JP2004007910A - 誘導電動機 - Google Patents

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恩 和
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Abstract

【課題】固定子の長さに比例した出力が得られると共に、最大効率も良く、且つ低速領域におけるトルク特性も安定した誘導電動機を提供する。
【解決手段】回転子36は、回転軸42の軸線方向に沿って複数個連結した単位回転子36a,36bから構成され、単位回転子36a,36bは、回転子コア48と、導電材料で形成され、回転子コア48の軸線方向の両端部の端面に取付けられた2個のエンドリング52a,52bと、導電材料で形成され、回転子コア48の周囲表面において両エンドリング52a,52b同士を接続するように、回転子コア48の周囲表面に軸線方向に沿って設けられた複数本の棒状の棒導体54とを具備する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、篭形の回転子を有する誘導電動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の誘導電動機について、図5および図6に基づいて説明する。
誘導電動機10は、固定子コアに巻回したマグネットワイヤ11によって回転磁界を発生させる固定子12と、固定子12により作られた回転磁界によって電磁誘導作用によって発生する起電力に基づいて流れる電流と回転磁界との間で生じるトルクが発生する回転子14とを具備している。
【0003】
固定子12は、金属製のハウジング9の内周面に沿って設けられている。また固定子コア(ここでは図示せず)は、電磁鋼板が回転軸16の軸線方向に積層されて形成されている。
回転子14は、回転軸16と一体に回転可能となるように、回転軸16と共に固定子12の内側に配置されている。回転軸16は、その両端を軸受7,8によって回転自在に保持されている。
【0004】
回転子14は、回転軸16の周囲に固定された円柱状の回転子コア18と、回転子コア18の両端部において両端面を閉塞するように取付けられる導電性のエンドリング22と、両端部のエンドリング22,22同士を接続するように軸線方向に沿って設けられた複数本の棒導体24,24・・とから構成されている。
【0005】
棒導体24は、回転子コア18の軸線方向に対して所定角度傾斜するように形成された溝25内にアルミニウム等の金属導体を流し込んで形成されている。
この複数本の棒導体24によって2つのエンドリング22が連結され、回転子14は篭形に構成されるのである。
このようにエンドリング22によって短絡された複数本の棒導体24には、固定子12によって発生する回転磁界により起電力が生じて電流が流れる。この電流が固定子12の回転磁界と作用することでトルクが生じ、モータとして回転軸16を回転させるように動作するのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来の誘導電動機において出力を大きくしようとする場合には、一般的には固定子の軸線方向の長さを長くする(すなわち、固定子コアを長くする)、言い換えると固定子コアの電磁鋼板の積層厚を厚くするということが行なわれてきた。
しかし、固定子を軸線方向に長くしても、その長くした分に比例した出力の増加がなされず、しかも最大効率が低下するという課題があった。
【0007】
このような現象は、回転子の二次抵抗が増加するために生じるものであるので、これを防止するために回転子の各棒導体同士の間隔(スキューピッチ:図5の符号a)を小さくするなどの対策を取ることもあった。
しかし、回転子のスキューピッチを小さくすれば、特に低速領域でのトルク特性が不安定になってしまうという課題がある。
また、回転子の径が小径である場合には、棒導体を形成するためのアルミダイカスト等において製造不良が生じやすくなってしまうという課題もある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、固定子の長さに比例した出力が得られると共に、最大効率も良く、且つ低速領域におけるトルク特性も安定した誘導電動機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明にかかる誘導電動機によれば、回転軸の周囲に設けられた篭形の回転子と、該回転子の周囲に設けられた固定子コアの歯部に、マグネットワイヤが巻回されて構成された固定子とを具備する誘導電動機において、前記回転子は、回転軸の軸線方向に沿って複数個連結した単位回転子から構成され、前記単位回転子は、回転子コアと、導電材料で形成され、前記回転子コアの軸線方向の両端部の端面に取付けられた2個のエンドリングと、導電材料で形成され、前記回転子コアの周囲表面において該両エンドリング同士を接続するように、前記回転子コアの周囲表面に軸線方向に沿って設けられた複数本の棒状の棒導体とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、固定子を軸線方向に長くしても、この長くした分に形成された回転磁界に対し、この回転磁界を横切る棒導体の長さを短くすることができるので、回転子の二次抵抗を増加させずに出力の増加を図ることができると思われる。
ただし、この構成による動作の原理についてはまだ不明な点が多く、正確に把握しているわけではない。
【0010】
また、前記各単位回転子の軸線方向の長さは、それぞれ概略等しいことを特徴としてもよい。
さらに、前記単位回転子に設けられた各棒導体は、前記軸線方向に対して所定角度を有するように傾斜して設けられているので、次のような作用効果を奏する。すなわち、固定子の長さを長くして出力の増加を図ろうとする場合に、低速域のトルクを上げるためには各棒導体の軸線方向に対する傾斜角度を大きく取ればよいが、この角度を大きくしすぎると、棒導体の軸線方向の長さが長くなりすぎて製造時に製造不良をおこしやすい。
しかし、回転子が単位回転子が複数個設けられているような場合には、各単位回転子ごとに棒導体を製造できるので、棒導体の傾斜角度を大きくとったとしてもその全長は短くなるので製造不良を起こしにくく、確実に低速域でのトルク特性を向上させることができる。
【0011】
本発明にかかる誘導電動機によれば、回転軸の周囲に設けられた篭形の回転子と、該回転子の周囲に設けられた固定子コアの歯部に、マグネットワイヤが巻回されて構成された固定子とを具備する誘導電動機において、前記回転子は、回転子コアと、導電材料で形成され、前記回転子コアの軸線方向の両端部の端面に取付けられた2個のエンドリングと、導電材料で形成され、前記回転子コアの周囲表面において該両エンドリング同士を接続するように、前記回転子コアの周囲表面に軸線方向に沿って設けられた複数本の棒状の棒導体と、該各棒導体および前記回転子コアを軸線方向の中途部で分断する1または2以上の導体板とを有することを特徴としている。
この構成を採用することによって、固定子を軸線方向に長くしても、この長くした分に形成された回転磁界に対し、この回転磁界を横切る棒導体の長さを短くすることができるので、回転子の二次抵抗を増加させずに出力の増加を図ることができる。
【0012】
また、導体板は、前記各棒導体および前記回転子コアがそれぞれ概略等しい長さに分断されるような位置に設けられていてもよい。
さらに、前記回転子に設けられた各棒導体は、軸線方向に対して所定角度を有するように傾斜して設けられていることによれば、上述した場合と同様、以下のような作用効果を奏する。すなわち、固定子の長さを長くして出力の増加を図ろうとする場合に、低速域のトルクを上げるためには各棒導体の軸線方向に対する傾斜角度を大きく取ればよいが、この角度を大きくしすぎると、棒導体の軸線方向の長さが長くなりすぎて製造時に製造不良をおこしやすい。
しかし、回転子が軸線方向に沿って複数個に分断されていれば、分断されている部分ごとに棒導体を製造できるので、棒導体の傾斜角度を大きくとったとしてもその全長は短くなるので製造不良を起こしにくく、確実に低速域でのトルク特性を向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は誘導電動機30の側面からの断面図を示し、図2は固定子の軸線方向から見た断面図を示している。
なお、本実施形態で説明する誘導電動機としては、単相電源を入力した場合に動作する4極の単相インダクションモータ(コンデンサモータ)であるとする。
【0014】
まず誘導電動機30の全体構造について説明する。
誘導電動機30は、有底円筒状の金属製のハウジング32内に固定子34と、回転子36とが配置されて構成される。ハウジング32の底面には軸受保持部33が形成され、軸受37が圧入保持されている。
ハウジング32の開口部には、開口部を覆うブラケット38が取り付けられている。ブラケット38の中央にも軸受保持部39が形成され、軸受40が圧入保持されている。
軸受37と軸受40とによって回転軸42の両端が回転自在に保持される。
【0015】
固定子34について説明する。
固定子34は、ハウジング32の内周に設けられており、複数個のコイル44,44・・によって構成されている。
コイル44は、隣り合うコイル同士で主コイル44aと補助コイル44bとなるように組み合わされており、主コイル44aと補助コイル44bとでは流れる電流の位相が異なるように、コンデンサ(図示せず)等を接続して設けられている。
【0016】
固定子34を構成する各コイル44は、磁性材料である電磁鋼板が軸線方向に沿って積層されて構成された固定子コア46にインシュレータ41等の絶縁材料を介してマグネットワイヤ等の巻線が巻かれて構成される。
具体的には、固定子コア46には、内径方向に突出する歯部47が、形成すべきコイルの数だけ設けられており、歯部47にはインシュレータ41がはめ込まれている。マグネットワイヤは、インシュレータ41の上から巻き付けられている。このような構造によって各コイル44が形成されている。
【0017】
回転子36について説明する。
回転子36は、回転軸42と一体になって回転する部材であり、軸線方向に沿って複数本の棒状の導体部分を有する篭形である。
本実施形態の回転子36は、2つの同じ大きさの単位回転子36a,36bが回転軸42の軸線方向に並んで2つが一体となって配置されているものである。このように本実施形態の特徴は、回転子を軸線方向に多段に設けた点にある。
【0018】
単位回転子の構成について説明する。
各単位回転子は、回転子コア48と、2つのエンドリング52と、複数本の棒導体54とを具備する。
回転子コア48は、回転軸42の周囲に、電磁鋼板等の磁性材料が回転軸42の軸線方向に複数枚積層されて固定されている。
【0019】
回転子コア48の表面には、軸線方向に沿った溝51が複数本形成されている。この溝51内にアルミニウム等の導電性の金属材料が埋め込まれ(実際には鋳造により形成される)、棒状の棒導体54が構成される。棒導体54の本数は本実施形態では14本程度にしている。
また、棒導体54は、それぞれ軸線方向に対して傾斜して(スキュー)設けられている。
本実施形態では、2つの単位回転子36a,36bに形成された棒導体54の傾斜は同一方向に向くようにしている。
【0020】
エンドリング52a,52bは、各単位回転子36a,36bの軸線方向の両端部において端面を覆うように取付けられた円柱状の導電性の部材である。
具体的には、アルミニウム製の板材をろう付け等により回転子コア48の端面に取付けて構成されている。ただし、互いに連結される側(内側)に設けられたエンドリング52bは外側のエンドリング52aよりも肉薄に形成されている。各単位回転子36aと36bのエンドリング52b,52bはそれぞれ密着してはいるが特に何らかの固着手段等により取付けられる必要はない。
また、各単位回転子36aと36bのそれぞれのエンドリング52a,52bは各棒導体54を連結し、回転子36における篭形の巻線を形成する。
【0021】
このように、各単位回転子36a,36bのエンドリング52a,52bによって短絡された複数本の棒導体54には、固定子34によって発生する回転磁界により起電力が生じて電流が流れる。この電流が固定子34の回転磁界と作用することでトルクが生じ、モータとして回転軸42を回転させるように動作するのである。
【0022】
なお、各単位回転子36a,36bは、互いに隣り合う側のエンドリング52b同士が接触しているが、互いに絶縁されていなくともよい。
【0023】
ここまでは、回転子36の構成を説明する場合に、2つの単位回転子36a,36bが回転軸42上で連結されて1つの回転子36を構成しているという表現を用いた。
しかし、1つの回転子36の軸線方向の中途位置で導体板によって分断されているという表現を用いてもよい。
かかる場合には、分断する導体板は、上述した構成では内側に設けられたエンドリング52bが該当する。したがって、回転子36は、アルミニウム等から成る導電性の板状体である導体板52bが、回転軸42の周囲に、回転子コア48および複数の棒導体54を軸線方向の途中で分断するように配置されているといえる。
【0024】
なお、図3には2つの単位回転子36a,36bに形成された棒導体54の傾斜が互いに逆方向に向くように配置した形態について示している。
このように、単位回転子同士の棒導体の傾斜の向きは互いに逆向きであってもよい。
【0025】
上述してきた実施形態では、回転子は軸線方向に2つに分断されて2段に形成されているもの、言い換えると単位回転子を2つ合わせて1つの回転子を形成するようにしていたものであった。
しかし、本発明の形態としては回転子を2段に限定することはなく、回転子が3つ以上の数に分断(単位回転子を3つ以上合わせて1つの回転子を構成)されていてもよい。
【0026】
【実施例】
図4に、従来の単相インダクションモータ(以下、1段モータという)と、回転子を単位回転子2つで構成した、2段の単相インダクションモータ(以下、2段モータという)との効率及びトルク曲線を示す。
ただし、各2つのモータは、それぞれ入力電圧や固定子に接続されたコンデンサ容量等は等しくしてある。
【0027】
この図4に示すように、回転数が100r/minから600r/min程度までの低速領域においては、1段モータのトルクは1500gf・cm程度であるのに対し、2段モータでは2000gf・cm程度まで上昇しており、低速領域においてのトルク安定性が向上した。
さらに、回転数が600r/minから1200r/min程度までは、常に1段モータのトルクよりも2段モータのトルクの方が1000gf・cm程度は高いことが明らかになった。このように、2段モータの場合には低速領域でのトルク特性が向上し、且つ全体として出力が向上したことが明らかになった。
また、最高効率も2段モータが54%程度であるのに対し、1段モータが50%程度である。このため、2段モータにした結果、最高効率が従来よりも4%程度上昇したことが明らかになった。
【0028】
なお、上述してきた実施形態では誘導電動機として単相インダクションモータについて説明したが、誘導電動機としてはこれに限定されることはない。
【0029】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【0030】
【発明の効果】
本発明に係る誘導電動機によれば、固定子を軸線方向に長くしても、この長くした分に形成された回転磁界に対し、この回転磁界を横切る棒導体の長さを短くすることができるので、回転子の二次抵抗を増加させずに出力の増加を図ることができる。
また、各棒導体を軸線方向に対して所定角度を有するように傾斜する場合には、棒導体の製造時の製造不良等をおこしにくくなるので、確実に特に低速領域におけるトルク特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる誘導電動機を側面から見た断面図である。
【図2】軸線方向からみた固定子の断面図である。
【図3】棒導体の傾斜の向きを各単位回転子毎に変えた回転子の分解斜視図である。
【図4】従来の誘導電動機と本発明の誘導電動機のトルク特性と効率特性を示すグラフである。
【図5】従来の誘導電動機を側面から見た断面図である。
【図6】従来の誘導電動機の固定子を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
30 誘導電動機
32 ハウジング
33,39 軸受保持部
34 固定子
36 回転子
36a,36b   単位回転子
37,40 軸受
38 ブラケット
41 インシュレータ
42 回転軸
44 コイル
44a 主コイル
44b 補助コイル
46 固定子コア
47 歯部
48 回転子コア
52a,52b   エンドリング
51 溝
54 棒導

Claims (6)

  1. 回転軸の周囲に設けられた篭形の回転子と、
    該回転子の周囲に設けられた固定子コアの歯部に、マグネットワイヤが巻回されて構成された固定子とを具備する誘導電動機において、
    前記回転子は、回転軸の軸線方向に沿って複数個連結した単位回転子から構成され、
    前記単位回転子は、
    回転子コアと、
    導電材料で形成され、前記回転子コアの軸線方向の両端部の端面に取付けられた2個のエンドリングと、
    導電材料で形成され、前記回転子コアの周囲表面において該両エンドリング同士を接続するように、前記回転子コアの周囲表面に軸線方向に沿って設けられた複数本の棒状の棒導体とを具備することを特徴とする誘導電動機。
  2. 前記各単位回転子の軸線方向の長さは、それぞれ概略等しいことを特徴とする請求項1記載の誘導電動機。
  3. 前記単位回転子に設けられた各棒導体は、軸線方向に対して所定角度を有するように傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の誘導電動機。
  4. 回転軸の周囲に設けられた篭形の回転子と、
    該回転子の周囲に設けられた固定子コアの歯部に、マグネットワイヤが巻回されて構成された固定子とを具備する誘導電動機において、
    前記回転子は、
    回転子コアと、
    導電材料で形成され、前記回転子コアの軸線方向の両端部の端面に取付けられた2個のエンドリングと、
    導電材料で形成され、前記回転子コアの周囲表面において該両エンドリング同士を接続するように、前記回転子コアの周囲表面に軸線方向に沿って設けられた複数本の棒状の棒導体と、
    該各棒導体および前記回転子コアを軸線方向の中途部で分断する1または2以上の導体板とを有することを特徴とする誘導電動機。
  5. 前記導体板は、前記各棒導体および前記回転子コアのそれぞれ概略等しい長さに分断されるような位置に設けられていることを特徴とする請求項4記載の誘導電動機。
  6. 前記回転子に設けられた各棒導体は、軸線方向に対して所定角度を有するように傾斜して設けられていることを特徴とする請求項4または5記載の誘導電動機。
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