JP2004014623A - 金属用研磨液及びそれを用いた研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水を含有する金属用研磨液。研磨定盤の研磨布上に前記の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かすことによって被研磨膜を研磨する研磨方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に半導体デバイスの配線工程における金属用研磨液及びそれを用いた研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路(以下LSIと記す)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下CMPと記す)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成において頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば米国特許第4,944,836号に開示されている。
【0003】
また、最近はLSIを高性能化するために、配線材料として銅合金の利用が試みられている。しかし、銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そこで、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に銅合金薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の銅合金薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている。この技術は、例えば特開平2−278822号公報に開示されている。
【0004】
金属のCMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を金属用研磨液で浸し、基体の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から所定の圧力(以下研磨圧力と記す)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
【0005】
CMPに用いられる金属用研磨液は、一般には酸化剤及び固体砥粒からなっており必要に応じてさらに酸化金属溶解剤、保護膜形成剤が添加される。まず酸化によって金属膜表面を酸化し、その酸化層を固体砥粒によって削り取るのが基本的なメカニズムと考えられている。凹部の金属表面の酸化層は研磨パッドにあまり触れず、固体砥粒による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行とともに凸部の金属層が除去されて基体表面は平坦化される。この詳細についてはジャ−ナル・オブ・エレクトロケミカルソサエティ誌の第138巻11号(1991年発行)の3460〜3464頁に開示されている。
【0006】
CMPによる研磨速度を高める方法として酸化金属溶解剤を添加することが有効とされている。固体砥粒によって削り取られた金属酸化物の粒を研磨液に溶解させてしまうと固体砥粒による削り取りの効果が増すためであるためと解釈できる。但し、凹部の金属膜表面の酸化層も溶解(以下エッチングと記す)されて金属膜表面が露出すると、酸化剤によって金属膜表面がさらに酸化され、これが繰り返されると凹部の金属膜のエッチングが進行してしまい、平坦化効果が損なわれることが懸念される。これを防ぐためにさらに保護膜形成剤が添加される。酸化金属溶解剤と保護膜形成剤の効果のバランスを取ることが重要であり、凹部の金属膜表面の酸化層はあまりエッチングされず、削り取られた酸化層の粒が効率良く溶解されCMPによる研磨速度が大きいことが望ましい。
【0007】
このように酸化金属溶解剤と保護膜形成剤を添加して化学反応の効果を加えることにより、CMP速度(CMPによる研磨速度)が向上すると共に、CMPされる金属層表面の損傷(ダメ−ジ)も低減される効果が得られる。
【0008】
しかしながら、従来の固体砥粒を含む金属用研磨液を用いてCMPによる埋め込み配線形成を行う場合には、(1)埋め込まれた金属配線の表面中央部分が等方的に腐食されて皿のように窪む現象(以下ディッシングと記す)の発生、(2)固体砥粒に由来する研磨傷(スクラッチ)の発生、(3)研磨後の基体表面に残留する固体砥粒を除去するための洗浄プロセスが複雑であること、(4)固体砥粒そのものの原価や廃液処理に起因するコストアップ、等の問題が生じる。
【0009】
ディッシングや研磨中の銅合金の腐食を抑制し、信頼性の高いLSI配線を形成するために、グリシン等のアミノ酢酸又はアミド硫酸からなる酸化金属溶解剤及びBTA(ベンゾトリアゾ−ル)を含有する金属用研磨液を用いる方法が提唱されている。この技術は例えば特開平8−83780号公報に記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、BTAの保護膜形成効果は非常に高いため、エッチング速度のみならず研磨速度をも顕著に低下させてしまう。従って、エッチング速度を十分に低下させ、且つCMP速度を低下させないような金属用研磨液が望まれていた。
本発明は、エッチング速度を十分に低下させ、高いCMP速度を維持し信頼性の高い金属膜の埋め込みパタ−ン形成を可能とする金属用研磨液及びそれを用いた研磨方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水を含有する金属用研磨液に関する。
また、本発明は、金属用研磨液研磨定盤の研磨布上に本発明の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かすことによって被研磨膜を研磨する研磨方法に関する。
【0012】
金属の酸化剤としては、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸及びオゾン水から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸化金属溶解剤としては、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び硫酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
保護膜形成剤としては、含窒素化合物及びその塩、メルカプタン、グルコ−ス及びセルロ−スから選ばれた少なくとも1種であると好ましい。
酸化防止剤としては、芳香族系化合物であることが好ましく、特にベンゼンジオール、ベンゼントリオール、アミノフェノール及び没食子酸系化合物から選ばれた少なくとも1種であると好ましい。
水溶性ポリマとしては、多糖類、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル及びその塩、及びビニル系ポリマから選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、その重量平均分子量は、500以上であることが好ましい。重量平均分子量を500以上とすることにより、高いCMP速度、高平坦化、ディッシング量の低減、エロージョン量の低減をはかることができる。
【0013】
本発明の金属用研磨液を用いて銅、銅合金及び銅又は銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種の金属層を含む積層膜からなる金属膜を研磨する工程によって少なくとも金属膜の一部を除去することができる。
本発明の研磨方法は、研磨定盤の研磨布上に前記の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かすことによって被研磨膜を研磨することができる。
【0014】
本発明では保護膜形成剤と水溶性ポリマを組み合わせることにより高いCMP速度を発現し且つエッチング速度を十分に低下させた研磨液を提供する。保護膜形成剤は銅とキレ−ト錯体を生じやすいもの、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸,ベンゾトリアゾ−ル等を用いる。これらの金属表面保護膜形成効果は極めて強く、例えば金属用研磨液中に0.5重量%以上を含ませると銅合金膜はエッチングはおろかCMPすらされなくなる。
【0015】
これに対して本発明者らは、保護膜形成剤と水溶性ポリマを併用することにより、十分に低いエッチング速度を維持したまま高いCMP速度が得られることを見出した。しかもこのような研磨液を用いることにより、研磨液に固体砥粒を含ませなくとも実用的なCMP速度での研磨が可能になることを見出した。これは従来の固体砥粒の摩擦による削り取りの効果に対して研磨パッドの摩擦による削り取りが発現されたためと考えられる。金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤及び水を含有する金属研磨液に水溶性ポリマを添加することによりエッチング速度を維持したままCMP速度を上昇させることができる。
また、酸化防止剤を添加することにより、研磨摩擦による温度上昇時のエッチング速度上昇を抑制することができる。
【0016】
エッチング速度の値としては、10nm/min以下に抑制できれば好ましい平坦化効果が得られることが分かった。CMP速度の低下が許容できる範囲であればエッチング速度はさらに低い方が望ましく、5nm/min以下に抑制できれば、例えば50%程度の過剰CMP(金属膜をCMP除去するに必要な時間の1.5倍のCMPを行うこと)を行ってもディッシングは問題とならない程度に留まる。さらにエッチング速度を1nm/min以下に抑制できれば、100%以上の過剰CMPを行ってもディッシングは問題とならない。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明においては、表面に凹部を有する基体上に銅、銅合金(銅/クロム等)を含む金属膜を形成・充填する。この基体を本発明による研磨液を用いてCMPすると、基体の凸部の金属膜が選択的にCMPされて、凹部に金属膜が残されて所望の導体パタ−ンが得られる。本発明の金属用研磨液では、実質的に固体砥粒を含まなくとも良く、固体砥粒よりもはるかに機械的に柔らかい研磨パッドとの摩擦によってCMPが進むために研磨傷は劇的に低減される。
本発明の金属用研磨液は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水を必須成分とする。固体砥粒は実質的に含まれなくとも良いが、使用することもできる。
【0018】
金属の酸化剤としては、過酸化水素(H2O2)、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられ、その中でも過酸化水素が特に好ましい。基体が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。但し、オゾン水は組成の時間変化が激しいので過酸化水素が最も適している。但し、適用対象の基体が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
【0019】
酸化金属溶解剤は、水溶性のものが望ましい。以下の群から選ばれたものの水溶液が適している。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グルタミン酸、グルコン酸、グリコ−ル酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、乳酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、ピコリン酸、ニコチン酸、マンデル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、キナルジン酸等、それらの有機酸エステル及びそれらの有機酸のアンモニウム塩等の塩、硫酸、硝酸、アンモニア、アンモニウム塩類、例えば過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等、クロム酸等又はそれらの混合物等が挙げられる。これらの中ではギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が銅、銅合金及び銅又は銅合金の酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属層を含む積層膜に対して好適である。これらは保護膜形成剤とのバランスが得やすい点で好ましい。特に、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸については実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点で好ましい。
【0020】
保護膜形成剤は、以下の群から選ばれたものが好適である。アンモニア、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピレンジアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム及びキトサン等のアンモニア及びアルキルアミン;グリシン、L−アラニン、β−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−イソロイシン、L−アロイソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロシン、3,5−ジヨ−ド−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、L−チロキシン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−L−システィン、4−アミノ酪酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、アザセリン、L−アルギニン、L−カナバニン、L−シトルリン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、クレアチン、L−キヌレニン、L−ヒスチジン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、エルゴチオネイン、L−トリプトファン、アクチノマイシンC1、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等のアミノ酸;ジチゾン、ロイン(2,2’−ビキノリン)、ネオクプロイン(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)、バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)及びキュペラゾン(ビスシクロヘキサノンオキサリルヒドラゾン)等のイミン;ベンズイミダゾ−ル−2−チオ−ル、トリアジンジチオ−ル、トリアジントリチオ−ル、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオプロピオン酸、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオブチル酸、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル)、1,2,3−トリアゾ−ル、1,2,4−トリアゾ−ル、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル、ベンゾトリアゾ−ル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、4−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾ−ルメチルルエステル、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾ−ルブチルエステル、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾ−ルオクチルエステル、5−ヘキシルベンゾトリアゾ−ル、[1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル][1,2,4−トリアゾリル−1−メチル][2−エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾ−ル、ナフトトリアゾ−ル、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等のアゾ−ル;ノニルメルカプタン及びドデシルメルカプタン等のメルカプタン;並びにグルコ−ス、セルロ−ス等が挙げられる。その中でもキトサン、エチレンジアミンテトラ酢酸、L−トリプトファン、キュペラゾン、トリアジンジチオ−ル、ベンゾトリアゾ−ル、4−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ルブチルエステル、トリルトリアゾ−ル、ナフトトリアゾ−ルが高いCMP速度と低いエッチング速度を両立する上で好ましい。
【0021】
酸化防止剤としては、以下の群から選ばれたものが好適である。
4−エトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、p−フェノキシフェノール等のフェノール類、
1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、ヒドロキノン(1,4−ベンゼンジオール)、2−メチルヒドロキノン、2−メトキシヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,3−ジシアノヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル、ヒドロキノンジエチルエーテル、1,4−シクロヘキサノンジオール等のジオール類、
1,2,3−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、1,3,5−ベンゼントリオール等のトリオール類
没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、没食子酸一水和物、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ドデシル、没食子酸ラウリル等の没食子酸類、
が挙げられる。これらの中でもヒドロキノン、1,2,3−ベンゼントリオールが高いCMP速度と高温時のエッチング速度抑制という点で好ましい。
【0022】
水溶性ポリマとしては、以下の群から選ばれたものが好適である。アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロ−ス、寒天、カ−ドラン及びプルラン等の多糖類;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル及びその塩;ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ等が挙げられる。但し、適用する基体が半導体集積回路用シリコン基板などの場合はアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、酸もしくはそのアンモニウム塩が望ましい。基体がガラス基板等である場合はその限りではない。その中でもペクチン酸、寒天、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン、それらのエステル及びそれらのアンモニウム塩が好ましい。
【0023】
本発明を適用する金属膜としては、銅、銅合金及び銅又は銅合金の酸化物(以下銅合金という)から選ばれた少なくとも1種を含む積層膜である。
【0024】
金属の酸化剤成分の配合量は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水の総量100gに対して、0.003mol〜0.7molとすることが好ましく、0.03mol〜0.5molとすることがより好ましく、0.2mol〜0.3molとすることが特に好ましい。この配合量が 0.003mol未満では、金属の酸化が不十分でCMP速度が低く、0.7molを超えると、研磨面に荒れが生じる傾向がある。
【0025】
本発明における酸化金属溶解剤成分の配合量は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水の総量100gに対して0〜0.005molとすることが好ましく、0.00005mol〜0.0025molとすることがより好ましく、0.0005mol〜0.0015molとすることが特に好ましい。この配合量が0.005molを超えると、エッチングの抑制が困難となる傾向がある。
【0026】
保護膜形成剤の配合量は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水の総量100gに対して0.0001mol〜0.05molとすることが好ましく0.0003mol〜0.005molとすることがより好ましく、0.0005mol〜0.0035molとすることが特に好ましい。この配合量が0.0001mol未満では、エッチングの抑制が困難となる傾向があり、0.05molを超えるとCMP速度が低くなってしまう傾向がある。
酸化防止剤の配合量は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水の総量100gに対して0mol〜0.005molとすることが好ましく0.00005mol〜0.0025molとすることがより好ましく、0.0005mol〜0.0015molとすることが特に好ましい。この配合量が0.005molを超えると金属の酸化剤の効果を抑制するためCMP速度が低くなってしまう傾向がある。
【0027】
水溶性ポリマの配合量は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水の総量100gに対して0.001〜0.3重量%とすることが好ましく0.003重量%〜0.1重量%とすることがより好ましく0.01重量%〜0.08重量%とすることが特に好ましい。この配合量が0.001重量%未満では、エッチング抑制において保護膜形成剤との併用効果が現れない傾向があり0.3重量%を超えるとCMP速度が低下してしまう傾向がある。
【0028】
本発明の研磨方法は、研磨定盤の研磨布上に上記の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かすことによって被研磨膜を研磨する研磨方法である。研磨する装置としては、半導体基板を保持するホルダーと研磨布(パッド)を貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨膜を有する半導体基板の研磨布への押しつけ圧力が10〜100kPaであることが好ましく、研磨速度のウエハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、10〜50kPaであることがより好ましい。研磨している間、研磨布には金属用研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。 研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0029】
本発明は、保護膜形成剤のみを用いた研磨液とは異なり、固体砥粒による強い機械的摩擦に頼らなくとも、それよりもはるかに柔らかい研磨パッドとの摩擦によってCMP平坦化が可能である金属用研磨液を提供することができる。
この金属用研磨液においては保護膜形成剤と水溶性ポリマを併用したことにより、エッチングは抑制するが研磨パッドによる摩擦に対しては金属表面保護膜として機能せずにCMPが進行すると推定される。一般にCMPにおいては研磨傷の発生の度合いは固体砥粒の粒径や粒径分布や形状に依存し、絶縁膜の削れによる膜厚減少(以下エロ−ジョンと記す)や平坦化効果の劣化はやはり固体砥粒の粒径や研磨パッドの物理的性質に依存し、金属膜特に銅膜表面にBTAを処理した場合、金属膜のディッシングは研磨パッドの硬さや研磨液の化学的性質に依存すると考えられる。すなわち、硬い固体砥粒はCMPの進行には必要ではあるが、CMPにおける平坦化効果やCMP面の完全性(研磨傷等の損傷がないこと)を向上させるためには望ましくない。平坦化効果は実際には固体砥粒よりも柔らかい研磨パッドの特性に依存していることが分かる。このことより、本発明では、固体砥粒が無くともCMPの進行を実現させたという点で銅合金のCMP、引いてはそれを用いた埋め込みパタ−ンの形成に対しては極めて望ましいことが分かる。
保護膜形成剤の内、BTA(ベンゾトリアゾール)を例として説明すると、銅合金膜表面をBTAを含む液にさらすと銅(Cu)もしくはその酸化物とBTAとの反応により、Cu(I)BTA又はCu(II)BTAの構造を主骨格とするポリマ状錯化合物皮膜を形成すると考えられる。この皮膜はかなり強固で、BTA 1重量%を含む金属用研磨液を用いた場合、当該研磨液に固体砥粒が含まれていたとしても、一般にはほとんど研磨されない。又、本発明における水溶性ポリマを単独で金属用研磨液中で用いた場合、特にエッチング速度の抑制が困難となり、保護効果は十分でない。
このように保護膜形成剤の種類に応じて異なる種類の保護膜が形成されることは従来から知られていたが、本発明で示した保護膜形成剤と水溶性ポリマの組み合わせであれば高いCMP速度と低いエッチング速度を両立でき、しかも固体砥粒による強い摩擦をも不要になる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(金属用研磨液作製方法)
DL−リンゴ酸(試薬特級)0.15重量部及びヒドロキノン(試薬特級)0.03重量部に水70重量部を加えて溶解し、これにベンゾトリアゾール0.2重量部のメタノ−ル0.8重量部溶液を加えた。さらに水溶性ポリマ0.05重量部(固形分量)を加えた。最後に過酸化水素水(試薬特級、30重量%水溶液)33.2重量部を加えて得られたものを金属用研磨液とした。
実施例1〜6及び比較例1〜3では、表1に記した各種保護膜形成剤を用いた上記金属用研磨液を用いて、下記研磨条件でCMPした。
(研磨条件)
基体:厚さ1μmの銅膜を形成したシリコン基板
研磨パッド:IC1000(ロデ−ル社製)
研磨圧力:20kPa
基体と研磨定盤との相対速度:36m/分
(研磨品評価項目)
CMP速度:銅膜のCMP前後での膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。エッチング速度:攪拌した研磨液(25℃)への浸漬前後の銅層膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。また、研磨液を50℃にして高温時のエッチング速度も同様にして求めた。
また、実際のCMP特性を評価するため、絶縁層中に深さ0.5μmの溝を形成して公知のスパッタ法によって銅膜を形成して公知の熱処理によって埋め込んだシリコン基板についても基体として用いてCMPを行った。
CMP後の基体の目視、光学顕微鏡観察、及び電子顕微鏡観察によりエロ−ジョン及び研磨傷発生の有無を確認した。その結果、エロ−ジョン及び研磨傷の発生は見られなかった。
実施例1〜5及び比較例1〜4における、CMP速度及びエッチング速度の評価結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
比較例1に示したように酸化防止剤を添加しないと高温時のエッチング速度が高くなる。また、比較例2に示したように保護膜形成剤のみ使用すると、CMP速度が低下する。また、比較例3に示すように水溶性ポリマのみ使用すると、エッチング速度が高くなり、その結果ディッシング量が大きくなる。また、保護膜形成剤と水溶性ポリマの両者を用いない比較例4でもエッチング速度が高くなり、その結果ディッシング量が大きくなる。これらに対し、実施例1〜5に示したように、保護膜形成剤と水溶性ポリマを併用した場合、エッチング速度が低いにもかかわらず、CMP速度を大きくできて研磨時間を短縮できる。しかも、ディッシング量が小さく、高平坦化できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の金属用研磨液は、エッチング速度を十分に低下させ、高いCMP速度を発現し信頼性の高い埋め込みパタ−ンを形成することができる。
Claims (8)
- 金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、酸化防止剤、水溶性ポリマ及び水を含有する金属用研磨液。
- 金属の酸化剤が、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸及びオゾン水から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の金属用研磨液。
- 酸化金属溶解剤が、有機酸、有機酸エステル、有機酸のアンモニウム塩及び硫酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の金属用研磨液。
- 保護膜形成剤が、含窒素化合物及びその塩、メルカプタン、グルコ−ス及びセルロ−スから選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の金属用研磨液。
- 酸化防止剤が、芳香族系化合物である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の金属用研磨液。
- 水溶性ポリマが、重量平均分子量 500以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の金属用研磨液。
- 研磨される金属膜が、銅、銅合金及び銅又は銅合金の酸化物から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の金属用研磨液。
- 研磨定盤の研磨布上に請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かすことによって被研磨膜を研磨する研磨方法。
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