JP2004018418A - 星細胞活性化抑制剤、及び、臓器線維症の予防又は治療剤 - Google Patents
星細胞活性化抑制剤、及び、臓器線維症の予防又は治療剤 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】有効かつ副作用の少ない星細胞活性化抑制剤、及び、肝臓、腎臓等の臓器線維症の予防又は治療剤を提供すること。
【解決手段】L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とする星細胞活性化抑制剤並びに臓器線維症の予防又は治療剤。
【選択図】 なし
【解決手段】L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とする星細胞活性化抑制剤並びに臓器線維症の予防又は治療剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、肝臓や腎臓などの臓器に存在する星細胞の活性化を抑制する星細胞活性化抑制剤、及び、星細胞の活性化に伴う臓器線維症の予防又は治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
臓器線維症は、臓器内の細胞が、ウイルス、アルコール、薬剤等の種々の原因により壊死した後、十分に再生せず、結合組織が増加して線維化することにより生じる疾患であり、肝硬変、腎硬化症、肺線維症等が知られている。線維化が進行した場合、現在、その予後を改善する治療法は皆無といっても過言ではない。
【0003】
臓器線維症のうち、肝硬変は、慢性肝炎から高率で進行し、さらに、肝不全ないし肝癌に移行する確率が高いことが知られており、この慢性肝炎→肝硬変→肝癌という病態連鎖の進行を抑制することは重要である。
肝硬変の予防に関しては、インターフェロンやグリチルリチン製剤を用いる治療法が存在する。しかしながら、インターフェロン製剤は高価である上、有効性は3割程度しかなく、また、ウイルス性の肝障害にしか適応がない。また、グリチルリチン製剤は静脈内投与が必要であり、患者への頻回投与は困難である。
一方、腎硬化症に対する有効な薬剤についての報告はほとんどないのが現状である。
【0004】
ところで、近年、肝構成細胞の分離および初代培養技術は著しい進歩を遂げている。ラットやマウスなどの小動物やヒトから、肝(実質)細胞のみならず、非実質細胞であるKupffer細胞、内皮細胞、星細胞、pit細胞、胆管上皮細胞が分離可能となっており、これらの非実質細胞について数多くの研究がなされている。その結果、肝細胞代謝の恒常性維持と肝局所炎症反応における肝非実質細胞の重要性が認識されるようになり、特に、星細胞の機能が注目を集めている。
【0005】
星細胞は、GFAP(グリア細胞線維性酸性蛋白質)、ネスチン、N−CAM(神経細胞接着分子)、プリオンなどを発現することから、neural crest由来の細胞であると考えられている。肝臓の星細胞は、通常、ビタミンA代謝において中心的な役割を果たすことが知られている。
【0006】
星細胞は、肝炎等において惹起された炎症が持続すると、いわゆる「活性化」とよばれる機能変化をとげて、筋線維芽細胞へと形質転換する。
この活性化された星細胞においては、以下の1)〜4)などの現象が生じることが明らかになっている。
1)コラーゲンやプロテオグリカンなどの細胞外マトリックスの代謝が活性化する。
2)TGFβ (transforming growth factor β)等の、臓器線維化を促進する各種成長因子の産生が著明に増加する。
3)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害物質であるtissue inhibitor of MMP(TIMP)の産生が増加する。
4)星細胞膜上に、血小板由来増殖因子(PDGF)に対する受容体(PDGFRβ)、インスリン様成長因子(IGF−I)に対する受容体(IGF−IRβ)が発現誘導され、星細胞の増殖促進や遊走能の獲得がみられる。
【0007】
したがって、星細胞の活性化が臓器線維化に関与していると考えられ、実際、ヒトの慢性肝炎や肝硬変組織の線維性隔壁部には、細胞外マトリックスとともに、活性化された星細胞が多数存在していることが確認されている。
それゆえに、星細胞の活性化を抑制することができれば、肝硬変等における臓器線維化を抑制することが可能になるだけでなく、軽減することも可能となると考えられる。
【0008】
これまで、星細胞の活性化を抑制するいくつかの試みがなされてきた。例えば、TGFβの可溶型受容体を投与することによって内因性のTGFβの作用を中和して線維化を抑制しようとする試み、ドミナントネガティブ型TGFβ受容体を発現させる遺伝子治療、PDGF受容体特異的チロシンキナーゼ阻害剤の開発などである。しかしながら、未だ、臨床使用の結果が公表されているものはない。
また、モルフォゲンとしての作用を有する肝細胞増殖因子(HGF)を用いた遺伝子治療も提案されている。しかしながら、HGFを長期投与した場合、種々の臓器での発癌が促進される可能性を否定できないことから、臨床応用できるかどうかははっきりしていない。
【0009】
一方、上述ように、肝臓の線維化の分子機構とその制御戦略についての研究はなされているものの、腎臓や肺、膵臓、脾臓及び消化管等の臓器に関してはまだ解析が少ない。
しかし、これらの臓器にも星細胞が存在することはすでに確認されており、腎硬化症等の臓器線維症にも星細胞が関与していることが推察される。
【0010】
それゆえに、星細胞の活性化を抑制することができれば、肝臓のみならず、腎臓や肺などの、星細胞が存在する多様な臓器の線維化についても抑制することができると考えられる。したがって、本発明は、有効かつ副作用の少ない星細胞活性化抑制剤、及び、肝臓、腎臓等の臓器線維症の予防又は治療剤を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究をおこなった結果、L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体が星細胞の活性化及び増殖を抑制し、それらの細胞の増殖因子に対する反応性を減弱させることに極めて有効であることを見いだし、本発明に至った。
【0012】
前記課題を解決する本発明の第一の発明は、L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とする星細胞活性化抑制剤である。
前記課題を解決する本発明の第二の発明は、L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とする臓器線維症の予防又は治療剤である。
前記臓器線維症は、肝臓、腎臓、膵臓、肺臓、脾臓及び大腸の線維症のいずれかであることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の星細胞活性化抑制剤の有効成分であるL−メチオニン及びL−システインは必須アミノ酸として知られている。L−メチオニン及びL−システインはともに含硫アミノ酸であり、それぞれ以下の構造を有している。
【0014】
【化1】
【0015】
これらのアミノ酸の薬理作用に関し、様々な報告がなされているが、星細胞の活性化や、肝臓、腎臓等の臓器の炎症に伴う臓器線維化に関連する報告はない。
【0016】
本発明において用いられるL−メチオニン及びL−システインは、通常遊離アミノ酸の形態で用いられるが、特に遊離形態である必要はなく、誘導体、すなわち、薬理学的に許容される塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩等の金属塩、塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸塩等の形態、又は生体内で加水分解されて遊離アミノ酸に変換されるエステルの形態で用いることもできる。
これらの誘導体の形態での利用は、遊離アミノ酸形態では溶解度が低く、沈殿が生じる危険がある場合に特に有効である。また、必要に応じて還元糖を配合する場合に生じるおそれのある、メイラード反応による褐変現象を有利に抑制できる。
【0017】
本発明において、星細胞の活性化抑制効果を発揮するために必要なL−メチオニンの有効投与量は、1日あたり、好ましくは1.5mg/体重1kg以上、特に好ましくは15〜1500mg/体重1kgである。また、L−システインの有効投与量は、1日あたり、好ましくは2mg/体重1kg以上、特に好ましくは20〜1200mg/体重1kgである。
【0018】
本発明の星細胞活性化抑制剤は、上記有効成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、生理的に受容可能な液体又は固体の製剤担体を配合した薬剤組成物として使用することができる。
製剤担体としては、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤、安定化剤、溶剤等を添加することができる。前記薬剤組成物は、投与方法に応じて、様々な製剤形態をとることができる。該製剤形態としては、水剤、シロップ剤、懸濁剤、乳濁剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等の経口摂取可能な形態が好ましいが、注射剤、輸液等の形態であってもよい。
投与方法としては、経口、経静脈、経中心静脈、経直腸投与等の任意の投与方法が可能であるが、特に、経口投与が好ましい。
前記薬剤組成物中におけるL−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体の配合量は、特に制限はなく、剤形に合わせて適宜決定すればよい。
【0019】
また、本発明の星細胞活性化抑制剤は、食品に添加して用いてもよく、その場合、上記の他に、通常、食品に添加可能な物質(酸化防止剤、着色料等)を添加することができる。
【0020】
また、本発明の星細胞活性化抑制剤は、1日に1回又は数回に分けて投与することができる。
【0021】
本発明の星細胞活性化抑制剤は、肝臓や腎臓などの臓器において、慢性炎症後などに惹起される臓器線維症の進行を抑制するための臓器線維症の予防又は治療剤としても使用可能である。
本発明の臓器線維症の予防又は治療剤が用いられる臓器線維症としては、肝硬変、腎硬化症、肺線維症、慢性膵炎、胃潰瘍、炎症性腸疾患等を挙げることができ、好ましくは肝硬変、腎硬化症である。
【0022】
本発明において、臓器繊維化抑制効果を発揮するために必要なL−メチオニンの有効投与量は、1日あたり、好ましくは1.5mg/体重1kg以上、特に好ましくは15〜1500mg/体重1kgである。また、L−システインの有効投与量は、1日あたり、好ましくは2mg/体重1kg以上、特に好ましくは20〜1200mg/体重1kgである。
【0023】
本発明の臓器繊維化抑制剤は、上記有効成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、上述したような、生理的に受容可能な液体又は固体の製剤担体を配合した薬剤組成物として使用することができる。
【0024】
本発明において、L−メチオニン及びL−システインはともに必須アミノ酸であるので、本発明の星細胞活性化抑制剤及び臓器線維化抑制剤は、安全で、副作用が生じるおそれがない。また、経口摂取することが可能であり、各種医薬品、食品、栄養剤等に添加して用いることができる。
星細胞は、肝炎等において惹起された炎症が持続すると、いわゆる「活性化」とよばれる機能変化をとげて、筋線維芽細胞へと形質転換する。本発明の星細胞活性化抑制剤及び臓器線維化抑制剤は、星細胞の活性化を抑制することができるので、肝硬変等における臓器線維化を抑制することが可能であるだけでなく、軽減することも可能であると考えられる。
【0025】
【実施例】
以下の試験例により、本発明およびその効果を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
なお、下記試験例では、L−システインとL−メチオニンとして、シグマ社製の生化学研究用(純度99%以上)のものを使用した。
【0026】
<試験対象>
ラットの肝臓と腎臓から分離・培養した星細胞。
<星細胞の分離・培養方法>
ラット肝臓から、既報(Kristensen DB, Kawada N, et al. Hepatology. 200032:268−77)に準じて星細胞を分離した。その手順を簡単に述べると、ラット肝臓を門脈から灌流して脱血したのち、コラゲナーゼとプロナーゼを含む酵素溶液でさらに灌流して消化した。肝臓を取りだしたのち、さらに、前記と同じ酵素溶液中で消化した。この消化産物を遠心して未消化の細胞群を集めたのち、この細胞群を8.2%ナイコデンツ溶液と混合して3200回転、15分間遠心すると、溶液の最上層に星細胞が得られた。得られた星細胞を遠心洗浄したのち10%ウシ胎児血清を含むDMEM中に浮遊させ、滅菌したプラスチックシャーレに注入して培養した。星細胞はシャーレ上で接着して成長した。
ラット腎臓の星細胞も上記と同様の手順で分離した。
両臓器に由来する星細胞を数日間、10%のウシ胎児血清を含む、あるいは含まない、ダルベッコMEM溶液(SIGMA社製)中で、35mmプレート(Falcon3003)に接着させ、37℃、5%CO2存在下で、1プレートあたりの細胞数:7.5×105cellsにまで培養した。星細胞は、血清の存在下で培養すると細胞形態を変化させながら増殖した。
【0027】
試験例1:肝臓由来の星細胞
(1−1)「星細胞の増殖に対するL−システインの効果」
星細胞の増殖に対するL−システイン及びL−メチオニンの影響を評価するために、星細胞の細胞核への5’−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)の取込みを、以下の手順により評価した。
上記と同じ培養液に、各種濃度(1、5、10mM)となるようにL−システインを添加し、培養星細胞を24時間培養した。24時間後、一旦培養液を交換して、再度、上記と同じ濃度のL−システインを添加し、それと同時に、最終濃度100μMのBrdUを培養液に添加して、さらに24時間培養した。コントロールとして、L−システインを添加しなかった以外は同様の手順で星細胞を培養した。
培養終了後、細胞を、95%エタノールと5%酢酸の混合溶液で固定した。
細胞核へのBrdUの取込みは、BrdUを免疫染色した細胞を顕微鏡下で撮影し、全細胞中の、染色されている細胞(BrdUが取り込まれた細胞)の割り合いを計算して評価した。
【0028】
<結果>
図1に、血清の存在下(Serum(+))及び血清の非存在下(Serum(−))における結果を示す。
Serum(−)では、1mM以上のL−システインを添加した場合に、染色されている細胞(BrdU陽性細胞)が減少しており、有意にBrdUの取り込みが阻害されたことがわかる。
また、Serum(+)では、5mM以上のL−システインを添加した場合(図示せず)に、有意にBrdUの取り込みが阻害された。
図2に、血清の存在下(Serum(+))におけるBrdU陽性細胞の割合を示す。血清の存在下(Serum(+))において、コントロールでは86.1%の星細胞がBrdU陽性であった。これに対し、5mM以上のL−システインを添加した場合、有意にBrdUの取込みが阻害された。
【0029】
(1−2)「星細胞の増殖に対するL−メチオニンの効果」
L−システインに換えてL−メチオニンを用いた以外は上記(1−1)と同様の手順で星細胞の増殖に対するL−メチオニンの影響を評価した。
【0030】
<結果>
図3に、血清の存在下(Serum(+))における結果を示す。1mM以上のL−メチオニンを添加した場合、BrdU陽性の星細胞が顕著に減少していた。
図4に、血清の非存在下(Serum(−))における結果を示す。コントロールでは29%の星細胞がBrdU陽性であったのに対し、10mM以上のL−メチオニンを添加した場合に有意にBrdUの取込みが阻害され、その割合は8%であった。
【0031】
(1−3)「PDGF−BB存在下における星細胞の増殖に対するL−システインの効果」
星細胞は増殖因子の一つであるPDGF−BBに反応して増殖することが知られている。血清を含まない(Serum(−))培養液中に、20ng/mlのPDGF−BBを添加し、24時間培養することにより星細胞を刺激したところ、図5に示す結果が得られた。すなわち、PDGF−BBを添加した場合、BrdUを取込んだ細胞の割合は、コントロール(約59%)よりも多かった(約82%)が、ここに、5mMのL−システインを添加しておくと、星細胞増殖は抑制された(約16%)。
【0032】
試験例2:腎臓由来の星細胞の増殖に対するL−システイン及びL−メチオニンの効果
肝臓由来の星細胞に換えて腎臓由来の星細胞を用いた以外は上記(1−1)と同様の手順で星細胞の増殖に対するL−システイン及びL−メチオニンの影響を評価した。
【0033】
<結果>
図6にその結果を示す。血清存在下において、コントロールでは約27.5%の星細胞がBrdU陽性であった。これに対して、5mMのL−システインを培養液中に添加すると、約15.5%に減少した。また、5mMのL−メチオニンを培養液中に添加すると、BrdU陽性細胞はほとんどみられなかった。
【0034】
試験例3:星細胞の活性化とともに発現する蛋白質に対するL−システインの効果
星細胞が活性化すると、上述したPDGFRβ及びIGF−IRβや、平滑筋αアクチン(SMα−actin)、STAP(Stellate cell activation−associated protein)などの蛋白質、いわゆる活性化マーカーが誘導されてくることが知られている。したがって、肝臓由来の星細胞における上記蛋白質の発現をウエスタン・ブロットを用いて測定し、星細胞活性化抑制効果を評価した。すなわち、培養星細胞に各種濃度(0、0.1、1、5、10mM)のL−システインを添加して24時間培養した。いったん培養液を交換して再度同じ濃度のL−システインを添加し、さらに24時間培養した。培養後、細胞をPBSで洗浄した後、細胞溶解液を加えて、細胞の蛋白質を可溶化した。95℃、5分間の熱変性後、10μgずつの蛋白質をSDS−PAGEにて電気泳動した。これを電気的にナイロン膜に転写した後、膜上の各種蛋白質を、それらに対する市販の特異抗体(抗PDGFRβ抗体(サンタクルズ社)、抗IGF−IRβ抗体(サンタクルズ社)、抗平滑筋αアクチン抗体(Sigma社))を用いて検出した。なお、抗STAP抗体は、以下の方法により作製した。リコンビナントSTAPを作製し、これをNew Zealand白ウサギに3回免役して、得られた血清からIgG分画を精製して使用した。
【0035】
<実験結果>
図7に示すように、培養星細胞において上記の各種蛋白質が発現している事が確認できた。培養液中のL−システイン濃度を0mMから上昇させるにつれて、PDGFR−β、IGF−IRβ及びSTAPのバンドの濃さが徐々に薄くなった。この結果は、L−システインにより、これらの蛋白発現が減弱したことを示す。
【0036】
一方、腎星細胞のSMα−actinについて、血清を加えずに、上記と同じ操作を行った結果、図8に示すように、培養液中のL−システイン濃度を上昇させると、SMα−actinについても発現量が減弱したことが確認できた。
【0037】
【発明の効果】
本発明の星細胞活性化抑制剤は、L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とするものであり、肝臓や腎臓などに存在する星細胞の活性化を抑制することが可能である、臓器線維症の一因である星細胞の活性化を抑制することができるので、肝臓や腎臓などの臓器において、慢性炎症後などに惹起される臓器線維症の予防又は治療剤としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1−1の結果を示す図である。
【図2】試験例1−1の血清存在下における結果を示すグラフである。
【図3】試験例1−2の血清存在下における結果を示すグラフである。
【図4】試験例1−2の血清非存在下における結果を示すグラフである。
【図5】試験例1−3の結果を示すグラフでである。
【図6】試験例2の結果を示すグラフでである。
【図7】試験例3において、肝臓星細胞の結果を示す図である。
【図8】試験例3において、腎臓星細胞の結果を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、肝臓や腎臓などの臓器に存在する星細胞の活性化を抑制する星細胞活性化抑制剤、及び、星細胞の活性化に伴う臓器線維症の予防又は治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
臓器線維症は、臓器内の細胞が、ウイルス、アルコール、薬剤等の種々の原因により壊死した後、十分に再生せず、結合組織が増加して線維化することにより生じる疾患であり、肝硬変、腎硬化症、肺線維症等が知られている。線維化が進行した場合、現在、その予後を改善する治療法は皆無といっても過言ではない。
【0003】
臓器線維症のうち、肝硬変は、慢性肝炎から高率で進行し、さらに、肝不全ないし肝癌に移行する確率が高いことが知られており、この慢性肝炎→肝硬変→肝癌という病態連鎖の進行を抑制することは重要である。
肝硬変の予防に関しては、インターフェロンやグリチルリチン製剤を用いる治療法が存在する。しかしながら、インターフェロン製剤は高価である上、有効性は3割程度しかなく、また、ウイルス性の肝障害にしか適応がない。また、グリチルリチン製剤は静脈内投与が必要であり、患者への頻回投与は困難である。
一方、腎硬化症に対する有効な薬剤についての報告はほとんどないのが現状である。
【0004】
ところで、近年、肝構成細胞の分離および初代培養技術は著しい進歩を遂げている。ラットやマウスなどの小動物やヒトから、肝(実質)細胞のみならず、非実質細胞であるKupffer細胞、内皮細胞、星細胞、pit細胞、胆管上皮細胞が分離可能となっており、これらの非実質細胞について数多くの研究がなされている。その結果、肝細胞代謝の恒常性維持と肝局所炎症反応における肝非実質細胞の重要性が認識されるようになり、特に、星細胞の機能が注目を集めている。
【0005】
星細胞は、GFAP(グリア細胞線維性酸性蛋白質)、ネスチン、N−CAM(神経細胞接着分子)、プリオンなどを発現することから、neural crest由来の細胞であると考えられている。肝臓の星細胞は、通常、ビタミンA代謝において中心的な役割を果たすことが知られている。
【0006】
星細胞は、肝炎等において惹起された炎症が持続すると、いわゆる「活性化」とよばれる機能変化をとげて、筋線維芽細胞へと形質転換する。
この活性化された星細胞においては、以下の1)〜4)などの現象が生じることが明らかになっている。
1)コラーゲンやプロテオグリカンなどの細胞外マトリックスの代謝が活性化する。
2)TGFβ (transforming growth factor β)等の、臓器線維化を促進する各種成長因子の産生が著明に増加する。
3)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害物質であるtissue inhibitor of MMP(TIMP)の産生が増加する。
4)星細胞膜上に、血小板由来増殖因子(PDGF)に対する受容体(PDGFRβ)、インスリン様成長因子(IGF−I)に対する受容体(IGF−IRβ)が発現誘導され、星細胞の増殖促進や遊走能の獲得がみられる。
【0007】
したがって、星細胞の活性化が臓器線維化に関与していると考えられ、実際、ヒトの慢性肝炎や肝硬変組織の線維性隔壁部には、細胞外マトリックスとともに、活性化された星細胞が多数存在していることが確認されている。
それゆえに、星細胞の活性化を抑制することができれば、肝硬変等における臓器線維化を抑制することが可能になるだけでなく、軽減することも可能となると考えられる。
【0008】
これまで、星細胞の活性化を抑制するいくつかの試みがなされてきた。例えば、TGFβの可溶型受容体を投与することによって内因性のTGFβの作用を中和して線維化を抑制しようとする試み、ドミナントネガティブ型TGFβ受容体を発現させる遺伝子治療、PDGF受容体特異的チロシンキナーゼ阻害剤の開発などである。しかしながら、未だ、臨床使用の結果が公表されているものはない。
また、モルフォゲンとしての作用を有する肝細胞増殖因子(HGF)を用いた遺伝子治療も提案されている。しかしながら、HGFを長期投与した場合、種々の臓器での発癌が促進される可能性を否定できないことから、臨床応用できるかどうかははっきりしていない。
【0009】
一方、上述ように、肝臓の線維化の分子機構とその制御戦略についての研究はなされているものの、腎臓や肺、膵臓、脾臓及び消化管等の臓器に関してはまだ解析が少ない。
しかし、これらの臓器にも星細胞が存在することはすでに確認されており、腎硬化症等の臓器線維症にも星細胞が関与していることが推察される。
【0010】
それゆえに、星細胞の活性化を抑制することができれば、肝臓のみならず、腎臓や肺などの、星細胞が存在する多様な臓器の線維化についても抑制することができると考えられる。したがって、本発明は、有効かつ副作用の少ない星細胞活性化抑制剤、及び、肝臓、腎臓等の臓器線維症の予防又は治療剤を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究をおこなった結果、L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体が星細胞の活性化及び増殖を抑制し、それらの細胞の増殖因子に対する反応性を減弱させることに極めて有効であることを見いだし、本発明に至った。
【0012】
前記課題を解決する本発明の第一の発明は、L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とする星細胞活性化抑制剤である。
前記課題を解決する本発明の第二の発明は、L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とする臓器線維症の予防又は治療剤である。
前記臓器線維症は、肝臓、腎臓、膵臓、肺臓、脾臓及び大腸の線維症のいずれかであることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の星細胞活性化抑制剤の有効成分であるL−メチオニン及びL−システインは必須アミノ酸として知られている。L−メチオニン及びL−システインはともに含硫アミノ酸であり、それぞれ以下の構造を有している。
【0014】
【化1】
【0015】
これらのアミノ酸の薬理作用に関し、様々な報告がなされているが、星細胞の活性化や、肝臓、腎臓等の臓器の炎症に伴う臓器線維化に関連する報告はない。
【0016】
本発明において用いられるL−メチオニン及びL−システインは、通常遊離アミノ酸の形態で用いられるが、特に遊離形態である必要はなく、誘導体、すなわち、薬理学的に許容される塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩等の金属塩、塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸塩等の形態、又は生体内で加水分解されて遊離アミノ酸に変換されるエステルの形態で用いることもできる。
これらの誘導体の形態での利用は、遊離アミノ酸形態では溶解度が低く、沈殿が生じる危険がある場合に特に有効である。また、必要に応じて還元糖を配合する場合に生じるおそれのある、メイラード反応による褐変現象を有利に抑制できる。
【0017】
本発明において、星細胞の活性化抑制効果を発揮するために必要なL−メチオニンの有効投与量は、1日あたり、好ましくは1.5mg/体重1kg以上、特に好ましくは15〜1500mg/体重1kgである。また、L−システインの有効投与量は、1日あたり、好ましくは2mg/体重1kg以上、特に好ましくは20〜1200mg/体重1kgである。
【0018】
本発明の星細胞活性化抑制剤は、上記有効成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、生理的に受容可能な液体又は固体の製剤担体を配合した薬剤組成物として使用することができる。
製剤担体としては、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤、安定化剤、溶剤等を添加することができる。前記薬剤組成物は、投与方法に応じて、様々な製剤形態をとることができる。該製剤形態としては、水剤、シロップ剤、懸濁剤、乳濁剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等の経口摂取可能な形態が好ましいが、注射剤、輸液等の形態であってもよい。
投与方法としては、経口、経静脈、経中心静脈、経直腸投与等の任意の投与方法が可能であるが、特に、経口投与が好ましい。
前記薬剤組成物中におけるL−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体の配合量は、特に制限はなく、剤形に合わせて適宜決定すればよい。
【0019】
また、本発明の星細胞活性化抑制剤は、食品に添加して用いてもよく、その場合、上記の他に、通常、食品に添加可能な物質(酸化防止剤、着色料等)を添加することができる。
【0020】
また、本発明の星細胞活性化抑制剤は、1日に1回又は数回に分けて投与することができる。
【0021】
本発明の星細胞活性化抑制剤は、肝臓や腎臓などの臓器において、慢性炎症後などに惹起される臓器線維症の進行を抑制するための臓器線維症の予防又は治療剤としても使用可能である。
本発明の臓器線維症の予防又は治療剤が用いられる臓器線維症としては、肝硬変、腎硬化症、肺線維症、慢性膵炎、胃潰瘍、炎症性腸疾患等を挙げることができ、好ましくは肝硬変、腎硬化症である。
【0022】
本発明において、臓器繊維化抑制効果を発揮するために必要なL−メチオニンの有効投与量は、1日あたり、好ましくは1.5mg/体重1kg以上、特に好ましくは15〜1500mg/体重1kgである。また、L−システインの有効投与量は、1日あたり、好ましくは2mg/体重1kg以上、特に好ましくは20〜1200mg/体重1kgである。
【0023】
本発明の臓器繊維化抑制剤は、上記有効成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、上述したような、生理的に受容可能な液体又は固体の製剤担体を配合した薬剤組成物として使用することができる。
【0024】
本発明において、L−メチオニン及びL−システインはともに必須アミノ酸であるので、本発明の星細胞活性化抑制剤及び臓器線維化抑制剤は、安全で、副作用が生じるおそれがない。また、経口摂取することが可能であり、各種医薬品、食品、栄養剤等に添加して用いることができる。
星細胞は、肝炎等において惹起された炎症が持続すると、いわゆる「活性化」とよばれる機能変化をとげて、筋線維芽細胞へと形質転換する。本発明の星細胞活性化抑制剤及び臓器線維化抑制剤は、星細胞の活性化を抑制することができるので、肝硬変等における臓器線維化を抑制することが可能であるだけでなく、軽減することも可能であると考えられる。
【0025】
【実施例】
以下の試験例により、本発明およびその効果を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
なお、下記試験例では、L−システインとL−メチオニンとして、シグマ社製の生化学研究用(純度99%以上)のものを使用した。
【0026】
<試験対象>
ラットの肝臓と腎臓から分離・培養した星細胞。
<星細胞の分離・培養方法>
ラット肝臓から、既報(Kristensen DB, Kawada N, et al. Hepatology. 200032:268−77)に準じて星細胞を分離した。その手順を簡単に述べると、ラット肝臓を門脈から灌流して脱血したのち、コラゲナーゼとプロナーゼを含む酵素溶液でさらに灌流して消化した。肝臓を取りだしたのち、さらに、前記と同じ酵素溶液中で消化した。この消化産物を遠心して未消化の細胞群を集めたのち、この細胞群を8.2%ナイコデンツ溶液と混合して3200回転、15分間遠心すると、溶液の最上層に星細胞が得られた。得られた星細胞を遠心洗浄したのち10%ウシ胎児血清を含むDMEM中に浮遊させ、滅菌したプラスチックシャーレに注入して培養した。星細胞はシャーレ上で接着して成長した。
ラット腎臓の星細胞も上記と同様の手順で分離した。
両臓器に由来する星細胞を数日間、10%のウシ胎児血清を含む、あるいは含まない、ダルベッコMEM溶液(SIGMA社製)中で、35mmプレート(Falcon3003)に接着させ、37℃、5%CO2存在下で、1プレートあたりの細胞数:7.5×105cellsにまで培養した。星細胞は、血清の存在下で培養すると細胞形態を変化させながら増殖した。
【0027】
試験例1:肝臓由来の星細胞
(1−1)「星細胞の増殖に対するL−システインの効果」
星細胞の増殖に対するL−システイン及びL−メチオニンの影響を評価するために、星細胞の細胞核への5’−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)の取込みを、以下の手順により評価した。
上記と同じ培養液に、各種濃度(1、5、10mM)となるようにL−システインを添加し、培養星細胞を24時間培養した。24時間後、一旦培養液を交換して、再度、上記と同じ濃度のL−システインを添加し、それと同時に、最終濃度100μMのBrdUを培養液に添加して、さらに24時間培養した。コントロールとして、L−システインを添加しなかった以外は同様の手順で星細胞を培養した。
培養終了後、細胞を、95%エタノールと5%酢酸の混合溶液で固定した。
細胞核へのBrdUの取込みは、BrdUを免疫染色した細胞を顕微鏡下で撮影し、全細胞中の、染色されている細胞(BrdUが取り込まれた細胞)の割り合いを計算して評価した。
【0028】
<結果>
図1に、血清の存在下(Serum(+))及び血清の非存在下(Serum(−))における結果を示す。
Serum(−)では、1mM以上のL−システインを添加した場合に、染色されている細胞(BrdU陽性細胞)が減少しており、有意にBrdUの取り込みが阻害されたことがわかる。
また、Serum(+)では、5mM以上のL−システインを添加した場合(図示せず)に、有意にBrdUの取り込みが阻害された。
図2に、血清の存在下(Serum(+))におけるBrdU陽性細胞の割合を示す。血清の存在下(Serum(+))において、コントロールでは86.1%の星細胞がBrdU陽性であった。これに対し、5mM以上のL−システインを添加した場合、有意にBrdUの取込みが阻害された。
【0029】
(1−2)「星細胞の増殖に対するL−メチオニンの効果」
L−システインに換えてL−メチオニンを用いた以外は上記(1−1)と同様の手順で星細胞の増殖に対するL−メチオニンの影響を評価した。
【0030】
<結果>
図3に、血清の存在下(Serum(+))における結果を示す。1mM以上のL−メチオニンを添加した場合、BrdU陽性の星細胞が顕著に減少していた。
図4に、血清の非存在下(Serum(−))における結果を示す。コントロールでは29%の星細胞がBrdU陽性であったのに対し、10mM以上のL−メチオニンを添加した場合に有意にBrdUの取込みが阻害され、その割合は8%であった。
【0031】
(1−3)「PDGF−BB存在下における星細胞の増殖に対するL−システインの効果」
星細胞は増殖因子の一つであるPDGF−BBに反応して増殖することが知られている。血清を含まない(Serum(−))培養液中に、20ng/mlのPDGF−BBを添加し、24時間培養することにより星細胞を刺激したところ、図5に示す結果が得られた。すなわち、PDGF−BBを添加した場合、BrdUを取込んだ細胞の割合は、コントロール(約59%)よりも多かった(約82%)が、ここに、5mMのL−システインを添加しておくと、星細胞増殖は抑制された(約16%)。
【0032】
試験例2:腎臓由来の星細胞の増殖に対するL−システイン及びL−メチオニンの効果
肝臓由来の星細胞に換えて腎臓由来の星細胞を用いた以外は上記(1−1)と同様の手順で星細胞の増殖に対するL−システイン及びL−メチオニンの影響を評価した。
【0033】
<結果>
図6にその結果を示す。血清存在下において、コントロールでは約27.5%の星細胞がBrdU陽性であった。これに対して、5mMのL−システインを培養液中に添加すると、約15.5%に減少した。また、5mMのL−メチオニンを培養液中に添加すると、BrdU陽性細胞はほとんどみられなかった。
【0034】
試験例3:星細胞の活性化とともに発現する蛋白質に対するL−システインの効果
星細胞が活性化すると、上述したPDGFRβ及びIGF−IRβや、平滑筋αアクチン(SMα−actin)、STAP(Stellate cell activation−associated protein)などの蛋白質、いわゆる活性化マーカーが誘導されてくることが知られている。したがって、肝臓由来の星細胞における上記蛋白質の発現をウエスタン・ブロットを用いて測定し、星細胞活性化抑制効果を評価した。すなわち、培養星細胞に各種濃度(0、0.1、1、5、10mM)のL−システインを添加して24時間培養した。いったん培養液を交換して再度同じ濃度のL−システインを添加し、さらに24時間培養した。培養後、細胞をPBSで洗浄した後、細胞溶解液を加えて、細胞の蛋白質を可溶化した。95℃、5分間の熱変性後、10μgずつの蛋白質をSDS−PAGEにて電気泳動した。これを電気的にナイロン膜に転写した後、膜上の各種蛋白質を、それらに対する市販の特異抗体(抗PDGFRβ抗体(サンタクルズ社)、抗IGF−IRβ抗体(サンタクルズ社)、抗平滑筋αアクチン抗体(Sigma社))を用いて検出した。なお、抗STAP抗体は、以下の方法により作製した。リコンビナントSTAPを作製し、これをNew Zealand白ウサギに3回免役して、得られた血清からIgG分画を精製して使用した。
【0035】
<実験結果>
図7に示すように、培養星細胞において上記の各種蛋白質が発現している事が確認できた。培養液中のL−システイン濃度を0mMから上昇させるにつれて、PDGFR−β、IGF−IRβ及びSTAPのバンドの濃さが徐々に薄くなった。この結果は、L−システインにより、これらの蛋白発現が減弱したことを示す。
【0036】
一方、腎星細胞のSMα−actinについて、血清を加えずに、上記と同じ操作を行った結果、図8に示すように、培養液中のL−システイン濃度を上昇させると、SMα−actinについても発現量が減弱したことが確認できた。
【0037】
【発明の効果】
本発明の星細胞活性化抑制剤は、L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とするものであり、肝臓や腎臓などに存在する星細胞の活性化を抑制することが可能である、臓器線維症の一因である星細胞の活性化を抑制することができるので、肝臓や腎臓などの臓器において、慢性炎症後などに惹起される臓器線維症の予防又は治療剤としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1−1の結果を示す図である。
【図2】試験例1−1の血清存在下における結果を示すグラフである。
【図3】試験例1−2の血清存在下における結果を示すグラフである。
【図4】試験例1−2の血清非存在下における結果を示すグラフである。
【図5】試験例1−3の結果を示すグラフでである。
【図6】試験例2の結果を示すグラフでである。
【図7】試験例3において、肝臓星細胞の結果を示す図である。
【図8】試験例3において、腎臓星細胞の結果を示す図である。
Claims (3)
- L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とする星細胞活性化抑制剤。
- L−メチオニン、L−システイン又はそれらの誘導体を有効成分とする臓器線維症の予防又は治療剤。
- 前記臓器線維症が、肝臓、腎臓、膵臓、肺臓、脾臓及び大腸の線維症のいずれかである請求項2記載の臓器線維症の予防又は治療剤。
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---|---|---|---|
JP2002173105A JP2004018418A (ja) | 2002-06-13 | 2002-06-13 | 星細胞活性化抑制剤、及び、臓器線維症の予防又は治療剤 |
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Country | Link |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007073006A1 (ja) * | 2005-12-22 | 2007-06-28 | Keio University | 細胞保護性を有するアミノ酸の増加誘導剤及び増加方法 |
US8168669B2 (en) | 2005-07-01 | 2012-05-01 | Ajinomoto Co., Inc. | Therapeutic agent for inflammatory bowel disease and TNF-α production inhibitor |
-
2002
- 2002-06-13 JP JP2002173105A patent/JP2004018418A/ja active Pending
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WO2007073006A1 (ja) * | 2005-12-22 | 2007-06-28 | Keio University | 細胞保護性を有するアミノ酸の増加誘導剤及び増加方法 |
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