JP2004009852A - 乗物における可撓性長尺部材挿通構造及び挿通方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カプラ23等の接続具を一体的に備えた電線20等の可撓性長尺部材を、互いに隣接する複数の乗物構成部材、たとえばリヤフェンダー2及びフラップ6の挿通孔46,36に挿通する構造及び方法である。各電線用挿通孔46,36は電線20等のカプラ23が通過できる大きさに形成してある。リヤフェンダー2とフラップ6を固定する前に、各挿通孔36,46にカプラ23を通過させると共に電線20を挿通しておき、挿通後、挿通孔同士の重合領域の大きさが、カプラ23は通過できない大きさとなるように挿通孔相互の位置をずらし、固定する。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、自動二輪車、不整地用四輪走行車あるいは水上滑走艇等の乗物において、電線、ワイヤケーブル又はホース等の可撓性長尺部材を配設する場合に、車体カバー等の乗物構成部材の挿通孔に挿通する際の構造及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車等の乗物においては、電気部品用の電線、ブレーキあるいはスロットル用のワイヤケーブル又は油液用のホース等、各種可撓性長尺部材が配設されているが、可撓性長尺部材の先端部にはカプラ等の接続具が一体に備えられており、乗物組立時には上記接続具を一体に備えた状態で配線作業等を行なっている。
【0003】
上記のような配線作業において、図11に示すように2つのカバー部材100,101が重なっている個所に電線106を挿通する場合には、従来、両カバー部材100,101を固定した状態で行なっている。したがって、各カバー部材100,101に形成された挿通孔102,103はそれぞれカプラ105が通過しうる大きさに形成されると共に、両挿通孔102,103の重合領域もカプラ105が通過しうる大きさに保たれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図11のように隣接するカバー部材100,101の挿通孔102,103同士の重合領域を、カプラ105が通過しうる大きさに確保し、そして両カバー部材100,101を固定した後に、カプラ105を備えた電線106を挿通する構造及び方法では、次のような課題がある。
【0005】
(1)組立後は、電線106が挿通孔102,103内に位置することになるが、カプラ105に比べて電線106の断面積が小さいため、挿通孔102,103と電線106との隙間が大きくなり、水や泥が挿通孔102,103から侵入する可能性が大きい。この防水対策としては、図12のように配線後、ゴム製のグロメット110を挿通孔102,103に嵌め込んでいる。しかしグロメット110を使用していると、部品点数が増えると共に部品コスト及び作業工程も増える。
【0006】
(2)配線作業時、挿通孔102,103にカプラ105を通過させた状態で次の工程に移る場合、カプラ105が挿通孔102,103から抜け落ちる可能性があり、それを防止するためにはクランプで電線106を保持しておかなければならず、この点でも部品点数が増えると共に作業工程が増える。
【0007】
【発明の目的】
本願発明の目的は、防水及び防塵性を維持しつつ、乗物の配線あるいは配管等の作業性を向上させることができると共に部品点数の削減が達成できる可撓性長尺部材の挿通構造及び方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願請求項1記載の発明は、接続具を備えた可撓性長尺部材を、互いに隣接する複数の乗物構成部材に形成された挿通孔に挿通する構造であって、各挿通孔は、それぞれ可撓性長尺部材の接続具が通過できる大きさに形成し、乗物構成部材同士を固定した状態において、挿通孔同士の重合領域の大きさが、可撓性長尺部材は通過できるが接続具は通過できない大きさとなるように、挿通孔相互の位置をずらしてあることを特徴とする乗物における可撓性長尺部材挿通構造である。
【0009】
請求項2記載の発明は、接続具を備えた可撓性長尺部材を、互いに隣接する複数の乗物構成部材に形成された挿通孔に挿通する方法であって、各挿通孔は、それぞれ可撓性長尺部材の接続具が通過できる大きさに形成してあり、各乗物構成部材を固定する前に、各挿通孔に接続具を通過させると共に可撓性長尺部材を挿通しておき、上記挿通後、挿通孔同士の重合領域の大きさが、接続具は通過できない大きさとなるように挿通孔相互の位置をずらし、各乗物構成部材を固定することを特徴とする乗物における可撓性長尺部材挿通構造である。
【0010】
上記構造又は方法によると、グロメット等の部品を使用することなく、挿通孔部分における防水及び防塵性を確保でき、部品点数及び作業工程の削減並びにコストダウンを達成できる。
【0011】
また、カプラ等の接続具を挿通した後に、挿通孔同士の位置をずらすことにより、挿通孔の重合領域を接続具が通過できない大きさにしているので、接続具が挿通孔から抜けることがなく、組立作業性が向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜図3は、本願発明による電線等の挿通構造が適用される自動二輪車のリヤフェンダー部分であり、背面を示す図2において、後輪1の上方を覆うリヤフェンダー2は、車体フレームの後部シートレール3に取り付けられ、リヤフェンダー2の後部下面には、後ろ下方に延びるフラップ6が着脱自在に取り付けられている。
【0013】
リヤフェンダー2の後端部にはテールランプ7が設けられており、フラップ6には、左右のウインカランプ10、ナンバープレート11、ナンバープレート照明用のライセンスランプ12及び反射鏡13、14等が取り付けられている。
【0014】
図1は左側面図であり、リヤフェンダー2には上方からリヤカバー5が被せられており、リヤカバー5にはシート8が配置されている。左右のウインカランプ10及びライセンスランプ12に接続された電線20,21は、リヤフェンダー2とフラップ6との接合部分を貫通してリヤフェンダー2の上方に突出しており、各電線20,21の先端部に一体に備えられたカプラ(接続具)23,24は、図示しないがバッテリ及びECU(電気コントロールユニット)に接続されたハーネス27のカプラ28,29にそれぞれ接続している。また、テールランプ7の電線22も先端部にカプラ25を備え、該カプラ25はハーネス27のカプラ30に接続している。
【0015】
図3はリヤフェンダー2とフラップ6の分解斜視略図である。フラップ6の前部には、リヤフェンダー2の下面に接合する取付面6aが、後上がり傾斜状に形成されると共に上方から見て前開きの馬蹄形に形成されており、取付面6aの後部には4つの取付孔32,33が長方形の四隅に形成され、取付面6aの前部にも取付孔34が左右一対形成されている。そして上記後部の4つの取付孔32,33で概ね囲まれた部分に、矩形の電線用挿通孔36が形成されている。
【0016】
リヤフェンダー2の左右端部には、リヤフェンダー自体を車体フレームに取り付けるための取付孔40が複数個所形成され、リヤフェンダー2の後部には、前記フラップ取付面6aの後部に配置された4つの取付孔32,33に対応する4つの取付孔42,43が形成され、リヤフェンダー2の前後方向の中間部には、前記フラップ取付面6aの前部の2つの取付孔34に対応する取付孔44が形成されている。そして後部の4つの取付孔42,43で概ね囲まれた部分に、前記フラップ6の電線用挿通孔36に対して一定距離後方にずれた位置に、円形の電線用挿通孔46が形成されている。
【0017】
図3の下端部に示すコの字形部材50は、フラップ6をリヤフェンダー2に結合する場合に剛性を上げるために用いる補強ブラケットであり、フラップ6の前記長方形配置の取付孔32、33に対応する取付孔52,53が形成されており、後部の取付孔52には図8に示すように下面側にナット55が溶着されている。
【0018】
図4はリヤフェンダー2に形成された円形の電線用挿通孔46の拡大平面図であり、該電線用挿通孔46の大きさは、仮想線で示すウインカ用電線20のカプラ23等が通過し得る大きさに形成されている。
【0019】
図5はフラップ6の取付面6aに形成された矩形の電線用挿通孔36の拡大平面図であり、該電線用挿通孔36の大きさも、仮想線で示すウインカ用電線20のカプラ23等が通過し得る大きさに形成されている。
【0020】
また、図1に示すライセンスランプ用電線21のカプラ24も、上記図4及び図5に示したウインカ用電線20のカプラ23と同等な大きさとなっており、各挿通孔46,36を通過することが可能となっている。
【0021】
図6はリヤフェンダー2の下面にフラップ6を固定した場合における両挿通孔46,36の位置関係を示しており、両挿通孔46,36は前後方向に一定距離ずれた状態で結合され、それにより両挿通孔46,36の重合領域(見かけの孔)は、弓形あるいは半円形となり、その大きさは、各電線20,21は通過しうるが、図8に示すようにカプラ23,24は通過できない大きさ及び形状となっている。
【0022】
【組立及び電線挿通方法】
図7はリヤフェンダー2とフラップ6を結合する前の状態を示す断面図であり、リヤフェンダー2とフラップ6とを分離した状態で、たとえばウインカ用電線20のカプラ23をまずフラップ6の挿通孔36に通し、次にリヤフェンダー2の挿通孔46に通すことにより、リアフェンダー2の上方に引き出す。これと同様に、図8のように残りの電線20,21のカプラ23,24もフラップ6及びリヤフェンダー2の各挿通孔36,46をそれぞれ通過させて、リヤフェンダー2の上方に引き出しておく。
【0023】
次に、図3において、樹脂製のすり割り型リベット60をコの字形補強ブラケット50の前側の取付孔53から、対応するフラップ6の取付孔33及びリヤフェンダー2の取付孔43に圧入することにより、リヤフェンダー2の挿通孔46とフラップ6の挿通孔36が相互に前後にずれる状態に位置決めすると共に、リヤフェンダー2に対してフラップ6を仮止めする。なお、上記すり割り型リベット60は、すり割りにより縮径可能で先端に係止つば部を有する円筒形部材60aと、該円筒形部材60a内に嵌入して円筒形部材60aを拡張状態で固定する軸部材60bとから構成されており、まず円筒形部材60aを取付孔53、33、43圧入し、その後に軸部材60bを挿入して、抜け止めとしている。
【0024】
図8において、上記のようにリベット60でフラップ6を仮止めした状態で、後部の各挿通孔42,32に上方からボルト61を挿通し、補強ブラケット50のナット55に螺着すると共に、図3において、リヤフェンダー2の前後方向の中間部の取付孔44及びフラップ6の前端部の取付孔34に上方からボルト(図示せず)を挿通し、ナットにより締め付け、リヤフェンダー2とフラップ6を結合する。
【0025】
ボルト止め作業中、図6のように各電線20,21は両挿通孔46,36の重合領域内に保持されており、しかも、重合領域は図8の各カプラ23,24が通過できない大きさとなっているので、作業中に電線20、21やカプラ23,24が抜け落ちることはなく、作業性が向上する。
【0026】
組付終了後、図6及び図8のように重合領域内にできる隙間は小さく、したがって、後輪1(図1)で跳ね上げられる水や泥が挿通孔36,46を通ってリヤフェンダー2の上方に侵入するのを阻止することができる。
【0027】
【発明の他の実施の形態】
(1)図9は、図7及び図8と同様に自動二輪車のリヤフェンダー2とフラップ6との接合部に形成される挿通孔46,36の変形例であり、たとえば上側のリヤフェンダー2に形成された円形の挿通孔46の周縁に、上方に突出する円筒部66を一体に形成した構造である。
【0028】
これにより、挿通孔46の周囲の剛性を向上させることができると共に、防水機能を向上させることもできる。
【0029】
(2)本願発明における「可撓製長尺部材用挿通孔」は、図4及び図5のような円形あるいは矩形に限定されるものではなく、楕円形、三角形或いは平行四辺形等、各種形状を採用することができる。また、図4及び図5のように孔周囲が閉じた形状に限定されるものでもなく、図10に示すように電線用挿通孔36の一端部36aが切り開かれた切欠き形の「挿通孔」にも適用できる。すなわち図10に示す構造は、フラップ6の電線用挿通孔36として一端が開口する切欠き形の挿通孔を形成し、リヤフェンダー2の電線用挿通孔46として周囲が閉じた挿通孔を形成してある。勿論、両電線用挿通孔36,46を共に切欠き形とすることも可能である。
【0030】
(3)本願発明は、図3のリヤフェンダー2とフラップ6のように、2つの乗物構成部材を接合する個所に限定されるものではなく、3つ以上のカバー部材等を重ね合わせた個所に適用することもできる。
【0031】
(4)可撓性長尺部材としては、電線だけでなく、自動二輪車のブレーキあるいはスロットル用のワイヤケーブル、または潤滑油あるいは燃料用のホース等にも適用することができる。
【0032】
(5)自動二輪車の他に、不整地用四輪走行車あるいは水上滑走艇等のような騎乗型乗物にも適用できることは勿論のこと、通常の自動車にも適用可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本願発明は、(1)リヤフェンダー及びフラップ等の乗物構成部材に形成するそれぞれの挿通孔の大きさを、電線等の可撓性長尺部材の接続具(カプラ等)が通過しうる大きさとし、乗物構成部材の固定時に、挿通孔相互の位置をずらすことにより、挿通孔同士の重合領域の大きさを接続具が通過できない大きさになるようにしているので、従来のようにグロメット等の部品を使用することなく、挿通孔部分における防水及び防塵性を確保でき、部品点数及び作業工程の削減並びにコストダウンを達成できる。
【0034】
(2)乗物構成部材を固定する前に、カプラ等の接続具を挿通孔に挿通し、該挿通後、挿通孔同士の位置をずらすことにより、挿通孔の重合領域を接続具が通過できない程度に設定するので、組立時に接続具が挿通孔から抜けることがなく、組立作業性が向上する。また、組立後、乗物を駆動している時にも、挿通孔部分で可撓性長尺部材を保持することができ、可撓性長尺部材のがたつきや移動を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明が適用される自動二輪車のリヤフェンダー部分の左側面図である。
【図2】図1の背面図である。
【図3】リヤフェンダーとフラップの分解簡略斜視図である。
【図4】リヤフェンダーの電線用挿通孔の拡大平面図である。
【図5】フラップの電線用挿通孔の拡大平面図である。
【図6】リヤフェンダーとフラップとを接合した時の各電線用挿通孔の状態を示す平面図である。
【図7】接続具及び電線の挿通工程を示す電線用挿通孔の縱断面図である。
【図8】図7の挿通工程後、両乗物構成部材を固定した状態を示す縱断面図である。
【図9】挿通孔の変形例を示す縦断面図である。
【図10】挿通孔の別の変形例を示す平面図である。
【図11】従来の電線挿通工程を示す縦断面図である。
【図12】従来の電線挿通構造の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
2 リヤフェンダー(車輌構成部材の一例)
6 フラップ(車輌構成部材の一例)
10 ウインカランプ
12 ライセンスランプ
20,21 電線(可撓性長尺部材の一例)
23,24 カプラ(接続具の一例)
36 電線用挿通孔
46 電線用挿通孔
Claims (2)
- 接続具を備えた可撓性長尺部材を、互いに隣接する複数の乗物構成部材に形成された挿通孔に挿通する構造であって、
各挿通孔は、それぞれ可撓性長尺部材の接続具が通過できる大きさに形成し、
乗物構成部材同士を固定した状態において、挿通孔同士の重合領域の大きさが、可撓性長尺部材は通過できるが接続具は通過できない大きさとなるように、挿通孔相互の位置をずらしてあることを特徴とする乗物における可撓性長尺部材挿通構造。 - 接続具を備えた可撓性長尺部材を、互いに隣接する複数の乗物構成部材に形成された挿通孔に挿通する方法であって、
各挿通孔は、それぞれ可撓性長尺部材の接続具が通過できる大きさに形成してあり、
各乗物構成部材を固定する前に、各挿通孔に接続具を通過させると共に可撓性長尺部材を挿通しておき、
上記挿通後、挿通孔同士の重合領域の大きさが、接続具は通過できない大きさとなるように挿通孔相互の位置をずらし、各乗物構成部材を固定することを特徴とする乗物における可撓性長尺部材挿通方法。
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