JP2004010666A - エチレン系重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な流動特性を持ち、熱安定性にも優れたエチレン系重合体を得る。
【解決手段】a)周期表4族の遷移金属を含む有機金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物からなるメタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下であるアゾ化合物を用いて、重合圧力が40〜400MPa、重合温度が重合体の融点〜300℃の条件下で、エチレンを重合反応させる。
【選択図】 選択図なし
【解決手段】a)周期表4族の遷移金属を含む有機金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物からなるメタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下であるアゾ化合物を用いて、重合圧力が40〜400MPa、重合温度が重合体の融点〜300℃の条件下で、エチレンを重合反応させる。
【選択図】 選択図なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なエチレン系重合体を高温・高圧下に製造する方法に関する。さらに詳しくは、メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体の優れた特性とアゾ化合物で得られるエチレン系重合体の良好な流動特性を併せ持つ熱安定性にも優れたエチレン系重合体をメタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物の存在下、一つの重合器内部で高温・高圧の条件下に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン系重合体には、メタロセン触媒を使用して製造される比較的分子量分布が狭いものや、ラジカル開始剤として有機過酸化物やアゾ化合物を使用して製造される比較的分子量分布の広いものが知られている。
【0003】
これらのうちメタロセン触媒を使用して製造されるエチレン系重合体は、分子量分布が狭いことに加えて、共重合によるコモノマー組成が均一となる特徴を持つ。このため、医療容器用途や食品包装用途などクリーン性が求められる用途において、低分子量成分などが包装内部や容器内の内容物へ溶出する量が少なく、有利な特性となっている。しかしながら、分子量分布が狭いことから成形時の溶融流動特性が悪く、改良の余地が残されている。
【0004】
一方、ラジカル開始剤として有機過酸化物やアゾ化合物を用い、高温・高圧下で製造されるエチレン系重合体は、分子量分布が広い上にポリマー分子内に長鎖分岐を有することから溶融流動特性が良好で、成形加工性に優れた特性を持つ。しかしながら、このエチレン系重合体は、一般に低密度で融点が低く、分子量分布が広いことから多くの低分子量成分を含むため、医療容器用途や食品包装用途において包装内部や容器の内容物へ溶出する量が多く、これらの用途へ用いることは困難であった。
【0005】
上述のメタロセン触媒で得られるエチレン系重合体とラジカル開始剤で得られるエチレン系重合体の優れた特性を併せ持たせる方法として、メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体と、有機過酸化物やアゾ化合物をラジカル開始剤として用い、高温・高圧下で得られるエチレン系重合体をそれぞれ単独で得た後、溶融混練にて任意の比率に混合するという方法が一般に知られている。
【0006】
しかしながら、この溶融混練法では1)溶融混練によりエチレン系重合体が余分に熱履歴を受けるため熱安定性が低下して着色、ゲルを生じ、最終製品である包装フィルムや成形容器の外観悪化を起こす、2)溶融混練の工程を増やすことにより、手間の増加や造粒機電力費がアップするという問題があった。
【0007】
ところで、メタロセン触媒とアゾ化合物を同時に用いてエチレン系重合体を製造する方法は、これまで知られていない。なぜならば、重合器へ同時にメタロセン触媒と一般に極性基を有するアゾ化合物の供給を行なうと、メタロセン触媒の触媒活性種である有機金属成分と、アゾ化合物のカルボニル基やシアノ基等の極性基とが反応してしまい、互いに触媒活性を示さなくなることが予想されたからである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体の優れた特性と、ラジカル開始剤として分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を用いて得られるエチレン系重合体の良好な流動特性を併せ持ち、熱安定性に優れたエチレン系重合体を得るべく種々検討を重ねた。その結果、高温・高圧下にエチレンを連続重合するプロセスにおいて、上記エチレン系重合体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成した。本発明の目的は、包装内部や成形容器内の内容物への溶出成分の少ない、加工性に優れ、熱安定性に優れたエチレン系重合体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エチレンをメタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下であるアゾ化合物を用いて、重合圧力が40〜400MPa、重合温度が重合体の融点〜300℃の条件下で重合反応させることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法である。
【0010】
さらには、触媒として、a)周期表4族の遷移金属を含む有機金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物を構成成分とするメタロセン触媒と、分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を用いることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法である。
【0011】
以下に本発明をより詳細に説明する。
【0012】
本発明では、メタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を同時に重合器へ供給することによるエチレン重合を鋭意検討した結果、重合圧力が40〜400MPa、重合温度が重合体の融点〜300℃である条件において、メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体とアゾ化合物で得られるエチレン系重合体の優れた特性を併せ持つエチレン系重合体が、溶融混練工程無しに得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、メタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を用いるエチレン系重合体の製造方法において、メタロセン触媒とアゾ化合物を重合器の任意の重合帯域から個別に供給することを特徴とするエチレン系重合体の製造方法に関するものである。
【0014】
本発明における重合器は仕切板によって分割されていても、されていなくても良いが、触媒の活性の維持という点を考慮すると、図2に示すように2つ以上の重合帯域に分割されていたほうが好ましい。分割方法は内部攪拌型の攪拌機に仕切板を取り付ける方法、あるいは重合器本体に仕切板を取り付ける方法のいずれでも良い。重合器断面積(Sr)に対する仕切板の面積(Sb)の比Sb/Srは0.25≦Sb/Sr≦0.96が好ましく、実用性を考慮すると0.36≦Sb/Sr≦0.90がさらに好ましい。
【0015】
重合器へ供給されるエチレンは、重合器に流量制御弁を通して個別に任意の流量で供給される。この時、メタロセン触媒を供給する重合帯域でのメタロセン触媒の滞留時間は30sec以上が好ましく、実用性を考慮すると120〜400secがさらに好ましい。分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を供給する重合帯域でのアゾ化合物の滞留時間についても30sec以上が好ましく、実用性を考慮すると120〜400secがさらに好ましい。
【0016】
重合温度はエチレン系重合体の融点〜300℃が好ましい。
【0017】
重合圧力は40〜400MPa以下が好ましく、実用性を考慮すると100〜200MPaがさらに好ましい。
【0018】
なお、分解活性化エネルギーが160kJ/molを超えるアゾ化合物は、本発明の重合温度である重合体の融点〜300℃の範囲では分解を起こさないため、重合触媒として使用することは不可能である。
【0019】
本発明における重合は、重合器を出たエチレン系重合体と未重合ガスは減圧弁にて減圧され、後段に位置する分離器において分離される。分離回収されたリサイクルガスは、再度供給ガスとして扱われる連続重合である。
【0020】
本発明で用いるメタロセン触媒は、例えば、a)周期表第4族の遷移金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物からなる触媒であり、これらを2種類以上組み合わせて、より好ましくは2〜4種類組み合わせて用いる。
【0021】
本発明において用いられる周期表第4族の遷移金属化合物は、下記一般式(1)または(2)
【0022】
【化1】
【化2】
(式中、M1はチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基であり、R1およびR2は下記一般式(3)、(4)、(5)または(6)
【0023】
【化3】
(式中、R6は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基である。)
で表される配位子であり、該配位子はM1と一緒にサンドイッチ構造を形成し、R4およびR5は下記一般式(7)、(8)、(9)または(10)
【0024】
【化4】
(式中、R7は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基である。)
で表される配位子であり、該配位子はM1と一緒にサンドイッチ構造を形成し、R3は下記一般式(11)
【0025】
【化5】
(式中、R8は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基であり、M2は炭素原子または珪素原子である。)
で表され、R4およびR5を架橋するように作用しており、pは1〜5の整数である。)
で表される遷移金属化合物が挙げられる。
【0026】
前記一般式(1)または(2)で表される化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロル体および上記のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体等を例示することができる。
【0027】
本発明に用いられるプロトン酸は、下記一般式(12)
[HL1 1][M3R9 4] (12)
(式中、Hはプロトンであり、L1は各々独立してルイス塩基であり、lは0<l≦2であり、M3はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、R9は各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される化合物であり、ルイス酸は下記一般式(13)
[C][M3R9 4] (13)
(式中、Cはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンであり、M3はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、R9は各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される化合物であり、イオン化イオン性化合物は下記一般式(14)
[M4L2m][M3R9 4] (14)
(式中、M4は周期表の第2族、第8族、第9族、第10族、第11族または第12族から選ばれる金属の陽イオンであり、L2はルイス塩基またはシクロペンタジエニル基であり、mは0≦m≦2であり、M3はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、R9は各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される化合物であり、ルイス酸性化合物は下記一般式(15)
M3R9 3(15)
(式中、M3はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、R9は各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される化合物である。
【0028】
本発明の触媒の構成成分として用いられる一般式(12)で表されるプロトン酸、一般式(13)で表されるルイス酸、一般式(14)で表されるイオン化イオン性化合物および一般式(15)で表されるルイス酸性化合物、層状粘土化合物、層状粘土化合物をプロトン酸放出可能な有機カチオンで処理した変性粘土化合物は、上記の遷移金属化合物をカチオン性化合物にしうる化合物であり、生成したカチオン性化合物に対して弱く配位および/または相互作用するが、反応しない対アニオンを提供する化合物である。
【0029】
一般式(12)で表されるプロトン酸の具体例として、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ−n−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
一般式(13)で表されるルイス酸として、具体的にはトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
一般式(14)で表されるイオン化イオン性化合物としては、具体的にはリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
一般式(15)で表されるルイス酸性化合物の具体的な例として、フェニルビス(パーフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
層状粘土化合物は、モンモリロナイト、ヘクトライト、カオリナイト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
有機カチオンとしては、トリメチルアミン塩酸塩、トリブチルアミン塩酸塩およびこれらのハロゲン化水素酸、またはトリ(p−トリル)ホスフィンヒドロブロマイドおよびこれらのヒドロクロライド、ヒドロアイオダイド、ヒドロフルオライド等が挙げられる。
【0035】
さらに、本発明において用いられる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(16)
AlR10 3(16)
(式中、R10は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アルキルアリール基もしくはアルキルアリールオキシ基であり、少なくとも1つのR10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基である。)
で表される化合物である。
【0036】
前記一般式(16)で表される化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(イソブチル)アルミニウム;ジ(イソブチル)アルミニウムハイドライド等の水素化ジアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド;イソブチルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムエトキサイド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドが例示されるが、これらに限定されるものではない。このうち、好ましくはトリアルキルアルミニウムである。
【0037】
上記のa)周期表第4族の遷移金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物から触媒を調製する方法としては、例えば、これらの化合物を不活性な溶媒下で混合する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、触媒においてプロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物またはルイス酸性化合物の量は遷移金属化合物に対して0.1〜100倍molとするのが好ましく、特に0.5〜30倍molとすることが好ましい。さらに、有機アルミニウム化合物の量は特に限定されないが、好ましくは遷移金属化合物に対して1〜10000倍molである。
【0038】
本発明において使用されるアゾ化合物は、分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下であればいずれも使用することができる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスエチルニトリル、2,2’−アゾビスプロピルニトリル、2,2’−アゾビスノルマルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロ二トリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
アゾ化合物は、溶液状態またはスラリー状態で使用される。例えば、溶解性が高い2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸を炭化水素溶媒に溶解希釈する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
この時、重合器内におけるメタロセン触媒の供給される重合帯域とアゾ化合物が供給される重合帯域は同一の重合帯域でも良いが、触媒活性の低下を最小限に止めるためには異なる重合帯域であることが好ましい。
【0041】
このような方法を採用することで、メタロセン触媒とアゾ化合物を同一の重合器内部に同時に供給してもエチレン系重合体が得られる。
【0042】
本発明によるメタロセン触媒とアゾ化合物を用いた重合は、任意の重合帯域にメタロセン触媒とアゾ化合物を供給するだけで進行する。このようにして、実質上メタロセン触媒から得られるエチレン系重合体とアゾ化合物から得られるエチレン系重合体の特性を併せ持つエチレン系重合体が製造可能となる。
【0043】
【実施例】
本発明を実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0044】
実施例中に記載のMFR(メルトフローレート)は、ASTM D1238条件Eに準ずる方法にて測定を行った。
【0045】
本発明で得られたエチレン系重合体の密度は、JIS K7106に規定された試験条件のD法(密度勾配管法)にて測定を行った。
【0046】
本発明で得られたエチレン系重合体のMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(WATERS社製 150C型)を用い、カラムとしてTSK−GEL GMHHR−H(S)(東ソー(株)製)、溶媒としてo−ジクロロベンゼンを用い、測定温度140℃、測定濃度7mgサンプル/10mL(o−ジクロロベンゼン)の条件下で測定した。
【0047】
本発明で得られたエチレン系重合体の融点は、示差走査熱量計(DSC)(セイコー電子工業製 示差走査型熱量計(DSC−200))を用いて、DSC内で200℃の温度で5分間エチレン系重合体を融解させた後、10℃/分の速度で温度を30℃まで下げて固化させ、10℃/分の速度で昇温させて測定した。そして、低温側融点ピークと定温基線(定温保持で得られる基線)および118℃の温度軸に対する垂線とから構成される面積をS1、118℃以上の高温側融点ピークと定温基線および118℃の温度軸に対する垂線とから構成される面積をS2とした。
【0048】
本発明で得られたエチレン系重合体の黄色度は、自動分光式色差計(日本電色工業製(NDH−1001−DP))を用いて測定した。
【0049】
実施例1
エチレン系重合体の製造プロセスにおいて、水素濃度を0.97mol%に調整し、仕切板によって4つの重合帯域に分割された7Lの撹拌機付き重合器を用いて、重合圧力103MPaで、重合器への上流から一番目の重合帯域へメタロセン触媒(A)を100cc/hで供給し、その重合帯域の温度を180℃とし、重合器の上流から三番目の重合帯域へアゾ化合物(H)を450cc/hで供給し、その重合帯域の温度を210℃とした。
【0050】
生成したエチレン系重合体は未重合ガス分離器にて未重合ガスと分離され、未重合ガス分離器下部の押出機を経て、ペレットとして排出された。得られたエチレン系重合体の生産速度は20kg/hであった。なお、メタロセン触媒(A)にはジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリイソブチルアルミニウムをホウ素/ジルコニウムのモル比が1.1、アルミニウム/ジルコニウムのモル比が240で、ジルコニウム濃度560μmol/Lに調製したトルエン溶液を用いた。アゾ化合物(H)には2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルを2.0wt%に調製したn−ヘプタン溶液を用いた。
【0051】
MFR=7.0g/10分、密度=0.938g/cm3、Mw/Mn=4.7、図1に示すように融点=102℃、131℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.8のエチレン系重合体が得られた。
【0052】
実施例2
水素濃度を0.48mol%とした以外は実施例1と同様に行った。
【0053】
MFR=1.0g/10分、密度=0.944g/cm3、Mw/Mn=4.3、融点=108℃、134℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.8のエチレン系重合体が得られた。
【0054】
実施例3
水素濃度を1.22mol%とし、アゾ化合物(H)を400cc/hで供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0055】
MFR=27g/10分、密度=0.945g/cm3、Mw/Mn=4.2、融点=109℃、131℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.5のエチレン系重合体が得られた。
【0056】
実施例4
水素濃度を0.82mol%、メタロセン触媒(A)を40cc/hで供給し、その重合帯域の温度を160℃とした。また、アゾ化合物(H)として3.9wt%のn−ヘプタン溶液を使用し、500cc/hで供給、重合帯域の温度を240℃とした。これら以外は実施例1と同様に行った。
【0057】
MFR=19.9g/10分、密度=0.922g/cm3、Mw/Mn=4.1、融点=105℃、127℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.7のエチレン系重合体が得られた。
【0058】
実施例5
水素濃度を0.56mol%に調整し、仕切板で分割されない7Lの攪拌機付き重合器を用いて、重合器へメタロセン触媒(A)を200cc/h、アゾ化合物(H)を500cc/hで供給した。アゾ化合物(H)はn−ヘプタンで6.0wt%に調整した溶液を使用した。これら以外は実施例1と同様に行った。
【0059】
MFR=38g/10分、密度=0.934g/cm3、Mw/Mn=4.0、融点=108℃、133℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.6のエチレン系重合体が得られた。
【0060】
比較例1
水素濃度を0.51mol%、メタロセン触媒(A)の供給をしなかった以外は実施例1と同様に行った。結果、MFR=1.3g/10分、密度=0.920g/cm3、Mw/Mn=3.9、融点=110℃、黄色度=−2.6のエチレン系重合体が得られた。融点は実施例1〜5と異なり、単一ピークであった。
【0061】
比較例2
水素濃度を0.05mol%とし、アゾ化合物(H)での重合帯域温度を180℃とした以外は比較例1と同様に行った。結果、重合器下流の減圧弁下流でエチレン系重合体のMFRの低下に伴う閉塞がおこり、エチレン系重合体を連続的に製造することは不可能となった。重合器を開放し、得られたエチレン系重合体のMFR確認を行ったところMFR=0.09g/10分、密度=0.922g/cm3、Mw/Mn=3.7、融点=109℃、黄色度=−2.5のエチレン系重合体が得られた。融点は比較例1と同様に、単一のピークであった。
【0062】
比較例3
水素濃度を0.56mol%、アゾ化合物(H)の供給をしなかった以外は実施例3と同様に行った。結果、MFR=600g/10分、密度=0.950g/cm3、Mw/Mn=2.8、融点=134℃、黄色度=−2.1のエチレン系重合体が得られた。融点は比較例1と同様に、単一のピークであった。
【0063】
比較例4
比較例1で得られたエチレン系重合体と比較例3で得られたエチレン系重合体をペレットの状態で各1kgずつ1:1の比率で均一に分散させた上で、25mmΦ溶融混練機で160℃にて溶融混練を実施した。溶融混練機としてシリンダー部分に2箇所とダイス部分に1箇所の温度調整ができる構造を有し、L/D=25の溶融混練機を使用した。結果、MFR=32g/10分、密度=0.937g/cm3、Mw/Mn=3.2、黄色度=−0.4、融点=108℃、130℃のエチレン系重合体が吐出量=3.5kg/hで得られた。
【0064】
各実施例、比較例の結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【発明の効果】
本発明の効果は、以下の点にある。
(1)メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体の優れた特性とアゾ化合物で得られるエチレン系重合体の良好な流動特性を併せ持ち、熱安定性にも優れたエチレン系重合体が得られる。
(2)莫大な投資によるプロセスの改造を必要とせずに、得られるエチレン系重合体の改良が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエチレン系重合体の示差走査型熱量計(DSC)チャートである。
【図2】本発明の重合器の一例を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なエチレン系重合体を高温・高圧下に製造する方法に関する。さらに詳しくは、メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体の優れた特性とアゾ化合物で得られるエチレン系重合体の良好な流動特性を併せ持つ熱安定性にも優れたエチレン系重合体をメタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物の存在下、一つの重合器内部で高温・高圧の条件下に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン系重合体には、メタロセン触媒を使用して製造される比較的分子量分布が狭いものや、ラジカル開始剤として有機過酸化物やアゾ化合物を使用して製造される比較的分子量分布の広いものが知られている。
【0003】
これらのうちメタロセン触媒を使用して製造されるエチレン系重合体は、分子量分布が狭いことに加えて、共重合によるコモノマー組成が均一となる特徴を持つ。このため、医療容器用途や食品包装用途などクリーン性が求められる用途において、低分子量成分などが包装内部や容器内の内容物へ溶出する量が少なく、有利な特性となっている。しかしながら、分子量分布が狭いことから成形時の溶融流動特性が悪く、改良の余地が残されている。
【0004】
一方、ラジカル開始剤として有機過酸化物やアゾ化合物を用い、高温・高圧下で製造されるエチレン系重合体は、分子量分布が広い上にポリマー分子内に長鎖分岐を有することから溶融流動特性が良好で、成形加工性に優れた特性を持つ。しかしながら、このエチレン系重合体は、一般に低密度で融点が低く、分子量分布が広いことから多くの低分子量成分を含むため、医療容器用途や食品包装用途において包装内部や容器の内容物へ溶出する量が多く、これらの用途へ用いることは困難であった。
【0005】
上述のメタロセン触媒で得られるエチレン系重合体とラジカル開始剤で得られるエチレン系重合体の優れた特性を併せ持たせる方法として、メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体と、有機過酸化物やアゾ化合物をラジカル開始剤として用い、高温・高圧下で得られるエチレン系重合体をそれぞれ単独で得た後、溶融混練にて任意の比率に混合するという方法が一般に知られている。
【0006】
しかしながら、この溶融混練法では1)溶融混練によりエチレン系重合体が余分に熱履歴を受けるため熱安定性が低下して着色、ゲルを生じ、最終製品である包装フィルムや成形容器の外観悪化を起こす、2)溶融混練の工程を増やすことにより、手間の増加や造粒機電力費がアップするという問題があった。
【0007】
ところで、メタロセン触媒とアゾ化合物を同時に用いてエチレン系重合体を製造する方法は、これまで知られていない。なぜならば、重合器へ同時にメタロセン触媒と一般に極性基を有するアゾ化合物の供給を行なうと、メタロセン触媒の触媒活性種である有機金属成分と、アゾ化合物のカルボニル基やシアノ基等の極性基とが反応してしまい、互いに触媒活性を示さなくなることが予想されたからである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体の優れた特性と、ラジカル開始剤として分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を用いて得られるエチレン系重合体の良好な流動特性を併せ持ち、熱安定性に優れたエチレン系重合体を得るべく種々検討を重ねた。その結果、高温・高圧下にエチレンを連続重合するプロセスにおいて、上記エチレン系重合体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成した。本発明の目的は、包装内部や成形容器内の内容物への溶出成分の少ない、加工性に優れ、熱安定性に優れたエチレン系重合体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エチレンをメタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下であるアゾ化合物を用いて、重合圧力が40〜400MPa、重合温度が重合体の融点〜300℃の条件下で重合反応させることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法である。
【0010】
さらには、触媒として、a)周期表4族の遷移金属を含む有機金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物を構成成分とするメタロセン触媒と、分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を用いることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法である。
【0011】
以下に本発明をより詳細に説明する。
【0012】
本発明では、メタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を同時に重合器へ供給することによるエチレン重合を鋭意検討した結果、重合圧力が40〜400MPa、重合温度が重合体の融点〜300℃である条件において、メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体とアゾ化合物で得られるエチレン系重合体の優れた特性を併せ持つエチレン系重合体が、溶融混練工程無しに得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、メタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を用いるエチレン系重合体の製造方法において、メタロセン触媒とアゾ化合物を重合器の任意の重合帯域から個別に供給することを特徴とするエチレン系重合体の製造方法に関するものである。
【0014】
本発明における重合器は仕切板によって分割されていても、されていなくても良いが、触媒の活性の維持という点を考慮すると、図2に示すように2つ以上の重合帯域に分割されていたほうが好ましい。分割方法は内部攪拌型の攪拌機に仕切板を取り付ける方法、あるいは重合器本体に仕切板を取り付ける方法のいずれでも良い。重合器断面積(Sr)に対する仕切板の面積(Sb)の比Sb/Srは0.25≦Sb/Sr≦0.96が好ましく、実用性を考慮すると0.36≦Sb/Sr≦0.90がさらに好ましい。
【0015】
重合器へ供給されるエチレンは、重合器に流量制御弁を通して個別に任意の流量で供給される。この時、メタロセン触媒を供給する重合帯域でのメタロセン触媒の滞留時間は30sec以上が好ましく、実用性を考慮すると120〜400secがさらに好ましい。分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下のアゾ化合物を供給する重合帯域でのアゾ化合物の滞留時間についても30sec以上が好ましく、実用性を考慮すると120〜400secがさらに好ましい。
【0016】
重合温度はエチレン系重合体の融点〜300℃が好ましい。
【0017】
重合圧力は40〜400MPa以下が好ましく、実用性を考慮すると100〜200MPaがさらに好ましい。
【0018】
なお、分解活性化エネルギーが160kJ/molを超えるアゾ化合物は、本発明の重合温度である重合体の融点〜300℃の範囲では分解を起こさないため、重合触媒として使用することは不可能である。
【0019】
本発明における重合は、重合器を出たエチレン系重合体と未重合ガスは減圧弁にて減圧され、後段に位置する分離器において分離される。分離回収されたリサイクルガスは、再度供給ガスとして扱われる連続重合である。
【0020】
本発明で用いるメタロセン触媒は、例えば、a)周期表第4族の遷移金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物からなる触媒であり、これらを2種類以上組み合わせて、より好ましくは2〜4種類組み合わせて用いる。
【0021】
本発明において用いられる周期表第4族の遷移金属化合物は、下記一般式(1)または(2)
【0022】
【化1】
【化2】
(式中、M1はチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基であり、R1およびR2は下記一般式(3)、(4)、(5)または(6)
【0023】
【化3】
(式中、R6は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基である。)
で表される配位子であり、該配位子はM1と一緒にサンドイッチ構造を形成し、R4およびR5は下記一般式(7)、(8)、(9)または(10)
【0024】
【化4】
(式中、R7は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基である。)
で表される配位子であり、該配位子はM1と一緒にサンドイッチ構造を形成し、R3は下記一般式(11)
【0025】
【化5】
(式中、R8は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基であり、M2は炭素原子または珪素原子である。)
で表され、R4およびR5を架橋するように作用しており、pは1〜5の整数である。)
で表される遷移金属化合物が挙げられる。
【0026】
前記一般式(1)または(2)で表される化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロル体および上記のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体等を例示することができる。
【0027】
本発明に用いられるプロトン酸は、下記一般式(12)
[HL1 1][M3R9 4] (12)
(式中、Hはプロトンであり、L1は各々独立してルイス塩基であり、lは0<l≦2であり、M3はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、R9は各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される化合物であり、ルイス酸は下記一般式(13)
[C][M3R9 4] (13)
(式中、Cはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンであり、M3はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、R9は各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される化合物であり、イオン化イオン性化合物は下記一般式(14)
[M4L2m][M3R9 4] (14)
(式中、M4は周期表の第2族、第8族、第9族、第10族、第11族または第12族から選ばれる金属の陽イオンであり、L2はルイス塩基またはシクロペンタジエニル基であり、mは0≦m≦2であり、M3はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、R9は各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される化合物であり、ルイス酸性化合物は下記一般式(15)
M3R9 3(15)
(式中、M3はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、R9は各々独立して炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基である。)
で表される化合物である。
【0028】
本発明の触媒の構成成分として用いられる一般式(12)で表されるプロトン酸、一般式(13)で表されるルイス酸、一般式(14)で表されるイオン化イオン性化合物および一般式(15)で表されるルイス酸性化合物、層状粘土化合物、層状粘土化合物をプロトン酸放出可能な有機カチオンで処理した変性粘土化合物は、上記の遷移金属化合物をカチオン性化合物にしうる化合物であり、生成したカチオン性化合物に対して弱く配位および/または相互作用するが、反応しない対アニオンを提供する化合物である。
【0029】
一般式(12)で表されるプロトン酸の具体例として、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヒドロニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ−n−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
一般式(13)で表されるルイス酸として、具体的にはトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
一般式(14)で表されるイオン化イオン性化合物としては、具体的にはリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
一般式(15)で表されるルイス酸性化合物の具体的な例として、フェニルビス(パーフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
層状粘土化合物は、モンモリロナイト、ヘクトライト、カオリナイト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
有機カチオンとしては、トリメチルアミン塩酸塩、トリブチルアミン塩酸塩およびこれらのハロゲン化水素酸、またはトリ(p−トリル)ホスフィンヒドロブロマイドおよびこれらのヒドロクロライド、ヒドロアイオダイド、ヒドロフルオライド等が挙げられる。
【0035】
さらに、本発明において用いられる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(16)
AlR10 3(16)
(式中、R10は各々独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アルキルアリール基もしくはアルキルアリールオキシ基であり、少なくとも1つのR10は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基である。)
で表される化合物である。
【0036】
前記一般式(16)で表される化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(イソブチル)アルミニウム;ジ(イソブチル)アルミニウムハイドライド等の水素化ジアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド;イソブチルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムエトキサイド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドが例示されるが、これらに限定されるものではない。このうち、好ましくはトリアルキルアルミニウムである。
【0037】
上記のa)周期表第4族の遷移金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物から触媒を調製する方法としては、例えば、これらの化合物を不活性な溶媒下で混合する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、触媒においてプロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物またはルイス酸性化合物の量は遷移金属化合物に対して0.1〜100倍molとするのが好ましく、特に0.5〜30倍molとすることが好ましい。さらに、有機アルミニウム化合物の量は特に限定されないが、好ましくは遷移金属化合物に対して1〜10000倍molである。
【0038】
本発明において使用されるアゾ化合物は、分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下であればいずれも使用することができる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスエチルニトリル、2,2’−アゾビスプロピルニトリル、2,2’−アゾビスノルマルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロ二トリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
アゾ化合物は、溶液状態またはスラリー状態で使用される。例えば、溶解性が高い2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸を炭化水素溶媒に溶解希釈する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
この時、重合器内におけるメタロセン触媒の供給される重合帯域とアゾ化合物が供給される重合帯域は同一の重合帯域でも良いが、触媒活性の低下を最小限に止めるためには異なる重合帯域であることが好ましい。
【0041】
このような方法を採用することで、メタロセン触媒とアゾ化合物を同一の重合器内部に同時に供給してもエチレン系重合体が得られる。
【0042】
本発明によるメタロセン触媒とアゾ化合物を用いた重合は、任意の重合帯域にメタロセン触媒とアゾ化合物を供給するだけで進行する。このようにして、実質上メタロセン触媒から得られるエチレン系重合体とアゾ化合物から得られるエチレン系重合体の特性を併せ持つエチレン系重合体が製造可能となる。
【0043】
【実施例】
本発明を実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0044】
実施例中に記載のMFR(メルトフローレート)は、ASTM D1238条件Eに準ずる方法にて測定を行った。
【0045】
本発明で得られたエチレン系重合体の密度は、JIS K7106に規定された試験条件のD法(密度勾配管法)にて測定を行った。
【0046】
本発明で得られたエチレン系重合体のMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(WATERS社製 150C型)を用い、カラムとしてTSK−GEL GMHHR−H(S)(東ソー(株)製)、溶媒としてo−ジクロロベンゼンを用い、測定温度140℃、測定濃度7mgサンプル/10mL(o−ジクロロベンゼン)の条件下で測定した。
【0047】
本発明で得られたエチレン系重合体の融点は、示差走査熱量計(DSC)(セイコー電子工業製 示差走査型熱量計(DSC−200))を用いて、DSC内で200℃の温度で5分間エチレン系重合体を融解させた後、10℃/分の速度で温度を30℃まで下げて固化させ、10℃/分の速度で昇温させて測定した。そして、低温側融点ピークと定温基線(定温保持で得られる基線)および118℃の温度軸に対する垂線とから構成される面積をS1、118℃以上の高温側融点ピークと定温基線および118℃の温度軸に対する垂線とから構成される面積をS2とした。
【0048】
本発明で得られたエチレン系重合体の黄色度は、自動分光式色差計(日本電色工業製(NDH−1001−DP))を用いて測定した。
【0049】
実施例1
エチレン系重合体の製造プロセスにおいて、水素濃度を0.97mol%に調整し、仕切板によって4つの重合帯域に分割された7Lの撹拌機付き重合器を用いて、重合圧力103MPaで、重合器への上流から一番目の重合帯域へメタロセン触媒(A)を100cc/hで供給し、その重合帯域の温度を180℃とし、重合器の上流から三番目の重合帯域へアゾ化合物(H)を450cc/hで供給し、その重合帯域の温度を210℃とした。
【0050】
生成したエチレン系重合体は未重合ガス分離器にて未重合ガスと分離され、未重合ガス分離器下部の押出機を経て、ペレットとして排出された。得られたエチレン系重合体の生産速度は20kg/hであった。なお、メタロセン触媒(A)にはジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリイソブチルアルミニウムをホウ素/ジルコニウムのモル比が1.1、アルミニウム/ジルコニウムのモル比が240で、ジルコニウム濃度560μmol/Lに調製したトルエン溶液を用いた。アゾ化合物(H)には2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルを2.0wt%に調製したn−ヘプタン溶液を用いた。
【0051】
MFR=7.0g/10分、密度=0.938g/cm3、Mw/Mn=4.7、図1に示すように融点=102℃、131℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.8のエチレン系重合体が得られた。
【0052】
実施例2
水素濃度を0.48mol%とした以外は実施例1と同様に行った。
【0053】
MFR=1.0g/10分、密度=0.944g/cm3、Mw/Mn=4.3、融点=108℃、134℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.8のエチレン系重合体が得られた。
【0054】
実施例3
水素濃度を1.22mol%とし、アゾ化合物(H)を400cc/hで供給した以外は実施例1と同様に行った。
【0055】
MFR=27g/10分、密度=0.945g/cm3、Mw/Mn=4.2、融点=109℃、131℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.5のエチレン系重合体が得られた。
【0056】
実施例4
水素濃度を0.82mol%、メタロセン触媒(A)を40cc/hで供給し、その重合帯域の温度を160℃とした。また、アゾ化合物(H)として3.9wt%のn−ヘプタン溶液を使用し、500cc/hで供給、重合帯域の温度を240℃とした。これら以外は実施例1と同様に行った。
【0057】
MFR=19.9g/10分、密度=0.922g/cm3、Mw/Mn=4.1、融点=105℃、127℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.7のエチレン系重合体が得られた。
【0058】
実施例5
水素濃度を0.56mol%に調整し、仕切板で分割されない7Lの攪拌機付き重合器を用いて、重合器へメタロセン触媒(A)を200cc/h、アゾ化合物(H)を500cc/hで供給した。アゾ化合物(H)はn−ヘプタンで6.0wt%に調整した溶液を使用した。これら以外は実施例1と同様に行った。
【0059】
MFR=38g/10分、密度=0.934g/cm3、Mw/Mn=4.0、融点=108℃、133℃の2つの融点をもち、黄色度=−2.6のエチレン系重合体が得られた。
【0060】
比較例1
水素濃度を0.51mol%、メタロセン触媒(A)の供給をしなかった以外は実施例1と同様に行った。結果、MFR=1.3g/10分、密度=0.920g/cm3、Mw/Mn=3.9、融点=110℃、黄色度=−2.6のエチレン系重合体が得られた。融点は実施例1〜5と異なり、単一ピークであった。
【0061】
比較例2
水素濃度を0.05mol%とし、アゾ化合物(H)での重合帯域温度を180℃とした以外は比較例1と同様に行った。結果、重合器下流の減圧弁下流でエチレン系重合体のMFRの低下に伴う閉塞がおこり、エチレン系重合体を連続的に製造することは不可能となった。重合器を開放し、得られたエチレン系重合体のMFR確認を行ったところMFR=0.09g/10分、密度=0.922g/cm3、Mw/Mn=3.7、融点=109℃、黄色度=−2.5のエチレン系重合体が得られた。融点は比較例1と同様に、単一のピークであった。
【0062】
比較例3
水素濃度を0.56mol%、アゾ化合物(H)の供給をしなかった以外は実施例3と同様に行った。結果、MFR=600g/10分、密度=0.950g/cm3、Mw/Mn=2.8、融点=134℃、黄色度=−2.1のエチレン系重合体が得られた。融点は比較例1と同様に、単一のピークであった。
【0063】
比較例4
比較例1で得られたエチレン系重合体と比較例3で得られたエチレン系重合体をペレットの状態で各1kgずつ1:1の比率で均一に分散させた上で、25mmΦ溶融混練機で160℃にて溶融混練を実施した。溶融混練機としてシリンダー部分に2箇所とダイス部分に1箇所の温度調整ができる構造を有し、L/D=25の溶融混練機を使用した。結果、MFR=32g/10分、密度=0.937g/cm3、Mw/Mn=3.2、黄色度=−0.4、融点=108℃、130℃のエチレン系重合体が吐出量=3.5kg/hで得られた。
【0064】
各実施例、比較例の結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【発明の効果】
本発明の効果は、以下の点にある。
(1)メタロセン触媒で得られるエチレン系重合体の優れた特性とアゾ化合物で得られるエチレン系重合体の良好な流動特性を併せ持ち、熱安定性にも優れたエチレン系重合体が得られる。
(2)莫大な投資によるプロセスの改造を必要とせずに、得られるエチレン系重合体の改良が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエチレン系重合体の示差走査型熱量計(DSC)チャートである。
【図2】本発明の重合器の一例を示す図である。
Claims (2)
- エチレンをメタロセン触媒と分解活性化エネルギーが160kJ/mol以下であるアゾ化合物を用いて、重合圧力が40〜400MPa、重合温度が重合体の融点〜300℃の条件下で重合反応させることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
- メタロセン触媒が、a)周期表4族の遷移金属を含む有機金属化合物、b)プロトン酸、ルイス酸、イオン化イオン性化合物、ルイス酸性化合物、または層状粘土化合物およびその有機カチオン処理化合物、およびc)有機アルミニウム化合物からなることを特徴とする請求項1に記載のエチレン系重合体の製造方法。
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