JP2004006107A - アルカリ蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】水素吸蔵合金の電解液との溶解反応を抑制して、高温放置時の電池内部抵抗の上昇を抑制することが可能なアルカリ蓄電池を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ蓄電池は、AB5型結晶構造のAサイトには希土類元素が含有されるとともに、該希土類元素の全質量に対して50質量%以上で80質量%以下のLaが含有されおり、このAB5型結晶構造のBサイトに含有される元素はNiを主成分とするとともに、該Niの一部が少なくともCoおよびMnで置換されており、Mnの置換量はAサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下であり、AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル以上で5.5モル以下である水素吸蔵合金を負極活物質として含有する負極を備えている。
【解決手段】本発明のアルカリ蓄電池は、AB5型結晶構造のAサイトには希土類元素が含有されるとともに、該希土類元素の全質量に対して50質量%以上で80質量%以下のLaが含有されおり、このAB5型結晶構造のBサイトに含有される元素はNiを主成分とするとともに、該Niの一部が少なくともCoおよびMnで置換されており、Mnの置換量はAサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下であり、AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル以上で5.5モル以下である水素吸蔵合金を負極活物質として含有する負極を備えている。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は負極活物質としてAB5型結晶構造を有する水素吸蔵合金を含有する負極と、正極と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池に係り、特に、負極活物質として用いられるAB5型結晶構造を有する水素吸蔵合金の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の蓄電池の市場拡大に伴って、電動工具、アシスト自転車、電気自動車等の用途が拡大し、特に、ニッケル−水素蓄電池の高出力化への要望が高まり、負極に用いられる水素吸蔵合金電極にも大電流放電特性の改良が要求されるようになった。この種の水素吸蔵合金電極に用いられる水素吸蔵合金としては、Ti−Ni系合金、LaまたはMm(ミッシュメタル:希土類元素の混合物)−Ni系合金等のAB5型結晶構造を有するものが知られている。
【0003】
ところが、このようなAB5型結晶構造を有する水素吸蔵合金を用いた電池においては、充放電サイクル寿命が短く、高率放電時の電圧低下も大きいという問題があった。そこで、例えば、特開平1−130468号公報においては、充放電サイクル寿命を向上させ、しかも大電流での放電特性を改善したニッケル−水素蓄電池が提案されるようになった。この特開平1−130468号公報において提案された水素吸蔵合金にあっては、平均粒子径が25〜35μmで最大粒子径が53μmの微細な水素吸蔵合金粒子を使用している。このため、水素吸蔵合金電極の反応面積を増大させることが可能となって、大電流での放電特性が改善されるというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、平均粒子径が25〜35μmで最大粒子径が53μmの微細な水素吸蔵合金粒子を使用した場合、表面積増加により放電性が向上する反面、電解液との接触により合金成分の溶解反応も促進されるようになる。この場合、水素吸蔵合金が電解液と接触して合金成分が溶解すると、溶解した合金成分は合金成分の酸化物または水酸化物として合金表面に再析出して、析出物が電池反応を阻害する。このため、電池内部抵抗が上昇し、放電性が低下することが明らかになった。このような合金成分の溶解反応は、温度依存性があるため、高温下で放置されることが多い電動工具、アシスト自転車、電気自動車等の大電流用途においては顕著となる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、水素吸蔵合金の電解液との溶解反応を抑制して、高温放置時の電池内部抵抗の上昇を抑制することが可能なアルカリ蓄電池を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池は、AB5型結晶構造のAサイトには希土類元素が含有されるとともに、該希土類元素の全質量に対して50質量%以上で80質量%以下のLaが含有されおり、このAB5型結晶構造のBサイトに含有される元素はNiを主成分とするとともに、該Niの一部が少なくともCoおよびMnで置換されており、Mnの置換量はAサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下であり、AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル以上で5.5モル以下である水素吸蔵合金を負極活物質として含有する負極を備えている。
【0007】
ここで、AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル未満で、Aサイトの希土類元素の全質量に対してLa量が80質量%より大きく、Mnの置換量がAサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル未満であると、水素吸蔵合金の結晶粒界が大きく成長しないことが明らかになった。このために、合金全体が不均一になって合金成分が電解液に溶解するようになり、内部抵抗が上昇することが分かった。
【0008】
一方、AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.5モルより大きく、Aサイトの希土類元素の全質量に対してLa量が50質量%未満で、Mnの置換量がAサイトの全希土類元素1モルに対して0.5モルより多いと、水素吸蔵合金の結晶粒界が大きく成長するようになるが偏析が生じるようになった。このため、偏析部から合金成分が電解液に溶解するようになって、内部抵抗上昇を抑制することができないことが分かった。
【0009】
このため、AB5型結晶構造の組成を上記範囲(Aサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル以上で5.5モル以下、Aサイトの希土類元素の全質量に対してLa量が50質量%以上で80質量%以下、Mnの置換量がAサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下)内に規定すると、水素吸蔵合金の結晶粒の偏析が抑制され、かつ合金全体の組成の均質性も向上し、平均結晶粒界径も45μm以上となる。これにより、高温放置時の電解液への合金成分の溶解反応が抑制されるようになるため、電池の内部抵抗の上昇を抑制できるようになる。
【0010】
この場合、水素吸蔵合金の平均粒径が小さくなるに伴って内部抵抗上昇率が大きくなり、逆に、水素吸蔵合金の平均粒径が大きくなるに伴って内部抵抗上昇率が小さくなるが、平均粒径が40μmよりも大きくなると、放電特性が極めて悪化することが分った。このことから、SEMのComp像の濃淡差で表される平均結晶粒界径が45μm以上の水素吸蔵合金を平均粒径が20〜40μmになるように粉砕された粉末を用いるのが好ましいということができる。
【0011】
そして、このような水素吸蔵合金を作製する場合、窒素、アルゴンまたは水素の雰囲気で、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理(アニール処理)すると、結晶粒が大きく成長して、しかも、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになる。このため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されるようになって、内部抵抗上昇率が抑制されるようになるので、熱処理は950℃以上で1150℃以下の温度で行うのが望ましい。なお、このような水素吸蔵合金を用いた電池に添加するアルカリ電解液としては、水酸化カリウム(KOH)と、水酸化ナトリウム(NaOH)と、水酸化リチウム(LiOH)からなる3成分系電解液を用いると、合金成分の電解液への溶出が抑制されるので好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
ついで、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用した場合の一実施の形態を以下に説明するが、本発明はこの実施の形態に何ら限定されるものでなく、本発明の目的を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
1.水素吸蔵合金の作製
AB5型結晶構造のAサイトの元素のモル数と、Bサイトの元素のモル数との比(B/A)が5.3となるように、市販の金属のMm(La,Ce,Ndを主成分とするミッシュメタル)、Ni、Co、Al、Mnを秤量して混合した。これを高周波溶融炉に投入して溶融させた。この後、冷却してMmNixCo0.5Al0.4Mnyからなる水素吸蔵合金の塊(インゴット)を作製した。ついで、得られた水素吸蔵合金の塊(インゴット)を粗粉砕した後、Arガスの雰囲気中(1atm)で、1000℃の温度で10時間熱処理した。熱処理後、平均粒径が30μmになるように粉砕して粒度調整を行った。なお、熱処理の雰囲気としてはArガスの雰囲気に変えて、窒素ガスあるいは水素ガスの雰囲気としてもよい。
なお、ミッシュメタル(Mm)としては希土類元素の質量に対してLa量が60質量%のものを用いた。
【0014】
ここで、Niのモル数が4.3モル(x=4.3)でMnのモル数が0.1モル(y=0.1)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.3Co0.5Al0.4Mn0.1)を合金a1とした。同様に、Niのモル数が4.2モル(x=4.2)でMnのモル数が0.2モル(y=0.2)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.2Co0.5Al0.4Mn0.2)を合金a2とし、Niのモル数が4.1モル(x=4.1)でMnのモル数が0.3モル(y=0.3)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.1Co0.5Al0.4Mn0.3)を合金a3とし、Niのモル数が4.0モル(x=4.0)でMnのモル数が0.4モル(y=0.4)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金a4とした。
【0015】
また、Niのモル数が3.9モル(x=3.9)でMnのモル数が0.5モル(y=0.5)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi3.9Co0.5Al0.4Mn0.5)を合金a5とし、Niのモル数が3.8モル(x=3.8)でMnのモル数が0.6モル(y=0.6)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi3.8Co0.5Al0.4Mn0.6)を合金a6とした。ついで、得られた水素吸蔵合金a1〜a6を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Comp像の濃淡差で表される結晶粒界径を測定したときの平均結晶粒界径を測定すると、下記の表1に示すような結果が得られた。
【0016】
【表1】
【0017】
上記表1の結果から明らかなように、水素吸蔵合金中のマンガン量が0.2モル以上で急激に平均結晶粒界径が大きくなることが分かる。しかしながら、合金a6のようにマンガン量が多くなりすぎると、偏析を生じるようになることが分かる。
【0018】
2.電池の作製
(1)水素吸蔵合金電極の作製
ついで、上述したように作製した各水素吸蔵合金粒子a1〜a6を用いて水素吸蔵合金電極を以下のようにして作製した。まず、上述したように作製した各水素吸蔵合金a1〜a6に対して、約0.5質量%のポリビニルピロリドンと、約0.5質量%のポリエチレンオキサイドと、適量の純水を添加、混合して水素吸蔵合金スラリーを作製した。ついで、ニッケル製パンチングメタルからなる芯体(負極集電体)を用意し、この芯体の両面に水素吸蔵合金スラリーを塗布し、乾燥させた後、所定の充填密度になるように圧延して水素吸蔵合金電極を作製した。
【0019】
(2)ニッケル電極の作製
一方、発泡ニッケル等よりなる三次元的に連続する空間を有する金属多孔体(正極集電体)に、水酸化ニッケルを主成分とする活物質スラリーを充填し、乾燥した後、所定の厚みになるように圧延してニッケル正極板を作製した。なお、水酸化ニッケルを主成分とする活物質スラリーとしては、例えば、共沈成分として亜鉛を2.5質量%とコバルトを1質量%を含有する水酸化ニッケル粉末10質量部と、酸化亜鉛粉末を3質量部とを混合した混合粉末に、ヒドロキシプロピルセルロースの0.2質量%水溶液を加えて撹拌、混合したものを使用した。
【0020】
(3)ニッケル−水素蓄電池の作製
上述のように作製した水素吸蔵合金電極と、上述のように作製ニッケル電極を耐アルカリ性の不織布からなるセパレータを介して捲回した。このとき、各水素吸蔵合金電極のそれぞれが外側になるようにして渦巻状に捲回して渦巻状電極群を作製した。このように作製した各渦巻状電極群をそれぞれ有底円筒状の金属外装缶内に挿入した後、各金属外装缶内にそれぞれ3成分系のアルカリ電解液(LiOH,NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を注液し、各外装缶の開口部を封口体で密封することにより、公称容量が3000mAhのニッケル−水素蓄電池A1〜A6をそれぞれ作製した。
【0021】
なお、水素吸蔵合金a1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A1とし、水素吸蔵合金a2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A2とし、水素吸蔵合金a3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A3とし、水素吸蔵合金a4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A4とし、水素吸蔵合金a5を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A5とし、水素吸蔵合金a6を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A6とした。
【0022】
3.電池内部抵抗の測定
ついで、上述のようにして作製した各電池A1〜A6を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA:1Itは電池容量を1時間で放電する電流値)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池A1〜A6を活性化した。
ついで、活性化後の各電池A1〜A6を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表2に示すような結果が得られた。
【0023】
【表2】
【0024】
上記表2の結果から明らかなように、マンガン(Mn)量が0.2モル未満の水素吸蔵合金a1を用いた電池A1、およびマンガン(Mn)量が0.5モルより多い水素吸蔵合金a6を用いた電池A6においては内部抵抗上昇率が共に200%と大きいことが分かる。一方、マンガン(Mn)量が0.2モル以上で0.5モル以下の水素吸蔵合金a2〜a5を用いた電池A2〜A5においては、内部抵抗上昇率が130〜150%であって、内部抵抗上昇率が抑制されていることが分かる。
【0025】
これは、水素吸蔵合金a1のようにマンガン(Mn)量が0.2モル未満であると、Mn量が少なすぎるために結晶粒が大きく成長することが困難になって、平均結晶粒界径は10μm程度の大きさに留まることとなる。このため、結晶粒界面から合金成分が電解液に溶出するようになり、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。また、水素吸蔵合金a6のようにマンガン(Mn)量が0.5モルよりも多くなると、最大結晶粒界径は大きくなるが結晶の偏析が生じるようになる。このため、偏析が生じた部分から合金成分が電解液に溶出するようになって、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。
【0026】
一方、水素吸蔵合金a2〜a5のようにマンガン(Mn)量が0.2モル以上で0.5モル以下であると、Mn量が多くあるために結晶粒が大きく成長するようになって、平均結晶粒界径が45μm以上になる。そして、Mn量が多すぎることもないために、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになる。このため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されるようになって、内部抵抗上昇率が抑制されたと考えられる。以上のことから、マンガン(Mn)量が0.2モル以上で0.5モル以下である水素吸蔵合金a2〜a5を用いる必要があるということができる。
【0027】
4.B/Aの検討
ついで、AB5型結晶構造のAサイトの元素のモル数と、Bサイトの元素のモル数との比(B/A)の検討を行った。この場合、MmNixCo0.5Al0.4Mnyで表される水素吸蔵合金のMn量が0.4モル(y=0.4)の一定量になるように設定するとともに、Ni量を3.8〜4.3モルに変化させるようにした以外は上述と同様に水素吸蔵合金b1〜b5を作製した。なお、ミッシュメタル(Mm)としては上述と同様に、希土類元素の質量に対してLa量が60質量%のものを用いた。そして、これらの水素吸蔵合金b1〜b5を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Comp像の濃淡差で表される結晶粒界径を測定したときの平均結晶粒界径を測定すると、下記の表3に示すような結果が得られた。
【0028】
ここで、Niのモル数が3.8モル(x=3.8)でB/Aが5.1となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi3.8Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b1とした。同様に、Niのモル数が3.9モル(x=3.9)でB/Aが5.2となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi3.9Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b2とし、Niのモル数が4.1モル(x=4.1)でB/Aが5.4となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.1Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b3とし、Niのモル数が4.2モル(x=4.2)でB/Aが5.5となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.2Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b4とし、Niのモル数が4.3モル(x=4.3)でB/Aが5.6となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.3Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b5とした。
【0029】
ついで、これらの水素吸蔵合金b1〜b5を用いて上述と同様に水素吸蔵合金電極を作製し、これらの水素吸蔵合金電極を用いてニッケル−水素蓄電池B1〜B5を作製した。ここで、水素吸蔵合金b1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B1とし、水素吸蔵合金b2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B2とし、水素吸蔵合金b3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B3とし、水素吸蔵合金b4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B4とし、水素吸蔵合金b5を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B5とした。
【0030】
ついで、上述のようにして作製した電池B1〜B5を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池B1〜B5を活性化した。
ついで、活性化後の各電池B1〜B5を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表3に示すような結果が得られた。なお、下記の表3には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0031】
【表3】
【0032】
上記表3の結果から明らかなように、Ni量を減少させてB/Aを5.2未満とした水素吸蔵合金b1を用いた電池B1、およびNi量を増加してB/Aを5.5よりも多くした水素吸蔵合金b5を用いた電池B5においては、内部抵抗上昇率が190%,180%と大きいことが分かる。一方、B/Aを5.2以上で5.5以下の水素吸蔵合金b2〜b4を用いた電池B2〜B4においては、内部抵抗上昇率は130〜150%であって、内部抵抗上昇率が抑制されていることが分かる。
【0033】
これは、水素吸蔵合金b1のようにNi量を減少させてB/Aを5.2未満にすると、結晶粒が大きく成長することが困難になって、平均結晶粒界径は25μm程度の大きさに留まることとなる。このため、結晶粒界面から合金成分が電解液に溶出するようになり、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。また、水素吸蔵合金b5のようにNi量を増加させてB/Aを5.5よりも多くすると、最大結晶粒界径は大きくなるが結晶の偏析が生じるようになる。このため、偏析が生じた部分から合金成分が電解液に溶出するようになって、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。
【0034】
一方、水素吸蔵合金b2〜b4のようにB/Aが5.2以上で5.5以下であると、結晶粒が大きく成長するようになって平均結晶粒界径が45μm以上になる。そして、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになるため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制され、内部抵抗上昇率が抑制されたと考えられる。以上のことから、B/Aが5.2以上で5.5以下の水素吸蔵合金b2〜b4を用いる必要があるということができる。
【0035】
5.Mm中のLa量の検討
ついで、AB5型結晶構造のAサイト(Mm)の希土類元素に対するLa量の質量比率ついての検討を行った。この場合、MmNixCo0.5Al0.4Mnyで表される水素吸蔵合金のMmの希土類元素に対するLa量の質量比率を40〜90質量%に変化させるとともに、Ni量が4.0モル(x=4.0)で、Mn量が0.4モル(y=0.4)で、B/Aが5.3の一定値になるように設定した以外は上述と同様に水素吸蔵合金c1〜c5を作製した。なお、これらの水素吸蔵合金c1〜c5を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Comp像の濃淡差で表される結晶粒界径を測定したときの平均結晶粒界径を測定すると、下記の表4に示すような結果が得られた。
【0036】
ここで、希土類元素に対するLa量の質量比率が40質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c1とした。同様に、希土類元素に対するLa量の質量比率が50質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c2とし、希土類元素に対するLa量の質量比率が70質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c3とし、希土類元素に対するLa量の質量比率が80質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c4とし、希土類元素に対するLa量の質量比率が90質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c5とした。
【0037】
ついで、そして、これらの水素吸蔵合金c1〜c5を用いて上述と同様に水素吸蔵合金電極を作製し、これらの水素吸蔵合金電極を用いてニッケル−水素蓄電池C1〜C5を作製した。ここで、水素吸蔵合金c1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C1とし、水素吸蔵合金c2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C2とし、水素吸蔵合金c3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C3とし、水素吸蔵合金c4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C4とし、水素吸蔵合金c5を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C5とした。
【0038】
ついで、上述のようにして作製した電池C1〜C5を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池C1〜C5を活性化した。
ついで、活性化後の各電池B1〜B5を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表4に示すような結果が得られた。なお、下記の表4には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0039】
【表4】
【0040】
上記表4の結果から明らかなように、La量が50質量%未満の水素吸蔵合金c1を用いた電池C1、およびLa量が80質量%より多い水素吸蔵合金c5を用いた電池C5においては内部抵抗上昇率が共に180%,190%と大きいことが分かる。一方、La量が50質量%以上で80質量%以下の水素吸蔵合金c2〜c4を用いた電池C2〜C4においては、内部抵抗上昇率が130〜150%であって、内部抵抗上昇率が抑制されていることが分かる。
【0041】
これは、水素吸蔵合金c1のようにLa量が50質量%未満になると、平均結晶粒界径はが大きくなるが結晶の偏析が生じるようになる。このため、偏析が生じた部分から合金成分が電解液に溶出するようになって、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。また、水素吸蔵合金c5のようにLa量が80質量%より多くなると、結晶粒が大きく成長することが困難になって、平均結晶粒界径は20μm程度の大きさに留まることとなる。このため、結晶粒界面より合金成分が電解液に溶出するようになり、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。
【0042】
一方、水素吸蔵合金c2〜c4のようにLa量が50質量%以上で80質量%以下であると、結晶粒が大きく成長するようになって、平均結晶粒界径が50μm以上になる。そして、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになる。このため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されるようになって、内部抵抗上昇率が抑制されたと考えられる。以上のことから、La量が50質量%以上で80質量%以下の水素吸蔵合金c2〜c4を用いる必要があるということができる。
【0043】
6.熱処理温度の検討
ついで、水素吸蔵合金の熱処理温度(アニール処理温度)の検討を行った。この場合、MmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4(但し、La量が60質量%のMmを用いている)で表される水素吸蔵合金を粗粉砕した後、Arガス(あるいは窒素または水素)の雰囲気中で、熱処理温度を900〜1200℃に変化させて10時間熱処理した以外は、上述と同様に水素吸蔵合金d1〜d5を作製した。なお、これらの水素吸蔵合金d1〜d5を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Comp像の濃淡差で表される結晶粒界径を測定したときの平均結晶粒界径を測定すると、下記の表5に示すような結果が得られた。ここで、900℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d1とした。同様に、950℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d2とし、1100℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d3とし、1150℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d4とし、1200℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d5とした。
【0044】
ついで、そして、これらの水素吸蔵合金d1〜d5を用いて上述と同様に水素吸蔵合金電極を作製し、これらの水素吸蔵合金電極を用いてニッケル−水素蓄電池D1〜D5を作製した。ここで、水素吸蔵合金d1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D1とし、水素吸蔵合金d2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D2とし、水素吸蔵合金d3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D3とし、水素吸蔵合金d4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D4とし、水素吸蔵合金d5を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D5とした。
【0045】
ついで、上述のようにして作製した電池D1〜D5を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池D1〜D5を活性化した。
ついで、活性化後の各電池D1〜D5を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表5に示すような結果が得られた。なお、下記の表5には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0046】
【表5】
【0047】
上記表5の結果から明らかなように、950℃未満の温度で熱処理(アニール処理)した水素吸蔵合金d1を用いた電池D1、および1150℃より高い温度で熱処理した水素吸蔵合金d5を用いた電池D5においては内部抵抗上昇率が共に175%,200%と大きいことが分かる。一方、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理(アニール処理)した水素吸蔵合金d2〜d4を用いた電池D2〜D4においては、内部抵抗上昇率が125〜135%であって、内部抵抗上昇率が抑制されていることが分かる。
【0048】
これは、水素吸蔵合金d1のように950℃未満の温度で熱処理すると、熱処理温度が低すぎるために結晶粒が大きく成長することが困難になって、平均結晶粒界径は25μm程度の大きさに留まることとなる。このため、結晶粒界面から合金成分が電解液に溶出するようになり、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。また、水素吸蔵合金d5のように1150℃より高い温度で熱処理すると、最大結晶粒界径は大きくなるが結晶の偏析が生じるようになる。このため、偏析が生じた部分から合金成分が電解液に溶出するようになって、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。
【0049】
一方、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理(アニール処理)すると、結晶粒が大きく成長するようになって、平均結晶粒界径が45μm以上になる。そして、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになる。このため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されるようになって、内部抵抗上昇率が抑制されたと考えられる。以上のことから、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理(アニール処理)した水素吸蔵合金d2〜d4を用いる必要があるということができる。
【0050】
7.電解液の検討
ついで、アルカリ電解液の検討を行った。この場合、水素吸蔵合金a4(MmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4)を用い、3成分系電解液(LiOH,NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いた電池A4と比較するために、合金a4(MmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4)と組成が同じで熱処理を800℃の温度で行った合金eを用い、電解液として3成分系電解液を用いて電池を構成して電池E1とした。また、この合金eを用い、電解液として2成分系電解液(NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いて電池を構成して電池E2とした。さらに、合金a4を用い、電解液として2成分系電解液(NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いて電池を構成して電池E3とした。
【0051】
ついで、上述のようにして作製した電池E1〜E3を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池D1〜D5を活性化した。
ついで、活性化後の各電池E1〜E3を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表6に示すような結果が得られた。なお、下記の表6には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0052】
【表6】
【0053】
上記表6の結果から明らかなように、2成分系電解液(NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いるよりは3成分系電解液(LiOH,NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いた方が内部抵抗上昇率を抑制できることが分かる。この理由は明らかではないが、LiOH,NaOH,KOHの3成分を含有した方が、2成分を含有するよりも、合金成分の電解液への溶出が抑制されたためと考えられる。
【0054】
8.平均粒径の検討
まず、Mm:Ni:Co:Al:Mnがモル比で1:4.0:0.5:0.4:0.4となるようにを秤量して混合した。これを高周波溶融炉に投入して溶融させ、冷却してMmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4からなる水素吸蔵合金のインゴットを作製した。ついで、得られたインゴットを粗粉砕した後、Arガス(あるいは窒素または水素)の雰囲気中(1atm)で、1000℃の温度で10時間熱処理した。熱処理後、平均粒径が10μm,20μm,30μm,40μm,50μmになるように粉砕して粒度調整を行った。
【0055】
ここで、平均粒径が10μmの水素吸蔵合金を合金f1とした。同様に、平均粒径が20μmの水素吸蔵合金を合金f2とし、平均粒径が40μmの水素吸蔵合金を合金f3とし、平均粒径が10μmの水素吸蔵合金を合金f4とした。
ついで、そして、これらの水素吸蔵合金f1〜f4を用いて上述と同様に水素吸蔵合金電極を作製し、これらの水素吸蔵合金電極を用いてニッケル−水素蓄電池F1〜F4を作製した。ここで、水素吸蔵合金f1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池F1とし、水素吸蔵合金f2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池F2とし、水素吸蔵合金f3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池F3とし、水素吸蔵合金f4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池F4とした。
【0056】
ついで、上述のようにして作製した電池F1〜F4を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池F1〜F4を活性化した。
ついで、活性化後の各電池F1〜F4を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表7に示すような結果が得られた。なお、下記の表7には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0057】
また、活性化後の各電池F1〜F4を用い、て、これらを室温(約25℃)で、30A(10ItmA)の電流値で電池電圧が0.6に達するまで放電させて、放電時間から高率放電容量を求め、活性化後の放電容量との比率を算出して放電特性とする下記の表7に示すような結果となった。
【0058】
【表7】
【0059】
上記表7の結果から明らかなように、水素吸蔵合金の平均粒径が小さくなるに伴って内部抵抗上昇率が大きくなり、特に、平均粒径が10μmの水素吸蔵合金f1を用いた電池F1の内部抵抗上昇率は220%と大きいことが分かる。また、水素吸蔵合金の平均粒径が大きくなるに伴って内部抵抗上昇率が小さくなるが、電池F4のように、水素吸蔵合金の平均粒径が50μmと大きくなると、放電特性が40%と極めて悪化することが分かる。このことから、平均粒径が20μm以上で40μm以下の水素吸蔵合金を用いるのが好ましいということができる。
【0060】
以上の表2から表7の結果をまとめると以下のようになる。即ち、表2の結果からMn量を0.2モル以上で0.5モル以下に規制し、表3の結果からB/Aを5.2以上で5.5以下に規制し、表4の結果からAサイトの希土類元素のLa量を50質量%以上で80質量%以下に規制し、表7の結果から平均粒径を20μm以上で40μm以下に規制すると、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されて、内部抵抗上昇率が抑制されるようになる。
【0061】
この場合、水素吸蔵合金の結晶粒界を成長させて大きな結晶粒界径が生じるようになると、合金全体の均質性が向上して、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されて、内部抵抗上昇率が抑制されるようになる。そして、実験結果によると、平均結晶粒界径が45μm以上であれば、内部抵抗上昇率が抑制されるようになることが明らかになったため、平均結晶粒界径が45μm以上になるように結晶粒界を成長させる必要がある。しかしながら、結晶粒界径が大きても偏析が生じると、合金成分が電解液に溶出するようになるので、偏析が生じないようにする必要がある。
【0062】
そして、表5の結果から、950℃以上の温度で熱処理(アニール処理)すると、結晶粒が大きく成長するようになって、平均結晶粒界径が45μm以上になる。一方、1150℃より高い温度で熱処理すると、平均結晶粒界径は大きくなる反面、結晶の偏析が生じるようになるため、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理するのが望ましいということができる。さらに、表6の結果から、電解液としては、LiOH,NaOH,KOHの3成分を含有したアルカリ電解液を用いると、合金成分の電解液への溶出が抑制されたため好ましい。
【0063】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明においては、MmNixCo0.5Al0.4Mnyで表される水素吸蔵合金において、Mmの全質量に対してMm中のLa量が50質量%以上で80質量%以下で、Mnの置換量yはMm1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下(0.2モル≦y≦0.5モル)で、Ni,Co,Al,Mn各元素の合計モル数(Ni+Co+Al+Mn)はMm1モルに対して5.2モル以上で5.5モル以下になるように規制している。これにより、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されて、内部抵抗上昇率が抑制されるようになる。
【0064】
なお、上述した実施形態においては、水素吸蔵合金としてMmNi5で表されるAB5型結晶構造のNiの一部をCo,Al,Mnで置換したMmNixCo0.5Al0.4Mnyからなる水素吸蔵合金を用いる例について説明したが、Aサイトの元素としてはMm(La,Ce,Ndを主成分とするミッシュメタル)に限らず、Laを主成分とする希土類元素の混合物あるいは化合物(具体的には、どのような物質があるか具体例を記載してください)であってもよい。
【0065】
また、上述した実施形態においては、Coの置換量を0.5モルに固定し、Alの置換量を0.4モルに固定した水素吸蔵合金を用いる例について説明したが、Mnの置換量が0.2モル以上で0.5モル以下で、NiとCoとAlとMnの総モル数が5.2モル以上で5.5モル以下であれば、Coの置換量あるいはAlの置換量はこれに限ることはない。なお、Niの一部をAlに置換しない水素吸蔵合金を用いるようにしてもよいが、この場合においては、Mnの置換量が0.2モル以上で0.5モル以下で、NiとCoとMnの総モル数が5.2モル以上で5.5モル以下になるよう調製する必要がある。
【0066】
また、上述した実施形態においては、Mm,Ni,Co,Al,Mn等の金属粉末を混合して溶融させた後、冷却してインゴットとする鋳造法により水素吸蔵合金粉末を作製する例について説明したが、鋳造法に代えて、ロールによる急冷法により作製するようにしてもよい。この場合、溶融した水素吸蔵合金を冷却されたロールに吹き付けて、水素吸蔵合金粉末が作製されるので、粗粉砕する工程が不必要になる。
【発明の属する技術分野】
本発明は負極活物質としてAB5型結晶構造を有する水素吸蔵合金を含有する負極と、正極と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池に係り、特に、負極活物質として用いられるAB5型結晶構造を有する水素吸蔵合金の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の蓄電池の市場拡大に伴って、電動工具、アシスト自転車、電気自動車等の用途が拡大し、特に、ニッケル−水素蓄電池の高出力化への要望が高まり、負極に用いられる水素吸蔵合金電極にも大電流放電特性の改良が要求されるようになった。この種の水素吸蔵合金電極に用いられる水素吸蔵合金としては、Ti−Ni系合金、LaまたはMm(ミッシュメタル:希土類元素の混合物)−Ni系合金等のAB5型結晶構造を有するものが知られている。
【0003】
ところが、このようなAB5型結晶構造を有する水素吸蔵合金を用いた電池においては、充放電サイクル寿命が短く、高率放電時の電圧低下も大きいという問題があった。そこで、例えば、特開平1−130468号公報においては、充放電サイクル寿命を向上させ、しかも大電流での放電特性を改善したニッケル−水素蓄電池が提案されるようになった。この特開平1−130468号公報において提案された水素吸蔵合金にあっては、平均粒子径が25〜35μmで最大粒子径が53μmの微細な水素吸蔵合金粒子を使用している。このため、水素吸蔵合金電極の反応面積を増大させることが可能となって、大電流での放電特性が改善されるというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、平均粒子径が25〜35μmで最大粒子径が53μmの微細な水素吸蔵合金粒子を使用した場合、表面積増加により放電性が向上する反面、電解液との接触により合金成分の溶解反応も促進されるようになる。この場合、水素吸蔵合金が電解液と接触して合金成分が溶解すると、溶解した合金成分は合金成分の酸化物または水酸化物として合金表面に再析出して、析出物が電池反応を阻害する。このため、電池内部抵抗が上昇し、放電性が低下することが明らかになった。このような合金成分の溶解反応は、温度依存性があるため、高温下で放置されることが多い電動工具、アシスト自転車、電気自動車等の大電流用途においては顕著となる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、水素吸蔵合金の電解液との溶解反応を抑制して、高温放置時の電池内部抵抗の上昇を抑制することが可能なアルカリ蓄電池を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池は、AB5型結晶構造のAサイトには希土類元素が含有されるとともに、該希土類元素の全質量に対して50質量%以上で80質量%以下のLaが含有されおり、このAB5型結晶構造のBサイトに含有される元素はNiを主成分とするとともに、該Niの一部が少なくともCoおよびMnで置換されており、Mnの置換量はAサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下であり、AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル以上で5.5モル以下である水素吸蔵合金を負極活物質として含有する負極を備えている。
【0007】
ここで、AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル未満で、Aサイトの希土類元素の全質量に対してLa量が80質量%より大きく、Mnの置換量がAサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル未満であると、水素吸蔵合金の結晶粒界が大きく成長しないことが明らかになった。このために、合金全体が不均一になって合金成分が電解液に溶解するようになり、内部抵抗が上昇することが分かった。
【0008】
一方、AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.5モルより大きく、Aサイトの希土類元素の全質量に対してLa量が50質量%未満で、Mnの置換量がAサイトの全希土類元素1モルに対して0.5モルより多いと、水素吸蔵合金の結晶粒界が大きく成長するようになるが偏析が生じるようになった。このため、偏析部から合金成分が電解液に溶解するようになって、内部抵抗上昇を抑制することができないことが分かった。
【0009】
このため、AB5型結晶構造の組成を上記範囲(Aサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル以上で5.5モル以下、Aサイトの希土類元素の全質量に対してLa量が50質量%以上で80質量%以下、Mnの置換量がAサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下)内に規定すると、水素吸蔵合金の結晶粒の偏析が抑制され、かつ合金全体の組成の均質性も向上し、平均結晶粒界径も45μm以上となる。これにより、高温放置時の電解液への合金成分の溶解反応が抑制されるようになるため、電池の内部抵抗の上昇を抑制できるようになる。
【0010】
この場合、水素吸蔵合金の平均粒径が小さくなるに伴って内部抵抗上昇率が大きくなり、逆に、水素吸蔵合金の平均粒径が大きくなるに伴って内部抵抗上昇率が小さくなるが、平均粒径が40μmよりも大きくなると、放電特性が極めて悪化することが分った。このことから、SEMのComp像の濃淡差で表される平均結晶粒界径が45μm以上の水素吸蔵合金を平均粒径が20〜40μmになるように粉砕された粉末を用いるのが好ましいということができる。
【0011】
そして、このような水素吸蔵合金を作製する場合、窒素、アルゴンまたは水素の雰囲気で、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理(アニール処理)すると、結晶粒が大きく成長して、しかも、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになる。このため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されるようになって、内部抵抗上昇率が抑制されるようになるので、熱処理は950℃以上で1150℃以下の温度で行うのが望ましい。なお、このような水素吸蔵合金を用いた電池に添加するアルカリ電解液としては、水酸化カリウム(KOH)と、水酸化ナトリウム(NaOH)と、水酸化リチウム(LiOH)からなる3成分系電解液を用いると、合金成分の電解液への溶出が抑制されるので好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
ついで、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用した場合の一実施の形態を以下に説明するが、本発明はこの実施の形態に何ら限定されるものでなく、本発明の目的を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
1.水素吸蔵合金の作製
AB5型結晶構造のAサイトの元素のモル数と、Bサイトの元素のモル数との比(B/A)が5.3となるように、市販の金属のMm(La,Ce,Ndを主成分とするミッシュメタル)、Ni、Co、Al、Mnを秤量して混合した。これを高周波溶融炉に投入して溶融させた。この後、冷却してMmNixCo0.5Al0.4Mnyからなる水素吸蔵合金の塊(インゴット)を作製した。ついで、得られた水素吸蔵合金の塊(インゴット)を粗粉砕した後、Arガスの雰囲気中(1atm)で、1000℃の温度で10時間熱処理した。熱処理後、平均粒径が30μmになるように粉砕して粒度調整を行った。なお、熱処理の雰囲気としてはArガスの雰囲気に変えて、窒素ガスあるいは水素ガスの雰囲気としてもよい。
なお、ミッシュメタル(Mm)としては希土類元素の質量に対してLa量が60質量%のものを用いた。
【0014】
ここで、Niのモル数が4.3モル(x=4.3)でMnのモル数が0.1モル(y=0.1)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.3Co0.5Al0.4Mn0.1)を合金a1とした。同様に、Niのモル数が4.2モル(x=4.2)でMnのモル数が0.2モル(y=0.2)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.2Co0.5Al0.4Mn0.2)を合金a2とし、Niのモル数が4.1モル(x=4.1)でMnのモル数が0.3モル(y=0.3)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.1Co0.5Al0.4Mn0.3)を合金a3とし、Niのモル数が4.0モル(x=4.0)でMnのモル数が0.4モル(y=0.4)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金a4とした。
【0015】
また、Niのモル数が3.9モル(x=3.9)でMnのモル数が0.5モル(y=0.5)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi3.9Co0.5Al0.4Mn0.5)を合金a5とし、Niのモル数が3.8モル(x=3.8)でMnのモル数が0.6モル(y=0.6)となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi3.8Co0.5Al0.4Mn0.6)を合金a6とした。ついで、得られた水素吸蔵合金a1〜a6を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Comp像の濃淡差で表される結晶粒界径を測定したときの平均結晶粒界径を測定すると、下記の表1に示すような結果が得られた。
【0016】
【表1】
【0017】
上記表1の結果から明らかなように、水素吸蔵合金中のマンガン量が0.2モル以上で急激に平均結晶粒界径が大きくなることが分かる。しかしながら、合金a6のようにマンガン量が多くなりすぎると、偏析を生じるようになることが分かる。
【0018】
2.電池の作製
(1)水素吸蔵合金電極の作製
ついで、上述したように作製した各水素吸蔵合金粒子a1〜a6を用いて水素吸蔵合金電極を以下のようにして作製した。まず、上述したように作製した各水素吸蔵合金a1〜a6に対して、約0.5質量%のポリビニルピロリドンと、約0.5質量%のポリエチレンオキサイドと、適量の純水を添加、混合して水素吸蔵合金スラリーを作製した。ついで、ニッケル製パンチングメタルからなる芯体(負極集電体)を用意し、この芯体の両面に水素吸蔵合金スラリーを塗布し、乾燥させた後、所定の充填密度になるように圧延して水素吸蔵合金電極を作製した。
【0019】
(2)ニッケル電極の作製
一方、発泡ニッケル等よりなる三次元的に連続する空間を有する金属多孔体(正極集電体)に、水酸化ニッケルを主成分とする活物質スラリーを充填し、乾燥した後、所定の厚みになるように圧延してニッケル正極板を作製した。なお、水酸化ニッケルを主成分とする活物質スラリーとしては、例えば、共沈成分として亜鉛を2.5質量%とコバルトを1質量%を含有する水酸化ニッケル粉末10質量部と、酸化亜鉛粉末を3質量部とを混合した混合粉末に、ヒドロキシプロピルセルロースの0.2質量%水溶液を加えて撹拌、混合したものを使用した。
【0020】
(3)ニッケル−水素蓄電池の作製
上述のように作製した水素吸蔵合金電極と、上述のように作製ニッケル電極を耐アルカリ性の不織布からなるセパレータを介して捲回した。このとき、各水素吸蔵合金電極のそれぞれが外側になるようにして渦巻状に捲回して渦巻状電極群を作製した。このように作製した各渦巻状電極群をそれぞれ有底円筒状の金属外装缶内に挿入した後、各金属外装缶内にそれぞれ3成分系のアルカリ電解液(LiOH,NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を注液し、各外装缶の開口部を封口体で密封することにより、公称容量が3000mAhのニッケル−水素蓄電池A1〜A6をそれぞれ作製した。
【0021】
なお、水素吸蔵合金a1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A1とし、水素吸蔵合金a2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A2とし、水素吸蔵合金a3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A3とし、水素吸蔵合金a4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A4とし、水素吸蔵合金a5を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A5とし、水素吸蔵合金a6を用いたニッケル−水素蓄電池を電池A6とした。
【0022】
3.電池内部抵抗の測定
ついで、上述のようにして作製した各電池A1〜A6を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA:1Itは電池容量を1時間で放電する電流値)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池A1〜A6を活性化した。
ついで、活性化後の各電池A1〜A6を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表2に示すような結果が得られた。
【0023】
【表2】
【0024】
上記表2の結果から明らかなように、マンガン(Mn)量が0.2モル未満の水素吸蔵合金a1を用いた電池A1、およびマンガン(Mn)量が0.5モルより多い水素吸蔵合金a6を用いた電池A6においては内部抵抗上昇率が共に200%と大きいことが分かる。一方、マンガン(Mn)量が0.2モル以上で0.5モル以下の水素吸蔵合金a2〜a5を用いた電池A2〜A5においては、内部抵抗上昇率が130〜150%であって、内部抵抗上昇率が抑制されていることが分かる。
【0025】
これは、水素吸蔵合金a1のようにマンガン(Mn)量が0.2モル未満であると、Mn量が少なすぎるために結晶粒が大きく成長することが困難になって、平均結晶粒界径は10μm程度の大きさに留まることとなる。このため、結晶粒界面から合金成分が電解液に溶出するようになり、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。また、水素吸蔵合金a6のようにマンガン(Mn)量が0.5モルよりも多くなると、最大結晶粒界径は大きくなるが結晶の偏析が生じるようになる。このため、偏析が生じた部分から合金成分が電解液に溶出するようになって、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。
【0026】
一方、水素吸蔵合金a2〜a5のようにマンガン(Mn)量が0.2モル以上で0.5モル以下であると、Mn量が多くあるために結晶粒が大きく成長するようになって、平均結晶粒界径が45μm以上になる。そして、Mn量が多すぎることもないために、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになる。このため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されるようになって、内部抵抗上昇率が抑制されたと考えられる。以上のことから、マンガン(Mn)量が0.2モル以上で0.5モル以下である水素吸蔵合金a2〜a5を用いる必要があるということができる。
【0027】
4.B/Aの検討
ついで、AB5型結晶構造のAサイトの元素のモル数と、Bサイトの元素のモル数との比(B/A)の検討を行った。この場合、MmNixCo0.5Al0.4Mnyで表される水素吸蔵合金のMn量が0.4モル(y=0.4)の一定量になるように設定するとともに、Ni量を3.8〜4.3モルに変化させるようにした以外は上述と同様に水素吸蔵合金b1〜b5を作製した。なお、ミッシュメタル(Mm)としては上述と同様に、希土類元素の質量に対してLa量が60質量%のものを用いた。そして、これらの水素吸蔵合金b1〜b5を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Comp像の濃淡差で表される結晶粒界径を測定したときの平均結晶粒界径を測定すると、下記の表3に示すような結果が得られた。
【0028】
ここで、Niのモル数が3.8モル(x=3.8)でB/Aが5.1となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi3.8Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b1とした。同様に、Niのモル数が3.9モル(x=3.9)でB/Aが5.2となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi3.9Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b2とし、Niのモル数が4.1モル(x=4.1)でB/Aが5.4となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.1Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b3とし、Niのモル数が4.2モル(x=4.2)でB/Aが5.5となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.2Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b4とし、Niのモル数が4.3モル(x=4.3)でB/Aが5.6となるように混合した水素吸蔵合金(MmNi4.3Co0.5Al0.4Mn0.4)を合金b5とした。
【0029】
ついで、これらの水素吸蔵合金b1〜b5を用いて上述と同様に水素吸蔵合金電極を作製し、これらの水素吸蔵合金電極を用いてニッケル−水素蓄電池B1〜B5を作製した。ここで、水素吸蔵合金b1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B1とし、水素吸蔵合金b2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B2とし、水素吸蔵合金b3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B3とし、水素吸蔵合金b4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B4とし、水素吸蔵合金b5を用いたニッケル−水素蓄電池を電池B5とした。
【0030】
ついで、上述のようにして作製した電池B1〜B5を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池B1〜B5を活性化した。
ついで、活性化後の各電池B1〜B5を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表3に示すような結果が得られた。なお、下記の表3には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0031】
【表3】
【0032】
上記表3の結果から明らかなように、Ni量を減少させてB/Aを5.2未満とした水素吸蔵合金b1を用いた電池B1、およびNi量を増加してB/Aを5.5よりも多くした水素吸蔵合金b5を用いた電池B5においては、内部抵抗上昇率が190%,180%と大きいことが分かる。一方、B/Aを5.2以上で5.5以下の水素吸蔵合金b2〜b4を用いた電池B2〜B4においては、内部抵抗上昇率は130〜150%であって、内部抵抗上昇率が抑制されていることが分かる。
【0033】
これは、水素吸蔵合金b1のようにNi量を減少させてB/Aを5.2未満にすると、結晶粒が大きく成長することが困難になって、平均結晶粒界径は25μm程度の大きさに留まることとなる。このため、結晶粒界面から合金成分が電解液に溶出するようになり、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。また、水素吸蔵合金b5のようにNi量を増加させてB/Aを5.5よりも多くすると、最大結晶粒界径は大きくなるが結晶の偏析が生じるようになる。このため、偏析が生じた部分から合金成分が電解液に溶出するようになって、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。
【0034】
一方、水素吸蔵合金b2〜b4のようにB/Aが5.2以上で5.5以下であると、結晶粒が大きく成長するようになって平均結晶粒界径が45μm以上になる。そして、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになるため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制され、内部抵抗上昇率が抑制されたと考えられる。以上のことから、B/Aが5.2以上で5.5以下の水素吸蔵合金b2〜b4を用いる必要があるということができる。
【0035】
5.Mm中のLa量の検討
ついで、AB5型結晶構造のAサイト(Mm)の希土類元素に対するLa量の質量比率ついての検討を行った。この場合、MmNixCo0.5Al0.4Mnyで表される水素吸蔵合金のMmの希土類元素に対するLa量の質量比率を40〜90質量%に変化させるとともに、Ni量が4.0モル(x=4.0)で、Mn量が0.4モル(y=0.4)で、B/Aが5.3の一定値になるように設定した以外は上述と同様に水素吸蔵合金c1〜c5を作製した。なお、これらの水素吸蔵合金c1〜c5を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Comp像の濃淡差で表される結晶粒界径を測定したときの平均結晶粒界径を測定すると、下記の表4に示すような結果が得られた。
【0036】
ここで、希土類元素に対するLa量の質量比率が40質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c1とした。同様に、希土類元素に対するLa量の質量比率が50質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c2とし、希土類元素に対するLa量の質量比率が70質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c3とし、希土類元素に対するLa量の質量比率が80質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c4とし、希土類元素に対するLa量の質量比率が90質量%のMmを含有する水素吸蔵合金を合金c5とした。
【0037】
ついで、そして、これらの水素吸蔵合金c1〜c5を用いて上述と同様に水素吸蔵合金電極を作製し、これらの水素吸蔵合金電極を用いてニッケル−水素蓄電池C1〜C5を作製した。ここで、水素吸蔵合金c1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C1とし、水素吸蔵合金c2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C2とし、水素吸蔵合金c3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C3とし、水素吸蔵合金c4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C4とし、水素吸蔵合金c5を用いたニッケル−水素蓄電池を電池C5とした。
【0038】
ついで、上述のようにして作製した電池C1〜C5を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池C1〜C5を活性化した。
ついで、活性化後の各電池B1〜B5を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表4に示すような結果が得られた。なお、下記の表4には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0039】
【表4】
【0040】
上記表4の結果から明らかなように、La量が50質量%未満の水素吸蔵合金c1を用いた電池C1、およびLa量が80質量%より多い水素吸蔵合金c5を用いた電池C5においては内部抵抗上昇率が共に180%,190%と大きいことが分かる。一方、La量が50質量%以上で80質量%以下の水素吸蔵合金c2〜c4を用いた電池C2〜C4においては、内部抵抗上昇率が130〜150%であって、内部抵抗上昇率が抑制されていることが分かる。
【0041】
これは、水素吸蔵合金c1のようにLa量が50質量%未満になると、平均結晶粒界径はが大きくなるが結晶の偏析が生じるようになる。このため、偏析が生じた部分から合金成分が電解液に溶出するようになって、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。また、水素吸蔵合金c5のようにLa量が80質量%より多くなると、結晶粒が大きく成長することが困難になって、平均結晶粒界径は20μm程度の大きさに留まることとなる。このため、結晶粒界面より合金成分が電解液に溶出するようになり、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。
【0042】
一方、水素吸蔵合金c2〜c4のようにLa量が50質量%以上で80質量%以下であると、結晶粒が大きく成長するようになって、平均結晶粒界径が50μm以上になる。そして、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになる。このため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されるようになって、内部抵抗上昇率が抑制されたと考えられる。以上のことから、La量が50質量%以上で80質量%以下の水素吸蔵合金c2〜c4を用いる必要があるということができる。
【0043】
6.熱処理温度の検討
ついで、水素吸蔵合金の熱処理温度(アニール処理温度)の検討を行った。この場合、MmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4(但し、La量が60質量%のMmを用いている)で表される水素吸蔵合金を粗粉砕した後、Arガス(あるいは窒素または水素)の雰囲気中で、熱処理温度を900〜1200℃に変化させて10時間熱処理した以外は、上述と同様に水素吸蔵合金d1〜d5を作製した。なお、これらの水素吸蔵合金d1〜d5を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Comp像の濃淡差で表される結晶粒界径を測定したときの平均結晶粒界径を測定すると、下記の表5に示すような結果が得られた。ここで、900℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d1とした。同様に、950℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d2とし、1100℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d3とし、1150℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d4とし、1200℃で熱処理した水素吸蔵合金を合金d5とした。
【0044】
ついで、そして、これらの水素吸蔵合金d1〜d5を用いて上述と同様に水素吸蔵合金電極を作製し、これらの水素吸蔵合金電極を用いてニッケル−水素蓄電池D1〜D5を作製した。ここで、水素吸蔵合金d1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D1とし、水素吸蔵合金d2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D2とし、水素吸蔵合金d3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D3とし、水素吸蔵合金d4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D4とし、水素吸蔵合金d5を用いたニッケル−水素蓄電池を電池D5とした。
【0045】
ついで、上述のようにして作製した電池D1〜D5を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池D1〜D5を活性化した。
ついで、活性化後の各電池D1〜D5を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表5に示すような結果が得られた。なお、下記の表5には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0046】
【表5】
【0047】
上記表5の結果から明らかなように、950℃未満の温度で熱処理(アニール処理)した水素吸蔵合金d1を用いた電池D1、および1150℃より高い温度で熱処理した水素吸蔵合金d5を用いた電池D5においては内部抵抗上昇率が共に175%,200%と大きいことが分かる。一方、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理(アニール処理)した水素吸蔵合金d2〜d4を用いた電池D2〜D4においては、内部抵抗上昇率が125〜135%であって、内部抵抗上昇率が抑制されていることが分かる。
【0048】
これは、水素吸蔵合金d1のように950℃未満の温度で熱処理すると、熱処理温度が低すぎるために結晶粒が大きく成長することが困難になって、平均結晶粒界径は25μm程度の大きさに留まることとなる。このため、結晶粒界面から合金成分が電解液に溶出するようになり、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。また、水素吸蔵合金d5のように1150℃より高い温度で熱処理すると、最大結晶粒界径は大きくなるが結晶の偏析が生じるようになる。このため、偏析が生じた部分から合金成分が電解液に溶出するようになって、内部抵抗上昇率が増大したと考えられる。
【0049】
一方、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理(アニール処理)すると、結晶粒が大きく成長するようになって、平均結晶粒界径が45μm以上になる。そして、結晶の偏析が生じることがなく、合金全体の均質性が向上するようになる。このため、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されるようになって、内部抵抗上昇率が抑制されたと考えられる。以上のことから、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理(アニール処理)した水素吸蔵合金d2〜d4を用いる必要があるということができる。
【0050】
7.電解液の検討
ついで、アルカリ電解液の検討を行った。この場合、水素吸蔵合金a4(MmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4)を用い、3成分系電解液(LiOH,NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いた電池A4と比較するために、合金a4(MmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4)と組成が同じで熱処理を800℃の温度で行った合金eを用い、電解液として3成分系電解液を用いて電池を構成して電池E1とした。また、この合金eを用い、電解液として2成分系電解液(NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いて電池を構成して電池E2とした。さらに、合金a4を用い、電解液として2成分系電解液(NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いて電池を構成して電池E3とした。
【0051】
ついで、上述のようにして作製した電池E1〜E3を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池D1〜D5を活性化した。
ついで、活性化後の各電池E1〜E3を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表6に示すような結果が得られた。なお、下記の表6には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0052】
【表6】
【0053】
上記表6の結果から明らかなように、2成分系電解液(NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いるよりは3成分系電解液(LiOH,NaOHを含有した8モル/lのKOH水溶液)を用いた方が内部抵抗上昇率を抑制できることが分かる。この理由は明らかではないが、LiOH,NaOH,KOHの3成分を含有した方が、2成分を含有するよりも、合金成分の電解液への溶出が抑制されたためと考えられる。
【0054】
8.平均粒径の検討
まず、Mm:Ni:Co:Al:Mnがモル比で1:4.0:0.5:0.4:0.4となるようにを秤量して混合した。これを高周波溶融炉に投入して溶融させ、冷却してMmNi4.0Co0.5Al0.4Mn0.4からなる水素吸蔵合金のインゴットを作製した。ついで、得られたインゴットを粗粉砕した後、Arガス(あるいは窒素または水素)の雰囲気中(1atm)で、1000℃の温度で10時間熱処理した。熱処理後、平均粒径が10μm,20μm,30μm,40μm,50μmになるように粉砕して粒度調整を行った。
【0055】
ここで、平均粒径が10μmの水素吸蔵合金を合金f1とした。同様に、平均粒径が20μmの水素吸蔵合金を合金f2とし、平均粒径が40μmの水素吸蔵合金を合金f3とし、平均粒径が10μmの水素吸蔵合金を合金f4とした。
ついで、そして、これらの水素吸蔵合金f1〜f4を用いて上述と同様に水素吸蔵合金電極を作製し、これらの水素吸蔵合金電極を用いてニッケル−水素蓄電池F1〜F4を作製した。ここで、水素吸蔵合金f1を用いたニッケル−水素蓄電池を電池F1とし、水素吸蔵合金f2を用いたニッケル−水素蓄電池を電池F2とし、水素吸蔵合金f3を用いたニッケル−水素蓄電池を電池F3とし、水素吸蔵合金f4を用いたニッケル−水素蓄電池を電池F4とした。
【0056】
ついで、上述のようにして作製した電池F1〜F4を用いて、これらを室温(約25℃)で、300mA(0.1ItmA)の電流値で16時間充電し、1時間休止した後、600mA(0.2ItmA)の電流値で電池電圧が1.0Vに達するまで放電させて、1時間休止させた。この条件で5サイクル充放電を行って各電池F1〜F4を活性化した。
ついで、活性化後の各電池F1〜F4を用い、これらを40℃の雰囲気中に30日間放置した。このとき、放置前と放置後の内部抵抗を測定し、放置前の抵抗値に対する放置後の抵抗値の割合を内部抵抗上昇率(=(放置後の抵抗値/放置前の抵抗値)×100%)として求めると、下記の表7に示すような結果が得られた。なお、下記の表7には上述した電池A4の結果も併せて示している。
【0057】
また、活性化後の各電池F1〜F4を用い、て、これらを室温(約25℃)で、30A(10ItmA)の電流値で電池電圧が0.6に達するまで放電させて、放電時間から高率放電容量を求め、活性化後の放電容量との比率を算出して放電特性とする下記の表7に示すような結果となった。
【0058】
【表7】
【0059】
上記表7の結果から明らかなように、水素吸蔵合金の平均粒径が小さくなるに伴って内部抵抗上昇率が大きくなり、特に、平均粒径が10μmの水素吸蔵合金f1を用いた電池F1の内部抵抗上昇率は220%と大きいことが分かる。また、水素吸蔵合金の平均粒径が大きくなるに伴って内部抵抗上昇率が小さくなるが、電池F4のように、水素吸蔵合金の平均粒径が50μmと大きくなると、放電特性が40%と極めて悪化することが分かる。このことから、平均粒径が20μm以上で40μm以下の水素吸蔵合金を用いるのが好ましいということができる。
【0060】
以上の表2から表7の結果をまとめると以下のようになる。即ち、表2の結果からMn量を0.2モル以上で0.5モル以下に規制し、表3の結果からB/Aを5.2以上で5.5以下に規制し、表4の結果からAサイトの希土類元素のLa量を50質量%以上で80質量%以下に規制し、表7の結果から平均粒径を20μm以上で40μm以下に規制すると、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されて、内部抵抗上昇率が抑制されるようになる。
【0061】
この場合、水素吸蔵合金の結晶粒界を成長させて大きな結晶粒界径が生じるようになると、合金全体の均質性が向上して、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されて、内部抵抗上昇率が抑制されるようになる。そして、実験結果によると、平均結晶粒界径が45μm以上であれば、内部抵抗上昇率が抑制されるようになることが明らかになったため、平均結晶粒界径が45μm以上になるように結晶粒界を成長させる必要がある。しかしながら、結晶粒界径が大きても偏析が生じると、合金成分が電解液に溶出するようになるので、偏析が生じないようにする必要がある。
【0062】
そして、表5の結果から、950℃以上の温度で熱処理(アニール処理)すると、結晶粒が大きく成長するようになって、平均結晶粒界径が45μm以上になる。一方、1150℃より高い温度で熱処理すると、平均結晶粒界径は大きくなる反面、結晶の偏析が生じるようになるため、950℃以上で1150℃以下の温度で熱処理するのが望ましいということができる。さらに、表6の結果から、電解液としては、LiOH,NaOH,KOHの3成分を含有したアルカリ電解液を用いると、合金成分の電解液への溶出が抑制されたため好ましい。
【0063】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明においては、MmNixCo0.5Al0.4Mnyで表される水素吸蔵合金において、Mmの全質量に対してMm中のLa量が50質量%以上で80質量%以下で、Mnの置換量yはMm1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下(0.2モル≦y≦0.5モル)で、Ni,Co,Al,Mn各元素の合計モル数(Ni+Co+Al+Mn)はMm1モルに対して5.2モル以上で5.5モル以下になるように規制している。これにより、合金成分が電解液に溶出するのが抑制されて、内部抵抗上昇率が抑制されるようになる。
【0064】
なお、上述した実施形態においては、水素吸蔵合金としてMmNi5で表されるAB5型結晶構造のNiの一部をCo,Al,Mnで置換したMmNixCo0.5Al0.4Mnyからなる水素吸蔵合金を用いる例について説明したが、Aサイトの元素としてはMm(La,Ce,Ndを主成分とするミッシュメタル)に限らず、Laを主成分とする希土類元素の混合物あるいは化合物(具体的には、どのような物質があるか具体例を記載してください)であってもよい。
【0065】
また、上述した実施形態においては、Coの置換量を0.5モルに固定し、Alの置換量を0.4モルに固定した水素吸蔵合金を用いる例について説明したが、Mnの置換量が0.2モル以上で0.5モル以下で、NiとCoとAlとMnの総モル数が5.2モル以上で5.5モル以下であれば、Coの置換量あるいはAlの置換量はこれに限ることはない。なお、Niの一部をAlに置換しない水素吸蔵合金を用いるようにしてもよいが、この場合においては、Mnの置換量が0.2モル以上で0.5モル以下で、NiとCoとMnの総モル数が5.2モル以上で5.5モル以下になるよう調製する必要がある。
【0066】
また、上述した実施形態においては、Mm,Ni,Co,Al,Mn等の金属粉末を混合して溶融させた後、冷却してインゴットとする鋳造法により水素吸蔵合金粉末を作製する例について説明したが、鋳造法に代えて、ロールによる急冷法により作製するようにしてもよい。この場合、溶融した水素吸蔵合金を冷却されたロールに吹き付けて、水素吸蔵合金粉末が作製されるので、粗粉砕する工程が不必要になる。
Claims (4)
- 負極活物質としてAB5型結晶構造を有する水素吸蔵合金を含有する負極と、正極と、アルカリ電解液とを備えたアルカリ蓄電池であって、
前記AB5型結晶構造のAサイトには希土類元素が含有されるとともに、該希土類元素の全質量に対して50質量%以上で80質量%以下のLaが含有されおり、
前記AB5型結晶構造のBサイトに含有される元素はNiを主成分とするとともに、該Niの一部が少なくともCoおよびMnで置換されており、
前記Mnの置換量は前記Aサイトの全希土類元素1モルに対して0.2モル以上で0.5モル以下であり、
前記AB5型結晶構造のAサイトの全希土類元素1モルに対してBサイトの全元素のモル数が5.2モル以上で5.5モル以下であることを特徴とするアルカリ蓄電池。 - 前記水素吸蔵合金はSEMのComp像の濃淡差で表される結晶粒界径が45μm以上のものが存在する水素吸蔵合金を平均粒径が20〜40μmになるように粉砕された粉末を用いていることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池。
- 前記アルカリ電解液は、水酸化カリウム(KOH)と、水酸化ナトリウム(NaOH)と、水酸化リチウム(LiOH)からなる3成分系電解液であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルカリ蓄電池。
- 前記水素吸蔵合金は急冷法あるいは鋳造により得られた合金であって、窒素、アルゴンまたは水素の雰囲気で950〜1150℃で熱処理されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のアルカリ蓄電池。
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