JP2004010490A - 5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温反応を必要としない5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体の製造方法の提供。5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体は、血中コレステロール低下剤等の医薬品を合成する際の中間体として有用である。
【解決手段】銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物の存在下(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸(II)、BINAP誘導体及びテトラアルキルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケートより構成される複合化合物の存在下)、アルデヒド類、ジケテン及びアルコールを反応させることを特徴とする、5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体の製造方法。
【解決手段】銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物の存在下(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸(II)、BINAP誘導体及びテトラアルキルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケートより構成される複合化合物の存在下)、アルデヒド類、ジケテン及びアルコールを反応させることを特徴とする、5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体の製造方法。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明の製法は、ジケテンを用いた光学活性5−ヒドロキシ−3−ケトエステル類の合成方法に関するものである。5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体は、例えば医薬、とりわけ血中コレステロ−ル低下剤として知られる4−ヒドロキシ−3−メチルグルタル(HMG)Co−Aリダクタ−ゼ阻害剤(例えば、トランス−6−[2−(2,4−ジクロロフェニル)エチル]3,4,5,6−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−2H−ピラン−2−オン)を合成する際に中間体として有用である。
【0002】
【従来技術】
従来、アルデヒド類とジケテンとを反応させ、対応する5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体を得る方法としては、以下に示す方法がある。
ケミストリ− レタ−ズ(Chemistry Letters、1975年、161−164頁)には、アルデヒド類としてベンズアルデドとジケテンとをチタンクロライドの存在下、アルコ−ルと反応させて5−フェニル−5−ヒドロキシ−3−オキソペンタン酸メチルを製造する方法が開示されている。この方法は−78℃の低温を必要とする点で工業的に満足する方法ではなかった。
【0003】
ケミストリ− エクスプレス (Chemistry Express、1991年、第6巻、第3号、193−196頁)には、アルデヒド類としてベンズアルデドとジケテンとを三価のヨウ化サマリウムの存在下、メタノ−ルと反応させて5−フェニル−5−ヒドロキシ−3−オキソペンタン酸メチルを製造する方法が開示されている。この方法は−45℃の低温を必要とする点で工業的に満足する方法ではなかった。
【0004】
シンセティック コミニュケーションズ(Synthetic communications、1994年、第24巻、第22号。3249−3254頁)には、アルデヒド類としてベンズアルデドとジケテンとをアルミニウムアルコキサイドの存在下、イソプロパノールと反応させて5−フェニル−5−ヒドロキシ−3−オキソペンタン酸イソプロピルを製造する方法が開示されている。この方法は等量のアルミニウムアルコキサイドを必要とする点、また収率の点で、工業的に満足する方法ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記の公知の製法における問題点を改良すべく、鋭意検討した。その結果、特定化合物を触媒として用い、アルデヒド類とジケテンを反応させた場合、前記のような低温を必要とせず、5−ヒドロキシ−3−ケトステル誘導体が得られることを見出して本発明を完成させた。従って、本発明は、銅化合物を有する触媒を用いてアルデヒド類、ジケテンとを反応させて、低温を必要せず、5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物の存在下、下記(I)式で表されるアルデヒド類:
【0007】
【化10】
(式中、R1 はそれぞれが置換基を有していても良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリ−ル基又は複素環基を示す)
下記(II)式で表されるジケテン:
【0008】
【化11】
及び下記(III)式で表されるアルコール:
【0009】
【化12】
(式中、R2 はアルキル基を示す。)
を反応させることを特徴とする、下記(IV)式で表される5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体の製造方法に存する。
【0010】
【化13】
(式中、R1 及びR2は前記と同じ意味を示す)
以下、本発明につき詳細に説明する。
【0011】
本発明の製法において使用する一般式(I)で表されるアルデヒド類及び本発明の製法の目的化合物である一般式(IV)で表される5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体において定義されるR1 は、それぞれが置換基を有していても良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリ−ル基又は複素環基を示す。
【0012】
アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数5〜12のシクロアルキル基が、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、i−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ヘプテニル基、2−オクテニル基、2−ノネニル基、2−デセニル基、2−ウンデセニル基、2−ドデセニル基等の炭素数2〜12のアルケニル基が、アルキニル基としては、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、2−ペンチニル基、2−ヘキシニル基、2−ヘプチニル基、2−オクチニル基、2−ノニニル基、2−デシニル基、2−ウンデシニル基、2−ドデシニル基等の炭素数2〜12のアルキニル基が、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が、また複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、インドリル基、プリニル基、キノリル基、ピペリジル基等の硫黄原子、酸素原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1以上含み、炭素数4〜12の複素環基等が挙げられる。
【0013】
上述したように、これらの基は置換基を有していてもよく、具体的にはアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。
本発明においてかかるR1としては、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基が好ましく、より好ましくはアリール基で置換された炭素数2〜12のアルケニル基が挙げられる。
【0014】
本発明の製法において使用する、一般式(III)で表されるアルコールにて定義されるR2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられ、好ましくは低級アルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられる銅化合物は特に制限されないが、好ましくは下記(V)式:
【0016】
【化14】
(式中、R3はハロゲン原子で置換された低級アルキルスルホニル基を表す)
または下記(VI)式:
【0017】
【化15】
(式中、R3は前記定義に同じ)
で表されるものが使用される。
【0018】
R3で定義されるハロゲン原子で置換された低級アルキルスルホニル基としては、トリフルオロメチルスルホニル基、ジフルオロメチルスルホニル基、フルオロメチルスルホニル基、トリクロロメチルスルホニル基、ジクロロメチルスルホニル基、クロロメチルスルホニル基等の炭素数1〜3のアルキルスルホニル基が挙げられる。
【0019】
かかる銅化合物の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)、ジフルオロメタンスルホン酸銅(I)、トリクロロメタンスルホン酸銅(I)、ジクロロメタンスルホン酸銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、ジフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリクロロメタンスルホン酸銅(II)、ジクロロメタンスルホン酸銅(II)が挙げることができ、好ましくはトリフルオロメタンスホン酸銅(II)である。
【0020】
本発明にて使用されるリン化合物は、例えば上記銅化合物の銅原子に配位することができるリン配位子を挙げることができる。具体的には、特表平11−502213号公報に開示されているような配位子であり、好ましくは、単座又は多座のホスフィン配位子である。
単座ホスフィン配位子としては、次の一般式(VII):
【0021】
【化16】
(式中、R4〜R6は夫々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す)
が挙げられ、多座のホスフィン配位子としては、次の一般式(VIII):
【0022】
【化17】
(式中、nは2〜6であり、Wは炭素数2〜40個の多価(原子価はnに等しい)の有機架橋基であり、R4及びR5は前記定義に同じ)
を挙げることができ、好ましくは、式(IX)
【0023】
【化18】
(ここで、R4及びR5は上記定義に同じであり、R6及びR7はそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。W’は、炭素数2〜40の2価の有機架橋基を表す。)で表される。
【0024】
R4〜R7で定義されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜12のシクロアルキル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。
【0025】
Wで定義される炭素数2〜40個の多価(原子価はnに等しい)の有機架橋基としては、不飽和結合を有していても良い鎖状炭化水素残基、不飽和結合を有していても良い環状炭化水素残基、架橋環式炭化水素残基、環集合炭化水素残基、芳香族残基、複素環残基等、さらにはこれらに置換基を有するものが挙げられる。W’は、これらのうちで2価の有機架橋基を表す。
【0026】
かかるリン化合物の具体例としては、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,3−ジメチル−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(n−ブチルフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(シクロヘキシルフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)ブタン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ブテン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−オキソプロパン、2−メチル−2−(ジフェニルホスフィノメチル)−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ナフタレン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、2,2−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジオキソラン、2,3−o−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−ブタン(DIOP)、トランス−1,2−ビス(ジ(m−メチルフェニル)−ホスフィノメチル)シクロブタン、トランス−[(ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン−2,3−ジイル)ビス(メチレン)]−ビス[ジフェニルホスフィン]、トランス−[(ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジイル)ビス(メチレン)]−ビス[ジフェニルホスフィン]、トランス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)シクロブタン(DPMCB)、トランス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)トランス−3,4−ビス(フェニル)−シクロブタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(tol−BINAP)、トリフェニルホスフィン等が挙げられ、特に2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(tol−BINAP)、トリフェニルホスフィンのような化合物が更に好ましい。
【0027】
本発明において使用されるフッ素化合物としては、有機溶媒に可溶なフッ化物塩が挙げられ、具体的にはテトラメチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−ト、テトラエチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−ト、テトラプロピルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−ト、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−ト等のテトラアルキルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケートが挙げられ、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−トが最も好ましい。
【0028】
本発明においては、これらの銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物が複合化合物を形成することが好ましい。具体的には、銅原子を中心とする銅錯体を形成することが好ましい。かかる複合化合物は、例えばAngew. Chem. Int. Ed., 1998年, 37, No.22, 3124−3126頁等に記載の方法に準じて形成される。
ホスフィン配位子対銅のモル比は、本発明に従う方法において使用される特定のホスフィン配位子の形態に依存する。この比は、好ましくは1:1〜1:10である。多座のホスフィン配位子を用いる場合は、この比は好ましくは1:1〜1:5である。
【0029】
さらに本発明においては、反応が促進され選択率が上昇することから、錫化合物の存在下で反応を行うことがより好ましい。錫化合物としては、例えば下記(X)式:
【0030】
【化19】
Sn(OR8)2(R9)2 (X)
(式中、R8及R8はそれぞれ独立してアルキル基を表す。)
R8、R9で定義されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0031】
かかる錫化合物の具体例としては、ジプロピル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジメトキシド、ジプロピル錫ジエトキシド、ジブチル錫ジエトキシド等が挙げられ、ジプロピル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジメトキシドが好ましい。
さらに、本発明の製法において、銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物の複合化合物を形成後に反応を行う事が好ましい。
【0032】
本発明の製法は、例えば以下に示すような反応ルートで表すことができる。
【0033】
【化20】
【0034】
本発明の製法において製造されるける5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体は、ケト体、エノ−ル体のいずれでもよい。
なお、本発明において、アルデヒド類、銅化合物とジケテンとの反応系への添加順序は任意でよい。また、アルデヒド類、銅化合物とジケテンは、後記の溶媒に溶解して反応系に添加してもよい。
【0035】
本発明において使用されるジケテンは、その使用量が、アルデヒド類1モルに対して通常1〜30モルの割合となる量であればよく、約5〜20モルの割合となる量が好ましく、7〜12モルの割合となる量が更に好ましい。本発明において使用される銅化合物は、その使用量が、アルデヒド類1モルに対して通常0.01〜4モルの割合となる量であればよく、約0.1〜1モルの割合となる量が好ましく、0.2〜0.5モルの割合となる量が更に好ましい。
【0036】
本発明においては、またアルデヒド類、銅化合物が液体物質でない場合は、溶媒に溶解して、反応に添加してもよい。本発明において使用される溶媒は、反応に関与しなければ特に制限はないが、例えば塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの肪族炭化水素溶媒、ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒などを挙げることができ、テトラヒドロフラン、アセトニトリルが好ましい。
【0037】
本発明において有機溶媒の使用量は、アルデヒド類1モルに対して、0.01〜100%(重量比)の割合になる量であればよく、0.1〜50%(重量比)の割合になる量が好ましく、1〜20%(重量比)の割合になる量が更に好ましい。
本発明においては、反応温度は溶媒の使用量、種類によっても異なるが、−50〜50℃であればよく、−30〜30℃が好ましく、−25〜25℃が更に好ましい。
【0038】
本発明の製法において、生成した5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体を含む反応混合物から該目的化合物を得る方法は、通常の洗浄操作、分離操作を組み合わせて行えばよく、例えば反応混合物に希酸水溶液を加えて攪拌した後、抽出、洗浄、乾燥操作を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィ−又は蒸留操作を用いる方法などで目的化合物を得ることが好ましい。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物の存在下、アルデヒド類、特定のジケテン及びアルコールを反応させることにより、必ずしも−78℃という極低温を必要とせず、目的化合物である5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体を容易に得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例1
窒素ガスを通気しているシュレンク管内に、テトラヒドロフラン6ml、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)80mg(0.22mmol)及び(s)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)149mg(0.24mmol)を添加して、1時間攪拌した後、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケート238mg(0.44mmol)をテトラヒドロフラン2mlに溶解して滴下し、1時間攪拌した。反応液を−20℃に冷却し、シンナムアルデヒド152mg(1.0mmol)をテトラヒドロフラン1mlに溶解して滴下し、メタノール64mg(2.0mmol)、ジケテン420mg(5.0mmol)及びジブチルジメトキシ錫47μl(0.2mmol)を添加し、−20℃を保ちながら40時間攪拌した後、室温で20時間攪拌した。反応後飽和食塩水2mlを添加した後、室温で30分攪拌した。得られた反応混合液を、酢酸エチル30mlと飽和食塩水20mlの混合溶液中に添加し、攪拌し二層溶液を得た。得られた二層溶液は分液し、水層を酢酸エチル20mlで抽出を行い酢酸エチル層と抽出液を合わせた、酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィ−(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、7−ベンジル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸メチルエステル146mgを得た(シンナムアルデヒドに対する収率59%)。
物性値
1H−NMR(CDCl3、250MHz)δ:1.16(d,J=6.1Hz,6H)、2.4(brs,1H)、2.75(s,1H)、2.77(s,1H)、3.37(s,2H)、4.69(dd,J=6.1Hz,1.2Hz,1H)、4.97(sept,J=6.1Hz,1H)、6.1(dd,J=16.5Hz,6.1Hz,1H)、6.55(dd,J=16.5Hz,1.2Hz,1H)、7.1〜7.3(m,5H)。
【0041】
実施例2
窒素ガスを通気しているシュレンク管内に、テトラヒドロフラン6ml、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)80mg(0.22mmol)及び(s)−2,2’−ビス(ジ−p−トリル−ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(tol−BINAP)163mg(0.24mmol)を添加して、1時間攪拌した後、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケート238mg(0.44mmol)をテトラヒドロフラン2mlに溶解して滴下し、1時間攪拌した。反応液を−20℃に冷却し、シンナムアルデヒド152mg(1.0mmol)をテトラヒドロフラン1mlに溶解して滴下し、メタノール64mg(2.0mmol)、ジケテン420mg(5.0mmol)及びジブチルジメトキシ錫47μl(0.2mmol)を添加し、−20℃を保ちながら46時間攪拌した後、室温で30時間攪拌した。反応後飽和食塩水2mlを添加した後、室温で30分攪拌した。得られた反応混合液を、酢酸エチル30mlと飽和食塩水20mlの混合溶液中に添加し、攪拌し二層溶液を得た。得られた二層溶液は分液後、水層を酢酸エチル20mlで抽出を行い酢酸エチル層と抽出液を合わせた、酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィ−(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、7−ベンジル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸メチルエステル149mgを得た。(シンナムアルデヒドに対する収率60%)。
【0042】
実施例3
窒素ガスを通気しているシュレンク管内に、テトラヒドロフラン6ml、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)80mg(0.22mmol)及び(s)−2,2’−ビス(ジ−p−トリル−ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(tol−BINAP)163mg(0.24mmol)を添加して、1時間攪拌した後、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケート238mg(0.44mmol)をテトラヒドロフラン2mlに溶解して滴下し、1時間攪拌した。反応液を−20℃に冷却し、シンナムアルデヒド152mg(1.0mmol)をテトラヒドロフラン1mlに溶解して滴下し、メタノール64mg(2.0mmol)、ジケテン420mg(5.0mmol)を添加し、−20℃を保ちながら23時間攪拌した後、室温で90時間攪拌した。反応後飽和食塩水2mlを添加した後、室温で30分攪拌した。得られた反応混合液を、酢酸エチル30mlと飽和食塩水20mlの混合溶液中に添加し、攪拌し二層溶液を得た。得られた二層溶液は分液後、水層を酢酸エチル20mlで抽出を行い、酢酸エチル層と抽出液を合わせた、酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィ−(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、7−ベンジル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸メチルエステル50mgを得た。(シンナムアルデヒドに対する収率20%)。
【産業上の利用分野】
本発明の製法は、ジケテンを用いた光学活性5−ヒドロキシ−3−ケトエステル類の合成方法に関するものである。5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体は、例えば医薬、とりわけ血中コレステロ−ル低下剤として知られる4−ヒドロキシ−3−メチルグルタル(HMG)Co−Aリダクタ−ゼ阻害剤(例えば、トランス−6−[2−(2,4−ジクロロフェニル)エチル]3,4,5,6−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−2H−ピラン−2−オン)を合成する際に中間体として有用である。
【0002】
【従来技術】
従来、アルデヒド類とジケテンとを反応させ、対応する5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体を得る方法としては、以下に示す方法がある。
ケミストリ− レタ−ズ(Chemistry Letters、1975年、161−164頁)には、アルデヒド類としてベンズアルデドとジケテンとをチタンクロライドの存在下、アルコ−ルと反応させて5−フェニル−5−ヒドロキシ−3−オキソペンタン酸メチルを製造する方法が開示されている。この方法は−78℃の低温を必要とする点で工業的に満足する方法ではなかった。
【0003】
ケミストリ− エクスプレス (Chemistry Express、1991年、第6巻、第3号、193−196頁)には、アルデヒド類としてベンズアルデドとジケテンとを三価のヨウ化サマリウムの存在下、メタノ−ルと反応させて5−フェニル−5−ヒドロキシ−3−オキソペンタン酸メチルを製造する方法が開示されている。この方法は−45℃の低温を必要とする点で工業的に満足する方法ではなかった。
【0004】
シンセティック コミニュケーションズ(Synthetic communications、1994年、第24巻、第22号。3249−3254頁)には、アルデヒド類としてベンズアルデドとジケテンとをアルミニウムアルコキサイドの存在下、イソプロパノールと反応させて5−フェニル−5−ヒドロキシ−3−オキソペンタン酸イソプロピルを製造する方法が開示されている。この方法は等量のアルミニウムアルコキサイドを必要とする点、また収率の点で、工業的に満足する方法ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記の公知の製法における問題点を改良すべく、鋭意検討した。その結果、特定化合物を触媒として用い、アルデヒド類とジケテンを反応させた場合、前記のような低温を必要とせず、5−ヒドロキシ−3−ケトステル誘導体が得られることを見出して本発明を完成させた。従って、本発明は、銅化合物を有する触媒を用いてアルデヒド類、ジケテンとを反応させて、低温を必要せず、5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物の存在下、下記(I)式で表されるアルデヒド類:
【0007】
【化10】
(式中、R1 はそれぞれが置換基を有していても良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリ−ル基又は複素環基を示す)
下記(II)式で表されるジケテン:
【0008】
【化11】
及び下記(III)式で表されるアルコール:
【0009】
【化12】
(式中、R2 はアルキル基を示す。)
を反応させることを特徴とする、下記(IV)式で表される5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体の製造方法に存する。
【0010】
【化13】
(式中、R1 及びR2は前記と同じ意味を示す)
以下、本発明につき詳細に説明する。
【0011】
本発明の製法において使用する一般式(I)で表されるアルデヒド類及び本発明の製法の目的化合物である一般式(IV)で表される5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体において定義されるR1 は、それぞれが置換基を有していても良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリ−ル基又は複素環基を示す。
【0012】
アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数5〜12のシクロアルキル基が、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、i−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ヘプテニル基、2−オクテニル基、2−ノネニル基、2−デセニル基、2−ウンデセニル基、2−ドデセニル基等の炭素数2〜12のアルケニル基が、アルキニル基としては、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、2−ペンチニル基、2−ヘキシニル基、2−ヘプチニル基、2−オクチニル基、2−ノニニル基、2−デシニル基、2−ウンデシニル基、2−ドデシニル基等の炭素数2〜12のアルキニル基が、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が、また複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、インドリル基、プリニル基、キノリル基、ピペリジル基等の硫黄原子、酸素原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1以上含み、炭素数4〜12の複素環基等が挙げられる。
【0013】
上述したように、これらの基は置換基を有していてもよく、具体的にはアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。
本発明においてかかるR1としては、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基が好ましく、より好ましくはアリール基で置換された炭素数2〜12のアルケニル基が挙げられる。
【0014】
本発明の製法において使用する、一般式(III)で表されるアルコールにて定義されるR2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられ、好ましくは低級アルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられる銅化合物は特に制限されないが、好ましくは下記(V)式:
【0016】
【化14】
(式中、R3はハロゲン原子で置換された低級アルキルスルホニル基を表す)
または下記(VI)式:
【0017】
【化15】
(式中、R3は前記定義に同じ)
で表されるものが使用される。
【0018】
R3で定義されるハロゲン原子で置換された低級アルキルスルホニル基としては、トリフルオロメチルスルホニル基、ジフルオロメチルスルホニル基、フルオロメチルスルホニル基、トリクロロメチルスルホニル基、ジクロロメチルスルホニル基、クロロメチルスルホニル基等の炭素数1〜3のアルキルスルホニル基が挙げられる。
【0019】
かかる銅化合物の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)、ジフルオロメタンスルホン酸銅(I)、トリクロロメタンスルホン酸銅(I)、ジクロロメタンスルホン酸銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、ジフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリクロロメタンスルホン酸銅(II)、ジクロロメタンスルホン酸銅(II)が挙げることができ、好ましくはトリフルオロメタンスホン酸銅(II)である。
【0020】
本発明にて使用されるリン化合物は、例えば上記銅化合物の銅原子に配位することができるリン配位子を挙げることができる。具体的には、特表平11−502213号公報に開示されているような配位子であり、好ましくは、単座又は多座のホスフィン配位子である。
単座ホスフィン配位子としては、次の一般式(VII):
【0021】
【化16】
(式中、R4〜R6は夫々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す)
が挙げられ、多座のホスフィン配位子としては、次の一般式(VIII):
【0022】
【化17】
(式中、nは2〜6であり、Wは炭素数2〜40個の多価(原子価はnに等しい)の有機架橋基であり、R4及びR5は前記定義に同じ)
を挙げることができ、好ましくは、式(IX)
【0023】
【化18】
(ここで、R4及びR5は上記定義に同じであり、R6及びR7はそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。W’は、炭素数2〜40の2価の有機架橋基を表す。)で表される。
【0024】
R4〜R7で定義されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜12のシクロアルキル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられ、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。
【0025】
Wで定義される炭素数2〜40個の多価(原子価はnに等しい)の有機架橋基としては、不飽和結合を有していても良い鎖状炭化水素残基、不飽和結合を有していても良い環状炭化水素残基、架橋環式炭化水素残基、環集合炭化水素残基、芳香族残基、複素環残基等、さらにはこれらに置換基を有するものが挙げられる。W’は、これらのうちで2価の有機架橋基を表す。
【0026】
かかるリン化合物の具体例としては、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,3−ジメチル−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(n−ブチルフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(シクロヘキシルフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)ブタン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ブテン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−オキソプロパン、2−メチル−2−(ジフェニルホスフィノメチル)−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ナフタレン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、2,2−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジオキソラン、2,3−o−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−ブタン(DIOP)、トランス−1,2−ビス(ジ(m−メチルフェニル)−ホスフィノメチル)シクロブタン、トランス−[(ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン−2,3−ジイル)ビス(メチレン)]−ビス[ジフェニルホスフィン]、トランス−[(ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジイル)ビス(メチレン)]−ビス[ジフェニルホスフィン]、トランス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)シクロブタン(DPMCB)、トランス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)トランス−3,4−ビス(フェニル)−シクロブタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(tol−BINAP)、トリフェニルホスフィン等が挙げられ、特に2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(tol−BINAP)、トリフェニルホスフィンのような化合物が更に好ましい。
【0027】
本発明において使用されるフッ素化合物としては、有機溶媒に可溶なフッ化物塩が挙げられ、具体的にはテトラメチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−ト、テトラエチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−ト、テトラプロピルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−ト、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−ト等のテトラアルキルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケートが挙げられ、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケ−トが最も好ましい。
【0028】
本発明においては、これらの銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物が複合化合物を形成することが好ましい。具体的には、銅原子を中心とする銅錯体を形成することが好ましい。かかる複合化合物は、例えばAngew. Chem. Int. Ed., 1998年, 37, No.22, 3124−3126頁等に記載の方法に準じて形成される。
ホスフィン配位子対銅のモル比は、本発明に従う方法において使用される特定のホスフィン配位子の形態に依存する。この比は、好ましくは1:1〜1:10である。多座のホスフィン配位子を用いる場合は、この比は好ましくは1:1〜1:5である。
【0029】
さらに本発明においては、反応が促進され選択率が上昇することから、錫化合物の存在下で反応を行うことがより好ましい。錫化合物としては、例えば下記(X)式:
【0030】
【化19】
Sn(OR8)2(R9)2 (X)
(式中、R8及R8はそれぞれ独立してアルキル基を表す。)
R8、R9で定義されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0031】
かかる錫化合物の具体例としては、ジプロピル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジメトキシド、ジプロピル錫ジエトキシド、ジブチル錫ジエトキシド等が挙げられ、ジプロピル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジメトキシドが好ましい。
さらに、本発明の製法において、銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物の複合化合物を形成後に反応を行う事が好ましい。
【0032】
本発明の製法は、例えば以下に示すような反応ルートで表すことができる。
【0033】
【化20】
【0034】
本発明の製法において製造されるける5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体は、ケト体、エノ−ル体のいずれでもよい。
なお、本発明において、アルデヒド類、銅化合物とジケテンとの反応系への添加順序は任意でよい。また、アルデヒド類、銅化合物とジケテンは、後記の溶媒に溶解して反応系に添加してもよい。
【0035】
本発明において使用されるジケテンは、その使用量が、アルデヒド類1モルに対して通常1〜30モルの割合となる量であればよく、約5〜20モルの割合となる量が好ましく、7〜12モルの割合となる量が更に好ましい。本発明において使用される銅化合物は、その使用量が、アルデヒド類1モルに対して通常0.01〜4モルの割合となる量であればよく、約0.1〜1モルの割合となる量が好ましく、0.2〜0.5モルの割合となる量が更に好ましい。
【0036】
本発明においては、またアルデヒド類、銅化合物が液体物質でない場合は、溶媒に溶解して、反応に添加してもよい。本発明において使用される溶媒は、反応に関与しなければ特に制限はないが、例えば塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの肪族炭化水素溶媒、ジエチルエ−テル、ジイソプロピルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒などを挙げることができ、テトラヒドロフラン、アセトニトリルが好ましい。
【0037】
本発明において有機溶媒の使用量は、アルデヒド類1モルに対して、0.01〜100%(重量比)の割合になる量であればよく、0.1〜50%(重量比)の割合になる量が好ましく、1〜20%(重量比)の割合になる量が更に好ましい。
本発明においては、反応温度は溶媒の使用量、種類によっても異なるが、−50〜50℃であればよく、−30〜30℃が好ましく、−25〜25℃が更に好ましい。
【0038】
本発明の製法において、生成した5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体を含む反応混合物から該目的化合物を得る方法は、通常の洗浄操作、分離操作を組み合わせて行えばよく、例えば反応混合物に希酸水溶液を加えて攪拌した後、抽出、洗浄、乾燥操作を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィ−又は蒸留操作を用いる方法などで目的化合物を得ることが好ましい。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物の存在下、アルデヒド類、特定のジケテン及びアルコールを反応させることにより、必ずしも−78℃という極低温を必要とせず、目的化合物である5−ヒドロキシ−3−ケトエステル誘導体を容易に得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例1
窒素ガスを通気しているシュレンク管内に、テトラヒドロフラン6ml、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)80mg(0.22mmol)及び(s)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)149mg(0.24mmol)を添加して、1時間攪拌した後、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケート238mg(0.44mmol)をテトラヒドロフラン2mlに溶解して滴下し、1時間攪拌した。反応液を−20℃に冷却し、シンナムアルデヒド152mg(1.0mmol)をテトラヒドロフラン1mlに溶解して滴下し、メタノール64mg(2.0mmol)、ジケテン420mg(5.0mmol)及びジブチルジメトキシ錫47μl(0.2mmol)を添加し、−20℃を保ちながら40時間攪拌した後、室温で20時間攪拌した。反応後飽和食塩水2mlを添加した後、室温で30分攪拌した。得られた反応混合液を、酢酸エチル30mlと飽和食塩水20mlの混合溶液中に添加し、攪拌し二層溶液を得た。得られた二層溶液は分液し、水層を酢酸エチル20mlで抽出を行い酢酸エチル層と抽出液を合わせた、酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィ−(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、7−ベンジル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸メチルエステル146mgを得た(シンナムアルデヒドに対する収率59%)。
物性値
1H−NMR(CDCl3、250MHz)δ:1.16(d,J=6.1Hz,6H)、2.4(brs,1H)、2.75(s,1H)、2.77(s,1H)、3.37(s,2H)、4.69(dd,J=6.1Hz,1.2Hz,1H)、4.97(sept,J=6.1Hz,1H)、6.1(dd,J=16.5Hz,6.1Hz,1H)、6.55(dd,J=16.5Hz,1.2Hz,1H)、7.1〜7.3(m,5H)。
【0041】
実施例2
窒素ガスを通気しているシュレンク管内に、テトラヒドロフラン6ml、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)80mg(0.22mmol)及び(s)−2,2’−ビス(ジ−p−トリル−ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(tol−BINAP)163mg(0.24mmol)を添加して、1時間攪拌した後、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケート238mg(0.44mmol)をテトラヒドロフラン2mlに溶解して滴下し、1時間攪拌した。反応液を−20℃に冷却し、シンナムアルデヒド152mg(1.0mmol)をテトラヒドロフラン1mlに溶解して滴下し、メタノール64mg(2.0mmol)、ジケテン420mg(5.0mmol)及びジブチルジメトキシ錫47μl(0.2mmol)を添加し、−20℃を保ちながら46時間攪拌した後、室温で30時間攪拌した。反応後飽和食塩水2mlを添加した後、室温で30分攪拌した。得られた反応混合液を、酢酸エチル30mlと飽和食塩水20mlの混合溶液中に添加し、攪拌し二層溶液を得た。得られた二層溶液は分液後、水層を酢酸エチル20mlで抽出を行い酢酸エチル層と抽出液を合わせた、酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィ−(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、7−ベンジル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸メチルエステル149mgを得た。(シンナムアルデヒドに対する収率60%)。
【0042】
実施例3
窒素ガスを通気しているシュレンク管内に、テトラヒドロフラン6ml、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)80mg(0.22mmol)及び(s)−2,2’−ビス(ジ−p−トリル−ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(tol−BINAP)163mg(0.24mmol)を添加して、1時間攪拌した後、テトラブチルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケート238mg(0.44mmol)をテトラヒドロフラン2mlに溶解して滴下し、1時間攪拌した。反応液を−20℃に冷却し、シンナムアルデヒド152mg(1.0mmol)をテトラヒドロフラン1mlに溶解して滴下し、メタノール64mg(2.0mmol)、ジケテン420mg(5.0mmol)を添加し、−20℃を保ちながら23時間攪拌した後、室温で90時間攪拌した。反応後飽和食塩水2mlを添加した後、室温で30分攪拌した。得られた反応混合液を、酢酸エチル30mlと飽和食塩水20mlの混合溶液中に添加し、攪拌し二層溶液を得た。得られた二層溶液は分液後、水層を酢酸エチル20mlで抽出を行い、酢酸エチル層と抽出液を合わせた、酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィ−(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製して、7−ベンジル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−ヘプト−6−エン酸メチルエステル50mgを得た。(シンナムアルデヒドに対する収率20%)。
Claims (6)
- 銅化合物、リン化合物及びフッ素化合物が複合化合物を形成することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
- 銅化合物が、下記(V)式:
または下記(VI)式:
で表され、リン化合物が、下記(VII)式:
または下記(VIII)式:
で表され、フッ素化合物がテトラアルキルアンモニウムトリフェニルジフルオロシリケートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。 - 錫化合物の存在下で反応を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- R1が置換基を有していてもよいアルケニル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R2が低級アルキル基を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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