JP2004003730A - ガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズル - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼器構造及び運用方法を複雑化することなく、NOx排出量を低減することができる拡散燃焼用のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルを提供する。
【解決手段】ガスタービン燃焼器の燃焼室内に拡散燃料を噴射するガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルにおいて、燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の外筒6と、この外筒6の先端部に、燃料室内に臨むように穿設した外周側燃料噴孔17と、外筒6の内壁面に対して間隙空間10を介するよう外筒6に内装され、燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の内筒7と、この内筒7の先端部に、燃料室内に臨むように穿設した内周側燃料噴孔13と、内周側燃料噴孔13よりも開口面積の小さい内筒7の側部に設けた流路抵抗用小径12とを備える。
【選択図】 図2
【解決手段】ガスタービン燃焼器の燃焼室内に拡散燃料を噴射するガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルにおいて、燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の外筒6と、この外筒6の先端部に、燃料室内に臨むように穿設した外周側燃料噴孔17と、外筒6の内壁面に対して間隙空間10を介するよう外筒6に内装され、燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の内筒7と、この内筒7の先端部に、燃料室内に臨むように穿設した内周側燃料噴孔13と、内周側燃料噴孔13よりも開口面積の小さい内筒7の側部に設けた流路抵抗用小径12とを備える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼用空気と燃料ガスを混合して燃焼させるガスタービン燃焼器用の燃料噴射ノズルに係り、特に、いわゆる拡散燃焼方式に用いるガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、ガスタービン燃焼器における燃焼方式には、いわゆる拡散燃焼方式と予混合希薄燃焼方式とがある。
拡散燃焼方式とは、燃焼室内に燃料を直接供給して燃焼させる方式であり、予混合希薄燃焼方式とは、予混合器内で噴射した燃料を予め空気と混合された状態としてから燃焼室に供給して燃焼させる方式である。
【0003】
拡散燃焼方式にあっては、火炎の安定性に優れている反面、局所的な高温領域が形成され易く、大気汚染の原因となる窒素酸化物(以下、NOxと記載する)が発生し易い傾向がある。ガスタービン燃焼器において、燃料を燃焼させる際に発生するNOxの排出量を低減させることは、地球環境保護の観点から極めて重要な課題となる。これに対し、予混合希薄燃焼方式は、予め燃料を空気と混合して燃焼させることにより、火炎温度を下げることが可能となり、サーマルNOxの低減に有効となる。このことから、予混合燃焼を主体とした燃料噴射ノズルに関して多くの提案がなされている。
【0004】
しかしながら、拡散燃焼方式はNOxの排出量が予混合燃焼方式に比べて多いものの、失火、逆火等といった不具合が生じ難く、また大きな燃焼振動の発生を避けて安定燃焼できる燃空比(燃料と燃焼用空気の重量割合)や、噴射燃料の流速等の許容範囲が広い。そのため、燃焼器構造を簡単にでき、また燃料系統の数を少なく抑えることができるため、運用方法が簡便であるといった利点がある。これは、コスト低減のみならず、一般に燃焼器の圧力損失を低減することができることから、ガスタービン機関の熱効率の向上にも寄与する。従って、拡散燃焼方式においてNOx排出量を低減することができれば、非常に有利な点となる。
【0005】
こうした拡散燃焼用の燃料噴射ノズルとしては、燃料と燃焼用空気の混合方法の工夫や予混合バーナとの組み合わせによってNOx排出量を低減するものの他、燃料噴射ノズル構造の保護に関するもの等、既に多数提唱されている。例えば、特許第2839777号公報には、拡散燃焼用の燃料の一部を予混合気にして予混合バーナの出口に供給するバーナ構造が開示されている。他にも、例えば、特開平4−43220公報には、拡散燃焼用の燃料の一部を予混合器内に導入する構造、特開平11−257664公報には、燃料と燃焼用空気を急速に混合させる燃料噴射ノズル構造がそれぞれ開示されている。
【0006】
また、例えば、特許第3069347号公報には、燃料噴射孔内に空気噴射孔を連通する構造と、燃料噴射孔内に別の燃料系統からの燃料燃料噴射孔を連通する構造が開示されている。更に、例えば、特許第2839777号公報には、燃料噴射ノズルの内周側先端部分に冷却空気を導入する方法や、燃料噴射ノズル内部の燃料の流れによって燃料噴射ノズルの内周側先端部分を冷却する方法等が開示されている。
【0007】
また、例えば、特開昭61−140712号公報には、外側の大流量噴射孔と内側の小流量噴射孔とを備え、供給燃料の増加し圧力が上昇した際に、大流量噴射孔への燃料流路が開き、噴射量を増加させる例が開示されている。更に、例えば、特開2000−193242公報には、燃料噴射ノズルに孔径の異なる燃料噴孔を複数個設ける構造が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
NOx発生量は、火炎温度によって指数関数的に増加する。従って、最高火炎温度が高い程(又は火炎温度が高い領域が大きい程)、NOx発生量が大きくなる。上述の予混合燃焼方式においては、燃焼前に燃空比を調整することで最高火炎温度を低下させることができる。このことから、予混合燃焼方式においては、燃空比が希薄な燃料ガスを生成し、この燃料ガスを燃焼させて最高火炎温度を低下させたり、燃料ガスと燃焼用空気の混合状態を良好にして火炎温度が高い領域をできる限り制限する等、NOx発生量の低減のための方策として具体的な方向性が比較的明確となっている。
【0009】
一方、拡散燃焼方式においても、理論的には、やはり高温火炎領域をできる限り抑制する、また高温燃焼ガス領域を狭く制限すること等が、NOx発生量を低減する基本的考え方の1つとなる。ところが、拡散燃焼方式では、例えば燃料と燃焼用空気の混合状態を単に良好にした場合、かえって火炎温度が高い領域が拡大する場合がある。そのため、拡散燃焼方式にあっては、NOx排出量の低減について具体的な方向性が必ずしも明確ではない。
【0010】
また、拡散燃焼方式において、低NOx化を図るための方策の1つとして、例えば、燃料系統を増設し、燃焼器内の燃料濃度分布を調整することにより、高温火炎領域を縮小することが考えられる。しかしながら、拡散燃焼方式においては、前述のように、予混合燃焼方式に比べて燃焼器構造が簡単であること、運用方法が簡便であること等の利点があり、燃料系統を増設する場合、これらの利点が失われてしまうため、あまり望ましい方策とは言えない。
【0011】
本発明の目的は、燃焼器構造及び運用方法を複雑化することなく、NOx排出量を低減することができる拡散燃焼用のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ガスタービン燃焼器の燃焼室内に拡散燃料を噴射するガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルにおいて、前記燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の外筒と、この外筒の先端部に、前記燃料室内に臨むように穿設した少なくとも1つの外周側燃料噴孔と、前記外筒の内壁面に対して間隙空間を介するよう前記外筒に内装され、前記燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の内筒と、この内筒の先端部に、前記燃料室内に臨むように穿設した少なくとも1つの内周側燃料噴孔と、この内周側燃料噴孔に導かれる燃料の流路に設けられ、流路抵抗を発生させる流路抵抗手段とを備える。
【0013】
本発明においては、内周側燃料噴孔に導かれる燃料の流路に、流路抵抗を発生させる流路抵抗手段を設けることにより、内周側燃料噴孔からの噴射燃料を噴出する内筒の内部空間の内圧を、外周側燃料噴孔からの噴射燃料を噴出する間隙空間の内圧よりも低圧とすることができる。燃料の噴出速度は、圧力に依存するため、こうした構成とすることにより、内周側燃料噴孔からの燃料噴出速度を、外周側燃料噴孔からの燃料噴出速度よりも遅くすることができる。
【0014】
通常、燃焼器の燃焼室は、燃焼室ライナの内部空間により形成される。そして、この燃焼室ライナの側部には、燃焼用空気を燃焼室内に導入する燃焼孔が複数設けられている。この燃焼孔から導入される燃焼用空気の一部は、燃料室上流に向かって逆流し、燃料噴射ノズル下流域に低速の循環流領域を形成する。また、燃料噴射ノズル近傍位置においては、燃焼孔からの距離が比較的遠くなるため、通常、酸素濃度の比較的低い燃焼ガス領域が形成される。
【0015】
本発明においては、この酸素濃度の比較的低い燃焼ガス領域に、内周側燃料噴孔からの燃料噴流を供給する。前述のように、本発明では、内周側燃料噴孔からの燃料噴流の流速を遅くすることができるため、この低酸素濃度の燃焼ガス領域内で内周側燃料噴孔からの燃料噴流を燃焼反応させることができる。これにより、全体の燃料噴射量のうち、低酸素濃度領域で燃焼する燃料の流量割合を増加させることができ、全体として高温の燃焼ガス領域を、従来よりも狭い範囲に制限することができる。
【0016】
このように、本発明によれば、燃焼室内における酸素濃度の低い燃焼ガス領域を有効に利用することにより、NOx排出量を低減することができる。そして、新たな燃料系統等の追加の必要がないので、燃焼器構造が複雑化することもなく、運用方法も簡便であり、拡散燃焼方式の利点を損なうこともない。
【0017】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記流路抵抗手段として、開口面積が前記内周側燃料噴孔以下であって、前記内筒及び前記外筒の間の間隙空間と前記内筒の内部空間とを接続するよう、前記内筒の側部に設けた少なくとも1つの流路抵抗用小孔を設ける。
【0018】
(3)上記(1)において、また好ましくは、前記流路抵抗手段として、前記内筒の内部空間に、前記内筒に対して間隙を介して設けた支柱と、この支柱と前記内筒との間の間隙空間、及び前記内筒及び前記外筒の間の間隙空間を接続するよう、前記内筒の側部に対し前記支柱の略接線方向に向かって穿設された少なくとも1つの燃料旋回用小孔とを備える。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態を用いたガスタービン燃焼器の一構成例の全体構造を表す断面図、図2は本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態の詳細構造を表す断面図である。
【0020】
まず、本実施の形態の燃料噴射ノズル1は、例として図1に示すようなガスタービン燃焼器100に用いられる。通常、ガスタービンプラントにおいては、このようなガスタービン燃焼器100が、ガスタービン(図示せず)の周囲に複数配置される。ガスタービン燃焼器100の本体は、略円筒形状の燃焼器缶101と、この燃焼器缶101の上流側(図1中左側)に設けたフランジ102に対して取付けたエンドカバー103とで主に構成されている。燃焼器缶101の内周側には、燃焼器缶101に対して間隙を介して燃焼室ライナ104が設けられている。この燃焼室ライナ104は、その内部空間に、燃料噴射ノズル1から噴射された燃料ガスが燃焼反応を起こす燃焼室105を形成し、また、燃焼器缶101との間の間隙空間に、圧縮機(図示せず)からの燃焼用空気(圧縮空気)をガスタービン燃焼器100内に導く燃焼用空気流路106を形成する。
【0021】
ガスタービン燃焼器100内に導かれた燃焼用空気の一部は、燃焼用空気流路106の途中で燃焼室ライナ104に複数穿設した燃焼孔107を介して燃焼室105内に噴出する。但し、燃焼孔107の個数や配置は図1に図示した例に限定されるものではない。この燃焼孔107から噴出した燃焼用空気の一部は、燃焼室105内にて燃料噴射ノズル1に向かい、図1に示す燃料噴射ノズル1の下流域にて低流速の循環流を形成する。この燃焼ノズル1近傍の領域は、通常、燃焼孔107からの距離が比較的長いため、燃料孔107から到達する燃焼用空気量が少なく、酸素濃度の低い燃焼ガス領域となる。
【0022】
ガスタービン燃焼器100においては、燃焼室105内に燃料噴射ノズル1から拡散燃料を噴射し、燃料ガスと燃焼用空気を混合して安定した拡散火炎を形成し保持するようになっている。このとき、燃焼室ライナ104の上流側からは、空気旋回器15(後述)からも燃焼用空気が供給されるようになっている。そして、燃焼室ライナ104から排出された燃焼ガスは、タービン(図示せず)に供給され、タービンを回転駆動させる。但し、図1においては、燃料噴射ノズル1を1つ配設したガスタービン燃焼器100を例示したが、これに限定はなく、複数の燃料噴射ノズル1を配設する場合もある。
【0023】
次に、本実施の形態のガスタービン用燃料噴射ノズル1に関し図2を参照して説明する。図2に示すように、燃焼噴射ノズル1は、燃料配管(図示せず)に接続するフランジ2を有する導入管路3と、この導入管路3に接続すると共に上記エンドカバー103(図1参照)に取付けるフランジ4を有する取付部5と、この取付部5に対し燃焼室105(図1参照)内に臨むように取付けた外筒6及び内筒7とを備えている。
【0024】
特にその形状に限定はないが、本実施の形態において、外筒6及び内筒7は、それぞれ略円錐形に成形されており、内筒7は、外筒6の内壁面に対して間隙空間10を介するよう、外筒6に内装されている。また、内筒7自体も内部空間11を有し、その側部には、外筒6との間隙空間10に接続する流路抵抗用小孔12が、また先端部には、燃焼室105に接続する(燃焼室105に臨む)内周側燃料噴孔13がそれぞれ複数穿設されている。
【0025】
この流路抵抗用小孔12の開口面積は、内周側燃料噴孔13の開口面積に対して、同等かそれよりも小さくする。なお、本実施の形態においては、流路抵抗用小孔12及び内周側燃料噴孔13を複数づつ設けているので、ここで言う開口面積とは、各流路抵抗用小孔12の合計開口面積、各内周側燃料噴孔13の合計開口面積となる。従って、仮に、流路抵抗用小孔12及び内周側燃料噴孔13を流路抵抗用小孔12を1つづつ設けた場合には、流路抵抗用小孔12を内周側燃料噴孔13よりも小径(又はほぼ同径)とすれば良い。
【0026】
外筒6には、その外周部に空気旋回器15が設けられている。上記の燃焼用空気流路106を通る燃焼用空気のうち、燃焼孔107を通過せずに導かれた燃焼用空気は、この空気旋回器15の空気流路16に到達し、空気流路16を通過する間に周方向成分を付与され旋回流となって燃焼室105内に供給される。
【0027】
また、外筒6の先端部には、燃焼室105に接続する(燃焼室105に臨む)外周側燃料噴孔17が複数穿設されている。勿論、この外周側燃料噴孔17は、上記内周側燃料噴孔13よりも外側に位置することになる。ここで、本実施の形態においては、この外周側燃料噴孔17が、空気旋回器15の空気流路16の先端部近傍に接続する形状となっているが、この構造に限定はなく、空気流路16とは離間した位置にあっても構わない。
【0028】
なお、上記した導入管路3内には、導入した燃料ガスの燃料流路20が、取付部5には、この流路20と上記間隙空間10とを接続する燃料流路21がそれぞれ設けられている。
【0029】
以上のような構成により、本実施の形態の燃料噴射ノズル1においては、まず導入された燃料ガスが、流路20,21を通り上記間隙空間10に導かれる。間隙空間10に流入した燃料ガスは、一部が外周側燃料噴孔17を介し燃焼室105(図1参照)内に噴射され、一部が流路抵抗用小孔12を通過して内筒7の内部空間11に導かれる。このとき、一旦、燃料ガスを外筒6及び内筒7の間の間隙空間10に導き、燃料ガスを外周側燃料噴孔17から噴射することにより、そこに至る流路の相違に影響されることなく、各外周側燃料噴孔17から一様の流量の燃料が噴射される。
【0030】
一方、内部空間11に流入した燃料ガスは、内周側燃料噴孔13から燃焼室105(図1参照)に噴射される。この場合も、外周側燃料噴孔17の場合と同様、一旦、燃料ガスを内部空間11に導くことにより、各内周側燃料噴孔13から一様流量の燃料ガスが噴射される。このとき、内部空間11に流入する燃料ガスは、流路抵抗用小孔12を介して流入するので、内周側燃料噴孔13から噴射される燃料ガスには、流路抵抗用小孔12を通過する際に圧力損失が生じることになる。これにより、燃料ガスが内周側燃料噴孔13を通過する際の流路抵抗は、流路抵抗用小孔12を通過する際の流路抵抗の付加により、外周側燃料噴孔17を通過する燃料ガスの流路抵抗よりも大きくなる。即ち、内部空間11内の圧力は、間隙空間10内の圧力よりも低圧となり、外周側燃料噴孔17からの噴射燃料ガスよりも、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの方が流速が遅くなる。
【0031】
ここで、本実施の形態との一比較例として、拡散燃焼方式に用いる一般的なガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの構成を図3に示した。以下に、この例示した一般的な燃料噴射ノズルの構成を説明するが、本実施の形態と同様の部分、又同様と見なすことができる部分については、図2と同符号を付し説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、一般的に、拡散燃焼用の燃料噴射ノズルは、本実施の形態における導入管路3と、取付部5と、外筒6に相当する部分で構成されている。外筒6は、内部空間25を有する略円筒(又は円錐)形状に形成されており、流路20,21を介して流入した燃料ガスが、この内部空間25に導かれ、外筒6の先端に設けた燃料噴孔から燃焼室105に噴射されるようになっている。
【0033】
なお、図3においては、本実施の形態との対比説明の便宜上、本実施の形態と同様、内周側燃料噴孔13及び外周側燃料噴孔17を設けた例を示してあるが、一般的には、必ずしも双方を備えているとは限らない。本比較例においては、内周側燃料噴孔13及び外周側燃料噴孔17から噴射される燃料ガスの流速は、いずれも共用の内部空間25の圧力に依存するため、ほぼ同等の値となる。
【0034】
図4に、本実施の形態及び図3の比較例に関し、内周側燃料噴孔13に供給する燃料流量割合に対するNOx排出量の変化を示す。内周側燃料噴孔13からの燃料噴射量割合を増加させるには、本実施の形態においては、流路抵抗用小孔12の合計開口面積の、外周側燃料噴孔17の合計開口面積に対する割合を大きくするよう、例えば、各流路抵抗用小孔12の開口径を大きくすること、或いは内周側燃料噴孔13の数を増やすことにより増加させることができる。一方、図3の比較例においては、内周側燃料噴孔13の開口面積を大きくすれば良い。
【0035】
図4に示すように、図3の比較例においては、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの流量割合を増加させても、NOx排出量にほとんど変化は見られない。それに対し、本実施の形態においては、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの流量割合を増加することでNOx排出量が低減している。
【0036】
図4に示した本実施の形態と図3の比較例とのNOx排出量の違いは、以下の作用によるものであると考えられる。
内周側燃料噴孔13からの燃料噴流は、空気旋回器15からの燃焼用空気と、燃焼室105(図1参照)内における燃料噴射ノズル1近傍の燃焼ガスと混合して燃焼する。この内周側燃料噴孔13近傍の領域では、前述したように燃焼孔107(図1参照)からの燃焼用空気の到達量が少なく、燃焼ガスの酸素濃度が小さくなっている。一方、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流は、燃焼孔107(図1参照)からの燃焼用空気と混合して燃焼する。
【0037】
本実施の形態においては、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスは、その流速が遅いため、燃焼室105(図1参照)における燃料噴射ノズル1近傍において、燃焼ガスの酸素濃度が小さい領域内で燃焼する。言い換えれば、この内周側燃料噴孔13からの燃料噴流の割合を増加させることにより、酸素濃度の高い領域への燃料供給量の割合が低下し、高温の燃焼ガス領域を比較的狭い範囲に制限することができる。これにより、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの燃焼に関し、NOx発生量を抑制することができ、それだけ全体としてNOx発生量を低減することができる。
【0038】
なお、図4に示すように、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの流量割合が一定以上の割合(この例では5〜10%)に達すると、NOx排出量がそれ以上低減しなくなる傾向がある。これは、内周側燃料噴孔13からの燃料流量の増大により、内周側燃料噴孔13から噴射された供給燃料ガスの到達領域が、燃料噴射ノズル1近傍における燃焼ガスの低酸素濃度領域外に広がるためであると解される。即ち、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流のうち、低酸素濃度の燃焼ガス領域を外れ、比較的酸素濃度の高い燃焼ガス領域にて燃焼する部分が増大するためであると解釈される。
【0039】
一方、本実施の形態において、仮に外周側燃料噴孔17からの燃料噴流の流速も遅くしてしまうと、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流と燃焼孔107からの燃焼用空気との混合状態が不良となり、高温燃焼ガス領域が増加する結果、かえってNOx排出量が増加する可能性がある。このことから、外周側燃料噴孔17の燃料噴流の流速を維持し、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流の流速のみを減速させることにより、NOx排出量を低減することができると言える。
【0040】
逆に、図3の比較例において、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流の割合に関わらずNOx排出量に変化が見られなかったのは、内周側燃料噴孔13が、構造上、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流と同程度の比較的速い流速で噴射されるためであると考えられる。即ち、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流は、比較的流速が速いため、その流量割合に関わらず、燃焼ガスが比較的酸素濃度の高い燃焼ガス領域に到達してしまう。そのため、図3に示した比較例においては、高温燃焼ガス領域の大きさが実質的に変化せず、NOxの発生量の変化がほとんどなかったものと考えられる。
【0041】
本実施の形態によれば、以上説明したような作用により、燃焼室105内における燃料噴射ノズル1近傍にある酸素濃度の低い燃焼ガス領域を有効に利用することにより、NOx排出量を低減することができる。そして、新たな燃料系統等の追加の必要がないので、燃焼器構造が複雑化することもなく、運用方法も簡便であり、拡散燃焼方式の利点を損なうこともない。
【0042】
本実施の形態のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第2の実施の形態を図5を用いて説明する。
図5は、本実施の形態のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズル1Aの詳細構造を表す断面図で、先の図2に対応する図である。但し、図2と同様の部分、又は同様と見なすことができる部分については、図2と同じ符号を付し説明を省略する。
【0043】
本実施の形態においては、内周側燃料噴孔13Aからの燃料噴流に作用する圧力損失の付与構造が第1の実施の形態と異なる点を除いて、他の構造は第1の実施の形態とほぼ同様である。前述の第1の実施の形態においては、流路抵抗用小孔12を通過させることにより、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流に作用する圧力損失を、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流に作用する圧力損失よりも大きくした。これに対し、本実施の形態においては、内周側燃料噴孔13Aに対し、複数の燃料旋回用小孔30を介して燃料ガスを導くことにより、圧力損失が生じるように構成してある。以下、こうした本実施の形態の特徴部分の具体的な構成を説明する。
【0044】
本実施の形態にいては、内周側燃料噴孔43は内筒7の先端部ほぼ中央位置に1つ穿設されている。そして、第1の実施の形態における内筒7の内部空間11に相当する空間には、支柱31が設けられ、取付部5に対し固定されている。この支柱30は、内筒7に対し間隙空間32を介して内装されており、この間隙空間32は、内周側燃料噴孔13Aへの燃料の流路を形成している。
【0045】
上記の複数の燃料旋回用小孔30は、この燃料流路となる間隙空間32に対し、支柱31の略接線方向に向かうように穿設されている。これにより、上記間隙空間10から間隙空間32に流入する燃料ガスは、燃料旋回用小孔30を通過する際に旋回成分を与えられ、内周側燃料噴孔13Aから燃焼室105内に対し、周方向に分散された状態で噴霧されるようになっている。
【0046】
本実施の形態においては、以上の構成により、内周側燃料噴孔13Aからの燃料噴流に、旋回作用による流路抵抗を加えることによりここで圧力損失を発生させることができ、内周側燃料噴孔13Aからの燃料噴流の流速を、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流の流速よりも遅くすることができる。従って、第1の実施の形態と同様、燃料噴射ノズル1A近傍の低酸素濃度の燃焼ガス領域に燃料ガスを供給し、この領域を効果的に利用して燃焼させることができるので、NOx排出量を低減させることができる。
【0047】
更に、本実施の形態の場合、低酸素濃度の燃焼ガス領域に供給する燃料噴流が低速であると共に、旋回作用により分散されるので、更に相乗的なNOx低減効果が期待できる。勿論、本実施の形態において、燃料系統の増設の必要はなく、拡散燃焼方式の利点となる燃焼器構造や運用方法の簡便性を低下させることもない。
【0048】
なお、前述の第1の実施の形態においては、小径の流路抵抗用小孔12を予め通過させることにより、内周側燃料噴孔13の燃料噴流の圧力損失を増加させ、噴流の流速を低減した。一方、第2の実施の形態においては、燃料旋回用小孔30を通過させ、旋回成分を与える際に、内周側燃料噴孔13Aの燃料噴流の圧力損失を増加させ、噴流の流速を低減した。しかしながら、内周側燃料噴孔からの燃料噴流の流速を、外周側燃料噴孔からの燃料噴流の流速よりも遅くする限りにおいては、必ずしもこれらの態様に限定されるものではない。要するに、噴射前に、外周側燃料噴孔からの燃料噴流よりも、内周側燃料噴孔からの燃料噴流の圧力損失が高くなれば、相対的に内周側燃料噴孔からの噴射燃料の流速を遅くすることができる。従って、内周側燃料噴孔に導かれる燃料流路の途中に、何らかの流路抵抗手段を付加して圧力損失を生じさせる構成とすれば、内周側燃料噴孔から流速の遅い燃料を噴射することができる。これにより、比較的酸素濃度の低い燃料ガス領域を有効利用して拡散燃焼を行うことができ、本発明の本質的効果を得ることができる。
【0049】
また、第1及び第2の実施の形態においては、内周側燃料噴孔13や外周側燃料噴孔17、流路抵抗用小孔12、燃料旋回用小孔30を複数設ける例を説明したが、これに限られず、仮にそれぞれ1つのみ設ける構成としても構わない。また、外筒6及び内筒7を1組備えた例を説明したが、これにも限られず、複数組み備える構成としても構わない。これらの場合も同様の効果を得る。
【0050】
また、以上の第1及び第2の実施の形態において、燃料ガスを導入して噴射する型の燃料噴射ノズルを例として説明したが、これに限られず、例えば液体燃料を導入して燃焼室内に噴霧する型の燃料噴射ノズルにも、本発明の特徴が適用可能である。また、その外観構成も、必ずしも図2及び図5に示すような形状に限定されるものではない。内周側燃料噴孔及び外周側燃料噴孔の噴射角度や穿設位置、また孔数に関しても、図2及び図5の態様に必ずしも限定されるものではない。
【0051】
更に、図1においては、拡散燃焼方式を単独で採用した型のガスタービン燃焼器を例示したが、本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルは、予混合燃焼方式と併用されるガスタービン燃焼器にも適用可能であることは言うまでもない。また、図1において、ガスタービン燃焼器に本発明の燃料噴射ノズルを1つ設けた状態としたが、この態様にも限定されず、複数設けても構わない。この場合、例えば第1の実施の形態の燃料噴射ノズル1と、第2の実施の形態の燃料噴射ノズル1Aとを組み合わせて取付けても良い。これらの場合も同様の効果が得られる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料系統を増設することなく、火炎温度の増加が抑制される低酸素濃度の燃焼ガス領域に燃料噴射ノズルから燃料ガスの一部を噴射することができる。これにより、低酸素濃度の燃焼ガス領域で燃焼させられる分、高温燃焼ガス領域の拡大を抑制することができ、NOx排出量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態を用いたガスタービン燃焼器の一構成例の全体構造を表す断面図である。
【図2】本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態の詳細構造を表す断面図である。
【図3】本実施の形態との一比較例として、拡散燃焼方式に用いる一般的なガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの構成を示した図である。
【図4】本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態及び図3の比較例に関し、内周側燃料噴孔に供給する燃料流量割合に対するNOx排出量の変化を示したグラフである。
【図5】本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第2の実施の形態の詳細構造を表す断面図である。
【符号の説明】
1 燃料噴射ノズル(ガスタービン燃焼器用燃焼噴射ノズル)
1A 燃料噴射ノズル(ガスタービン燃焼器用燃焼噴射ノズル)
6 外筒
7 内筒
10 間隙空間
12 流路抵抗用小孔(流路抵抗手段)
13 内周側燃料噴孔
13A 内周側燃料噴孔
17 外周側燃料噴孔
30 燃料旋回用小孔(流路抵抗手段)
31 支柱
100 ガスタービン燃焼器
105 燃焼室
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼用空気と燃料ガスを混合して燃焼させるガスタービン燃焼器用の燃料噴射ノズルに係り、特に、いわゆる拡散燃焼方式に用いるガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、ガスタービン燃焼器における燃焼方式には、いわゆる拡散燃焼方式と予混合希薄燃焼方式とがある。
拡散燃焼方式とは、燃焼室内に燃料を直接供給して燃焼させる方式であり、予混合希薄燃焼方式とは、予混合器内で噴射した燃料を予め空気と混合された状態としてから燃焼室に供給して燃焼させる方式である。
【0003】
拡散燃焼方式にあっては、火炎の安定性に優れている反面、局所的な高温領域が形成され易く、大気汚染の原因となる窒素酸化物(以下、NOxと記載する)が発生し易い傾向がある。ガスタービン燃焼器において、燃料を燃焼させる際に発生するNOxの排出量を低減させることは、地球環境保護の観点から極めて重要な課題となる。これに対し、予混合希薄燃焼方式は、予め燃料を空気と混合して燃焼させることにより、火炎温度を下げることが可能となり、サーマルNOxの低減に有効となる。このことから、予混合燃焼を主体とした燃料噴射ノズルに関して多くの提案がなされている。
【0004】
しかしながら、拡散燃焼方式はNOxの排出量が予混合燃焼方式に比べて多いものの、失火、逆火等といった不具合が生じ難く、また大きな燃焼振動の発生を避けて安定燃焼できる燃空比(燃料と燃焼用空気の重量割合)や、噴射燃料の流速等の許容範囲が広い。そのため、燃焼器構造を簡単にでき、また燃料系統の数を少なく抑えることができるため、運用方法が簡便であるといった利点がある。これは、コスト低減のみならず、一般に燃焼器の圧力損失を低減することができることから、ガスタービン機関の熱効率の向上にも寄与する。従って、拡散燃焼方式においてNOx排出量を低減することができれば、非常に有利な点となる。
【0005】
こうした拡散燃焼用の燃料噴射ノズルとしては、燃料と燃焼用空気の混合方法の工夫や予混合バーナとの組み合わせによってNOx排出量を低減するものの他、燃料噴射ノズル構造の保護に関するもの等、既に多数提唱されている。例えば、特許第2839777号公報には、拡散燃焼用の燃料の一部を予混合気にして予混合バーナの出口に供給するバーナ構造が開示されている。他にも、例えば、特開平4−43220公報には、拡散燃焼用の燃料の一部を予混合器内に導入する構造、特開平11−257664公報には、燃料と燃焼用空気を急速に混合させる燃料噴射ノズル構造がそれぞれ開示されている。
【0006】
また、例えば、特許第3069347号公報には、燃料噴射孔内に空気噴射孔を連通する構造と、燃料噴射孔内に別の燃料系統からの燃料燃料噴射孔を連通する構造が開示されている。更に、例えば、特許第2839777号公報には、燃料噴射ノズルの内周側先端部分に冷却空気を導入する方法や、燃料噴射ノズル内部の燃料の流れによって燃料噴射ノズルの内周側先端部分を冷却する方法等が開示されている。
【0007】
また、例えば、特開昭61−140712号公報には、外側の大流量噴射孔と内側の小流量噴射孔とを備え、供給燃料の増加し圧力が上昇した際に、大流量噴射孔への燃料流路が開き、噴射量を増加させる例が開示されている。更に、例えば、特開2000−193242公報には、燃料噴射ノズルに孔径の異なる燃料噴孔を複数個設ける構造が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
NOx発生量は、火炎温度によって指数関数的に増加する。従って、最高火炎温度が高い程(又は火炎温度が高い領域が大きい程)、NOx発生量が大きくなる。上述の予混合燃焼方式においては、燃焼前に燃空比を調整することで最高火炎温度を低下させることができる。このことから、予混合燃焼方式においては、燃空比が希薄な燃料ガスを生成し、この燃料ガスを燃焼させて最高火炎温度を低下させたり、燃料ガスと燃焼用空気の混合状態を良好にして火炎温度が高い領域をできる限り制限する等、NOx発生量の低減のための方策として具体的な方向性が比較的明確となっている。
【0009】
一方、拡散燃焼方式においても、理論的には、やはり高温火炎領域をできる限り抑制する、また高温燃焼ガス領域を狭く制限すること等が、NOx発生量を低減する基本的考え方の1つとなる。ところが、拡散燃焼方式では、例えば燃料と燃焼用空気の混合状態を単に良好にした場合、かえって火炎温度が高い領域が拡大する場合がある。そのため、拡散燃焼方式にあっては、NOx排出量の低減について具体的な方向性が必ずしも明確ではない。
【0010】
また、拡散燃焼方式において、低NOx化を図るための方策の1つとして、例えば、燃料系統を増設し、燃焼器内の燃料濃度分布を調整することにより、高温火炎領域を縮小することが考えられる。しかしながら、拡散燃焼方式においては、前述のように、予混合燃焼方式に比べて燃焼器構造が簡単であること、運用方法が簡便であること等の利点があり、燃料系統を増設する場合、これらの利点が失われてしまうため、あまり望ましい方策とは言えない。
【0011】
本発明の目的は、燃焼器構造及び運用方法を複雑化することなく、NOx排出量を低減することができる拡散燃焼用のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ガスタービン燃焼器の燃焼室内に拡散燃料を噴射するガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルにおいて、前記燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の外筒と、この外筒の先端部に、前記燃料室内に臨むように穿設した少なくとも1つの外周側燃料噴孔と、前記外筒の内壁面に対して間隙空間を介するよう前記外筒に内装され、前記燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の内筒と、この内筒の先端部に、前記燃料室内に臨むように穿設した少なくとも1つの内周側燃料噴孔と、この内周側燃料噴孔に導かれる燃料の流路に設けられ、流路抵抗を発生させる流路抵抗手段とを備える。
【0013】
本発明においては、内周側燃料噴孔に導かれる燃料の流路に、流路抵抗を発生させる流路抵抗手段を設けることにより、内周側燃料噴孔からの噴射燃料を噴出する内筒の内部空間の内圧を、外周側燃料噴孔からの噴射燃料を噴出する間隙空間の内圧よりも低圧とすることができる。燃料の噴出速度は、圧力に依存するため、こうした構成とすることにより、内周側燃料噴孔からの燃料噴出速度を、外周側燃料噴孔からの燃料噴出速度よりも遅くすることができる。
【0014】
通常、燃焼器の燃焼室は、燃焼室ライナの内部空間により形成される。そして、この燃焼室ライナの側部には、燃焼用空気を燃焼室内に導入する燃焼孔が複数設けられている。この燃焼孔から導入される燃焼用空気の一部は、燃料室上流に向かって逆流し、燃料噴射ノズル下流域に低速の循環流領域を形成する。また、燃料噴射ノズル近傍位置においては、燃焼孔からの距離が比較的遠くなるため、通常、酸素濃度の比較的低い燃焼ガス領域が形成される。
【0015】
本発明においては、この酸素濃度の比較的低い燃焼ガス領域に、内周側燃料噴孔からの燃料噴流を供給する。前述のように、本発明では、内周側燃料噴孔からの燃料噴流の流速を遅くすることができるため、この低酸素濃度の燃焼ガス領域内で内周側燃料噴孔からの燃料噴流を燃焼反応させることができる。これにより、全体の燃料噴射量のうち、低酸素濃度領域で燃焼する燃料の流量割合を増加させることができ、全体として高温の燃焼ガス領域を、従来よりも狭い範囲に制限することができる。
【0016】
このように、本発明によれば、燃焼室内における酸素濃度の低い燃焼ガス領域を有効に利用することにより、NOx排出量を低減することができる。そして、新たな燃料系統等の追加の必要がないので、燃焼器構造が複雑化することもなく、運用方法も簡便であり、拡散燃焼方式の利点を損なうこともない。
【0017】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記流路抵抗手段として、開口面積が前記内周側燃料噴孔以下であって、前記内筒及び前記外筒の間の間隙空間と前記内筒の内部空間とを接続するよう、前記内筒の側部に設けた少なくとも1つの流路抵抗用小孔を設ける。
【0018】
(3)上記(1)において、また好ましくは、前記流路抵抗手段として、前記内筒の内部空間に、前記内筒に対して間隙を介して設けた支柱と、この支柱と前記内筒との間の間隙空間、及び前記内筒及び前記外筒の間の間隙空間を接続するよう、前記内筒の側部に対し前記支柱の略接線方向に向かって穿設された少なくとも1つの燃料旋回用小孔とを備える。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態を用いたガスタービン燃焼器の一構成例の全体構造を表す断面図、図2は本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態の詳細構造を表す断面図である。
【0020】
まず、本実施の形態の燃料噴射ノズル1は、例として図1に示すようなガスタービン燃焼器100に用いられる。通常、ガスタービンプラントにおいては、このようなガスタービン燃焼器100が、ガスタービン(図示せず)の周囲に複数配置される。ガスタービン燃焼器100の本体は、略円筒形状の燃焼器缶101と、この燃焼器缶101の上流側(図1中左側)に設けたフランジ102に対して取付けたエンドカバー103とで主に構成されている。燃焼器缶101の内周側には、燃焼器缶101に対して間隙を介して燃焼室ライナ104が設けられている。この燃焼室ライナ104は、その内部空間に、燃料噴射ノズル1から噴射された燃料ガスが燃焼反応を起こす燃焼室105を形成し、また、燃焼器缶101との間の間隙空間に、圧縮機(図示せず)からの燃焼用空気(圧縮空気)をガスタービン燃焼器100内に導く燃焼用空気流路106を形成する。
【0021】
ガスタービン燃焼器100内に導かれた燃焼用空気の一部は、燃焼用空気流路106の途中で燃焼室ライナ104に複数穿設した燃焼孔107を介して燃焼室105内に噴出する。但し、燃焼孔107の個数や配置は図1に図示した例に限定されるものではない。この燃焼孔107から噴出した燃焼用空気の一部は、燃焼室105内にて燃料噴射ノズル1に向かい、図1に示す燃料噴射ノズル1の下流域にて低流速の循環流を形成する。この燃焼ノズル1近傍の領域は、通常、燃焼孔107からの距離が比較的長いため、燃料孔107から到達する燃焼用空気量が少なく、酸素濃度の低い燃焼ガス領域となる。
【0022】
ガスタービン燃焼器100においては、燃焼室105内に燃料噴射ノズル1から拡散燃料を噴射し、燃料ガスと燃焼用空気を混合して安定した拡散火炎を形成し保持するようになっている。このとき、燃焼室ライナ104の上流側からは、空気旋回器15(後述)からも燃焼用空気が供給されるようになっている。そして、燃焼室ライナ104から排出された燃焼ガスは、タービン(図示せず)に供給され、タービンを回転駆動させる。但し、図1においては、燃料噴射ノズル1を1つ配設したガスタービン燃焼器100を例示したが、これに限定はなく、複数の燃料噴射ノズル1を配設する場合もある。
【0023】
次に、本実施の形態のガスタービン用燃料噴射ノズル1に関し図2を参照して説明する。図2に示すように、燃焼噴射ノズル1は、燃料配管(図示せず)に接続するフランジ2を有する導入管路3と、この導入管路3に接続すると共に上記エンドカバー103(図1参照)に取付けるフランジ4を有する取付部5と、この取付部5に対し燃焼室105(図1参照)内に臨むように取付けた外筒6及び内筒7とを備えている。
【0024】
特にその形状に限定はないが、本実施の形態において、外筒6及び内筒7は、それぞれ略円錐形に成形されており、内筒7は、外筒6の内壁面に対して間隙空間10を介するよう、外筒6に内装されている。また、内筒7自体も内部空間11を有し、その側部には、外筒6との間隙空間10に接続する流路抵抗用小孔12が、また先端部には、燃焼室105に接続する(燃焼室105に臨む)内周側燃料噴孔13がそれぞれ複数穿設されている。
【0025】
この流路抵抗用小孔12の開口面積は、内周側燃料噴孔13の開口面積に対して、同等かそれよりも小さくする。なお、本実施の形態においては、流路抵抗用小孔12及び内周側燃料噴孔13を複数づつ設けているので、ここで言う開口面積とは、各流路抵抗用小孔12の合計開口面積、各内周側燃料噴孔13の合計開口面積となる。従って、仮に、流路抵抗用小孔12及び内周側燃料噴孔13を流路抵抗用小孔12を1つづつ設けた場合には、流路抵抗用小孔12を内周側燃料噴孔13よりも小径(又はほぼ同径)とすれば良い。
【0026】
外筒6には、その外周部に空気旋回器15が設けられている。上記の燃焼用空気流路106を通る燃焼用空気のうち、燃焼孔107を通過せずに導かれた燃焼用空気は、この空気旋回器15の空気流路16に到達し、空気流路16を通過する間に周方向成分を付与され旋回流となって燃焼室105内に供給される。
【0027】
また、外筒6の先端部には、燃焼室105に接続する(燃焼室105に臨む)外周側燃料噴孔17が複数穿設されている。勿論、この外周側燃料噴孔17は、上記内周側燃料噴孔13よりも外側に位置することになる。ここで、本実施の形態においては、この外周側燃料噴孔17が、空気旋回器15の空気流路16の先端部近傍に接続する形状となっているが、この構造に限定はなく、空気流路16とは離間した位置にあっても構わない。
【0028】
なお、上記した導入管路3内には、導入した燃料ガスの燃料流路20が、取付部5には、この流路20と上記間隙空間10とを接続する燃料流路21がそれぞれ設けられている。
【0029】
以上のような構成により、本実施の形態の燃料噴射ノズル1においては、まず導入された燃料ガスが、流路20,21を通り上記間隙空間10に導かれる。間隙空間10に流入した燃料ガスは、一部が外周側燃料噴孔17を介し燃焼室105(図1参照)内に噴射され、一部が流路抵抗用小孔12を通過して内筒7の内部空間11に導かれる。このとき、一旦、燃料ガスを外筒6及び内筒7の間の間隙空間10に導き、燃料ガスを外周側燃料噴孔17から噴射することにより、そこに至る流路の相違に影響されることなく、各外周側燃料噴孔17から一様の流量の燃料が噴射される。
【0030】
一方、内部空間11に流入した燃料ガスは、内周側燃料噴孔13から燃焼室105(図1参照)に噴射される。この場合も、外周側燃料噴孔17の場合と同様、一旦、燃料ガスを内部空間11に導くことにより、各内周側燃料噴孔13から一様流量の燃料ガスが噴射される。このとき、内部空間11に流入する燃料ガスは、流路抵抗用小孔12を介して流入するので、内周側燃料噴孔13から噴射される燃料ガスには、流路抵抗用小孔12を通過する際に圧力損失が生じることになる。これにより、燃料ガスが内周側燃料噴孔13を通過する際の流路抵抗は、流路抵抗用小孔12を通過する際の流路抵抗の付加により、外周側燃料噴孔17を通過する燃料ガスの流路抵抗よりも大きくなる。即ち、内部空間11内の圧力は、間隙空間10内の圧力よりも低圧となり、外周側燃料噴孔17からの噴射燃料ガスよりも、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの方が流速が遅くなる。
【0031】
ここで、本実施の形態との一比較例として、拡散燃焼方式に用いる一般的なガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの構成を図3に示した。以下に、この例示した一般的な燃料噴射ノズルの構成を説明するが、本実施の形態と同様の部分、又同様と見なすことができる部分については、図2と同符号を付し説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、一般的に、拡散燃焼用の燃料噴射ノズルは、本実施の形態における導入管路3と、取付部5と、外筒6に相当する部分で構成されている。外筒6は、内部空間25を有する略円筒(又は円錐)形状に形成されており、流路20,21を介して流入した燃料ガスが、この内部空間25に導かれ、外筒6の先端に設けた燃料噴孔から燃焼室105に噴射されるようになっている。
【0033】
なお、図3においては、本実施の形態との対比説明の便宜上、本実施の形態と同様、内周側燃料噴孔13及び外周側燃料噴孔17を設けた例を示してあるが、一般的には、必ずしも双方を備えているとは限らない。本比較例においては、内周側燃料噴孔13及び外周側燃料噴孔17から噴射される燃料ガスの流速は、いずれも共用の内部空間25の圧力に依存するため、ほぼ同等の値となる。
【0034】
図4に、本実施の形態及び図3の比較例に関し、内周側燃料噴孔13に供給する燃料流量割合に対するNOx排出量の変化を示す。内周側燃料噴孔13からの燃料噴射量割合を増加させるには、本実施の形態においては、流路抵抗用小孔12の合計開口面積の、外周側燃料噴孔17の合計開口面積に対する割合を大きくするよう、例えば、各流路抵抗用小孔12の開口径を大きくすること、或いは内周側燃料噴孔13の数を増やすことにより増加させることができる。一方、図3の比較例においては、内周側燃料噴孔13の開口面積を大きくすれば良い。
【0035】
図4に示すように、図3の比較例においては、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの流量割合を増加させても、NOx排出量にほとんど変化は見られない。それに対し、本実施の形態においては、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの流量割合を増加することでNOx排出量が低減している。
【0036】
図4に示した本実施の形態と図3の比較例とのNOx排出量の違いは、以下の作用によるものであると考えられる。
内周側燃料噴孔13からの燃料噴流は、空気旋回器15からの燃焼用空気と、燃焼室105(図1参照)内における燃料噴射ノズル1近傍の燃焼ガスと混合して燃焼する。この内周側燃料噴孔13近傍の領域では、前述したように燃焼孔107(図1参照)からの燃焼用空気の到達量が少なく、燃焼ガスの酸素濃度が小さくなっている。一方、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流は、燃焼孔107(図1参照)からの燃焼用空気と混合して燃焼する。
【0037】
本実施の形態においては、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスは、その流速が遅いため、燃焼室105(図1参照)における燃料噴射ノズル1近傍において、燃焼ガスの酸素濃度が小さい領域内で燃焼する。言い換えれば、この内周側燃料噴孔13からの燃料噴流の割合を増加させることにより、酸素濃度の高い領域への燃料供給量の割合が低下し、高温の燃焼ガス領域を比較的狭い範囲に制限することができる。これにより、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの燃焼に関し、NOx発生量を抑制することができ、それだけ全体としてNOx発生量を低減することができる。
【0038】
なお、図4に示すように、内周側燃料噴孔13からの噴射燃料ガスの流量割合が一定以上の割合(この例では5〜10%)に達すると、NOx排出量がそれ以上低減しなくなる傾向がある。これは、内周側燃料噴孔13からの燃料流量の増大により、内周側燃料噴孔13から噴射された供給燃料ガスの到達領域が、燃料噴射ノズル1近傍における燃焼ガスの低酸素濃度領域外に広がるためであると解される。即ち、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流のうち、低酸素濃度の燃焼ガス領域を外れ、比較的酸素濃度の高い燃焼ガス領域にて燃焼する部分が増大するためであると解釈される。
【0039】
一方、本実施の形態において、仮に外周側燃料噴孔17からの燃料噴流の流速も遅くしてしまうと、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流と燃焼孔107からの燃焼用空気との混合状態が不良となり、高温燃焼ガス領域が増加する結果、かえってNOx排出量が増加する可能性がある。このことから、外周側燃料噴孔17の燃料噴流の流速を維持し、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流の流速のみを減速させることにより、NOx排出量を低減することができると言える。
【0040】
逆に、図3の比較例において、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流の割合に関わらずNOx排出量に変化が見られなかったのは、内周側燃料噴孔13が、構造上、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流と同程度の比較的速い流速で噴射されるためであると考えられる。即ち、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流は、比較的流速が速いため、その流量割合に関わらず、燃焼ガスが比較的酸素濃度の高い燃焼ガス領域に到達してしまう。そのため、図3に示した比較例においては、高温燃焼ガス領域の大きさが実質的に変化せず、NOxの発生量の変化がほとんどなかったものと考えられる。
【0041】
本実施の形態によれば、以上説明したような作用により、燃焼室105内における燃料噴射ノズル1近傍にある酸素濃度の低い燃焼ガス領域を有効に利用することにより、NOx排出量を低減することができる。そして、新たな燃料系統等の追加の必要がないので、燃焼器構造が複雑化することもなく、運用方法も簡便であり、拡散燃焼方式の利点を損なうこともない。
【0042】
本実施の形態のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第2の実施の形態を図5を用いて説明する。
図5は、本実施の形態のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズル1Aの詳細構造を表す断面図で、先の図2に対応する図である。但し、図2と同様の部分、又は同様と見なすことができる部分については、図2と同じ符号を付し説明を省略する。
【0043】
本実施の形態においては、内周側燃料噴孔13Aからの燃料噴流に作用する圧力損失の付与構造が第1の実施の形態と異なる点を除いて、他の構造は第1の実施の形態とほぼ同様である。前述の第1の実施の形態においては、流路抵抗用小孔12を通過させることにより、内周側燃料噴孔13からの燃料噴流に作用する圧力損失を、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流に作用する圧力損失よりも大きくした。これに対し、本実施の形態においては、内周側燃料噴孔13Aに対し、複数の燃料旋回用小孔30を介して燃料ガスを導くことにより、圧力損失が生じるように構成してある。以下、こうした本実施の形態の特徴部分の具体的な構成を説明する。
【0044】
本実施の形態にいては、内周側燃料噴孔43は内筒7の先端部ほぼ中央位置に1つ穿設されている。そして、第1の実施の形態における内筒7の内部空間11に相当する空間には、支柱31が設けられ、取付部5に対し固定されている。この支柱30は、内筒7に対し間隙空間32を介して内装されており、この間隙空間32は、内周側燃料噴孔13Aへの燃料の流路を形成している。
【0045】
上記の複数の燃料旋回用小孔30は、この燃料流路となる間隙空間32に対し、支柱31の略接線方向に向かうように穿設されている。これにより、上記間隙空間10から間隙空間32に流入する燃料ガスは、燃料旋回用小孔30を通過する際に旋回成分を与えられ、内周側燃料噴孔13Aから燃焼室105内に対し、周方向に分散された状態で噴霧されるようになっている。
【0046】
本実施の形態においては、以上の構成により、内周側燃料噴孔13Aからの燃料噴流に、旋回作用による流路抵抗を加えることによりここで圧力損失を発生させることができ、内周側燃料噴孔13Aからの燃料噴流の流速を、外周側燃料噴孔17からの燃料噴流の流速よりも遅くすることができる。従って、第1の実施の形態と同様、燃料噴射ノズル1A近傍の低酸素濃度の燃焼ガス領域に燃料ガスを供給し、この領域を効果的に利用して燃焼させることができるので、NOx排出量を低減させることができる。
【0047】
更に、本実施の形態の場合、低酸素濃度の燃焼ガス領域に供給する燃料噴流が低速であると共に、旋回作用により分散されるので、更に相乗的なNOx低減効果が期待できる。勿論、本実施の形態において、燃料系統の増設の必要はなく、拡散燃焼方式の利点となる燃焼器構造や運用方法の簡便性を低下させることもない。
【0048】
なお、前述の第1の実施の形態においては、小径の流路抵抗用小孔12を予め通過させることにより、内周側燃料噴孔13の燃料噴流の圧力損失を増加させ、噴流の流速を低減した。一方、第2の実施の形態においては、燃料旋回用小孔30を通過させ、旋回成分を与える際に、内周側燃料噴孔13Aの燃料噴流の圧力損失を増加させ、噴流の流速を低減した。しかしながら、内周側燃料噴孔からの燃料噴流の流速を、外周側燃料噴孔からの燃料噴流の流速よりも遅くする限りにおいては、必ずしもこれらの態様に限定されるものではない。要するに、噴射前に、外周側燃料噴孔からの燃料噴流よりも、内周側燃料噴孔からの燃料噴流の圧力損失が高くなれば、相対的に内周側燃料噴孔からの噴射燃料の流速を遅くすることができる。従って、内周側燃料噴孔に導かれる燃料流路の途中に、何らかの流路抵抗手段を付加して圧力損失を生じさせる構成とすれば、内周側燃料噴孔から流速の遅い燃料を噴射することができる。これにより、比較的酸素濃度の低い燃料ガス領域を有効利用して拡散燃焼を行うことができ、本発明の本質的効果を得ることができる。
【0049】
また、第1及び第2の実施の形態においては、内周側燃料噴孔13や外周側燃料噴孔17、流路抵抗用小孔12、燃料旋回用小孔30を複数設ける例を説明したが、これに限られず、仮にそれぞれ1つのみ設ける構成としても構わない。また、外筒6及び内筒7を1組備えた例を説明したが、これにも限られず、複数組み備える構成としても構わない。これらの場合も同様の効果を得る。
【0050】
また、以上の第1及び第2の実施の形態において、燃料ガスを導入して噴射する型の燃料噴射ノズルを例として説明したが、これに限られず、例えば液体燃料を導入して燃焼室内に噴霧する型の燃料噴射ノズルにも、本発明の特徴が適用可能である。また、その外観構成も、必ずしも図2及び図5に示すような形状に限定されるものではない。内周側燃料噴孔及び外周側燃料噴孔の噴射角度や穿設位置、また孔数に関しても、図2及び図5の態様に必ずしも限定されるものではない。
【0051】
更に、図1においては、拡散燃焼方式を単独で採用した型のガスタービン燃焼器を例示したが、本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルは、予混合燃焼方式と併用されるガスタービン燃焼器にも適用可能であることは言うまでもない。また、図1において、ガスタービン燃焼器に本発明の燃料噴射ノズルを1つ設けた状態としたが、この態様にも限定されず、複数設けても構わない。この場合、例えば第1の実施の形態の燃料噴射ノズル1と、第2の実施の形態の燃料噴射ノズル1Aとを組み合わせて取付けても良い。これらの場合も同様の効果が得られる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料系統を増設することなく、火炎温度の増加が抑制される低酸素濃度の燃焼ガス領域に燃料噴射ノズルから燃料ガスの一部を噴射することができる。これにより、低酸素濃度の燃焼ガス領域で燃焼させられる分、高温燃焼ガス領域の拡大を抑制することができ、NOx排出量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態を用いたガスタービン燃焼器の一構成例の全体構造を表す断面図である。
【図2】本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態の詳細構造を表す断面図である。
【図3】本実施の形態との一比較例として、拡散燃焼方式に用いる一般的なガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの構成を示した図である。
【図4】本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第1の実施の形態及び図3の比較例に関し、内周側燃料噴孔に供給する燃料流量割合に対するNOx排出量の変化を示したグラフである。
【図5】本発明のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルの第2の実施の形態の詳細構造を表す断面図である。
【符号の説明】
1 燃料噴射ノズル(ガスタービン燃焼器用燃焼噴射ノズル)
1A 燃料噴射ノズル(ガスタービン燃焼器用燃焼噴射ノズル)
6 外筒
7 内筒
10 間隙空間
12 流路抵抗用小孔(流路抵抗手段)
13 内周側燃料噴孔
13A 内周側燃料噴孔
17 外周側燃料噴孔
30 燃料旋回用小孔(流路抵抗手段)
31 支柱
100 ガスタービン燃焼器
105 燃焼室
Claims (3)
- ガスタービン燃焼器の燃焼室内に拡散燃料を噴射するガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルにおいて、
前記燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の外筒と、
この外筒の先端部に、前記燃料室内に臨むように穿設した少なくとも1つの外周側燃料噴孔と、
前記外筒の内壁面に対して間隙空間を介するよう前記外筒に内装され、前記燃焼室内に臨むよう配設された略筒形の内筒と、
この内筒の先端部に、前記燃料室内に臨むように穿設した少なくとも1つの内周側燃料噴孔と、
この内周側燃料噴孔に導かれる燃料の流路に設けられ、流路抵抗を発生させる流路抵抗手段と
を備えたことを特徴とするガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズル。 - 請求項1記載のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルにおいて、前記流路抵抗手段として、開口面積が前記内周側燃料噴孔以下であって、前記内筒及び前記外筒の間の間隙空間と前記内筒の内部空間とを接続するよう、前記内筒の側部に設けた少なくとも1つの流路抵抗用小孔を設けたことを特徴とするガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズル。
- 請求項1記載のガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズルにおいて、
前記流路抵抗手段として、
前記内筒の内部空間に、前記内筒に対して間隙を介して設けた支柱と、
この支柱と前記内筒との間の間隙空間、及び前記内筒及び前記外筒の間の間隙空間を接続するよう、前記内筒の側部に対し前記支柱の略接線方向に向かって穿設された少なくとも1つの燃料旋回用小孔と
を備えたことを特徴とするガスタービン燃焼器用燃料噴射ノズル。
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-
2002
- 2002-05-31 JP JP2002159232A patent/JP2004003730A/ja active Pending
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