JP2004008933A - ホルムアルデヒド捕捉剤およびその捕捉方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも抗菌性を兼ね備えたホルムアルデヒド捕捉剤およびその捕捉方法を提供することを課題とする。
【解決手段】蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させて得られる水不溶性の銀含有複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とを含むことを特徴とするホルムアルデヒド捕捉剤により、上記の課題を解決する。
【選択図】 図2
【解決手段】蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させて得られる水不溶性の銀含有複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とを含むことを特徴とするホルムアルデヒド捕捉剤により、上記の課題を解決する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも抗菌性を兼ね備えたホルムアルデヒド捕捉剤およびその捕捉方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、建材や家具などから発生するVOC(揮発性有機化合物)が、室内の空気を汚染して人体などに悪影響を及ぼすシック・ハウス症候群の原因物質として問題になっている。VOCの中でも、特にホルムアルデヒドは、例えばフローリング材などの合板材や家具の製造に用いられるフェノール系、尿素系またはメラミン系の接着剤に多量に含まれており、室内空間に多量に放出されるために、VOCの主要物質になっている。
【0003】
このようなことから、ホルムアルデヒドによる室内の空気汚染を抑制または防止するために、次のような方法が提案されてきた。
(1)ホルムアルデヒドを含有しない接着剤あるいはホルムアルデヒドの含量の少ない接着剤を使用して建材や家具を製造する方法
(2)ホルムアルデヒドを吸着または反応固定する何らかの物質を合板類に塗布してホルムアルデヒドの放出を抑制する方法
(3)ホルムアルデヒドを触媒反応により分解させる物質を基布に展着させたシートまたは壁紙を室内面に設ける方法
【0004】
しかしながら、上記の方法には、次のような問題がある。
方法(1)で用いられる接着剤は、ホルムアルデヒドを含有している接着剤に比べて、接着性能に劣る上、高価であるため、大幅なコスト増を招くという問題がある。しかも、既設の建物には、通用し難く、抜本的な解決策とは言えない。
方法(2)で用いられる物質は、ホルムアルデヒド捕捉性やその持続性が十分でなく、家具や建材などの質感を低下させるなど、材質面に悪影響を与えるおそれがある。
方法(3)で用いられる物質は、分解により生じた新たな別のガス状物質を空気中に放出するという問題がある。
このようなことから、優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも家具や建材などに悪影響を与えず、仕上材などへの応用が可能な新しいホルムアルデヒド捕捉物質の開発が望まれている。
【0005】
最近では、アミド硫酸アンモニウムや硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩からなるホルムアルデヒド捕捉剤が提案されている(特開平11−128329号公報参照)。また、化粧品やトイレタリー製品などの香粧品の構成成分から分解・溶出するホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド供与体)に対し、アミノ基含有化合物を0.1倍量以上の比率で添加するホルムアルデヒドの抑制方法が提案されている(特開平2−62833号公報参照)。
【0006】
また、医療用機械器具、文具類、繊維製品、紙製品、日用雑貨品や浴室製品などにおいて、健康衛生面に配慮して、かびや細菌などの各種微生物が繁殖しないように抗菌・抗かび剤で処理したものが多く用いられており、建材や家具でもこのような抗菌処理が行われつつある。
【0007】
一方、本発明の発明者は、人体や食品などに直接接触する場合の安全性を考慮すると共に、銀含有率が高くて、抗菌性の銀が蛋白質から容易に離脱しない水不溶性の銀含有複合蛋白質を提案した(国際出願公開WO00/59937号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも抗菌性を兼ね備えたホルムアルデヒド捕捉剤およびその捕捉方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明者が先に提案した、蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させて得られる水不溶性の銀含有複合蛋白質(以下、「複合蛋白質」という)と特定のアミノ基含有化合物とを含む薬剤が、抗菌性とホルムアルデヒド捕捉性の両方の性能を有し、しかも一度捕捉(吸着)したホルムアルデヒドを放出し難いという事実を見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
かくして、本発明によれば、複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とを含むことを特徴とするホルムアルデヒド捕捉剤、および複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とで壁紙を処理して、壁面から発生するホルムアルデヒドを捕捉することを特徴とするホルムアルデヒドの捕捉方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤の必須成分である複合蛋白質としては、国際出願公開WO00/59937号公報に記載のものを用いることができる。
【0013】
複合蛋白質は、蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させて得られる水不溶性の蛋白質である。具体的には、複合蛋白質は、水可溶性の蛋白質と、この蛋白質1gに対して0.005〜3g程度の硝酸銀、酢酸銀などの銀塩とを水中で接触させる方法、例えば、水中で蛋白質を攪拌しつつ、これに銀塩の水溶液を徐々に加えて、水中の銀イオン濃度を徐々に上げることにより得ることができる。
【0014】
「水可溶性の蛋白質」としては、活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gの範囲にある蛋白質であれば特に限定されないが、ホエー蛋白質、ホエー蛋白質の加水分解物、ホエー蛋白質の水可溶化物、卵殻膜蛋白質の加水分解物および卵殻膜蛋白質の水可溶化物が好ましい。
【0015】
なお、「活性チオール基」とは、重金属化合物の水溶液と容易に反応して金属メルカプチド誘導体を生成するメルカプト基(−SH)を意味する。その含有割合は、所定量の蛋白質の水溶液を調製し、DTNB法(エルマン法)によりL−システイン相当量として測定することができる(生物化学実験法10「SH基の定量法」、学会出版センター発行、第86〜93頁参照)。
【0016】
「ホエー蛋白質」は、元来、シスチンを比較的多量に含有する蛋白質であり、チーズ製造時に副生する乳清(ホエー)中に多く存在する。また、「卵殻膜蛋白質」は、鳥類の卵の卵殻の内膜を構成する水不溶性の蛋白質であり、食品工業などにおいて大量に消費されている鶏卵やウズラの卵などから得られる。
ホエー蛋白質や卵殻膜蛋白質の加水分解物または水可溶化物は、それらをアルカリ加水分解、酵素分解または還元剤処理などに付すことにより得られる。
【0017】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤におけるもう一方の必須成分であるアミノ基含有化合物は、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種である。具体的には、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、カゼイン、パパインなどの動植物性の蛋白質、動植物性の蛋白質を化学処理または酵素処理などによって得られるペプチド類、シスチン、グリシン、アラニンなどのアミノ酸類、アミノ糖、糖ペプチド、糖蛋白、蛋白糖などが挙げられる。これらのアミノ基含有化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
複合蛋白質とアミノ基含有化合物とを併用することにより、複合蛋白質の抗菌性を損なうことなく、ホルムアルデヒドの捕捉性を向上させることができる。その配合割合は、ホルムアルデヒドの捕捉性の点で、重量比が3:1〜1:3の範囲にあるのが好ましい。
【0019】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、複合蛋白質の水性懸濁液にアミノ基含有化合物を加えて、ホモミキサーなどの撹拌分散機で撹拌分散することにより得られる。
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、上記のような方法で調製される水分散性組成物の形態であれば、壁紙などへの塗工適性の点で特に好ましい。
【0020】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤には、組成物の粘度調整、分散安定性付与のために、必要に応じて多価アルコール、糖アルコールなどを配合してもよい。
多価アルコールとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどが挙げられる。これらのアルコール類のうち、例えば、ポリビニルアルコールは、水に対する溶解度を考慮して、水に対して0.1〜15重量%程度配合するのが好ましい。
【0021】
また、本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の成分以外に、乳化剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、キラヤサポニン、レシチンなど)、増粘安定剤(例えば、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、アルギン酸およびでんぷん加水分解物のような加工でんぷんなど)、防腐剤、着色剤、香料などを適宜含んでいてもよい。
【0022】
また、本発明によれば、複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とで壁紙を処理して、壁面から発生するホルムアルデヒドを捕捉することを特徴とするホルムアルデヒドの捕捉方法が提供される。
【0023】
本発明において、「壁紙」とは、一般に壁、天井の仕上げなどに用いる紙、例えば、化学パルプと機械パルプとを配合して強サイズを施し、難燃性を付与した紙、片面に塗工または印刷し、他面にのりまたは接着剤を塗布するように作られた紙を意味する(JIS A0201 建築用内外装材料用語およびJIS P0001 紙・板紙およびパルプ用語参照)。
【0024】
壁紙を処理する方法としては、適量の水または水性媒体に分散させた本発明のホルムアルデヒド捕捉剤を壁紙の表面に塗布、または浸漬およびスプレー(シャワー)などにより壁紙に含浸させる方法、ならびにホルムアルデヒド捕捉剤をパルプスラリーとともに抄紙する方法などが挙げられる。なお、壁紙に塗布する方法であれば、既存の抄紙工程の装置を転用できるので特に好ましい。
【0025】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤を壁紙に塗布する場合、好ましい塗布量は壁紙の種類やその用途などにより異なるが、通常、有効成分としての複合蛋白質とアミノ基含有化合物の重量として1m2あたり0.005〜0.5g、より好ましくは0.02〜0.1gである。
塗布量が1m2あたり0.005g未満の場合には、充分なホルムアルデヒドの捕捉効果が得られないので好ましくない。また、塗布量が1m2あたり0.5gを超える場合には、コストに見合う効果が得られないので好ましくない。
【0026】
本発明のホルムアルデヒドの捕捉方法は、一液製剤の形態にある本発明のホルムアルデヒド捕捉剤で壁紙を処理すると好都合であるが、複合蛋白質を含む製剤とアミノ基含有化合物を含む製剤とを併用しても、本発明の効果を得ることができる。
このときに使用する複合蛋白質とアミノ基含有化合物の量は、上記の配合割合に相当する量であればよく、その処理方法は、一液製剤の場合と同様に、塗付、浸漬、噴霧など、いずれであってもよい。
【0027】
【実施例】
本発明を以下の調製例および試験例によりさらに詳しく説明するが、これらの調製例および試験例により本発明が限定されるものではない。
【0028】
調製例1(ホルムアルデヒド捕捉剤Aの調製)
容量300mlのビーカー中で、ホエー蛋白質(太陽化学株式会社製、商品名:サンラクトN−5、蛋白質含有率72%、活性チオール基の含有割合47μモル/g)2gを脱イオン水200mlに溶解した。次いで、得られた溶液に50mMの硝酸銀水溶液200mlを添加し、1時間攪拌し、一夜静置し、濾過した(濾紙No.2を使用)。濾別した残渣を脱イオン水100mlで2回洗浄し、これを乾燥して複合蛋白質1.38gを得た。
得られた複合蛋白質と上記のホエー蛋白質とを、重量比で1:1となるように配合して、ホルムアルデヒド捕捉剤A(以下、「捕捉剤A」という)を得た。
【0029】
試験例1(ホルムアルデヒド捕捉効果確認試験)
調製例1で得られた捕捉剤Aのホルムアルデヒドの吸着(捕捉)特性を、図1の装置を用いて測定した。
調製例1で得られた捕捉剤Aをアセトン中に1mg/mlの濃度になるように加えて分散させた。得られた溶液を図1における水晶振動子(固有振動数:8MHz)の両面に、マイクロシリンジを用いて片面に5μlずつキャスティングし、空気乾燥した。この水晶振動子をセンサー部として、デシケーター内に設置し、MULTI FUNCTION COUNTER AD−5182(株式会社エイアンドディー製)を含む測定回路に接続した。次いで、デシケーターに無水シリカゲルを入れて、デシケーター内を十分に乾燥させた後、無水シリカゲルを取り出し、ホルムアルデヒド200mlを入れて、デシケーター内をホルムアルデヒド飽和環境下(37%)にした。ホルムアルデヒドの投入時から、水晶振動子の固有振動数(周波数)の変化を、前記のAD−5182を用いて2時間測定した。
また、比較として、捕捉剤Aの代わりにVOC吸着剤(大塚化学株式会社製、製品名:ケムキャッチ)および銀系無機抗菌剤(東亜合成株式会社製、製品名:ノバロン(NOVARON、登録商標))をそれぞれ用いること以外は上記と同様にして、水晶振動子の周波数の変化を測定した。
得られた結果を図2に示す。
【0030】
水晶振動子の周波数の減少は、ホルムアルデヒドが捕捉剤に吸着されたことを意味し、その減少量は相対的なホルムアルデヒドの吸着量を表す。また、水晶振動子の周波数の増加は、ホルムアルデヒドが捕捉剤から放出されたことを意味し、その増加量は相対的なホルムアルデヒドの放出量を表す。この測定方法は、微細化羽毛粉末の水分吸着量の測定方法(日本農芸化学会誌、Vol.70、No.1、41〜43頁、1996参照)の転用である。
【0031】
図2に示された結果から、捕捉剤Aは、ホルムアルデヒドの投入直後に急激な周波数の減少(約−600Hz)、すなわちホルムアルデヒドの吸着があり、その後、周波数の変化が殆どないこと(約−530Hz〜約−690Hz)から、ホルムアルデヒドの吸着および放出が殆ど起こっていないことがわかる。
ノバロンは、ホルムアルデヒドの投入直後に、捕捉剤Aの約1/2の周波数の減少(約−270Hz)があり、その後、周波数の変化が殆どないこと(約−270Hz〜約−430Hz)から、ホルムアルデヒドの吸着および放出が殆どないことがわかる。
ケムキャッチは、ホルムアルデヒドの投入直後には、周波数の急激な変化がなく、その後、徐々に周波数が減少したこと(約50Hz〜約−660Hz)から、ホルムアルデヒドが徐々に吸着されたことがわかる。
以上のことから、本発明の捕捉剤Aは、ノバロンおよびケムキャッチよりも、ホルムアルデヒドの吸着性(捕捉性)が高いことがわかる。
【0032】
試験例2(ホルムアルデヒド捕捉効果確認試験)
試験例1において、水晶振動子の周波数の変化を2時間測定した後、そのままの状態で1時間、経過観察を行った。次いで、水晶振動子を取り出し、この水晶振動子を別のシリカゲル乾燥剤を入れたデシケーター内に設置し、その設置直後から、水晶振動子の周波数の変化を、試験例1と同様にして1時間測定した。
得られた結果を図3に示す。
【0033】
図3に示された結果から、捕捉剤Aは、周波数の変化が殆どないこと(0Hz)から、ホルムアルデヒドの放出が殆ど起こっていないことがわかる。
ノバロンは、わずかに周波数の変化があり(0Hz〜約140Hz)、一度吸着したホルムアルデヒドがわずかに放出されたことがわかる。
ケムキャッチは、徐々に周波数が増加した(0Hz〜約1200Hz)ことから、一度吸着したホルムアルデヒドが徐々に放出されたことがわかる。
以上のことから、本発明の捕捉剤Aは、一度吸着したホルムアルデヒドを放出し難いことがわかる。
【0034】
試験例3(ホルムアルデヒド捕捉効果確認試験)
複合蛋白質とホエー蛋白質の重量比を3:1(捕捉剤B)および1:3(捕捉剤C)に変えること以外は、試験例1の捕捉剤Aと同様にして、水晶振動子の周波数の変化を測定した。
また、比較として、捕捉剤Bまたは捕捉剤Cの代わりに複合蛋白質単独(D)およびホエー蛋白質単独(E)をそれぞれ用いること以外は上記と同様にして、水晶振動子の周波数の変化を、1時間測定した。
得られた結果を図4に示す。
また、ホルムアルデヒドの投入から1時間経過後の周波数を、水晶振動子にキャスティングした薬剤およびその成分比(重量比)と共に表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1および図4に示された結果から、本発明の捕捉剤A、BおよびC、特に複合蛋白質とホエー蛋白質の重量比が3:1である捕捉剤Bは、優れたホルムアルデヒドの吸着性(捕捉性)を有することがわかる。また、捕捉剤Bは、これに近い吸着性を示すホエー蛋白質単独のEに比べて、ホルムアルデヒドの投入直後における周波数の減少、すなわちホルムアルデヒドの吸着が大きく、吸着性に優れていることがわかる。
【0037】
調製例2〔複合蛋白質を含む塗工薬剤Aの調製〕
調製例1と同様にして、複合蛋白質1.41gを得た。この複合蛋白質の銀含有率は4.5%であった。
得られた複合蛋白質を4重量%の懸濁液となるように脱イオン水に懸濁した。この懸濁液40gと脱イオン水460gとを併せて、塗工薬剤A500gを得た。
【0038】
調製例3〔ホエー蛋白質を含む塗工薬剤Bの調製〕
比較薬剤として、ホエー蛋白質(ニュージーランドミルクプロダクツ社製、商品名:アラセン895、蛋白質含有率86.5%、活性チオール基の含有割合34.5μモル/g)1.6gと脱イオン水498.4gとを併せて、塗工薬剤B500gを得た。
【0039】
試験例4〔抗菌効果確認試験〕
ベーカー式アプリケーター(安田精機製作所製)を用いて、表2に示す成分量の塗工薬剤Aと塗工薬剤Bの混合薬剤、塗工薬剤Aおよび塗工薬剤Bを、それぞれ市販のコピー紙に2mil(50g/m2)の厚さになるように塗工した。得られた各コピー紙を15mm×15mmに切断して、抗菌性試験用の紙片を得た。各紙片について、JIS L 1902に準拠してSEK抗菌性試験を実施した。
得られた結果を表3に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表3に示された結果から、アミノ基含有化合物としてホエー蛋白質が添加されても、複合蛋白質の抗菌効果が低下しないことがわかる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも抗菌性を兼ね備えたホルムアルデヒド捕捉剤およびその捕捉方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1において水晶振動子の周波数を測定した装置の概略図である。
【図2】ホルムアルデヒドの吸着による周波数の変化を示す図である(試験例1)。
【図3】ホルムアルデヒドの放出による周波数の変化を示す図である(試験例2)。
【図4】ホルムアルデヒドの吸着による周波数の変化を示す図である(試験例3)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも抗菌性を兼ね備えたホルムアルデヒド捕捉剤およびその捕捉方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、建材や家具などから発生するVOC(揮発性有機化合物)が、室内の空気を汚染して人体などに悪影響を及ぼすシック・ハウス症候群の原因物質として問題になっている。VOCの中でも、特にホルムアルデヒドは、例えばフローリング材などの合板材や家具の製造に用いられるフェノール系、尿素系またはメラミン系の接着剤に多量に含まれており、室内空間に多量に放出されるために、VOCの主要物質になっている。
【0003】
このようなことから、ホルムアルデヒドによる室内の空気汚染を抑制または防止するために、次のような方法が提案されてきた。
(1)ホルムアルデヒドを含有しない接着剤あるいはホルムアルデヒドの含量の少ない接着剤を使用して建材や家具を製造する方法
(2)ホルムアルデヒドを吸着または反応固定する何らかの物質を合板類に塗布してホルムアルデヒドの放出を抑制する方法
(3)ホルムアルデヒドを触媒反応により分解させる物質を基布に展着させたシートまたは壁紙を室内面に設ける方法
【0004】
しかしながら、上記の方法には、次のような問題がある。
方法(1)で用いられる接着剤は、ホルムアルデヒドを含有している接着剤に比べて、接着性能に劣る上、高価であるため、大幅なコスト増を招くという問題がある。しかも、既設の建物には、通用し難く、抜本的な解決策とは言えない。
方法(2)で用いられる物質は、ホルムアルデヒド捕捉性やその持続性が十分でなく、家具や建材などの質感を低下させるなど、材質面に悪影響を与えるおそれがある。
方法(3)で用いられる物質は、分解により生じた新たな別のガス状物質を空気中に放出するという問題がある。
このようなことから、優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも家具や建材などに悪影響を与えず、仕上材などへの応用が可能な新しいホルムアルデヒド捕捉物質の開発が望まれている。
【0005】
最近では、アミド硫酸アンモニウムや硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩からなるホルムアルデヒド捕捉剤が提案されている(特開平11−128329号公報参照)。また、化粧品やトイレタリー製品などの香粧品の構成成分から分解・溶出するホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド供与体)に対し、アミノ基含有化合物を0.1倍量以上の比率で添加するホルムアルデヒドの抑制方法が提案されている(特開平2−62833号公報参照)。
【0006】
また、医療用機械器具、文具類、繊維製品、紙製品、日用雑貨品や浴室製品などにおいて、健康衛生面に配慮して、かびや細菌などの各種微生物が繁殖しないように抗菌・抗かび剤で処理したものが多く用いられており、建材や家具でもこのような抗菌処理が行われつつある。
【0007】
一方、本発明の発明者は、人体や食品などに直接接触する場合の安全性を考慮すると共に、銀含有率が高くて、抗菌性の銀が蛋白質から容易に離脱しない水不溶性の銀含有複合蛋白質を提案した(国際出願公開WO00/59937号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも抗菌性を兼ね備えたホルムアルデヒド捕捉剤およびその捕捉方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明者が先に提案した、蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させて得られる水不溶性の銀含有複合蛋白質(以下、「複合蛋白質」という)と特定のアミノ基含有化合物とを含む薬剤が、抗菌性とホルムアルデヒド捕捉性の両方の性能を有し、しかも一度捕捉(吸着)したホルムアルデヒドを放出し難いという事実を見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
かくして、本発明によれば、複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とを含むことを特徴とするホルムアルデヒド捕捉剤、および複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とで壁紙を処理して、壁面から発生するホルムアルデヒドを捕捉することを特徴とするホルムアルデヒドの捕捉方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤の必須成分である複合蛋白質としては、国際出願公開WO00/59937号公報に記載のものを用いることができる。
【0013】
複合蛋白質は、蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させて得られる水不溶性の蛋白質である。具体的には、複合蛋白質は、水可溶性の蛋白質と、この蛋白質1gに対して0.005〜3g程度の硝酸銀、酢酸銀などの銀塩とを水中で接触させる方法、例えば、水中で蛋白質を攪拌しつつ、これに銀塩の水溶液を徐々に加えて、水中の銀イオン濃度を徐々に上げることにより得ることができる。
【0014】
「水可溶性の蛋白質」としては、活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gの範囲にある蛋白質であれば特に限定されないが、ホエー蛋白質、ホエー蛋白質の加水分解物、ホエー蛋白質の水可溶化物、卵殻膜蛋白質の加水分解物および卵殻膜蛋白質の水可溶化物が好ましい。
【0015】
なお、「活性チオール基」とは、重金属化合物の水溶液と容易に反応して金属メルカプチド誘導体を生成するメルカプト基(−SH)を意味する。その含有割合は、所定量の蛋白質の水溶液を調製し、DTNB法(エルマン法)によりL−システイン相当量として測定することができる(生物化学実験法10「SH基の定量法」、学会出版センター発行、第86〜93頁参照)。
【0016】
「ホエー蛋白質」は、元来、シスチンを比較的多量に含有する蛋白質であり、チーズ製造時に副生する乳清(ホエー)中に多く存在する。また、「卵殻膜蛋白質」は、鳥類の卵の卵殻の内膜を構成する水不溶性の蛋白質であり、食品工業などにおいて大量に消費されている鶏卵やウズラの卵などから得られる。
ホエー蛋白質や卵殻膜蛋白質の加水分解物または水可溶化物は、それらをアルカリ加水分解、酵素分解または還元剤処理などに付すことにより得られる。
【0017】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤におけるもう一方の必須成分であるアミノ基含有化合物は、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種である。具体的には、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、カゼイン、パパインなどの動植物性の蛋白質、動植物性の蛋白質を化学処理または酵素処理などによって得られるペプチド類、シスチン、グリシン、アラニンなどのアミノ酸類、アミノ糖、糖ペプチド、糖蛋白、蛋白糖などが挙げられる。これらのアミノ基含有化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
複合蛋白質とアミノ基含有化合物とを併用することにより、複合蛋白質の抗菌性を損なうことなく、ホルムアルデヒドの捕捉性を向上させることができる。その配合割合は、ホルムアルデヒドの捕捉性の点で、重量比が3:1〜1:3の範囲にあるのが好ましい。
【0019】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、複合蛋白質の水性懸濁液にアミノ基含有化合物を加えて、ホモミキサーなどの撹拌分散機で撹拌分散することにより得られる。
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、上記のような方法で調製される水分散性組成物の形態であれば、壁紙などへの塗工適性の点で特に好ましい。
【0020】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤には、組成物の粘度調整、分散安定性付与のために、必要に応じて多価アルコール、糖アルコールなどを配合してもよい。
多価アルコールとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどが挙げられる。これらのアルコール類のうち、例えば、ポリビニルアルコールは、水に対する溶解度を考慮して、水に対して0.1〜15重量%程度配合するのが好ましい。
【0021】
また、本発明のホルムアルデヒド捕捉剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の成分以外に、乳化剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、キラヤサポニン、レシチンなど)、増粘安定剤(例えば、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、アルギン酸およびでんぷん加水分解物のような加工でんぷんなど)、防腐剤、着色剤、香料などを適宜含んでいてもよい。
【0022】
また、本発明によれば、複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とで壁紙を処理して、壁面から発生するホルムアルデヒドを捕捉することを特徴とするホルムアルデヒドの捕捉方法が提供される。
【0023】
本発明において、「壁紙」とは、一般に壁、天井の仕上げなどに用いる紙、例えば、化学パルプと機械パルプとを配合して強サイズを施し、難燃性を付与した紙、片面に塗工または印刷し、他面にのりまたは接着剤を塗布するように作られた紙を意味する(JIS A0201 建築用内外装材料用語およびJIS P0001 紙・板紙およびパルプ用語参照)。
【0024】
壁紙を処理する方法としては、適量の水または水性媒体に分散させた本発明のホルムアルデヒド捕捉剤を壁紙の表面に塗布、または浸漬およびスプレー(シャワー)などにより壁紙に含浸させる方法、ならびにホルムアルデヒド捕捉剤をパルプスラリーとともに抄紙する方法などが挙げられる。なお、壁紙に塗布する方法であれば、既存の抄紙工程の装置を転用できるので特に好ましい。
【0025】
本発明のホルムアルデヒド捕捉剤を壁紙に塗布する場合、好ましい塗布量は壁紙の種類やその用途などにより異なるが、通常、有効成分としての複合蛋白質とアミノ基含有化合物の重量として1m2あたり0.005〜0.5g、より好ましくは0.02〜0.1gである。
塗布量が1m2あたり0.005g未満の場合には、充分なホルムアルデヒドの捕捉効果が得られないので好ましくない。また、塗布量が1m2あたり0.5gを超える場合には、コストに見合う効果が得られないので好ましくない。
【0026】
本発明のホルムアルデヒドの捕捉方法は、一液製剤の形態にある本発明のホルムアルデヒド捕捉剤で壁紙を処理すると好都合であるが、複合蛋白質を含む製剤とアミノ基含有化合物を含む製剤とを併用しても、本発明の効果を得ることができる。
このときに使用する複合蛋白質とアミノ基含有化合物の量は、上記の配合割合に相当する量であればよく、その処理方法は、一液製剤の場合と同様に、塗付、浸漬、噴霧など、いずれであってもよい。
【0027】
【実施例】
本発明を以下の調製例および試験例によりさらに詳しく説明するが、これらの調製例および試験例により本発明が限定されるものではない。
【0028】
調製例1(ホルムアルデヒド捕捉剤Aの調製)
容量300mlのビーカー中で、ホエー蛋白質(太陽化学株式会社製、商品名:サンラクトN−5、蛋白質含有率72%、活性チオール基の含有割合47μモル/g)2gを脱イオン水200mlに溶解した。次いで、得られた溶液に50mMの硝酸銀水溶液200mlを添加し、1時間攪拌し、一夜静置し、濾過した(濾紙No.2を使用)。濾別した残渣を脱イオン水100mlで2回洗浄し、これを乾燥して複合蛋白質1.38gを得た。
得られた複合蛋白質と上記のホエー蛋白質とを、重量比で1:1となるように配合して、ホルムアルデヒド捕捉剤A(以下、「捕捉剤A」という)を得た。
【0029】
試験例1(ホルムアルデヒド捕捉効果確認試験)
調製例1で得られた捕捉剤Aのホルムアルデヒドの吸着(捕捉)特性を、図1の装置を用いて測定した。
調製例1で得られた捕捉剤Aをアセトン中に1mg/mlの濃度になるように加えて分散させた。得られた溶液を図1における水晶振動子(固有振動数:8MHz)の両面に、マイクロシリンジを用いて片面に5μlずつキャスティングし、空気乾燥した。この水晶振動子をセンサー部として、デシケーター内に設置し、MULTI FUNCTION COUNTER AD−5182(株式会社エイアンドディー製)を含む測定回路に接続した。次いで、デシケーターに無水シリカゲルを入れて、デシケーター内を十分に乾燥させた後、無水シリカゲルを取り出し、ホルムアルデヒド200mlを入れて、デシケーター内をホルムアルデヒド飽和環境下(37%)にした。ホルムアルデヒドの投入時から、水晶振動子の固有振動数(周波数)の変化を、前記のAD−5182を用いて2時間測定した。
また、比較として、捕捉剤Aの代わりにVOC吸着剤(大塚化学株式会社製、製品名:ケムキャッチ)および銀系無機抗菌剤(東亜合成株式会社製、製品名:ノバロン(NOVARON、登録商標))をそれぞれ用いること以外は上記と同様にして、水晶振動子の周波数の変化を測定した。
得られた結果を図2に示す。
【0030】
水晶振動子の周波数の減少は、ホルムアルデヒドが捕捉剤に吸着されたことを意味し、その減少量は相対的なホルムアルデヒドの吸着量を表す。また、水晶振動子の周波数の増加は、ホルムアルデヒドが捕捉剤から放出されたことを意味し、その増加量は相対的なホルムアルデヒドの放出量を表す。この測定方法は、微細化羽毛粉末の水分吸着量の測定方法(日本農芸化学会誌、Vol.70、No.1、41〜43頁、1996参照)の転用である。
【0031】
図2に示された結果から、捕捉剤Aは、ホルムアルデヒドの投入直後に急激な周波数の減少(約−600Hz)、すなわちホルムアルデヒドの吸着があり、その後、周波数の変化が殆どないこと(約−530Hz〜約−690Hz)から、ホルムアルデヒドの吸着および放出が殆ど起こっていないことがわかる。
ノバロンは、ホルムアルデヒドの投入直後に、捕捉剤Aの約1/2の周波数の減少(約−270Hz)があり、その後、周波数の変化が殆どないこと(約−270Hz〜約−430Hz)から、ホルムアルデヒドの吸着および放出が殆どないことがわかる。
ケムキャッチは、ホルムアルデヒドの投入直後には、周波数の急激な変化がなく、その後、徐々に周波数が減少したこと(約50Hz〜約−660Hz)から、ホルムアルデヒドが徐々に吸着されたことがわかる。
以上のことから、本発明の捕捉剤Aは、ノバロンおよびケムキャッチよりも、ホルムアルデヒドの吸着性(捕捉性)が高いことがわかる。
【0032】
試験例2(ホルムアルデヒド捕捉効果確認試験)
試験例1において、水晶振動子の周波数の変化を2時間測定した後、そのままの状態で1時間、経過観察を行った。次いで、水晶振動子を取り出し、この水晶振動子を別のシリカゲル乾燥剤を入れたデシケーター内に設置し、その設置直後から、水晶振動子の周波数の変化を、試験例1と同様にして1時間測定した。
得られた結果を図3に示す。
【0033】
図3に示された結果から、捕捉剤Aは、周波数の変化が殆どないこと(0Hz)から、ホルムアルデヒドの放出が殆ど起こっていないことがわかる。
ノバロンは、わずかに周波数の変化があり(0Hz〜約140Hz)、一度吸着したホルムアルデヒドがわずかに放出されたことがわかる。
ケムキャッチは、徐々に周波数が増加した(0Hz〜約1200Hz)ことから、一度吸着したホルムアルデヒドが徐々に放出されたことがわかる。
以上のことから、本発明の捕捉剤Aは、一度吸着したホルムアルデヒドを放出し難いことがわかる。
【0034】
試験例3(ホルムアルデヒド捕捉効果確認試験)
複合蛋白質とホエー蛋白質の重量比を3:1(捕捉剤B)および1:3(捕捉剤C)に変えること以外は、試験例1の捕捉剤Aと同様にして、水晶振動子の周波数の変化を測定した。
また、比較として、捕捉剤Bまたは捕捉剤Cの代わりに複合蛋白質単独(D)およびホエー蛋白質単独(E)をそれぞれ用いること以外は上記と同様にして、水晶振動子の周波数の変化を、1時間測定した。
得られた結果を図4に示す。
また、ホルムアルデヒドの投入から1時間経過後の周波数を、水晶振動子にキャスティングした薬剤およびその成分比(重量比)と共に表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1および図4に示された結果から、本発明の捕捉剤A、BおよびC、特に複合蛋白質とホエー蛋白質の重量比が3:1である捕捉剤Bは、優れたホルムアルデヒドの吸着性(捕捉性)を有することがわかる。また、捕捉剤Bは、これに近い吸着性を示すホエー蛋白質単独のEに比べて、ホルムアルデヒドの投入直後における周波数の減少、すなわちホルムアルデヒドの吸着が大きく、吸着性に優れていることがわかる。
【0037】
調製例2〔複合蛋白質を含む塗工薬剤Aの調製〕
調製例1と同様にして、複合蛋白質1.41gを得た。この複合蛋白質の銀含有率は4.5%であった。
得られた複合蛋白質を4重量%の懸濁液となるように脱イオン水に懸濁した。この懸濁液40gと脱イオン水460gとを併せて、塗工薬剤A500gを得た。
【0038】
調製例3〔ホエー蛋白質を含む塗工薬剤Bの調製〕
比較薬剤として、ホエー蛋白質(ニュージーランドミルクプロダクツ社製、商品名:アラセン895、蛋白質含有率86.5%、活性チオール基の含有割合34.5μモル/g)1.6gと脱イオン水498.4gとを併せて、塗工薬剤B500gを得た。
【0039】
試験例4〔抗菌効果確認試験〕
ベーカー式アプリケーター(安田精機製作所製)を用いて、表2に示す成分量の塗工薬剤Aと塗工薬剤Bの混合薬剤、塗工薬剤Aおよび塗工薬剤Bを、それぞれ市販のコピー紙に2mil(50g/m2)の厚さになるように塗工した。得られた各コピー紙を15mm×15mmに切断して、抗菌性試験用の紙片を得た。各紙片について、JIS L 1902に準拠してSEK抗菌性試験を実施した。
得られた結果を表3に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表3に示された結果から、アミノ基含有化合物としてホエー蛋白質が添加されても、複合蛋白質の抗菌効果が低下しないことがわかる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、優れたホルムアルデヒド捕捉性を有し、安全で、しかも抗菌性を兼ね備えたホルムアルデヒド捕捉剤およびその捕捉方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1において水晶振動子の周波数を測定した装置の概略図である。
【図2】ホルムアルデヒドの吸着による周波数の変化を示す図である(試験例1)。
【図3】ホルムアルデヒドの放出による周波数の変化を示す図である(試験例2)。
【図4】ホルムアルデヒドの吸着による周波数の変化を示す図である(試験例3)。
Claims (3)
- 蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させて得られる水不溶性の銀含有複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とを含むことを特徴とするホルムアルデヒド捕捉剤。
- 水可溶性の蛋白質が、ホエー蛋白質またはその加水分解物もしくは水可溶化物であるか、あるいは卵殻膜蛋白質の加水分解物もしくは水可溶化物である請求項1に記載のホルムアルデヒド捕捉剤。
- 蛋白質中の活性チオール基の含有割合が0.1〜200μモル/gである水可溶性の蛋白質と銀塩とを水中で接触させて得られる水不溶性の銀含有複合蛋白質と、蛋白質、ペプチド類、アミノ酸類より選択される少なくとも1種のアミノ基含有化合物とで壁紙を処理して、壁面から発生するホルムアルデヒドを捕捉することを特徴とするホルムアルデヒドの捕捉方法。
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