JP2004011492A - NOxセンサの基準点学習方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両減速時で且つ燃料の供給が停止されているときに吸入空気量を増加させ且つEGRガス量を減少させつつ、このときに検出されるNOx濃度を基準点として学習させる。ここで、燃料供給停止時には吸入された空気がそのまま排出される。このときに、吸入空気を増加させることによりNOxを含んだ排気を速やかに排出させることができる。また、EGRガス量を減少させてNOxを含んだ排気の還流を抑制することができる。これらによりNOx濃度が速やかにゼロとなり、このときのセンサ出力値を基準点として学習させることができる。
【選択図】図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、NOxセンサの基準点学習方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)の濃度を検出するNOxセンサが知られている。このNOxセンサは、NOxの濃度に応じた電気信号を発信するが、NOxの濃度がゼロとなるときの出力値が個体差や経時変化等により変化してしまうという特性を有している。
【0003】
ここで、特開平11−148910号公報では、内燃機関の燃料カット時にNOx濃度がゼロとなることに着目し、このときのセンサ出力を基準点としてセンサ出力を校正している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関から排出されるNOxを浄化する手段として排気通路へNOx触媒を備えることがある。このNOx触媒が劣化すると、少量ではあるがNOxが下流へ流出することがある。このようにして流出したNOxは、NOxセンサに検出されてしまうので、そのときのNOxの濃度をゼロとして学習してしまうとNOx濃度の判定に誤差を生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、NOxセンサの基準点学習方法において、基準点を精度良く学習させることができる技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために本発明の内燃機関の排気浄化装置は、以下の手段を採用した。即ち、
車両減速時で且つ燃料の供給が停止されているときに吸入空気量を増加させ且つEGRガス量を減少させつつ、このときに検出されるNOx濃度を基準点として学習させることを特徴とする。
【0007】
本発明の最大の特徴は、車両減速時で且つ燃料の供給が停止されているときに吸入空気量を増加させ且つEGR量を減少させて、NOxを含んだ排気を速やかに排出させて基準点を学習させることを特徴とする。
【0008】
一般に、車両減速時には燃料の供給が停止される。このような状態で吸入された空気は、そのまま排気となって排出される。このときの排気はNOxをほとんど含有していないためNOxセンサの基準点を学習させるには好適である。しかし、EGRを行っていると、EGRガス中に含まれているNOxが還流するため、排気中のNOx濃度がゼロとなるまでに時間を要してしまう。これに対し、EGR量を減少させる若しくはEGRを停止させることにより、排気中のNOx濃度を速やかにゼロとすることが可能となる。また、機関に吸入される新気の量を増加させることにより、機関内部や排気系に残留しているNOxを速やかに排出させて排気中のNOx濃度を速やかにゼロとすることが可能となる。
【0009】
本発明においては、吸気絞り弁を開き側へ制御し且つEGR弁を閉じ側へ制御して吸入空気量を増加させ且つEGRガス量を減少させることができる。
【0010】
EGR弁を閉め側へ制御することにより、NOxセンサに検出されるNOxを減少させることができ、NOxセンサの基準点算出の精度を向上させることができる。更に、吸気絞り弁を開き側へ制御することにより、機関に吸入される新気の量が増大し、機関内部や排気系に残留しているNOxを排出させ、NOxセンサの基準点の学習を速やかに精度良く行うことが可能となる。その他にも、吸気の過給圧を所望の圧力とすべくタービンホイールに吹き付けられる排気の流速をノズルベーンの開閉により可変とする可変容量型ターボチャージャを備えた内燃機関では、該ノズルベーンを開き側へ制御しても良い。更に、排気絞り弁を備えた内燃機関では、該排気絞り弁を開き側へ制御しても良い。これらによっても、NOxを含んだ排気を速やかに排出させることが可能となる。
【0011】
本発明においては、NOx触媒の下流に設けられたNOxセンサの基準点を学習させることができる。
【0012】
NOxセンサは、NOx触媒が有効にNOxの浄化を行っているか検出するためにNOx触媒の下流に設けられることがある。このようなNOx触媒の下流に設けられたNOxセンサであっても、基準点の学習精度を向上させることが可能となる。
【0013】
本発明においては、基準点を学習させる前にNOx触媒のNOx吸蔵能力が十分であるか否か判定することができる。
【0014】
NOx触媒のNOx吸蔵能力が十分である場合には、該NOx触媒からNOxがほとんど流出しないため精度の良い基準点学習が可能となる。
【0015】
本発明においては、十分なNOxの還元が行われた直後にNOx吸蔵能力が十分であると判定することができる。
【0016】
このようなNOxセンサの基準点学習方法では、十分なNOxの還元を行った直後にはNOx触媒にほとんどNOxが吸蔵されていないので、該NOx触媒からNOxが流出することがなく、精度の良いNOxセンサの基準点学習が可能となる。
【0017】
本発明においては、NOx触媒のSOx被毒回復直後にNOx吸蔵能力が十分であると判定することができる。
【0018】
このようなNOxセンサの基準点学習方法では、SOx被毒回復が行われた直後にはNOx触媒にほとんどNOxが吸蔵されていないので、該NOx触媒からNOxが流出することがなく、また、NOx吸蔵能力が十分なため残留したNOxを吸蔵することができ、従って精度の良いNOxセンサの基準点学習が可能となる。
【0019】
本発明においては、NOx触媒が十分なNOx吸蔵能力を発揮可能な温度のときにNOxセンサの基準点を学習させることができる。
【0020】
このようなNOxセンサの基準点学習方法では、NOx触媒が十分なNOx吸蔵能力を発揮可能な温度のときには排気中に残留しているNOxがNOx触媒に吸蔵されるため、NOxセンサ周辺の雰囲気のNOx濃度をゼロとすることが可能となる。
【0021】
本発明においては、NOx触媒の新品時においてNOxセンサの基準点を学習させることができる。
【0022】
このようなNOxセンサの基準点学習方法では、NOx触媒が新品のときにはNOx吸蔵能力が十分に発揮されるため、該NOx触媒からNOxの流出がほとんどなく、精度の良いNOxセンサの基準点学習が可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るNOxセンサの基準点学習方法の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。ここでは、本発明に係るNOxセンサの基準点学習方法を車両駆動用のディーゼル機関の排気系に備えられたNOxセンサに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態によるエンジンとその吸排気系の概略構成を示す図である。本実施の形態では、4つの気筒2を備えた気筒内直接噴射式ディーゼルエンジンを採用した。
【0025】
エンジン1は、各気筒2の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁3を備えている。各燃料噴射弁3は、燃料を所定圧まで蓄圧する蓄圧室(コモンレール)4と接続されている。
【0026】
前記コモンレール4は、燃料供給管5を介して燃料ポンプ6と連通している。この燃料ポンプ6は、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)の回転トルクを駆動源として作動するポンプであり、該燃料ポンプ6の入力軸に取り付けられたポンププーリ6aがエンジン1の出力軸(クランクシャフト)に取り付けられたクランクプーリ1aとベルト7を介して連結されている。
【0027】
このように構成された燃料噴射系では、クランクシャフトの回転トルクが燃料ポンプ6の入力軸へ伝達されると、燃料ポンプ6は、クランクシャフトから該燃料ポンプ6の入力軸へ伝達された回転トルクに応じた圧力で燃料を吐出する。
【0028】
前記燃料ポンプ6から吐出された燃料は、燃料供給管5を介してコモンレール4へ供給され、コモンレール4にて所定圧まで蓄圧されて各気筒2の燃料噴射弁3へ分配される。そして、燃料噴射弁3に駆動電流が印加されると、燃料噴射弁3が開弁し、その結果、燃料噴射弁3から気筒2内へ燃料が噴射される。
【0029】
また、エンジン1には、吸気枝管8が接続されており、吸気枝管8の各枝管は、各気筒2の燃焼室と吸気ポート(図示省略)を介して連通している。
【0030】
前記吸気枝管8は、吸気管9に接続され、該吸気管9の途中には、排気の熱エネルギを駆動源として作動する遠心過給機(ターボチャージャ)15のコンプレッサハウジング15aが設けられている。
【0031】
前記吸気管9における吸気枝管8の直上流に位置する部位には、該吸気管9内を流通する吸気の流量を調節する吸気絞り弁10が設けられている。この吸気絞り弁10には、ステップモータ等で構成されて該吸気絞り弁10を開閉駆動する吸気絞り用アクチュエータ11が取り付けられている。
【0032】
このように構成された吸気系では、吸気は吸気管9を介してコンプレッサハウジング15aに流入する。コンプレッサハウジング15aに流入した吸気は、該コンプレッサハウジング15aに内装されたコンプレッサホイールの回転によって圧縮された後、吸気枝管8に流入する。吸気枝管8に流入した吸気は、各枝管を介して各気筒2の燃焼室へ分配され、各気筒2の燃料噴射弁3から噴射された燃料を着火源として燃焼される。
【0033】
一方、エンジン1には、排気枝管12が接続され、排気枝管12の各枝管が排気ポート1bを介して各気筒2の燃焼室と連通している。
【0034】
前記排気枝管12は、前記遠心過給機15のタービンハウジング15bと接続されている。前記タービンハウジング15bは、排気管13と接続され、この排気管13は、下流にてマフラー(図示省略)に接続されている。
【0035】
前記排気管13の途中には、吸蔵還元型NOx触媒を担持したパティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタという。)14が設けられている。フィルタ14は、PMを捕獲するとともに、流入する排気の空燃比がリーンのときに還元剤の存在下において吸蔵したNOxを還元する機能を有する。このフィルタ14より下流の排気管13には、該排気管13内を流通する排気中のNOx濃度に対応した電気信号を出力するNOxセンサ16が取り付けられている。
【0036】
このように構成された排気系では、エンジン1の各気筒2で燃焼された混合気(既燃ガス)が排気ポート1bを介して排気枝管12へ排出され、次いで排気枝管12から遠心過給機15のタービンハウジング15bへ流入する。タービンハウジング15bに流入した排気は、該排気が持つエネルギを利用してタービンハウジング15b内に回転自在に支持されたタービンホイールを回転させる。その際、タービンホイールの回転トルクは、前述したコンプレッサハウジング15aのコンプレッサホイールへ伝達される。
【0037】
前記タービンハウジング15bから排出された排気は、排気管13を介してフィルタ14へ流入し、排気中のPMが捕集され且つ有害ガス成分が除去又は浄化された後マフラーを介して大気中に放出される。
【0038】
また、排気枝管12と吸気枝管8とは、排気枝管12内を流通する排気の一部を吸気枝管8へ再循環させるEGR通路(以下、EGR通路とする。)17を介して連通されている。このEGR通路17の途中には、電磁弁などで構成され、印加電力の大きさに応じて前記EGR通路17内を流通する排気(以下、EGRガスとする。)の流量を変更する流量調整弁(以下、EGR弁とする。)18が設けられている。
【0039】
このように構成されたEGR機構では、EGR弁18が開弁されると、EGR通路17が導通状態となり、排気枝管12内を流通する排気の一部が前記EGR通路17へ流入し、吸気枝管8へ導かれる。吸気枝管8へ還流されたEGRガスは、吸気枝管8の上流から流れてきた新気と混ざり合いつつ各気筒2の燃焼室へ導かれる。
【0040】
ここで、EGRガスには、水(H2O)や二酸化炭素(CO2)などのように、自らが燃焼することがなく、且つ、熱容量が高い不活性ガス成分が含まれているため、EGRガスが混合気中に含有されると、混合気の燃焼温度が低められ、以て窒素酸化物(NOx)の発生量が抑制される。
【0041】
次に、本実施の形態によるNOxセンサ16について説明する。
【0042】
図2は、本実施の形態によるNOxセンサ16の概略構造を示した図である。
【0043】
NOxセンサ16は、第1酸素イオンポンプセル70、酸素濃度測定セル71、第2酸素イオンポンプセル72の順に積層されて構成されている。第1酸素イオンポンプセル70と酸素濃度測定セル71との間には絶縁層73が、酸素濃度測定セル71と第2酸素イオンポンプセル72との間には絶縁層74が夫々介在している。
【0044】
第1酸素イオンポンプセル70は、固体電解質層75及び該固体電解質層75を挟んだ一対の多孔質電極76a、76bを備えて構成されている。酸素濃度測定セル71は、固体電解質層77及び該固体電解質層77を挟んだ一対の多孔質電極78a、78bを備えて構成されている。第2酸素イオンポンプセル72は、固体電解質層79及び該固体電解質層79の表面に設けられた一対の電極80a、80bを備えて構成されている。第1酸素イオンポンプセル70と酸素濃度測定セル71と絶縁層73とにより囲まれた空間により第1測定室81が形成され、一方、酸素濃度測定セル71と第2酸素イオンポンプセル72と絶縁層74とにより囲まれた空間により第2測定室82が形成されている。第1測定室81と第2測定室82とは、多孔質物質により形成された拡散孔83を介して連通されている。
【0045】
このように構成されたNOxセンサ16では、排気管を流通する排気が第1測定室81に導入される。ここで、NOを僅かに分解させる程度の電圧が第1酸素イオンポンプセル70に印加される。このとき、酸素濃度測定セル71からの出力電圧が一定となるように第1酸素イオンポンプセル70に印加する電圧がフィードバック制御され、第1酸素イオンポンプセル70の電極76a、76b間には第1ポンプ電流が流れる。更に、NOxを分解させる程度の電圧が第2酸素イオンポンプセル72に印加され、第2酸素イオンポンプセル72の電極80a、80b間には、第2ポンプ電流が流れる。
【0046】
第1測定室81では、排気中の酸素は、電極76bに接触することによりイオン化し、その酸素イオンが第1酸素イオンポンプセル70の作用で第1測定室81の外へと汲み出される。
【0047】
また、第1測定室81内に残留するガスは、拡散孔83を介して第2測定室82へと拡散する。この第2測定室82では、NOxが窒素と酸素とに分解され、その酸素がイオン化して、第2酸素イオンポンプセルの作用で第2測定室82の外へと汲み出される。このときに、第1酸素イオンポンプセル70に流れる第1ポンプ電流の電流値が排気中の酸素濃度に応じた値を示し、一方、第2酸素イオンポンプセル72に流れる第2ポンプ電流の電流値が排気中のNOx濃度に応じた値を示す。このように、本実施の形態によるNOxセンサ16によれば、排気中の酸素濃度とNOx濃度とを同時に検出することができる。
【0048】
次に、本実施の形態によるフィルタ14について説明する。本実施の形態に係るフィルタ14は、例えばコージェライトのような多孔質材料から形成され、例えば、アルミナを担体とし、その担体上に、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、もしくはセシウム(Cs)等のアルカリ金属と、バリウム(Ba)もしくはカルシウム(Ca)等のアルカリ土類と、ランタン(La)もしくはイットリウム(Y)等の希土類とから選択された少なくとも1つと、白金(Pt)等の貴金属とを担持して構成されている。尚、本実施の形態では、アルミナからなる担体上にバリウム(Ba)と白金(Pt)とを担持し、更にO2ストレージ能力のあるセリア(Ce2O3)を添加して構成される吸蔵還元型NOx触媒(以下、単に「NOx触媒」という。)を採用した。
【0049】
このように構成されたNOx触媒は、該NOx触媒に流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中の窒素酸化物(NOx)を吸蔵する。
【0050】
一方、NOx触媒は、該NOx触媒に流入する排気の酸素濃度が低下したときは吸蔵していた窒素酸化物(NOx)を放出する。その際、排気中に炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等の還元成分が存在していれば、NOx触媒は、該NOx触媒から放出された窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)等に還元せしめることができる。
【0051】
以上述べたように構成されたエンジン1には、該エンジン1を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)19が併設されている。このECU19は、エンジン1の運転条件や運転者の要求に応じてエンジン1の運転状態を制御するユニットである。
【0052】
ECU19には、NOxセンサ16等の各種センサが電気配線を介して接続され、上記した各種センサの出力信号がECU19に入力されるようになっている。
【0053】
一方、ECU19には、燃料噴射弁3、吸気絞り用アクチュエータ11、EGR弁18、還元剤噴射弁20等が電気配線を介して接続され、上記した各部をECU19が制御することが可能になっている。
【0054】
また、ECU19は、各種アプリケーションプログラム及び制御マップを記憶している。
【0055】
ところで、エンジン1が希薄燃焼運転されている場合は、エンジン1から排出される排気の空燃比がリーン雰囲気となり排気の酸素濃度が高くなるため、排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)がNOx触媒に吸蔵されることになるが、エンジン1の希薄燃焼運転が長期間継続されると、NOx触媒のNOx吸蔵能力が飽和し、排気中の窒素酸化物(NOx)がNOx触媒にて除去されずに大気中へ放出されてしまう。
【0056】
特に、エンジン1のようなディーゼル機関では、大部分の運転領域においてリーン空燃比の混合気が燃焼され、それに応じて大部分の運転領域において排気の空燃比がリーン空燃比となるため、NOx触媒のNOx吸蔵能力が飽和し易い。尚、ここでリーン空燃比とは、ディーゼル機関にあっては例えば20乃至50で、三元触媒ではNOxを浄化できない領域を意味する。
【0057】
従って、エンジン1が希薄燃焼運転されている場合は、NOx触媒のNOx吸蔵能力が飽和する前にNOx触媒に流入する排気中の酸素濃度を低下させるとともに還元剤の濃度を高め、NOx触媒に吸蔵された窒素酸化物(NOx)を還元させる必要がある。
【0058】
このように酸素濃度を低下させる方法としては、排気中への燃料添加や、再循環するEGRガス量を増大させて煤の発生量が増加して最大となった後に、更にEGRガス量を増大させる低温燃焼(特許第3116876号)、気筒2内への膨張行程中の燃料噴射等の方法が考えられる。
【0059】
尚、本実施の形態では、フィルタ14より上流の排気管13を流通する排気中に還元剤たる燃料(軽油)を添加する還元剤供給機構を備え、この還元剤供給機構から排気中へ燃料を添加することにより、フィルタ14に流入する排気の酸素濃度を低下させるとともに還元剤の濃度を高めるようにした。
【0060】
還元剤供給機構は、図1に示されるように、その噴孔が排気枝管12(排気ポート1b)内に臨むように取り付けられ、ECU19からの信号により開弁して燃料を噴射する還元剤噴射弁20と、前述した燃料ポンプ6から吐出された燃料を前記還元剤噴射弁20へ導く還元剤供給路21と、を備えている。
【0061】
このような還元剤供給機構では、燃料ポンプ6から吐出された高圧の燃料が還元剤供給路21を介して還元剤噴射弁20へ印加される。そして、ECU19からの信号により該還元剤噴射弁20が開弁して排気枝管12(排気ポート1b)内へ還元剤としての燃料が噴射される。
【0062】
還元剤噴射弁20から排気枝管12(排気ポート1b)内へ噴射された還元剤は、排気枝管12(排気ポート1b)の上流から流れてきた排気の酸素濃度を低下させる。
【0063】
このようにして形成された酸素濃度の低い排気は前述したターボチャージャ15を介して下流のフィルタ14に流入し、フィルタ14に吸蔵されていたNOxを還元することになる。
【0064】
その後、ECU19からの信号により還元剤噴射弁20が閉弁し、排気枝管12(排気ポート1b)内への還元剤の添加が停止される。
【0065】
このようにして、フィルタ14に還元剤が供給されてNOxの還元が行われる。
【0066】
一方、NOx触媒には燃料に含まれる硫黄分が燃焼して生成される硫黄酸化物(SOx)もNOxと同じメカニズムで吸蔵される。このように吸蔵されたSOxはNOxよりも放出されにくく、NOx触媒内に蓄積される。これを硫黄被毒(SOx被毒)といい、NOx吸蔵能力が低下するため、適宜の時期にSOx被毒から解消させる被毒解消処理を施す必要がある。この被毒解消処理は、NOx触媒を高温にしつつ前記還元剤の添加により行われる。
【0067】
ところで、NOxセンサ16は、個体差によりNOx濃度がゼロのときの出力値(基準点)が異なり、また、経時変化等によっても基準点が変化することがある。
【0068】
ここで、図3は、複数のNOxセンサの出力信号値を比較した図である。この例によれば、NOx濃度とセンサ出力値とは比例関係にあり、個体差によりNOx濃度がゼロのときのセンサ出力値(基準点)はそれぞれ異なっている。しかし、基準点は異なっているもののNOx濃度とセンサ出力との比例関係は同一のため、NOx濃度がゼロになる点(基準点)と予め定められた値との差を求めれば、NOxセンサの出力信号から前記求められた差を減じることによりNOx濃度を精度良く求めることができる。
【0069】
ここで、従来のNOxセンサの基準点学習方法では、車両減速時で且つ燃料供給停止時にNOxセンサの校正を行っていた。車両減速時には、一般に燃料の供給が停止されるため、このときには排気管に空気が流通することになる。従って、NOx濃度がゼロとなりNOxセンサの校正が可能となる。
【0070】
ここで、図4は、車両減速時の実際のNOx濃度及び車速の時間推移を示したタイムチャート図である。車両の減速に従いNOx濃度は低下するがゼロとはならない。これは、少量ではあるがNOx触媒からNOxが流出しているためである。このようなときにNOxセンサの基準点を学習させると、その後NOxセンサにより検出されるNOx濃度が実際のNOx濃度よりも低く表されてしまう。
【0071】
一方、燃料供給停止時であっても排気管内には排気が残留しているため、NOx濃度がゼロとなるまでに時間を要する。また、EGRガスが還流しているとNOxも一緒に還流してしまい、やはりNOx濃度がゼロとなるまでに時間を要してしまう。
【0072】
そこで、本実施の形態では、NOx触媒にNOxが吸蔵されていない状態であって且つ車両減速時の燃料供給停止時において、吸気絞り弁10を開き側へ制御して吸気量を増加させ、EGR弁を閉じ側へ制御してEGRガス量を減少させてNOxセンサの基準点の学習を行う。
【0073】
ここで、図5は、NOx触媒に吸蔵されたNOxの還元が不十分な場合であって、車両減速時で且つ燃料供給停止時に吸気絞り弁10を開弁させEGR弁18を閉弁させたときの車速及びNOx濃度の時間推移を示したタイムチャート図である。
【0074】
図4に示される場合と比較して、排気管内の排気が速やかに空気と入れ換わるため、NOx濃度の低下は早くなる。しかし、NOx触媒からのNOxの流出によりNOx濃度はゼロにならない。
【0075】
次に、図6は、NOx触媒に吸蔵されたNOxの還元が十分に行われた直後の場合であって、車両減速時で且つ燃料供給停止時に吸気絞り弁10を開弁させEGR弁18を閉弁させたときの車速及びNOx濃度の時間推移を示したタイムチャート図である。
【0076】
図5に示される場合と比較して、NOx触媒からのNOxの流出がなく速やかにNOx濃度がゼロとなる。このように、速やかにNOx濃度をゼロにすることができればNOxセンサの校正を速やかに行うことができ、NOxセンサ校正の機会を増加させることができる。
【0077】
次に、本実施の形態によるNOxセンサの基準点学習方法について説明する。
【0078】
図7、8は、本実施の形態によるNOxセンサの基準点学習方法のフローを示したフローチャート図である。図7、8中の▲1▼及び▲2▼は夫々同一点を示している。
【0079】
ステップS101では、NOxセンサ16の基準点校正に適した状態であるか否か判定する。例えば、NOx触媒が劣化していない新品時のときや、SOx被毒回復完了直後等であるか否か判定される。ここで、NOx触媒が新品時のときやSOx被毒回復完了直後であれば、NOx吸蔵能力が十分にあり、NOx触媒からNOxの流出がほとんどない。そこで、本実施の形態では、このような場合に限りNOxセンサ16の校正を行う。なお、SOx被毒回復制御が行われた後に毎回NOxセンサ16の校正を行うようにしても良い。
【0080】
ステップS101で肯定判定がなされた場合にはステップS102へ進み、一方、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0081】
ステップS102では、NOxセンサ16が活性状態であるか否か判定する。NOxセンサ16は所定の温度領域以外ではNOxの検出が困難となるため、所定の温度領域内にある場合に限りNOxセンサ16の校正を行う。
【0082】
NOxセンサ16の温度は、例えば、NOxセンサ16を昇温させるための電気ヒータ(図示省略)が備えられている場合には、該電気ヒータの通電抵抗を電流及び電圧から算出し、予め実験等により求めておいた通電抵抗と電気ヒータの温度との関係から電気ヒータの温度を求め、この値をNOxセンサ16の温度としても良い。また、機関運転状態により推定しても良いし、若しくは排気の温度を検出する排気温度センサ(図示省略)等の値を用いても良い。
【0083】
ステップS102で肯定判定がなされた場合にはステップS103へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS102へ戻る。
【0084】
ステップS103では、NOx触媒に還元剤を添加することができる状態であるか否か判定する。例えば、機関回転数及び機関負荷をパラメータとした還元剤添加領域マップに基づいて、還元剤添加領域であるか否か判定される。この還元剤添加領域であれば還元剤噴射弁から還元剤が添加される。機関回転数はクランクシャフトの回転位置を検出するクランク角センサ(図示省略)等により求め、一方、機関負荷は燃料噴射量やアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ(図示省略)等により求めることができる。
【0085】
ステップS103で肯定判定がなされた場合にはステップS104へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS105へ進む。
【0086】
ステップS104では、還元剤の連続添加時間を示す還元剤添加カウンタに1を加算する。
【0087】
ステップS105では、還元剤添加カウンタをリセットする。
【0088】
ステップS106では、還元剤添加カウンタが所定値よりも大きいか否か判定される。この所定値は、NOx触媒からNOxが十分に放出されるのに必要な値である。所定値は、機関運転状態の履歴から求まるNOxの吸蔵量を予め実験等により求め、この値を用いても良い。
【0089】
ステップS106で肯定判定がなされた場合にはステップS107へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS102へ戻る。
【0090】
ステップS107では、NOxセンサ16の基準点の学習を許可するか否かを示したNOxセンサ学習実行フラグをONにする。
【0091】
ステップS108では、車両が減速状態であり且つ燃料の供給が停止されているか否か判定される。車両の減速は、車両の速度に応じたパルス信号を発信するスピードセンサ(図示省略)の出力信号の変化量から判定する。また、燃料の供給は、ECU19により制御されているため、該ECU19から燃料噴射弁の制御信号が発信されていなければ燃料の供給が停止されていると判定することができる。
【0092】
ステップS108で肯定判定がなされた場合にはステップS109へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS102へ戻る。
【0093】
ステップS109では、吸気絞り弁10を全開、EGR弁18を全閉とし、車両の減速時間を示す減速カウンタに1を加算する。
【0094】
ステップS110では、減速カウンタが所定値以上で且つ触媒床温が所定範囲内であるか否か判定される。ここで、減速状態が所定時間以上継続すると、図6に示されるようにNOx濃度がゼロとなる。このNOx濃度がゼロとなる時間を予め実験等により求めてECU19に所定値として記憶させておく。また、減速状態が継続するとフィルタ14に空気が多く流入するためNOx触媒の温度が低下してしまう。このように、NOx触媒の温度が低下すると、排気管13内に残留したNOxを吸蔵できなくなり、NOxセンサ16の出力となるので、誤った値を学習してしまう虞がある。従って、本実施の形態では、NOx触媒の床温が所定範囲内(例えば、250乃至450℃)である場合に限りNOxセンサ16の基準点を学習させることとした。
【0095】
ステップS110で肯定判定がなされた場合にはステップS111へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS108へ戻る。
【0096】
ステップS111では、NOxセンサの出力信号が読み込まれる。このときに読み込まれる出力値はNOx濃度がゼロのときの値である。
【0097】
ステップS112では、NOxセンサの基準点を学習させる。ステップS111で読み込まれたNOxセンサの出力信号をNOx濃度がゼロのときの信号としてECUに記憶させる。
【0098】
以上により、NOxセンサの基準点を校正することが可能となる。
【0099】
ここで、従来のNOxセンサの基準点学習方法では、NOx触媒のNOx吸蔵能力やNOx触媒からのNOxの流出は考慮されていなかった。また、NOxを含んだ排気を速やかに空気と入れ換えることはなされていなかった。そのため、基準点に誤差が生じる虞があった。
【0100】
その点、本実施の形態によるNOxセンサの基準点学習方法では、例えばNOxの還元直後、SOx被毒回復直後若しくはNOx触媒の新品時等のNOx触媒に十分な吸蔵能力がある場合に限りNOxセンサの基準点を学習させるため、排気管内に残留したNOxの影響をほとんど受けることがない。また、NOx触媒に吸蔵されたNOxを還元した後にNOxセンサの基準点を学習させるため、NOxの流出によるセンサ出力の変動の影響をほとんど受けることがない。更に、NOxセンサ校正前に吸気絞り弁を開弁させ、EGR弁を閉弁させることにより吸入空気量を増加させて速やかにNOxを含んだ排気を空気と入れ換えることが可能となる。これにより、NOxセンサ校正の機会を増加させることが可能となる。
【0101】
以上述べたように、本実施の形態によれば、NOxセンサの基準点を精度良く学習させることができる。
【0102】
【発明の効果】
本発明に係るNOxセンサの基準点学習方法では、NOxセンサの基準点を精度良く学習させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態によるエンジンとその吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】本実施の形態によるNOxセンサの概略構造を示した図である。
【図3】複数のNOxセンサの出力信号値を比較した図である。
【図4】車両減速時の実際のNOx濃度及び車速の時間推移を示したタイムチャート図である。
【図5】NOx触媒に吸蔵されたNOxの還元が不十分な場合であって、車両減速時で且つ燃料供給停止時に吸気絞り弁を開弁させEGR弁を閉弁させたときの車速及びNOx濃度の時間推移を示したタイムチャート図である。
【図6】NOx触媒に吸蔵されたNOxの還元が十分に行われた直後の場合であって、車両減速時で且つ燃料供給停止時に吸気絞り弁を開弁させEGR弁を閉弁させたときの車速及びNOx濃度の時間推移を示したタイムチャート図である。
【図7】本実施の形態によるNOxセンサの基準点学習方法のフローの前半部分を示したフローチャート図である。
【図8】本実施の形態によるNOxセンサの基準点学習方法のフローの後半部分を示したフローチャート図である。
【符号の説明】
1・・・・エンジン
2・・・・気筒
3・・・・燃料噴射弁
4・・・・コモンレール
5・・・・燃料供給管
6・・・・燃料ポンプ
7・・・・ベルト
8・・・・吸気枝管
9・・・・吸気管
10・・・吸気絞り弁
11・・・吸気絞り用アクチュエータ
12・・・排気枝管
13・・・排気管
14・・・パティキュレートフィルタ
15・・・ターボチャージャ
16・・・NOxセンサ
17・・・EGR通路
18・・・EGR弁
19・・・ECU
20・・・還元剤噴射弁
21・・・還元剤供給路
Claims (8)
- 車両減速時で且つ燃料の供給が停止されているときに吸入空気量を増加させ且つEGRガス量を減少させつつ、このときに検出されるNOx濃度を基準点として学習させることを特徴とするNOxセンサの基準点学習方法。
- 吸気絞り弁を開き側へ制御し且つEGR弁を閉じ側へ制御して吸入空気量を増加させ且つEGRガス量を減少させることを特徴とする請求項1に記載のNOxセンサの基準点学習方法。
- NOx触媒の下流に設けられたNOxセンサの基準点を学習させることを特徴とする請求項1又は2記載のNOxセンサの基準点学習方法。
- 基準点を学習させる前にNOx触媒のNOx吸蔵能力が十分であるか否か判定することを特徴とする請求項3に記載のNOxセンサの基準点学習方法。
- 十分なNOxの還元が行われた直後にNOx吸蔵能力が十分であると判定することを特徴とする請求項4に記載のNOxセンサの基準点学習方法。
- NOx触媒のSOx被毒回復直後にNOx吸蔵能力が十分であると判定することを特徴とする請求項4に記載のNOxセンサの基準点学習方法。
- NOx触媒が十分なNOx吸蔵能力を発揮可能な温度のときにNOxセンサの基準点を学習させることを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載のNOxセンサの基準点学習方法。
- NOx触媒の新品時においてNOxセンサの基準点を学習させることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のNOxセンサの基準点学習方法。
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