JP2004016161A - 発酵食品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原料となる植物の有効成分をあますことなく有効に利用することを可能とすると共に、圧搾等の工程から出ていた大量の残渣を極力少なくし廃棄物を減らすことにより環境に配慮した(環境にやさしい)発酵食品の製造方法を提供することができる。
【解決手段】上記課題を解決するために、細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を用いて発酵用原料を単細胞化する工程を含む。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵用原料を単細胞化(シングルセル化)する工程を含む発酵食品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、大豆(又は脱脂大豆)を蒸煮し、小麦(又はふすま)を煎って破砕し、その後それらの混合物に麹菌を添加し攪拌して混ぜ合わせて、醤油麹をつくり、その後食塩と水(食塩水)を加え、攪拌して混ぜ合わせ発酵タンク等に仕込む仕込みを行い、その後この混合物(もろみ)を発酵タンク等で発酵・熟成させ、発酵・熟成した後に圧搾することで個体(残渣)と液体(生醤油)とに分ける。そして、その液体(生醤油)を加熱殺菌(火入れ)するという醤油の製造方法は、広く一般に知られている。
【0003】
また、蒸した大豆に食塩と米麹等を加え、大豆のタンパク質を分解させて作る味噌の製造方法は、広く一般に知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在の醤油の製造方法においては、もろみを圧搾して個体(残渣)と液体(生醤油)に分ける際に大量の残渣(醤油粕)が発生し、その残渣を家畜等の飼料として利用するか、または不要物として廃棄しなければならないという問題があった。
【0005】
また、この残渣に含まれている大豆の有効成分が醤油の有効成分として利用されていないという問題があった。
【0006】
また、大豆は細胞同士の結着が強い(細胞間物質が厚くて硬い)ため製麹(醤油麹をつくること)及びもろみの発酵・熟成に時間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、原料の有効成分をあますことなく有効に利用することを可能にすると共に、圧搾の工程から出ていた大量の残渣を極力少なくし廃棄物を減らすことにより環境に配慮した(環境にやさしい)発酵食品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
また、本発明は、製麹及びもろみの発酵・熟成の時間を短縮することを他の目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を解決するために、本発明に係る発酵食品の製造方法は、細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を用いて発酵用原料の少なくとも1つを単細胞化する単細胞化工程と、発酵用原料の少なくとも1つが単細胞化された発酵用原料混合物に麹菌を添加し、発酵・熟成させる発酵・熟成工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
(2)更に、(1)に記載の発酵食品の製造方法において、前記単細胞化工程で使用する分解酵素は、ペクチナーゼ、プロトペクチナーゼ、ポリガラクツロナーゼの少なくとも1つであることを特徴とする。
【0011】
(3)そして、(1)又は(2)に記載の発酵食品の製造方法において、前記単細胞化工程を1回または2回以上行うことを特徴とする。
【0012】
(4)また、原料となる大豆と小麦等とを処理する原料処理工程と、処理された大豆と小麦等とに麹菌を加え醤油麹をつくる製麹工程と、この醤油麹に塩水を混ぜて発酵・熟成させる発酵・熟成工程とを少なくとも含む醤油の製造方法において、前記原料処理工程は、大豆を洗浄し水に浸す浸漬工程と、この浸漬した大豆を蒸煮する蒸煮工程と、蒸煮した大豆を所定温度に冷却する冷却工程と、この冷却した大豆に、水及び細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を添加して混合物をつくる混合物製造工程と、この混合物を撹拌し、酵素処理を実施する酵素処理工程と、前記細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を失活させるために、前記混合物に熱処理を施す熱処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
(5)更に、原料となる大豆と米等とを処理する原料処理工程と、処理された大豆と米等によりつくられた米麹等と塩とを混ぜ合わせ混合原料をつくる混合原料製造工程と、当該混合原料を桶等に入れ、発酵・熟成させる発酵・熟成工程とを少なくとも含む味噌の製造方法において、前記原料処理工程は、大豆を洗浄し水に浸す浸漬工程と、この浸漬した大豆を蒸煮する蒸煮工程と、蒸煮した大豆を所定温度に冷却する冷却工程と、この冷却した大豆に、水及び細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を添加して混合物をつくる混合物製造工程と、この混合物を撹拌し、酵素処理を実施する酵素処理工程と、前記細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を失活させるために、前記混合物に熱処理を施す熱処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
以上のような工程を経て発酵食品を製造することにより、細胞壁を分解(溶解)せずに細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素が、発酵用原料たる大豆、小麦、ふすま、豆、麦、米等に作用し、有効成分を多く含んだ液体状物又は半固形物等を得ることが可能となる。その後、それらを発酵・熟成させることで原料の有効成分を多く含んだ醤油、味噌等の発酵食品が製造されることとなる。また、この分解酵素の働きにより、醤油の発酵用原料たる大豆、小麦等の多くの部分(例えば、大豆の実の細胞の50%以上、好ましくは60%以上)が分解されることとなるため、残渣の量も少なくなり、従来の醤油の製造方法と比べて残渣(醤油粕)の量が減少することとなる。また、醤油や味噌の原料である大豆の単細胞化をすることにより製麹や発酵・熟成の時間を短縮することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
〔第1の実施形態〕
醤油は、原料に大豆や小麦、麹菌、塩等を使用して作られる。(後述するが、味噌の製造工程と醤油の製造工程は似ているところがある。)
【0016】
原料である大豆は主に味を出すのに使用される。そして、丸大豆というそのままの大豆、脱脂大豆という油をしぼりとった後の大豆がある。脱脂大豆は一般に大工場で使用されている。おいしい醤油を作るには丸大豆を使用するのがよいとされている。また、小麦はデンプンが多く、おもに香りを出すために使用される。
【0017】
本実施形態の発酵食品は大きな流れとして、発酵用原料の少なくとも1つ(例えば、大豆)を単細胞化して、その後に単細胞化された発酵用原料が含まれた発酵用原料混合物に麹菌を添加し発酵・熟成させる。一般に、発酵とは、酵母や細菌などの微生物がエネルギーを得るために有機化合物を分解して、アルコール類、有機酸類、二酸化炭素などを生成していく過程である。狭義には、微生物が酸素の存在しない状態で、糖類を分解してエネルギーを得る過程をいう。このような過程を経て得られた食品が発酵食品である。代表的なものとして、醤油、味噌、納豆、酒、発酵乳、チーズ等がある。
【0018】
本発明における発酵食品は上記過程を経て得られるものであり、上記代表例に限られない。
【0019】
以下、本発明に係る一実施の形態について、単細胞化工程を取り入れた醤油の製造方法の製造工程について説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る一実施例の形態である醤油の製造工程を示すフローチャートである。
【0021】
(原料処理・単細胞化)
先ず、図2及び図3を用いて原料処理(ステップS1)を行う工程を説明する。図2は大豆の原料処理を示すフローチャートである。大豆をきれいに洗い、水に浸す(ステップS10〜S11)。この浸漬工程の後に、水に浸した大豆を適当な大きさにカットする(ステップS12)。浸漬工程において、水に、後述する細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を微量添加しても良い。
【0022】
カットする理由は、原料の表面積を増やし、細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を効果的に反応させるためである。カットを行う回数が増えるにつれ、粒が小さくなり、単細胞化を行う時間は短縮化される。しかし、本発明における単細胞化は細胞壁を破壊せずに残すために行うものであるので、カットを行う回数がなるべく少ないほうが原料の細胞壁を傷つける危険性が少ないため望ましい。つまり、目的とする品質に応じてこのカットする工程は省いてもよい。
【0023】
カットしていない大豆または適当な大きさにカットした大豆を単細胞化する(ステップS13)。尚、単細胞化工程は1回又は2回以上行っても良い。大豆の実の細胞の一部又は全部の単細胞化が終わったものを蒸煮した後に冷やす(ステップS14〜S15)。以上で大豆の原料処理が完了する。尚、ステップS13の単細胞化工程の前に大豆を蒸煮して冷やす工程を入れてもよい。
【0024】
図3は小麦の原料処理を示すフローチャートである。小麦を用意して、小麦の一部又は全部を分解酵素により分解する(ステップS20〜S21)。この際、分解の前後いずれかでふすまを煎ってもよい。
【0025】
この原料処理において大豆と小麦の両方を分解酵素により単細胞化又は分解しても良いし、どちらか1つ(例えば、大豆のみ)を単細胞化又は分解しても良い。
【0026】
この細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素としては、例えば、ポリガラクツロナーゼ(polygalacturonase)、ペクチナーゼ(pectinase)等がある。しかし、発酵用原料の細胞壁を分解せずに且つ細胞間物質を選択的に分解することのできる分解酵素であれば特に制限されずに用いることができる。具体的には、例えば、Rhizopus属糸状菌から分離される酵素で、プロトペクチンを分解するプロトペクチナーゼが挙げられる。プロトペクチンは大豆の細胞間を結合している主成分である。そして、60℃の温水にもまったく溶解しない強固な植物組織である。また、単細胞化工程において、細胞壁を分解するセルラーゼは用いられない。
【0027】
次に、Bacillus属の微生物が生産するペクチナーゼを発酵用原料に添加して単細胞化する工程を具体的に説明する。ここでは大豆の実の細胞を単細胞化する例で説明する。
【0028】
ステップS12の処理において、カットされていない大豆又はカットされた大豆を水の存在下で加熱する。この加熱は、大豆に含まれるリポキシゲナーゼの作用を失活させると共に、大豆タンパクを熱変性させて人体への消化吸収性を改善し、さらに細胞間の物質を軟化させて後に実施される酵素処理を行いやすくするために実施される。
【0029】
これらの目的を効率よく達成する上で、大豆を蒸煮することが特に好ましい。大豆をカットしていない場合の蒸煮条件としては、例えば、大豆を圧力鍋等で120℃、10分間蒸煮することが好ましい。
【0030】
次に、蒸煮した大豆を所定温度に冷却した後、水及びBacillus属の微生物が生産するペクチナーゼを大豆に添加して第1混合物を得る。蒸煮した大豆は、酵素処理が実施される温度、例えば、約60℃に冷却することが好ましい。添加する水の量は、蒸煮後の大豆重量とほぼ同量とすることが好ましい。一方、ペクチナーゼの添加量は、浸漬工程前の大豆重量に対して0.05〜0.2wt%、特に0.1wt%程度とすることが望ましい。
【0031】
この第1混合物を攪拌しながら、例えば、60℃で30分間保持することにより酵素処理を実施する。Bacillus属の微生物が生産するペクチナーゼの酵素活性は60℃で最も高いことが知られている。
【0032】
尚、攪拌は、大豆細胞を破壊するような強力なものであってはならない。例えば、第1混合物中において攪拌翼を20〜30回転/分程度の速度で回転させるようなソフトな条件を採用することが好ましい。このような条件であれば、分離された大豆の単細胞を攪拌によってほぐしながら、大豆細胞に対して均一にペクチナーゼを作用させることができるので、酵素処理をスムーズに実施することができる。このような工程で、発酵用原料の大豆を単細胞化し、一部又は全部が液化された大豆を得ることができる。
【0033】
次に、ペクチナーゼの酵素作用を失活させるために、液化された大豆に熱処理を施す。例えば、約100℃で15分間、液化された大豆を加熱することが望ましい。
【0034】
(製麹)
上述の工程で処理した一部又は全部が液化された大豆と小麦を混ぜて発酵用原料混合物とし、この発酵用原料混合物に麹菌を加える(ステップS2)。このとき室温を25℃から30℃、湿度をほぼ100%に保ち麹菌を育てる。まんべんなく育つように機械等でときどき混合物をかき混ぜる。この作業を3日ほど行う。醤油づくりの麹菌として、Zygosaccharomyces rouxii 、Aspergillus oryzae、Aspergillus、sojae等がある。製麹ではこれらの菌の1種類または2種類以上を使用する。なお、麹菌はこれらにかぎられることはなく、醤油の発酵・熟成に適切な菌であれば良い。
【0035】
(塩水づくり)
ざるに塩を入れて、水槽に一晩つけておくと、約33%の濃さの塩水ができる。
【0036】
(発酵・熟成)
次に、醤油麹と塩水を混ぜて発酵タンク等に仕込む作業を「仕込み」といい、その作業により仕込まれたものを「もろみ」という。通常、もろみの発酵・熟成は1年から2年程度かけて行うが、本発明では大豆を単細胞化しているので、1年以下の発酵・熟成が可能である。しかし、目的品質に応じた醤油を得るために2年程度まで寝かせてもよい。(ステップS3)
【0037】
発酵・熟成の工程中、発酵タンクの中では、麹菌や酵母菌が働き、醤油独特の味や香りが作り出される。菌が働けるように、1週間に1回、夏は3日おきくらいに「かい」等を入れてかき混ぜる。塩は、醤油作りにじゃまな、他の菌が増えるのを防ぐ。
【0038】
(もろみをしぼる)
十分にいい味と香りが、かもし出されたもろみを布で包みそれを何段にもつんでしぼると、「生醤油」がとれる(ステップS4)。本発明では大豆を単細胞化しているため、もろみ自身の重みで醤油のかなりの部分が自然に流れ出る。その後、圧搾を行い個体(残渣)を分離する。
【0039】
(調整・検査等)
しぼり出した生醤油をそのまま出荷することもある。ここでは、雑菌及び酵素や酵母を失活させるために加熱処理をしながら、色、香り、味を整える(ステップS5)。最後に、品質の検査を行い、1.8L瓶や1.0Lペットボトルなどの容器に詰める(スッテプS6〜S7)。
【0040】
以上述べたように、原料の有効成分を多く含んだ醤油が製造されることとなる。また、分解酵素の働きにより、醤油の発酵用原料たる大豆、小麦等の多くの部分を分解することが可能となるため、残渣の量も少なくなり、従来の醤油の製造方法と比べて廃棄物の量が減少する。また、醤油や味噌の原料である大豆の単細胞化をすることにより発酵・熟成時間の短縮ができる。
【0041】
上述の実施例では、原料として大豆と小麦を使用した例で説明したが、本発明に係る醤油はこれに限られない。例えば、原料としてふすま(小麦をひいたときに出る皮くず)を使用する場合がある。
【0042】
以下、醤油の種類の一例を示す。
しろ醤油:原料は小麦がほとんどで、大豆が少量使われる。
たまり醤油:原料は大豆がほとんどで、極めて少量の小麦が使われる。
こいくち醤油:原料は大豆・小麦50%が使われる。塩分が16〜18%である。
うすくち醤油:原料はこいくち醤油と同じ。塩分はこいくち醤油より1%ほど高い(約19%ぐらい)。
さいしこみ醤油:原料はこいくち醤油と同じ。塩水のかわりに火入れをしていない生揚げ醤油を使う。
【0043】
その他、醤油の種類としては減塩醤油、うす塩醤油、丸大豆醤油、だし醤油、白だし等がある。本発明に係る醤油は、大豆などの主原料等を単細胞化する工程を含んで作られるものであり、上記例に限定されない。
【0044】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態では、単細胞化工程を含む味噌の製造工程について説明する。ここでは、主原料として米、大豆を使用した米麹を使った米味噌の場合で説明する。他に、豆麹を使った豆味噌、麦麹を使った麦味噌等がある。醤油の製造方法の製造工程で説明したものと同様のステップについては同じ符号を付し説明を省略する。
【0045】
図4は、本発明に係る一実施例の形態である味噌の製造工程を示すフローチャートである。
【0046】
(原料処理)
1.米麹づくり
先ず、図5及び図6を用いて原料処理(ステップS30)を行う工程を説明する。図5は米の原料処理を示すフローチャートである。米を洗い、たっぷりと水に浸しておく(ステップS40〜S41)。その後、秋と春は8〜10時間、冬は一昼夜、夏は3〜4時間おく。水を吸わせた米を10〜20分そのままにして水を良くきる。米を蒸すのは約1時間である。
【0047】
蒸しあがった米をむしろに広げて35℃くらいにさまし、麹菌をまんべんなく、手早く混ぜる。30℃くらいで保温して麹菌を育てる。一昼夜もすると、米全体に白い花が咲いたようになって、米麹ができる。ここでは単細胞化工程(分解酵素による分解)を行わない例で説明したが、本発明の発酵食品において、主原料を複数使用する場合、全ての原料に単細胞化又は分解を施さなくてもよい。目的とする品質等に合わせて単細胞化又は分解する対象原料を一部又は全部とすることが可能である。
【0048】
味噌づくりの麹菌として、Aspergillus oryzae等がある。プロテアーゼ、αーアミラーゼ、グルコアミラーゼ、酸性カルボキシペプチダーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ等の酵素の少なくとも1つを生産する他の麹菌でも良い。そして、麹づくりでは麹菌の1種類または2種類以上を使用する。即ち、味噌の発酵・熟成に適切な麹菌を単体又は組み合わせて使用しても良い。
【0049】
2.図6の大豆の原料処理については図2に示す醤油の製造工程の場合と同じなので説明を省略する。
【0050】
(仕込み)
一部または全部が単細胞化された大豆と米麹、塩を混ぜ合わせる(ステップS31)。塩は全体の11%くらいになるように混ぜる。ここで従来は機械で原料を細かくつぶしていたが、単細胞化してあるためその必要はない。そして、混ぜ合わせた原料を大きな桶等にいれて、発酵・熟成させる(ステップS32)。通常、春に仕込んで次の年に取り出すまで仕込み蔵で寝かせる。味噌の種類によって、寝かせる時間が違う。
【0051】
春頃は比較的低い温度で、麹菌が大豆のたんぱく質や脂肪分、米のデンプンを分解する。夏ごろになると、微生物の活動が盛んになり温度が上がる。塩に強い酵母菌などが働き、分解されてできたアミノ酸や糖分によって、味噌の味や香りができる。秋ごろになると、味噌の香りや味を整えて完成させる時期となる。おもに乳酸菌が活躍する。温度は高すぎたり低すぎたりしない。
【0052】
本発明では、単細胞化を行っているため、温度、湿度等を管理することにより季節に関係なく短い期間で完成させることが可能である。
【0053】
(切り返し)
桶の中には、味噌を作り出す微生物が生きているので、時々桶の底まで空気を入れかえる「切り返し」を行い、呼吸できるようにしてやる。微生物の活発な夏に行う。
【0054】
(検査等)
最後に、うまみ成分や塩分、甘み(糖度)などの品質の検査を行い、袋や容器に味噌を詰める(スッテプS33〜S34)。
【0055】
以上述べたように、原料の有効成分をあますことなく含んだ味噌が製造されることとなる。また、分解酵素の働きにより、味噌の発酵用原料たる大豆等の細胞の一部又は全部を分解することで、発酵・熟成時間の短縮ができる。
【0056】
その他、単細胞化した細胞の特徴として、▲1▼大豆等の植物の豊富な栄養分を有効に利用できるため、体に良いこと、▲2▼酸化、褐変し難いこと、▲3▼そのまま食すとにがみやえぐみがある原料もにがみやえぐみが少なくなること及び▲4▼原料の色、香りが残ることが挙げられる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る発酵食品の製造方法によれば、原料の細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な酵素を添加し作用させ、発酵用原料を単細胞化する単細胞化工程を加することにより、原料となる植物の有効成分をあますことなく有効に利用することを可能とすると共に、圧搾等の工程から出ていた大量の残渣を極力少なくし廃棄物を減らすことにより環境に配慮した(環境にやさしい)発酵食品に製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例の形態である醤油の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る一実施例の形態である醤油の製造工程における大豆の原料処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る一実施例の形態である醤油の製造工程における小麦の原料処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る一実施例の形態である味噌の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る一実施例の形態である味噌の製造工程における米の原料処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る一実施例の形態である味噌の製造工程における大豆の原料処理を示すフローチャートである。

Claims (5)

  1. 細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を用いて発酵用原料の少なくとも1つを単細胞化する単細胞化工程と、発酵用原料の少なくとも1つが単細胞化された発酵用原料混合物に麹菌を添加し、発酵・熟成させる発酵・熟成工程とを含むことを特徴とする発酵食品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の発酵食品の製造方法において、前記単細胞化工程で使用する分解酵素は、ペクチナーゼ、プロトペクチナーゼ、ポリガラクツロナーゼの少なくとも1つであることを特徴とする発酵食品の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の発酵食品の製造方法において、前記単細胞化工程を1回または2回以上行うことを特徴とする発酵食品の製造方法。
  4. 原料となる大豆と小麦等とを処理する原料処理工程と、処理された大豆と小麦等とに麹菌を加え醤油麹をつくる製麹工程と、この醤油麹に塩水を混ぜて発酵・熟成させる発酵・熟成工程とを少なくとも含む醤油の製造方法において、
    前記原料処理工程は、大豆を洗浄し水に浸す浸漬工程と、
    この浸漬した大豆を蒸煮する蒸煮工程と、
    蒸煮した大豆を所定温度に冷却する冷却工程と、
    この冷却した大豆に、水及び細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を添加して混合物をつくる混合物製造工程と、
    この混合物を撹拌し、酵素処理を実施する酵素処理工程と、
    前記細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を失活させるために、前記混合物に熱処理を施す熱処理工程と、を含むことを特徴とする醤油の製造方法。
  5. 原料となる大豆と米等とを処理する原料処理工程と、処理された大豆と米等によりつくられた米麹等と塩とを混ぜ合わせ混合原料をつくる混合原料製造工程と、当該混合原料を桶等に入れ、発酵・熟成させる発酵・熟成工程とを少なくとも含む味噌の製造方法において、
    前記原料処理工程は、大豆を洗浄し水に浸す浸漬工程と、
    この浸漬した大豆を蒸煮する蒸煮工程と、
    蒸煮した大豆を所定温度に冷却する冷却工程と、
    この冷却した大豆に、水及び細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を添加して混合物をつくる混合物製造工程と、
    この混合物を撹拌し、酵素処理を実施する酵素処理工程と、
    前記細胞壁を分解せず且つ細胞間物質を選択的に分解することが可能な分解酵素を失活させるために、前記混合物に熱処理を施す熱処理工程と、を含むことを特徴とする味噌の製造方法。
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