JP2004009261A - 電磁アクチュエータ、電磁アクチュエータを用いた光偏向器、及び光偏向器を用いた画像表示装置、画像形成装置、並びにその製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安定な駆動、駆動の微妙な調整等が可能な制御性に優れた電磁アクチュエータである。
【解決手段】電磁アクチュエータは、可動板109と、可動板109を回転中心の周りで揺動可能に支持する弾性支持部107と、弾性支持部107を支持する支持基板101と、可動板109を揺動させる揺動手段とを備える。揺動手段は、可動板109に敷設された可動コア106と、支持基板101の表面に設置されるコア部104aにコイル105aを周回させた第一固定コア102aと、支持基板101の裏面に設置されるコア部104bにコイルを周回させた第二固定コア102bとを含み、第一固定コア102aと第二固定コア102bとのそれぞれは、可動コア106と空隙を介して磁気的に結合している。
【選択図】 図1
【解決手段】電磁アクチュエータは、可動板109と、可動板109を回転中心の周りで揺動可能に支持する弾性支持部107と、弾性支持部107を支持する支持基板101と、可動板109を揺動させる揺動手段とを備える。揺動手段は、可動板109に敷設された可動コア106と、支持基板101の表面に設置されるコア部104aにコイル105aを周回させた第一固定コア102aと、支持基板101の裏面に設置されるコア部104bにコイルを周回させた第二固定コア102bとを含み、第一固定コア102aと第二固定コア102bとのそれぞれは、可動コア106と空隙を介して磁気的に結合している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁アクチュエータ、電磁アクチュエータを用いた光偏向器、及び光偏向器を用いた画像表示装置、画像形成装置、並びにその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体プロセスを利用して、シリコン等の基板上に電磁アクチュエータを作製する試みがなされている。電磁アクチュエータを半導体プロセスを用いて作製すると、固定子と可動子と電磁コイルとを一括で作製でき、接合や接着をする工程が不要であり、固定子と可動子と電磁コイルとを高精度にアライメントできる。また、一度に大量に作製可能な為、低コスト化が見込める。
【0003】
基板上に作製される電磁アクチュエータの応用例の一つとして光偏向器がある。光偏向器はレーザビームプリンタ等の画像形成装置やヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置や、バーコードリーダ等の画像入力装置に用いられる。
【0004】
基板上に作製される電磁アクチュエータを光偏向器に応用した例として、特開2000−235152号公報に開示のものがある。図10は、特開2000−235152号公報に実施例の1つとして記載されている光偏向器を示す上面図である。これは、トーションビーム光偏向器であり、レーザ光を2次元走査する偏向器として用いられる。このトーションビーム光偏向器は、内側のy軸方向偏向部1003と外側のx軸方向偏向部1004とから構成されている。内側のy軸方向偏向部1003は、溝部1002を有する基板1001と、軸部1005によって揺動可能に支持され表面に硬磁性を示す薄膜が成膜されている可動板1006と、可動板1006を揺動させる一対の薄膜電磁石部1007と、可動板1006上に設けられたミラー1008から構成されている。可動板1006と薄膜電磁石部1007の形成面は厚み方向に僅かにずらしてある。薄膜電磁石部1007にy軸方向偏向部1003の構造的な共振周波数である60kHzの交流を通電することで生じる磁界と、可動板1006に形成された硬磁性薄膜に生ずる磁界との間に生ずるクーロン力で可動板1006を揺動させ、照射された光をミラー1008により偏向させる。機械的な共振を利用した駆動方法のため、低消費電力を実現することができる。外側のx軸方向偏向部1004は、y軸方向偏向部1003と同様の構造であり、駆動方法も同様である。この光偏向器の駆動周波数は60kHz(y軸)、60Hz(x軸)、可動板1006の変形角度は±13.67°(y方向)である。
【0005】
また、半導体プロセスと永久磁石を用いて電磁アクチュエータの小型化を試み、これを光偏向器に応用したものもある。永久磁石を用いることで比較的容易に磁界を形成でき、可動子の軽量化を図ることで高速動作が期待できる。その一例として、特開平7−175005号公報に開示されたものがある。図11は、特開平7−175005号公報に実施例の1つとして記載されている光偏向器を示す上面図である。この光偏向器は、ミラーを有する平板状の可動板が2つのねじりバネにより、基板に対して揺動可能に支持されている。図11において、801はガルバノミラー、802はシリコン基板、803は上側ガラス、804は下側ガラス、805は可動板、806はねじりバネ、807は平面コイル、808は全反射ミラー、809はコンタクトパッド、810A,810B,811A,810Cは永久磁石をそれぞれ示している。前記可動板805には、周縁部に、通電により磁界を発生する駆動用平面コイル807が敷設されており、前記ねじりバネ806の軸方向と平行な前記駆動平面コイルの両側部分のみに静磁界を与えるよう、半導体基板の上下面に、互いに対をなす永久磁石810A,810B;811A,810Cが上下ガラス基板803,804を介して設置されている。この光偏向器では、駆動用平面コイル807に通電し、平面コイル807を流れる電流と永久磁石810A,810B;811A,810Cによる磁束密度の方向により、フレミングの左手の法則に従った方向にローレンツ力F(不図示)が働き、可動板805を揺動させるモーメントが発生する。可動板805が揺動すると、ねじりバネ806のバネ剛性により、バネ反力F’(不図示)が発生する。平面コイル807に流す電流を交流として連続的に反復動作すれば、光反射面を有する可動板805が揺動し、これにより反射光が走査される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した光偏向器は何れも以下に示すような問題点を有している。
図10に示した特開2000−235152号公報の光偏向器においては、高速動作を実現しているが、薄膜電磁石部1007を構成するコアがスパッタで成膜される薄膜であるため、断面積を大きくすることには限界がある。そのため、薄膜電磁石部1007に大きな電流を流すと磁束が飽和することは必至であり、変形角度をさらに大きくすることが難しい。また、可動板1006と薄膜電磁石部1007の形成面の厚み方向のずれが僅かであり、この点からも変形角度をさらに大きくすることが難しい。さらに、可動板1006に対してクーロン力が発生するのは、主に1つの揺動方向のみであり、逆の揺動方向への駆動は軸部1005のバネ反力に依っている。そのため、2つの揺動方向に対して安定に駆動することが難しい。
【0007】
図11に示した特開平7−175005号公報の光偏向器においては、光を走査する際の光の振れ角を大きくしようとすると、上下ガラス基板803,804と可動板805との距離を大きくしなければならない。そのため、永久磁石810A,810B;811A,810Cと駆動用平面コイル807との相対的な距離が大きくなり、そうなると、平面コイル807における磁束密度は小さくなり、駆動に大きな電流を必要とすることになる。また、静磁界を与えるために、永久磁石810A,810B;811A,810Cを基板外に設置する必要があり、更なる小型化を図ることは難しい。
【0008】
本発明の目的は、上記従来の技術における問題を解決し、制御性に優れた、すなわち安定な駆動、駆動の微妙な調整等が可能な電磁アクチュエータ、電磁アクチュエータを用いた光偏向器、及び光偏向器を用いた画像表示装置、画像形成装置、並びにその製法を提供することにある。大きな変位が可能で高速動作が可能であり、エネルギー効率が高く、安価な電磁アクチュエータを提供することもできる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の電磁アクチュエータは、上記課題を解決するものとして、可動板と、可動板を回転中心の周りでの揺動が可能なように支持する弾性支持部と、弾性支持部を支持する支持基板と、可動板を揺動させる揺動手段とを備えた電磁アクチュエータであって、揺動手段は、可動板に敷設された可動コアと、支持基板の表面に設置されるコア部にコイルを周回させた第一固定コアと、支持基板の裏面に設置されるコア部にコイルを周回させた第二固定コアとを含み、第一固定コアと第二固定コアとのそれぞれは、可動コアと空隙を介して磁気的に結合していることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明の光偏向器は、上記課題を解決するものとして、上記電磁アクチュエータを用いた光偏向器であって、可動板は入射光を偏向させる偏向部を有することを特徴とする。偏向部は、例えば、ミラー、レンズ、或いは回折格子を有する。偏向部をミラーで構成する場合、作製が容易で、可動部分の質量が小さい光偏向器を提供できる。偏向部をレンズで構成する場合、偏向角の大きい透過型の光偏向器を提供できると共に、光の入射方向に対して光の偏向範囲を光偏向器の反対側に持って来られるので、装置各部の設計配置上の自由度が高まる。また、偏向部を回折格子で構成する場合は、入射光を複数のビームとして偏向することができる。
【0011】
これらの構成のように、支持基板の表面及び裏面に、コア部にコイルを周回させた少なくとも1つの固定コアを設置して、各コイルに流す電流を目的に応じて柔軟に変化させることにより、可動コアを有する可動板に対して、可動板の変位角に依らず、可動板の動作を制御するための駆動力を与え続ける様なことも可能であり、制御性良く非常に安定した駆動を実現できる。また、支持基板の両面に固定コアを設置しているため、支持基板の大きさを有効に使用することができる。
【0012】
上記基本構成に基づいて、以下の様な態様が可能である。
可動コアは、可動板の回転中心から離間して位置する部分を有し得る。エネルギー効率を高くするのには、こうした構成が好適であるが、可動コアは種々の形態で可動板に配置でき、それに応じて固定コアも種々の形態で支持基板の表面及び裏面に設置できる。
【0013】
第一固定コアと第二固定コアは、支持基板に対して対称な位置に設置され得る。この構成のように、支持基板の表裏で同一の位置に固定コアを設置することで、支持基板の大きさを有効に使用することができ、固定コアが単一の場合と比較して、デバイスの設置面積は大きくならない。
【0014】
可動板と弾性支持部と支持基板とは、同一部材から形成され得る。この構成のように、可動板と弾性支持部とを同一部材から形成することで、組み立て工程が不要であり、低コストで作製できる。また、可動板と支持基板とのアライメントが不要であり、ロット間のばらつきが少なくなる。
【0015】
可動コアと第一固定コア及び第二固定コアとは、空隙を介して対向配置され、揺動手段が非動作状態にある中立位置において、支持基板に対して平行であって第一固定コア及び第二固定コアとを支持基板に垂直な方向に二等分する面は、それぞれ、支持基板に対して平行であって可動コアを支持基板に垂直な方向に二等分する面から支持基板に垂直な方向に互いに反対方向に対称的或いは非対称的にずれている様にできる。この構成のように、可動コアと固定コアとを、空隙を介して対向配置し、可動コアを支持基板に垂直な方向に二等分する面と、固定コアを支持基板に垂直な方向に二等分する面とが異なっていることにより、効果的に基板の法線方向に力を発生できる電磁アクチュエータ或いは光偏向器を形成できる。また、可動コアと固定コアそれぞれの対向面の支持基板法線方向のオーバーラップ長さを適切に決定することで、大ストロークかつ大発生力を実現できる。
【0016】
第一固定コア又は第二固定コアの両端部はそれぞれ対向する向きに配置されている様にできる。また、第一固定コア又は第二固定コアの両端部はそれぞれ同一平面内に配置されている様にもできる。これらの構成のようにすることで、磁束の漏れを低減し、高効率に発生力を得ることが可能である。また、可動コアが強磁性体で形成される場合、発生力は固定コアと可動コア間の空隙のパーミアンスによって決まり、そのため、前者の形態では、可動コアと固定コアとで、トロイダル型のコアを形成することができ、磁束の漏れが極めて少なくなる。そのため、消費電流を小さくすることができ、エネルギー効率が向上する。後者の形態では、可動コアの最も長い辺全てを磁路の幅として構成できるため、効果的に大きな発生力を得ることができる。
【0017】
第一固定コア及び第二固定コアと可動コアとのそれぞれが凹凸部を有し、第一固定コア及び第二固定コアの凹凸部と可動コアの凹凸部とが、可動板の揺動を許容するようにして空隙を介して互いに噛み合うように配置されている様にできる。この構成のようにすることで、電磁アクチュエータ或いは光偏向器に発生する力が、ギャップの2乗に逆比例して減少することがなく、コイルに通電した電流による一定の条件によって決定することが可能となり、従来の電磁アクチュエータ或いは光偏向器に比べて制御が極めて容易となる。また、固定コアと可動コアとが接触することなく、ギャップを小さくすることが可能となり、発生する力を大きくできる。
【0018】
可動板の側面側に少なくとも1つの可動コアが設置されている様にできる。この構成のように、可動板の側面側に可動コアを設置することで、揺動手段の設置位置の自由度が高まり、磁束の漏れの少ない構造を実現できる。そのため、消費電力を小さくすることができ、エネルギー効率が向上する。また、固定コアと可動コアの対向面のずれを大きくとることができ、可動板に対する支持基板垂直方向の発生力が得やすく、大ストロークを実現しやすい。
【0019】
可動板と弾性支持部との少なくとも何れか一方が単結晶シリコンよりなる様にできる。この構成のようにすることで、弾性支持部の減衰係数が小さくなるため、共振で利用した場合に大きなQ値を得ることができる。また、金属材料のような繰り返し変形による疲労破壊が起きないので、長寿命の電磁アクチュエータ或いは光偏向器を構成可能となる。
【0020】
可動コアは強磁性体よりなり得る。また、可動コアは永久磁石よりなり得る。前者の構成のように、可動コアを強磁性体で構成することにより、可動子の制御性の良い電磁アクチュエータ或いは光偏向器を提供できる。また、これは半導体プロセスで作り易い構造である。後者の構成のように、可動コアを永久磁石で構成することにより吸引力と反発力を効果的に利用できるので、エネルギー効率の良い電磁アクチュエータ或いは光偏向器を提供できる。
【0021】
また、上記構成の第一の光偏向器の支持基板として、上記構成の第二の光偏向器の偏向部を除いた可動板が使用されており、第一の光偏向器の回転中心と第二の光偏向器の回転中心とが互いに直交している光偏向器を構成することもできる。この構成のように、電磁アクチュエータを入れ子構造にすることで、入射光を2次元に偏向できる。
【0022】
また、上記目的を達成する本発明の画像表示装置は、上記課題を解決するものとして、光源と、光源から発せられた光を偏向させる上記の光偏向器と、光偏向器により偏向された光が投影される画像表示面とを有することを特徴とする。この構成のように、上記の光偏向器を画像表示装置に応用することで、制御性が良く非常に小型で安価な画像表示装置を提供できる。
【0023】
また、上記目的を達成する本発明の画像形成装置は、上記課題を解決するものとして、光源と、光源から発せられた光を偏向させる上記の光偏向器と、光偏向器により偏向された光が投影される感光性材料とを有することを特徴とする。この構成のように、上記の光偏向器を画像形成装置に応用することで、制御性が良く非常に小型で安価な画像表示装置を提供できる。
【0024】
また、上記目的を達成する本発明の電磁アクチュエータまたは光偏向器を作製する方法は、上記課題を解決するものとして、基板に溝を形成する工程と、溝に可動コアを形成する工程と、基板を用いて可動板と弾性支持部と支持基板とを形成する工程と、支持基板の表面に第一固定コアを形成する工程と、支持基板の裏面に第二固定コアを形成する工程とを有することを特徴とする。この構成のように電磁アクチュエータまたは光偏向器を作製することで、可動板の側面側に可動コアを、支持基板の表面に第一固定コアを、支持基板の裏面に第二固定コアをそれぞれ容易且つ精度良く作製することができる。また、可動板と弾性支持部とを一度に作製できる。さらに、可動板と支持基板とのアライメントが不要であり、組み立て工程が不要であり、低コストで作製できる。
【0025】
上記作製方法において、基板を用いて可動板と弾性支持部と支持基板とを形成する工程は、基板の一部を用いて可動板と弾性支持部とを形成することにより基板の他部を用いて支持基板を形成する工程とでき、工程は反応性イオンエッチング、またはアルカリ溶液を用いたエッチングを含んでなされ得る。前者のように、反応性イオンエッチングを行うことで、精度良く、安定して可動板と弾性支持部の形状を形成することができる。後者のように、アルカリ溶液を用いたシリコン結晶面のエッチング速度差による異方性エッチングを行うことで、精度良く、安定して可動板と弾性支持部の形状を形成することができ、また、エッチングレートが反応性イオンエッチングと比較して速いため、時間を短縮でき、コストダウンに繋がる。
【0026】
また、前記溝に可動コアを形成する工程はメッキによりなされ得る。このように可動コアをメッキで作製することにより、蒸着やスパッタリングと比較して、厚く、高速に可動コアを形成できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0028】
[実施形態1]
図1は本発明による光偏向器の第1の実施形態の構成を示す図である。図1において、(a)は上面図であり、(b)は(a)におけるA−A’断面である。図1において、第一固定子102aは、第一固定コア104aとそれを周回する第一コイル105aとから構成され、基板101の表面に固定されている。また、第二固定子102bは、第二固定コア104bとそれを周回する第二コイル(不図示)とから構成され、基板101の裏面に固定されている。本実施形態の特徴は、第一固定子102aと第二固定子102bが支持基板101に対して対称な位置に固定されていることである。第一固定子102aと第二固定子102bは、揺動手段の一部分(可動板109から離間して位置する部分)を構成する。
【0029】
第一電流源108aと第一コイル105a、第二電流源108bと第二コイル105bはそれぞれ電気的に直列に接続されている。可動子103は、可動板109と可動コア106と偏向部111とから構成され、ねじりばね部107により支持基板101に対して揺動自由に支持されている。ねじりばね部107は弾性支持部を構成しており、可動板109を回転中心(ねじりばね部107の伸長方向:図1(a)の上下方向)の回りでの揺動が可能なように支持している。このねじりばね部107を回転中心として、可動板109と可動コア106と偏向部111が一体となって一方向に回転(揺動)する。従って、このねじりばね部107を回転中心軸ということができる。このねじりばね部107が弾性を有する場合、可動板109と可動コア106と偏向部111が一体となって一方向に回転すると、ねじりばね部107がその方向と反対の回転方向に反力を生じ易く、従って揺動(往復運動)が容易となる。尚、可動コア106は揺動手段の一部を構成している。揺動手段は、具体的には、この可動コア106と固定コア104a、104b及びコイル105a、105bから成っており、すなわち揺動手段はそれ自体が揺動するか否かに係らず揺動を生起させるための部材からなるものである。
【0030】
本実施形態では、1つの可動コア106が可動板109の側面に設置されている。可動コア106は可動板109の表面及び裏面に1つずつ配置される構成でもよい。可動コア106が設置されている可動板109の側面は、可動板109の回転中心(揺動中心)から隔てられた最も遠い位置にある。各固定コア104a、104bは、両端部において可動コア106の側面と対向する対向側面を備えており、該2つの対向端面は可動コア106の側面と略平行な同一平面内にある。
【0031】
揺動手段が非動作状態にある中立位置において、x軸方向に関して第一固定コア104aを二等分する面(x軸方向と直交する面)134aとx軸方向に関して第二固定コアを二等分する面(x軸方向と直交する面)134bは、それぞれ、x軸方向に関して可動コア106を二等分する面(x軸方向と直交する面)136からx軸方向に互いに反対方向にずれているが、そのずれの程度は若干異なっている(図1(b)では対称的にずれているように見えるが、実際にはこの様になっている)。第一固定コア104aと可動コア106の対向面間、第二固定コア104bと可動コア106の対向面間には、それぞれ、適当なオーバーラップ長さx0が設定されている。
【0032】
偏向部111はミラーやレンズや回折格子等の光学素子で構成される。可動コア106は、可動板109の支持基板101に対して略垂直な面に設置されている。また、支持基板101とねじりばね部107と可動子103とは、半導体プロセスにより、一体で形成されている。第一コイル105a及び第二コイル105bは銅やアルミニウムのように低抵抗な金属で構成され、第一固定コア104a及び第二固定コア104bとはそれぞれ電気的に絶縁されている。また、第一固定コア104aと第二固定コア104bと可動コア106は、強磁性体であるニッケル、鉄、コバルト、又はその合金等から構成されている。また、第一固定コア104aと第二固定コア104b及び第一コイル105aと第二コイル105bは、それぞれ、それらの間にポリイミドやベンゾシクロブテン等からなる絶縁膜を介在させたり、空中配線を構成することにより、電気的に絶縁されている。
【0033】
他の構成として、可動コア106に永久磁石を用いてもよい。永久磁石はサマリウムコバルト、ネオジウム鉄ボロン等の硬磁性体を着磁した材料から構成され、その磁極の向きはねじりばね部107の方向と平行に配置する。この場合、第一コイル105aと第二コイル105bの巻く方向を逆に構成し、第一コイル105aと第二コイル105bとを電気的に直列に接続して1つの電流源に繋げた構成による駆動を行うこともできる。なぜなら、この場合、電流の方向がいずれであっても第一固定コア104aと第二固定コア104bの同側の端部は必ず逆の極性に励磁されるので、永久磁石である可動コア106は第一固定コア104aと第二固定コア104bから、夫々、吸引力と反発力或いは反発力と吸引力を受けてねじりばね部107を中心軸として揺動させられるからである。また、この場合、上記中立位置における上記ずれを対称的にしてもよい。なぜなら、可動板109を中立位置から始動するに際して、可動コア106に固定コアから吸引力と反発力の両方を働かさせられるので、この様に対称的に設計しても始動がスムーズにできるからである。これに対して、可動コア106に強磁性体を用いた上記の場合には、可動コア106に固定コアから吸引力しか働かさせられないので、始動をスムーズにできる様にする為には上記中立位置におけるずれを非対称的にするのがよい。
【0034】
次に、図1(a)、(b)の構成であって可動コア106が強磁性体で構成される場合の揺動運動について説明する。(b)における可動板109の反時計回りの揺動を説明する。まず、電流源108aから矢印の方向に第一コイル105aに電流を流すと、第一コイル105a中に白抜きの矢印の方向に磁束が発生する。この磁束は、矢印で示した方向に第一固定コア104a、エアギャップ、可動コア106a、エアギャップの順に磁気回路を周回し、エアギャップが狭くなる方向(可動コア106と第一固定コア104aとのオーバーラップ量を増加させる方向でもある)、つまり、基板101の法線方向に、可動コア106が第一固定コア104a側に引き寄せられ、可動子103がねじりばね部107を中心軸として反時計回りに揺動する。反対に、(b)における可動板109の時計回りの揺動は、電流源108bから第二コイル105bに電流を流して第二コイル105b中に磁束を発生させて生起させる。従って、第一コイル105a及び第二コイル105bへの電流を適当に制御すれば、可動子103にねじりばね部107を中心軸として往復揺動運動させられる。
【0035】
ここで、この駆動原理について図1を用いて説明する。可動コア106と第一固定コア104a間のエアギャップのパーミアンスPg(x)は、
Pg=μ0w・(x+x0)/(2δ) (1)
で与えられる。ここで、μ0は真空の透磁率、δはエアギャップの距離、wは第一固定コア104aの幅、xは可動コア106の変位、x0は初期状態(中立位置)のオーバーラップ長さである。
【0036】
磁気回路を構成する空隙以外のパーミアンスをPとすると、磁気回路全体のポテンシャルエネルギWは、
W=1/2・(1/P+1/Pg)−1・(Ni)2(2)
で与えられる。ここで、Nは第一コイル105aの巻数、iは第一コイル105aに流れる電流である。
【0037】
比透磁率が十分大きな磁性材料で、可動コア106と第一固定コア104aを構成すると、Pgと比べPはほぼ無限大とみなすことができる。したがって、空隙部に生じる発生力Fは、
F=−dW/dx=−μ0w/(2δ)・(Ni)2(3)
で与えられる。これにより、この構成の光偏向器では、発生力Fが、第一コイル105aの巻数N、電流iの2乗に比例することが分かる。
【0038】
可動コア106は、図1のように、可動子103においてねじりばね部107を中心軸とした回転力が発生する位置に配置されているため、この発生力Fにより可動子103が揺動する。
【0039】
一方、可動子103が回動することによりねじりばね部107が捩じられ、これによって発生するねじりばね部107のバネ反力F’と可動子103の変位角ψとの関係は、
ψ=((F’・L)・l)/(2・G・Ip) (4)
で与えられる。ここでGは横弾性係数、Lはねじりばね部107の中心軸から力点までの距離、lはねじりばね部107の長さ、Ipは断面二次極モーメントである。そして、発生力Fとバネ反力F’が釣り合う位置まで可動子103が揺動する。したがって、数式(4)のF’に数式(3)のFを代入すれば、可動子103の変位角ψは第一コイル105aに流れる電流iの2乗に比例することが分かる。
【0040】
したがって、第一コイル105aに流す電流を制御することにより、反時計回りの揺動について、可動子103の変位角ψを制御することができる。同様に、第二コイル105bに電流を流すことで、時計回りの揺動について、可動子103の変位角ψを制御できる。つまり、第一コイル105a又は第二コイル105bの何れかまたは両方に、可動子103の揺動に合わせて電流を流すことで、可動子103の変位角ψによらず、可動子103に駆動力を与えることができ、非常に安定した駆動が制御性良く可能となる。こうして、ミラー111に入射する光の反射方向を自由に制御でき、連続的に反復動作すれば光走査を行うことができる。可動コア106を永久磁石で形成する場合は、互いに反対側からの吸引力と反発力(共にクーロン力)も使えるのでコイルに流す電流量を少なくできる等の違いはあるが、おおまかには同様な駆動原理である。
【0041】
次に、図1におけるA−A’断面を表す図2を用いて作製プロセスの実施形態を説明する。但し、プロセスを分かり易くするために、寸法、とくに上下方向の寸法は誇張して示してある。
【0042】
先ず、図2(a)に示すように、材料が単結晶シリコンである基板101(厚さ200μm)に、熱酸化炉等を用いて、二酸化シリコン(マスク)110を1μm程度成膜し、フッ化水素酸等によるウエットエッチング又はフッ素系ガスによる反応性イオンエッチング等を用いて、両面についてパターニングする。パターニングされた表面の二酸化シリコン110をエッチングマスクとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いて、基板101を表面から50μm程度エッチングして溝101’を形成する。
【0043】
次に、図2(b)に示すように、エッチングマスクとして用いた二酸化シリコン(マスク)110をフッ化水素酸等によるウエットエッチング又は反応性イオンエッチングで除去したあと(裏面の二酸化シリコン(マスク)110はそのまま)、熱酸化炉、スパッタ、CVD等で、二酸化シリコン(絶縁層)を成膜する。その上に電気メッキのシード電極(下)123として、チタンを50Å程度成膜した後、金又は銅等を1000Å程度、蒸着、スパッタ等で成膜する。その上にフォトレジスト(下)115を15μm程度成膜後、パターニングし、メッキのマスクとする。
【0044】
次に、図2(c)に示すように、電気銅メッキ又は無電解銅メッキを行い、銅を10μm程度成膜し、下配線120を形成する。続いて、フォトレジスト(下)115を除去し、シード電極(下)123(但し露出した部分のみ)を反応性イオンエッチング又はイオンミーリングを用いて除去する。その上に、ポリイミド、ベンゾシクロブテン等の絶縁膜(下)(不図示)を成膜し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等の強アルカリ溶液によるウエットエッチング又は反応性イオンエッチング等を用いてパターニングする。パターニングにより、コンタクトホール(下)(不図示)を下配線120の端部にコイル1巻について左右1つずつ形成する。
【0045】
次に、図2(d)に示すように、電気メッキのシード電極(中)124として、チタン又はクロム等を50Å程度成膜した後、金又は銅等を1000Å程度、蒸着、スパッタ等で成膜する。その上にフォトレジスト(中)116を55μm程度成膜後、パターニングする。ここでは、フォトレジスト(中)116に厚膜に適したフォトレジストであるSU−8(MICROCHEM CORP.製)を用いた。
【0046】
次に、図2(e)に示すように、フォトレジスト(中)116を電気メッキのマスクとして、電気メッキ又は無電解メッキを行い、強磁性体である鉄、ニッケル、コバルト、或いはそれらの合金等を成膜して、固定コア104a及び可動コア106aを形成する。膜厚はオーバーラップ量x0が0<x0<50μmになるようにする。次に、加熱したN−メチルピロリドンを用いてフォトレジスト(中)116を除去する。そして、シード電極(中)124(但し露出した部分のみ)を反応性イオンエッチング又はイオンミーリング等で除去する。
【0047】
次に、図2(f)に示すように、ポリイミド、ベンゾシクロブテン等の絶縁膜(上)(不図示)を成膜し、パターニングすることでコンタクトホール(上)(不図示)を下配線120上のコンタクトホール(下)に対応する位置に形成する。そして、電気メッキのシード電極(上)125として、チタンを50Å程度成膜した後、金を1000Å程度、蒸着等で成膜する。その上に、フォトレジスト(上)117を15μm程度成膜後、パターニングする。ここでは、フォトレジスト(上)117として、膜厚に適したフォトレジストであるAZ P4620(Hoechst製)を用いた。フォトレジスト(上)117をマスクとして銅メッキを行い、銅を10μm程度成膜して、上配線122を形成する。これにより、上配線122と下配線120とがコンタクトホール(上)及びコンタクトホール(下)を介して接続されて、第一コイル105aが形成される。尚、上配線122の所に描いてある波線は、上配線122が螺旋状になっているので同一断面内では上配線122のこの部分が紙面垂直方向にずれていることを示す。
【0048】
次に、図2(g)に示すように、フォトレジスト(上)117及びシード電極(上)125(但し露出した部分のみ)を除去する。
【0049】
次に、図3(a)に示すように、パターニングされた二酸化シリコン110をエッチングマスクとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いて、基板101を裏面から100μm程度エッチングする。そして、フォトレジスト118を10μm程度成膜後、パターニングし、エッチングのマスクとする(ここでは二酸化シリコン110はそのままにしてあるが、上記表面上のものの様に除去してもよい)。ここでも、フォトレジスト118には、膜厚に適したフォトレジストであるAZ P4620(Hoechst製)を用いた。
【0050】
次に、図3(b)に示すように、パターニングされたフォトレジスト118をエッチングマスクとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いて、基板101を裏面から50μm程度エッチングして溝101”を形成する。その後、フォトレジスト118を除去する。
【0051】
次に、図3(c)に示すように、裏面についても、前記図2(c)〜(f)の工程を行い、固定コア104b及び可動コア106b等を作製する。
【0052】
次に、図3(d)に示すように、フォトレジスト119を10μm程度成膜後、パターニングし、エッチングのマスクとする。ここでも、フォトレジスト119には、膜厚に適したフォトレジストであるAZ P4620(Hoechst製)を用いた。
【0053】
次に、図3(e)に示すように、パターニングされたフォトレジスト119をエッチングマスクとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いて、基板101を裏面から100μm程度エッチングすることで、可動板109及びねじりばね部(不図示)を形成する。その後、フォトレジスト119を除去する。最後に偏向部111を可動子103上に設置する。
【0054】
以上の説明では、可動コアが可動板の側面上に形成されているものとしているが、側面上ではなく側面に近接して形成することもできる。例えば、上記図3(e)の工程において基板101を貫通するエッチングを行なう際に、可動コアの固定コアに面する側面を露出させずに、即ち該可動コアの側面上にも可動板が存在するようにパターニングすることにより、可動板の側面よりねじりばね部に近い位置に(但し該側面に近接して)可動コアを設置することができる。尚、可動コアは、図1に示すように必ずしも可動板を貫通する必要はなく、図3に示すように可動板の上記溝101’、101”の底部を適宜の厚さに残存させて、溝内に位置するものとしてもよい。
【0055】
[実施形態2]
図4は本発明の光偏向器の第2の実施形態を示す上面図である。本実施形態は、固定コア104の形状が実施形態1と異なる。即ち、固定コア104は両端部において可動コア106の両端面と対向する対向端面を備えており、該2つの対向端面は互いに対向する向きに配置されている。固定コア104と可動コア106との間のエアギャップが可動コア106の両端部において形成されており、可動コア106と固定コア104とでトロイダル型のコアを形成している。その他は、実質的に実施形態1と同じである。
【0056】
[実施形態3]
図5は本発明の光偏向器の第3の実施形態を示す図である。図5において、(a)は上面図であり、(b)は(a)におけるA−A’断面図である。本実施形態における基本的な構成、駆動方法及び作製方法も前述の実施形態1と実質的に同一である。図5において、第一固定子202aは、第一固定コア204aとそれを周回する第一コイル205aとから構成され、基板201の表面に固定されている。また、第二固定子202bは、第二固定コア204bとそれを周回する第二コイル(不図示)とから構成され、基板201の裏面に固定されている。第一固定子202aと第二固定子202bは支持基板201に対して対称な位置に固定されている。第一固定子202aと第二固定子202bは、揺動手段の一部分(可動板209から離間して位置する部分)を構成する。第一電流源208aと第一コイル205a、第二電流源208bと第二コイル(不図示)はそれぞれ電気的に直列に接続されている。可動子203は、可動板209と可動コア206と偏向部211とから構成され、ねじりばね部207により支持基板201に対して揺動自由に支持されている。
【0057】
図5において、固定コア204a、204bと可動コア206はくし歯形状を有し、可動コア206が可動板209の側面に設置されていることを特徴としている。但し、図5では、簡単の為、くし歯の数を少なく表示している。また、固定子202a、202b及び可動子203のくし歯の部分の寸法は、例えば、くし歯の長さ200μm、くし歯の幅25μm、くし歯間の空隙25μmである。固定子202a、202b及び可動子203の夫々におけるくし歯の配列ピッチは、例えば、100μmである。固定子202a、202bのくし歯を除く部分の寸法S1及びS2の大きさは、例えば、S1=8mm、S2=10mmである。
【0058】
以上のように構成された本実施形態の光偏向器は、コイル205a、205bの何れかまたは両方に、可動子203の揺動に合わせて電流を流すことで、可動子203の変位角によらず、可動子203に駆動力を与えることができ、非常に安定した駆動が可能となる。また、固定コア204のくし歯による凹凸部と可動コア206のくし歯による凹凸部とが互いに空隙を介して噛み合うように配置して構成されていることで、固定コア204と可動コア206が機械的に干渉することが無く、ストロークを大きくとれる。また、可動コア206が可動板209の側面に設置されているため、固定コア204と可動コア206の対向面の厚み方向のずれを大きくとることができ、可動子203の変形角度を大きくとり易い。また、固定コア204と可動コア206とで、最大対向面積を大きくすることができ、磁束の漏れの少ない構造が実現でき、エネルギー効率が良い。
【0059】
[実施形態4]
図6は本発明の光偏向器の第4の実施形態を示す図である。図6において、(a)は上面図であり、(b)は(a)におけるA−A’断面図である。本実施形態における基本的な構成、駆動方法及び作製方法も前述の実施形態1と実質的に同一である。図6において、301は支持基板、302a、302b、302c、302dは固定子、303は可動子、304a、304b、304c、304dは固定コア、305a、305cはコイル、306は可動コア、307はねじりばね部、308a、308b、308c、308dは電流源、309は可動板、311は偏向部をそれぞれ示している。実施形態4は、支持基板301上の一つの可動子303に対して、その両側において、表面に2つの対向する固定子302a、302cと電流源308b、308c、裏面に2つの対向する固定子302b、302dと電流源308a、308dを配置した構成となっている。固定子304a、304b、304c、304dのそれぞれは実施形態1に述べた固定子102と同一の構成となっている。
【0060】
可動コア306は、可動板309の両側(可動板の回転中心の両側)にそれぞれ固定コア304a〜dと対向するように配置されている。また、2つの可動コア306は、可動板309の側面にねじりばね部307と平行に配置されていることを特徴としている。電流源308a〜dは1つのコイル305a〜dにつき1つずつ備えられ、対応するコイル305a〜dに独立して電流を流すことができる。可動子303には偏向部311が設置されている。
【0061】
駆動方法は次の様になる。電流源308a、308dを用いて、まずコイル305a、305dの2つのみに電流を流すと、可動子303がねじりばね部307を中心軸として反時計回り(図6(b)参照)に揺動し、流す電流を制御することにより、可動子303の変位角を制御できる。一方、コイル305b、305cの2つのみに電流を流すと、可動子303はねじりばね部307を中心軸として時計回りに揺動する。つまり、可動子303の揺動に合わせて電流を流すことで、可動子303の変位角に依らず、可動子303に連続的に駆動力を与えることができ、非常に制御性が良く安定した駆動が可能となる。また、変位センサ(不図示)を用いて、可動子303の変位を検知し、電流源308a〜dから流す電流を変化させ、可動子303の動きを制御すること(各電流源308a〜dから電流を流すタイミングを調整して可動子303の動きを抑制することを含む)も可能である。
【0062】
以上のように構成された本実施形態の光偏向器は、可動子303の揺動に合わせてコイル305a〜dに電流を流すことで、可動子303の変位角ψによらず、可動子303に適正な駆動力を与えることができ、非常に安定した駆動が可能となる。また、2つの可動コア306が可動子309の側面に設置されているため、可動板309の上下方向及び左右方向の重量バランスが良く、非駆動時に可動板309の支持基板301に対する傾きを容易に無くすことができる。また、固定コア304が可動子303の両側に設置されているため、駆動中の可動板309の変位に関わらず(即ち、可動子303の揺動の位相の如何に係らず)、何れかの固定コア304a〜dから、対応する可動コア306に対して電磁力を与えることができ、非常に安定した駆動が可能になる。
【0063】
[実施形態5]
図7は本発明の光偏向器の実施形態5を説明する上面図である。本実施形態では、前述の実施形態1の光偏向器を2段に形成しており、2次元偏向が可能である(即ち、互いに異なる方向の回転中心の回りでの揺動が可能である)。即ち、本実施形態は2つの光偏向器(大)421及び光偏向器(小)422を有している。
【0064】
光偏向器(大)421において、第一固定子402aは、第一固定コア404aとそれを周回する第一コイル405aとから構成され、第一基板401a上に固定されている。また、第二固定子(不図示)は、第二固定コア(不図示)とそれを周回する第二コイル(不図示)とから構成され、基板401の裏面に固定されている。第一電流源408aと第一コイル405a、第二電流源408bと第二コイルはそれぞれ電気的に直列に接続されている。第一可動子403a(第二基板401bでもある)は、第一可動板409aと第一可動コア406aを含み、第一ねじりばね部407aにより第一支持基板401aに対して第1の方向(図7における上下方向)の回りで揺動自由に支持されている。第一可動コア406aは、第一可動板409aの側面に第一固定コア404a及び第二固定コアと対向するように配置されている。また、第一可動コア406aは、第一可動板409aの側面に第一ねじりばね部407aと平行に設置されている。
【0065】
光偏向器(小)422は、光偏向器(大)421の第一可動子403aを支持基板として用いて形成されている(但し、光偏向器(大)421の偏向部は除外されている)。即ち、光偏向器(小)422においては、第三固定子402cは、第三固定コア404cとそれを周回する第三コイル405cとから構成され、第一可動子403a上に固定されている。また、第四固定子(不図示)は、第四固定コア(不図示)とそれを周回する第四コイル(不図示)とから構成され、第一可動子403aの裏面に固定されている。第三電流源408cと第三コイル405c、第四電流源408dと第四コイルはそれぞれ電気的に直列に接続されている。第二可動子403bは、第二可動板409bと第二可動コア406bと偏向部411を含み、第二ねじりばね部407bにより第一可動板409aに対して上記第1の方向と直交する第2の方向(図7における左右方向)の回りで揺動自由に支持されている。第二可動コア406bは、第二可動板409bの側面に第三固定コア404c及び第四固定コアと対向するように配置されている。また、第二可動コア406bは、第二可動板409bの側面に第二ねじりばね部407bと平行に設置されている。
【0066】
以上の様に、光偏向器(小)422は光偏向器(大)421の第一可動子403a上に配置される入れ子構造となっている。光偏向器(小)422の第二可動子403b上にはミラー411が設置されている。それぞれ2つの電流源408を含む2組の電流源は、それぞれが光偏向器(大)421と光偏向器(小)422とを独立に駆動できる。従って、不図示の半導体レーザ等の光源から発生した光をミラー等からなる光偏向部411に当てることで、その反射光を上記第1の方向の回りと第2の方向の回りとで2次元に偏向することができる。
【0067】
光偏向器(大)421及び光偏向器(小)422としては、上記実施形態2や実施形態3の光偏向器を用いることもできる。光偏向器(大)421及び光偏向器(小)422の一方と他方とで、上記実施形態1乃至3のうちの互いに異なる光偏向器を組み合わせて用いてもよい。また、光偏向器411として、ミラーの代わりにレンズや回折格子のような光学素子を設置してもよい。
【0068】
以上のように構成された本実施形態の光偏向器は、エネルギー効率の良い、非常に制御性が良く安定した駆動が可能な2次元光偏向器である。
【0069】
[実施形態6]
図8は本発明の光偏向器を用いた光学機器である本発明による画像表示装置の基本的な構成を示す模式図である。図8において、502はレーザ光源であり、503はレンズ或いはレンズ群であり、504は書き込みレンズまたはレンズ群であり、505は投影面(画像表示面)である。2つのレンズ或いはレンズ群503、504の間には、光偏向器群501が配置されている。光偏向器群501は、2つの光偏向器501a、501bを備えており、レーザ光源502からレンズ或いはレンズ群503を経て到来する光が光偏向器501aにより第1方向の回りでの偏向作用を受け、光偏向器501aにより偏向された光が光偏向器501bにより第1方向と直交する第2方向の回りでの偏向作用を受けて、書き込みレンズまたはレンズ群504を経て投影面505上へと投影されて画像を形成する。光偏向器501a、501bとしては、上記実施形態1乃至3に示された光偏向器を使用することができ、その偏向部としてミラー、レンズ、回折格子等の光学素子を用いられる。
【0070】
以上の様に、本実施形態の画像表示装置は、光偏向器を偏向方向が互いに直交するように2個配置した光偏向器群501を用いており、水平・垂直方向に入射光をラスタスキャンする光スキャナ装置として機能する。ここにおいて、レーザ光源502から入射されたレーザ光は、光走査のタイミングと関係した所定の強度変調を受けており、光偏向器群501により2次元的に走査されることで、投影面505上に画像を形成する。
【0071】
本実施形態において、光偏向器群501として上記実施形態4の光偏向器を使用してもよい。その場合にも、同様な画像表示を行なえる。
【0072】
[実施形態7]
図9は本発明の光偏向器を用いた光学機器である本発明による画像形成装置の基本的な構成を示す模式図である。図9において、602はレーザ光源であり、603はレンズ或いはレンズ群であり、604は書き込みレンズまたはレンズ群であり、606はドラム状感光体(画像表示面)である。2つのレンズ或いはレンズ群603、604の間には、光偏向器601が配置されている。光偏向器601としては、上記実施形態1乃至3に示された光偏向器を使用することができ、その偏向部としてミラー、レンズ、回折格子等の光学素子を用いられる。
【0073】
以上の様に、本実施形態の画像形成装置は、光偏向器によりドラム状感光体606の回転中心Cと平行な一次元方向に光を走査する光スキャナ装置として機能する。ここにおいて、レーザ光源602から入射されたレーザ光は、光走査のタイミングと関係した所定の強度変調を受けており、光偏向器601により一次元的に走査される。一方、ドラム状感光体606は回転中心Cの回りで所要の回転速度で回転している。そして、感光体606は図示しない帯電器により表面が一様に帯電されている。従って、光偏向器601による走査と感光体606の回転とに基づき、感光体606の表面に光がパターン状に入射されることになり、その光入射部分と光非入射部分とで静電潜像を形成される。図示しない現像器により、感光体606の表面の静電潜像に対応したパターンのトナー像を形成し、これを例えば図示しない用紙に転写・定着することで可視画像を形成することが可能である。
【0074】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明の電磁アクチュエータ、光偏向器によると、従来の電磁アクチュエータ、光偏向器に比べて、制御性の良い安定な駆動が可能になる。また、本発明の光偏向器を用いて、制御性の良い安定な駆動が可能な画像表示装置、画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の光偏向器の実施形態1を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図2】図2は本発明の実施形態1の作製プロセスを説明する断面図である。
【図3】図3は図2の作製プロセスに続く実施形態1の作製プロセスを説明する断面図である。
【図4】図4は本発明の光偏向器の実施形態2を説明する上面図である。
【図5】図5は本発明の光偏向器の実施形態3を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図6】図6は本発明の光偏向器の実施形態4を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図7】図7は本発明の光偏向器の実施形態5を説明する上面図である。
【図8】図8は本発明の画像表示装置の実施形態を説明する模式図である。
【図9】図9は本発明の画像形成装置の実施形態を説明する模式図である。
【図10】図10は第1の従来技術を説明する上面図である。
【図11】図11は第2の従来技術を説明する上面図である。
【符号の説明】
101、201、301、401:支持基板
101’、101”:溝
102a、202a、302a、402a:第一固定子
102b、202b、302b:第二固定子
302c、402c:第三固定子
302d:第四固定子
103、203、303、403a、403b:可動子(第1可動子、第2可動子)
104a、204a、304a、404a:第一固定コア
104b、204b、304b:第二固定コア
304c、404c:第三固定コア
304d:第四固定コア
105a、205a、305a、405a:第一コイル
305c、405c:第三コイル
106、106、206、306、406a、406b:可動コア(第1コア、第2コア)
107、207、307、407a、407b:ねじりばね部(第1ねじりばね部、第2ねじりばね部)
108a、208a、308a、408a:第一電流源
108b、208b、308b、408b:第二電流源
108c、208c、308c、408c:第三電流源
108d、208d、308d、408d:第四電流源
109、209、309:可動板
110:二酸化シリコン(マスク)
111、211、311、411:ミラー(偏向部)
115:フォトレジスト(下)
116:フォトレジスト(中)
117:フォトレジスト(上)
118、119:フォトレジスト
120:下配線
122:上配線
123:シード電極(下)
124:シード電極(中)
125:シード電極(上)
134a、134b、136:面
421:光偏向器(大)
422:光偏向器(小)
501(501a、501b):光偏向器群
502、602:レーザ光源
503、603:レンズ或いはレンズ群
504、604:書き込みレンズまたはレンズ群
505:投影面
601:光偏向器
606:感光体
801:ガルバノミラー
802:シリコン基板
803:上側ガラス
804:下側ガラス
806:ねじりバネ
807:平面コイル
808:全反射ミラー
809:コンタクトパット
810A、810B、811A、810C:永久磁石
1002:溝部
1003:y軸方向偏向部
1004:x軸方向偏向部
1005:軸部
1007:薄膜電磁石部
1008:ミラー
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁アクチュエータ、電磁アクチュエータを用いた光偏向器、及び光偏向器を用いた画像表示装置、画像形成装置、並びにその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体プロセスを利用して、シリコン等の基板上に電磁アクチュエータを作製する試みがなされている。電磁アクチュエータを半導体プロセスを用いて作製すると、固定子と可動子と電磁コイルとを一括で作製でき、接合や接着をする工程が不要であり、固定子と可動子と電磁コイルとを高精度にアライメントできる。また、一度に大量に作製可能な為、低コスト化が見込める。
【0003】
基板上に作製される電磁アクチュエータの応用例の一つとして光偏向器がある。光偏向器はレーザビームプリンタ等の画像形成装置やヘッドマウントディスプレイ等の画像表示装置や、バーコードリーダ等の画像入力装置に用いられる。
【0004】
基板上に作製される電磁アクチュエータを光偏向器に応用した例として、特開2000−235152号公報に開示のものがある。図10は、特開2000−235152号公報に実施例の1つとして記載されている光偏向器を示す上面図である。これは、トーションビーム光偏向器であり、レーザ光を2次元走査する偏向器として用いられる。このトーションビーム光偏向器は、内側のy軸方向偏向部1003と外側のx軸方向偏向部1004とから構成されている。内側のy軸方向偏向部1003は、溝部1002を有する基板1001と、軸部1005によって揺動可能に支持され表面に硬磁性を示す薄膜が成膜されている可動板1006と、可動板1006を揺動させる一対の薄膜電磁石部1007と、可動板1006上に設けられたミラー1008から構成されている。可動板1006と薄膜電磁石部1007の形成面は厚み方向に僅かにずらしてある。薄膜電磁石部1007にy軸方向偏向部1003の構造的な共振周波数である60kHzの交流を通電することで生じる磁界と、可動板1006に形成された硬磁性薄膜に生ずる磁界との間に生ずるクーロン力で可動板1006を揺動させ、照射された光をミラー1008により偏向させる。機械的な共振を利用した駆動方法のため、低消費電力を実現することができる。外側のx軸方向偏向部1004は、y軸方向偏向部1003と同様の構造であり、駆動方法も同様である。この光偏向器の駆動周波数は60kHz(y軸)、60Hz(x軸)、可動板1006の変形角度は±13.67°(y方向)である。
【0005】
また、半導体プロセスと永久磁石を用いて電磁アクチュエータの小型化を試み、これを光偏向器に応用したものもある。永久磁石を用いることで比較的容易に磁界を形成でき、可動子の軽量化を図ることで高速動作が期待できる。その一例として、特開平7−175005号公報に開示されたものがある。図11は、特開平7−175005号公報に実施例の1つとして記載されている光偏向器を示す上面図である。この光偏向器は、ミラーを有する平板状の可動板が2つのねじりバネにより、基板に対して揺動可能に支持されている。図11において、801はガルバノミラー、802はシリコン基板、803は上側ガラス、804は下側ガラス、805は可動板、806はねじりバネ、807は平面コイル、808は全反射ミラー、809はコンタクトパッド、810A,810B,811A,810Cは永久磁石をそれぞれ示している。前記可動板805には、周縁部に、通電により磁界を発生する駆動用平面コイル807が敷設されており、前記ねじりバネ806の軸方向と平行な前記駆動平面コイルの両側部分のみに静磁界を与えるよう、半導体基板の上下面に、互いに対をなす永久磁石810A,810B;811A,810Cが上下ガラス基板803,804を介して設置されている。この光偏向器では、駆動用平面コイル807に通電し、平面コイル807を流れる電流と永久磁石810A,810B;811A,810Cによる磁束密度の方向により、フレミングの左手の法則に従った方向にローレンツ力F(不図示)が働き、可動板805を揺動させるモーメントが発生する。可動板805が揺動すると、ねじりバネ806のバネ剛性により、バネ反力F’(不図示)が発生する。平面コイル807に流す電流を交流として連続的に反復動作すれば、光反射面を有する可動板805が揺動し、これにより反射光が走査される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した光偏向器は何れも以下に示すような問題点を有している。
図10に示した特開2000−235152号公報の光偏向器においては、高速動作を実現しているが、薄膜電磁石部1007を構成するコアがスパッタで成膜される薄膜であるため、断面積を大きくすることには限界がある。そのため、薄膜電磁石部1007に大きな電流を流すと磁束が飽和することは必至であり、変形角度をさらに大きくすることが難しい。また、可動板1006と薄膜電磁石部1007の形成面の厚み方向のずれが僅かであり、この点からも変形角度をさらに大きくすることが難しい。さらに、可動板1006に対してクーロン力が発生するのは、主に1つの揺動方向のみであり、逆の揺動方向への駆動は軸部1005のバネ反力に依っている。そのため、2つの揺動方向に対して安定に駆動することが難しい。
【0007】
図11に示した特開平7−175005号公報の光偏向器においては、光を走査する際の光の振れ角を大きくしようとすると、上下ガラス基板803,804と可動板805との距離を大きくしなければならない。そのため、永久磁石810A,810B;811A,810Cと駆動用平面コイル807との相対的な距離が大きくなり、そうなると、平面コイル807における磁束密度は小さくなり、駆動に大きな電流を必要とすることになる。また、静磁界を与えるために、永久磁石810A,810B;811A,810Cを基板外に設置する必要があり、更なる小型化を図ることは難しい。
【0008】
本発明の目的は、上記従来の技術における問題を解決し、制御性に優れた、すなわち安定な駆動、駆動の微妙な調整等が可能な電磁アクチュエータ、電磁アクチュエータを用いた光偏向器、及び光偏向器を用いた画像表示装置、画像形成装置、並びにその製法を提供することにある。大きな変位が可能で高速動作が可能であり、エネルギー効率が高く、安価な電磁アクチュエータを提供することもできる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の電磁アクチュエータは、上記課題を解決するものとして、可動板と、可動板を回転中心の周りでの揺動が可能なように支持する弾性支持部と、弾性支持部を支持する支持基板と、可動板を揺動させる揺動手段とを備えた電磁アクチュエータであって、揺動手段は、可動板に敷設された可動コアと、支持基板の表面に設置されるコア部にコイルを周回させた第一固定コアと、支持基板の裏面に設置されるコア部にコイルを周回させた第二固定コアとを含み、第一固定コアと第二固定コアとのそれぞれは、可動コアと空隙を介して磁気的に結合していることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明の光偏向器は、上記課題を解決するものとして、上記電磁アクチュエータを用いた光偏向器であって、可動板は入射光を偏向させる偏向部を有することを特徴とする。偏向部は、例えば、ミラー、レンズ、或いは回折格子を有する。偏向部をミラーで構成する場合、作製が容易で、可動部分の質量が小さい光偏向器を提供できる。偏向部をレンズで構成する場合、偏向角の大きい透過型の光偏向器を提供できると共に、光の入射方向に対して光の偏向範囲を光偏向器の反対側に持って来られるので、装置各部の設計配置上の自由度が高まる。また、偏向部を回折格子で構成する場合は、入射光を複数のビームとして偏向することができる。
【0011】
これらの構成のように、支持基板の表面及び裏面に、コア部にコイルを周回させた少なくとも1つの固定コアを設置して、各コイルに流す電流を目的に応じて柔軟に変化させることにより、可動コアを有する可動板に対して、可動板の変位角に依らず、可動板の動作を制御するための駆動力を与え続ける様なことも可能であり、制御性良く非常に安定した駆動を実現できる。また、支持基板の両面に固定コアを設置しているため、支持基板の大きさを有効に使用することができる。
【0012】
上記基本構成に基づいて、以下の様な態様が可能である。
可動コアは、可動板の回転中心から離間して位置する部分を有し得る。エネルギー効率を高くするのには、こうした構成が好適であるが、可動コアは種々の形態で可動板に配置でき、それに応じて固定コアも種々の形態で支持基板の表面及び裏面に設置できる。
【0013】
第一固定コアと第二固定コアは、支持基板に対して対称な位置に設置され得る。この構成のように、支持基板の表裏で同一の位置に固定コアを設置することで、支持基板の大きさを有効に使用することができ、固定コアが単一の場合と比較して、デバイスの設置面積は大きくならない。
【0014】
可動板と弾性支持部と支持基板とは、同一部材から形成され得る。この構成のように、可動板と弾性支持部とを同一部材から形成することで、組み立て工程が不要であり、低コストで作製できる。また、可動板と支持基板とのアライメントが不要であり、ロット間のばらつきが少なくなる。
【0015】
可動コアと第一固定コア及び第二固定コアとは、空隙を介して対向配置され、揺動手段が非動作状態にある中立位置において、支持基板に対して平行であって第一固定コア及び第二固定コアとを支持基板に垂直な方向に二等分する面は、それぞれ、支持基板に対して平行であって可動コアを支持基板に垂直な方向に二等分する面から支持基板に垂直な方向に互いに反対方向に対称的或いは非対称的にずれている様にできる。この構成のように、可動コアと固定コアとを、空隙を介して対向配置し、可動コアを支持基板に垂直な方向に二等分する面と、固定コアを支持基板に垂直な方向に二等分する面とが異なっていることにより、効果的に基板の法線方向に力を発生できる電磁アクチュエータ或いは光偏向器を形成できる。また、可動コアと固定コアそれぞれの対向面の支持基板法線方向のオーバーラップ長さを適切に決定することで、大ストロークかつ大発生力を実現できる。
【0016】
第一固定コア又は第二固定コアの両端部はそれぞれ対向する向きに配置されている様にできる。また、第一固定コア又は第二固定コアの両端部はそれぞれ同一平面内に配置されている様にもできる。これらの構成のようにすることで、磁束の漏れを低減し、高効率に発生力を得ることが可能である。また、可動コアが強磁性体で形成される場合、発生力は固定コアと可動コア間の空隙のパーミアンスによって決まり、そのため、前者の形態では、可動コアと固定コアとで、トロイダル型のコアを形成することができ、磁束の漏れが極めて少なくなる。そのため、消費電流を小さくすることができ、エネルギー効率が向上する。後者の形態では、可動コアの最も長い辺全てを磁路の幅として構成できるため、効果的に大きな発生力を得ることができる。
【0017】
第一固定コア及び第二固定コアと可動コアとのそれぞれが凹凸部を有し、第一固定コア及び第二固定コアの凹凸部と可動コアの凹凸部とが、可動板の揺動を許容するようにして空隙を介して互いに噛み合うように配置されている様にできる。この構成のようにすることで、電磁アクチュエータ或いは光偏向器に発生する力が、ギャップの2乗に逆比例して減少することがなく、コイルに通電した電流による一定の条件によって決定することが可能となり、従来の電磁アクチュエータ或いは光偏向器に比べて制御が極めて容易となる。また、固定コアと可動コアとが接触することなく、ギャップを小さくすることが可能となり、発生する力を大きくできる。
【0018】
可動板の側面側に少なくとも1つの可動コアが設置されている様にできる。この構成のように、可動板の側面側に可動コアを設置することで、揺動手段の設置位置の自由度が高まり、磁束の漏れの少ない構造を実現できる。そのため、消費電力を小さくすることができ、エネルギー効率が向上する。また、固定コアと可動コアの対向面のずれを大きくとることができ、可動板に対する支持基板垂直方向の発生力が得やすく、大ストロークを実現しやすい。
【0019】
可動板と弾性支持部との少なくとも何れか一方が単結晶シリコンよりなる様にできる。この構成のようにすることで、弾性支持部の減衰係数が小さくなるため、共振で利用した場合に大きなQ値を得ることができる。また、金属材料のような繰り返し変形による疲労破壊が起きないので、長寿命の電磁アクチュエータ或いは光偏向器を構成可能となる。
【0020】
可動コアは強磁性体よりなり得る。また、可動コアは永久磁石よりなり得る。前者の構成のように、可動コアを強磁性体で構成することにより、可動子の制御性の良い電磁アクチュエータ或いは光偏向器を提供できる。また、これは半導体プロセスで作り易い構造である。後者の構成のように、可動コアを永久磁石で構成することにより吸引力と反発力を効果的に利用できるので、エネルギー効率の良い電磁アクチュエータ或いは光偏向器を提供できる。
【0021】
また、上記構成の第一の光偏向器の支持基板として、上記構成の第二の光偏向器の偏向部を除いた可動板が使用されており、第一の光偏向器の回転中心と第二の光偏向器の回転中心とが互いに直交している光偏向器を構成することもできる。この構成のように、電磁アクチュエータを入れ子構造にすることで、入射光を2次元に偏向できる。
【0022】
また、上記目的を達成する本発明の画像表示装置は、上記課題を解決するものとして、光源と、光源から発せられた光を偏向させる上記の光偏向器と、光偏向器により偏向された光が投影される画像表示面とを有することを特徴とする。この構成のように、上記の光偏向器を画像表示装置に応用することで、制御性が良く非常に小型で安価な画像表示装置を提供できる。
【0023】
また、上記目的を達成する本発明の画像形成装置は、上記課題を解決するものとして、光源と、光源から発せられた光を偏向させる上記の光偏向器と、光偏向器により偏向された光が投影される感光性材料とを有することを特徴とする。この構成のように、上記の光偏向器を画像形成装置に応用することで、制御性が良く非常に小型で安価な画像表示装置を提供できる。
【0024】
また、上記目的を達成する本発明の電磁アクチュエータまたは光偏向器を作製する方法は、上記課題を解決するものとして、基板に溝を形成する工程と、溝に可動コアを形成する工程と、基板を用いて可動板と弾性支持部と支持基板とを形成する工程と、支持基板の表面に第一固定コアを形成する工程と、支持基板の裏面に第二固定コアを形成する工程とを有することを特徴とする。この構成のように電磁アクチュエータまたは光偏向器を作製することで、可動板の側面側に可動コアを、支持基板の表面に第一固定コアを、支持基板の裏面に第二固定コアをそれぞれ容易且つ精度良く作製することができる。また、可動板と弾性支持部とを一度に作製できる。さらに、可動板と支持基板とのアライメントが不要であり、組み立て工程が不要であり、低コストで作製できる。
【0025】
上記作製方法において、基板を用いて可動板と弾性支持部と支持基板とを形成する工程は、基板の一部を用いて可動板と弾性支持部とを形成することにより基板の他部を用いて支持基板を形成する工程とでき、工程は反応性イオンエッチング、またはアルカリ溶液を用いたエッチングを含んでなされ得る。前者のように、反応性イオンエッチングを行うことで、精度良く、安定して可動板と弾性支持部の形状を形成することができる。後者のように、アルカリ溶液を用いたシリコン結晶面のエッチング速度差による異方性エッチングを行うことで、精度良く、安定して可動板と弾性支持部の形状を形成することができ、また、エッチングレートが反応性イオンエッチングと比較して速いため、時間を短縮でき、コストダウンに繋がる。
【0026】
また、前記溝に可動コアを形成する工程はメッキによりなされ得る。このように可動コアをメッキで作製することにより、蒸着やスパッタリングと比較して、厚く、高速に可動コアを形成できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0028】
[実施形態1]
図1は本発明による光偏向器の第1の実施形態の構成を示す図である。図1において、(a)は上面図であり、(b)は(a)におけるA−A’断面である。図1において、第一固定子102aは、第一固定コア104aとそれを周回する第一コイル105aとから構成され、基板101の表面に固定されている。また、第二固定子102bは、第二固定コア104bとそれを周回する第二コイル(不図示)とから構成され、基板101の裏面に固定されている。本実施形態の特徴は、第一固定子102aと第二固定子102bが支持基板101に対して対称な位置に固定されていることである。第一固定子102aと第二固定子102bは、揺動手段の一部分(可動板109から離間して位置する部分)を構成する。
【0029】
第一電流源108aと第一コイル105a、第二電流源108bと第二コイル105bはそれぞれ電気的に直列に接続されている。可動子103は、可動板109と可動コア106と偏向部111とから構成され、ねじりばね部107により支持基板101に対して揺動自由に支持されている。ねじりばね部107は弾性支持部を構成しており、可動板109を回転中心(ねじりばね部107の伸長方向:図1(a)の上下方向)の回りでの揺動が可能なように支持している。このねじりばね部107を回転中心として、可動板109と可動コア106と偏向部111が一体となって一方向に回転(揺動)する。従って、このねじりばね部107を回転中心軸ということができる。このねじりばね部107が弾性を有する場合、可動板109と可動コア106と偏向部111が一体となって一方向に回転すると、ねじりばね部107がその方向と反対の回転方向に反力を生じ易く、従って揺動(往復運動)が容易となる。尚、可動コア106は揺動手段の一部を構成している。揺動手段は、具体的には、この可動コア106と固定コア104a、104b及びコイル105a、105bから成っており、すなわち揺動手段はそれ自体が揺動するか否かに係らず揺動を生起させるための部材からなるものである。
【0030】
本実施形態では、1つの可動コア106が可動板109の側面に設置されている。可動コア106は可動板109の表面及び裏面に1つずつ配置される構成でもよい。可動コア106が設置されている可動板109の側面は、可動板109の回転中心(揺動中心)から隔てられた最も遠い位置にある。各固定コア104a、104bは、両端部において可動コア106の側面と対向する対向側面を備えており、該2つの対向端面は可動コア106の側面と略平行な同一平面内にある。
【0031】
揺動手段が非動作状態にある中立位置において、x軸方向に関して第一固定コア104aを二等分する面(x軸方向と直交する面)134aとx軸方向に関して第二固定コアを二等分する面(x軸方向と直交する面)134bは、それぞれ、x軸方向に関して可動コア106を二等分する面(x軸方向と直交する面)136からx軸方向に互いに反対方向にずれているが、そのずれの程度は若干異なっている(図1(b)では対称的にずれているように見えるが、実際にはこの様になっている)。第一固定コア104aと可動コア106の対向面間、第二固定コア104bと可動コア106の対向面間には、それぞれ、適当なオーバーラップ長さx0が設定されている。
【0032】
偏向部111はミラーやレンズや回折格子等の光学素子で構成される。可動コア106は、可動板109の支持基板101に対して略垂直な面に設置されている。また、支持基板101とねじりばね部107と可動子103とは、半導体プロセスにより、一体で形成されている。第一コイル105a及び第二コイル105bは銅やアルミニウムのように低抵抗な金属で構成され、第一固定コア104a及び第二固定コア104bとはそれぞれ電気的に絶縁されている。また、第一固定コア104aと第二固定コア104bと可動コア106は、強磁性体であるニッケル、鉄、コバルト、又はその合金等から構成されている。また、第一固定コア104aと第二固定コア104b及び第一コイル105aと第二コイル105bは、それぞれ、それらの間にポリイミドやベンゾシクロブテン等からなる絶縁膜を介在させたり、空中配線を構成することにより、電気的に絶縁されている。
【0033】
他の構成として、可動コア106に永久磁石を用いてもよい。永久磁石はサマリウムコバルト、ネオジウム鉄ボロン等の硬磁性体を着磁した材料から構成され、その磁極の向きはねじりばね部107の方向と平行に配置する。この場合、第一コイル105aと第二コイル105bの巻く方向を逆に構成し、第一コイル105aと第二コイル105bとを電気的に直列に接続して1つの電流源に繋げた構成による駆動を行うこともできる。なぜなら、この場合、電流の方向がいずれであっても第一固定コア104aと第二固定コア104bの同側の端部は必ず逆の極性に励磁されるので、永久磁石である可動コア106は第一固定コア104aと第二固定コア104bから、夫々、吸引力と反発力或いは反発力と吸引力を受けてねじりばね部107を中心軸として揺動させられるからである。また、この場合、上記中立位置における上記ずれを対称的にしてもよい。なぜなら、可動板109を中立位置から始動するに際して、可動コア106に固定コアから吸引力と反発力の両方を働かさせられるので、この様に対称的に設計しても始動がスムーズにできるからである。これに対して、可動コア106に強磁性体を用いた上記の場合には、可動コア106に固定コアから吸引力しか働かさせられないので、始動をスムーズにできる様にする為には上記中立位置におけるずれを非対称的にするのがよい。
【0034】
次に、図1(a)、(b)の構成であって可動コア106が強磁性体で構成される場合の揺動運動について説明する。(b)における可動板109の反時計回りの揺動を説明する。まず、電流源108aから矢印の方向に第一コイル105aに電流を流すと、第一コイル105a中に白抜きの矢印の方向に磁束が発生する。この磁束は、矢印で示した方向に第一固定コア104a、エアギャップ、可動コア106a、エアギャップの順に磁気回路を周回し、エアギャップが狭くなる方向(可動コア106と第一固定コア104aとのオーバーラップ量を増加させる方向でもある)、つまり、基板101の法線方向に、可動コア106が第一固定コア104a側に引き寄せられ、可動子103がねじりばね部107を中心軸として反時計回りに揺動する。反対に、(b)における可動板109の時計回りの揺動は、電流源108bから第二コイル105bに電流を流して第二コイル105b中に磁束を発生させて生起させる。従って、第一コイル105a及び第二コイル105bへの電流を適当に制御すれば、可動子103にねじりばね部107を中心軸として往復揺動運動させられる。
【0035】
ここで、この駆動原理について図1を用いて説明する。可動コア106と第一固定コア104a間のエアギャップのパーミアンスPg(x)は、
Pg=μ0w・(x+x0)/(2δ) (1)
で与えられる。ここで、μ0は真空の透磁率、δはエアギャップの距離、wは第一固定コア104aの幅、xは可動コア106の変位、x0は初期状態(中立位置)のオーバーラップ長さである。
【0036】
磁気回路を構成する空隙以外のパーミアンスをPとすると、磁気回路全体のポテンシャルエネルギWは、
W=1/2・(1/P+1/Pg)−1・(Ni)2(2)
で与えられる。ここで、Nは第一コイル105aの巻数、iは第一コイル105aに流れる電流である。
【0037】
比透磁率が十分大きな磁性材料で、可動コア106と第一固定コア104aを構成すると、Pgと比べPはほぼ無限大とみなすことができる。したがって、空隙部に生じる発生力Fは、
F=−dW/dx=−μ0w/(2δ)・(Ni)2(3)
で与えられる。これにより、この構成の光偏向器では、発生力Fが、第一コイル105aの巻数N、電流iの2乗に比例することが分かる。
【0038】
可動コア106は、図1のように、可動子103においてねじりばね部107を中心軸とした回転力が発生する位置に配置されているため、この発生力Fにより可動子103が揺動する。
【0039】
一方、可動子103が回動することによりねじりばね部107が捩じられ、これによって発生するねじりばね部107のバネ反力F’と可動子103の変位角ψとの関係は、
ψ=((F’・L)・l)/(2・G・Ip) (4)
で与えられる。ここでGは横弾性係数、Lはねじりばね部107の中心軸から力点までの距離、lはねじりばね部107の長さ、Ipは断面二次極モーメントである。そして、発生力Fとバネ反力F’が釣り合う位置まで可動子103が揺動する。したがって、数式(4)のF’に数式(3)のFを代入すれば、可動子103の変位角ψは第一コイル105aに流れる電流iの2乗に比例することが分かる。
【0040】
したがって、第一コイル105aに流す電流を制御することにより、反時計回りの揺動について、可動子103の変位角ψを制御することができる。同様に、第二コイル105bに電流を流すことで、時計回りの揺動について、可動子103の変位角ψを制御できる。つまり、第一コイル105a又は第二コイル105bの何れかまたは両方に、可動子103の揺動に合わせて電流を流すことで、可動子103の変位角ψによらず、可動子103に駆動力を与えることができ、非常に安定した駆動が制御性良く可能となる。こうして、ミラー111に入射する光の反射方向を自由に制御でき、連続的に反復動作すれば光走査を行うことができる。可動コア106を永久磁石で形成する場合は、互いに反対側からの吸引力と反発力(共にクーロン力)も使えるのでコイルに流す電流量を少なくできる等の違いはあるが、おおまかには同様な駆動原理である。
【0041】
次に、図1におけるA−A’断面を表す図2を用いて作製プロセスの実施形態を説明する。但し、プロセスを分かり易くするために、寸法、とくに上下方向の寸法は誇張して示してある。
【0042】
先ず、図2(a)に示すように、材料が単結晶シリコンである基板101(厚さ200μm)に、熱酸化炉等を用いて、二酸化シリコン(マスク)110を1μm程度成膜し、フッ化水素酸等によるウエットエッチング又はフッ素系ガスによる反応性イオンエッチング等を用いて、両面についてパターニングする。パターニングされた表面の二酸化シリコン110をエッチングマスクとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いて、基板101を表面から50μm程度エッチングして溝101’を形成する。
【0043】
次に、図2(b)に示すように、エッチングマスクとして用いた二酸化シリコン(マスク)110をフッ化水素酸等によるウエットエッチング又は反応性イオンエッチングで除去したあと(裏面の二酸化シリコン(マスク)110はそのまま)、熱酸化炉、スパッタ、CVD等で、二酸化シリコン(絶縁層)を成膜する。その上に電気メッキのシード電極(下)123として、チタンを50Å程度成膜した後、金又は銅等を1000Å程度、蒸着、スパッタ等で成膜する。その上にフォトレジスト(下)115を15μm程度成膜後、パターニングし、メッキのマスクとする。
【0044】
次に、図2(c)に示すように、電気銅メッキ又は無電解銅メッキを行い、銅を10μm程度成膜し、下配線120を形成する。続いて、フォトレジスト(下)115を除去し、シード電極(下)123(但し露出した部分のみ)を反応性イオンエッチング又はイオンミーリングを用いて除去する。その上に、ポリイミド、ベンゾシクロブテン等の絶縁膜(下)(不図示)を成膜し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等の強アルカリ溶液によるウエットエッチング又は反応性イオンエッチング等を用いてパターニングする。パターニングにより、コンタクトホール(下)(不図示)を下配線120の端部にコイル1巻について左右1つずつ形成する。
【0045】
次に、図2(d)に示すように、電気メッキのシード電極(中)124として、チタン又はクロム等を50Å程度成膜した後、金又は銅等を1000Å程度、蒸着、スパッタ等で成膜する。その上にフォトレジスト(中)116を55μm程度成膜後、パターニングする。ここでは、フォトレジスト(中)116に厚膜に適したフォトレジストであるSU−8(MICROCHEM CORP.製)を用いた。
【0046】
次に、図2(e)に示すように、フォトレジスト(中)116を電気メッキのマスクとして、電気メッキ又は無電解メッキを行い、強磁性体である鉄、ニッケル、コバルト、或いはそれらの合金等を成膜して、固定コア104a及び可動コア106aを形成する。膜厚はオーバーラップ量x0が0<x0<50μmになるようにする。次に、加熱したN−メチルピロリドンを用いてフォトレジスト(中)116を除去する。そして、シード電極(中)124(但し露出した部分のみ)を反応性イオンエッチング又はイオンミーリング等で除去する。
【0047】
次に、図2(f)に示すように、ポリイミド、ベンゾシクロブテン等の絶縁膜(上)(不図示)を成膜し、パターニングすることでコンタクトホール(上)(不図示)を下配線120上のコンタクトホール(下)に対応する位置に形成する。そして、電気メッキのシード電極(上)125として、チタンを50Å程度成膜した後、金を1000Å程度、蒸着等で成膜する。その上に、フォトレジスト(上)117を15μm程度成膜後、パターニングする。ここでは、フォトレジスト(上)117として、膜厚に適したフォトレジストであるAZ P4620(Hoechst製)を用いた。フォトレジスト(上)117をマスクとして銅メッキを行い、銅を10μm程度成膜して、上配線122を形成する。これにより、上配線122と下配線120とがコンタクトホール(上)及びコンタクトホール(下)を介して接続されて、第一コイル105aが形成される。尚、上配線122の所に描いてある波線は、上配線122が螺旋状になっているので同一断面内では上配線122のこの部分が紙面垂直方向にずれていることを示す。
【0048】
次に、図2(g)に示すように、フォトレジスト(上)117及びシード電極(上)125(但し露出した部分のみ)を除去する。
【0049】
次に、図3(a)に示すように、パターニングされた二酸化シリコン110をエッチングマスクとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いて、基板101を裏面から100μm程度エッチングする。そして、フォトレジスト118を10μm程度成膜後、パターニングし、エッチングのマスクとする(ここでは二酸化シリコン110はそのままにしてあるが、上記表面上のものの様に除去してもよい)。ここでも、フォトレジスト118には、膜厚に適したフォトレジストであるAZ P4620(Hoechst製)を用いた。
【0050】
次に、図3(b)に示すように、パターニングされたフォトレジスト118をエッチングマスクとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いて、基板101を裏面から50μm程度エッチングして溝101”を形成する。その後、フォトレジスト118を除去する。
【0051】
次に、図3(c)に示すように、裏面についても、前記図2(c)〜(f)の工程を行い、固定コア104b及び可動コア106b等を作製する。
【0052】
次に、図3(d)に示すように、フォトレジスト119を10μm程度成膜後、パターニングし、エッチングのマスクとする。ここでも、フォトレジスト119には、膜厚に適したフォトレジストであるAZ P4620(Hoechst製)を用いた。
【0053】
次に、図3(e)に示すように、パターニングされたフォトレジスト119をエッチングマスクとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いて、基板101を裏面から100μm程度エッチングすることで、可動板109及びねじりばね部(不図示)を形成する。その後、フォトレジスト119を除去する。最後に偏向部111を可動子103上に設置する。
【0054】
以上の説明では、可動コアが可動板の側面上に形成されているものとしているが、側面上ではなく側面に近接して形成することもできる。例えば、上記図3(e)の工程において基板101を貫通するエッチングを行なう際に、可動コアの固定コアに面する側面を露出させずに、即ち該可動コアの側面上にも可動板が存在するようにパターニングすることにより、可動板の側面よりねじりばね部に近い位置に(但し該側面に近接して)可動コアを設置することができる。尚、可動コアは、図1に示すように必ずしも可動板を貫通する必要はなく、図3に示すように可動板の上記溝101’、101”の底部を適宜の厚さに残存させて、溝内に位置するものとしてもよい。
【0055】
[実施形態2]
図4は本発明の光偏向器の第2の実施形態を示す上面図である。本実施形態は、固定コア104の形状が実施形態1と異なる。即ち、固定コア104は両端部において可動コア106の両端面と対向する対向端面を備えており、該2つの対向端面は互いに対向する向きに配置されている。固定コア104と可動コア106との間のエアギャップが可動コア106の両端部において形成されており、可動コア106と固定コア104とでトロイダル型のコアを形成している。その他は、実質的に実施形態1と同じである。
【0056】
[実施形態3]
図5は本発明の光偏向器の第3の実施形態を示す図である。図5において、(a)は上面図であり、(b)は(a)におけるA−A’断面図である。本実施形態における基本的な構成、駆動方法及び作製方法も前述の実施形態1と実質的に同一である。図5において、第一固定子202aは、第一固定コア204aとそれを周回する第一コイル205aとから構成され、基板201の表面に固定されている。また、第二固定子202bは、第二固定コア204bとそれを周回する第二コイル(不図示)とから構成され、基板201の裏面に固定されている。第一固定子202aと第二固定子202bは支持基板201に対して対称な位置に固定されている。第一固定子202aと第二固定子202bは、揺動手段の一部分(可動板209から離間して位置する部分)を構成する。第一電流源208aと第一コイル205a、第二電流源208bと第二コイル(不図示)はそれぞれ電気的に直列に接続されている。可動子203は、可動板209と可動コア206と偏向部211とから構成され、ねじりばね部207により支持基板201に対して揺動自由に支持されている。
【0057】
図5において、固定コア204a、204bと可動コア206はくし歯形状を有し、可動コア206が可動板209の側面に設置されていることを特徴としている。但し、図5では、簡単の為、くし歯の数を少なく表示している。また、固定子202a、202b及び可動子203のくし歯の部分の寸法は、例えば、くし歯の長さ200μm、くし歯の幅25μm、くし歯間の空隙25μmである。固定子202a、202b及び可動子203の夫々におけるくし歯の配列ピッチは、例えば、100μmである。固定子202a、202bのくし歯を除く部分の寸法S1及びS2の大きさは、例えば、S1=8mm、S2=10mmである。
【0058】
以上のように構成された本実施形態の光偏向器は、コイル205a、205bの何れかまたは両方に、可動子203の揺動に合わせて電流を流すことで、可動子203の変位角によらず、可動子203に駆動力を与えることができ、非常に安定した駆動が可能となる。また、固定コア204のくし歯による凹凸部と可動コア206のくし歯による凹凸部とが互いに空隙を介して噛み合うように配置して構成されていることで、固定コア204と可動コア206が機械的に干渉することが無く、ストロークを大きくとれる。また、可動コア206が可動板209の側面に設置されているため、固定コア204と可動コア206の対向面の厚み方向のずれを大きくとることができ、可動子203の変形角度を大きくとり易い。また、固定コア204と可動コア206とで、最大対向面積を大きくすることができ、磁束の漏れの少ない構造が実現でき、エネルギー効率が良い。
【0059】
[実施形態4]
図6は本発明の光偏向器の第4の実施形態を示す図である。図6において、(a)は上面図であり、(b)は(a)におけるA−A’断面図である。本実施形態における基本的な構成、駆動方法及び作製方法も前述の実施形態1と実質的に同一である。図6において、301は支持基板、302a、302b、302c、302dは固定子、303は可動子、304a、304b、304c、304dは固定コア、305a、305cはコイル、306は可動コア、307はねじりばね部、308a、308b、308c、308dは電流源、309は可動板、311は偏向部をそれぞれ示している。実施形態4は、支持基板301上の一つの可動子303に対して、その両側において、表面に2つの対向する固定子302a、302cと電流源308b、308c、裏面に2つの対向する固定子302b、302dと電流源308a、308dを配置した構成となっている。固定子304a、304b、304c、304dのそれぞれは実施形態1に述べた固定子102と同一の構成となっている。
【0060】
可動コア306は、可動板309の両側(可動板の回転中心の両側)にそれぞれ固定コア304a〜dと対向するように配置されている。また、2つの可動コア306は、可動板309の側面にねじりばね部307と平行に配置されていることを特徴としている。電流源308a〜dは1つのコイル305a〜dにつき1つずつ備えられ、対応するコイル305a〜dに独立して電流を流すことができる。可動子303には偏向部311が設置されている。
【0061】
駆動方法は次の様になる。電流源308a、308dを用いて、まずコイル305a、305dの2つのみに電流を流すと、可動子303がねじりばね部307を中心軸として反時計回り(図6(b)参照)に揺動し、流す電流を制御することにより、可動子303の変位角を制御できる。一方、コイル305b、305cの2つのみに電流を流すと、可動子303はねじりばね部307を中心軸として時計回りに揺動する。つまり、可動子303の揺動に合わせて電流を流すことで、可動子303の変位角に依らず、可動子303に連続的に駆動力を与えることができ、非常に制御性が良く安定した駆動が可能となる。また、変位センサ(不図示)を用いて、可動子303の変位を検知し、電流源308a〜dから流す電流を変化させ、可動子303の動きを制御すること(各電流源308a〜dから電流を流すタイミングを調整して可動子303の動きを抑制することを含む)も可能である。
【0062】
以上のように構成された本実施形態の光偏向器は、可動子303の揺動に合わせてコイル305a〜dに電流を流すことで、可動子303の変位角ψによらず、可動子303に適正な駆動力を与えることができ、非常に安定した駆動が可能となる。また、2つの可動コア306が可動子309の側面に設置されているため、可動板309の上下方向及び左右方向の重量バランスが良く、非駆動時に可動板309の支持基板301に対する傾きを容易に無くすことができる。また、固定コア304が可動子303の両側に設置されているため、駆動中の可動板309の変位に関わらず(即ち、可動子303の揺動の位相の如何に係らず)、何れかの固定コア304a〜dから、対応する可動コア306に対して電磁力を与えることができ、非常に安定した駆動が可能になる。
【0063】
[実施形態5]
図7は本発明の光偏向器の実施形態5を説明する上面図である。本実施形態では、前述の実施形態1の光偏向器を2段に形成しており、2次元偏向が可能である(即ち、互いに異なる方向の回転中心の回りでの揺動が可能である)。即ち、本実施形態は2つの光偏向器(大)421及び光偏向器(小)422を有している。
【0064】
光偏向器(大)421において、第一固定子402aは、第一固定コア404aとそれを周回する第一コイル405aとから構成され、第一基板401a上に固定されている。また、第二固定子(不図示)は、第二固定コア(不図示)とそれを周回する第二コイル(不図示)とから構成され、基板401の裏面に固定されている。第一電流源408aと第一コイル405a、第二電流源408bと第二コイルはそれぞれ電気的に直列に接続されている。第一可動子403a(第二基板401bでもある)は、第一可動板409aと第一可動コア406aを含み、第一ねじりばね部407aにより第一支持基板401aに対して第1の方向(図7における上下方向)の回りで揺動自由に支持されている。第一可動コア406aは、第一可動板409aの側面に第一固定コア404a及び第二固定コアと対向するように配置されている。また、第一可動コア406aは、第一可動板409aの側面に第一ねじりばね部407aと平行に設置されている。
【0065】
光偏向器(小)422は、光偏向器(大)421の第一可動子403aを支持基板として用いて形成されている(但し、光偏向器(大)421の偏向部は除外されている)。即ち、光偏向器(小)422においては、第三固定子402cは、第三固定コア404cとそれを周回する第三コイル405cとから構成され、第一可動子403a上に固定されている。また、第四固定子(不図示)は、第四固定コア(不図示)とそれを周回する第四コイル(不図示)とから構成され、第一可動子403aの裏面に固定されている。第三電流源408cと第三コイル405c、第四電流源408dと第四コイルはそれぞれ電気的に直列に接続されている。第二可動子403bは、第二可動板409bと第二可動コア406bと偏向部411を含み、第二ねじりばね部407bにより第一可動板409aに対して上記第1の方向と直交する第2の方向(図7における左右方向)の回りで揺動自由に支持されている。第二可動コア406bは、第二可動板409bの側面に第三固定コア404c及び第四固定コアと対向するように配置されている。また、第二可動コア406bは、第二可動板409bの側面に第二ねじりばね部407bと平行に設置されている。
【0066】
以上の様に、光偏向器(小)422は光偏向器(大)421の第一可動子403a上に配置される入れ子構造となっている。光偏向器(小)422の第二可動子403b上にはミラー411が設置されている。それぞれ2つの電流源408を含む2組の電流源は、それぞれが光偏向器(大)421と光偏向器(小)422とを独立に駆動できる。従って、不図示の半導体レーザ等の光源から発生した光をミラー等からなる光偏向部411に当てることで、その反射光を上記第1の方向の回りと第2の方向の回りとで2次元に偏向することができる。
【0067】
光偏向器(大)421及び光偏向器(小)422としては、上記実施形態2や実施形態3の光偏向器を用いることもできる。光偏向器(大)421及び光偏向器(小)422の一方と他方とで、上記実施形態1乃至3のうちの互いに異なる光偏向器を組み合わせて用いてもよい。また、光偏向器411として、ミラーの代わりにレンズや回折格子のような光学素子を設置してもよい。
【0068】
以上のように構成された本実施形態の光偏向器は、エネルギー効率の良い、非常に制御性が良く安定した駆動が可能な2次元光偏向器である。
【0069】
[実施形態6]
図8は本発明の光偏向器を用いた光学機器である本発明による画像表示装置の基本的な構成を示す模式図である。図8において、502はレーザ光源であり、503はレンズ或いはレンズ群であり、504は書き込みレンズまたはレンズ群であり、505は投影面(画像表示面)である。2つのレンズ或いはレンズ群503、504の間には、光偏向器群501が配置されている。光偏向器群501は、2つの光偏向器501a、501bを備えており、レーザ光源502からレンズ或いはレンズ群503を経て到来する光が光偏向器501aにより第1方向の回りでの偏向作用を受け、光偏向器501aにより偏向された光が光偏向器501bにより第1方向と直交する第2方向の回りでの偏向作用を受けて、書き込みレンズまたはレンズ群504を経て投影面505上へと投影されて画像を形成する。光偏向器501a、501bとしては、上記実施形態1乃至3に示された光偏向器を使用することができ、その偏向部としてミラー、レンズ、回折格子等の光学素子を用いられる。
【0070】
以上の様に、本実施形態の画像表示装置は、光偏向器を偏向方向が互いに直交するように2個配置した光偏向器群501を用いており、水平・垂直方向に入射光をラスタスキャンする光スキャナ装置として機能する。ここにおいて、レーザ光源502から入射されたレーザ光は、光走査のタイミングと関係した所定の強度変調を受けており、光偏向器群501により2次元的に走査されることで、投影面505上に画像を形成する。
【0071】
本実施形態において、光偏向器群501として上記実施形態4の光偏向器を使用してもよい。その場合にも、同様な画像表示を行なえる。
【0072】
[実施形態7]
図9は本発明の光偏向器を用いた光学機器である本発明による画像形成装置の基本的な構成を示す模式図である。図9において、602はレーザ光源であり、603はレンズ或いはレンズ群であり、604は書き込みレンズまたはレンズ群であり、606はドラム状感光体(画像表示面)である。2つのレンズ或いはレンズ群603、604の間には、光偏向器601が配置されている。光偏向器601としては、上記実施形態1乃至3に示された光偏向器を使用することができ、その偏向部としてミラー、レンズ、回折格子等の光学素子を用いられる。
【0073】
以上の様に、本実施形態の画像形成装置は、光偏向器によりドラム状感光体606の回転中心Cと平行な一次元方向に光を走査する光スキャナ装置として機能する。ここにおいて、レーザ光源602から入射されたレーザ光は、光走査のタイミングと関係した所定の強度変調を受けており、光偏向器601により一次元的に走査される。一方、ドラム状感光体606は回転中心Cの回りで所要の回転速度で回転している。そして、感光体606は図示しない帯電器により表面が一様に帯電されている。従って、光偏向器601による走査と感光体606の回転とに基づき、感光体606の表面に光がパターン状に入射されることになり、その光入射部分と光非入射部分とで静電潜像を形成される。図示しない現像器により、感光体606の表面の静電潜像に対応したパターンのトナー像を形成し、これを例えば図示しない用紙に転写・定着することで可視画像を形成することが可能である。
【0074】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明の電磁アクチュエータ、光偏向器によると、従来の電磁アクチュエータ、光偏向器に比べて、制御性の良い安定な駆動が可能になる。また、本発明の光偏向器を用いて、制御性の良い安定な駆動が可能な画像表示装置、画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の光偏向器の実施形態1を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図2】図2は本発明の実施形態1の作製プロセスを説明する断面図である。
【図3】図3は図2の作製プロセスに続く実施形態1の作製プロセスを説明する断面図である。
【図4】図4は本発明の光偏向器の実施形態2を説明する上面図である。
【図5】図5は本発明の光偏向器の実施形態3を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図6】図6は本発明の光偏向器の実施形態4を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図7】図7は本発明の光偏向器の実施形態5を説明する上面図である。
【図8】図8は本発明の画像表示装置の実施形態を説明する模式図である。
【図9】図9は本発明の画像形成装置の実施形態を説明する模式図である。
【図10】図10は第1の従来技術を説明する上面図である。
【図11】図11は第2の従来技術を説明する上面図である。
【符号の説明】
101、201、301、401:支持基板
101’、101”:溝
102a、202a、302a、402a:第一固定子
102b、202b、302b:第二固定子
302c、402c:第三固定子
302d:第四固定子
103、203、303、403a、403b:可動子(第1可動子、第2可動子)
104a、204a、304a、404a:第一固定コア
104b、204b、304b:第二固定コア
304c、404c:第三固定コア
304d:第四固定コア
105a、205a、305a、405a:第一コイル
305c、405c:第三コイル
106、106、206、306、406a、406b:可動コア(第1コア、第2コア)
107、207、307、407a、407b:ねじりばね部(第1ねじりばね部、第2ねじりばね部)
108a、208a、308a、408a:第一電流源
108b、208b、308b、408b:第二電流源
108c、208c、308c、408c:第三電流源
108d、208d、308d、408d:第四電流源
109、209、309:可動板
110:二酸化シリコン(マスク)
111、211、311、411:ミラー(偏向部)
115:フォトレジスト(下)
116:フォトレジスト(中)
117:フォトレジスト(上)
118、119:フォトレジスト
120:下配線
122:上配線
123:シード電極(下)
124:シード電極(中)
125:シード電極(上)
134a、134b、136:面
421:光偏向器(大)
422:光偏向器(小)
501(501a、501b):光偏向器群
502、602:レーザ光源
503、603:レンズ或いはレンズ群
504、604:書き込みレンズまたはレンズ群
505:投影面
601:光偏向器
606:感光体
801:ガルバノミラー
802:シリコン基板
803:上側ガラス
804:下側ガラス
806:ねじりバネ
807:平面コイル
808:全反射ミラー
809:コンタクトパット
810A、810B、811A、810C:永久磁石
1002:溝部
1003:y軸方向偏向部
1004:x軸方向偏向部
1005:軸部
1007:薄膜電磁石部
1008:ミラー
Claims (21)
- 可動板と、前記可動板を回転中心の周りでの揺動が可能なように支持する弾性支持部と、前記弾性支持部を支持する支持基板と、前記可動板を揺動させる揺動手段とを備えた電磁アクチュエータであって、
前記揺動手段は、前記可動板に敷設された可動コアと、前記支持基板の表面に設置されるコア部にコイルを周回させた第一固定コアと、前記支持基板の裏面に設置されるコア部にコイルを周回させた第二固定コアとを含み、
前記第一固定コアと前記第二固定コアとのそれぞれは、前記可動コアと空隙を介して磁気的に結合していることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 前記可動コアは、前記可動板の回転中心から離間して位置する部分を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
- 前記第一固定コアと前記第二固定コアとが、前記支持基板に対して対称な位置に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁アクチュエータ。
- 前記可動板と前記弾性支持部と前記支持基板とが、同一部材から形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
- 前記可動コアと前記第一固定コア及び第二固定コアとが、それぞれ空隙を介して対向配置され、前記揺動手段が非動作状態にある中立位置において、前記支持基板に対して平行であって前記第一固定コア及び前記第二固定コアとを前記支持基板に垂直な方向に二等分する面は、それぞれ、前記支持基板に対して平行であって前記可動コアを前記支持基板に垂直な方向に二等分する面から前記支持基板に垂直な方向に互いに反対方向にずれていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
- 前記第一固定コア又は前記第二固定コアの両端部がそれぞれ対向する向きに配置されていることを特徴とする請求項5に記載の電磁アクチュエータ。
- 前記第一固定コア又は前記第二固定コアの両端部がそれぞれ同一平面内に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の電磁アクチュエータ。
- 前記第一固定コア及び第二固定コアと前記可動コアとのそれぞれが凹凸部を有し、前記第一固定コア及び第二固定コアの凹凸部と前記可動コアの凹凸部とが、前記可動板の揺動を許容するようにして空隙を介して互いに噛み合うように配置されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
- 前記可動板の側面側に少なくとも1つの前記可動コアが設置されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
- 前記可動板と前記弾性支持部との少なくとも何れか一方が単結晶シリコンよりなることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
- 前記可動コアが強磁性体よりなることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
- 前記可動コアが永久磁石よりなることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
- 請求項1乃至12の何れかに記載の電磁アクチュエータを用いた光偏向器であって、前記可動板は入射光を偏向させる偏向部を有することを特徴とする光偏向器。
- 前記偏向部がミラー、レンズ、或いは回折格子を有することを特徴とする請求項13に記載の光偏向器。
- 請求項13または14に記載の第一の光偏向器の前記支持基板として、請求項13または14に記載の第二の光偏向器の前記偏向部を除いた前記可動板が使用されており、前記第一の光偏向器の前記回転中心と前記第二の光偏向器の前記回転中心とが互いに直交していることを特徴とする光偏向器。
- 光源と、前記光源から発せられた光を偏向させる請求項13乃至15の何れかに記載の光偏向器と、前記光偏向器により偏向された光が投影される画像表示面とを有することを特徴とする画像表示装置。
- 光源と、前記光源から発せられた光を偏向させる請求項13乃至15の何れかに記載の光偏向器と、前記光偏向器により偏向された光が投影される感光性材料とを有することを特徴とする画像形成装置。
- 請求項1乃至12の何れかに記載の電磁アクチュエータまたは請求項13乃至15の何れかに記載の光偏向器を作製する方法であって、基板に溝を形成する工程と、前記溝に前記可動コアを形成する工程と、前記基板を用いて前記可動板と前記弾性支持部と前記支持基板とを形成する工程と、前記支持基板の表面に第一固定コアを形成する工程と、前記支持基板の裏面に第二固定コアを形成する工程とを有することを特徴とする電磁アクチュエータまたは光偏向器の作製方法。
- 前記基板を用いて前記可動板と前記弾性支持部と前記支持基板とを形成する工程は、前記基板の一部を用いて前記可動板と前記弾性支持部とを形成することにより前記基板の他部を用いて前記支持基板を形成する工程であり、該工程は反応性イオンエッチングを含んでなされることを特徴とする請求項18に記載の電磁アクチュエータまたは光偏向器の作製方法。
- 前記基板を用いて前記可動板と前記弾性支持部と前記支持基板とを形成する工程は、前記基板の一部を用いて前記可動板と前記弾性支持部とを形成することにより前記基板の他部を用いて前記支持基板を形成する工程であり、該工程はアルカリ溶液を用いたエッチングを含んでなされることを特徴とする請求項18に記載の電磁アクチュエータまたは光偏向器の作製方法。
- 前記溝に前記可動コアを形成する工程はメッキによりなされることを特徴とする請求項18乃至20の何れかに記載の電磁アクチュエータまたは光偏向器の作製方法。
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JP2002169450A JP2004009261A (ja) | 2002-06-11 | 2002-06-11 | 電磁アクチュエータ、電磁アクチュエータを用いた光偏向器、及び光偏向器を用いた画像表示装置、画像形成装置、並びにその製法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008524662A (ja) * | 2004-12-22 | 2008-07-10 | カール・ツアイス・レーザー・オプティクス・ゲーエムベーハー | 線ビームを生成するための光学照射系 |
-
2002
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