JP2004006240A - イオン伝導性材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】イオン伝導度や水への耐性が向上し、しかも電極等への腐食性が抑制され、経時的に安定であることが期待できるイオン伝導性材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1);
Figure 2004006240

(式中、Xは、ホウ素、窒素、アルミニウム、ケイ素、リン、砒素及びセレンからなる群より選ばれる1種類以上の元素を表す。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類金属からなる群より選ばれる1種類以上の元素を表す。M及びMは、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c及びdは、0以上の整数である。)で表される化合物を含んでなるイオン伝導性材料。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン伝導性材料に関する。詳しくは、電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適なイオン伝導性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオン伝導性材料は、イオン伝導による各種の電池等において必須のものであり、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスに用いられている。これらでは、一般に一対の電極とその間に形成されたイオン伝導体から電池が構成されることになる。イオン伝導体としては、電解液や固体電解質が挙げられ、有機溶媒や高分子化合物又はこれらの混合物に電解質を溶解したものが使用されている。このようなイオン伝導体においては、電解質が溶解することにより、カチオンとアニオンとに解離してイオン伝導することになる。
【0003】
このようなイオン伝導性材料を用いた電池としては、ラップトップ型やパームトップ型コンピューター、移動電話、ビデオカメラ等の携帯電子用品の普及に従って、軽く強力なものの必要性が増加している。このような電池の需要増大やこれに付随する環境問題に関わる観点から、長い寿命を有する二次電池の開発が重要性を増している。二次電池としては、リチウム(イオン)二次電池が用いられており、これらのリチウム(イオン)二次電池の大部分では、電解質塩として、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)が使用されている。
【0004】
一般的なリチウム(イオン)二次電池の一形態の断面模式図を図1に示す。このようなリチウム(イオン)二次電池においては、活性物質から形成される正極と負極とを有し、LiPF等のリチウム塩を溶質として溶解した有機溶媒により構成される電解液により、正極と負極との間にイオン伝導体が形成されている。この場合、充電時には、負極においてCLi→6C+Li+eの反応が起こり、負極表面で発生した電子(e)は、電解液中をイオン伝導して正極表面に移動し、正極表面では、CoO+Li+e→LiCoOの反応が起こり、負極から正極へ電流が流れることになる。放電時には、充電時の逆反応が起こり、正極から負極へ電流が流れることになる。
【0005】
しかしながら、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)のようなリチウム塩は、熱安定性が低く加水分解しやすい化合物であるため、この塩を用いたリチウム(イオン)電池は非常に複雑なものとなり、また、非常に高価な方法によって製造されることになる。また、このようなリチウム塩の感受性は、リチウム(イオン)電池の寿命及び性能を減少させたり、高温等の極端な条件下では、それらの使用を損なわせたりすることになる。
【0006】
電池の電解質塩として、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド及びリチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタニド塩を使用する技術が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。これらの塩化合物は両方共に、高度のアノード安定性を示し、有機炭酸塩と共に高導電性を有する溶液を形成する。しかしながら、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドは、リチウム電池のカソード末端導線として機能するアルミニウム金属を、相当に不動態化しないことから、この点において工夫の余地があった。
【0007】
シアノ置換メチド及びアミドを含むシアノ置換塩に関し、N−シアノ置換アミド、N−シアノ置換スルホンアミド、1,1,1−ジシアノ置換スルホニルメチド及び1,1,1−ジシアノアシルメチドから成る群から選択される少なくとも一種の塩とマトリックス材料とを含む電解質が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この電解質においては、粉末の形態である塩を調製し、これをマトリックス材料である有機溶媒に溶解して液体電解質としたり、固体ポリマー電解質としたりすることとなる。また、有機マトリックス中に伝導種となるイオンドーパントを含有する固体伝導性材料に関し、例えば、有機マトリックスとしてN−メチル−N−プロピルピロリジウムのジシアノアミド塩を、イオンドーパントとしてLiSOCFを用いたものが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、これらの技術においては塩の構造において、優れた基本性能を発揮する電気化学デバイスのイオン伝導体を構成する材料とするための工夫の余地があった。
【0008】
またカチオン性部分M+mと結合するアニオン性部分を含むイオン性化合物に関し、カチオン性部分のMは、ヒドロキソニウム、ニトロソニウムNO、アンモニウムNH 、原子価mを有する金属カチオン、原子価mを有する有機カチオン又は原子価mを有する有機金属カチオンであり、アニオン性部分は、式R−Y−C(C≡N) 又はZ−C(C≡N) のうちの1つに相当するものであり、このイオン性化合物は、イオン伝導性材料等に用いることができることが開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、このようなイオン性化合物においては、アニオン性部分について、アニオンとなる元素が炭素原子(C)のみにより構成されるものであり、優れた基本性能を発揮するイオン伝導体を構成する好適な材料とするための工夫の余地があった。
【0009】
【特許文献1】
米国特許第4505997号明細書
【特許文献2】
米国特許第9202966号明細書
【特許文献3】
特表2002−523879号公報(第1−7頁、第30−43頁)
【特許文献4】
国際公開第01/15258号パンフレット(第14−17頁)
【特許文献5】
特表2000−508677号公報(第1−12頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、イオン伝導度や水への耐性が向上し、しかも電極等への腐食性が抑制され、経時的に安定であることが期待できるイオン伝導性材料を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、イオン伝導体を構成するイオン伝導性材料について種々検討したところ、シアノ基と金属原子とを有する特定構造の化合物を含んでなる材料がフッ素原子を有さないこと等に起因して電極等への腐食性を抑制し、また、水への耐性に優れることから、経時的に安定に機能することが期待できるものであり、イオン伝導体を構成する電解質として機能することができると共に、固体電解質として機能することができることを見いだした。また、有機化合物を含んでなる形態であると、本発明の作用効果をより充分に発揮することができるためイオン伝導体により好適となること、更に、有機化合物が重合体や有機溶媒であると、電解液や固体電解質としてイオン伝導体により好適となることを見いだした。また、上記化合物がリチウムを有する構造であると、リチウムイオン電池等のイオン伝導体の電解質として好適となること、窒素を有する構造であると、イオン伝導度がより向上することを見いだし、本発明に到達したものである。
【0012】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0013】
【化2】
Figure 2004006240
【0014】
(式中、Xは、ホウ素、窒素、アルミニウム、ケイ素、リン、砒素及びセレンからなる群より選ばれる1種類以上の元素を表す。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類金属からなる群より選ばれる1種類以上の元素を表す。M及びMは、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c及びdは、0以上の整数である。)で表される化合物を含んでなるイオン伝導性材料である。
以下に、本発明を詳述する。
【0015】
本発明のイオン伝導性材料は、上記一般式(1)で表される化合物を含んでなるものである。イオン伝導性材料とは、イオン伝導体を構成する電解液において、電解液を構成する溶媒及び/又は電解質の材料(電解液用材料)として、また、固体電解質の材料(電解質用材料)として電気化学デバイスのイオン伝導体に好適に用いることができるものである。これらの中でも、本発明のイオン伝導性材料は、上記一般式(1)で表されるシアノ基を有する化合物が常温で固体となるものであることから、電解液を構成する電解質や、(高分子)固体電解質の材料として好適であり、本発明の作用効果を充分に発揮することができることとなる。
【0016】
本発明のイオン伝導性材料において、上記一般式(1)で表されるシアノ基を有する化合物は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記一般式(1)において、Xは、ホウ素、窒素、アルミニウム、ケイ素、リン、砒素及びセレンからなる群より選ばれる1種類以上の元素を表す。これらの中でも、好ましい形態としては、窒素である。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類金属からなる群より選ばれる1種類以上の元素を表す。これらの中でも、好ましい形態としては、リチウムである。
またM及びMは、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表すが、それぞれ独立に、−S−、−O−、−SO−、−CO−から選ばれる連結基であり、好ましくは、−SO−、−CO−である。aは、1以上の整数であり、b、c及びdは、0以上の整数であるが、a及びdは、元素Xの価数によって決まることになり、例えば、Xが窒素原子の場合、a=2及びd=0、又は、a=1及びd=1である。すなわち本発明の好ましい形態としては、下記一般式(2)で表される化合物(式中、X及びMは、上記一般式(1)と同様である。nは、2以上の正の整数である。)を必須とすることであり、より好ましくは、ジシアノアミドアニオンの金属塩を必須とすることであり、更に好ましくは、ジシアノアミドアニオンのリチウム塩を必須とすることである。
【0017】
【化3】
Figure 2004006240
【0018】
上記一般式(1)で表されるシアノ基を有する化合物としては、ジシアノアミドアニオンのリチウム塩の他にも、LiSi(CN)、LiB(CN)、LiAl(CN)、LiP(CN)、LiAs(CN)や、その他のアルカリ/アルカリ土類金属との組合せ(その他のアルカリ/アルカリ土類金属の塩)が好適である。
【0019】
本発明のイオン伝導性材料中におけるこのような化合物の存在量としては、イオン伝導性材料の用途等により適宜設定することになるが、例えば、電解液とする場合、イオン伝導性材料100質量%に対して、一般式(1)で表されるシアノ基を有する化合物が0.01質量%以上であることが好ましく、また、100質量%以下が好ましい。より好ましくは、0.1質量%以上であり、また、50質量%以下である。高分子固体電解質とする場合、イオン伝導性材料100質量%に対して、一般式(1)で表されるシアノ基を有する化合物が0.01質量%以上であることが好ましく、また、100質量%以下が好ましい。より好ましくは、0.1質量%以上であり、また、50質量%以下である。
【0020】
本発明のイオン伝導性材料は、更に、有機化合物を含んでなることが好ましい。有機化合物としては、1種又は2種以上を用いることができるが、重合体及び/又は有機溶媒であることが好ましい。本発明のイオン伝導性材料は、常温で固体となるものであるため、固体電解質として機能することができるものであるが、重合体を含むと、高分子固体電解質として好適に用いることができるものとなる。有機溶媒を含むと、イオン伝導度がより向上することになり、また、電解液として好適に用いることができるものとなる。
【0021】
上記重合体としては、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のポリビニル系重合体;ポリオキシメチレン:ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系重合体;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体;ポリスチレン、ポリフォスファゼン類、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート系重合体、アイオネン系重合体が好適である。
【0022】
本発明のイオン伝導性材料を高分子固体電解質とする場合、重合体の存在量としては、イオン伝導性材料1質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、また、1000質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、成形性等の重合体の性能を充分発揮できなくなるおそれがあり、1000質量%を超えると、イオン伝導度低下となるおそれがある。より好ましくは、1質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0023】
上記有機溶媒としては、本発明のイオン伝導性材料を構成する成分との相溶性が良好であり、誘電率が大きく、一般式(1)で表されるシアノ基を有する化合物や電解質塩の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、電気化学的安定範囲が広い化合物が好適である。また、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)がより好ましい。
このような有機溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類や炭酸ビニレン等の炭酸エステル類;プロピオン酸メチルや蟻酸メチル等の脂肪族エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等の脂肪族ニトリル類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;スルホラン等の硫黄化合物;ニトロメタン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、リン酸エステル類が好適である。これらの中でも、炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類が好ましく、カーボネート類が特に好ましい。上記有機溶媒は、1種を用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0024】
本発明のイオン伝導性材料を電解液とする場合、有機溶媒の存在量としては、イオン伝導性材料1質量%に対して、1質量%以上であることが好ましく、また、1000質量%以下であることが好ましい。1質量%未満であると、粘度等の問題で使用上困難となるおそれがあり、1000質量%を超えると、イオン伝導度低下となるおそれがある。より好ましくは、5質量%以上であり、また、500質量%以下である。
【0025】
上記有機化合物としては、溶融塩を用いることができる。本発明での溶融塩とは室温から80℃の温度範囲において液体状態を示すものである。本発明における溶融塩のカチオンとしては、下記一般式(3);
【0026】
【化4】
Figure 2004006240
【0027】
(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表す。Rは、同一若しくは異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。sは、3、4又は5であり、元素Lの価数によって決まる値である。)で表されるオニウムカチオンが好適であり、具体的には下記一般式;
【0028】
【化5】
Figure 2004006240
【0029】
(式中、Rは、一般式(3)と同様である。)で表されるものが好適である。このようなオニウムカチオンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、下記のようなオニウムカチオンが好ましいものである。
(1)下記一般式;
【0030】
【化6】
Figure 2004006240
【0031】
で表される11種類の複素環オニウムカチオン。
(2)下記一般式;
【0032】
【化7】
Figure 2004006240
【0033】
で表される5種類の不飽和オニウムカチオン。
(3)下記一般式;
【0034】
【化8】
Figure 2004006240
【0035】
で表される9種類の飽和環オニウムカチオン。
上記一般式中、R〜R12は、同一若しくは異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。
(4)RがC〜Cのアルキル基である鎖状オニウムカチオン。
このようなオニウムカチオンの中でも、より好ましくは、一般式(3)におけるLが窒素原子であるものであり、更に好ましくは、下記一般式;
【0036】
【化9】
Figure 2004006240
【0037】
(式中、R〜R12は、上記と同様である。)で表される4種類のオニウムカチオンである。
上記R〜R12の有機基としては、水素原子、フッ素原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基、スルフィド基や、直鎖、分岐鎖又は環状で、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基、炭化フッ素基等が好ましく、より好ましくは水素原子、フッ素原子、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜8の炭化水素基である。
【0038】
本発明における溶融塩のアニオンとしては、ハロゲンアニオン(フルオロアニオン、クロロアニオン、ブロモアニオン、ヨードアニオン)、4フッ化ホウ酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、6フッ化ヒ酸アニオン、下記一般式(4)で表されるシアノ基含有アニオン、下記一般式(5)で表されるスルホニルイミドアニオン、下記一般式(6)で表されるスルホニルメチドアニオン、有機カルボン酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸等のアニオン)が好適である。
【0039】
【化10】
Figure 2004006240
【0040】
上記一般式(4)中、Xは、ホウ素、炭素、窒素、酸素、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、砒素又はセレンを表す。M及びMは、一般式(1)のM及びMと同様である。iは、1以上の整数であり、j、k及びlは、0以上の整数である。i及びlは、元素Yの価数によって決まることになる。
【0041】
【化11】
Figure 2004006240
【0042】
上記一般式(5)中、R13及びR14は、同一若しくは異なって、エーテル基を1又は2個有してもよい炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。
【0043】
【化12】
Figure 2004006240
【0044】
上記一般式(6)中、R13、R14及びR15は、同一若しくは異なって、エーテル基を1又は2個有してもよい炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。また、このようなアニオンの中でも一般式(4)で示されるシアノ基含有アニオンが好適であり、このようなシアノ基含有アニオンの好ましい形態としては、下記一般式(7)で表されるアニオンである。
【0045】
【化13】
Figure 2004006240
【0046】
上記一般式(7)中、Yは、一般式(4)と同様である。mは、正の整数である。これらの中でも、Yの好ましい形態としては、硫黄、窒素である。また、mは、元素Yの価数によって決まることになる。
【0047】
このような有機化合物は、一般式(4)で表されるアニオンを必須とすることにより、イオン伝導度に優れることから、イオン伝導体を構成する材料に好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。また、このようなアニオンを必須とする有機化合物は、常温で溶融した状態を安定に保つ常温溶融塩となり、溶媒を含んでいないため、高温中で外部に揮発することがなく、長期間に耐える電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として好適なものとなる。中でも、電解液を構成する溶媒や、高分子固体電解質の材料として好適であり、上記一般式(1)で表されるシアノ基を有する化合物と共にこのような常温溶融塩を含むイオン伝導体は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0048】
本発明のイオン伝導性材料中における溶融塩の存在量としては、イオン伝導性材料1質量%に対して、該溶融塩が1質量%以上であることが好ましく、また、1000質量%以下が好ましい。より好ましくは、5質量%以上であり、また、500質量%以下である。
【0049】
本発明のイオン伝導性材料において有機化合物として上述したような溶融塩を用いる場合においては、イオン伝導性材料が本発明における一般式(1)で表される化合物と溶融塩とを含有することとなるが、本発明における一般式(1)で表される化合物と溶融塩との混合物の粘度が、300mPa・s以下であるイオン伝導性材料であることが好ましい。
上記混合物において、粘度が300mPa・sを超えると、イオン伝導度が充分に向上されたものとはならないこととなる。好ましくは、200mPa・s以下であり、より好ましくは、100mPa・s以下である。
上記粘度の測定方法としては、特に限定はないが、25℃において、TV−20形粘度計 コープレートタイプ(トキメック社製)を用いて測定する方法が好適である。
【0050】
本発明のイオン伝導性材料は、イオン伝導体において、電解液を構成する電解質や固体電解質として機能することができるものであるが、他の電解質塩を含んでいてもよい。電解質塩としては、電荷でキャリアーとしたいイオンを含んだ電解質を用いればよく、1種又は2種以上を用いることができるが、電解液中や高分子固体電解質中での解離定数が大きいことが好ましく、LiCFSO、NaCFSO、KCFSO等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO等のパーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiPF、NaPF、KPF等のヘキサフロロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiClO、NaClO等の過塩素酸アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiBF、NaBF等のテトラフロロ硼酸塩;LiAsF、LiI、NaI、NaAsF、KI等のアルカリ金属塩;過塩素酸テトラエチルアンモニウム等の過塩素酸の四級アンモニウム塩;(CNBF等のテトラフロロ硼酸の四級アンモニウム塩、(CNPF等の四級アンモニウム塩;(CHP・BF、(CP・BF等の四級ホスホニウム塩が好適である。これらの中でも、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が好適である。また、有機溶媒中での溶解性、イオン伝導度から、LiPF、LiBF、LiAsF、パーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、四級アンモニウム塩が好ましい。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
【0051】
本発明のイオン伝導性材料は、本発明の作用効果を奏する限り、上記以外の成分1種又は2種以上を含んでいてもよい。例えば、各種無機酸化物微粒子を含むことにより、複合電解質としても使用でき、これにより、強度、膜厚均一性が改善するばかりでなく、無機酸化物と上述した重合体間に微細な空孔が生じることになり、特に溶媒を添加した場合には空孔内にフリーの電解液が複合電解質内に分散することになり、強度改善効果を損ねることなく、逆にイオン伝導度、移動度を増加させることもできる。
【0052】
上記無機酸化物微粒子としては、非電子伝導性、電気化学的に安定なもの好適であり、またイオン伝導性を有するものがより好ましい。このような微粒子としては、α、β、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化チタン、チタン酸バリウム、ハイドロタルサイト等のイオン伝導性又は非電導性セラミックス微粒子が好適である。
【0053】
上記高分子固体電解質中の電解質含有液の保有量を多くし、イオン伝導性、移動度を増加させるという目的では、無機酸化物微粒子の比表面積はできるだけ大きいことが好ましく、BET法で5m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましい。このような無機酸化物微粒子の結晶粒子径としてはイオン伝導性材料を構成する他の成分と混合できればよいが、大きさ(平均結晶粒径)としては0.01μm以上が好ましく、また、20μm以下が好ましい。より好ましくは、0.01μm以上であり、また、2μm以下である。
上記無機酸化物微粒子の形状としては、球形、卵形、立方体状、直方体状、円筒、棒状等の種々の形状のものを用いることができる。
【0054】
上記無機酸化物微粒子の添加量としては、高分子固体電解質に対して50質量%以下が好ましい。50質量%を超えると、逆に高分子固体電解質の強度やイオン伝導性を低下させたり、成膜しづらくなったりするおそれがある。より好ましくは、0.1質量%以上であり、また、30質量%以下である。
【0055】
本発明のイオン伝導性材料は、0℃におけるイオン伝導度が0.5mS/cm以上であることが好ましい。0℃におけるイオン伝導度が0.5mS/cm未満であると、本発明のイオン伝導性材料を用いてなるイオン伝導体が、優れたイオン伝導度を保って経時的に安定に機能することが充分にはできなくなるおそれがある。より好ましくは、2.0mS/cm以上である。
上記イオン伝導度の測定方法としては、SUS電極を用いたインピーダンスアナライザーHP4294A(商品名、東陽テクニカ社製)を用いて行う複素インピーダンス法により測定する方法が好適である。
【0056】
本発明のイオン伝導性材料は、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適なものであり、本発明のイオン伝導性材料を用いてなる電気デバイスは、本発明の好ましい実施形態の1つである。これらの中でも、特にリチウム(イオン)一次及び二次電池、電解コンデンサ又は電気二重層キャパシタに好適に適用することができる。
以下に、本発明の実施形態として、イオン伝導性材料をイオン伝導体の材料として用いてなる電気化学デバイスについて説明する。
【0057】
本発明のイオン伝導性材料を用いて電気化学デバイスを構成する場合、電気化学デバイスの好ましい形態としては、基本構成要素として、イオン伝導体、負極、正極、集電体、セパレータ及び容器を有するものである。
【0058】
上記イオン伝導体としては、電解質と有機溶媒又は重合体の混合物が好適である。有機溶媒を用いれば、一般にこのイオン伝導体は電解液と呼ばれ、重合体を用いれば、高分子固体電解質と呼ばれるものになる。高分子固体電解質には可塑剤として有機溶媒を含有するものも含まれる。本発明のイオン伝導性材料は、このようなイオン伝導体において、電解液における電解質や有機溶媒の代替として、また、(高分子)固体電解質として好適に適用することができ、本発明のイオン伝導性材料をイオン伝導体の材料として用いてなる電気化学デバイスでは、これらのうちの少なくとも1つが、本発明のイオン伝導性材料により構成されることになる。これらの中でも、電解液における電解質、又は、(高分子)固体電解質として用いることが好ましい。
【0059】
上記有機溶媒としては、本発明のイオン伝導性材料を溶解できる非プロトン性の溶媒であればよく、上述した有機溶媒と同様のものが好適である。ただし、2種類以上の混合溶媒にする場合、電解質がLiイオンを含むものである場合は、これらの有機溶媒のうち誘電率が20以上の非プロトン性溶媒と誘電率が10以下の非プロトン性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより電解液を調製することが好ましい。特にリチウム塩を用いる場合には、ジエチルエーテル、ジメチルカーボネート等の誘電率が10以下の非プロトン性溶媒に対する溶解度が低く単独では充分なイオン伝導度が得られず、また、逆に誘電率20以上の非プロトン性溶媒単独では溶解度は高いもののその粘度も高いため、イオンが移動しにくくなりやはり充分なイオン伝導度が得られないことになる。これらを混合すれば、適当な溶解度と移動度を確保することができ充分なイオン伝導度を得ることができる。
【0060】
上記電解質を溶解する重合体としては、非プロトン性の重合体であればよく、上述した重合体1種又は2種以上を好適に用いることができる。これらの中でも、ポリエチレンオキシドを主鎖若しくは側鎖にもつ重合体又は共重合体、ポリビニリデンフロライドの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸エステル重合体、ポリアクリロニトリルが好適である。これらの重合体に可塑剤を加える場合は、上記の非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0061】
上記イオン伝導体中における電解質濃度としては、0.01mol/dm以上が好ましく、また、飽和濃度以下が好ましい。0.01mol/dm未満であると、イオン伝導度が低いため好ましくない。より好ましくは、0.1mol/dm以上、また、1.5mol/dm以下である。
【0062】
上記負極材料としては、リチウム電池の場合、リチウム金属やリチウムと他の金属との合金が好適である。また、リチウムイオン電池の場合、重合体、有機物、ピッチ等を焼成して得られたカーボンや天然黒鉛、金属酸化物等のインターカレーションと呼ばれる現象を利用した材料が好適である。電気二重層キャパシタの場合、活性炭、多孔質金属酸化物、多孔質金属、導電性重合体が好適である。
【0063】
上記正極材料としては、リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn等のリチウム含有酸化物;TiO、V、MoO等の酸化物;TiS、FeS等の硫化物;ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子が好適である。電気二重層キャパシタの場合、活性炭、多孔質金属酸化物、多孔質金属、導電性重合体が好適である。
【0064】
以下に本発明のイオン伝導性材料を用いてなる(1)リチウム二次電池、(2)電解コンデンサ、及び、(3)電気二重層キャパシタについてより詳しく説明する。
(1)リチウム二次電池
リチウム二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータ及び本発明のイオン伝導性材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されるものである。この場合、本発明のイオン伝導性材料には電解質としてリチウム塩が含有されていることになる。このようなリチウム二次電池としては、水電解質以外のリチウム二次電池である非水電解質リチウム二次電池であることが好ましい。リチウム二次電池の一形態の断面模式図を図1に示す。このリチウム二次電池は、後述する負極活物質としてコークスを用い、正極活物質としてCoを含有する化合物を用いたものであるが、このようなリチウム二次電池おいて、充電時には、負極においてCLi→6C+Li+eの反応が起こり、負極表面で発生した電子(e)は、電解液中をイオン伝導して正極表面に移動し、正極表面では、CoO+Li+e→LiCoOの反応が起こり、負極から正極へ電流が流れることになる。放電時には、充電時の逆反応が起こり、正極から負極へ電流が流れることになる。このように、イオンによる化学反応により電気を蓄えたり、供給したりすることとなる。
【0065】
上記負極としては、負極活物質、負極用導電剤、負極用結着剤等を含む負極合剤を負極用集電体の表面に塗着して作製されるものであることが好ましい。負極合剤は、導電剤や結着剤の他にも各種添加剤を含有してもよい。
上記負極活物質としては、金属リチウム、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料等が好適である。上記リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料としては、金属リチウム;熱分解炭素;ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス;グラファイト;ガラス状炭素;フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したものである有機高分子化合物焼成体;炭素繊維;活性炭素等の炭素材料;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアセン等のポリマー;Li4/3Ti5/3、TiS等のリチウム含有遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物;アルカリ金属と合金化するAl、Pb、Sn、Bi、Si等の金属;アルカリ金属を格子間に挿入することのできる、AlSb、MgSi、NiSi等の立方晶系の金属間化合物や、Li3−fN(G:遷移金属)等のリチウム窒素化合物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる金属リチウムや炭素材料がより好ましい。
【0066】
上記負極用導電剤は、電子伝導性材料であればよく、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、銅、ニッケル等の金属粉末;ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、人造黒鉛、アセチレンブラック、炭素繊維がより好ましい。負極用導電剤の使用量としては、負極活物質100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1〜30重量部である。また、負極活物質は電子伝導性を有するため、負極用導電剤を用いなくてもよい。
【0067】
上記負極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体がより好ましい。
【0068】
上記負極用集電体としては、電池の内部において化学変化を起こさない電子伝導体であればよく、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン等を付着又は被膜させたもの等が好適である。これらの中でも、銅や銅を含む合金がより好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの負極用集電体の表面を酸化して用いることもできる。更に、集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。負極用集電体の形状としては、フォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体等が好適である。集電体の厚さとしては、1〜500μmが好適である。
【0069】
上記正極としては、正極活物質、正極用導電剤、正極用結着剤等を含む正極合剤を正極用集電体の表面に塗着して作製されるものであることが好ましい。正極合剤は、導電剤や結着剤の他にも各種添加剤を含有してもよい。
上記正極活物質としては、金属Li、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMn、LiMn2−y;MnO、V、Cr(g及びhは、1以上の整数)等のリチウムを含まない酸化物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記Jは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb及びBから選ばれた少なくとも1種の元素を表す。また、xは、0≦x≦1.2であり、yは、0≦y≦0.9であり、zは、2.0≦z≦2.3であり、xは、電池の充放電により増減することとなる。また、正極活物質としては、遷移金属カルコゲン化物、リチウムを含んでいてもよいバナジウム酸化物やニオブ酸化物、共役系ポリマーからなる有機導電性物質、シェブレル相化合物等を用いてもよい。正極活物質粒子の平均粒径としては、1〜30μmであることが好ましい。
【0070】
上記正極用導電剤としては、用いる正極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であればよく、上述した負極用導電剤と同様のもの;アルミニウム、銀等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、人造黒鉛、アセチレンブラック、ニッケル粉末がより好ましい。正極用導電剤の使用量としては、正極活物質100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは、1〜30重量部である。カーボンブラックやグラファイトを用いる場合には、正極活物質100重量部に対して2〜15重量部とすることが好ましい。
【0071】
上記正極用結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、上述した負極用結着剤におけるスチレンブタジエンゴム以外のものや、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0072】
上記正極用集電体としては、用いる正極活物質の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であればよく、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂、アルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、チタン等を付着又は被膜させたもの等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金が好ましい。また、これらの正極用集電体の表面を酸化して用いることもできる。更に、集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。正極用集電体の形状及び厚さとしては、上述した負極集電体と同様である。
【0073】
上記セパレータは、大きなイオン透過度と、所定の機械的強度を有する絶縁性の微多孔性薄膜であることが好ましく、一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗をあげる機能を有するものであることが好ましい。材質としては、耐有機溶剤性と疎水性の点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるオレフィン系ポリマー又はガラス繊維等からなるシート、不織布又は織布等が好適である。セパレータが有する細孔の孔径としては、電極から脱離した正極活物質や負極活物質、結着剤、導電剤が透過しない範囲であることが好ましく、0.01〜1μmであることが好ましい。セパレータの厚さとしては、10〜300μmであることが好ましい。また、空隙率としては、30〜80%であることが好ましい。
【0074】
上記リチウム二次電池としては、ポリマー材料に、電解液を保持させたゲルを正極合剤又は負極合剤に含ませたり、電解液を保持するポリマー材料からなる多孔性のセパレータを正極又は負極と一体化することで構成されるものであってもよい。上記ポリマー材料としては、電解液を保持できるものであればよく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体等が好ましい。
上記リチウム二次電池の形状としては、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車等に用いる大形等が挙げられる。
【0075】
(2)電解コンデンサ
電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔、陽極箔と陰極箔との間に挟まれたセパレータである電解紙、リード線及び本発明のイオン伝導性材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものである。電解コンデンサの一形態の斜視図を図2(a)に示す。このような電解コンデンサとしては、アルミ電解コンデンサが好適である。アルミ電解コンデンサの一形態の断面模式図を図2(b)に示す。このようなアルミ電解コンデンサとしては、電解エッチングで細かな凹凸を作って粗面化したアルミ箔の表面に電解陽極酸化によって形成した薄い酸化被膜(酸化アルミニウム)を誘電体とするものが好適である。
【0076】
(3)電気二重層キャパシタ
電気二重層キャパシタは、負極、正極及び本発明のイオン伝導性材料を用いてなるイオン伝導体を基本構成要素として構成されているものであり、好ましい形態としては、対向配置した正極及び負極からなる電極素子に、イオン伝導体である電解液を含ませたものである。このような電気二重層キャパシタの一形態の断面模式図及び電極表面の拡大模式図を図3に示す。
【0077】
上記正極及び負極は、分極性電極であり、電極活物質として活性炭繊維、活性炭粒子の成形体、活性炭粒子等の活性炭と、導電剤と、バインダー物質とから構成され、薄い塗布膜、シート状又は板状の成形体として使用することが好適である。このような構成を有する電気二重層キャパシタにおいては、図3の拡大図に示されるように、イオンの物理的な吸・脱着により分極性電極と電解液との界面に生成する電気二重層に電荷が蓄えられることとなる。
【0078】
上記活性炭としては、平均細孔径が2.5nm以下であるものが好ましい。この活性炭の平均細孔径は、窒素吸着によるBET法によって測定されることが好ましい。活性炭の比表面積としては、炭素質種による単位面積あたりの静電容量(F/m)、高比表面積化に伴う嵩密度の低下等により異なるが、窒素吸着によるBET法により求めた比表面積としては、500〜2500m/gが好ましく、1000〜2000m/gがより好ましい。
【0079】
上記活性炭の製造方法としては、植物系の木材、のこくず、ヤシ殻、パルプ廃液、化石燃料系の石炭、石油重質油、又は、それらを熱分解した石炭及び石油系ピッチ、石油コークス、カーボンアエロゲル、メソフェーズカーボン、タールピッチを紡糸した繊維、合成高分子、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イオン交換樹脂、液晶高分子、プラスチック廃棄物、廃タイヤ等の原料を炭化した後、賦活して製造する賦活法を用いることが好ましい。
【0080】
上記賦活法としては、(1)炭化された原料を高温で水蒸気、炭酸ガス、酸素、その他の酸化ガス等と接触反応させるガス賦活法、(2)炭化された原料に、塩化亜鉛、リン酸、リン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫化カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カルシウム、ホウ酸、硝酸等を均等に含浸させて、不活性ガス雰囲気中で加熱し、薬品の脱水及び酸化反応により活性炭を得る薬品賦活法が挙げられ、いずれを用いてもよい。
【0081】
上記賦活法により得られた活性炭は、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガス雰囲気下で、好ましくは500〜2500℃、より好ましくは700〜1500℃で熱処理することが好ましく、不要な表面官能基を除去したり、炭素の結晶性を発達させて電子伝導性を増加させてもよい。活性炭の形状としては、破砕、造粒、顆粒、繊維、フェルト、織物、シート状等が挙げられる。粒状の場合においては、電極の嵩密度の向上、内部抵抗の低減という点で、平均粒子径は30μm以下であることが好ましい。
上記電極活物質としては、活性炭以外にも上述の高比表面積を有する炭素材料を用いてもよく、例えば、カーボンナノチューブやプラズマCVDにより作製したダイヤモンド等を用いてもよい。
【0082】
上記導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテニウム、酸化チタン、アルミニウム、ニッケル等の金属ファイバー等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、少量で効果的に導電性が向上する点で、アセチレンブラック及びケッチェンブラックがより好ましい。導電剤の配合量としては、活性炭の嵩密度等によっても異なるが、活性炭を100質量%とすると、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0083】
上記バインダー物質としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシルメチルセルロース、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。バインダー物質の配合量としては、活性炭の種類と形状等によっても異なるが、活性炭を100質量%とすると、0.5〜30質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。
【0084】
上記正極及び負極の成形方法としては、(1)活性炭とアセチレンブラックの混合物に、ポリテトラフルオロエチレンを添加混合した後、プレス成形して得る方法、(2)活性炭とピッチ、タール、フェノール樹脂等のバインダー物質を混合、成型した後、不活性雰囲気下で熱処理して焼結体を得る方法、(3)活性炭とバインダー物質又は活性炭のみを焼結して電極とする方法等が好適である。炭素繊維布を賦活処理して得られる活性炭繊維布を用いる場合は、バインダー物質を使用せずにそのまま電極として使用してもよい。
【0085】
上記電気二重層キャパシタには、セパレータを分極性電極に挟み込む方法や、保持手段を用いることにより分極性電極を間隔を隔てて対向させる方法等により、分極性電極が接触や短絡することを防ぐことが好ましい。セパレータとしては、使用温度域において溶融塩等と化学反応を起こさない多孔性の薄膜を用いることが好適である。セパレータの材質としては、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス繊維等が好適である。
上記電気二重層キャパシタの形状としては、コイン型、巻回型、角型、アルミラミネート型等が挙げられ、いずれの形状としてもよい。
【0086】
本発明によるイオン伝導性材料を用いてなるリチウム二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスは、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の各種用途に好適に用いることができるものである。
【0087】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に記載の「部」は、「重量部」を示す。
【0088】
実施例1〔リチウムジシアノアミドの合成〕
300mlのオートクレーブ中に、ジシアノアミドナトリウム31.5g(0.35mol)、塩化リチウム10.0g(0.24mol)、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)140gを仕込み、系内をスターラーで攪拌しながら、該オートクレーブを、温度110℃の油浴に48時間浸漬させた。次いで、THF不溶部をろ過分離し、ロータリーエバポレーターを用いて、揮発分を除去した後、残渣を110℃、減圧下で5時間、乾燥させ、リチウムジシアノアミドを得た(14.6g、収率85%)。その後、精製のため、アセトニトリルを用いて再結晶を行い、白色の板状結晶が得られ、120℃、10時間、減圧下で乾燥させた。元素分析の結果、炭素:32.8、窒素:57.5、水素0.1であった。
【0089】
実施例2〔1−メチル−3−ブチルピロリジウムジシアノアミドの合成〕
温度計、窒素ガス導入管、環流冷却管、攪拌装置、及び、滴下漏斗を備えたフラスコに、ジシアノアミド銀11.7g(67mmol)、ヨウ化1−メチル−3−ブチルピロリジウム16.4g(61mmol)、イオン交換水150gを仕込み、窒素気流下で温度を50℃に保ちながら、12時間、攪拌した。その後、イオン交換水不溶部をろ過分離し、ロータリーエバポレーターを用いて、揮発分を除去した後、反応物を得た。次いで、その反応物をジクロロメタンに溶解させ無水硫酸マグネシウムを加え、1晩放置し乾燥させた。その後、硫酸マグネシウムをろ過除去し、ジクロロメタンをロータリーエバポレーターを用いて除去し、100℃、6時間、減圧下で乾燥させ、1−メチル−3−ブチルピロリジウムジシアノアミド(以下、MBPyDCAと略す)を得た(11.4g、収率90%)。
【0090】
実施例3〜5
表1に記載の配合割合で、イオン伝導性材料を調製した。実施例3、4は材料を脱水テトラヒドロフラン中で攪拌混合することで均一の溶液を得た後、テトラヒドロフランを減圧除去することによってイオン伝導性材料を得た。実施例5はそれぞれを混合して、イオン伝導性材料を得た。
【0091】
更に、表1に電解質のイオン伝導度(60℃、S/cm)の評価結果を示す。なお、イオン伝導度の評価はSUS電極を用いてインピーダンスアナライザーSI1260(商品名、東陽テクニカ社製)を用いて複素インピーダンス法により行った。なお、表1中、PEOはポリエチレンオキシド(分子量:2万)、PCはプロピレンカーボネートを示す。また、リチウムジシアノアミドは、実施例1で合成したものであり、1−メチル−3−ブチルピロリジウムジシアノアミドは、実施例2で合成したものである。
【0092】
【表1】
Figure 2004006240
【0093】
以上の結果より本発明での電解質は優れたイオン伝導度を有することが示された。
【0094】
【発明の効果】
本発明のイオン伝導性材料は、上述の構成よりなり、イオン伝導度や水への耐性が向上し、電極等への腐食性がなく、経時的に安定であるため、イオン伝導体を構成する電解液や固体電解質の材料として好適であり、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電及び放電機構を有する電池の他、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスに好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リチウム(イオン)二次電池の一形態を示す断面模式図である。
【図2】(a)は、電解コンデンサの一形態を示す斜視図であり、(b)は、アルミ電解コンデンサの一形態を示す断面模式図である。
【図3】電気二重層キャパシタの一形態を示す断面模式図及び電極表面の拡大模式図である。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1);
    Figure 2004006240
    (式中、Xは、ホウ素、窒素、アルミニウム、ケイ素、リン、砒素及びセレンからなる群より選ばれる1種類以上の元素を表す。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類金属からなる群より選ばれる1種類以上の元素を表す。M及びMは、それぞれ同一若しくは異なって、有機連結基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c及びdは、0以上の整数である。)で表される化合物を含んでなる
    ことを特徴とするイオン伝導性材料。
  2. 更に、有機化合物を含んでなる
    ことを特徴とする請求項1記載のイオン伝導性材料。
  3. 前記有機化合物は、重合体及び/又は有機溶媒である
    ことを特徴とする請求項2記載のイオン伝導性材料。
  4. 前記一般式(1)中のMは、リチウムである
    ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のイオン伝導性材料。
  5. 前記一般式(1)中のXは、窒素である
    ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のイオン伝導性材料。
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