JP2004014674A - 半導体構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一に転位密度を減少させた高純度の半導体の結晶を、従来より容易に製造できるようにする。
【解決手段】サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板101上に形成された低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層102と、緩衝層102上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層103と、下部結晶層103上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部104aを備えた中間層104と、中間層104上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる上部結晶層105とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板101上に形成された低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層102と、緩衝層102上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層103と、下部結晶層103上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部104aを備えた中間層104と、中間層104上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる上部結晶層105とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物半導体などの結晶層を有する半導体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体は、遠赤外〜紫外領域の発光デバイスや高温・高出力・高周波電子デバイスなど、多岐にわたって用いられている。また、窒化物半導体は、砒素や燐を含まないことから耐環境性に優れた特長も持ち合わせる。
このように優れた特性を有する窒化物半導体であるが、結晶成長を行う際の基板となる材料との格子不整合が大きく、通常の結晶成長方法では、109から1010cm−2のオーダーで貫通転位が存在する。
【0003】
この転位は、作製したデバイスの特性を劣化させることが良く知られている。例えば、レーザーの短寿命化や、デバイスのリーク電流の増大・低耐圧化などである。また、転位の存在によって、不純物の拡散あるいは偏析が促進されることもある。したがって、窒化物半導体中の転位密度を減少させることは、窒化物半導体を用いたデバイス特性の向上や、転位の影響によりこれまで達成できなかったデバイスの実現、結晶構造作製の制御性を高める上で、非常に重要な技術である。
【0004】
結晶成長した窒化物半導体中の転位密度を低減する技術として、つぎに示すような手法が提案されている。
まず、ELO法やELOG法と呼ばれる製造方法がある(文献1:A.Usui,H.Sunakawa,A.Sakai,and a.Yamaguchi,Jpn.J.Appl.Phys.,Part 236,L899(1997)、文献2:O.Nam,M.Bremser,T.S.Zheleva,and R.F.Davis,Appl.Phys.Lett.71,2638(1997)、文献3:D.Kapolnek,S.Keller,R.Vetury,R.D.Underwood,P.Kozodoy,S.P.DenBaars,and U.K.Mishra.Appl.Phys.Lett.71,1204(1997))。これは、SiO2,SiNx,Wなどの金属や絶縁材料からなるストライプ状のマスクを用いた選択成長により、横方向成長を促進させて転位の伝播方向を曲げ、ある線上に集結させる方法である。
【0005】
また、ストライプ状の基板上に成長を行い、ストライプ部の頂上部からの横方向成長を促進させる、あるいは、溝部分の斜め成長部を利用することにより、転位の伝播方向を曲げ、ある一点に集結させて窒化物半導体を形成する方法もある(文献4:T.S.Zheleva,S.A.Smith,D.B.Thomson,T.Gehrke,K.J.Linthicum,P.Rajagopal,E.Carlson,W.M.Ashmawi,and R.F.Davis,MRS Internet J.Nitride Semicond.Res.4S1,G3.38.(1999))。
【0006】
また、基板表面あるいは結晶成長中に成長を中断した面にSi原子を供給し、付着したSiの界面不活性化(アンチサーファクタント)効果を利用し、転位の伝播方向を曲げ、窒化物半導体結晶の成長面に転位網を作製する方法がある(文献5:S.Tanaka,M.Takeuchi,and Y.Aoyagi,Jpn.J.Appl.Phys.39,L831(2000)、文献6:T.Wang,Y.Morishima,N.Naoi,and S.Sakai,J.Crystal Growth 213,188(2000))。
【0007】
また、高温(一般に1000℃から1100℃)の堆積と、比較的低温(400℃から950℃)の堆積とを繰り返して数層形成することで、結晶成長した窒化物半導体の転位の伝播を抑える方法が提案されている(文献7:M.Iwaya,T.Takeuchi,S.Yamaguchi,C.Wetzel,H.Amano,and I.Akasaki,Jpm.J.Appl.Phys.Part 237,L316(1998)、文献8:M.Benamara,Z.L.−Weber,S.Kellermann,W.Swider,J.Washburn,J.Mazur,E.D.B.−Courchesne,J.Crystal Growth 218,447(2000))。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したいずれの方法も、107cm−2まで転位密度を低減することができるが、作製した結晶あるいは作製方法に問題があった。
例えば、文献1,2,3に示された方法では、転位をある一部分に集結させる方法であるため、転位密度の疎密がストライプパターンと同周期で発生する。このため、この方法では、転位密度の低い領域は限られており、得られた窒化物半導体の結晶では多くの利用できない領域、つまり無駄が発生し、また、デバイス構造も制限されるため、産業上好ましくない。これは、文献4に示された方法でも同様である。
【0009】
一方、文献5,6に示された方法では、上述した方法とは異なり、基板上で平均的に転位密度を減少することができる。この方法では、Si原子を1モノレイヤー程度供給することで、アンチサーファクタント効果を出している。なお、アンモニアを同時供給する場合もある。Siは、半導体表面で化学的に結合するが、化学量論的組成とはならない。また、Si−Si結合も多量に形成されるため、高温成長中Siが結晶成長方向に拡散・偏析してしまう。このために、結晶中にSiが不純物として取り込まれる。Siは、窒化物半導体中ではn型の不純物として作用する働きがあり、作製した半導体結晶には高濃度のn型領域が含まれることになる。
【0010】
このような結晶を利用してデバイスを作製する場合、まず、p形の不純物層を作製することが困難となる。また、n形不純物層の影響を無くすために厚膜成長しなければならず、加えて、厚膜成長する際に結晶が割れてクラックが入るという問題が発生する。また、高濃度のn形不純物層は、高周波(電子や正孔を高速にやり取りする)デバイスに不適切であるなど、数々の問題がある。
【0011】
また、文献7,8に示された方法では螺旋転位は減少するが、刃状転位が増加する問題がある。また、結晶成長中に温度の昇降温を繰り返さなければならず、製造するときの時間のロスが大きく、産業上好ましくない。また、結晶構造が複雑になるためクラックが発生するという問題が発生する。
以上に説明したように、従来では、半導体構造の一部を構成する例えば窒化ガリウムなどから構成された半導体層を、均一に転位の少ない状態の結晶状態とすることが容易ではなかった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、均一に転位密度を減少させた高純度の半導体の結晶を、従来より容易に製造できるようにすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る半導体構造は、結晶構造を有する基板と、この基板の上に形成された絶縁体からなり一部に開口部を備えた中間層と、この中間の層の上に形成された半導体からなる結晶層とを備えたものであり、結晶層は、開口部に露出した基板の表面より結晶成長したものである。
この半導体構造では、結晶層は、中間層の開口部に露出した基板表面より結晶成長し、中間層上では横方向に成長することで形成されたものとなっている。
【0014】
上記半導体構造において、結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである。
【0015】
また、本発明の他の形態にかかる半導体構造は、結晶構造を有する基板と、この基板上に形成された半導体の結晶からなる下部結晶層と、この下部結晶層の上に形成された絶縁体からなり一部に開口部を備えた中間層と、この中間の層の上に形成された半導体からなる上部結晶層とを備えたものであり、上部結晶層は、開口部に露出した下部結晶層の表面より結晶成長したものである。
この半導体構造では、上部結晶層は、中間層の開口部に露出した下部結晶層の表面より結晶成長し、中間層上では横方向に成長することで形成されたものとなっている。
【0016】
上記半導体構造において、下部結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである。また、上部結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである。
【0017】
上記半導体構造において、基板は、シリコン,酸化アルミニウム,炭化シリコンの何れかから構成されたものであればよく、また、中間層は、Si3N4,SiO2,Al2O3の何れかから構成されたものであればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
<実施の形態1>
はじめに、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(Al2O3:酸化アルミニウムの結晶)からなる基板101上と、基板101上に低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層102と、緩衝層102上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層103と、下部結晶層103上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部104aを有する中間層104と、中間層104上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる上部結晶層105とを備えている。なお、開口部104aは、1つに限らず、複数あってもよい。
【0019】
中間層104は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.25nm程度に形成した。なお、窒化ガリウムからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層105は、中間層104の開口部104a内に露出している下部結晶層103の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層104を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件や、中間層104の上に結晶成長するGaNの成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0020】
以下、結晶成長させたGaNからなる上部結晶層105の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果と、Siなどの不純物深さ方向濃度プロファイルを調べるための2次イオンマススペクトロスコーピー(SIMS)による測定結果とを示す。
図2は、Si3N4からなる中間層104の膜厚を変えた時の、上部結晶層105のGaN(10−10)からのX線非対称反射スペクトルを示す特性図である。図2から、Si3N4からなる中間層104の膜厚の増加とともに、ピークの反値幅(FWHM)が減少していくことが分かる。
【0021】
図3は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層105のGaN(10−10)からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。Si3N4からなる中間層104を形成しない場合、GaNのFWHMは0.22程度であり、このときの転位密度は1×109cm−2程度である。これに対し、Si3N4からなる中間層104を膜厚0.2nmに形成した場合、上部結晶層105のFWHMは0.057程度であり、このときの転位密度は1×108cm−2となり大幅に減少している。また、Si3N4からなる中間層104を膜厚0.5nmに形成した場合、上部結晶層105のFWHMは0.03程度であり、このときの転位密度は3×107cm−2となりより減少している。
【0022】
図4は、従来技術(文献5,6)に示された方法によって作製したGaNの結晶層中のSiのSIMSプロファイルを示す特性図である。図4中において、「Si中間層」により示すピークの部分は、1021個程度Siが存在する深さが約5μm程度のSiアンチサーファクタント層である。この層は本来1モノレーヤー程度の厚さであるが、図4に示すように、下地基板との結合が弱いため、1〜2μmにわたって1019cm−3のオーダーで再成長層に拡散あるいは偏析している。この層は、高濃度のn形不純物層となるため問題となる。
【0023】
図5に、図1に示すように、Si3N4からなり一部に開口部104aを備えた中間層104を挿入し、この上に結晶成長して作製したGaNからなる上部結晶層105の中のSiのSIMSプロファイルを示す。図4の中において、深さ(Depth)が約3.8μmの位置に1021個程度Siが存在するピークとして示される部分が、中間層104を示す。図5に示されるスペクトルより明らかなように、上部結晶層105へのSiの拡散あるいは偏析は見られない。上部結晶層105の領域中に示されるSiの不純物濃度は、SIMS分析の測定限界である。
【0024】
このように、図1に示す半導体構造としたことにより、中間層104の上に結晶成長させたGaN結晶からなる上部結晶層105は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層104は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層104よりSi等の不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。
【0025】
例えば、文献5,6に示されている従来の方法では、電子濃度と電子の移動度は、1×1018cm−3,170cm2/Vsであったが、図1に示す半導体構造によれば、電子濃度と電子の移動度は、各々5×1017cm−3,300cm2/Vsとなり、低電子濃度においても良好な性質を示していることが分かる。また、前述したように、上部結晶層105は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図1に示す半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できるものとなっている。
【0026】
以下、本実施の形態における半導体構造を用いた半導体装置の構成例について説明する。図1に示す半導体構造は、例えば半導体レーザに適用することができる。図1に示す上部結晶層105上に、まず、n形のGaN電極引き出し層,n形のGaAlN層,n形のGaN層,GaInN活性層,p形のGaN層,p形のGaAlN層,p形のGaN電極形成層を順次結晶成長させ、GaN電極引き出し層が露出するまで一部をエッチング除去し、露出したn形のGaN電極引き出し層にn形電極を形成し、p型のGaN電極形成層にp形電極を形成することで、GaInN活性層よりレーザ発振する半導体レーザとすることができる。なお、n形の層は、不純物としてSiを添加すればよく、p形の層は、不純物としてMgを添加すればよい。
【0027】
また、図1に示す半導体構造は、pnpもしくはnpn構造のトランジスタに適用することもできる。例えば、図1に示す上部結晶層105上に、まず、p形のGaNコレクタ電極引き出し層,p形のGaAlNコレクタ層,n形のGaNベース層,p形のGaAlNエミッタ層,p形のGaNエミッタ電極形成層を順次結晶成長させ、コレクタ電極引き出し層およびベース層の各々が露出するまで一部をエッチング除去し、露出させたコレクタ電極引き出し層にコレクタ電極を形成し、露出させたベース層にベース電極を形成し、エミッタ電極形成層にエミッタ電極を形成することで、pnp構造のトランジスタとすることができる。
【0028】
<実施の形態2>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図6は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板601上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層602と、緩衝層602上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層603と、下部結晶層603上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部604aを備えた中間層604と、中間層604上に高温で気相成長させた窒化アルミニウム(AlN)からなる上部結晶層605とを備えている。
【0029】
中間層604は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、窒化ガリウムからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。また、AlNからなる上部結晶層605も、よく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層605は、中間層604の開口部604a内に露出している下部結晶層603の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層604を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層604の上に結晶成長する上部結晶層605の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0030】
以下、結晶成長させたAlNからなる上部結晶層605の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図7は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層605からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.49程度であり、このときの転位密度は8×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0031】
このように、図6に示す半導体構造としたことにより、中間層604の上に結晶成長させたAlN結晶からなる上部結晶層605は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層604は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層604よりSi等の不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層605は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図6に示す半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化アルミニウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0032】
<実施の形態3>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図8は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板801上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層802と、緩衝層802上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる結晶層803と、結晶層803上に形成されたAlNからなる下部結晶層804と、下部結晶層804上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部805aを備えた中間層805と、中間層805上に高温で気相成長させたGaNからなる上部結晶層806とを備えている。
【0033】
中間層805は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、窒化ガリウムからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。また、AlNからなる下部結晶層804も、よく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層806は、中間層805の開口部805a内に露出している下部結晶層804の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層805を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層805の上に結晶成長する上部結晶層806の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0034】
以下、結晶成長させたGaNからなる上部結晶層806の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図9は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層806からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.34程度であり、このときの転位密度は4×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0035】
このように、図8に示す半導体構造としたことにより、中間層805の上に結晶成長させたGaN結晶からなる上部結晶層806は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層805は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層805よりSi等の不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層806は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図8に示す半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0036】
<実施の形態4>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図10は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板1001上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層1002と、緩衝層1002上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる結晶層1003と、結晶層1003上に形成されたAlNからなる下部結晶層1004と、下部結晶層1004上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部1005aを備えた中間層1005と、中間層1005上に高温で気相成長させたAlNからなる上部結晶層1006とを備えている。
【0037】
中間層1005は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、窒化ガリウムからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。また、AlNからなる下部結晶層1004及び上部結晶層1006も、よく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層1006は、中間層1005の開口部1005a内に露出している下部結晶層1004の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層1005を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層1005の上に結晶成長する上部結晶層1006の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0038】
以下、結晶成長させたAlNからなる上部結晶層1006の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図11は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1006からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.42程度であり、このときの転位密度は6×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0039】
このように、図10に示す半導体構造としたことにより、中間層1005の上に結晶成長させたAlN結晶からなる上部結晶層1006は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1005は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1005よりSiなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層1006は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図10の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化アルミニウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0040】
<実施の形態5>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図12は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板1201上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層1202と、緩衝層1202上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層1203と、下部結晶層1203上に形成されたSiO2からなり一部に開口部1204aを備えた中間層1204と、中間層1204上に高温で気相成長させたGaNからなる上部結晶層1205とを備えている。
【0041】
中間層1204は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.2nm程度に形成した。なお、GaNからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層1205は、中間層1204の開口部1204a内に露出している下部結晶層1203の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、SiO2を堆積して中間層1204を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、SiO2の堆積条件、及び中間層1204の上に結晶成長する上部結晶層1205の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0042】
以下、結晶成長させたGaNからなる上部結晶層1205の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図13は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1205からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.3程度であり、このときの転位密度は3×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0043】
このように、図12に示す半導体構造としたことにより、中間層1204の上に結晶成長させたGaN結晶からなる上部結晶層1205は、転位密度が107cm− 2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1204は、スパッタ法などによりSiO2を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1204よりSiやOなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層1205は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図12の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0044】
<実施の形態6>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図14は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板1401上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層1402と、緩衝層1402上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層1403と、下部結晶層1403上に形成されたAl2O3からなり一部に開口部1404aを備えた中間層1404と、中間層1404上に高温で気相成長させたGaNからなる上部結晶層1405とを備えている。
【0045】
中間層1404は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚1.5nm程度に形成した。この場合、中間層1404を構成するAl2O3は、結晶構造とはならない。なお、中間層1404は、他の気相成長法により形成してもよく、例えば、有機金属気相成長法により形成すれば、結晶構造のAl2O3から構成されることになる。
なお、GaNからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層1405は、中間層1404の開口部1404a内に露出している下部結晶層1403の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Al2O3を堆積して中間層1404を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Al2O3の堆積条件、及び中間層1404の上に結晶成長する上部結晶層1405の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0046】
以下、結晶成長させたGaNからなる上部結晶層1405の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図15は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1405からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.5程度であり、このときの転位密度は9×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0047】
このように、図14に示す半導体構造としたことにより、中間層1404の上に結晶成長させたGaN結晶からなる上部結晶層1405は、転位密度が107cm− 2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1404は、スパッタ法などによりAl2O3を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1404より酸素などの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層1405は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図14の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0048】
<実施の形態7>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図16は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板1601上に、Si3N4からなり一部に開口部1602aを備えた中間層1602と、中間層1602上に高温で気相成長させたGaNからなる結晶層1603とを備えている。
【0049】
中間層1602は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、GaNからなる結晶層1603は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。結晶層1603は、中間層1602の開口部1602a内に露出している基板1601の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層1602を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層1602の上に結晶成長する結晶層1603の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0050】
以下、結晶成長させたGaNからなる結晶層1603の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図17は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層1603からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.5程度であり、このときの転位密度は9×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0051】
このように、図16に示す半導体構造としたことにより、中間層1602の上に結晶成長させたGaN結晶からなる結晶層1603は、転位密度が107cm− 2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1602は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1602よりSiなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、結晶層1603は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図16の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0052】
<実施の形態8>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図18は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、炭化シリコン(SiC)の結晶からなる基板1801上に、Si3N4からなり一部に開口部1802aを備えた中間層1802と、中間層1802上に高温で気相成長させたGaNからなる結晶層1803とを備えている。
【0053】
中間層1802は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、GaNからなる結晶層1803は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。結晶層1803は、中間層1802の開口部1802a内に露出している基板1801の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層1802を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層1802の上に結晶成長する結晶層1803の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0054】
以下、結晶成長させたGaNからなる結晶層1803の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図19は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層1803からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.5程度であり、このときの転位密度は9×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0055】
このように、図18に示す半導体構造としたことにより、中間層1802の上に結晶成長させたGaN結晶からなる結晶層1803は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1802は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1802よりSiなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、結晶層1803は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図18の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0056】
<実施の形態9>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図20は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、シリコンの結晶からなる基板2001上に、Si3N4からなり一部に開口部2002aを備えた中間層2002と、中間層2002上に高温で気相成長させたGaNからなる結晶層2003とを備えている。
【0057】
中間層2002は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、GaNからなる結晶層2003は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。結晶層2003は、中間層2002の開口部2002a内に露出している基板2001の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層2002を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層2002の上に結晶成長する結晶層2003の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0058】
以下、結晶成長させたGaNからなる結晶層2003の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図21は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層2003からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.38程度であり、このときの転位密度は5×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0059】
このように、図20に示す半導体構造としたことにより、中間層2002の上に結晶成長させたGaN結晶からなる結晶層2003は、転位密度が107cm− 2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層2002は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層2002よりSiなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、結晶層2003は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図20の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0060】
<実施の形態10>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図22は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板2201上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層2202と、緩衝層2202上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層2203と、下部結晶層2203上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部2204aを備えた中間層2204と、中間層2204上に高温で気相成長させたインジウムとガリウムと窒素とからなる三元系の化合物半導体(InGaN)の結晶からなる上部結晶層2205とを備えている。
【0061】
中間層2204は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、GaNからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。また、InGaNからなる上部結晶層2205も、よく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層2205は、中間層2204の開口部2204a内に露出している下部結晶層2203の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層2204を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層2204の上に結晶成長する上部結晶層2205の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0062】
以下、結晶成長させたInGaNからなる上部結晶層2205の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図23は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層2205からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.5程度であり、このときの転位密度は9×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0063】
このように、図22に示す半導体構造としたことにより、中間層2204の上に結晶成長させたInGaNの結晶からなる上部結晶層2205は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層2204は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層2204よりSi等の不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層2205は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図22に示す半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度のInGaNの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0064】
以上説明したように、本発明では、例えば窒化物半導体などの結晶基板上に、絶縁体からなる中間層を開口部が形成された状態、言い換えると被覆率が1よりも小さい値に中間層を形成し、これらを成長基板として半導体の層を結晶成長した。絶縁体からなる中間層の上には、例えば有機金属気相法により結晶層を形成しているとき、中間層上には原料の付着係数が小さいため結晶の核の形成が起こらず、結晶成長が起きない。結晶成長は、中間層の設けた開口部に露出した中間層下の層のみから起こるようにした。
【0065】
ここで、結晶成長をしようとする面は、大部分が中間層により被覆され、結晶は横方向にも成長する。この時、転位の伝播方向が曲げられ、結晶成長方向に転位は伝播しない。このために、中間層上に成長する結晶層においては、転位密度が減少する。また、中間層上に形成する結晶層は、必ずしも中間層下の層における結晶の情報を引き継がない。このため、本発明の構成では、中間層を形成しておく基板を選ばない。
【0066】
ところで、中間層の上に窒化ガリウムなどを結晶成長する場合、有機金属気相成長法によれば、基板(中間層)には、900〜1100℃もの高温が加えられる。ここで、実質的に化学量論的組成の結合が非常に強い絶縁体から構成された中間層を用いるようにすれば、高温である結晶成長温度においてもこれらが分解することが起きにくく、中間層を構成する物質(原子)が他の結晶層に拡散・偏析することが起きにくい。
【0067】
残留不純物が少なく転位密度が低い結晶の形成が実現したことにより、本発明の半導体構造では、結晶層の電気的特性も向上している。また、基板全体で均一に転位密度を減少することが可能であるため、産業上非常に有効な方法である。また、転位密度の減少にともない結晶性の向上も見込まれるため、デバイス特性の向上や新デバイスの実現など多岐にわたり波及効果が期待される。
【0068】
なお、前述した実施の形態では、中間層に、Si3N4,SiO2,Al2O3のいずれかを用いるようにしたが、これに限るものではない。結晶成長をさせようとする物質の付着係数が小さく、結晶の核の形成が起きにくい絶縁体であれば、中間層に用いることが可能である。また、あまり高温にすることなく所望の半導体層を形成できる場合、中間層が完全に化学量論的組成となっている必要はない。
また、前述では、結晶層(下部結晶層,上部結晶層)として、窒化ガリウムと窒化アルミニウムの場合を例にして説明したが、これに限るものではなく、窒化インジウムや窒化ホウ素の結晶層や、これらの3元系混晶,4元系混晶,5元系混晶の結晶層を形成する場合についても同様である。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、結晶層は、中間層の開口部に露出した基板表面より結晶成長し、中間層上では横方向に成長することで形成されたものとなっているので、半導体構造が、均一に転位密度を減少させた高純度の半導体の結晶を、従来より容易に製造できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図2】Si3N4からなる中間層104の膜厚を変えた時の上部結晶層105であるGaN(10−10)からのX線非対称反射スペクトルを示す特性図である。
【図3】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層105のGaN(10−10)からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図4】従来技術による作製方法によって作製したGaN中のSiのSIMSプロファイルである。
【図5】Si3N4からなる中間層を挿入して作製したGaN中のSiのSIMSプロファイルである。
【図6】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図7】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層605からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図8】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図9】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層806からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図10】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図11】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1006からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図12】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図13】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1205からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図14】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図15】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1405からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図16】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図17】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層1603からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図18】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図19】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層1803からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図20】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図21】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層2003からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図22】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図23】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層2205からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【符号の説明】
101…基板、102…緩衝層、103…下部結晶層、104…中間層、104a…開口部、105…上部結晶層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物半導体などの結晶層を有する半導体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体は、遠赤外〜紫外領域の発光デバイスや高温・高出力・高周波電子デバイスなど、多岐にわたって用いられている。また、窒化物半導体は、砒素や燐を含まないことから耐環境性に優れた特長も持ち合わせる。
このように優れた特性を有する窒化物半導体であるが、結晶成長を行う際の基板となる材料との格子不整合が大きく、通常の結晶成長方法では、109から1010cm−2のオーダーで貫通転位が存在する。
【0003】
この転位は、作製したデバイスの特性を劣化させることが良く知られている。例えば、レーザーの短寿命化や、デバイスのリーク電流の増大・低耐圧化などである。また、転位の存在によって、不純物の拡散あるいは偏析が促進されることもある。したがって、窒化物半導体中の転位密度を減少させることは、窒化物半導体を用いたデバイス特性の向上や、転位の影響によりこれまで達成できなかったデバイスの実現、結晶構造作製の制御性を高める上で、非常に重要な技術である。
【0004】
結晶成長した窒化物半導体中の転位密度を低減する技術として、つぎに示すような手法が提案されている。
まず、ELO法やELOG法と呼ばれる製造方法がある(文献1:A.Usui,H.Sunakawa,A.Sakai,and a.Yamaguchi,Jpn.J.Appl.Phys.,Part 236,L899(1997)、文献2:O.Nam,M.Bremser,T.S.Zheleva,and R.F.Davis,Appl.Phys.Lett.71,2638(1997)、文献3:D.Kapolnek,S.Keller,R.Vetury,R.D.Underwood,P.Kozodoy,S.P.DenBaars,and U.K.Mishra.Appl.Phys.Lett.71,1204(1997))。これは、SiO2,SiNx,Wなどの金属や絶縁材料からなるストライプ状のマスクを用いた選択成長により、横方向成長を促進させて転位の伝播方向を曲げ、ある線上に集結させる方法である。
【0005】
また、ストライプ状の基板上に成長を行い、ストライプ部の頂上部からの横方向成長を促進させる、あるいは、溝部分の斜め成長部を利用することにより、転位の伝播方向を曲げ、ある一点に集結させて窒化物半導体を形成する方法もある(文献4:T.S.Zheleva,S.A.Smith,D.B.Thomson,T.Gehrke,K.J.Linthicum,P.Rajagopal,E.Carlson,W.M.Ashmawi,and R.F.Davis,MRS Internet J.Nitride Semicond.Res.4S1,G3.38.(1999))。
【0006】
また、基板表面あるいは結晶成長中に成長を中断した面にSi原子を供給し、付着したSiの界面不活性化(アンチサーファクタント)効果を利用し、転位の伝播方向を曲げ、窒化物半導体結晶の成長面に転位網を作製する方法がある(文献5:S.Tanaka,M.Takeuchi,and Y.Aoyagi,Jpn.J.Appl.Phys.39,L831(2000)、文献6:T.Wang,Y.Morishima,N.Naoi,and S.Sakai,J.Crystal Growth 213,188(2000))。
【0007】
また、高温(一般に1000℃から1100℃)の堆積と、比較的低温(400℃から950℃)の堆積とを繰り返して数層形成することで、結晶成長した窒化物半導体の転位の伝播を抑える方法が提案されている(文献7:M.Iwaya,T.Takeuchi,S.Yamaguchi,C.Wetzel,H.Amano,and I.Akasaki,Jpm.J.Appl.Phys.Part 237,L316(1998)、文献8:M.Benamara,Z.L.−Weber,S.Kellermann,W.Swider,J.Washburn,J.Mazur,E.D.B.−Courchesne,J.Crystal Growth 218,447(2000))。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したいずれの方法も、107cm−2まで転位密度を低減することができるが、作製した結晶あるいは作製方法に問題があった。
例えば、文献1,2,3に示された方法では、転位をある一部分に集結させる方法であるため、転位密度の疎密がストライプパターンと同周期で発生する。このため、この方法では、転位密度の低い領域は限られており、得られた窒化物半導体の結晶では多くの利用できない領域、つまり無駄が発生し、また、デバイス構造も制限されるため、産業上好ましくない。これは、文献4に示された方法でも同様である。
【0009】
一方、文献5,6に示された方法では、上述した方法とは異なり、基板上で平均的に転位密度を減少することができる。この方法では、Si原子を1モノレイヤー程度供給することで、アンチサーファクタント効果を出している。なお、アンモニアを同時供給する場合もある。Siは、半導体表面で化学的に結合するが、化学量論的組成とはならない。また、Si−Si結合も多量に形成されるため、高温成長中Siが結晶成長方向に拡散・偏析してしまう。このために、結晶中にSiが不純物として取り込まれる。Siは、窒化物半導体中ではn型の不純物として作用する働きがあり、作製した半導体結晶には高濃度のn型領域が含まれることになる。
【0010】
このような結晶を利用してデバイスを作製する場合、まず、p形の不純物層を作製することが困難となる。また、n形不純物層の影響を無くすために厚膜成長しなければならず、加えて、厚膜成長する際に結晶が割れてクラックが入るという問題が発生する。また、高濃度のn形不純物層は、高周波(電子や正孔を高速にやり取りする)デバイスに不適切であるなど、数々の問題がある。
【0011】
また、文献7,8に示された方法では螺旋転位は減少するが、刃状転位が増加する問題がある。また、結晶成長中に温度の昇降温を繰り返さなければならず、製造するときの時間のロスが大きく、産業上好ましくない。また、結晶構造が複雑になるためクラックが発生するという問題が発生する。
以上に説明したように、従来では、半導体構造の一部を構成する例えば窒化ガリウムなどから構成された半導体層を、均一に転位の少ない状態の結晶状態とすることが容易ではなかった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、均一に転位密度を減少させた高純度の半導体の結晶を、従来より容易に製造できるようにすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る半導体構造は、結晶構造を有する基板と、この基板の上に形成された絶縁体からなり一部に開口部を備えた中間層と、この中間の層の上に形成された半導体からなる結晶層とを備えたものであり、結晶層は、開口部に露出した基板の表面より結晶成長したものである。
この半導体構造では、結晶層は、中間層の開口部に露出した基板表面より結晶成長し、中間層上では横方向に成長することで形成されたものとなっている。
【0014】
上記半導体構造において、結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである。
【0015】
また、本発明の他の形態にかかる半導体構造は、結晶構造を有する基板と、この基板上に形成された半導体の結晶からなる下部結晶層と、この下部結晶層の上に形成された絶縁体からなり一部に開口部を備えた中間層と、この中間の層の上に形成された半導体からなる上部結晶層とを備えたものであり、上部結晶層は、開口部に露出した下部結晶層の表面より結晶成長したものである。
この半導体構造では、上部結晶層は、中間層の開口部に露出した下部結晶層の表面より結晶成長し、中間層上では横方向に成長することで形成されたものとなっている。
【0016】
上記半導体構造において、下部結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである。また、上部結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである。
【0017】
上記半導体構造において、基板は、シリコン,酸化アルミニウム,炭化シリコンの何れかから構成されたものであればよく、また、中間層は、Si3N4,SiO2,Al2O3の何れかから構成されたものであればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
<実施の形態1>
はじめに、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(Al2O3:酸化アルミニウムの結晶)からなる基板101上と、基板101上に低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層102と、緩衝層102上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層103と、下部結晶層103上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部104aを有する中間層104と、中間層104上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる上部結晶層105とを備えている。なお、開口部104aは、1つに限らず、複数あってもよい。
【0019】
中間層104は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.25nm程度に形成した。なお、窒化ガリウムからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層105は、中間層104の開口部104a内に露出している下部結晶層103の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層104を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件や、中間層104の上に結晶成長するGaNの成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0020】
以下、結晶成長させたGaNからなる上部結晶層105の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果と、Siなどの不純物深さ方向濃度プロファイルを調べるための2次イオンマススペクトロスコーピー(SIMS)による測定結果とを示す。
図2は、Si3N4からなる中間層104の膜厚を変えた時の、上部結晶層105のGaN(10−10)からのX線非対称反射スペクトルを示す特性図である。図2から、Si3N4からなる中間層104の膜厚の増加とともに、ピークの反値幅(FWHM)が減少していくことが分かる。
【0021】
図3は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層105のGaN(10−10)からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。Si3N4からなる中間層104を形成しない場合、GaNのFWHMは0.22程度であり、このときの転位密度は1×109cm−2程度である。これに対し、Si3N4からなる中間層104を膜厚0.2nmに形成した場合、上部結晶層105のFWHMは0.057程度であり、このときの転位密度は1×108cm−2となり大幅に減少している。また、Si3N4からなる中間層104を膜厚0.5nmに形成した場合、上部結晶層105のFWHMは0.03程度であり、このときの転位密度は3×107cm−2となりより減少している。
【0022】
図4は、従来技術(文献5,6)に示された方法によって作製したGaNの結晶層中のSiのSIMSプロファイルを示す特性図である。図4中において、「Si中間層」により示すピークの部分は、1021個程度Siが存在する深さが約5μm程度のSiアンチサーファクタント層である。この層は本来1モノレーヤー程度の厚さであるが、図4に示すように、下地基板との結合が弱いため、1〜2μmにわたって1019cm−3のオーダーで再成長層に拡散あるいは偏析している。この層は、高濃度のn形不純物層となるため問題となる。
【0023】
図5に、図1に示すように、Si3N4からなり一部に開口部104aを備えた中間層104を挿入し、この上に結晶成長して作製したGaNからなる上部結晶層105の中のSiのSIMSプロファイルを示す。図4の中において、深さ(Depth)が約3.8μmの位置に1021個程度Siが存在するピークとして示される部分が、中間層104を示す。図5に示されるスペクトルより明らかなように、上部結晶層105へのSiの拡散あるいは偏析は見られない。上部結晶層105の領域中に示されるSiの不純物濃度は、SIMS分析の測定限界である。
【0024】
このように、図1に示す半導体構造としたことにより、中間層104の上に結晶成長させたGaN結晶からなる上部結晶層105は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層104は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層104よりSi等の不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。
【0025】
例えば、文献5,6に示されている従来の方法では、電子濃度と電子の移動度は、1×1018cm−3,170cm2/Vsであったが、図1に示す半導体構造によれば、電子濃度と電子の移動度は、各々5×1017cm−3,300cm2/Vsとなり、低電子濃度においても良好な性質を示していることが分かる。また、前述したように、上部結晶層105は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図1に示す半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できるものとなっている。
【0026】
以下、本実施の形態における半導体構造を用いた半導体装置の構成例について説明する。図1に示す半導体構造は、例えば半導体レーザに適用することができる。図1に示す上部結晶層105上に、まず、n形のGaN電極引き出し層,n形のGaAlN層,n形のGaN層,GaInN活性層,p形のGaN層,p形のGaAlN層,p形のGaN電極形成層を順次結晶成長させ、GaN電極引き出し層が露出するまで一部をエッチング除去し、露出したn形のGaN電極引き出し層にn形電極を形成し、p型のGaN電極形成層にp形電極を形成することで、GaInN活性層よりレーザ発振する半導体レーザとすることができる。なお、n形の層は、不純物としてSiを添加すればよく、p形の層は、不純物としてMgを添加すればよい。
【0027】
また、図1に示す半導体構造は、pnpもしくはnpn構造のトランジスタに適用することもできる。例えば、図1に示す上部結晶層105上に、まず、p形のGaNコレクタ電極引き出し層,p形のGaAlNコレクタ層,n形のGaNベース層,p形のGaAlNエミッタ層,p形のGaNエミッタ電極形成層を順次結晶成長させ、コレクタ電極引き出し層およびベース層の各々が露出するまで一部をエッチング除去し、露出させたコレクタ電極引き出し層にコレクタ電極を形成し、露出させたベース層にベース電極を形成し、エミッタ電極形成層にエミッタ電極を形成することで、pnp構造のトランジスタとすることができる。
【0028】
<実施の形態2>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図6は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板601上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層602と、緩衝層602上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層603と、下部結晶層603上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部604aを備えた中間層604と、中間層604上に高温で気相成長させた窒化アルミニウム(AlN)からなる上部結晶層605とを備えている。
【0029】
中間層604は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、窒化ガリウムからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。また、AlNからなる上部結晶層605も、よく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層605は、中間層604の開口部604a内に露出している下部結晶層603の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層604を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層604の上に結晶成長する上部結晶層605の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0030】
以下、結晶成長させたAlNからなる上部結晶層605の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図7は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層605からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.49程度であり、このときの転位密度は8×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0031】
このように、図6に示す半導体構造としたことにより、中間層604の上に結晶成長させたAlN結晶からなる上部結晶層605は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層604は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層604よりSi等の不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層605は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図6に示す半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化アルミニウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0032】
<実施の形態3>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図8は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板801上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層802と、緩衝層802上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる結晶層803と、結晶層803上に形成されたAlNからなる下部結晶層804と、下部結晶層804上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部805aを備えた中間層805と、中間層805上に高温で気相成長させたGaNからなる上部結晶層806とを備えている。
【0033】
中間層805は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、窒化ガリウムからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。また、AlNからなる下部結晶層804も、よく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層806は、中間層805の開口部805a内に露出している下部結晶層804の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層805を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層805の上に結晶成長する上部結晶層806の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0034】
以下、結晶成長させたGaNからなる上部結晶層806の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図9は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層806からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.34程度であり、このときの転位密度は4×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0035】
このように、図8に示す半導体構造としたことにより、中間層805の上に結晶成長させたGaN結晶からなる上部結晶層806は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層805は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層805よりSi等の不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層806は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図8に示す半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0036】
<実施の形態4>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図10は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板1001上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層1002と、緩衝層1002上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる結晶層1003と、結晶層1003上に形成されたAlNからなる下部結晶層1004と、下部結晶層1004上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部1005aを備えた中間層1005と、中間層1005上に高温で気相成長させたAlNからなる上部結晶層1006とを備えている。
【0037】
中間層1005は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、窒化ガリウムからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。また、AlNからなる下部結晶層1004及び上部結晶層1006も、よく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層1006は、中間層1005の開口部1005a内に露出している下部結晶層1004の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層1005を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層1005の上に結晶成長する上部結晶層1006の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0038】
以下、結晶成長させたAlNからなる上部結晶層1006の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図11は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1006からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.42程度であり、このときの転位密度は6×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0039】
このように、図10に示す半導体構造としたことにより、中間層1005の上に結晶成長させたAlN結晶からなる上部結晶層1006は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1005は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1005よりSiなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層1006は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図10の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化アルミニウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0040】
<実施の形態5>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図12は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板1201上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層1202と、緩衝層1202上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層1203と、下部結晶層1203上に形成されたSiO2からなり一部に開口部1204aを備えた中間層1204と、中間層1204上に高温で気相成長させたGaNからなる上部結晶層1205とを備えている。
【0041】
中間層1204は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.2nm程度に形成した。なお、GaNからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層1205は、中間層1204の開口部1204a内に露出している下部結晶層1203の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、SiO2を堆積して中間層1204を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、SiO2の堆積条件、及び中間層1204の上に結晶成長する上部結晶層1205の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0042】
以下、結晶成長させたGaNからなる上部結晶層1205の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図13は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1205からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.3程度であり、このときの転位密度は3×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0043】
このように、図12に示す半導体構造としたことにより、中間層1204の上に結晶成長させたGaN結晶からなる上部結晶層1205は、転位密度が107cm− 2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1204は、スパッタ法などによりSiO2を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1204よりSiやOなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層1205は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図12の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0044】
<実施の形態6>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図14は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板1401上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層1402と、緩衝層1402上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層1403と、下部結晶層1403上に形成されたAl2O3からなり一部に開口部1404aを備えた中間層1404と、中間層1404上に高温で気相成長させたGaNからなる上部結晶層1405とを備えている。
【0045】
中間層1404は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚1.5nm程度に形成した。この場合、中間層1404を構成するAl2O3は、結晶構造とはならない。なお、中間層1404は、他の気相成長法により形成してもよく、例えば、有機金属気相成長法により形成すれば、結晶構造のAl2O3から構成されることになる。
なお、GaNからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層1405は、中間層1404の開口部1404a内に露出している下部結晶層1403の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Al2O3を堆積して中間層1404を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Al2O3の堆積条件、及び中間層1404の上に結晶成長する上部結晶層1405の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0046】
以下、結晶成長させたGaNからなる上部結晶層1405の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図15は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1405からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.5程度であり、このときの転位密度は9×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0047】
このように、図14に示す半導体構造としたことにより、中間層1404の上に結晶成長させたGaN結晶からなる上部結晶層1405は、転位密度が107cm− 2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1404は、スパッタ法などによりAl2O3を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1404より酸素などの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層1405は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図14の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0048】
<実施の形態7>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図16は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板1601上に、Si3N4からなり一部に開口部1602aを備えた中間層1602と、中間層1602上に高温で気相成長させたGaNからなる結晶層1603とを備えている。
【0049】
中間層1602は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、GaNからなる結晶層1603は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。結晶層1603は、中間層1602の開口部1602a内に露出している基板1601の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層1602を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層1602の上に結晶成長する結晶層1603の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0050】
以下、結晶成長させたGaNからなる結晶層1603の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図17は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層1603からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.5程度であり、このときの転位密度は9×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0051】
このように、図16に示す半導体構造としたことにより、中間層1602の上に結晶成長させたGaN結晶からなる結晶層1603は、転位密度が107cm− 2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1602は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1602よりSiなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、結晶層1603は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図16の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0052】
<実施の形態8>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図18は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、炭化シリコン(SiC)の結晶からなる基板1801上に、Si3N4からなり一部に開口部1802aを備えた中間層1802と、中間層1802上に高温で気相成長させたGaNからなる結晶層1803とを備えている。
【0053】
中間層1802は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、GaNからなる結晶層1803は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。結晶層1803は、中間層1802の開口部1802a内に露出している基板1801の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層1802を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層1802の上に結晶成長する結晶層1803の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0054】
以下、結晶成長させたGaNからなる結晶層1803の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図19は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層1803からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.5程度であり、このときの転位密度は9×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0055】
このように、図18に示す半導体構造としたことにより、中間層1802の上に結晶成長させたGaN結晶からなる結晶層1803は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層1802は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層1802よりSiなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、結晶層1803は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図18の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0056】
<実施の形態9>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図20は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、シリコンの結晶からなる基板2001上に、Si3N4からなり一部に開口部2002aを備えた中間層2002と、中間層2002上に高温で気相成長させたGaNからなる結晶層2003とを備えている。
【0057】
中間層2002は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、GaNからなる結晶層2003は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。結晶層2003は、中間層2002の開口部2002a内に露出している基板2001の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層2002を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層2002の上に結晶成長する結晶層2003の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0058】
以下、結晶成長させたGaNからなる結晶層2003の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図21は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層2003からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.38程度であり、このときの転位密度は5×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0059】
このように、図20に示す半導体構造としたことにより、中間層2002の上に結晶成長させたGaN結晶からなる結晶層2003は、転位密度が107cm− 2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層2002は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層2002よりSiなどの不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、結晶層2003は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図20の半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度の窒化ガリウムの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0060】
<実施の形態10>
つぎに、本発明の他の形態について説明する。
図22は、本実施の形態における半導体構造の構成を概略的に示す模式的な断面図である。この半導体構造は、まず、サファイア(酸化アルミニウムの結晶)からなる基板2201上に、低温で気相成長させた窒化ガリウム(GaN)からなる緩衝層2202と、緩衝層2202上に高温で気相成長させた窒化ガリウムからなる下部結晶層2203と、下部結晶層2203上に形成されたSi3N4からなり一部に開口部2204aを備えた中間層2204と、中間層2204上に高温で気相成長させたインジウムとガリウムと窒素とからなる三元系の化合物半導体(InGaN)の結晶からなる上部結晶層2205とを備えている。
【0061】
中間層2204は、例えば、ECRスパッタ法により、膜厚0.5nm程度に形成した。なお、GaNからなる層は、例えばよく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。また、InGaNからなる上部結晶層2205も、よく知られている有機金属気相成長法により成長させたものである。上部結晶層2205は、中間層2204の開口部2204a内に露出している下部結晶層2203の表面より結晶が成長することで形成されたものである。なお、Si3N4を堆積して中間層2204を形成するまでの層構造や成長条件は使用した基板の種類によって異なるが、Si3N4の堆積条件、及び中間層2204の上に結晶成長する上部結晶層2205の成長条件は、基板の種類に依存しない。
【0062】
以下、結晶成長させたInGaNからなる上部結晶層2205の中の転位密度を評価するX線回折測定の結果を示す。図23は、FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層2205からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。FWHMは0.5程度であり、このときの転位密度は9×107cm−2となり、転位密度が少ない状態であることが判る。
【0063】
このように、図22に示す半導体構造としたことにより、中間層2204の上に結晶成長させたInGaNの結晶からなる上部結晶層2205は、転位密度が107cm−2オーダーと均一に転位密度が減少した状態に形成された。また、中間層2204は、スパッタ法などによりSi3N4を堆積することで形成し、ほぼ化学量論的組成の膜として形成しているので、この中間層2204よりSi等の不純物の拡散・偏析がほとんどない状態に形成されている。また、前述したように、上部結晶層2205は、有機金属気相成長法などのように、一般的に用いられている方法により容易に形成できる。このように、図22に示す半導体構造は、均一に転位密度を減少させた高純度のInGaNの結晶を、従来より容易に製造できる状態となっている。
【0064】
以上説明したように、本発明では、例えば窒化物半導体などの結晶基板上に、絶縁体からなる中間層を開口部が形成された状態、言い換えると被覆率が1よりも小さい値に中間層を形成し、これらを成長基板として半導体の層を結晶成長した。絶縁体からなる中間層の上には、例えば有機金属気相法により結晶層を形成しているとき、中間層上には原料の付着係数が小さいため結晶の核の形成が起こらず、結晶成長が起きない。結晶成長は、中間層の設けた開口部に露出した中間層下の層のみから起こるようにした。
【0065】
ここで、結晶成長をしようとする面は、大部分が中間層により被覆され、結晶は横方向にも成長する。この時、転位の伝播方向が曲げられ、結晶成長方向に転位は伝播しない。このために、中間層上に成長する結晶層においては、転位密度が減少する。また、中間層上に形成する結晶層は、必ずしも中間層下の層における結晶の情報を引き継がない。このため、本発明の構成では、中間層を形成しておく基板を選ばない。
【0066】
ところで、中間層の上に窒化ガリウムなどを結晶成長する場合、有機金属気相成長法によれば、基板(中間層)には、900〜1100℃もの高温が加えられる。ここで、実質的に化学量論的組成の結合が非常に強い絶縁体から構成された中間層を用いるようにすれば、高温である結晶成長温度においてもこれらが分解することが起きにくく、中間層を構成する物質(原子)が他の結晶層に拡散・偏析することが起きにくい。
【0067】
残留不純物が少なく転位密度が低い結晶の形成が実現したことにより、本発明の半導体構造では、結晶層の電気的特性も向上している。また、基板全体で均一に転位密度を減少することが可能であるため、産業上非常に有効な方法である。また、転位密度の減少にともない結晶性の向上も見込まれるため、デバイス特性の向上や新デバイスの実現など多岐にわたり波及効果が期待される。
【0068】
なお、前述した実施の形態では、中間層に、Si3N4,SiO2,Al2O3のいずれかを用いるようにしたが、これに限るものではない。結晶成長をさせようとする物質の付着係数が小さく、結晶の核の形成が起きにくい絶縁体であれば、中間層に用いることが可能である。また、あまり高温にすることなく所望の半導体層を形成できる場合、中間層が完全に化学量論的組成となっている必要はない。
また、前述では、結晶層(下部結晶層,上部結晶層)として、窒化ガリウムと窒化アルミニウムの場合を例にして説明したが、これに限るものではなく、窒化インジウムや窒化ホウ素の結晶層や、これらの3元系混晶,4元系混晶,5元系混晶の結晶層を形成する場合についても同様である。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、結晶層は、中間層の開口部に露出した基板表面より結晶成長し、中間層上では横方向に成長することで形成されたものとなっているので、半導体構造が、均一に転位密度を減少させた高純度の半導体の結晶を、従来より容易に製造できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図2】Si3N4からなる中間層104の膜厚を変えた時の上部結晶層105であるGaN(10−10)からのX線非対称反射スペクトルを示す特性図である。
【図3】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層105のGaN(10−10)からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図4】従来技術による作製方法によって作製したGaN中のSiのSIMSプロファイルである。
【図5】Si3N4からなる中間層を挿入して作製したGaN中のSiのSIMSプロファイルである。
【図6】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図7】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層605からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図8】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図9】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層806からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図10】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図11】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1006からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図12】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図13】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1205からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図14】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図15】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層1405からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図16】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図17】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層1603からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図18】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図19】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層1803からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図20】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図21】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、結晶層2003からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【図22】本発明の他の形態における半導体構造の構成例を概略的に示す模式的な断面図である。
【図23】FWHMと転位密度の関係をあらわす理論曲線を用い、上部結晶層2205からのX線非対称反射スペクトルのFWHMより転位密度を求める説明図である。
【符号の説明】
101…基板、102…緩衝層、103…下部結晶層、104…中間層、104a…開口部、105…上部結晶層。
Claims (7)
- 結晶構造を有する基板と、
この基板の上に形成された絶縁体からなり一部に開口部を備えた中間層と、
この中間の層の上に形成された半導体からなる結晶層と
を備え、
前記結晶層は、前記開口部に露出した前記基板の表面より結晶成長したものである
ことを特徴とする半導体構造。 - 請求項1記載の半導体構造において、
前記結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである
ことを特徴とする半導体構造。 - 結晶構造を有する基板と、
この基板上に形成された半導体の結晶からなる下部結晶層と、
この下部結晶層の上に形成された絶縁体からなり一部に開口部を備えた中間層と、
この中間の層の上に形成された半導体からなる上部結晶層と
を備え、
前記上部結晶層は、前記開口部に露出した前記下部結晶層の表面より結晶成長したものである
ことを特徴とする半導体構造。 - 請求項3記載の半導体構造において、
前記下部結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである
ことを特徴とする半導体構造。 - 請求項3又は4記載の半導体構造において、
前記上部結晶層は、窒化インジウム,窒化ガリウム,窒化アルミニウム,窒化ホウ素のいずれかもしくはこれらを含む3元混晶,4元混晶,5元混晶の何れかから構成されたものである
ことを特徴とする半導体構造。 - 請求項1〜5いずれか1項に記載の半導体構造において、
前記基板は、シリコン,酸化アルミニウム,炭化シリコンの何れかから構成されたものである
ことを特徴とする半導体構造。 - 請求項1〜6いずれか1項に記載の半導体構造において、
前記中間層は、Si3N4,SiO2,Al2O3の何れかから構成されたものである
ことを特徴とする半導体構造。
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-
2002
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