JP2004009063A - 熱間圧延用複合ロール - Google Patents

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Abstract

【課題】耐焼付性を十分確保するとともに、耐摩耗性、耐クラック性を向上させた、また鋳造後の冷却時に外層に割れが生じることを防止した熱間圧延用複合ロールを提供する。
【解決手段】第1の外層と、第1の外層の内周面に溶着された第2の外層と、第2の外層の内周面に溶着された内層とから構成され、第1の外層は、化学成分が重量%で、C:2.5〜3.5%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:4.0〜5.5%、Cr:1.0〜2.5%、V:0.5〜4.0%、Mo:0.1〜2.0%を含有するFe基合金からなり、金属組織中に面積%で黒鉛が0.5〜5%、MC系炭化物が1.0〜10%分散されてなることを特徴とする。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性、耐焼付性および耐クラック性に優れた熱間圧延用複合ロールに関し、特に熱間厚板圧延用ワークロールに好適なロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間厚板圧延用のワークロールとして、高合金グレン材からなる外層と靭性に優れた鉄系合金からなる内層が溶着一体化された複合ロールが用いられている。一般に、高合金グレン材は金属組織中に存在する黒鉛の潤滑作用によって耐焼付き性に優れている特徴を有し、絞り圧延事故に遭遇した際でも、被圧延材の焼付きが少なく、その際のクラックの発生進展も少なかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の高合金グレンロールは耐摩耗性が十分ではなかった。高合金グレン材は基地、セメンタイト、黒鉛から金属組織を構成する。そこで、耐摩耗性を向上させるためには、セメンタイトの増量や、基地硬さの上昇が有効な手段と考えられるが、ロール使用時の耐クラック性の低下を招き、圧延事故発生時のクラックが深くなるため限界があった。
【0004】
また、鋳造後の冷却時に外層の変態温度の低下に起因して、外層と内層の間に収縮差が生じるため、外層に割れが生じることがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、耐焼付性を十分確保するとともに、耐摩耗性、耐クラック性を向上させた、また鋳造後の冷却時に外層に割れが生じることを防止した熱間圧延用複合ロールを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱間圧延用複合ロールは、第1の外層と、第1の外層の内周面に溶着された第2の外層と、第2の外層の内周面に溶着された内層とから構成され、第1の外層は、化学成分が重量%で、C:2.5〜3.5%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:4.0〜5.5%、Cr:1.0〜2.5%、V:0.5〜4.0%、Mo:0.1〜2.0%を含有するFe基合金からなり、金属組織中に面積%で黒鉛が0.5〜5%、MC系炭化物が1.0〜10%分散されてなり、第2の外層は、化学成分が重量%で、C:2.5〜3.5%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:3.5〜5.0%、Cr:0.8〜2.0%、V:0.1〜3.0%、Mo:0.1〜1.5%を含有するFe基合金からなり、内層は、強靭なFe基合金からなることを特徴とする。
【0007】
前記本発明において、第1の外層の厚みをa、第2の外層の厚みをbとした場合、a+bが、製品使用開始時の初径から70mm以上であることを特徴とする。また、第1の外層の厚みをa、第2の外層の厚みをbとした場合、b/(a+b)が0.1〜0.5を満足する範囲内にあることを特徴とする。また、第1の外層の金属組織中に面積%で、セメンタイトが10〜45%分散されていることを特徴とする。さらに、第1の外層は、化学成分が重量%でさらに、W:0.3〜4.0%、Co:1.0〜10.0%、Nb:1.0〜10.0%、Ti:0.01〜2.0%、B:0.002〜0.2%、Cu:0.02〜1.0%の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする。本発明の熱間圧延用複合ロールを厚板圧延用ワークロールに用いることを特徴とする。
【0008】
【作用】
従来の高合金グレン材では、基地がセメンタイトに比べ比較的軟質なために優先的に摩耗していた。そこで、本発明は外層を第1の外層とその内側の第2の外層で構成し、第1の外層は、基地中に硬質なMC系炭化物を晶出させることにより耐摩耗性を著しく向上させた。
【0009】
また、外層の厚みを確保するのに、第1の外層の耐摩耗性を向上させるため、MC系炭化物を晶出させる元素であるVなどを添加すると金型から離れた凝固が遅い位置では黒鉛が晶出し難くなる。そこで、第1の外層の内側に黒鉛が晶出しやすい成分からなる第2の外層を用いて、第2の外層を金型から離れた位置で凝固させることにより、第1の外層と同様に黒鉛が十分晶出した層を形成でき、第1の外層と第2の外層からなる外層の厚みを厚くすることができる。
【0010】
また、第2の外層の変態温度が、第1の外層より少し高い温度の材料とすることにより、第1の外層と第2の外層からなる外層と内層の間の収縮差を緩和できるため、外層と内層の間の発生応力を緩和し割れを防止することができる。
【0011】
第1の外層の厚みをa、第2の外層の厚みをbとした場合、第1の外層と第2の外層からなる外層の厚みa+bを、製品使用開始時の初径から70mm以上にすることにより、耐クラック性を向上できる。ロール使用終了時のロール廃却径とロール初径との径差から算出できるロール外層使用厚みはほとんどの圧延ミルで40〜50mmである。そこで、ロール廃却径から最低20mm以上の厚さを形成することにより、ロール初径から廃却径まで使用時の外層表面付近の圧縮残留応力を減少させ、クラックが発生しても残留応力の減少によりクラック進展を小さくできるので、発生したクラックを浅く抑えて耐クラック性を向上できる。
【0012】
本発明ロールの第1の外層の化学組成(重量%)の限定理由について説明する。
C:2.5〜3.5%
Cは、同時に含有されるCr、V、Mo、Wと結合して硬質炭化物(MC、MC、MC、M等)を生成し耐摩耗性を高めるとともに、SiやNiの黒鉛化促進元素によって組織中に黒鉛を晶出して耐焼付性を付与するのに必要な元素である。Cが2.5%未満では硬質炭化物の生成量が不足するとともに黒鉛がほとんど晶出しない。Cが3.5%を超えると、セメンタイトや硬質炭化物が多くなりすぎ靭性が低下する。Cのより好ましい含有量は2.8〜3.4%である。
【0013】
Si:0.5〜2.0%
Siは、黒鉛化促進元素であるため0.5%以上必要である。Siが2.0%を超えると、基地が脆化し靭性が低下する。また黒鉛を晶出させるためには、この範囲の含有総Si量のうち0.1%以上を接種で添加する必要がある。接種するSi量は、好ましくは全Siの0.1〜0.8%とする。なお、第1の外層中のSi全含有量は、より好ましくは0.8〜2.0%であり、さらに好ましくは1.0〜2.0%である。
【0014】
Mn:0.1〜1.5%
Mnは、溶湯の脱酸や不純物であるSをMnSとして固定する効果があり、0.1%以上必要である。Mnが1.5%を超えると残留オーステナイトを生じやすくなり安定して硬さを維持できない。Mnの含有量は、より好ましくは0.2〜1.0%であり、さらに好ましくは0.4〜0.9%である。
【0015】
Ni:4.0〜5.5%
Niは、黒鉛の晶出および基地組織の焼入れ性を向上させるため有効な元素であり、4.0%以上必要である。5.5%を超えるとオーステナイトが安定しすぎ、ベイナイトあるいはマルテンサイトに変態しにくくなる。Niの含有量は、より好ましくは4.0〜5.0%である。
【0016】
Cr:1.0〜2.5%
Crは、基地組織をベイナイトあるいはマルテンサイトにして硬さを保持し、耐摩耗性を保持するのに有効な元素であり、1.0%以上必要である。Crが2.5%を超えると、黒鉛の晶出を阻害したり基地組織の靭性を低下させたりするばかりでなく、Cr系炭化物(M系、M23系)を形成する。この炭化物は、硬さがMC系、MC系炭化物に比べて低いため耐摩耗性向上効果が期待できず、かつ脆くなる。このためCrの上限は2.5%とする。Crの含有量は、より好ましくは1.0〜2.0%である。
【0017】
V:0.5〜4.0%
VはCと結合してMC系炭化物を生成する。このMC系炭化物の硬さはHv2500〜3000であり、炭化物の中でも非常に硬質である。このため、Vは耐摩耗性の向上に最も効果のある必須元素の1つである。晶出炭化物だけでなく、基地中の微細な析出炭化物として耐摩耗性の向上に寄与する。しかし過剰になると黒鉛の晶出を阻害し、かつセメンタイトで囲まれる基地粒径が粗大化する。そのため、Vの含有量は0.5〜4.0%とする。Vの含有量は、より好ましくは2.0〜4.0%である。
【0018】
Mo:0.1〜1.5%
Moは、Cと結合して硬質のMC系、MC系炭化物を生成し、かつ基地組織中に固溶して基地組織を強化するので耐摩耗性の向上に有効な元素である。反面、白銑化元素であるので過剰になると、黒鉛の晶出を阻害する。このため、好ましいMoの含有量は、0.1〜1.5%である。より好ましいMoの含有量は0.5〜1.5%である。
【0019】
W:0.3〜4.0%
本発明の第1の外層は上記必須元素の他にWを含有することができる。WはMoと同様、Cと結合して硬質のMC系、MC系炭化物を生成し、かつ基地組織中に固溶して基地組織を強化するので耐摩耗性の向上に有効な元素である。反面、白銑化元素であるので過剰になると、黒鉛の晶出を阻害する。このため、好ましいWの含有量は、0.3〜4.0%である。より好ましいWの含有量は0.5〜2.0%である。
【0020】
Co:1.0〜10.0%
本発明の第1の外層は上記必須元素の他にCoを含有することができる。Coは、基地組織の強化に有効な元素であるが、過剰になると靭性を低下させる。そのため、Coの含有量は1.0〜10.0%とする。また、Coにはセメンタイトを不安定化し、黒鉛を晶出しやすくする効果もある。より好ましいCo量は、3.0〜7.0%である。
【0021】
Nb:1.0〜10.0%
本発明の第1の外層は上記必須元素の他にNbを含有することができる。Nbは、Vと同様にCと結合してMC系炭化物を生成する。MC系炭化物は炭化物の中で最も硬いので、Nbは耐摩耗性の向上に最も効果のある元素であるが、過剰になると、黒鉛の晶出を阻害する。そのため、Nbの含有量は1.0〜10.0%とする。より好ましいNbの含有量は、2.0〜10.0%である。
【0022】
Ti:0.01〜2.0%
本発明の第1の外層は上記必須元素の他にTiを含有することができる。Tiは、黒鉛化阻害元素であるNおよびOと結合して酸窒化物を形成する。Tiは0.01%未満では効果を期待できず、また含まれているNおよびOの量からTiは2.0%で十分である。より好ましいTiの含有量は、0.05〜0.5%である。
【0023】
B:0.002〜0.2%
本発明の第1の外層は上記必須元素の他にBを含有することができる。Bは、炭化物を微細化する効果があり、0.002%未満ではその効果が十分に発揮されず、0.2%を超えると、炭化物が不安定になる。より好ましいBの含有量は0.01〜0.05%である。
【0024】
Cu:0.02〜1.0%
本発明の第1の外層は上記必須元素の他にCuを含有することができる。CuはCoと同様、セメンタイトを不安定化し、黒鉛を晶出しやすくする効果がある。0.02%未満ではその効果が十分でなく、1.0%を超えると靭性を低下させる。より好ましいCuの含有量は、0.1〜0.5%である。
【0025】
上記元素以外は不純物を除いて残部は実質的にFeである。不純物として主な元素はPおよびSであるが、Pは靭性低下防止のため0.1%以下、Sも同様の理由により0.08%以下が好ましい。
【0026】
本発明の第1の外層の金属組織は基地、炭化物、黒鉛から構成される。耐焼付性は黒鉛量に応じて向上する。ロール外層の金属組織中に面積%で黒鉛を0.5〜5%晶出させる必要がある。黒鉛量が面積%で0.5%未満では耐焼付性の効果が十分でない。また、黒鉛量が5%を超えると機械的性質が著しく低下する。このため、必要とされる黒鉛量は0.5〜5%である。好ましい黒鉛量は2〜4%であり、黒鉛粒子の粒径は5〜50μmが望ましい。
【0027】
耐摩耗性を向上させるためには、硬質な炭化物を分散させる必要がある。特に硬質な炭化物であるMC系炭化物は面積%で1.0〜10%含有する必要がある。硬質炭化物の面積%が1.0%未満では耐摩耗性が十分でない。また黒鉛との共存関係により、10%を超えて硬質炭化物を含有させるのは製造上困難である。好ましいMC系炭化物の面積%は2.0〜6%である。
【0028】
セメンタイトはMC系炭化物に比べ軟質であるものの、高価な合金を使用することなく容易に晶出できる。また多量に晶出させることにより、軟質な基地の粒径を微細にし、かつ基地面積率を減少させ、耐摩耗性を向上させることができる。炭化物の大部分を占めるのはセメンタイトであり、これにより囲まれる基地粒径が粗大になると、摩耗の損傷形態が大きくなり、耐摩耗性が劣化する。このためセメンタイトで囲まれる平均基地粒径は100μm以下とすることが必要である。セメンタイトの晶出量は10%未満では黒鉛の晶出が困難になり、45%を超えると靭性が低下する。好ましいセメンタイトの面積%は15〜40%である。
【0029】
基地は炭化物と比較し軟質であり、圧延に使用すると優先的に基地が摩耗する。そのため耐摩耗性を改善するには基地を硬くする必要がある。ロールの基地組織は実質的にマルテンサイト、ベイナイトまたはパーライトからなるが、マルテンサイト量の増加等の組織的な硬化だけでは製造上限界が有り、また高温での硬さが期待できない。この点を改善するために基地中に微細な硬質の炭化物を析出させる析出硬化を行うことにより常温で基地硬さHv600以上を得られる。
【0030】
次に、本発明ロールは、第1の外層の内周面に第2の外層を設ける。本発明の第2の外層は、化学成分が重量%で、C:2.5〜3.5%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:3.5〜5.0%、Cr:0.8〜2.0%、V:0.1〜3.0%、Mo:0.1〜1.5%を含有するFe基合金からなるのが好ましい。
【0031】
第2の外層を設けることにより、第1の外層と第2の外層からなる外層の厚みをロール使用開始時に70mm以上形成することができる。第1の外層のみで外層厚みを70mm以上にすると、耐摩耗性を向上させるためにVなどの強い白銑化元素を含む第1の外層では、接種などで黒鉛を晶出させているので金型から離れた凝固が遅い位置では接種効果が小さくなり黒鉛が晶出し難くなる。このため、セメンタイトなどの炭化物が過剰に生成し、基地組織もより低温で変態するベイナイトおよびマルテンサイトが多くなる。セメンタイトなどの炭化物がロール廃却径付近で過剰に生成すると、セメンタイトが過剰に生成した部分は脆弱になりロール使用中にスポーリング事故が発生しやすくなる。また、基地組織がより低温で変態するベイナイトおよびマルテンサイトからなるような状態では、鋳造後の冷却時に外層の変態温度が低下にして、外層と内層の間に収縮差が生じるため、外層に割れが生じ製造困難になるため好ましくない。
【0032】
本発明では、第1の外層より黒鉛を晶出しやすくした第2の外層を設けて、第1の外層と第2の外層からなる外層厚みを70mm以上にすることにより、前記のロール使用中の事故や鋳造後の外層の割れなどの問題を防止できる。第2の外層は、第1の外層の凝固途中に鋳込みを行うため接種効果のフェーディングを第1の外層より防止できるようにする。第2の外層は、第1の外層より黒鉛を出しやすくするため、Siを多くし白銑化元素であるVなどを少なくし、基地組織はベイナイトおよびマルテンサイトとして第1の外層と同様に内層の基地組織であるパーライトに対して変態差が発生するように、かつ第1の外層のベイナイト変態温度より50℃未満の温度で高く変態する化学成分に調整される。また、第2の外層の金属組織は、第1の外層と同様に基地、炭化物、黒鉛から構成されているが、第1の外層より炭化物は少なく、黒鉛は多く晶出するようにしている。
【0033】
第2の外層を前記のような金属組織、基地組織、変態温度特性にすることにより、第1の外層と第2の外層からなる外層の厚みを70mm以上とし、ロール初径から廃却径まで使用時の外層表面付近の圧縮残留応力を小さくし、クラックが発生しても残留応力の減少によりクラック進展を小さくできるので、発生したクラックを浅く抑えて耐クラック性を向上できる。また、第2の外層は第1の外層より基地の変態温度を少し上げているので、第1の外層と第2の外層からなる外層と内層の間の発生応力を緩和し割れを防止することができる。
【0034】
また本発明ロールは、ロール回転軸方向と直角をなす断面における、第1の外層の厚みをa、第2の外層の厚みをbとした場合、b/(a+b)で表わす比が0.1〜0.5を満足する範囲内にあることが好ましい。b/(a+b)が0.1未満では第2の外層が及ぼす効果が十分でなく、0.5を超えると鋳造方案の設計が困難となるので好ましくない。
【0035】
本発明の内層としては、高級鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、黒鉛鋼、鋳鋼などの強靭材が使用される。その引張強さは40kg/mm以上、伸びは0.3%以上が望ましい。これは圧延用ロールとして用いた場合に大きな圧下力がかかるとともに、圧延中の撓みを補正するために軸の両端部に曲げ力をかけるので、それらに対する耐久力を有する必要があるからである。また、内層は外層と強固に接合させ、内層材と外層が接合された境界部の引張試験を行った場合、境界部から破断しないことが必要である。
【0036】
本発明のロールは、遠心力鋳造法により第1の外層を鋳造した後、同じく遠心力鋳造法により第2の外層を鋳造する。その後、その内部に内層を静置鋳造する。スリーブ状のロールを製造するときは、内層も遠心力鋳造法してよい。
【0037】
また鋳造に際して、第1の外層の溶湯にSi含有接種剤を用いて接種する必要がある。接種するSiの量は0.1重量%以上必要であり、0.5重量%を超えると接種剤が溶湯に均一に溶けにくくなり、鋳造組織にむらが生じ易くなる。遠心力鋳造法の場合、回転する鋳型内の溶湯中に、Si含有接種剤を注入する。Si含有接種剤としては、Fe−Si、Ca−Si等が挙げられる。接種剤中のSiの含有量は30〜80重量%である。
【0038】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
表1に示す本発明の第1の外層の化学成分(本発明材)の1600℃に加熱した溶湯を、前もってSi接種材をSi量で0.1重量%入れた直径80mm、深さ100mmの砂型へ鋳込温度1300℃で鋳込んだ。このようにして得た試験材を、450℃で10時間加熱し、徐冷することにより、残留オーステナイトの分解と鋳造応力の除去を行った。比較のため、表1に示す比較材(従来のグレン材)も同様に試験を行った。
【0039】
試験材の底面から20mmの位置より試験片を切り出し、組織構成要素の面積%を画像解析装置(日本アビオニクス(株)製)により測定した結果、表2に示すように、面積%で黒鉛が2.2%、VC炭化物(MC系炭化物)が2.2%、セメンタイトが33.5%であった。セメンタイトで囲まれる平均基地粒径は60μmであった。また、常温での基地硬さはHv602であった。
【0040】
【表1】
Figure 2004009063
【0041】
【表2】
Figure 2004009063
【0042】
表1の試験材から外径60mm、内径40mm、幅40mmの小型スリーブロール試験片を作製し、圧延摩耗試験機で摩耗試験を、摩擦熱衝撃試験機で焼付試験を行った。
【0043】
図1は圧延摩耗試験機の概略図を示す。図1において、圧延摩耗試験機は、圧延機1と、圧延材Sを余熱する加熱炉4と、圧延材Sを冷却する冷却水槽5と、圧延材Sの巻取り機6とテンションコントローラ7とから構成される。圧延機1には試験用ロール2、3が組み込まれる。圧延摩耗試験機に試験用ロールを組み込み、試験条件が、圧延材料:SUS304、圧下率:25%、圧延速度:150m/min、圧延温度:900℃、圧延距離:300m/回、ロール冷却:水冷、ロール数:4重式にて試験を行った。圧延後、試験用ロールの表面に生じた摩耗の深さを触針式表面粗さ計(SURFCOM)により測定した。
【0044】
図2は摩擦熱衝撃試験機の概略図を示す。図2において、摩擦熱衝撃試験機は、ラック8に重り9を落下させることによりピニオン10を回動させ、試験材11に噛み込み材12を強く接触させるものである。
【0045】
表2に試験結果を示す。本発明材は、摩耗量が従来のグレン材の約60%であり、また、焼付き面積率が従来のグレン材とほぼ同等であった。これらの結果より、本発明ロールは、耐焼付性が従来のグレン材と同等で、耐摩耗性が約1.6倍という優れた性能を発揮することが明らかとなった。
【0046】
(実施例2)
本発明の第1の外層用溶湯を回転する遠心力鋳造用金型に注湯して遠心力鋳造した。円筒状の外層が完全に凝固した後、続いて、本発明の第2の外層用の溶湯を遠心力鋳造し、第1の外層と第2の外層とを溶着させた。鋳込み量は肉厚で第1の外層が95mm、第2の外層が25mmである。第1の外層および第2の外層が完全に凝固した後、金型の回転を止め、第1の外層と第2の外層を内面に有する金型を垂直に立てて、両端に上型および下型をセットして、金型の内部に内層としてダクタイル鋳鉄を鋳込んだ。そして、第2の外層と内層を完全に溶着させた。このようにして複合ロールが完全に冷却した後、金型から取り出した。表3に本発明のロールの第1の外層および第2の外層の化学成分を分析した結果を示す。
【0047】
【表3】
Figure 2004009063
【0048】
図3は、このようにして得られた本発明のロールの胴部断面図を示す。本発明のロールは、第1の外層14と、第1の外層14の内周面に溶着された第2の外層15と、第2の外層15の内周面に溶着された内層16とからなる。超音波探傷試験によって溶着状況を確認したところ、溶着は良好であった。
【0049】
第1の外層表面の圧縮残留応力を測定した結果、−17kg/mmとロールの残留応力としては適正・十分な応力値が得られた。このため、外層は使用時のクラック進展を十分防止できることが確認できた。また、鋳造後の冷却時に外層と内層の収縮差により、外層に割れが生じることも無く健全に製造できた。
【0050】
【発明の効果】
本発明の熱間圧延用複合ロールは、耐摩耗性を向上でき、外層の耐クラック性も十分得られる、鋳造後の冷却時に外層に割れが生じることを防止できる。この熱間圧延用複合ロールは特に熱間厚板圧延用ワークロールにおいて優れた性能を発揮し、圧延工場における生産性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態で用いた圧延摩耗試験機の概略図である。
【図2】実施の形態で用いた摩擦熱衝撃試験機の概略図である。
【図3】本発明例のロールの胴部断面図である。
【符号の説明】
1 圧延摩耗試験機、 2 試験用ロール、 3 試験用ロール、
4 加熱炉、5 冷却水槽、 6 巻取り機、 7 テンションコントローラ、
S 圧延材、 8 ラック、 9 重り、 10 ピニオン、
11 試験材、 12 噛み込み材
14 第1の外層、 15 第2の外層、 16 内層

Claims (6)

  1. 第1の外層と、第1の外層の内周面に溶着された第2の外層と、第2の外層の内周面に溶着された内層とから構成され、第1の外層は、化学成分が重量%で、C:2.5〜3.5%、Si:0.5〜2.0%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:4.0〜5.5%、Cr:1.0〜2.5%、V:0.5〜4.0%、Mo:0.1〜2.0%を含有するFe基合金からなり、金属組織中に面積%で黒鉛が0.5〜5%、MC系炭化物が1.0〜10%分散されてなり、第2の外層は、化学成分が重量%で、C:2.5〜3.5%、Si:1.5〜2.5%、Mn:0.1〜1.5%、Ni:3.5〜5.0%、Cr:0.8〜2.0%、V:0.1〜3.0%、Mo:0.1〜1.5%を含有するFe基合金からなり、内層は、強靭なFe基合金からなることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
  2. 前記第1の外層の厚みをa、第2の外層の厚みをbとした場合、a+bが、製品使用開始時の初径から70mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延用複合ロール。
  3. 前記第1の外層の厚みをa、第2の外層の厚みをbとした場合、b/(a+b)が0.1〜0.5を満足する範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延用複合ロール。
  4. 前記第1の外層の金属組織中に面積%で、セメンタイトが10〜45%分散されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱間圧延用複合ロール。
  5. 前記第1の外層は、化学成分が重量%でさらに、W:0.3〜4.0%、Co:1.0〜10.0%、Nb:1.0〜10.0%、Ti:0.01〜2.0%、B:0.002〜0.2%、Cu:0.02〜1.0%の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱間圧延用複合ロール。
  6. 厚板圧延用ワークロールに用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱間圧延用複合ロール。
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