JP2004017497A - インクジェットプリントヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インクジェットプリントヘッドは、インクジェットプリントヘッドのインク吐出面に、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるフルオロポリマー、及び又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなるフルオロポリマーを含有する撥インク膜を有する。また、インクジェットプリントヘッドの製造方法は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体から成るパーフルオロポリマーを、パーフルオロ溶剤に溶解し、インクジェットプリントヘッドのインク吐出面にコーティングする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットプリントヘッドの撥インク膜及びその製造方法に関し、界面活性の強い成分を含む高性能インクに対する、前進接触角と後退接触角が共に高く、インクの弾き性、吸引性と拭き取り性に優れるインクジェットプリントヘッド用撥インク膜、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタのインク吐出の原理は、インク室内にインクを満たし、インクに正の圧力波を掛けて、インク吐出口からインクを外に押し出し、続いてインクに負の圧力波を掛けて、押し出されたインクの一部をインク吐出口内に引き戻すと、押し出されたインク柱がちぎれてインク吐出口からインク滴を吐出する。同時に、インクメニスカスがインク吐出口内の奥深くに引き込まれる。この負の圧力波がインク室の端部で反射されると、反転して正の圧力波になり、メニスカスが再び押し出される。このように、インクを吐出した後で、インクを吐出するために掛けた圧力波が残留してインク室の末端で反射される度に、圧力が反転するので、インク吐出口内に形成されたインクメニスカスが振動する。この振動を数回繰り返すと、次第に収まり、次の吐出が可能になる。
【0003】
しかし、吐出後、残留圧力によりインク吐出口内のインクに正の圧力が掛かるとき、インクが吐出口から外に溢れ出ることがある。インク吐出口板の表面に溢れ出たインクは、次の負圧でインク吐出口内に引き込まれるが、インク吐出口からの溢れ出し易さや、インク吐出口内への引き込まれ易さは、インク吐出口が開穿されるノズル板に対するインクの濡れ性、即ち、接触角が関係する。また、一つのインク室からインクを吐出すると、その両隣のインク室にも吐出圧力が伝わるので、インクメニスカスが振動して、両隣の吐出しなかったインク吐出口からインクが溢れ出ることもある。
【0004】
このように、インクジェットプリントヘッドのノズル板の表面は、インク室から溢れ出たインクで汚れ易く、これがインクの安定吐出を妨げ、画像を劣化させる原因となる。
【0005】
ノズル板がインクで汚れる原因は、この他にも色々あり、これらをまとめると次の通りである。
【0006】
1)吐出に伴うインクの圧力変動。正圧によりインク吐出口から溢れ出たインクが負圧によりインク吐出口内に完全に引き込まれず、インク吐出口板の表面に残留する。
2)一つのインク室からインクを吐出すると、その両隣のインク室のインクメニスカスが振動して、インクがインク吐出口から溢れ出る。
3)吐出したインク滴の尻尾がちぎれて生じた微小なインクミストがノズル板に付着する。
4)印刷媒体とノズル板の間の距離は約1mm程度しかないので、媒体に当たって飛び散ったインクミストがノズル板の表面に付着する。
5)ヘッドを搭載したキャリッジが媒体の進行方向と直角に移動しながらインクを吐出するので、キャリッジの作動範囲の末端で加速度の大きな変化が生じ、そのショックでインク吐出口からインクが溢れ出す。
6)ワイピングが不十分で、ノズル板の表面にインクが残留する。
【0007】
溢れ出たインクや付着したインクミストは、ノズル板の上に蓄積してインク溜まりを形成し、このインク溜まりが成長してインク吐出口に触れると、吐出するインク滴をインク溜まりの方に引っ張り、インク滴の吐出方向を曲げてしまう(図1参照)。
【0008】
更に、このインク溜まりが大きくなり、インクの吐出口を覆うと、このインク溜まりを突き破ってインク滴が吐出する時、インクが飛び散り、画像を汚してしまう。また、インク溜まりがインク吐出口を厚く覆うとインクを吐出しなくなる。また、このインク溜まりには、印刷媒体の紙や布等から発生する埃が付着し易く、その繊維がインク吐出口を塞ぐこともある。
【0009】
このように、インク吐出口周辺にインクが溜まると、正常な吐出ができなくなるので、ノズル板の表面に溢れ出たインクを、次の吐出までの間に、インク室に生じた負圧を利用してインク吐出口内に完全に引き込む必要がある。また、インク吐出口内に引き込みきれなかったインクや外部から付着したインクは、インク吐出口から離れた場所に移動させて保持し、時々ワイピングして拭き取る必要がある。インクジェットプリンタは、このようにノズル板のインク吐出口周辺を清浄に保つことが重要になる。
【0010】
従来から、ノズル板のインクによる汚れを防ぐため、ノズル板のインク吐出面を撥インク処理することが行われている。ノズル板の表面を撥インク処理すると、インクメニスカスがインク吐出口から外に出ても、インクがノズル板上に溢れ出たり、濡れ広がったりすることがなくなる。また、溢れ出たインクは、弾かれて半球状になり、ノズル板との接触面積が小さくなるので、ノズル板上を移動し易く、ヘッドの振動等でインク吐出口から離れて行き、次のインク滴の吐出を妨害しない効果がある。
【0011】
ノズル板表面に溢れ出たインクは、負圧でインク吐出口内に吸い込まれる効果と、撥インク処理面で弾かれてインク吐出口から離れる効果により、常にインク吐出口周辺から除去されるので、時々ノズル板をワイピングして、溜まったインクを拭き取ればよい。従って、ノズル板のインクによる汚れは、インクの溢れ出し易さ、吸い込まれ易さ、移動し易さと拭き取り易さ等の影響を受ける。これらは全てインクとノズル板の間の接触角が関係する(図2参照)。
【0012】
ノズル板上にあるインク滴に働く力は表面張力と重力である。径20〜100μm程度のインク吐出口から溢れ出た50〜100μm程度の微小なインク滴に働く重力は、表面張力に比べれば遥かに小さく無視できるので、ノズル板上にあるインク滴に働く力は、表面張力だけであり、インクとノズル板の表面自由エネルギーの差が、ノズル板上のインク滴の接触角を決める。従って、接触角がインクの溢れ拡がり易さ、吸引され易さ、拭き取られ易さ等の、インクジェットプリントヘッドの操作性と信頼性を決めることになる。
【0013】
静止した液滴が固体表面となす角度を平衡接触角θe、または単に接触角θと呼ぶ(以後、この平衡接触角θeをθと呼ぶ)(図3(a)参照)。静止した液滴に外力が掛かり、液滴が移動を開始すると、平衡接触角θが消滅して、前進接触角θaと後退接触角θrが現れる(図3(b)参照)。
【0014】
実際の接触角の測定は、図4に示すように、インク滴にインクを供給して液滴を前進させ、拡がらせてθa(図4(a)参照)を、インク滴からインクを吸引して液滴を後退させ、縮小してθr(図4(b)参照)を測定する。θは固体面上で静止したインク滴の接触角であり、インクがその表面を濡らし易いか否かの目安となる。大きなθを示すインク滴は、弾かれて濡れ拡がらない。また、接触面積が小さく成るので移動抵抗が少ない。しかし、インク滴が移動を開始すると、平衡接触角θが消えて、前進接触角θaと後退接触角θrが現れるので、インク滴の移動性はθより、θaとθrの影響を受ける様になる。θa≒θと考えてよいので、θaが高いと、インクが弾かれて濡れ拡がらない。また、接触面積が小さいので、インク滴が移動し易い。
【0015】
しかし、以下に説明するようにインク滴の移動性や拭き取り性は、後退接触角θrの影響を大きく受ける。前進接触角θaは、インク滴を前進させるときに現れる接触角で、まだそのインクで濡れていない固体表面に対する接触角である。後退接触角θrは、インク滴を後退させるときに現れる接触角で、既にそのインクで濡れた固体表面に対する接触角であり、その間にθa>θrの関係がある。例えば、表面張力σdyne/cmのインク滴が固体表面上を移動するとき、前進接触角θaと後退接触角θrが現れると、インク滴の表面張力σの水平方向成分σcosθaが、そのインク滴を移動させる方向に働き、σcosθrがそのインク滴の移動を妨げる方向に働く。θa>θrの関係が常に成立するので、インク滴が動いてθaとθrが現れると、そのインク滴の移動を妨げる方向にσ(cosθr−cosθa)erg/cm2の力が働く(図5参照)。
【0016】
高いθa(≒θ)が現れると、インクは弾かれて、コロコロと移動し易くなる筈である。しかし、このとき低いθrが現れると、上式から分かるように、インク滴の移動を妨げる力が強くなる。このため、高いθaと高いθrが同時に現れる系が、インク滴の移動性が大きく好ましい。即ち、高いθa(≒θ)と小さい接触角ヒステリシス(θa−θr)を持つ系が好ましい。このような系は、インク滴の移動性が大きいので、インクをよく弾き、ノズルからあふれ出たインクが吐出口内に吸収され易く、また、ワイピング時のインクの拭き残りがない。
【0017】
インクジェットプリントヘッドに使用する撥インク材料とインクの組み合わせは、高いθa≒θと、小さい接触角ヒステリシス(=高いθr)を実現できる系が好ましい。θaが高くても、θrが低い、ヒステリシスが大きい系では、インクが濡れ拡がることはないが、インク滴を拭き取ってあるいは吸引して取り除く時、θrが低いためインク滴の後端が移動しない。これらの操作を繰り返せば、インクの大部分は除去されるが、インクが薄い皮膜としてインク滴があった場所にいつまでも残る。一方、高いθrを持つインク滴は、θrが高いため、インク滴の後端がどんどん後退するのでインクを簡単に除去できる。前進接触角θaは、まだそのインクで濡れていない固体表面とインク間の接触角なので、インク中の成分の影響を受けにくい。また、ノズル板の表面が完全な撥インク性でなくとも、部分的に撥インク性があり、それが適当に分布していれば、インクは撥インク部に接触するとそこを越えて拡がれないので、見かけ上高い接触角を示す。また、表面に凹凸があれば、凸部でインク滴の移動が妨げられるので、見かけ上高い接触角を示す。即ち、その表面が完全な撥インク性でなく、撥インク性が悪い部分が存在しても、また、表面が粗れていても、インクは高い前進接触角を示す。これに対して、インク滴を後退させる時は、撥インク性の高い部分からは、インクがどんどん後退していくが、撥インク性が低い部分には、インクの一部が残るので、少しでも撥インク性が低い部分が有ると、見かけ上の後退接触角が大きく低下する。更に、インク滴を載せた表面に凹凸があると、後退するインク滴の後端が凸部を乗り越えられないので、そこに残り、見かけ上の後退接触角が大きく低下する。後退接触角θrは、既にそのインクで濡れた固体表面に対するインクの接触角であるため、インク中の成分が固体表面に吸着されると、その部分の撥インク性が失われ、後退接触角が大きく低下する。このように、高い前進接触角は比較的容易に達成できるが、高い後退接触角を達成することは非常に難しい。
【0018】
高い後退接触角θrを有する表面とは、平滑で完全な撥インク面である。インク中の成分が少しでも吸着されると、その部分の後退接触角が著しく低下するので、インク中の成分を完全に弾ける表面である。インク中の成分を完全に弾ける平滑な表面を形成すると、前進接触角と後退接触角が共に高い値を示すが、この表面に少しでも凹凸が生じると、または、この表面が少しでも不完全な撥インク面に変わると、後退接触角が著しく低下する。しかし、前進接触角はこのような変化に比較的鈍感である。従って、インク吐出の安定性と信頼性は、後退接触角が大きく関係する。
【0019】
インクジェット用インクには、染料、顔料、分散剤、ノズル乾燥防止剤、消泡剤、界面活性剤、浸透剤、防腐剤等の添加剤が加えられるので、それらの成分が撥インク面に吸着すると撥インク効果が失われることがある。例えば、顔料の分散性が高く、また、インク吐出口の乾燥防止性が高い高分子活性剤をインクに添加すると、θrが著しく小さくなり、インク滴の移動性や拭き取り性が極端に悪くなる。このようにθrが低いと、インクを吐出口内へ吸引する時、または、インクを拭き取る時、操作を繰り返せば大部分のインクは取り除けるが、インク滴の後端が後退しないので、薄く拡がったインクがノズル板上に残留して汚れとなる。従って、ノズル板表面のインクによる汚れを防ぐには、θaを高くして濡れ拡がりを防ぐだけでは不十分であり、θrを高くして、インクの吸引残りや、拭き残りをなくす必要がある。しかし、以上説明したように、高いθaは比較的簡単に達成できるが、高いθrを達成することが極めて難しい。
【0020】
撥インク処理したノズル板の表面に対するインク滴の前進接触角θaは高いほうが好ましく、80〜100°が好ましい。θaが80°より低いと撥インク効果が十分に現れず、インク吐出口からインクが溢れ易く、ノズル板上で濡れ拡がり易くなる。θaが低いとθrも低くなるので、インクの吸引性や拭き取り性が極めて悪くなり、非常に好ましくない。後退接触角θrは70°以上、好ましくは80°以上が好ましい。θrが70°より低いと、インクの吸引性や拭き取り性が低下してインクが残り易く、汚れとなるので好ましくない。インクの前進接触角θaが80〜100°、後退接触角θrが70°以上ある系は、インク吐出口からインクが溢れ出にくく、また、溢れ出たインクはノズル板の表面を移動し易く、インク吐出口内に吸引され易く、また、ワイピング時に拭き残りが生じないので、インク吐出面がインクで汚れず、吐出が安定する。
【0021】
インクジェット用インクには、染料や顔料の他、界面活性剤と高沸点有機溶剤が多量に含まれ、これらが撥インク面に吸着されるとインクを弾かなくなる。従って、このような成分はなるべくインクに使用しない方がよい。しかし、これらを取り除くとインクの性能が大きく低下するので、このような成分を含むインクでも弾くことができるよう、ノズル板の表面を強力に撥インク加工することが好ましい。即ち、表面張力の高い水のみならず、表面張力の低い有機物も完全に弾ける、撥水、撥油性表面を形成すればよい。
【0022】
フッ素はその化学構造にもよるが、6〜19dyne/cm程度の最も低い表面エネルギーを持ち、次がメチル基の20〜22dyne/cmで、次がシリコンで、その他の化合物はこれより高い表面自由エネルギーを持つので、インクジェットヘッドのノズル板の表面に、フッ素表面を形成すれば、インク中の水性成分のみならず、油性成分も完全に弾くことができ、色々な添加剤を大量に含む高性能インクを安定に吐出できるようになる。即ち、ノズル板に100%パーフルオロ表面を形成すれば、インク中の有機物を弾くことができる。しかし、フッ素は何ものとも反応しないので、このパーフルオロ樹脂は下地に接着できない。このため、下地と接着できる官能基を持つモノマーを数%共重合する必要がある。しかし、この非フッ素部にインク成分が吸着されると、後退接触角θrが大きく低下するので、共重合する量は最低に抑えなければならない。更に、表面が僅かに粗れても、後退接触角θrが大きく低下するので、平滑な表面を形成しなければならない。平滑な表面を形成するには、フッ素樹脂を溶剤に溶解して塗布すればよい。
【0023】
しかし、一般のパーフルオロ樹脂、例えばPTFEやFEP等は、結晶性が高く、表面がフッ素原子で密に覆われているので、有機溶剤に全く溶解しない。このため、普通、水中や溶剤中に微粒子を分散した形で製造し、塗布後、溶融して製膜する。しかし、溶融製膜は塗布に比べて表面が平滑にならないので、後退接触角θrが低くなり、インクの吸収性や拭き取り性が大きく低下するので好ましくない。フッ素樹脂の溶解性パラメータは約SP=6なので、SP=6程度のパーフルオロ溶剤に溶解する。これはSP=8〜10程度の汎用有機溶剤の水素原子をフッ素で置換したものである。これは汎用溶剤、例えばトルエンやキシレンと異なり、普通の使用環境には存在しないので、パーフルオロ溶剤から製膜した被膜は、そのままで、特に架橋しなくとも、一般溶剤に溶解することはない。しかし、樹脂の結晶性が高いと、有機溶剤が樹脂に侵入できないので、結晶性の低いパーフルオロ樹脂でないと、パーフルオロ溶剤に溶解できない。パーフルオロ溶剤に溶解させるには、非晶質パーフルオロ樹脂が好ましいが、10〜30%程度の結晶が存在しても、溶解するので構わない。ここで言う非晶質とは、示差熱量計で測定した融解ピーク温度及び結晶化ピーク温度を有さない樹脂のことである。
【0024】
フッ素樹脂の主鎖に環状構造を導入して結晶化を防ぎ、その中にヘテロ原子、例えば酸素原子を導入して透明化したパーフルオロ溶剤に可溶の非晶質フッ素樹脂が知られている。例えば、(株)旭硝子社製の「サイトップ」とデュポン社製の「テフロンAF」である。特許第2763410号、特開平7−89077号、特開平8−244234号に、主鎖に環状構造を持ち、側鎖にヘテロ原子を含む、環状パーフルオロポリマーをインクジェットプリントヘッドの撥インク膜に使用する技術が開示されている。この樹脂はパーフルオロ溶剤に溶解してコーティングして、透明、平滑で、フッ素を95%以上含むパーフルオロに近い表面を形成できるので、インクに対する前進接触角θaと後退接触角θrが共に高く、インクジェットヘッドのノズル板の撥インク膜として好ましい。しかし、樹脂を完全に透明化するため、主鎖中に親水性の酸素原子が含まれるので、これらを含まないパーフルオロ樹脂に比べて撥インク性が劣る。このため、使用するインクに制約を受ける。特に、界面活性の強い高分子活性剤を大量に含むインクを安定して吐出できない。
【0025】
また、特開2001−246756号に、0〜70℃で液相を成す非晶質のパーフルオロポリエーテルをノズル板の撥水、撥油膜として使用すると、ワイピングした時、フッ素樹脂が剥離しても、このフッ素樹脂が使用温度で液相を成すので、剥離面を再度覆う効果があることが開示されている。しかし、塗布厚さが極めて薄く、10nm以下であるため、高い耐久性を期待できない。
【0026】
有機溶剤可溶性のフッ素樹脂として、この他に、フルオロオレフィンとビニールエーテルの交互共重合体(FEVE)、例えば旭硝子社製の「ルミフロン」等があるが、非フッ素成分が大量に含まれるので、インクの後退接触角θrが低く、吸引性、拭き取り性が悪く、ノズル板がインクでベタ濡れになってしまう。
【0027】
また、パーフルオロ基を側鎖に持つポリマー、例えば旭硝子社製の「旭ガードAGシリーズ」があるが、非フッ素成分が大量に含まれるので、後退接触角θrが低く、インクジェットプリントヘッドには使用できない。
【0028】
更に、室温硬化型シリコン樹脂や、室温硬化型有機変性シリコン樹脂、シリコンハードコート材料、シランカップリング剤、フルオロアルキルシラン等は、Siが大量に含まれ、シリコンの表面自由エネルギーは23dyne/cm程度のため、インク成分中のメチル基を完全に弾くことができないので好ましくない
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
従来の、パーフルオロ溶剤可能性の非晶質フッ素樹脂は、主鎖に環状構造を導入し、側鎖にヘテロ原子を導入した樹脂が使用されている。しかし、このフツ素ポリマーは、分子中に、環状構造とヘテロ原子を含むため、これらを含まないものに比べて接触角が低く、撥インク性が十分でない。インク中に高分子活性剤等が含まれると、これを吸着して後退接触角が低下し易い。このため、インクがノズル内に完全に吸収されず、また、ワイピングを繰り返しても、拭き残りが出るので、吐出が安定せず、このような高分子活性剤をインクに十分な量添加できなかった。高分子活性剤は、顔料の分散安定性改良に著しい効果があるが、その使用が制限されていた。
【0030】
本発明は、インクの種類によらず、安定に吐出できるインクジェットプリントヘッドとその製造方法を提供することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、以下の各発明によって解決される。
【0032】
1.インクジェットプリントヘッドのインク吐出面に、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるフルオロポリマー、及び又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなるフルオロポリマーを含有する撥インク膜を有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【0033】
2.インクジェットプリントヘッドのインク吐出面に、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルと官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるフルオロポリマー、及び又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンと官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるフルオロポリマーを含有する撥インク膜を有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【0034】
3.テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなるパーフルオロポリマーを、パーフルオロ溶剤に溶解し、インクジェットプリントヘッドのインク吐出面にコーティングすることを特徴とするインクジェットプリントヘッドの製造方法。
【0035】
4.テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとパーフルオロアルキルビニルエーテルと官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルと官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるパーフルオロポリマーを、パーフルオロ溶剤に溶解し、インクジェットプリントヘッドの吐出面にコーティングすることを特徴とするインクジェットプリントヘッドの製造方法。
【0036】
本発明において使用されるフッ素樹脂は、パーフルオロ溶剤に可溶で、コーティング可能であり、更に、環状構造を持たず、また、ヘテロ原子を含まない、又は、含んでも少量しか含まないため、撥インク性が高い特徴を持つ。インク中に界面活性の強い成分が含まれていても、前進、後退接触角が共に高く、特に、後退接触角が高いので、インクに色々な成分を添加しても安定に吐出できる特徴がある。大量の有機溶剤や高分子界面活性剤等がインク中に含まれていても、前進接触角と後退接触角が共に高く、インクの弾き性、吸引性と拭き取り性に優れ、擦り試験後でθrが殆ど劣化せず、連続して全ノズルから安定して吐出でき、ノズル板の汚れ、吐出曲がりが見られない特徴がある。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0038】
本発明のインクジェットプリントヘッドは、本発明のフルオロポリマーを含有する撥インク膜をインク吐出面に設けることを特徴とする。
【0039】
本発明のインクジェットプリントヘッドにおける撥インク膜を設ける部位は、インクを吐出するノズル板のインク吐出面である。
【0040】
本発明のフルオロポリマーは、以下の共重合体からなる。
【0041】
(共重合体1)テトラフルオロエチレン(TFE)(CF2=CF2)と下記式で示されるパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)の共重合体
【0042】
【化1】
【0043】
上記式中、nは1以上の整数であり、好ましくは1〜3の範囲の整数である。
【0044】
共重合体1の構造式
【0045】
【化2】
【0046】
上記式中、x、yは配合比を示し、好ましくはy=20〜50mol%の範囲が好ましい。
【0047】
共重合体1の例示化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0048】
【化3】
【0049】
(共重合体2)テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)(CF3CF=CF2)の共重合体
共重合体2の構造式
【0050】
【化4】
【0051】
上記式中、x、yは配合比を示し、好ましくはy=10〜30mol%の範囲が好ましい。
【0052】
共重合体2の例示化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0053】
【化5】
【0054】
(共重合体3)テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)と上記化1で示されるパーフルオロエチルビニルエーテルと下記式で示される官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体
【0055】
【化6】
【0056】
上記式中、Mは官能基を表す。nは1以上の整数である。官能基としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0057】
共重合体3の構造式
【0058】
【化7】
【0059】
上記式中、x、y、zは配合比を示し、好ましくはx:y:z=75:20:5である。
【0060】
(共重合体4)テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)とヘキサフルオロプロピレン(CF3CF=CF2)と上記化6で示される官能基を持つパーフルオロメチルビニルエーテルの共重合体
【0061】
共重合体4の構造式
【0062】
【化8】
【0063】
本発明のフルオロポリマーは、環状構造をとらず、ヘテロ原子を含まないか、含んでも少量しか含まないので、モノマーの価格が低く、製造が易しい。また、撥インク性が高いので、使用するインク成分に制約が少ない。即ち、テトラフルオロエチレン(TFE)は側鎖を持たないので、その高重合体であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、分子構造がリニヤーなため、結晶性が高く、如何なる溶剤にも溶解しない。
【0064】
しかし、TFEにバルキーな側鎖を持つパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)を交互共重合すると、結晶化が妨げられて非晶質となり、パーフルオロ溶剤に溶解できるようになる。また、TFEとPAVEが交互に共重合すると、完全な非晶質樹脂になるが、部分的に、TFE同士、PAVE同士が重合すると、結晶性が現れるが、10〜30%以下であれば、パーフルオロ溶剤に溶解できるので使用できる。
【0065】
主鎖に環状構造や側鎖にヘテロ原子を導入しなくとも、パーフルオロ溶剤可溶のパーフルオロ樹脂が製造できる。しかも、主鎖に環状構造を持ち、側鎖にヘテロ原子を持つ樹脂より、価格が安く、撥インク性が高い特徴を持つので、これをインクジェットヘッドの撥インク膜に使用すれば、界面活性剤や有機溶剤を大量に含むインクを、安定に、信頼性高く吐出できる。
【0066】
本発明のフルオロポリマーは、公知の方法で作ることができる。例えば、ガラスライニングしたオートクレーブに、純水、乳化剤とpH調整剤を仕込み、系内を窒素で置換する。これにテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の混合ガス(TFE/PMVE=32/68)を仕込む。過硫酸アンモニウムの水溶液を圧入して反応を開始する。反応の進行に伴い、内圧が低下すると、TFEとPMVEを圧入する。TFEとPMVEの仕込み量が一定に達すると、オートクレーブを冷却して水性分散物を取り出す。これを冷凍、水洗、真空乾燥して重合体を得る。TFEとPMVEの比率は、フーリエ変換赤外分光法により測定して62/38モル%であった。この樹脂は、DSCで走査して検出した吸熱量から、融解熱が1J/g以下であり、完全に非晶質であった。更に、この樹脂はパーフルオロデカリンに溶解した。
【0067】
本発明のインクジェットプリントヘッドのノズル板は、樹脂、シリコン、ステンレス等を使用する。例えば、樹脂を使用する時、ポリマーフィルムは、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等が好ましい。特に好ましくは、ポリイミド樹脂であり、デュポン社製の「カプトン」、宇部興産社製の「ユーピレックス」等が、寸法安定性、耐インク性と耐熱性が優れているために好ましい。
【0068】
本発明のインクジェットプリントヘッドは、パーフルオロ樹脂を適当なパーフルオロ溶剤に溶解して、ノズル板上にディップコート、スピンコート等で0.1〜10μm程度の厚みにコーティングして撥インク膜を形成することにより製造される。塗膜は、乾燥後、150〜300℃で1時間、熱処理を行い、下地との接着性を改良し、撥水、撥油性基の表面配向を完成させる。
【0069】
ノズル板の表面に設ける撥水、撥油層は、ワイパーや紙、布等により擦られるので、この擦りに耐え、下地から剥離しない耐久性が必要となる。
【0070】
本発明のフルオロポリマー(パーフルオロ樹脂)を下地に強く接着させるため、水酸基やカルボキシル基などの官能基を持つモノマーを1〜3%程度共重合することが好ましい。更に、下地をプラズマ処理してもよい。
【0071】
本発明の撥インク膜を塗布してから、エキシマレーザーアブレーションで、インク吐出口を形成する時は、撥インク膜に、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等の樹脂は、紫外部吸収を持つので、インク吐出口を形成加工する際に用いられるエキシマレーザーの加工性がよく、真円に近いインク吐出口を開けることができるが、その上にコーティングするフッ素樹脂は、紫外領域に吸収がないので、エキシマレーザーのKrFの248nmを吸収できないため、加工性が悪く、インク吐出口の真円度が低くなり、インク滴の飛翔方向にばらつきが生じる。これは、紫外線を吸収する適当なドーピング剤、例えばサリチル酸系、サリチル酸フェニル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を添加すると改良される。
【0072】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって何ら限定されるものではない。
【0073】
実施例1
(パーフルオロ樹脂)
下記に示されるテトラフルオロエチレンとパーフルオロエチルビニルエーテルとカルボキシル基を含むパーフルオロメチルビニルエーテル=60/30/10の非晶質パーフルオロ樹脂
【0074】
【化9】
【0075】
(本発明の皮膜の製造)
上記パーフルオロ樹脂をパーフルオロベンゼンに溶解し、これを厚さ120μmのポリイミド板(宇部興産社製「ユーピレックス」)にスピンコート法で1.0μmの厚さに塗布し、30分間自然乾燥させた後、120℃で1時間加熱処理した。
【0076】
撥インク層を設けていない側から、エキシマレーザーを照射して、ノズル間隔360dpiで、直径40μmのインク吐出口を64個穿孔して、本発明ノズル板を作成した。
【0077】
接触角の測定
インクジェットプリントヘッドのノズル板の大きさは、長さ20mm、幅3mm程度と極めて小さく、この中にインク吐出口が64個も開いているので、接触角を正確に測定できない。このため、ノズル板に用いる樹脂の上に撥インク層だけを設けたダミー試料を作り、下記インクの前進接触角及び後退接触角を測定した。
【0078】
▲1▼イエロー顔料分散体を次の様にして製造した。
【0079】
C.I.ピグメント イエロー128 150g
スチレン−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体 70g
(分子量10,000、酸価160)
エチレングリコール 100g
グリセリン 80g
イオン交換水 200g
【0080】
以上を混合し、0.3mmのジルコニヤビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミルで分散しイエロー顔料分散体を得た。平均粒径は125nmであった。
【0081】
▲2▼インクを次のようにして製造した。
【0082】
イエロー顔料分散体 167g
ラテックス(Nipol SX 1503,日本ゼオン(株)製) 71g
エチレングリコール 200g
ジエチレングリコール 120g
オルフイン1010(日新化学製) 4g
プロキセルGXL(ゼネカ製) 2g
【0083】
以上をイオン交換水で1000gに仕上げ、穴径1μmのミリポアフィルターを2回通過させて、インクを調製した。
【0084】
接触角の測定は、協和界面科学社製の接触角測定機「CA−Z型」を用い、一定量のインク滴を固体面上に乗せて、液滴を拡張・収縮させて、前進接触角及び後退接触角を測定した。後退接触角の測定値はバラツキが多いので、液滴を吸引して大きく後退させた後、1分間経過して液滴が落ち着いた後測定した。
【0085】
その測定結果を表1に示す。
【0086】
キレの測定
キレとは、液滴の移動し易さを表す指標で、試験する固体の表面上に載せたインク滴を後退させて、その後退し易さを観察して、インク吐出口への吸い込まれ易さの代用とした。測定結果を表1に示す。
【0087】
なお、評価基準は以下の通りとした。
○:インク滴の後端がスムーズに後退してゆく。
△:インク滴の後端が、ギクシャクしながら、後退してゆく。
×: インク滴の後端が全く移動せず、その場に残る。
【0088】
拭き取り易さの測定
(株)鐘紡社製のスポンジ「ベルイーター」でワイプして、拭き取り易さを評価した。評価基準は以下の通りとした。その測定結果を表1に示す。
【0089】
◎:非常によい、一回で簡単にふき取れる。
○:よい、1−2回でふき取れる
△:普通、数回でふき取れる
×:悪い、幾らふいても完全にふき取れない
【0090】
比較例1−1
実施例1の撥インク膜に代えて、旭硝子社製撥水膜「サイトップ」を使用して、接触角の測定、キレの測定、拭き取り易さの測定を行い、上記同様の評価基準により評価した。その結果を表1に示す。
【0091】
比較例1−2
実施例1の撥インク膜に代えて、(株)セントラルガラス社製のゾルゲル法による撥水膜を使用した以外は、同様にして、接触角の測定、キレの測定、拭き取り易さの測定を行い、上記同様の評価基準により評価した。その結果を表1に示す。
【0092】
比較例1−3
実施例1の撥インク膜に代えて、(株)セントラルガラス社製の超撥水材料である低分子量PTFE、セフラルループ塗膜を使用した以外は同様にして、接触角の測定、キレの測定、拭き取り易さの測定を行い、上記同様の評価基準により評価した。その結果を表1に示す。
【0093】
比較例1−4
実施例1の撥インク膜に代えて、(株)大阪ガス社製の超撥水材料であるフッ化ピッチ塗膜を使用した以外は同様にして、接触角の測定、キレの測定、拭き取り易さの測定を行い、上記同様の評価基準により評価した。その結果を表1に示す。
【0094】
比較例1−5
実施例1の撥インク膜に代えて、Ni−PTFE共析膜を使用した以外は同様にして、接触角の測定、キレの測定、拭き取り易さの測定を行い、上記同様の評価基準により評価した。その結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
上記表1から明らかなように、本発明の被膜が、前進接触角、後退接触角が共に高く好ましい。これらに比べて、比較例のサイトップ膜はやや劣り、それ以外のものはずっと劣ることがわかる。使用したインクには、大量の高分子活性剤がふくまれているので、その影響で、本発明以外の撥インク膜は、後退接触角が低く、ノズル穴への吸い込まれ性や拭き取り性が悪く、安定して、インクを吐出できない。
【0097】
実施例2
実施例1で製造した本発明ノズル板を用いて、ウレタンゴムと実施例1で用いたインクにより、擦り試験を1万回行い、前後の接触角を比較した。その結果を表2に示す
【0098】
比較例2−1
実施例2の撥インク膜に代えて、旭硝子社製撥水膜「サイトップ」に代えた以外は、実施例2と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0099】
比較例2−2
実施例2の撥インク膜に代えて、(株)セントラルガラス社製のゾルゲル法による撥水膜に代えた以外は、実施例2と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0100】
比較例2−3
実施例2の撥インク膜に代えて、(株)セントラルガラス社製の超撥水材料である低分子量PTFE、セフラルループ塗膜に代えた以外は、実施例2と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0101】
比較例2−4
実施例2の撥インク膜に代えて、(株)大阪ガス社製の超撥水材料であるフッ化ピッチ塗膜に代えた以外は、実施例2と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0102】
比較例2−5
実施例2の撥インク膜に代えて、Ni−PTFE共析膜に代えた以外は、実施例2と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
上記表2から明らかなように、本発明の撥インク膜は、擦り試験後でも殆ど劣化は見られないことがわかる。
【0105】
実施例3
以下のようにして吐出テストを行った。
【0106】
ポリイミド板(宇部興産社製「ユーピレックス」)に実施例1で形成したと同様の撥インク膜を塗布して、エキシマレーザーでインク吐出口を穿孔した。
【0107】
これらをピエゾヘッドに取り付け、7.2kHzで連続吐出させた。吐出中、10分毎に吐出を中断して、ノズル板の表面を観察し、ワイピングした。
【0108】
吐出量を精密天秤で計測し、インク1滴当たりの平均吐出量を計算した。同時に吐出状況を工具顕微鏡で観察した。
【0109】
その結果を表3に示す。
【0110】
比較例3−1
実施例3において、撥インク膜を比較例1−1〜比較例1−5で用いた膜に代えた以外は同様にして、平均吐出量を計算し、また吐出状況を観察した。その結果を表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、平滑なパーフルオロ表面が得られる。インクの後退接触角が高く、インクがノズル穴に完全に吸引される。また、ワイピング性に優れ、インクのワイピング残りが無い。樹脂の主鎖に環状構造を持ち、側鎖にヘテロ原子を持つパーフルオロ溶剤可溶性の非晶質フルオロ樹脂より、撥インク性に優れ、特に後退接触角が高いので、インクに界面活性の高い成分を添加しても、インク吐出が安定し、信頼性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インク滴の吐出状態を説明する図
【図2】(a)(b)は後退接触角が低い時、ノズル吸引性やワイピング性が劣ることを説明する図
【図3】(a)は液体の平衡接触角θを説明する図、(b)は液体の前進接触角θa及び後退接触角θrを説明する図
【図4】(a)(b)はインク滴の接触角を実際に測定する例を示す図
【図5】インク滴の移動と表面張力を説明する図
Claims (4)
- インクジェットプリントヘッドのインク吐出面に、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるフルオロポリマー、及び又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなるフルオロポリマーを含有する撥インク膜を有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
- インクジェットプリントヘッドのインク吐出面に、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルと官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるフルオロポリマー、及び又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンと官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるフルオロポリマーを含有する撥インク膜を有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
- テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体からなるパーフルオロポリマーを、パーフルオロ溶剤に溶解し、インクジェットプリントヘッドのインク吐出面にコーティングすることを特徴とするインクジェットプリントヘッドの製造方法。
- テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとパーフルオロアルキルビニルエーテルと官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、又は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルと官能基を持つパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体からなるパーフルオロポリマーを、パーフルオロ溶剤に溶解し、インクジェットプリントヘッドの吐出面にコーティングすることを特徴とするインクジェットプリントヘッドの製造方法。
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