JP2004011663A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、前記転動体を円周方向にわたって互いに間隔を開けた状態で転動自在に保持する保持器と、前記外輪の内周面と前記内輪の外周面との間で前記転動体を設けた空間の軸方向開口部を塞ぐシール装置とを備えた転がり軸受において、前記シール装置を構成する弾性部材が、アクリロニトリルブタジエンゴムに少なくとも4,4´−ジチオジモルホリン及び硫黄加硫用加硫促進剤を配合したゴム組成物からなる成形体であることを特徴とする転がり軸受。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、封入グリースの漏洩を防止するとともに、外部からの塵埃、水、水蒸気、泥水等の軸受内部への侵入を防止するためのシール装置を備えた転がり軸受に関する。より詳細には、例えば自動車や鉄道の車輪の支持に使用される車輪用転がり軸受や、自動車のウオーターポンプ用軸受及び電装機器用転がり軸受のように水や塵埃と頻繁に接触するような環境で使用される転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車や鉄道車両の車輪を支持する車輪用転がり軸受は、通常、雨水や風雪、塵埃等に曝されながら屋外で使用される。また、自動車の車輪用転がり軸受は、泥水等に水没した状態で使用される場合もある。更には、洗車時には洗浄水に晒される。
【0003】
このような環境で使用される転がり軸受は、封入グリースの漏洩の防止とともに、外部からの水の侵入を防止するためのシール装置を備えている。従来では、このシール装置の弾性部材として、ニトリルゴムに硫黄系加硫剤及び硫黄加硫用加硫促進剤を含み、その他適宜添加剤を配合したゴム組成物を成形したものを用いている。しかし、このような弾性部材は、水がかかることが少なく、また塵埃も少ない、比較的清浄な環境においては十分なシール性能を示すが、多量の水に晒されるような場合のシール性能が不十分であり、特に水没した場合には水圧も付加されるため、シール性能が低下して軸受内部に水とともに塵埃等が侵入しやすくなる。その結果、封入グリース等の潤滑剤の劣化を招き、転がり軸受は長期にわたる性能維持が困難となり、早期に破損するおそれも出てくる。
【0004】
このような不具合に対して、シール装置のシール性能を高めるために締め代や弾性部材のモジュラスを大きくして緊迫力を高めることも行われている。しかし、シールの回転トルクが大きくなり車両の燃費を低下させるだけでなく、むしろ弾性部材のリップ部が摩耗して密封性を低下させる可能性が高く、更には、摩擦発熱によりグリース劣化を招いて軸受寿命を低下させるおそれもある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来のゴム組成物を弾性部材に用いたシール装置を備える転がり軸受は、多量の水に晒されたり、特に水没した条件で使用されると、十分な軸受寿命が得られないおそれがある。そこで本発明は、このような劣悪な環境でも良好な密封性を有し、長寿命の転がり軸受を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、前記転動体を円周方向にわたって互いに間隔を開けた状態で転動自在に保持する保持器と、前記外輪の内周面と前記内輪の外周面との間で前記転動体を設けた空間の軸方向開口部を塞ぐシール装置とを備えた転がり軸受において、前記シール装置を構成する弾性部材が、アクリロニトリルブタジエンゴムに少なくとも4,4´−ジチオジモルホリン及び硫黄加硫用加硫促進剤を配合したゴム組成物からなる成形体であることを特徴とする転がり軸受を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の転がり軸受に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0008】
本発明において、転がり軸受の構成自体は特に制限されるものではないが、例えば図1に示されるような自動車の車輪を支持する車両用転がり軸受を例示することができる。図示される転がり軸受Oにおいて、固定輪である外輪相当部材1は、その外周面に形成した取付部2により、懸架装置(図示せず)に支持固定される。従ってこの外輪相当部材1は、使用時にも回転しない。この様な外輪相当部材1の内側には回転輪である内輪相当部材3が、外輪相当部材1と同心に設けられ、使用時にこの内輪相当部材3が回転する。この内輪相当部材3は、ハブ4と内輪5とから成る。このうちのハブ4の内周面にはスプライン溝6が、外端(車両への組み付け時に幅方向外側になる端を言い、図1の左端)部外周面には取付フランジ7が、それぞれ形成されている。車両への組み付け時、上記スプライン溝6には等速ジョイントを介して回転駆動される駆動軸が挿入され、上記取付フランジ7には車輪が固定される。
【0009】
上記外輪相当部材1の内周面には複列の外輪軌道8、8が、上記ハブ4の中間部外周面と上記内輪5の外周面とには内輪軌道9、9が、それぞれ形成されている。そして、これら各外輪軌道8、8と内輪軌道9、9との間に転動体10、10を設けて、上記外輪相当部材1の内側での内輪相当部材3の回転を自在としている。また、転動体10、10を転動自在に保持するために、保持器11、11が設けられている。尚、図示の例では転動体10、10として玉を使用しているが、重量が嵩む車両用のハブユニットの場合には、転動体としてテーパころを使用する場合もある。更に、上記外輪相当部材1の外端部と上記ハブ4の中間部外周面との間にはシール装置12aと12bとが設けられ、上記外輪相当部材1の内周面と上記内輪相当部材3の外周面との間で、上記転動体10、10を設置した空間13部分の外端開口を塞いでいる。
【0010】
シール装置12aは、図2に拡大して示されるように、芯金105と、スリンガ106と、弾性部材107とから構成される。このうちの芯金105は、低炭素鋼板等の金属板にプレス加工等の打ち抜き加工並びに塑性加工を施す事により、一体成形されている。この様な芯金105は、転がり軸受Oを構成する外輪相当部材1の端部内周面に内嵌固定自在な外径側円筒部109と、この外径側円筒部109の軸方向内端縁(図2の左端縁)から直径方向内方に折れ曲がった内側円輪部110を備えた、断面略L字形で円環状に形成されている。また、上記スリンガ106は、ステンレス鋼板等、優れた耐食性を有する金属板に、やはりプレス加工等の打ち抜き加工並びに塑性加工を施す事により一体成形されている。この様なスリンガ106は、上記転がり軸受Oを構成する内輪5の外端部外周面に外嵌固定自在な内径側円筒部112と、この内径側円筒部112の軸方向外端縁(図2の右端縁)から直径方向外方に折れ曲がった外側円輪部113とを備えた、断面L字形で円環状に形成されている。
【0011】
また、上記弾性部材107は弾性材料からなり、外側、中間、内側の3本のシールリップ114、115、116を備え、上記芯金105にその基端部が結合固定されている。そして、最も外側に位置する外側シールリップ114の先端縁を上記スリンガ106を構成する外側円輪部113の内側面に摺接させ、残り2本のシールリップである中間シールリップ115及び内側シールリップ116の先端縁を、上記スリンガ106を構成する内径側円筒部112の外周面に摺接させることにより、封入グリースの漏洩を防止するとともに、外部からの塵埃、水、泥水等の軸受内部への侵入を防止する。
【0012】
シール装置12bは、図3に拡大して示されるように、それぞれが円輪状に形成された芯金216と弾性部材217とから構成される。このうちの芯金216は、金属板により造り、上記外輪相当部材1の外端部に内嵌固定されている。また、上記弾性部材217は弾性材料からなり、上記芯金216に成形し接着等により接合固定されている。また、この弾性部材217は、外径側、内径側、2本のサイドシールリップ218、219と、1本のラジアルシールリップ220とを備える。そして、上記2本のサイドシールリップ218、219を、先端縁(図3の左端縁)に向かう程直径方向外方(図3の上方)に向かう方向に傾斜させる事により、空間13内への異物進入防止機能を確保している。また、上記ラジアルシールリップ220を、先端縁(図3の右下縁)に向かう程上記空間13の内側(図3の右側)に向かう方向に傾斜させる事により、グリースの漏洩防止機能を確保している。
【0013】
更に詳しく説明すると、シール装置12bは、それぞれが円輪状に形成された芯金216と弾性部材217とから構成されている。シール装置12bの芯金216は、低炭素鋼板等の金属板にプレス加工等の打ち抜き加工並びに塑性加工を施す事により、一体成形されている。この芯金216は、転がり軸受Oを構成する外輪相当部材1の端部内周面に内嵌固定自在な外径側円筒部222と、この外径側円筒部222の外端縁(図3の左端縁)から直径方向内方に折れ曲がった支持板部223とを備える。このうちの外径側円筒部222は、内端寄り(図3の右寄り)の大径部224と弾性部材217とにより、芯金216を構成する支持板部223の外側面(図3の左側面)全体を覆うと共に、この弾性部材217の外周縁部を、上記嵌合筒部222から連続する傾斜部227の外周面と外輪相当部材1の開口端部内周面との間で挟持している。そして、この構成により、上記芯金216と外輪相当部材1との嵌合部を密封している。また、上記大径部224の自由状態に於ける外径は、外輪相当部材1の外端開口部の内径よりも僅かに大きく設定されており、この大径部224は、外輪相当部材1の外端開口部に、締まり嵌めで内嵌固定自在とされている。また、上記支持板部223は、略S字形の断面形状を有し、直径方向内方(図3の下方)に向かう程空間13内に設置した転動体10、10に近づく方向(図3の右方向)に傾斜している。
【0014】
一方、上記芯金216と共に上記シール装置12bを構成する弾性部材217は、上記芯金216に対してインサート成型し、接着等により接合固定されている。この様な弾性部材217の外周縁部は上記傾斜部227の外周面を覆っている。また、この様な弾性部材217の一部で傾斜部227の外周面を覆っている部分の自由状態での外径は、上記外輪相当部材1の外端開口部の内径よりも少し大きく設定されており、上記大径部224をこの外端開口部に内嵌固定した状態では、上記弾性部材217の一部で傾斜部227の外周面を覆っている部分が、この傾斜部227の外周面と上記外端開口部の内周面との間で弾性的に押圧され、当該部分のシール性を確保する。
【0015】
更に、上記弾性部材217の基部226は、上記支持板部223の外側面(図3の左側面)を、全周に亙り完全に覆っている。また、この基部226の外側面及び内周縁には、外径側、内径側、2本のサイドシールリップ218、219と、1本のラジアルシールリップ220とが形成されていおり、2本のサイドシールリップ218、219を、先端縁(図3の左端縁)に向かう程直径方向外方(図3の上方)に向かう方向に傾斜させる事により、空間13内への異物進入防止機能を確保している。また、上記ラジアルシールリップ220を、先端縁(図3の右下縁)に向かう程上記空間13の内側(図3の右側)に向かう方向に傾斜させる事により、グリースの漏洩防止機能を確保している。
【0016】
また、転がり軸受として、図4に示すような鉄道車両の車輪を支持する車両用転がり軸受を例示することもできる。図4は車両部400を示すものであり、図中右側(車輪側W´)に不図示の車輪が取り付けられ、回転する軸401と、軸401を支持する軸受402とを備えている。そして、軸受402の外輪403が不図示の鉄道車両の車軸ハウジング等に固定される構成である。
【0017】
軸受402は、複列の円すいころ404a,404bが外向きに配置された、所謂密封型複列円すいころ軸受と呼称されるもので、上記車軸ハウジング等に固定される外輪403と、各列別個に分割された内輪405a,405b及び内輪間座406を備えている。また、円すいころ404a,404bは保持器404cにより保持される。この軸受402を軸401の負担荷重を受けるジャーナル部401aの所定位置に固定するために、ジャーナル部401aの車輪側W´は太い外径とした軸首401bを備え、軸首401bに当接する後蓋407及び油切りスリーブ408を介して内輪405bの車輪側端部が当接している。また、ジャーナル部401aの自由端側F´は、軸401の自由端側F´の端部401cにボルト409で固定される前蓋410が取り付けられ、前蓋410の押え部410aに自由端側F´の油切りスリーブ411を介して内輪405aの自由端側端部が当接している。そして、ボルト409を所定のトルクで締め付けることにより、軸受402は軸首401bと前蓋410との間に挟まれて固定される。尚、符号412で示される部材は、ボルト409が弛むのを防止する廻り止め金具である。また、符号413で示される部材は、外部より水や異物が軸受402の内部に侵入すること、及び軸受402の内部に封入されているグリース等の潤滑剤の漏れを防止するためのシール装置であり、軸受402の車輪側W´と自由端側F´の両方に同様の構成で設けられる。
【0018】
シール装置413は、図5に拡大して示されるように(但し、車輪側W´を示す)、外輪403の両端に嵌合固定されるシールケース413a、及びシールケース413aの端部に取り付けられ油切りスリーブ408の外周摺動面に密封当接するオイルシール413bとを備える。オイルシール413bは、シールケース413aの内径側に、スプリングカバー413c及びその内径側に嵌着する補強環413dが嵌め込まれて固定され、外部から矢印A401方向に侵入する水や異物をダストリップ413e及びメインリップ413fにより封止するとともに、軸受402の内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏れを防止している。ダストリップ413e及びメインリップ413fは、弾性材料からなる。尚、符号414で示される部材は、メインリップ413fを付勢するスプリング環である。また、スプリングカバー413cには、油切りスリーブ408の外周摺動面近傍まで延びる径方向部が設けられており、シール装置413の内部を円水ころ側J´とオイルシール側M´とに略分割している。そして、このように分割することにより、オイルシール側M´で発生するリップの磨耗粉が円すいころ側J´に侵入するのが予防されるとともに、円すいころ側J´で発生する金属磨耗粉がオイルシール側M´に侵入するのが予防される。
【0019】
本発明においては、図2に示したシール装置12aの弾性部材107、図3に示したシール装置12bの弾性部材217、図5に示したシール装置413のダストリップ413e、メインリップ413fを、以下に示すゴム組成物の成形体とする。
【0020】
ゴム組成物のベース材料であるアクリロニトリルブタジエンゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルとを共重合した耐油性ゴムとして一般的に広く使用されており、本発明においては市販品を含め制限なく使用することができる。また、アクリロニトリルブタジエンゴムを水素化した水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム、分子内にカルボキシル基を導入したカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴム、更に水素化したカルボキシル化水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム等の各種変性アクリロニトリルブタジエンゴム、更にイソプレンを共重合させたアクリロニトリルブタジエンイソプレンゴム等も使用できる。これらのアクリロニトリルブタジエンゴムは、二種以上を混合して使用することもできる。
【0021】
また、上記アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリルの含有量が少ない順に、低ニトリル、中ニトリル、中高ニトリル、高ニトリル、極高ニトリルに分類されるが、耐熱性や耐油性、耐摩耗性、耐クリープ性、リップ追従性等を考慮すると、中ニトリル、中高ニトリル、高ニトリルが好ましく、その場合のアクリロニトリル含有量は20〜40%である。より好適には、アクリロニトリル含有量が25〜36%のものであり、これらの特性をバランス良く発現する。
【0022】
ゴム組成物には、4,4´−ジチオジモルホリンが必須に添加される。この4,4´−ジチオジモルホリンは下記の構造式で表され、加硫温度において分解して生じた活性硫黄によりゴムを加硫させるため、早期加硫や硫黄のブルーミングを起こさない加硫剤として知られている。また、4,4´−ジチオジモルホリンを用いて加硫された加硫ゴムの架橋形態は、熱的に安定なモノサルファイド結合の割合が多いことから、耐熱性が向上するだけでなく、耐クリープ性や耐応力緩和性が、一般の硫黄を用いて加硫した加硫ゴムに比べて向上するという利点も有する。
【0023】
【化1】
【0024】
4,4´−ジチオジモルホリンの添加量は、特に制限されものではないが、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して0.2〜5重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5重量部である。4,4´−ジチオジモルホリンの添加量が0.2重量部を下回る場合には、加硫不足となり、弾性部材が十分なシール性能を示さない。また、5重量部を超えて多量に添加しても更なるシール性能の向上が認められない。
【0025】
また、ゴム組成物には、硫黄加硫用加硫促進剤が必須に添加される。硫黄加硫用加硫促進剤の種類は特に制限されないが、グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、キサンテート系等の加硫促進剤が挙げられる。これら硫黄加硫用加硫促進剤の添加量は、特に制限されるものではないが、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0026】
尚、後述のように、4,4´−ジチオジモルホリンとともに、架橋剤として硫黄を少量添加することができるが、その場合、チウラム系のテトラメチルチウラムジスルフィド等やジチオカルバメート系のジメチルジチオカルバミン酸亜鉛とスルフェンアミド系のN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、またはチアゾール系のジベンゾチアジル・ジスルフィド等とを併用することが好ましい。
【0027】
また、必須成分ではないが、その他の加硫促進助剤として、酸化亜鉛等の金属酸化物、金属炭酸塩、金属水酸化物、ステアリン酸等の有機酸とその誘導体、及びアミン類等を添加することができる。ベースゴムとしてカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴムを使用した場合には、酸化亜鉛を用いると早期加硫を生じやすいため、過酸化亜鉛とステアリン酸とを併用することが好ましい。過酸化亜鉛は、ゴム組成物の混練り加工時の温度ではそのままゴム組成物中に存在し、加硫成形時に酸化亜鉛を生じるため、混練り加工時及び保管時に早期加硫を生じることがない。これらの添加量は、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して2〜10重量部が好ましい。
【0028】
また、必須成分ではないが、架橋剤として硫黄や有機過酸化物を併用してもよい。硫黄としては、特に制限されるものではないが、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、高分散性硫黄等が挙げられる。また、有機過酸化物としては、特に制限されるものではないが、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、m−トレイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、t−ブチルペルオキシアリルカルボナート等が挙げられ、成形方法や成形温度等に応じて適宜選択される。これらの硫黄や有機過酸化物の添加量は、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0029】
また、有機過酸化物とともに架橋助剤(コエージェント)を併用することもできる。架橋助剤の例としては、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、エチレンジメクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−メチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2,2´−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2´−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、オリゴエステルアクリレート、アルミニウム(メタ)アクリレート、ジンク(メタ)アクリレート、マグネシウム(メタ)アクリレート、カルシウム(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルクロレンデート、ジビニルベンゼン、2−ビニルピリジン、N,N´−メチレンビスアクリルアミド、p−キノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム、1,2−ポリブタジエン、メタクリル酸金属塩等が挙げられる。これら架橋助剤の添加量は、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0030】
また、ゴム組成物には、補強用充填材を添加することが好ましい。中でも、カーボンブラックや無機系の白色計充填材が好適である。カーボンブラックの種類は特に限定されないが、例えばSAF(Super Abrasion Furnace Black)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace Black)、HAF(High Abrasion Furnace Black)、MAF(Medium Abrasion Furnace Black)、FEF(Fast Extruding Furnace black)、GPF(General Purpose Furnace black)、SRF(Simi−Reinforcing Furnace black)、FT(Fine Thermal Furnace black)、MT(Medium Thermal Furnace black)等を挙げることができる。中でも、補強性と成形加工性のバランスに優れたHAF、FEF、GPF及びSRFが好ましく、特にFEF、GPF及びSRFが好ましい。これらのカーボンブラックは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
白色系充填材も特に制限されないが、例えば、含水シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、ウォラストナイト等を挙げることができる。これらの白色系充填材は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記補強用充填材の添加量は特に制限されるものではないが、カーボンブラックを単独使用する場合は、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して15〜120重量部が好ましい。15重量部未満では十分な補強性が発現せず、耐磨耗性も満足する結果が得られない。逆に120重量部を超えて添加しても、補強性と耐磨耗性の更なる向上が認められないだけでなく、成形加工性が極端に低下して製造が困難になり、更には得られる成形体の硬度が高くなりすぎて伸びが低くなり、本来有するゴム弾性が低下してしまい、弾性部材としてシール性能に劣るようになる。
【0033】
また、白色系充填材を単独使用する場合は、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して30〜180重量部が好ましい。30重量部未満では十分な補強性が発現せず、耐磨耗性も満足する結果が得られない。逆に180重量部を超えて添加しても、補強性と耐磨耗性の更なる向上が認められないだけでなく、成形加工性が極端に低下して製造が困難になり、更には得られる成形体の硬度が高くなりすぎて伸びが低くなり、本来有するゴム弾性が低下してしまい、弾性部材としてシール性能に劣るようになる。
【0034】
また、カーボンブラックと白色系充填材とを併用することは、動的特性と耐熱性とを同時に向上でき好ましい。その場合は、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して、カーボンブラックを10〜90重量部、白色系充填材を10〜150重量部とし、かつ合計量で30〜240重量部、より好ましくは40〜200重量部の範囲とすることが好ましい。合計配合量が30重量部未満では十分な補強性が発現せず、耐磨耗性も満足する結果が得られない。逆に240重量部を超えて添加しても、補強性と耐磨耗性の更なる向上が認められないだけでなく、成形加工性が極端に低下して製造が困難になり、更には得られる成形体の硬度が高くなりすぎて伸びが低くなり、本来有するゴム弾性が低下してしまい、弾性部材としてシール性能に劣るようになる。
【0035】
更に、ゴム組成物には、従来から公知の老化防止剤、補強剤、可塑剤、カップリング剤、顔料、染料、離型剤、加工助剤、導電性付与剤等を必要に応じて適宜添加することができる。
【0036】
例えば、酸化劣化を防止する老化防止剤としては、アミン・ケトン縮合生成物、芳香族第二級アミン類、モノフェノール誘導体、ビス又はポリフェノール誘導体、ヒドロキノン誘導体、硫黄系老化防止剤、リン系老化防止剤等が挙げられる。このうち、アミン・ケトン縮合生成物系の2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、ジフェニルアミンとアセトンとの縮合反応物、芳香族第二級アミン系のN,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等が好ましい。
【0037】
また、熱分解を防止して耐熱性を向上するため、上記の老化防止剤とともに2次老化防止剤を併用することがより好ましい。2次老化防止剤としては、例えば、硫黄系の2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール及びこれらの亜鉛塩等が挙げられる。更に、日光あるいはオゾンの作用による亀裂を抑制させる日光亀裂防止剤として、融点が55〜70℃程度のワックス類をアクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して0.5〜2重量部程度添加してもよい。
【0038】
更に、柔軟性や成形加工性を向上させる必要がある場合には、加工助剤が添加される。ただし、成形に特に支障がない場合は特に添加しなくてもよい。添加する場合は、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して3〜40重量部であり、必要以上に添加すると、ゴム組成物が軟化すると同時に、完全に混合されずにブリードアウトし、シール装置を構成する芯金と弾性部材との接着性が極端に低下する。可塑剤の具体例としては、ジオクチルフタレート等のフタル酸ジエステル、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、液状ニトリルゴム等が挙げられる。
【0039】
ところで、車軸と車輪用転がり軸受との間を通電する機構がない場合、走行中に発生する静電気が車両に残ってラジオノイズ等を発生させることがある。このような不具合に対処するために、シール装置の弾性部材を導電化し、車軸と車輪用転がり軸受との通電を図ることが考えられている。その場合の弾性部材の抵抗値は、制限されるものではないが、体積固有抵抗値で105Ω・cm以下が好ましく、ラジオノイズの発生を十分に抑制することが可能になる。
【0040】
弾性部材を導電化する方法は、制限されるものではないが、ゴム組成物に導電性粉末や導電性繊維を添加する方法を採ることができる。導電性粉末としては、黄銅、アルミニウム合金、銅、銀、ニッケル、鉄鋼、ステンレス鋼等の金属粉末、黒鉛、導電性カーボンブラック、酸化錫にアンチモンをドープした導電性酸化錫、酸化亜鉛にアルミニウムをドープした導電性酸化亜鉛、酸化インジウムに錫をドープした導電性酸化インジウム等の導電性材料を粉末状にしたもの、マイカ等の絶縁材料の粉末に導電性コーティングを施した導電性無機粉末等が挙げられる。また、導電性繊維としては、カーボン繊維、金属繊維(黄銅、アルミニウム合金、銅、銀、ニッケル、鉄鋼、ステンレス鋼等からなる繊維)、非導電性繊維に導電性コーティングを施したもの等が挙げられる。中でも、アセチレンブラックやケッチェンブラックのように硬度にグラファイト構造が発達した導電性カーボンブラックは、より少量で優れた導電性が得られるため好ましい。これら導電性カーボンブラックの添加量は、制限されるものではないが、アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して1〜20重量部、より好ましくは2〜10重量の範囲である。添加量が1重量部未満では十分な導電性(105Ω・cm以下の体積固有抵抗値)が付与されず、ラジオノイズの抑制も満足する結果が得られない。逆に20重量部を超えて添加すると、加工性が極端に低下し、実質的に製造が困難になるだけでなく、成形体の硬度が高くなりすぎて伸びが低くなり、本来有するゴム弾性が低下して弾性部材としてシール性能に劣るようになる。
【0041】
物性面に言及すると、ゴム組成物の硬度は、上記に挙げた各種充填剤の添加量等によって影響を受けるが、車輪用転がり軸受のシール装置に適用した際の密封性、追従性から、JISK6301に記載のスプリング硬さAスケールで、50〜90の範囲が好ましく、より好ましくは60〜80の範囲である。前記硬さが50未満の場合には、シール装置の摩擦抵抗が大きくなるとともに耐摩耗性が低下する。また、前記硬さが90を超えると、シールの緊迫力が大きくなりすぎ、回転トルクが過大になるだけでなく、前述のようにゴム弾性が低下するので、シール装置のリップ部の密封性、追従性が低下し、塵埃が多い環境や泥水に曝される状況において使用すると、転がり軸受の寿命が低下するおそれがある。
【0042】
上記の各成分を用いて弾性部材の原料となるゴム組成物を得るための方法は特に限定されないが、アクロリニトリルブタジエンゴムと、架橋系添加剤(有機過酸化物、硫黄系加硫剤及び硫黄加硫用加硫促進剤)、補強用充填材、各種添加剤とを、ゴム混練ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等の従来から公知のゴム用混練り装置を用いて均一に混練りすることが可能である。混練り条件は特に限定されないが、通常は30〜150℃の温度で、5〜60分間混練りすることによって、配合物の十分な分散を図ることができる。
【0043】
また、上記ゴム組成物をシール装置の弾性部材とするための方法も特に限定されないが、未加硫のゴム組成物を金型の中で加圧しながら加熱すれば良く、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の公知のゴム成形方法により製造することができる。例えば、圧縮成形の場合、金型の中に予め接着剤を塗布した芯金(シール装置の芯部を形成)を挿入し、先に述べた方法で製造した未加硫ゴム組成物のシートを乗せ、通常120〜200℃で30秒〜30分程度加圧加硫することで製造することができる。また、必要に応じて、120〜200℃で10分〜10時間程度後架橋してもよい。
【0044】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0045】
(実施例1〜8、比較例1〜6)
表1に示す材料の中で、有機過酸化物、加硫剤及び加硫促進剤を除く各添加剤と、ゴム材料とを、それぞれ表記される割合にて加圧ニーダーに投入し、ゴム材料の温度が150℃になるまで混練りを行った。次いで、混練物に有機過酸化物、加硫剤及び加硫促進剤を、それぞれ表記される量にて添加し、8インチロール(回転数20rpm、32rpm)を用いて設定温度50℃にて混練りを行い、厚さ2.2mmの未加硫ゴムシートを作製した。
【0046】
そして、図2に示した自動車の車輪支持用転がり軸受のシール装置12aと同形状のシール装置を作製した。作製に際して、シール装置金型内に、予め洗浄し、接着剤を塗布して焼付けた冷延鋼板製の芯金105を挿入し、そこへ上記の未加硫ゴムシートを載置し、180℃で10分間、圧力50kgf/cm2を負荷して加硫成形を行った。そして、得られた部材に、スリンガ106を装着してシール装置を得た。尚、有機過酸化物を架橋剤に用いたものについては、金型から取り出し、オーブン中で150℃にて2時間、後架橋を行った。このようにして得られたシール装置を、後述する密封性試験に供した。
【0047】
また、180℃に加熱した熱プレスに、厚さ2mm用のシート成形金型を装着し、そこへ上記の未加硫ゴムシートを載置し、15分間、圧力50kgf/cm2を負荷して加熱し、縦150mm、横150mm、厚さ2mmの加硫ゴムシートを得た。尚、有機過酸化物を架橋剤に用いたものについては、金型から取り出し、オーブン中で150℃にて3時間、後架橋を行った。このようにして得られた加硫ゴムシートを、後述する常態物性測定に供した。
【0048】
【表1】
【0049】
尚、表中に示した各材料は以下の通りである。
1)原料ゴムA:中高ニトリルゴム(日本ゼオン製「Nipol DN3350」、アクリロニトリル単量体の比率33%)
2)原料ゴムB:低ニトリルゴム(JSR製「JSR N250S」、アクリロニトリル単量体の比率20%)
3)原料ゴムC:高ニトリルゴム(JSR製「JSR N220S」、アクリロニトリル単量体の比率41%)
4)原料ゴムD:水素添加中高ニトリルゴム(日本ゼオン製「Zetpol 2020」、アクリロニトリル単量体の比率36%)
5)カーボンブラックA:HAF級カーボンブラック(三菱化学製「ダイヤブラックH」)
6)カーボンブラックB:SRF級カーボンブラック(東海カーボン製「シーストS」)
7)クレー:焼成クレー(Engelhard Minerals製「サティントン#5」)
8)加硫剤A:高分散性硫黄(鶴見化学工業製「Sulfax PMC」)
9)加硫剤B:4,4´−ジチオジモルホリン(大内新興化学工業製「バルノックR」)
10)加硫促進剤A:テトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業製「ノクセラーTT」)
11)加硫促進剤B:ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業製「ノクセラーPZ」)
12)加硫促進剤C:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド(大内新興化学工業製「ノクセラーCZ」)
13)加硫促進助剤A:ステアリン酸(花王製「LunacS−20」)
14)加硫促進助剤B:酸化亜鉛(堺化学製「フランス法1号」)
15)加工助剤:脂肪酸金属塩(Technical Processing製「TE80」)
16)有機過酸化物:ジクミルペルオキシド(化薬アクゾ製「カヤクミルD−40K」、有効成分40%)
17)可塑剤:アジピン酸系ポリエステル(池電化製「アデカサイザーPN−150」)
18)老化防止剤A:4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業製「ノクラックCD」)
19)老化防止剤B:2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(大内新興化学工業製「ノクラックMBZ」)
20)老化防止剤C:特殊ワックス(大内新興化学工業製「サンノック」)
21)カップリング剤A:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製「KBM803」)
22)カップリング剤B:ビニル・トリス(β−メトキシエトキシ)シラン(日本ユニカー製「A−172」)
【0050】
(密封性試験)
作製したシール装置について、図6に示すシール回転試験機を用い、泥水中に浸漬された場合を想定して密封性試験を実施した。尚、図示されるシール回転試験機は、軸101にシール装置12a(内径60mm)を組込み、内部に貯留した泥水102に浸漬させながら所定の回転速度で回転させる構成となっている。また、シールが破られて泥水102が反泥水側に浸入すると、漏電センサ103により検知する構成となっている。試験条件は以下の通りであり、漏水が検知されるまでの時間を測定し、結果を表2に泥水耐久時間として示した。
・回転速度:1300rpm
・軸偏心:0.5mm TIR
・泥水組成:JIS8種ダスト30%
・グリース:ウレア化合物、鉱油
・グリース塗布量:外側シールリップと中間シールリップとの間に0.3g、中間シールリップと内側シールリップとの間に0.1g
【0051】
(常態物性測定)
・硬さ試験:加硫ゴムシートをJIS ダンベル状3号形試験片の形状に打ち抜き、これを3枚重ねてJIS K6301に基づいて硬さ(スプリング硬さAステール)を測定した。結果を表2に硬さとして示した。
・引張試験:加硫ゴムシートをJIS ダンベル状3号形試験片の形状に打ち抜き、これを島津製作所製の万能型試験機「オートグラフAG−10KNG」を用いてJIS K6301に基づいて引張試験を行い、引張破断強度及び伸びを測定した。結果を表2に引張強さ及び伸びとしてそれぞれ示した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、本発明に従い、アクリロニトリルブタジエンゴムに、4,4´−ジチオジモルホリン及び硫黄加硫用加硫促進剤を配合したゴム組成物を成形してなる弾性部材を備える実施例のシール装置は、何れも泥水耐久時間が長く、また加工性、物性にも優れており、本発明による効果が確認された。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の転がり軸受は、泥水に浸漬するような過酷な環境下で使用されても、優れた密封性能を有し、長期にわたり所望の性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受の一例(車両用転がり軸受)を示す断面図である。
【図2】図1に示した転がり軸受の一方のシール装置(12a)の拡大図である。
【図3】図1に示した転がり軸受の他方のシール装置(12b)の拡大図である。
【図4】本発明の転がり軸受の他の例(鉄道車両用転がり軸受)を示す断面図である。
【図5】図4に示した転がり軸受のシール装置の拡大図である。
【図6】実施例において密封性試験に用いた試験装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
O 転がり軸受
1 外輪相当部材
4 内輪相当部材
10 転動体
11 保持器
12a シール装置
12b シール装置
105 芯金
106 スリンガ
107 弾性部材
217 弾性部材
402 軸受
403 外輪
404a,404b 円すいころ
405a,405b 内輪
413 シ−ル装置
413b オイルシール
Claims (1)
- 内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、前記転動体を円周方向にわたって互いに間隔を開けた状態で転動自在に保持する保持器と、前記外輪の内周面と前記内輪の外周面との間で前記転動体を設けた空間の軸方向開口部を塞ぐシール装置とを備えた転がり軸受において、
前記シール装置を構成する弾性部材が、アクリロニトリルブタジエンゴムに少なくとも4,4´−ジチオジモルホリン及び硫黄加硫用加硫促進剤を配合したゴム組成物からなる成形体であることを特徴とする転がり軸受。
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