JP2004017369A - 金属蒸着ポリエステル系フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた光沢、ガスバリア性、接着性を有するバリア性フイルムであり、ポリエステル延伸フィルムの優れた特性である耐熱性、保香性、耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、良好なひねり性を具備したポリエステル系バリア性フィルムを提供すること。
【解決手段】応力−ひずみ曲線に於いて、上降伏点と下降伏点を有し、これらの比(下降伏点強度/上降伏点強度)が0.95以下であり、且つ150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることを特徴とするニ軸延伸ポリエステル系フィルムの、少なくとも片側の面の上に金属蒸着層が形成されたことを特徴とする金属蒸着ポリエステル系フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】応力−ひずみ曲線に於いて、上降伏点と下降伏点を有し、これらの比(下降伏点強度/上降伏点強度)が0.95以下であり、且つ150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることを特徴とするニ軸延伸ポリエステル系フィルムの、少なくとも片側の面の上に金属蒸着層が形成されたことを特徴とする金属蒸着ポリエステル系フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル延伸フィルムに関する。更に詳しくは、ポリエステル延伸フィルムの優れた特性である耐熱性、保香性、耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、良好なひねり性を具備し、且つ、生鮮食品、加工食品、医療品、医療機器、電子部品等の包装用フィルムにおいて重要な特性とされるガスバリア性や防湿性に優れ、且つ、ひねり包装や折り曲げ包装、又は折り曲げ固定の可能な金属蒸着ポリエステル系フィルムまたはシート(以下、これらをまとめてガスバリア性フィルムという)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品の流通形態や食生活の変革によって食品の包装形態も大幅に変わってきており、包装用のフィルムやシート(以下、これらをまとめてフィルムという)に対する要求特性はますます厳しくなってきている。
【0003】
流通販売過程における温度や湿分、酸素、紫外線、更には細菌やカビ等の微生物の影響による製品の品質低下は、販売上の損失を招くのみならず食品衛生面からも大きな問題である。このような品質低下を防止する方法として、従来は酸化防止剤や防腐剤等を食品に直接添加していたが、最近では、消費者保護の立場から食品添加物の規制が厳しくなり、添加量の減少もしくは無添加が求められている。
【0004】
即ち、魚肉、畜肉、乳製品、チョコレート、キャンディ等の包装においては、蛋白質や油脂等の酸化や変質を抑制し、味や風味、鮮度を保持することが重要であり、そのためには、バリア性の良好な包装材を用いて空気や光の透過を遮断することが望まれる。しかもバリア性の良好な包装材で包装すると、内容物の香気が保持されると共に水分の透過も阻止されるので、乾燥物では吸湿劣化が抑制され、含水物の場合は水分の揮発による変質や固化が抑制され、さらに、紫外線による油脂の分解等を防ぐことが可能となり、包装時の新鮮な風味を長時間維持することが可能となる。
【0005】
こうした理由から、かまぼこ等の練り製品、バター、チーズ等の乳製品、味噌、茶、コーヒー、ハム・ソーセージ類、インスタント食品、カステラ、ビスケット等の菓子類の包装フィルムにおいては、バリア性や防湿性が極めて重要な特性とされている。
【0006】
ガスバリア性に優れたフィルムとしては、プラスチックフィルム上にアルミニウム等の金属箔を積層したもの、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものが知られている。
【0007】
更に、フィルムに光バリヤー性を与える場合、全面印刷による方法、アルミニウム等の金属箔や紙等を積層したものが知られている。
【0008】
しかしながら、上記のような従来のバリア性積層フィルムには、それぞれ次のような問題点が指摘されている。ガスバリア層として金属箔を積層したものは、バリア性において優れているがコスト高となり、焼却時に炉をいためることが指摘されている。また、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものは、水蒸気や酸素等に対するガスバリア性が十分でなく、特に高温処理による性能低下が著しい。しかも塩化ビニリデン系については、焼却時の塩素ガスの発生等により大気汚染を招くことも懸念される。又、紙や印刷による方法では、光を遮断することは可能であっても、ガスバリア性を有しておらず、別途ガスバリア層が必要となる。
【0009】
このような問題を解決するものとして、バリア層としてアルミニウム等の金属蒸着層を形成したバリア性フィルムが提案された。金属等が蒸着される基材フィルムとしては、寸法安定性の良いポリエステルフィルムが使用されてきた。
【0010】
しかしながら、通常のポリエステルフィルムでは包装用として用いた際にひねり固定性(デッド゛ホール性)がないために、ひねり包装に用いることが不可能であった。
【0011】
折れ曲げ性やひねり性の優れたフィルムとしては、セロハンが知られている。セロハンは、その優れた透明性と易切断性、ひねり性等の特性により各種包装材料、粘着テープ用として重用されている。しかし、一方ではセロハンは吸湿性を有するため特性が季節により変動し一定の品質のものを常に供給することは困難であった。
【0012】
上記のひねり性を解決する方法として、ジエチレングリコール成分などを共重合させたもの(特公昭56−50692)や低分子量のポリエステル樹脂を用いるもの(特公昭55−20514)、応力−ひずみ曲線において降伏点を有し、かつ該共重合物の未延伸フィルムの平均屈折率をN0、二軸延伸フィルムの平均屈折率をN1としたとき、0.003≦N1−N0≦0.021を満足することを特徴とする易折り曲げポリエステルフィルム(第2505474号)や、ポリエステル樹脂層(A)の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂層(A)の融点よりも10℃以上高い融点を有し、かつ全厚みに対し5%以上、60%以下の厚みのポリエステル樹脂層(B)を積層した未延伸積層フィルムを少なくとも一軸延伸後にポリエステル樹脂層(A)の融点より10℃低い温度以上、かつポリエステル樹脂層(B)の融点未満の温度で熱処理することを特徴とする引き裂き性とひねり性の良好なポリエステルフィルムの製造方法(特開平5−104618)などが提案されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においてジエチレングリコール成分などを多量に共重合させる方法は、共重合によりポリエチレンテレフタレート本来の特性が失われるという欠点を有している。さらに、低分子量のポリエステル樹脂を用いる方法は、延伸工程での膜破れのトラブルが発生しやすくなり実用的でなかった。また、応力−ひずみ曲線において降伏点を有し、かつ該共重合物の未延伸フィルムの平均屈折率をN0、二軸延伸フィルムの平均屈折率をN1としたとき、0.003≦N1−N0≦0.021とする方法では、ひねり性が不充分なことや、蒸着等の加工を行った時に熱による収縮によってシワの発生や幅方向のフィルムの寸法変化が発生した。またポリエステル樹脂層(A)の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂層(A)の融点よりも10℃以上高い融点を有し、かつ全厚みに対し5%以上、60%以下の厚みのポリエステル樹脂層(B)を積層した未延伸積層フィルムを少なくとも一軸延伸後にポリエステル樹脂層(A)の融点より10℃低い温度以上、かつポリエステル樹脂層(B)の融点未満の温度で熱処理する方法では、融点の高いポリエステル樹脂層の影響で十分なひねり性が得られないことや、フィルムが脆くなり、ひねり包装の際にフィルムがちぎれるといったことがあった。
【0014】
特に、ひねり包装に見られる固体物の包装フィルムは、包装する為の機械によって容易に扱えるものでなければならず、例えば一台の機械で1分当り200〜1000個の固体物を包装できるもので無ければならない。即ち、一般的には物品をひねり包装する前に包装するのに必要な面積を切り取らなければならず、フィルムは包装前、切断後に於いて完全に平面で無ければならない。印刷や蒸着加工を行なった後のフィルムにシワや寸法変化によるひずみがあると、切断や包装の際に歪んだり、包装品の見栄えが悪いといった問題が生じる。
【0015】
即ち、本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり、その目的は、優れた光沢、ガスバリア性、接着性を有するバリア性フイルムであり、ポリエステル延伸フィルムの優れた特性である耐熱性、保香性、耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、良好なひねり性を具備したポリエステル系バリア性フィルムを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、応力−ひずみ曲線に於いて、上降伏点と下降伏点を有し、これらの比(下降伏点強度/上降伏点強度)が0.95以下であり、且つ150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることを特徴とするニ軸延伸ポリエステル系フィルムの、少なくとも片側の面の上に金属蒸着層が形成されたことを特徴とする金属蒸着ポリエステル系フィルムに関するものである。
【0017】
つまり、本発明は応力−ひずみ曲線に於いて、上降伏点を超えてフィルムを伸張させることによりフィルムの弾性回復を阻害し、且つ降伏強度比が0.95以下となることで、伸張させた状態で、安定的にその形状を保持できるという特性と、150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることにより金属蒸着を行った際にも、フィルムの平面性が良好であることを見出し本発明に至った。
【0018】
上記の構成からなる本発明のガスバリア性フィルムは、実際の使用形態においては優れたガスバリア性と接着性を有し、且つひねり性に優れた金属蒸着ポリエステル系フィルムである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガスバリア性フィルムについて詳細に説明する。
【0020】
本発明において、基材であるポリエステル系フィルムは、応力−ひずみ曲線に於いて上降伏点と下降伏点を有し、これらの比(下降伏点強度/上降伏点強度)が0.95以下であり、且つ150℃に30分間放置した際の、長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることを特徴とする、ひねり性の良好なポリエステル系フィルムでなければならない。
【0021】
以後 「下降伏点と上降伏点の比」 を降伏強度比と記す。
【0022】
本発明に於ける応力−ひずみ曲線とは、材料の両端を把持し、一定速度で伸張ひずみを与え、そのひずみを横軸、応力を縦軸にとり、描かせた曲線をいう。
【0023】
本発明に於ける上降伏点とは、該曲線に於いて応力が次第に増加し、弾性限界を超えるとき、応力が減少しながら、又は全く増加するのことなしにひずみが増加し始める点をいう。
【0024】
本発明に於ける下降伏点とは、応力−ひずみ曲線において、上降伏点を過ぎたあとに応力が減少し、再度増加し始めるまでの最低応力のことをいう。
【0025】
本発明に於いて降伏強度比は0.95以下であり、更に好ましくは0.90以下である。降伏強度比が0.95より大きいとデッドホールド性(折れ曲げ性)が不良となり、ひねり包装性が劣る。
【0026】
本発明に於いて、基材となるポリエステル系フィルムの150℃の雰囲気下に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率の最大値は3.5%以下であり、特に好ましくは3.0%以下である。150℃における熱収縮率が3.5%より大きいと金属蒸着層を形成する時にシワの発生や平面性の乱れが発生することがあり、包装を行う際に、機械トラブルとなったり、また、包装品の見栄えが悪くなり好ましくない。
【0027】
本発明に於いて、ポリエステル系フィルムの幅方向における150℃での長手方向の熱収縮率の最大値と最小値の差は1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。幅方向における150℃の熱収縮率が1.0%より大きいと金属蒸着層を形成する時に平面性の乱れが発生することがあり好ましくない。
【0028】
本発明に於いて、基材ポリエステル系フィルムと金属蒸着層との密着強度は、100g/15mm以上であることが好ましい。ガスバリア性は基材ポリエステル系フィルムと金属蒸着層との密着強度に依存しており、本発明者らの検討結果によれば、優れたガスバリア性を有し、かつボイル処理後においてもその優れたガスバリア性を維持させるには、95℃の熱水中で30分間のボイル処理後の密着強度を100g/15mm以上、好ましくは150g/15mm以上、より好ましくは200g/15mm以上、特に好ましくは250g/15mm以上にすべきであることを確認している。密着強度が100g/15mm未満の場合、ボイル処理やレトルト処理によりガスバリア性が悪くなる傾向にある。この理由は、密着強度が大きければ、ボイル処理やレトルト処理によって基材ポリエステル系フィルムに若干の収縮が起こった場合でも、金属蒸着層の剥離が起こり難くなるためと考えられる。
【0029】
本発明に於いてポリエステル系フィルムの上降伏点強度が30MPa以上、100MPa以下であることが好ましく、更に好ましくは50MPa以上、80MPa以下である。該上降伏点強度が30MPa未満の場合、フィルムの剛性が不足し、蒸着等の加工の際の取り扱いが困難となる。また、該上降伏点強度が100MPaより大きい場合、ひねり性が悪化する。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の各種添加材、例えば滑剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。
【0031】
本発明に用い得るポリエステルフィルムは、公知のフィルム製膜法によって形成し得る。フィルム製膜法としては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの二軸延伸法を行ない、次いで熱固定処理する方法が用い得る。例えば、逐次二軸延伸法としては、縦延伸及び横延伸または横延伸及び縦延伸を順に行なう方法のほか、横−縦−縦延伸法、縦−横−縦延伸法、縦−縦−横延伸法などの延伸方法を採用することができる。また、同時二軸延伸法としては、従来の同時二軸延伸法でもよい。なお、多段階に分けて同時二軸延伸してもよい
【0032】
さらに、延伸フィルムの厚みは本発明の目的とする用途である包装用袋などで使用されるフィルム厚みは12μから100μであるが、特に限定されるものではない。
【0033】
次に本発明フィルムの製造法の一例を説明するが、これはあくまで具体例であり、本発明内容を拘束するものではない。
【0034】
まず、所定のポリエステル組成物を押出し機に供給し、融点以上の温度で溶融押し出しし、口金より押し出し冷却固化させて未延伸積層フィルムを成形する。
【0035】
このようにして得られた未延伸フィルムを、それを構成する組成物のうち、最も高いガラス転移温度を有するポリエステル樹脂または共重合体のガラス転移温度以上で延伸を行なう。延伸倍率としては延伸面積で2〜30倍、好ましくは9〜16倍である。
【0036】
この延伸フィルムに熱処理を行なう。この熱処理では、必要に応じて弛緩処理を行ってもよい。また、これらの熱処理、弛緩処理を行なうことにより、150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下となるフィルムが得られる。
【0037】
本発明では、上記の方法で得られた基材ポリエステル系フィルムの少なくとも一方上に、バリア層である金属蒸着層が形成される。
【0038】
金属蒸着層に使用する金属としては、Al、Zn、Mg、Sn、Ti、In、Cr、Ni、Cu、Pb、Fe等が挙げられる。これらの中でAl、Zn、Mgが本発明の金属蒸着ポリエステル系フィルムには好ましく、特にAlが生産性の点から好ましい。
【0039】
上記金属蒸着層の膜厚は、通常1〜500nm、好ましくは5〜200nmである。膜厚が1nm未満では満足のいくガスバリア性が得られ難く、また500nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性向上効果は得られず、蒸着後のフィルムの平面性や製造コストの点で却って不利となる。
【0040】
金属蒸着層の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいはCVD等の化学蒸着法等が適宜用いられる。
【0041】
ガスバリア性フィルムのガスバリア性には、基材ポリエステル系フィルムと金属蒸着層との密着強度が大きく関係しており、密着強度が大きいほどガスバリア性は向上する。そして本発明者らの検討結果によれば、優れたガスバリア性を有し、かつボイル処理後においてもその優れたガスバリア性を維持させるには、95℃の熱水中で30分間のボイル処理後の密着強度を100g/15mm以上、好ましくは150g/15mm以上、より好ましくは200g/15mm以上、特に好ましくは250g/15mm以上にすべきであることを確認している。密着強度が100g/15mm未満の場合、ボイル処理やレトルト処理によりガスバリア性が悪くなる傾向にある。この理由は、密着強度が大きければ、ボイル処理やレトルト処理によって基材ポリエステル系フィルムに若干の収縮が起こった場合でも、金属蒸着層の剥離が起こり難くなるためと考えられる。
【0042】
このように優れた密着強度を得るための手段としては、金属蒸着層の形成前に、基材ポリエステル系フィルムの表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、逆スパッタ処理、粗面化処理等を施したり、あるいは基材ポリエステル系フィルム上に接着改質層を形成する等の方法があり、中でも、接着力の持続性の点から接着改質層の形成が好ましい。
【0043】
二軸延伸された基材ポリエステル系フィルムに上記接着改質層を形成するために塗布液を塗布する場合、基材ポリエステル系フィルムと接着改質層との接着性をさらに良くするため、接着改質層の形成前に基材ポリエステル系フィルムにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしてもよい。
【0044】
接着改質層は各種材料と良好な接着性を有し、本発明においてはその上には金属蒸着層が形成してもよいが、さらに接着性をよくするために、金属蒸着層形成前に当該接着改質層にさらにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしても良い。
【0045】
かくして得られる本発明のガスバリア性フィルムは、その優れたガスバリア性、金属光沢、及び、ひねり性を生かし、チョコレートやキャンディの包装に、或いはカップの蓋材として有効に活用することができる。
【0046】
また包装材料の形態にも特に制限がなく、袋、スタンディングパウチ等、折り曲げ性(デッドホールド性)が有効な包装に幅広く適用できる。
【0047】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明技術的範囲に包含される。また、下記実施例で採用した各種の性能試験は次の方法によって行った。
【0048】
(b)熱収縮率:フィルムの長手方向に、幅10mm、長さ250mmのサンプルを切り出し、200mm間隔で印をつけ、5gの一定張力で間隔Aを測る。続いて、150℃の雰囲気中のオーブンに無荷重で30分間放置した。オーブンから取り出し室温まで冷却後に、5gの一定張力で間隔Bを求め、以下の式により熱収縮率を求めた。測定はフィルムの幅方向を等間隔に5ヶ所からサンプルを切り出し、その最大値およびバラツキ(最大値と最小値の差)をもとめた。
熱収縮率=(A−B)/A×100(%)
【0049】
蒸着後の平面性:フィルムを巻き取り式真空蒸着装置の巻き出し側にセットし、チャンバー内を4×10−3Paまで減圧し、高周波誘導加熱によりアルミニウムを蒸発させ、厚さ50nmのアルミニウム蒸着層を形成した。この時のフィルムの走行速度は40m/min、チルロール温度は−15℃とした。蒸着後のフィルムをロールから巻き出し、目視によりフィルムの平面性を観察し、以下に示す4段階評価を行なった。
◎:張力をかけない状態でも平面性は良好
○:フィルムに若干張力を加えると平面性は良好
△:張力をかけても若干平面性に乱れがある
×:張力をかけても平面に乱れがある
【0050】
(d)ひねり性:「ひねり戻り角度」と称する官能テストで行った。まず、100mm□のサンプルを切りだし、直径20mmの丸棒に50mmはみ出すように、長手方向に巻き付ける。次いで、はみ出した部分を360°ひねり、360°から戻った角度を測定した。これらの測定を100回行ない、平均値を求めた。
ちなみに現在ひねり包装に用いられているセロハンを同方法で測定したのひねり戻り角度は70°であった。
ひねり戻り角度が75°以下を○、76〜85°を△、85°を超えたものを×とした。
【0051】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(A)42重量%、酸成分としてテレフタル酸100mol%、グリコール成分としてエチレングリコール70mol%およびネオペンチルグリコール30mol%からなる共重合ポリエステル(B)38重量%、ポリブチレンテレフタレート(C)20重量%からなるポリエステル組成物を、285℃で溶融押出しし、30℃の冷却ドラムで急冷して未延伸シートを得た。
【0052】
該未延伸フィルムをまず縦方向に90℃で3.7倍、次いでテンターにおいて横方向に110℃で4.0倍に延伸した後、3%の弛緩を行ないつつ220℃の温度で熱処理を行ない20μmのフィルムを得た。
【0053】
かくして得られたフィルムの降伏強度比は0.87、熱収縮率は3.2%であった。得られたフィルム、蒸着および加工後の評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
熱固定温度を210℃とした以外は、実施例1と同じ原料・方法で厚さ20μmのフィルムを得た。このフィルムの降伏点比は0.89、熱収縮率は3.6%であった。該フィルムはひねり性に優れていたが、蒸着後の平面性に劣っていた。このフィルムの特性、及び蒸着加工後の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
融点が221℃のポリエチレンイソフタレートとポリエチレンテレフタレートの共重合体(A)と融点が265℃のポリエチレンテレフタレート(B)をおのおの285℃の温度で別々の押出機により溶融しこの溶融体を複合アダプターで合流させた後にTダイより押し出し、30℃の冷却ドラムで急冷して(B/A/B)構成の3層の未延伸積層フィルムを得た。
【0056】
該未延伸積層フィルムをまず金属ロールを用い、縦方向に95℃で3.7倍延伸した。次いでテンターにおいてフィルムを110℃に予熱し、110℃から150℃に昇温しながら横方向に4.2倍に延伸し、続いて225℃の温度で3%の弛緩処理を行ないながら熱処理を行ない20μmのフィルムを得た。このフィルムのB/A/B各層の厚み比率はそれぞれ1/18/1の比率であった。該フィルムは、ひねりテストの際に、フィルムが破れることがあった。得られたフィルムの特性、蒸着および加工後の評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
ポリエステル(A)/(B)/(C)の配合比を67/23/10重量%とした以外は比較例1と同じ原料・方法で厚さ20μmのフィルムを得た。該フイルムはひねり性、蒸着後の平面性に優れていた。このフィルムの特性及び蒸着加工後の評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
ポリエステル(A)/(B)/(C)の配合比を75/15/10重量%とした以外は比較例1と同じ原料・方法で厚さ20μmのフィルムを得た。このフィルムの蒸着および加工後の評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例3、4)
ポリエステル(A)/(B)/(C)の配合比をそれぞれ65/25/10重量%とし、熱固定温度をそれぞれ200℃、180℃とした以外は実施例1と同じ方法で厚さ20μmのフィルムを得た。このフィルムの降伏強度比はそれぞれ0.96、0.98、熱収縮率は4.5%、6.2%であった。該フィルムはひねり性、蒸着後の平面性に劣っていた。このフィルムの特性、及び蒸着加工後の評価結果を表1に示す。
【0060】
(比較例5)
ポリエステル組成物としてポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて20μmのフィルムを得た。該フィルムに降伏点は無く、ひねり性はなかった。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明のポリエステル系ガスバリア性フィルムは、蒸着後の平面性、ひねり固定性、ガスバリア性が良好であり、ひねり包装用、或いは包装用フィルムに有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル延伸フィルムに関する。更に詳しくは、ポリエステル延伸フィルムの優れた特性である耐熱性、保香性、耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、良好なひねり性を具備し、且つ、生鮮食品、加工食品、医療品、医療機器、電子部品等の包装用フィルムにおいて重要な特性とされるガスバリア性や防湿性に優れ、且つ、ひねり包装や折り曲げ包装、又は折り曲げ固定の可能な金属蒸着ポリエステル系フィルムまたはシート(以下、これらをまとめてガスバリア性フィルムという)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品の流通形態や食生活の変革によって食品の包装形態も大幅に変わってきており、包装用のフィルムやシート(以下、これらをまとめてフィルムという)に対する要求特性はますます厳しくなってきている。
【0003】
流通販売過程における温度や湿分、酸素、紫外線、更には細菌やカビ等の微生物の影響による製品の品質低下は、販売上の損失を招くのみならず食品衛生面からも大きな問題である。このような品質低下を防止する方法として、従来は酸化防止剤や防腐剤等を食品に直接添加していたが、最近では、消費者保護の立場から食品添加物の規制が厳しくなり、添加量の減少もしくは無添加が求められている。
【0004】
即ち、魚肉、畜肉、乳製品、チョコレート、キャンディ等の包装においては、蛋白質や油脂等の酸化や変質を抑制し、味や風味、鮮度を保持することが重要であり、そのためには、バリア性の良好な包装材を用いて空気や光の透過を遮断することが望まれる。しかもバリア性の良好な包装材で包装すると、内容物の香気が保持されると共に水分の透過も阻止されるので、乾燥物では吸湿劣化が抑制され、含水物の場合は水分の揮発による変質や固化が抑制され、さらに、紫外線による油脂の分解等を防ぐことが可能となり、包装時の新鮮な風味を長時間維持することが可能となる。
【0005】
こうした理由から、かまぼこ等の練り製品、バター、チーズ等の乳製品、味噌、茶、コーヒー、ハム・ソーセージ類、インスタント食品、カステラ、ビスケット等の菓子類の包装フィルムにおいては、バリア性や防湿性が極めて重要な特性とされている。
【0006】
ガスバリア性に優れたフィルムとしては、プラスチックフィルム上にアルミニウム等の金属箔を積層したもの、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものが知られている。
【0007】
更に、フィルムに光バリヤー性を与える場合、全面印刷による方法、アルミニウム等の金属箔や紙等を積層したものが知られている。
【0008】
しかしながら、上記のような従来のバリア性積層フィルムには、それぞれ次のような問題点が指摘されている。ガスバリア層として金属箔を積層したものは、バリア性において優れているがコスト高となり、焼却時に炉をいためることが指摘されている。また、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものは、水蒸気や酸素等に対するガスバリア性が十分でなく、特に高温処理による性能低下が著しい。しかも塩化ビニリデン系については、焼却時の塩素ガスの発生等により大気汚染を招くことも懸念される。又、紙や印刷による方法では、光を遮断することは可能であっても、ガスバリア性を有しておらず、別途ガスバリア層が必要となる。
【0009】
このような問題を解決するものとして、バリア層としてアルミニウム等の金属蒸着層を形成したバリア性フィルムが提案された。金属等が蒸着される基材フィルムとしては、寸法安定性の良いポリエステルフィルムが使用されてきた。
【0010】
しかしながら、通常のポリエステルフィルムでは包装用として用いた際にひねり固定性(デッド゛ホール性)がないために、ひねり包装に用いることが不可能であった。
【0011】
折れ曲げ性やひねり性の優れたフィルムとしては、セロハンが知られている。セロハンは、その優れた透明性と易切断性、ひねり性等の特性により各種包装材料、粘着テープ用として重用されている。しかし、一方ではセロハンは吸湿性を有するため特性が季節により変動し一定の品質のものを常に供給することは困難であった。
【0012】
上記のひねり性を解決する方法として、ジエチレングリコール成分などを共重合させたもの(特公昭56−50692)や低分子量のポリエステル樹脂を用いるもの(特公昭55−20514)、応力−ひずみ曲線において降伏点を有し、かつ該共重合物の未延伸フィルムの平均屈折率をN0、二軸延伸フィルムの平均屈折率をN1としたとき、0.003≦N1−N0≦0.021を満足することを特徴とする易折り曲げポリエステルフィルム(第2505474号)や、ポリエステル樹脂層(A)の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂層(A)の融点よりも10℃以上高い融点を有し、かつ全厚みに対し5%以上、60%以下の厚みのポリエステル樹脂層(B)を積層した未延伸積層フィルムを少なくとも一軸延伸後にポリエステル樹脂層(A)の融点より10℃低い温度以上、かつポリエステル樹脂層(B)の融点未満の温度で熱処理することを特徴とする引き裂き性とひねり性の良好なポリエステルフィルムの製造方法(特開平5−104618)などが提案されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においてジエチレングリコール成分などを多量に共重合させる方法は、共重合によりポリエチレンテレフタレート本来の特性が失われるという欠点を有している。さらに、低分子量のポリエステル樹脂を用いる方法は、延伸工程での膜破れのトラブルが発生しやすくなり実用的でなかった。また、応力−ひずみ曲線において降伏点を有し、かつ該共重合物の未延伸フィルムの平均屈折率をN0、二軸延伸フィルムの平均屈折率をN1としたとき、0.003≦N1−N0≦0.021とする方法では、ひねり性が不充分なことや、蒸着等の加工を行った時に熱による収縮によってシワの発生や幅方向のフィルムの寸法変化が発生した。またポリエステル樹脂層(A)の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂層(A)の融点よりも10℃以上高い融点を有し、かつ全厚みに対し5%以上、60%以下の厚みのポリエステル樹脂層(B)を積層した未延伸積層フィルムを少なくとも一軸延伸後にポリエステル樹脂層(A)の融点より10℃低い温度以上、かつポリエステル樹脂層(B)の融点未満の温度で熱処理する方法では、融点の高いポリエステル樹脂層の影響で十分なひねり性が得られないことや、フィルムが脆くなり、ひねり包装の際にフィルムがちぎれるといったことがあった。
【0014】
特に、ひねり包装に見られる固体物の包装フィルムは、包装する為の機械によって容易に扱えるものでなければならず、例えば一台の機械で1分当り200〜1000個の固体物を包装できるもので無ければならない。即ち、一般的には物品をひねり包装する前に包装するのに必要な面積を切り取らなければならず、フィルムは包装前、切断後に於いて完全に平面で無ければならない。印刷や蒸着加工を行なった後のフィルムにシワや寸法変化によるひずみがあると、切断や包装の際に歪んだり、包装品の見栄えが悪いといった問題が生じる。
【0015】
即ち、本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり、その目的は、優れた光沢、ガスバリア性、接着性を有するバリア性フイルムであり、ポリエステル延伸フィルムの優れた特性である耐熱性、保香性、耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、良好なひねり性を具備したポリエステル系バリア性フィルムを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、応力−ひずみ曲線に於いて、上降伏点と下降伏点を有し、これらの比(下降伏点強度/上降伏点強度)が0.95以下であり、且つ150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることを特徴とするニ軸延伸ポリエステル系フィルムの、少なくとも片側の面の上に金属蒸着層が形成されたことを特徴とする金属蒸着ポリエステル系フィルムに関するものである。
【0017】
つまり、本発明は応力−ひずみ曲線に於いて、上降伏点を超えてフィルムを伸張させることによりフィルムの弾性回復を阻害し、且つ降伏強度比が0.95以下となることで、伸張させた状態で、安定的にその形状を保持できるという特性と、150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることにより金属蒸着を行った際にも、フィルムの平面性が良好であることを見出し本発明に至った。
【0018】
上記の構成からなる本発明のガスバリア性フィルムは、実際の使用形態においては優れたガスバリア性と接着性を有し、且つひねり性に優れた金属蒸着ポリエステル系フィルムである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガスバリア性フィルムについて詳細に説明する。
【0020】
本発明において、基材であるポリエステル系フィルムは、応力−ひずみ曲線に於いて上降伏点と下降伏点を有し、これらの比(下降伏点強度/上降伏点強度)が0.95以下であり、且つ150℃に30分間放置した際の、長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることを特徴とする、ひねり性の良好なポリエステル系フィルムでなければならない。
【0021】
以後 「下降伏点と上降伏点の比」 を降伏強度比と記す。
【0022】
本発明に於ける応力−ひずみ曲線とは、材料の両端を把持し、一定速度で伸張ひずみを与え、そのひずみを横軸、応力を縦軸にとり、描かせた曲線をいう。
【0023】
本発明に於ける上降伏点とは、該曲線に於いて応力が次第に増加し、弾性限界を超えるとき、応力が減少しながら、又は全く増加するのことなしにひずみが増加し始める点をいう。
【0024】
本発明に於ける下降伏点とは、応力−ひずみ曲線において、上降伏点を過ぎたあとに応力が減少し、再度増加し始めるまでの最低応力のことをいう。
【0025】
本発明に於いて降伏強度比は0.95以下であり、更に好ましくは0.90以下である。降伏強度比が0.95より大きいとデッドホールド性(折れ曲げ性)が不良となり、ひねり包装性が劣る。
【0026】
本発明に於いて、基材となるポリエステル系フィルムの150℃の雰囲気下に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率の最大値は3.5%以下であり、特に好ましくは3.0%以下である。150℃における熱収縮率が3.5%より大きいと金属蒸着層を形成する時にシワの発生や平面性の乱れが発生することがあり、包装を行う際に、機械トラブルとなったり、また、包装品の見栄えが悪くなり好ましくない。
【0027】
本発明に於いて、ポリエステル系フィルムの幅方向における150℃での長手方向の熱収縮率の最大値と最小値の差は1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。幅方向における150℃の熱収縮率が1.0%より大きいと金属蒸着層を形成する時に平面性の乱れが発生することがあり好ましくない。
【0028】
本発明に於いて、基材ポリエステル系フィルムと金属蒸着層との密着強度は、100g/15mm以上であることが好ましい。ガスバリア性は基材ポリエステル系フィルムと金属蒸着層との密着強度に依存しており、本発明者らの検討結果によれば、優れたガスバリア性を有し、かつボイル処理後においてもその優れたガスバリア性を維持させるには、95℃の熱水中で30分間のボイル処理後の密着強度を100g/15mm以上、好ましくは150g/15mm以上、より好ましくは200g/15mm以上、特に好ましくは250g/15mm以上にすべきであることを確認している。密着強度が100g/15mm未満の場合、ボイル処理やレトルト処理によりガスバリア性が悪くなる傾向にある。この理由は、密着強度が大きければ、ボイル処理やレトルト処理によって基材ポリエステル系フィルムに若干の収縮が起こった場合でも、金属蒸着層の剥離が起こり難くなるためと考えられる。
【0029】
本発明に於いてポリエステル系フィルムの上降伏点強度が30MPa以上、100MPa以下であることが好ましく、更に好ましくは50MPa以上、80MPa以下である。該上降伏点強度が30MPa未満の場合、フィルムの剛性が不足し、蒸着等の加工の際の取り扱いが困難となる。また、該上降伏点強度が100MPaより大きい場合、ひねり性が悪化する。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の各種添加材、例えば滑剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。
【0031】
本発明に用い得るポリエステルフィルムは、公知のフィルム製膜法によって形成し得る。フィルム製膜法としては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの二軸延伸法を行ない、次いで熱固定処理する方法が用い得る。例えば、逐次二軸延伸法としては、縦延伸及び横延伸または横延伸及び縦延伸を順に行なう方法のほか、横−縦−縦延伸法、縦−横−縦延伸法、縦−縦−横延伸法などの延伸方法を採用することができる。また、同時二軸延伸法としては、従来の同時二軸延伸法でもよい。なお、多段階に分けて同時二軸延伸してもよい
【0032】
さらに、延伸フィルムの厚みは本発明の目的とする用途である包装用袋などで使用されるフィルム厚みは12μから100μであるが、特に限定されるものではない。
【0033】
次に本発明フィルムの製造法の一例を説明するが、これはあくまで具体例であり、本発明内容を拘束するものではない。
【0034】
まず、所定のポリエステル組成物を押出し機に供給し、融点以上の温度で溶融押し出しし、口金より押し出し冷却固化させて未延伸積層フィルムを成形する。
【0035】
このようにして得られた未延伸フィルムを、それを構成する組成物のうち、最も高いガラス転移温度を有するポリエステル樹脂または共重合体のガラス転移温度以上で延伸を行なう。延伸倍率としては延伸面積で2〜30倍、好ましくは9〜16倍である。
【0036】
この延伸フィルムに熱処理を行なう。この熱処理では、必要に応じて弛緩処理を行ってもよい。また、これらの熱処理、弛緩処理を行なうことにより、150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下となるフィルムが得られる。
【0037】
本発明では、上記の方法で得られた基材ポリエステル系フィルムの少なくとも一方上に、バリア層である金属蒸着層が形成される。
【0038】
金属蒸着層に使用する金属としては、Al、Zn、Mg、Sn、Ti、In、Cr、Ni、Cu、Pb、Fe等が挙げられる。これらの中でAl、Zn、Mgが本発明の金属蒸着ポリエステル系フィルムには好ましく、特にAlが生産性の点から好ましい。
【0039】
上記金属蒸着層の膜厚は、通常1〜500nm、好ましくは5〜200nmである。膜厚が1nm未満では満足のいくガスバリア性が得られ難く、また500nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性向上効果は得られず、蒸着後のフィルムの平面性や製造コストの点で却って不利となる。
【0040】
金属蒸着層の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいはCVD等の化学蒸着法等が適宜用いられる。
【0041】
ガスバリア性フィルムのガスバリア性には、基材ポリエステル系フィルムと金属蒸着層との密着強度が大きく関係しており、密着強度が大きいほどガスバリア性は向上する。そして本発明者らの検討結果によれば、優れたガスバリア性を有し、かつボイル処理後においてもその優れたガスバリア性を維持させるには、95℃の熱水中で30分間のボイル処理後の密着強度を100g/15mm以上、好ましくは150g/15mm以上、より好ましくは200g/15mm以上、特に好ましくは250g/15mm以上にすべきであることを確認している。密着強度が100g/15mm未満の場合、ボイル処理やレトルト処理によりガスバリア性が悪くなる傾向にある。この理由は、密着強度が大きければ、ボイル処理やレトルト処理によって基材ポリエステル系フィルムに若干の収縮が起こった場合でも、金属蒸着層の剥離が起こり難くなるためと考えられる。
【0042】
このように優れた密着強度を得るための手段としては、金属蒸着層の形成前に、基材ポリエステル系フィルムの表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、逆スパッタ処理、粗面化処理等を施したり、あるいは基材ポリエステル系フィルム上に接着改質層を形成する等の方法があり、中でも、接着力の持続性の点から接着改質層の形成が好ましい。
【0043】
二軸延伸された基材ポリエステル系フィルムに上記接着改質層を形成するために塗布液を塗布する場合、基材ポリエステル系フィルムと接着改質層との接着性をさらに良くするため、接着改質層の形成前に基材ポリエステル系フィルムにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしてもよい。
【0044】
接着改質層は各種材料と良好な接着性を有し、本発明においてはその上には金属蒸着層が形成してもよいが、さらに接着性をよくするために、金属蒸着層形成前に当該接着改質層にさらにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理をしても良い。
【0045】
かくして得られる本発明のガスバリア性フィルムは、その優れたガスバリア性、金属光沢、及び、ひねり性を生かし、チョコレートやキャンディの包装に、或いはカップの蓋材として有効に活用することができる。
【0046】
また包装材料の形態にも特に制限がなく、袋、スタンディングパウチ等、折り曲げ性(デッドホールド性)が有効な包装に幅広く適用できる。
【0047】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明技術的範囲に包含される。また、下記実施例で採用した各種の性能試験は次の方法によって行った。
【0048】
(b)熱収縮率:フィルムの長手方向に、幅10mm、長さ250mmのサンプルを切り出し、200mm間隔で印をつけ、5gの一定張力で間隔Aを測る。続いて、150℃の雰囲気中のオーブンに無荷重で30分間放置した。オーブンから取り出し室温まで冷却後に、5gの一定張力で間隔Bを求め、以下の式により熱収縮率を求めた。測定はフィルムの幅方向を等間隔に5ヶ所からサンプルを切り出し、その最大値およびバラツキ(最大値と最小値の差)をもとめた。
熱収縮率=(A−B)/A×100(%)
【0049】
蒸着後の平面性:フィルムを巻き取り式真空蒸着装置の巻き出し側にセットし、チャンバー内を4×10−3Paまで減圧し、高周波誘導加熱によりアルミニウムを蒸発させ、厚さ50nmのアルミニウム蒸着層を形成した。この時のフィルムの走行速度は40m/min、チルロール温度は−15℃とした。蒸着後のフィルムをロールから巻き出し、目視によりフィルムの平面性を観察し、以下に示す4段階評価を行なった。
◎:張力をかけない状態でも平面性は良好
○:フィルムに若干張力を加えると平面性は良好
△:張力をかけても若干平面性に乱れがある
×:張力をかけても平面に乱れがある
【0050】
(d)ひねり性:「ひねり戻り角度」と称する官能テストで行った。まず、100mm□のサンプルを切りだし、直径20mmの丸棒に50mmはみ出すように、長手方向に巻き付ける。次いで、はみ出した部分を360°ひねり、360°から戻った角度を測定した。これらの測定を100回行ない、平均値を求めた。
ちなみに現在ひねり包装に用いられているセロハンを同方法で測定したのひねり戻り角度は70°であった。
ひねり戻り角度が75°以下を○、76〜85°を△、85°を超えたものを×とした。
【0051】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(A)42重量%、酸成分としてテレフタル酸100mol%、グリコール成分としてエチレングリコール70mol%およびネオペンチルグリコール30mol%からなる共重合ポリエステル(B)38重量%、ポリブチレンテレフタレート(C)20重量%からなるポリエステル組成物を、285℃で溶融押出しし、30℃の冷却ドラムで急冷して未延伸シートを得た。
【0052】
該未延伸フィルムをまず縦方向に90℃で3.7倍、次いでテンターにおいて横方向に110℃で4.0倍に延伸した後、3%の弛緩を行ないつつ220℃の温度で熱処理を行ない20μmのフィルムを得た。
【0053】
かくして得られたフィルムの降伏強度比は0.87、熱収縮率は3.2%であった。得られたフィルム、蒸着および加工後の評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
熱固定温度を210℃とした以外は、実施例1と同じ原料・方法で厚さ20μmのフィルムを得た。このフィルムの降伏点比は0.89、熱収縮率は3.6%であった。該フィルムはひねり性に優れていたが、蒸着後の平面性に劣っていた。このフィルムの特性、及び蒸着加工後の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
融点が221℃のポリエチレンイソフタレートとポリエチレンテレフタレートの共重合体(A)と融点が265℃のポリエチレンテレフタレート(B)をおのおの285℃の温度で別々の押出機により溶融しこの溶融体を複合アダプターで合流させた後にTダイより押し出し、30℃の冷却ドラムで急冷して(B/A/B)構成の3層の未延伸積層フィルムを得た。
【0056】
該未延伸積層フィルムをまず金属ロールを用い、縦方向に95℃で3.7倍延伸した。次いでテンターにおいてフィルムを110℃に予熱し、110℃から150℃に昇温しながら横方向に4.2倍に延伸し、続いて225℃の温度で3%の弛緩処理を行ないながら熱処理を行ない20μmのフィルムを得た。このフィルムのB/A/B各層の厚み比率はそれぞれ1/18/1の比率であった。該フィルムは、ひねりテストの際に、フィルムが破れることがあった。得られたフィルムの特性、蒸着および加工後の評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
ポリエステル(A)/(B)/(C)の配合比を67/23/10重量%とした以外は比較例1と同じ原料・方法で厚さ20μmのフィルムを得た。該フイルムはひねり性、蒸着後の平面性に優れていた。このフィルムの特性及び蒸着加工後の評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
ポリエステル(A)/(B)/(C)の配合比を75/15/10重量%とした以外は比較例1と同じ原料・方法で厚さ20μmのフィルムを得た。このフィルムの蒸着および加工後の評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例3、4)
ポリエステル(A)/(B)/(C)の配合比をそれぞれ65/25/10重量%とし、熱固定温度をそれぞれ200℃、180℃とした以外は実施例1と同じ方法で厚さ20μmのフィルムを得た。このフィルムの降伏強度比はそれぞれ0.96、0.98、熱収縮率は4.5%、6.2%であった。該フィルムはひねり性、蒸着後の平面性に劣っていた。このフィルムの特性、及び蒸着加工後の評価結果を表1に示す。
【0060】
(比較例5)
ポリエステル組成物としてポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて20μmのフィルムを得た。該フィルムに降伏点は無く、ひねり性はなかった。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明のポリエステル系ガスバリア性フィルムは、蒸着後の平面性、ひねり固定性、ガスバリア性が良好であり、ひねり包装用、或いは包装用フィルムに有用である。
Claims (4)
- 応力−ひずみ曲線に於いて、上降伏点と下降伏点を有し、これらの比(下降伏点強度/上降伏点強度)が0.95以下であって、且つ150℃に30分間放置した際の長手方向の熱収縮率が3.5%以下であることを特徴とするニ軸延伸ポリエステル系フィルムの、少なくとも片側の面の上に金属蒸着層が形成されたことを特徴とする金属蒸着ポリエステル系フィルム。
- 請求項1に記載の二軸延伸ポリエステル系フィルムの幅方向における150℃での長手方向の熱収縮率の最大値と最小値の差が1.0%以下であることを特徴とする金属蒸着ポリエステル系フィルム。
- 請求項1、2に記載の金属蒸着ポリエステル系フィルムに於いて、95℃の熱水中で30分間のボイル処理後の蒸着層と基材フィルムとの密着強度が100g/15mm以上であることを特徴とする金属蒸着ポリエステル系フィルム。
- 請求項1、2に記載のニ軸延伸ポリエステル系フィルムの上降伏点強度が30MPa以上、100MPa以下であることを特徴とする金属蒸着ポリエステル系フィルム。
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