーク成分の、その分子量分布の狭さの程度を簡便に表す次に定義される数値を用いることによって、本発明のエチレン系重合体の特徴をより明確にすることができる。即ち、GPC曲線の主ピーク位置からベースラインに降ろした垂線を二等分する点を通りかつベースラインと平行する直線が、GPC曲線と低分子量側で交差する点の分子量をM1/2とすると、M1/2のM1maxに対する比が好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.30以上、最も好ましくは0.35以上である。
【0029】
条件(リ)において、M1maxとHLMIの関係を式(v)を満たす範囲内に収めるためには、分子量分布が狭い低分子量ポリマーからなる主成分と、HLMIを低い値に維持するに十分な上述の高溶融粘度を有する成分を適切な混合比にてエチレン系重合体中に含有させて分子量分布を最適化する必要がある。このときHLMI、密度、曲げ弾性率、ESCRの値も変化するので、条件(イ)、(ロ)、(ニ)、(ホ)及び(ヘ)を満たす範囲内で、変化させることが必要である。
【0030】
<GPCによる分子量測定>
分子量既知の標準ポリスチレンを使用し、ユニバーサル法により、MwおよびMnに換算し、Mw/Mnを求める。測定はウオーターズ社製IOSC−ALC/GPCを用い、カラムは昭和電工社製AD80−M/Sを3本使用し、試料はo−ジクロロベンゼンに溶解させて0.2重量%溶液として、200μlを使用し、140℃、流速1ml/分で実施する。
【0031】
(ヌ)示差熱分析(DSC)測定で求められる融点(Tm)と密度(d)の関係本発明においてDSC測定で求められる融点(Tm)は、吸熱曲線における主ピーク温度(℃)を意味する。本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、Tmとdの関係が式(vi)を満たす範囲にあると好ましい。
Tm≦538d−378 ・・・(vi)
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、同一密度の従来公知のエチレン系重合体に比べて低い融点を有しており、式(vi)を満たす場合には、成形加工時の融着特性や成形体の機械的強度に優れ、特に曲げ弾性(剛性)とESCRのバランス性能に非常に優れることとなる。これは、本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体が、結晶化速度および融解速度の非常に大きい成分を含んでいることに起因した特長と推定されるが詳細は不明である。
本発明のエチレン系重合体は、Tmとdの関係が式(vi−a)を満たす範囲にあると更に好ましく、式(vi−b)を満たす範囲にあると特に好ましい。
Tm≦538d−379 ・・・(vi−a)
Tm≦538d−380 ・・・(vi−b)
また、本発明のエチレン系重合体は、Tmとdの関係が式(vi−c)を満たす範囲にあることも製品の熱変形防止(耐熱性向上)のためには好ましい条件の1つである。
Tm≧400d−250 ・・・(vi−c)
条件(ヌ)において、融点Tmと密度dの関係を式(vi)を満たす範囲内に収めるためには、エチレン系重合体の分子量分布、共重合組成分布を最適化して結晶化度分布の制御を行う。具体的には高結晶性成分である低分子量の低コモノマー含量ポリマー成分の含有量を制御することによって達成することができる。
【0032】
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体のDSC測定で求められる融解熱量(ΔH)と融点(Tm)の関係が式(x)を満たすことも好ましい条件のうちの一つとして挙
げることができる。尚、融解熱量の単位はJ/gである。
ΔH≧5.47Tm−528 ・・・(x)
本発明のエチレン系重合体は、同一密度の従来公知のエチレン系重合体に比べて低い融点を有しており、式(x)を満たす場合には、成形加工時の融着特性や成形体の機械的強度に優れ、特に曲げ弾性(剛性)とESCRのバランス性能に非常に優れることとなる。これは、本発明のエチレン系重合体が、結晶化速度および融解速度の非常に大きい成分を含んでいることに起因すると推測される。
【0033】
<DSCによる融点測定>
JIS−K7121に準拠しておこなう。試料9mgを160℃で10分間融解後、10℃/分の速度で40℃に降温し、2分間保持後、160℃まで10℃/分の昇温速度で融解曲線を測定し、ピークトップ温度(℃)を融点(Tm)とする。
<DSCによる融解熱量の測定>
JIS−K7122に準拠して計算し、J/gの単位で表わす。
【0034】
(ル)貯蔵弾性率(G’s)
本発明の中空成形体に用いるエチレン系重合体は、190℃、短い周波数(ω)0.1rad/秒での貯蔵弾性率[G’s(ω=0.1)](単位Pa)、および、長い周波数(ω)1.0rad/秒での貯蔵弾性率[G’s(ω=1.0)](単位Pa)と、HLMIの関係が各々下記式(vii)及び(viii)を満たすことが好ましい。
Log[G’s(ω=0.1)]≧−0.374×Log(HLMI)+4.35・・・(vii)
Log[G’s(ω=1.0)]≧−0.135×Log(HLMI)+4.62・・・(viii)
【0035】
エチレン系重合体は一般的に溶融状態にして成形加工が実施される。特に、中空成形、フィルム成形(インフレーション成形)等の溶融延展(延伸)工程を伴う成形を実施する場合、この延展工程で破断あるいは吹き破れを防止することが重要であり、延展可能な変形速度の限界が大きくなければならない。
【0036】
本発明のエチレン系重合体は、従来公知のエチレン系重合体に比べて式(vii)及び
(viii)を満たす大きなG’s(ω=0.1)、G’s(ω=1.0)を有することが特徴であり、溶融延展性と耐ドローダウン性、スウェルに代表される成型加工性に優れる。G’s(ω=0.1)、G’s(ω=1.0)が上記範囲を満たさないと、溶融延展工程で破断あるいは吹き破れが生じたり、成形時のドローダウンが大きくなり、ブローアップ後の製品形状の制御が困難となったり、スウェルが大きくなって特殊なダイギャップの制御が必要となったり、また、寸法が精度良く制御された製品を得ることができなくなるので好ましくない。
【0037】
製品重量の軽量化のための薄肉化や、複雑形状を付与するためにはG’s(ω=0.1)、G’s(ω=1.0)が下記式(vii−a)及び(viii−b)を満たすのがより好ましい。
Log[G’s(ω=0.1)]≧−0.374×Log(HLMI)+4.43・・・(vii−a)
Log[G’s(ω=1.0)]≧−0.135×Log(HLMI)+4.69・・・(viii−a)
更に好ましくは下記式(vii−b)及び(viii−b)を満たす。
Log[G’s(ω=0.1)]≧−0.374×Log(HLMI)+4.56・・・(vii−b)
Log[G’s(ω=1.0)]≧−0.135×Log(HLMI)+4.74・・・(viii−b)
【0038】
更には、G’s(ω=10)が下記式を満たす場合、延展工程での破断あるいは吹き破れ防止性能に優れたり、成形時の耐ドローダウン性に優れるので、好ましいことがある。
Log[G’s(ω=10)]≧−0.309×Log(HLMI)+5.25
G’s(ω=0.1)、G’s(ω=1.0)、G’s(ω=10)の上限は特に制限はないが、大きすぎると溶融弾性が強すぎて成形加工性を悪化させるので、好ましくは各々、0.1MPa、0.2MPa、0.3MPa、より好ましくは各々、0.07MPa、0.15MPa、0.2MPa、更に好ましくは各々、0.05MPa、0.12MPa、0.17MPaである。
条件(ル)において、貯蔵弾性率G’とHLMIの関係を式(vii)及び(viii)を満たす範囲内に収めるためには、分子量分布および長鎖分岐度を制御しておこなう。
【0039】
<貯蔵弾性率(G’s)の測定>
応力検知型回転式粘度計として、レオメトリックス社製RMS−800を使用する。温度190℃において角周波数ω=3.981×10−3 〜1.0×102(rad/秒)の間で測定を実施して各ωでのG’s(ω)を求める。なお、周波数一桁当たり3〜6点の測定数を確保する。単位はPaで表示する。
【0040】
(ヲ)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比
本発明のエチレン系重合体は低分子量成分と高分子量成分を有する広い分子量分布を有し、分子量分布の広さの尺度として一般的に用いられるGPC測定で求められた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であるQ値(Mw/Mn)は、好ましくは7より大きく、より好ましくは14より大きく、更に好ましくは17より大きい。
Q値が大きいことは、前記条件(リ)で述べた分子量分布曲線における最大ピーク位置の分子量(M1max)が従来のエチレン系重合体に比べて小さいにもかかわらず、相対的にHLMIが大きくないことと関連がある。
本発明のエチレン系重合体が上記物性を達成するためには、前記条件(イ)〜(ヲ)に加えて、次の条件(ワ)及び/又は(カ)を満足することが好ましい。
【0041】
(ワ)分子量100万以上の成分の重量分率(Mc値)
本発明のエチレン系重合体のMc値は5%以上であることが好ましい。Mc値が小さいと、中空成形時における均一延伸性や耐ドローダウン性が悪化したり、耐衝撃強度が低下したりして好ましくない。Mc値の範囲は、更に好ましくは7%以上、特に好ましくは10%以上である。
分子量100万以上のいわゆる超高分子量成分は、溶融状態において分子の慣性半径が大きく、また、運動性が極めて低いために、結晶化過程においては、異なる結晶ラメラ間にまたがって取り込まれる確率が高い。即ち、いわゆるタイ分子としてポリエチレン固体中に存在する確率が高い。よって、超高分子量成分の重量分率を表すMc値が大きいエチレン系重合体ほど、タイ分子が多いポリエチレン固体を形成しやすくなり、その結果、耐衝撃性が向上したり、ESCRが向上したりする等、優れた機械的物性を有することとなる。
なお、上記Mc値は、GPC−Malls測定から求められる物性値である。Malls測定とは、多角度レーザー光散乱(Multi Angle Laser Light Scattering)の略称である。 Mc値の上限は特に制限はないが、大きすぎると溶融流動性が悪くなるので、好ましくは30%、より好ましくは25%、更に好ましくは20%である。
条件(ワ)において、Mc値を上記範囲内に収めるためには、エチレン系重合体中の超高分子量成分量比率を増加させる操作をおこなう。このときHLMIの値も変化するので、式(iii)及び(v)を満たす範囲内で、変化させることが必要である。
【0042】
<GPC−Malls測定とMc値の定義>
(イ)の測定装置、条件、較正により得られるデータを、(ロ)のようにデータ処理することで求められる。
【0043】
(イ)データの測定
[装置]
・GPC:Waters社製、150CV(RI検出器を含む)
・Malls:Wyatt社製、DAWN・DSP(フローセル:F2セル)
(データ処理ソフト:Wyatt社製、ASTRA Version4.50)
[条件]
・カラム:昭和電工社製、Shodex UT−806M (2本)
・溶媒:0.2w/v%BHT含有、1,2,4−トリクロロベンゼン (和光純薬、HPLCグレード)
・流量:0.5ml/分(実際には測定試料中のBHTの溶出体積で補正)
・測定温度:140℃(注入部、カラム部、検出器(RIおよびDAWN)部)
・注入量:0.3ml
・試料濃度:2mg/ml
・試料調製:試料溶液を140℃に設定した空気浴中で3〜5時間加熱して溶解[較正]
・Mallsの各検出器の感度補正の等方散乱物質としてNIST・SRM−1483を用いる。
・MallsとRI検出器とのディレイボリューム(delay volume)は東ソー(株)製の標準ポリスチレン(F10)を用いて測定する。
・溶媒の屈折率は1.502、レイリー比(Rayleigh ratio値)は3.570×10−5をそれぞれ用いる。
【0044】
(ロ)Mc値の算出
このように測定されたデータから得られる、散乱角度を0°に外挿したレイリー比を用いたクロマトグラムにおいて、分子量が100万以上の成分の当クロマトグラムの面積分率(Mc値)(%)は以下の計算により求める。
【0045】
Mallsの90°散乱のクロマトグラムにおけるピークとして検出されている全領域を計算対象として指定し、データ処理ソフトASTRAを用いて分子量を計算する。ここで、計算方法は注入重量とdn/dc(−0.104ml/g)およびZimmプロット(1次近似)である。これよりGPCにより分離された各溶出成分の散乱角度を0°に外挿したレイリー比R(0)iを式(1)により計算する。
R(0)i=K×ci ×Mi ・・・(1)
ここで、ciとMiはデータ処理ソフトASTRAを用いた計算によって得られる溶出成分iの濃度と分子量である。また、Kは式(2)によって計算される光学定数である。
K=[4π2×n2×(dn/dc)2]/[λ4/NA] ・・・(2)
【0046】
ここで、
π:円周率=3.141
n:溶媒の測定条件における屈折率=1.502
dn/dc:試料の測定条件における屈折率濃度増分=−0.104[ml/g]
λ:光源の真空中における波長=632.8×10−7[cm]
NA:アボガドロ数=6.022×1023[/mol]
より、K=9.976×10−8[cm2・mol/g2]となる。
一方、前述のZimm プロットから得られた各溶出成分の分子量と溶出体積の関係線から分子量が100万における溶出体積V(1M)を読みとり、溶出体積とR(0)iとのクロノトグラムにおけるV(1M)以上の高分子量成分の面積分率を計算する。
【0047】
(カ)溶融せん断粘度とHLMIの関係
本発明のエチレン系重合体は、190℃、周波数(ω)3.981×10−3rad/秒でのせん断粘度[ηe(ω=3.981×10−3)](単位Pa・秒)とHLMIの関係が下記式(x)を満たすことが好ましい。
Log(ηe)≧−0.531×Log(HLMI)+6.35 ・・・(x)
より好ましくは、下記式(x−a)を満たす。
Log(ηe)≧−0.531×Log(HLMI)+6.50 ・・・(x−a)
また、ηe(ω=3.981×10−3)は、好ましくは0.3MPa・秒以上、より好ましくは、0.6MPa・秒以上であると、優れた延展性能、耐ドローダウン性、ESCR、耐衝撃性を有するエチレン系重合体となる。
条件(ワ)において、ηeとHLMIの関係を式(x)を満たす範囲内に収めるために
は、分子量分布および長鎖分岐度を制御しておこなう。
【0048】
<エチレン系重合体の製造方法>
以上、本発明のエチレン系重合体の物性について説明したが、次に、上述した物性を有するエチレン系重合体の製造方法を説明する。尚、本明細書で用いる原子の周期律は1989年にIUPACにより推奨された18族方式に基づくものである。
条件(イ)〜(ホ)、あるいは(イ)〜(ホ)に加えて、(ヘ)〜(カ)から選ばれる少なくとも1つの条件を満たすエチレン系重合体を得るためには、触媒と重合条件および重合プロセスを注意深く選択することが必要である。例えば公知の伝統的なチーグラー触媒、伝統的なCr触媒、メタロセン触媒、周期表3〜11族遷移金属が中心金属のシングルサイト触媒を用いる場合は、エチレン分圧、水素濃度、コモノマー濃度、温度等の重合条件の異なる多段階の重合工程を行う従来公知の多段重合法や、特開平10−245418号公報に開示されているようにメタロセン触媒を使用する多段重合法を参考にすることができる。
【0049】
メタロセン触媒を用いる場合、下記成分[A]、[B]、及び必要に応じて[C]を含む触媒系の存在下に、エチレン単独またはエチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合させることによって製造することが望ましい。
[A]共役五員環配位子を少なくとも1個有する周期表4〜6族遷移金属化合物[B]イオン交換性層状珪酸塩
[C]有機アルミニウム化合物
【0050】
▲1▼成分[A]
本発明の触媒に用いられる成分[A]は、共役五員環構造配位子を少なくとも1個有する周期表4〜6族の遷移金属化合物である。かかる遷移金属化合物として好ましいものは、下記一般式[1]、[2]、[3]もしくは[4]で表される化合物である。
【0051】
【化1】
【0052】
[ここで、AおよびA’は共役五員環構造を有する配位子(同一化合物内においてAおよびA’は同一でも異なっていてもよい)を、Qは2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を、ZはMと結合している窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を、Q’は共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を、Mは周期表4〜6族から選ばれる金属原子を、そしてXおよびYはMと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を、それぞれ示す。]
【0053】
AおよびA’は共役五員環配位子であり、これらは同一化合物内において同一でも異なっていてもよいことは前記したとおりである。この共役五員環配位子(AおよびA’)の典型例としては、共役炭素五員環配位子、すなわちシクロペンタジエニル基を挙げることができる。このシクロペンタジエニル基は水素原子を5個有するもの[C6H5]であってもよく、また、その誘導体、すなわちその水素原子のいくつかが置換基で置換されているもの、であってもよい。この置換基の一つの具体例は、炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基であるが、この炭化水素基は一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、またこれが複数存在するときにそのうちの2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニル基の一部とともに環を形成していてもよい。後者の代表例は、2個の置換基がそれぞれのω−端で結合して当該シクロペンタジエニル基中の隣接した2個の炭素原子を共有して縮合六員環を形成しているもの、すなわちインデニル基またはフルオレニル基、アズレニル基である。
【0054】
従って、共役五員環配位子(AおよびA’)の典型例は、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基またはフルオレニル基ということができる。
シクロペンタジエニル基上の置換基としては、前記の炭素数1〜20、好ましくは1〜12、の炭化水素基の他に、ハロゲン基(例えば、フッ素、塩素、臭素)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜12のもの)、ケイ素含有炭化水素基(例えばケイ素原子を−Si(R1)(R2)(R3)の形で含む炭素数1〜24程度の基)、リン含有炭化水素基(例えば、リン原子を−P(R1)(R2)の形で含む炭素数1〜18程度の基)、窒素含有炭化水素基(例えば、窒素原子を−N(R1)(R2)の形で含む炭素数1〜18程度の基)あるいはホウ素含有炭化水素基(例えば、ホウ素原子を−B(R1)(R2)の形で含む炭素数1〜18程度の基)である。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
Qは二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は共役五員環配位子の任意の位置とZ基を架橋する結合性基を表す。好ましいものは、アルキレン基およびシリレン基である。
【0056】
Mは、周期表4〜6族から選ばれる金属原子、好ましくは周期表4族原子、具体的にはチタン、ジルコニウムおよびハフニウムである。
Zは、Mと結合している窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。
【0057】
XおよびYは、各々同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基から選ばれる。特にハロゲンである場合が好ましい。
【0058】
本発明において、成分[A]は、同一の一般式で表される化合物群内において、および(または)異なる一般式で表される化合物間において二種以上の化合物の混合物として用いることができる。
Mがジルコニウムである場合のこの遷移金属化合物の具体例は、下記の通りである。
【0059】
<イ>一般式[1]で表される化合物、すなわち結合性基Qを有せず共役五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、例えば
(1)ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(2)ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(3)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(4)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(5)ビス(n−ブチル−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(6)(シクロペンタジエニル)(エチル−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(7)(n−ブチルシクロペンタジエニル)(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(10)ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(11)ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(12)ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
(13)(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(14)(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(15)(シクロペンタジエニル)(アズレニル)ジルコニウムジクロリド。
【0060】
<ロ>一般式[2]で表される化合物、すなわち結合性基Q、例えば<ロ−1>Q=アルキレン基のものとして、例えば、
(1)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(2)エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(3)エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(4)エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(5)エチレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(6)エチレン1,2−ビス[4−(2,7−ジメチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、(7)イソプロピリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(8)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(9)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(10)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(11)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(12)エチレン(2,5−ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(13)ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(14)シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(15)ジクロロ{1,1’−ジメチルメチレンビス[2−メチル−4−(4−ビフェニル)−4H−アズレニル]}ジルコニウム。
【0061】
<ロ−2>Q=シリレン基のものとして、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(2)ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(3)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(4)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、(5)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(6)ジメチルシリレンビス[4−(2−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、(7)ジメチルシリレンビス[4−(2−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、(8)フェニルメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(9)フェニルメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(10)ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(11)テトラメチルジシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(トリエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(14)ジメチルシリレン(ジエチルシクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(15)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル]ジルコニウムジクロリド。
【0062】
<ロ−3>Q=ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基のものとして、例えば、
(1)ジメチルゲルマニウムビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(2)メチルアルミニウムビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(3)フェニルホスフィノビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(4)フェニルアミノ(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド。
【0063】
<ハ>一般式[3]で表される化合物、すなわち結合性基Q’を有せず共役五員環配位子を1個有する遷移金属化合物、例えば、(1)ペンタメチルシクロペンタジエニル−ビス(フェニル)アミノジルコニウムジクロリド、(2)インデニル−ビス(フェニル)アミドジルコニウムジクロリド、(3)ペンタメチルシクロペンタジエニル−ビス(トリメチルシリル)アミノジルコニウムジクロリド、(4)ペンタメチルシクロペンタジエニルフェノキシジルコニウムジクロリド、(5)ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、(6)シクロペンタジエニルジルコニウムベンジルジクロリド。
【0064】
<ニ>一般式[4]で表される化合物、すなわち結合性基Q’で架橋した共役五員環配位子を一個有する遷移金属化合物、例えば、
(1)ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)フェニルアミドジルコニウムジクロリド、(2)ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)tertブチルアミドジルコニウムジクロリド、(3)ジメチルシリレン(インデニル)シクロヘキシルアミドジルコニウムジクロリド、(4)ジメチルシリレン(テトラヒドロインデニル)デシルアミドジルコニウムジクロリド、(5)ジメチルシリレン(テトラヒドロインデニル)((トリメチルシリル)アミノ)ジルコニウムジクロリド、(6)ジメチルゲルマン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(フェニル)アミノジルコニウムジクロリド
。
【0065】
<ホ>また、上記<イ>〜<ニ>の化合物の塩素を臭素、ヨウ素、ヒドリド、メチル、フェニル等に置き換えたものも使用可能である。
なお、上記例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2−および1,3−置換体を含み、三置換体は1,2,3−および1,2,4−置換体を含む。
【0066】
更に、本発明では、成分[A]として上記<イ>〜<ホ>に例示したジルコニウム化合物の中心金属をジルコニウムからチタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデンまたはタングステン等に換えた化合物も用いることができる。これらのうちで好ましいものは、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物およびチタン化合物である。
【0067】
▲2▼成分[B]
本発明で成分[B]として用いられるイオン交換性層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物であり、含有するイオンが交換可能なものを言う。
【0068】
イオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、白水晴雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)、等に記載される公知の層状珪酸塩が使用できるが、その中でもモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましく、ウンモ族またはスメクタイト族が特に好ましい。
【0069】
スメクタイト族の代表的なものとしては、一般にはモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントライト、ヘクトライト、ソーコナイト等である。「ベンクレイSL」(水澤化学工業社製)、「クニピア」、「スメクトン」(いずれもクニミネ工業社製)、「モンモリロナイトK10」(アルドリッチ社製、ジュートヘミー社製)、「K−Catalystsシリーズ」(ジュートヘミー社製)等の市販品を利用することもできる。
【0070】
雲母族の代表的なものとしては、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト等がある。市販品の「合成雲母ソマシフ」(コープケミカル社製)、「フッ素金雲母」、「フッ素四ケイ素雲母」、「テニオライト」(いずれもトピー工業社製)等の市販品を利用することもできる。
【0071】
また、成分[B]は化学処理を施すことも好ましい。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の結晶構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
【0072】
好ましい化学処理としては塩類処理および/または酸処理である。層状珪酸塩とメタロセン錯体を組み合わせて得られるオレフィン重合用触媒は、層状珪酸塩がメタロセン錯体を活性化することができる。特筆すべきことは、当該層状珪酸塩の構造によって、重合活性点をマルチ−サイト化することが可能になる。このため、アルミノキサンを用いた場合にはシングルサイトであるメタロセン触媒が、マルチ−サイト触媒として機能する。したがって、通常の分子量を有するポリマーと超高分子量を有するポリマーを一度の重合で生成することが可能になる。酸処理は、層状珪酸塩中に含有されている金属原子を溶出することができ、特定の活性点を形成する役割を果たす。一方、塩類処理は、層間に存在する陽イオンを交換することができ、交換された陽イオンの大きさに応じて、層間距離を変化させることができるため、当該珪酸塩内部の活性前駆点をメタロセン錯体と接触可能にする役割を果たす。これら酸処理や塩類処理の使用化合物、処理濃度、処理温度等を制御することで、処理後の層状珪酸塩の構造を制御することが可能になる。
【0073】
本発明においては、塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物の含有する交換性陽イオンの30%以上、好ましくは40%以上、特に好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが必要である。このようなイオン交換を目的とした本発明の塩類処理で用いられる塩類は、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンを含有する化合物である。
これらの塩類は単独で用いても、二種類以上を同時に、および/または、連続して用いてもよい。本発明のエチレン系重合体を製造するためには、塩類処理で用いられる塩類として、4〜6族原子からなる群より選ばれた少なくとも一種の陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸および有機酸の陰イオンより選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなる化合物が好ましく、これらの具体例のうち、特に好ましくは、Ti2+、Ti3+、Ti4+、Zr2+、Zr3+、Zr4+、Hf2+、Hf3+、Hf4+、Cr2+、Cr3+、Cr4+、Cr5+、Cr6+、を含有する上述例示の塩である。これらの具体例のうち、最も好ましくは、Cr2+、Cr3+、Cr4+、Cr5+、Cr6+、を含有する塩である。
【0074】
酸処理は表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部又は全部を溶出させる。酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸から選択される。処理に用いる塩類及び酸は、2種以上であってもよい。塩類処理と酸処理を組み合わせる場合においては、塩類処理を行った後、酸処理を行う方法、酸処理を行った後、塩類処理を行う方法、及び塩類処理と酸処理を同時に行う方法がある。
【0075】
塩類及び酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類及び酸は、一般的には水溶液で用いられるが、場合によってはアセトン、エタノール、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒中で行うことも可能である。
【0076】
成分[B]は、得られるポリマーの粉体性状を改善する観点から造粒工程を経ることが望ましく、特に噴霧造粒を採用することが望ましい。処理の時期は、酸処理および/または塩類処理の前後を問わない。
【0077】
▲3▼成分[C]
また、本発明において、必要に応じて成分[C]として用いられる有機アルミニウム化合物の例としては、下記式で示される化合物が挙げられる。
AlR8 jX3−j
(式中、R8 は炭素数1〜20の炭化水素基、Xは水素、ハロゲン、アルコキシ基、jは0<j≦3の数を表す。)
【0078】
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、またはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムメトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。これらのうちトリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが更に好ましく、トリエチルアルミニウムが最も好ましい。
【0079】
▲4▼触媒の調製
本発明では、上記[A]成分、[B]成分及び必要に応じて用いられる[C]成分にエチレンを接触させ、予備的に重合させて触媒とするのが好ましい。[A]成分、[B]成分、必要に応じて[C]成分の接触条件は公知の方法が採用できる。
【0080】
▲5▼エチレン系重合体の製造
エチレンの単独重合反応または他のオレフィンとの共重合反応は、上記で得られた固体触媒成分、好ましくはエチレンで予備重合された固体触媒成分を用いて行われる。この際、必要に応じて有機アルミニウム化合物を用いることができる。このとき用いられる有機アルミニウム化合物としては、前記成分[C]として使用可能な化合物と同様な化合物が挙げられる。この際に用いられる有機アルミニウム化合物の量は、触媒成分[A]中の遷移金属対有機アルミニウム化合物中のアルミニウムのモル比が1:0〜10000の範囲で使用できるが、特に加重条件として、触媒成分[B]に対する該有機アルミニウム化合物中のアルミニウムの比が4.0〜100mmol−Al/g−[B]になるように選ばれると、複数の触媒を併用したり、多段重合などの特別な方法を使用せず、単一の触媒および単一の反応器だけで、上述した優れた物性を有する本発明のエチレン系重合体を得ることができる。
【0081】
触媒成分[B]に対する該有機アルミニウム化合物中のアルミニウムの比が10.0〜80.0mmol−Al/g−[B]であると更に好ましく、20.0〜60.0mmol−Al/g−[B]であると最も好ましい。重合系における該有機アルミニウム化合物中のアルミニウム濃度は、スラリー重合法の場合、好ましくは0.20〜5.00mmol−Al/L−溶媒、更に好ましくは0.30〜2.00mmol−Al/L−溶媒、最も好ましくは0.40〜1.00mmol−Al/L−溶媒である。
本発明においては、M1maxの制御は、分子量調節剤としての水素の量を増減することで所望の値に制御することができる。一方、上述したように一定の化学処理を施した層状珪酸塩は、メタロセン錯体を活性化させる上で、水素応答性の極端に小さなサイトを形成することができ、その結果、水素のフィード量に左右されにくい超高分子量エチレン重合体を生成することができる。
【0082】
本発明のエチレン系重合体は、エチレン単独、またはエチレンと他のオレフィンとを共重合することによって製造できるが、本発明のエチレン系重合体の中でも特に高い剛性を有する該重合体を得るためにはエチレンの単独重合で製造することが好ましい。
【0083】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、あるいは不存在下に行われる。温度は、−50〜250℃であり、圧力は特に制限されないが、好ましくは、常圧〜約2000kgf/cm2の範囲である。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよく、分子量、MI、HLMIの調節剤として望ましい。上述した優れた物性を有する本発明のエチレン系重合体を得るために好ましい水素量は、例えば、重合温度0〜110℃、n−ヘプタン溶媒のスラリー重合系の気相部におけるエチレンに対するモル比で、0.05〜5.0モル%、更に好ましくは0.1〜3.0モル%、最も好ましくは0.2〜2.0モル%である。好ましい重合法は、スラリー重合法、気相重合法、高圧重合法、溶液重合法である。更に好ましくはスラリー重合法、気相重合法であり、最も好ましくはスラリー重合法である。
【0084】
ここでHLMIを低い値に維持するに十分な高溶融粘度を有する成分、および超高分子量成分は、上述の触媒成分[A]、[B]、及び必要に応じて[C]を含む触媒系の存在下に、上述の条件においてエチレン単独またはエチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合させることによって製造することが望ましい。この際、触媒成分[B]に対する重合反応で用いられる有機アルミニウム化合物中のアルミニウムの比と、重合系における該有機アルミニウム化合物中のアルミニウム濃度を上述した範囲に収めることが重要である。
【0085】
また、密度を高い値に維持するに十分な高結晶性成分およびM1maxを好ましい範囲に収めるための分子量分布の狭い低分子量成分は、上述の触媒系の存在下に、上述の重合方法によって製造することができる。この際、重合温度と、重合系内に分子量調節剤として存在させる水素のエチレンに対するモル比が重要である。また、結晶化度分布の制御は、コモノマーの種類やフィード量、触媒の適切な選択によっておこなう。ただし、エチレン単独重合の場合は、触媒の適切な選択および分子量分布の制御によっておこなう。
【0086】
本発明のエチレン系重合体には、各種目的に応じて他の任意の配合成分を配合することができる。それらの付加的成分としては、通常のポリオレフィン用添加剤や配合材等として用いられる結晶化核剤、酸化防止剤、中和剤、耐候性改良剤、気泡防止剤、分散剤、帯電防止剤、滑剤、分子量調整剤(過酸化物等)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、導電性付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性化剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種助剤、他の各種樹脂及びエラストマー、フィラー、着色剤等を挙げることができる。この中でも結晶化核剤、分散剤、滑剤等表面光沢を改良する効果のあるものは光沢を更に向上させる手段として有効であり好ましい。
配合方法としては、添加剤をドライブレンドする方法、予め添加剤を高濃度にしたマスターバッチペレットを使用する方法などがある。上記機械的混合或いは溶融混練に用いられる混合機或いは混練機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ブラベンダープラストグラフ、ロール、一軸スクリュー押出造粒機、二軸スクリュー押出造粒機等を挙げることができる。また、溶融混練温度は一般に100〜300℃で行われる。
【0087】
<中空成形体の製造方法>
本発明の中空成形体は、上記の様にして製造されたエチレン系重合体を公知のブロー成形機を用いて成形することによって得られる。成形方法としては、単層ダイレクトブロー成形方法と多層ダイレクトブロー成形方法があり、それぞれの成形方法は、以下の条件で行なうのが好ましい。
本発明の中空成形体の厚みにおける最小肉厚部の厚みは、1〜4mm、好ましくは1.5〜3.5mm、より好ましくは2〜3mmである。
最小肉厚部の厚みを確保するために決められる成形条件によりブロー成形を行い、得られた成形体における最大肉厚部の厚みは、好ましくは5〜15mm、より好ましくは5〜12mm、さらに好ましくは5〜10mm、特に好ましくは5〜8mmである。最大肉厚が必要以上に厚いと製品重量が重くなる不都合が生じる。最大肉厚部の厚みは、最小肉厚部の厚みが、確保されるならば、できる限り薄い方が、製品重量が軽くなり好ましい。
さらに、本発明に用いるエチレン系重合体は、均一延伸性が優れるため、最大肉厚部の厚みと最小肉厚部の厚みの差が少ないことが特徴の一つに挙げられる。
最大肉厚部の厚みと最小肉厚部の厚みの差は、好ましくは、1〜14mm、より好ましくは1〜10mm、さらに好ましくは1〜8mm、特に好ましくは1〜6mmである。最大肉厚部の厚みと最小肉厚部の厚みの差は、少なければ少ないほどよいが、燃料タンクなど、コーナー部やリブを付した複雑な形状を有する中空成形体においては、1〜6mmが最も好ましい。
【0088】
(1)単層ダイレクトブロー成形方法
本発明の好ましい単層ダイレクトブロー成形方法は、円筒状溶融樹脂を押出後に金型を閉じて空気圧力により膨らまし、冷却固化する一般的なダイレクトブロー成形方法が挙げられる。ブロー成形条件としては、成形温度が120〜250℃、吹込圧力2〜10kg/cm2、ブロー比が1.2〜5.0の条件が好ましい。
本発明のエチレン系重合体を押出機からダイを通して、そのパリソンを形成する。このパリソンを成形用金型内において、内側より空気圧により膨らませ、金型に密着させると同時に冷却することにより製造する。
【0089】
(2)多層ダイレクトブロー成形方法
本発明の好ましい多層ダイレクトブロー成形方法は、前記の単層ダイレクトブロー成形方法と基本的に同じでダイスが2層以上の構造であればよい。層構成としては、エチレン系重合体を少なくとも1層含めばよく、内層、中間層、最外層のどこにあってもよい。好ましくは、中間層をバリアー特性に優れる樹脂層を配し、その内層及び外層にエチレン系重合体を用いてもよい。
本発明で好ましい多層構造は最外層及び最内層のエチレン系重合体の間にエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等のバリアー性樹脂を混合した中間層を含む3種以上の多層構造である。
複数の押出機から各層の樹脂組成物を個別に可塑化して同じ円状の流路を有する同一のダイに押出し、ダイ内で各層の肉厚の均一化を行うと共に各層を重ね合わせ、見かけ上、一層のパリソンを形成し、ついで上記と同様にして成形用金型において成形する。バリヤ層の両面に接着層を介して本発明のエチレン系重合体組成物による高密度ポリエチレン層を積層した3種5層構造のものが好ましい。その際、バリヤ層の厚さは0.01〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.3mm、接着層の厚さは、0.01〜0.5mm、好ましくは0.3mm、高密度ポリエチレン層の厚さは、1〜10mm、好ましくは1.5〜5mmの範囲から選ばれる。
【0090】
多層の場合は、バリヤ層の少なくとも片側に接着層を介して、エチレン系重合体組成物から形成されるポリエチレン層を積層した積層型の燃料タンクとして好適に使用することができる。バリヤ層は、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂、鹸化度が93%以上、好ましくは96%以上でエチレン含量が25〜50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物などから形成することができる。
【0091】
特に、ポリアミド樹脂が形成安定性、ガスバリヤ性の点から好ましく、ジアミンとジカルボン酸との重縮合によって得られるポリアミド、アミノカルボン酸の縮合によって得られるポリアミド、ラクタムから得られるポリアミドまたはこれらの共重合ポリアミドなどの、通常、相対粘度が1〜6程度で、融点が170〜280℃、好ましくは200〜240℃のものが使用される。具体的には、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−9、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6/66、ナイロン−66/610、ナイロン−6/11などが挙げられる。特にナイロン−6が好適である。
【0092】
本発明においてはポリアミド層は、上記ポリアミド樹脂と無水マレイン酸変性エチレン〜α−オレフィン共重合体とからなる変性ポリアミド樹脂組成物から形成されたものが好ましく、無水マレイン酸変性エチレン〜α−オレフィン共重合体としては、結晶化度が1〜35%、好ましくは1〜30%で、メルトインデックスが0.01〜50g/10分、好ましくは0.1〜20g/10分のエチレン〜α−オレフィン共重合体に、無水マレイン酸を0.05〜1重量%、好ましくは0.2〜0.6重量%グラフトしたものが使用される。エチレン〜α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などが挙げられ、これらのα−オレフィンは、30重量%以下、好ましくは5〜20重量%の割合でエチレンと共重合される。
【0093】
無水マレイン酸変性エチレン〜α−オレフィン共重合体の使用割合は、ポリアミド樹脂100重量部に対して10〜50重量部、好ましくは10〜30重量部の範囲から選ばれ、例えば200〜280℃の温度で押出機などにより混練して使用される。
【0094】
接着層としては、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンの単独重合体や共重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体で0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.6重量%グラフトした変性ポリオレフィンが使用できる。特に、密度が0.940〜0.970g/cm3 のエチレン単独重合体またはエチレンと3重量%以下、好ましくは0.05〜0.5重量%のプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などのα−オレフィンとの共重合体の変性物が好適である。不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸またはそれらの無水物などが挙げられる。特に無水マレイン酸が好ましい。
【0095】
<中空成形体の用途>
本発明の中空成形体はブロー成形により製造されるものであり、その用途は事実上、容器に限定される。本発明に用いるエチレン系重合体は、均一延伸性などの成形加工性に優れ、各種の形状に加工することが可能でありその用途は広範である。例えば、化粧品、シャンプー、リンス、台所洗剤、食品、医療、試薬、診断薬、玩具等の小型のブロー容器製品、及びドラム缶などの大型中空成形容器、燃料タンクとして用いることができる。これらの中でも燃料タンク用途に最適である。
【0096】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本発明で使用する物性値の測定法と定義は既に述べた通りである。また、%は特に断りない限り、重量%を示す。
【0097】
[実施例1]
(1)粘土鉱物の化学処理および造粒
市販のモンモリロナイト(「クニピアF」、クニミネ工業社製)8kgを振動ボールミルによって粉砕し、塩化マグネシウム10kgを溶解させた脱塩水50L中に分散させて、80℃で1時間撹拌した。得られた固体成分を水洗した後、8.2%の塩酸水溶液56L中に分散させて、90℃で2時間撹拌し、脱塩水で水洗した。このようにして化学処理されたモンモリロナイト4.6kgの水スラリー液を固形分濃度15.2%に調整しスプレードライヤーにより噴霧乾燥を行った。造粒により得られた粒子の形状は球状であった。
【0098】
(2)粘土鉱物のクロム塩処理
純水1000gに市販のCr(NO3)3・9H2O 80gを溶解させた後、これに(1)で得られた化学処理モンモリロナイト造粒粒子200gを分散させ、90℃で3時間攪拌した。これを脱塩水にてpH6まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備乾燥して、全て流れ性の良い粒子状のクロム塩処理モンモリロナイト237.1gを得た。この予備乾燥モンモリロナイト粒子10.45gを更に200℃で2時間減圧乾燥し、乾燥モンモリロナイト粒子9.13gを得た。
【0099】
(3)クロム塩処理モンモリロナイトの有機Al処理
窒素雰囲気下、200mLフラスコにおいて(2)で得たクロム塩処理モンモリロナイト粒子9.13gをn−ヘプタン10.8mlに分散させてスラリーとした。次いで、室温において撹拌下、トリエチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(濃度0.622mol/L)44.0mlを添加した。室温で1時間接触させた後、上澄み液を抜き出し、固体部をn−ヘプタンで洗浄した。
【0100】
(4)触媒調製および予備重合
窒素雰囲気下、容量1Lの誘導攪拌装置付き反応器にn−ヘプタン700mlと(3)で得た固体部全量を反応器へ導入した。ここへビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.7304mmol(0.2135g)をn−ヘプタン85.4mlで溶液として添加し、30℃で10分間攪拌した。引き続きトリエチルアルミニウム8.76mmol(1.00g)を添加して、60℃に昇温した後、更に10分間攪拌を続けた。系の温度を保持したまま、エチレンガスを0.45NL/分の速度で113分間導入して予備重合を行った。エチレンの供給を停止し、反応器内容物を窒素雰囲気下において全て2Lフラスコに抜き出した。ヘプタン500mLを反応器に追加して反応器内に残存した内容物を全てフラスコに抜き出した。フラスコに移送した予備重合触媒スラリーを静置して上澄み液約950mLを除去した後、70℃に加熱しながら減圧乾燥を行って溶媒を除去した。この結果、予備重合触媒粉末71.25gを回収した。
【0101】
(5)エチレンの重合
上記(4)の予備重合触媒を使用してエチレン重合を行った。即ち90℃で精製窒素を流通させて十分乾燥した後、エチレンガスによって置換された容積200Lの撹拌反応器中に、室温にてn−ヘプタン100Lとトリエチルアルミニウム48.0mmolを添加した。反応器内温を90℃とした後、所定量の水素(圧力20.5kg/cm2、体積1090ml)を導入し、次いでエチレンガスを導入して圧力を20KGとした。内温と圧力を保持したまま、上記(4)の予備重合触媒16.0gを添加してエチレンの重合を開始した。重合中は圧力を常に20KGに維持するようにエチレンを供給し、重合を5時間継続した。水素は重合開始時から1時間毎に適量追加添加した。重合開始してからの反応器内気相部の水素/エチレン比(モル%)の30分毎の推移は、1.096/0.969/0.802/1.105/0.931/0.881/0.766/0.808/0.713/0.669、であった。その結果、粒子状のエチレン単独重合体1.79kgが得られた。
得られたポリエチレン100重量部にヒンダードフェノール系安定剤であるイルガノックス1010(商品名、チバガイギー社製)を0.1重量部、フォスファイト系安定剤であるイルガフォス168(商品名、チバガイギー社製)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部添加してペレット化し、各種試験及び製品評価に供した。
【0102】
(6)製品評価のための成形品の製造
上記エチレン系重合体ペレットを使用して下記の方法でブロー成形し、中空成形体を製造した。
▲1▼ブロー成形装置:日本製鋼所製 NB80G
▲2▼成形条件 :成形温度210℃、吹込み空気圧力5kg/cm2
▲3▼金型形状 :鞍型タイプガソリンタンクテスト型
▲4▼製品形状 :横1000mm、縦450mm、高さ250mmの鞍型サドルバッグ 容量60Lのガソリンタンク
▲5▼製品重量 :8.5kg
▲6▼製品肉厚 :平均肉厚5.5mm、最小肉厚2.8mm
【0103】
(7)製品評価の方法
▲1▼平均肉厚 :製品を100mmピッチでマーキングし、切断後厚みを測定
▲2▼最小肉厚 :底面から鞍部につながる部位で測定
▲3▼最大肉厚 :上面と下面が接近した鞍部で測定
▲4▼低温落下高さ :製品に−40℃の不凍液を30L封入し、高さ1mピッチでコンクリ ート面に落下させ、割れの発生しない最大高さで表示
【0104】
[実施例2]
(1)触媒調製および予備重合
実施例1(1)〜(4)と同様にして触媒調製および予備重合を実施した。ただし、乾燥クロム塩処理モンモリロナイト粒子9.15gに対して、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド1.601mmol(0.468g)を使用し、予備重合時に使用するトリエチルアルミニウムは19.18mmol(2.19g)とした。この結果、予備重合触媒粉末79.39gを回収した。
【0105】
(2)エチレンの重合
上記(1)の予備重合触媒を使用して実施例1(5)と同様にしてエチレン重合を行った。ただし、トリエチルアルミニウムは80.0mmolとし、重合時間は3時間であった。重合開始してからの反応器内気相部の水素/エチレン比(モル%)の30分毎の推移は、1.091/0.932/0.221/0.269/0.056/0.329/0.319、であった。その結果、粒子状のエチレン単独重合体10.8kgが得られた。
得られたポリエチレン100重量部にヒンダードフェノール系安定剤であるイルガノックス1010(商品名、チバガイギー社製)を0.1重量部、フォスファイト系安定剤であるイルガフォス168(商品名、チバガイギー社製)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部添加してペレット化し、各種物性試験および成形試験に供した。
【0106】
[実施例3]
(1)エチレンの重合
実施例2(1)の予備重合触媒を使用して実施例2(2)と同様にしてエチレン重合を行った。ただし、重合前に反応器に導入する水素を減らし(圧力15.0kg/cm2、体積1090ml)、重合時間は5時間とした。重合開始してからの反応器内気相部の水素/エチレン比(モル%)の30分毎の推移は、0.830/0.685/0.418/0.421/0.201/0.463/0.224/0.418/0.210/0.411/0.203、であった。その結果、粒子状のエチレン単独重合体9.9kgが得られた。
得られたポリエチレン100重量部にヒンダードフェノール系安定剤であるイルガノックス1010(商品名、チバガイギー社製)を0.1重量部、フォスファイト系安定剤であるイルガフォス168(商品名、チバガイギー社製)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部添加してペレット化し、各種物性試験および成形試験に供した。
【0107】
[比較例1]
(1)粘土鉱物のマグネシウム塩処理
市販の膨潤性モンモリロナイトの造粒分級品(「ベンクレイSL」、水澤化学社製、平均粒径27μm)216gを硫酸マグネシウムの硫酸水溶液(硫酸マグネシウム濃度7.18%、硫酸濃度11.8%)1952g中に分散させ、100℃で2時間撹拌した。これを脱塩水にて濾過・洗浄した後、得られた固体ケーキを110℃で10時間乾燥し、予備乾燥モンモリロナイト187gを得た。この予備乾燥モンモリロナイトを目開き150μmの篩にかけ、篩を通過した粒子を更に200℃で2時間減圧乾燥した。
【0108】
(2)粘土鉱物のクロム塩処理
純水200gに市販のCr(NO3)3・9H2O 24gを溶解させた後、これに(1)で得られた化学処理モンモリロナイト造粒粒子10gを分散させ、90℃で3時間攪拌した。これを脱塩水にてpH6まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備乾燥して、全て流れ性の良い粒子状のクロム塩処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥モンモリロナイト粒子6.17gを更に200℃で2時間減圧乾燥し、乾燥モンモリロナイト粒子5.85gを得た。
【0109】
(3)クロム塩処理モンモリロナイトの有機Al処理
窒素雰囲気下、200mLフラスコにおいて(2)で得たクロム塩処理モンモリロナイト粒子5.85gをn−ヘプタン6.9mlに分散させてスラリーとした。次いで、室温において撹拌下、トリエチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(濃度0.622mol/L)28.2mlを添加した。室温で1時間接触させた後、上澄み液を抜き出し、固体部をn−ヘプタンで洗浄した。
【0110】
(4)触媒調製および予備重合
窒素雰囲気下、容量1Lの誘導攪拌装置付き反応器にn−ヘプタン736mlと(3)で得た固体部全量を反応器へ導入した。ここへビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.4680mmol(0.1368g)をn−ヘプタン54.7mlで溶液として添加し、30℃で10分間攪拌した。引き続きトリエチルアルミニウム5.61mmol(0.641g)を添加して、60℃に昇温した後、更に10分間攪拌を続けた。系の温度を保持したまま、エチレンガスを0.45NL/分の速度で100分間導入して予備重合を行った。エチレンの供給を停止し、反応器内容物を窒素雰囲気下において全て2Lフラスコに抜き出した。ヘプタン500mLを反応器に追加して反応器内に残存した内容物を全てフラスコに抜き出した。フラスコに移送した予備重合触媒スラリーを静置して上澄み液約950mLを除去した後、70℃に加熱しながら減圧乾燥を行って溶媒を除去した。この結果、予備重合触媒粉末50.76gを回収した。
【0111】
(5)エチレンの重合
上記(4)の予備重合触媒を使用して実施例1(5)と同様にしてエチレン重合を行った。ただし、トリエチルアルミニウムは80.0mmolとし、重合時間は5時間であった。重合開始1時間後からの反応器内気相部の水素/エチレン比(モル%)の30分毎の推移は、0.476/0.543/0.361/0.405/0.267/0.403/0.264/0.341/0.249、であった。その結果、粒子状のエチレン単独重合体4.2kgが得られた。
得られたポリエチレン100重量部にヒンダードフェノール系安定剤であるイルガノックス1010(商品名、チバガイギー社製)を0.1重量部、フォスファイト系安定剤であるイルガフォス168(商品名、チバガイギー社製)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部添加してペレット化し、各種物性試験および成形試験に供した。
【0112】
(6)製品評価
上記エチレン系重合体ペレットを使用して、実施例1と同様にブロー成形を行い、製品評価を試みたが、パリソン自重による形状保持性が不安定で、ブロー成形可能なパリソンが押し出せず、そのため成形不能となり所望の製品が得られなかった。エチレン系重合体の物性測定結果を、以下の比較例と共に表2に示した。
【0113】
[比較例2]
(1)粘土鉱物のクロム塩処理
実施例1(1)で得られた化学処理モンモリロナイト造粒粒子を1Lフラスコに20g分取し、その後、市販のCr(NO3)3・9H2O 48gを溶解させた脱塩水400mlに分散させ、90℃で3時間攪拌した。処理後、この固体成分を脱塩水で洗浄し、乾燥を行って化学処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥モンモリロナイト粒子10.0gを更に200℃で2時間減圧乾燥し、乾燥モンモリロナイト粒子8.7gを得た。
【0114】
(2)クロム塩処理モンモリロナイトの有機Al処理
窒素雰囲気下、100mLフラスコに、(1)で得たクロム塩処理モンモリロナイト粒子3.0gを入れ、トルエン20mlに分散させてスラリーとした。次いで室温において撹拌下、トリエチルアルミニウムを1.3ml添加した。室温で1時間接触させた後、上澄み液を抜き出し、固体部をトルエンで洗浄した。
【0115】
(3)触媒調製
(2)に引き続き、窒素雰囲気下、トルエンを追加してスラリーとした後、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(20.0μmol/ml)を12.0ml加え、室温で1時間攪拌して触媒成分を得た。
【0116】
(4)エチレンの重合
精製窒素で充分置換された2Lの誘導撹拌式オートクレーブ中にノルマルヘキサン1L、トリエチルアルミニウム0.15mmol、(3)で得られた触媒成分を100.0mg仕込んだ。その後、90℃に昇温した後、エチレンを導入して全圧を22.0kgf/cm2に保ち、撹拌を続けて1時間重合を行った。重合はエタノール10mlを加えることにより停止させた。得られたエチレン重合体は280gであった。
得られたポリエチレン100重量部にヒンダードフェノール系安定剤であるイルガノックス1010(商品名、チバガイギー社製)を0.1重量部、フォスファイト系安定剤であるイルガフォス168(商品名、チバガイギー社製)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部添加してペレット化し、各種物性試験および成形試験に供した。(5)製品評価
上記エチレン系重合体ペレットを使用して、実施例1と同様にブロー成形を行い、製品評価を試みたが、樹脂の流動性が不足して、ブロー成形可能なパリソンが押し出せず、そのため成形不能となり所望の製品が得られなかった。
【0117】
[比較例3]
(1)エチレンの重合
比較例2(4)で得られた触媒成分の使用量を120mg、オートクレーブ内のガス組成が[水素/エチレン]=0.034mol%になるように水素を加えた以外は比較例2(5)と同様の方法によりエチレンの重合を行った。得られたエチレン重合体は310gであった。
得られたポリエチレン100重量部にヒンダードフェノール系安定剤であるイルガノックス1010(商品名、チバガイギー社製)を0.1重量部、フォスファイト系安定剤であるイルガフォス168(商品名、チバガイギー社製)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部添加してペレット化し、各種物性試験および成形試験に供した。
【0118】
[比較例4]
(1)粘土鉱物のクロム塩処理
実施例1(1)で得られた化学処理モンモリロナイト造粒粒子を1Lフラスコに20g分取し、その後、市販のCr(NO3)3・9H2O 48gを溶解させた脱塩水400mlに分散させ、90℃で3時間攪拌した。処理後、この固体成分を脱塩水で洗浄し、乾燥を行って化学処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥モンモリロナイト粒子10.0gを更に200℃で2時間減圧乾燥し、乾燥モンモリロナイト粒子8.7gを得た。
【0119】
(2)クロム塩処理モンモリロナイトの有機Al処理
窒素雰囲気下、100mLフラスコに、(1)で得たクロム塩処理モンモリロナイト粒子3.0gを入れ、トルエン20mlに分散させてスラリーとした。次いで室温において撹拌下、トリエチルアルミニウムを1.3ml添加した。室温で1時間接触させた後、上澄み液を抜き出し、固体部をトルエンで洗浄した。
【0120】
(3)触媒調製
(2)に引き続き、窒素雰囲気下、トルエンを追加してスラリーとした後、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(20.0μmol/ml)を12.0ml加え、室温で1時間攪拌して触媒成分を得た。
【0121】
(4)エチレンの重合
精製窒素で充分置換された2Lの誘導撹拌式オートクレーブ中にノルマルヘキサン1L、トリエチルアルミニウム0.15mmol、(3)で得られた触媒成分を120mg仕込んだ。その後、90℃に昇温してオートクレーブ内のガス組成が[水素/エチレン]=0.034mol%になるように水素を加えた後、エチレンを導入して全圧を22.0kgf/cm2に保ち、撹拌を続けて1時間重合を行った。重合はエタノール10mlを加えることにより停止させた。得られたエチレン重合体は310gであった。以下、実施例1と同様にしてペレット化し、各種物性試験および成形試験に供した。
【0122】
[比較例5]
(1)固体触媒成分の調製
成形性が優れたエチレン系重合体とうたわれている特開平9−328520号公報の実施例記載の錯体を使用して触媒成分を調製した。すなわち、市販のシリカ担持メチルアルミノキサン(Witco社製 TA02794、メチルアルミノキサンとして50重量%含有)6.0gをトルエン50mlでスラリー化し、ここへ、ジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(ジアステレオ異性体の混合比1:1)のトルエン溶液(Zr=0.0103ミリモル/ml)11.1mlを20℃で30分かけて滴下した。次いで80℃まで昇温し、その温度で2時間反応させた。その後、上澄み液を除去し、ヘプタンで2回洗浄した。
【0123】
(2)エチレンの予備重合
上記(1)で得られた固体触媒4gをヘプタン200mlで再スラリー化した。ここへトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.731mmol/ml)6.84mlおよび1−ヘキセン0.36gを加え、35℃でエチレンの予備重合を行うことにより、3gのポリエチレンが予備重合された。
【0124】
(3)エチレンの重合
十分に窒素置換された内容積が3Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン1.5Lを装入し、系内をエチレンと水素の混合ガス(水素含量0.05mol%)で置換した。次いで系内を60℃とし、トリイソブチルアルミニウム1.5mmol、上記(2)で調製した予備重合触媒180mgを添加した。その後、上記と同様の組成を有するエチレンと水素の混合ガスを導入し、全圧8kg/cm2−Gとして重合を開始した。その後、混合ガスのみを補給し、全圧を8kg/cm2−Gに保ち、70℃で1.5時間重合を行った。以下、実施例1と同様にしてペレット化し、ブロー成形を行い、製品評価を試みた。しかしパリソン自重による形状保持性が不安定で、ブロー成形可能なパリソンが押し出せず、そのため成形不能となり所望の製品が得られなかった。
【0125】
【表1】[表1]
【0126】
【表2】[表1つづき]
【0127】
【表3】[表2]
【0128】
【表4】[表2つづき]
【0129】
表1、表2中の式(i)〜(viii)の略号の意味は下記の通りである。
式(i) Lm≦0.238×Log(HLMI)+1.32=f1(HLMI)
式(ii) M≧−7310×Log(ESCR)+32300=f2(ESCR)
式(iii)d≧0.009×Log(HLMI)+0.951=f3(HLMI)
式(iv )R≧35.5×Log(MT)−22.2=f4(MT)
式(v) Log(M1max)≦−0.307×Log(HLMI)+4.87=f5(HLMI)
式(vi)Tm≦538d−378=f6(d)
式(vii)Log[G’s(ω=0.1)]≧−0.374×Log(HLMI)+4.35=f7(HLMI)
式(viii)Log[G’s(ω=1.0)]≧−0.135×Log(HLMI)+4.62=f8(HLMI)
【0130】
【発明の効果】
本発明のエチレン系重合体は、均一延伸性・耐ドローダウン性・スウェル・押出性に代表される成形加工性と、剛性・耐衝撃性・ESCRに代表される機械的物性に優れるので、ブロー成形に好適である。得られるブロー成形品(中空成形体)は剛性とESCRのバランスが従来公知のエチレン系重合体に比べて格段に優れている。また、材料の硬化現象(strain hardening)を生じやすく、その部位の過剰な伸びを抑制する性質があるので、金型の曲部において、パリソンの変形が均一化された状態でブローアップされるため、得られる成形品の曲部の肉厚が従来のものに比べてより厚いものを成形することができる。
Claims (11)
- エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、下記条件(イ)〜(ホ)を満たすエチレン系重合体をブロー成形して成り、該成形体の最小肉厚が1〜4mmであることを特徴とする中空成形体。
(イ)190℃における21.6kg荷重でのメルトインデックス(HLMI)が1〜15g/10分
(ロ)密度(d)が0.935〜0.985g/cm3
(ハ)溶融延展性比(R)が3.5以上
(ニ)溶融ドローダウン指標(Lm)とHLMIの関係が下記式(i)を満たす
Lm≦0.238×Log(HLMI)+1.32・・・(i)
(ホ)曲げ弾性率(M)と耐環境応力亀裂性(ESCR)の関係が下記式(ii)を満たす
M≧−7310×Log(ESCR)+32300・・・(ii) - 上記条件(イ)〜(ホ)に加えて、更に、条件(ヘ)密度(d)とHLMIの関係が下記式(iii)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の中空成形体。
d≧0.00900×Log(HLMI)+0.951・・・(iii) - 上記条件(イ)〜(ホ)に加えて、更に、条件(ト)溶融延展性比(R)と溶融張力(MT)の関係が下記式(iv)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の中空成形体。
R≧35.5×Log(MT)−22.2・・・(iv) - 上記条件(イ)〜(ホ)に加えて、更に、条件(チ)スウェルが1.8以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の中空成形体。
- 上記条件(イ)〜(ホ)に加えて、更に、条件(リ)を満たすことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の中空成形体。
(リ)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による分子量分布曲線における最大ピーク位置の分子量(M1max)とHLMIの関係が、下記式(v)を満たす。
Log(M1max)≦−0.307×Log(HLMI)+4.87・・・(v) - 上記条件(イ)〜(ホ)に加えて、更に、条件(ヌ)を満たすことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の中空成形体。
(ヌ)示差熱分析(DSC)で測定される融点(Tm)と密度(d)の関係が、下記式(vi)を満たす。
Tm≦538d−378・・・(vi) - 上記条件(イ)〜(ホ)に加えて、更に、条件(ル)190℃、周波数(ω)0.1rad/秒での貯蔵弾性率[G’s(ω=0.1)](単位Pa)、および、周波数(ω)1.0rad/秒での貯蔵弾性率[G’s(ω=1.0)](単位Pa)と、HLMIの関係が各々下記式(vii)及び(viii)を満たすことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の中空成形体。
Log[G’s(ω=0.1)]≧−0.374×Log(HLMI)+4.35・・・(vii)
Log[G’s(ω=1.0)]≧−0.135×Log(HLMI)+4.62・・・(viii) - 上記条件(イ)〜(ホ)に加え、更に、条件(ヲ)GPCで測定した数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が7より大きいことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の中空成形体。
- 成形体の最大肉厚が5〜15mmであることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の中空成形体。
- 成形体の最大肉厚と最小肉厚との差が1〜14mmであることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の中空成形体。
- 請求項1〜10いずれか1項記載の中空成形体からなる燃料タンク。
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-
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