JP2004003403A - 蒸気タービンの腐蝕抑制方法及び腐蝕抑制装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】タービン動翼のダブテイル部或いはシュラウド部における不純物の濃縮を抑制し、応力腐食割れの発生を抑制する。
【解決手段】蒸気タービンの蒸気出口の手前で初期凝縮水の検出を行い、初期凝縮水を検出したならば蒸気タービン動翼に純水を噴射して洗浄を行う。また、蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に蒸気タービン動翼へ乾燥窒素ガスを噴射し乾燥を行う。
【効果】蒸気タービンへNa,Cl,SO4等の不純物が濃縮するのを防ぐことができ孔食の発生及び孔食起点の応力腐食割れの発生を抑制できる。また、タービン停止前に乾燥ガスを噴射し乾燥することでタービン保管時の腐食を抑制できる。
【選択図】 図1
【解決手段】蒸気タービンの蒸気出口の手前で初期凝縮水の検出を行い、初期凝縮水を検出したならば蒸気タービン動翼に純水を噴射して洗浄を行う。また、蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に蒸気タービン動翼へ乾燥窒素ガスを噴射し乾燥を行う。
【効果】蒸気タービンへNa,Cl,SO4等の不純物が濃縮するのを防ぐことができ孔食の発生及び孔食起点の応力腐食割れの発生を抑制できる。また、タービン停止前に乾燥ガスを噴射し乾燥することでタービン保管時の腐食を抑制できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気タービンの腐蝕を抑制する方法及び腐蝕抑制装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
蒸気タービンでは、低圧タービン最終段付近に蒸気が初期凝縮する。この初期凝縮水には給水中における不純物であるNa,Cl,SO4等が濃縮されている。また、蒸気タービンのロータと動翼を接合しているダブテイル部或いは動翼とシュラウドの接合部には隙間が存在し、タービンの負荷変動時に隙間部の蒸気が水に変化或いは逆に隙間部の水が蒸気へ変化する。この際に、隙間内の不揮発性のNa,Cl,SO4等の不純物が蒸発せずに隙間部へ残り蓄積される。これら不純物の蓄積により蒸気タービン動翼の隙間部に孔食が生じ、これを起点とする腐蝕が起こる。
【0003】
蒸気タービンのロータと動翼のダブテイル部の隙間部に発生する孔食を抑制する方法としては、蒸気中の不純物を極力少なくする方法,材料自身の耐食性を高める方法あるいはタービンに純水や腐食抑制剤を薬注する方法等が知られている。特開平3−121202号公報には蒸気タービン動翼外周部分に純水或いは腐食抑制剤を注入する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、蒸気タービンの低圧タービン最終段の腐蝕を抑制する方法及び腐蝕抑制装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、蒸気タービンの運転中に初期凝縮水を検出したならば蒸気タービン動翼の洗浄を行うことにある。好ましくは、蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に蒸気タービン動翼へ乾燥気体を吹き付ける。
【0006】
蒸気タービンのロータと動翼を接合しているダブテイル部或いは動翼とシュラウドの接合部の隙間に孔食が発生し、これが成長すると、この部分を起点として応力腐食割れが起こり破断に至る場合がある。また、腐食疲労により破断に至ることもある。また、蒸気タービン停止時に隙間部に凝縮水が残っていると、保管時に高濃度不純物を含む凝縮水に曝され常温においても著しい腐食が進行する。更に、この高濃度不純物を含む凝縮水に曝された状態で蒸気タービンを大気中で保管すると、酸素及び炭酸ガスの影響でより腐食が進行する。
【0007】
一般に金属材料の溶液中における腐食は、溶液内の不純物濃度が高いほど進む。Na,Cl,SO4等の不純物はその傾向が顕著で、これらの不純物濃度を低くすることは腐食抑制に対して有効である。また、蒸気タービンの停止保管時における腐食環境を考えると、タービンのダブテイル部等の隙間部に水分がない方が腐食を抑制できる。湿度が60%以下では腐食は殆ど進行しないため、ダブテイル部等の水分は停止前に十分乾燥させる必要がある。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0008】
初期凝縮水を検出するために、蒸気タービンの運転中に凝縮水をサンプリングして電気電導度を測定し、凝縮水の電気電導度から初期凝縮水の存在を判定することが望ましい。また、洗浄は凝縮水の電気電導度が基準値に下がるまで続けることが望ましい。洗浄水には、純水を用いるのがよい。
【0009】
蒸気タービンの運転中に蒸気タービン動翼の洗浄を行い、更に蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に蒸気タービン動翼へ乾燥気体を吹き付けることは非常に望ましく、腐蝕抑制効果を格段に高めることができる。乾燥気体としては乾燥窒素ガスを用いることができる。
【0010】
蒸気タービン動翼の洗浄と乾燥を効果的に行うために、蒸気タービンのロータと動翼の取り付け部の動翼側に、少なくとも1箇所以上のロータまでの貫通した穴を設けることが望ましい。この穴を通して洗浄水及び乾燥気体を供給し、ロータと動翼の取り付け隙間部の洗浄及び乾燥が行うことにより洗浄,乾燥を容易かつ効果的に行うことが可能になる。
【0011】
本発明の腐蝕抑制装置は、蒸気タービンの運転中に蒸気出口の手前でサンプリングした凝縮水の電気電導度から初期凝縮水を検出する初期凝縮水検出機構と、初期凝縮水検出機構により初期凝縮水が検出されたならば蒸気タービンへ洗浄水を供給して動翼を洗浄する洗浄機構とを有する。蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に前記蒸気タービンの動翼へ乾燥気体を吹き付ける乾燥機構を備えることもでき、これは腐蝕抑制効果を高めるために非常に望ましい。
【0012】
本発明の好ましい形態では、タービンのケーシングにタービン動翼の隙間部に洗浄水を吹き付けるノズルを設置し、タービンの回転中に動翼隙間部等へ洗浄水を吹き付ける。これにより隙間内の蒸気凝縮水中の不純物濃度を腐食の問題が発生しないレベルまで低下させることができる。また、好ましくは、タービンの運転停止保管前にケーシングに設置されたノズルから乾燥気体を吹き付け、隙間部を乾燥させることでタービン保管時における隙間部の腐食を抑制する。
【0013】
本発明では、タービン運転中に蒸気タービンの蒸気出口の凝縮水を検出する手段と、凝縮水の電気電導度を測定する手段を備えることが望ましい。初期凝縮水が検出されたならば、純水を蒸気タービン動翼に吹き付け、凝縮水の電気電導度が十分低下するまで純水で洗浄する。これによりタービン運転中に隙間内へ不純物が濃縮されるのを抑え腐食を抑制できる。
【0014】
本発明によれば、孔食の発生が抑制され、孔食起点による応力腐食割れの発生が顕著に緩和される。また、タービンの運転停止保管時の凝縮水による腐食が抑制される。更に蒸気タービン動翼の隙間部であるロータと動翼のダブテイル部内部の洗浄を容易にするために、蒸気タービン動翼の形状をダブテイル部に洗浄水を導入しやすい形状にすることで、より高い洗浄効果が得られる。これらにより、隙間部の洗浄が容易になり、少量の洗浄水で大きな洗浄効果が得られる。本発明は、特に過去に海水リーク等の水質の悪化した給水で蒸気タービンを運転した履歴のあるプラントでは極めて有効である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は洗浄及び乾燥機能を有する蒸気タービンシステムを示す。このシステム給水をボイラで蒸気に変換し、その蒸気でタービンを回し発電するシステムである。
【0016】
給水は脱塩器1で不純物が除去され、アンモニア注入装置2で所定のpHにされたのち給水ポンプ3で低圧給水加熱器4に送られ、脱気器5,高圧給水加熱器6,ボイラ7へと送られる。給水はボイラ7で蒸気となり、高圧蒸気タービン8を回す。高圧蒸気タービン8を出た蒸気は再熱器9で再度過熱され低圧蒸気タービン10を回し、これらの駆動力で発電機12を回し発電する。低圧蒸気タービン10を出た蒸気は復水器12で完全に凝縮され水に戻る。
【0017】
この蒸気発電タービンシステムにおいて、凝縮水サンプリングライン13から初期凝縮水をサンプリングし凝縮水タンク14内で電導度センサを用いて凝縮水の電気電導度を測定する。電導度センサによって測定した測定値をタービン洗浄乾燥制御装置15へ送り通常の値と比較し、高い場合は洗浄水供給装置17からタービン洗浄乾燥ライン19を通して純水を低圧蒸気タービン10へ送り洗浄する。凝縮水タンク14内に凝縮水がたまり、上限設定水位を超えたならば凝縮水戻りポンプ16を作動させ、タンク内の凝縮水を復水器12へ戻す。さらに、蒸気タービンを乾燥させる場合には、タービン回転中に乾燥窒素ガス供給装置18から窒素ガスをタービンへ送りタービン動翼を乾燥させる。
【0018】
図2はタービン動翼部を拡大して示したものである。蒸気タービンでは運転時常にドレン水が発生している。ドレン水或いは初期凝縮水が発生すると凝縮水サンプリングライン13から凝縮水タンク14へ凝縮水を送り、電導度センサ26を用いて凝縮水の電気電導度を測定する。電導度センサの測定値はタービン洗浄乾燥制御装置15へ電気信号で送られる。また、凝縮水タンク14の水位が上限水位計27及び下限水位計28により観測され、これらの水位計の信号もタービン洗浄乾燥制御装置15へ送られる。凝縮水の水位は常に一定の範囲になるように管理され、この水位制御はタービン洗浄乾燥制御装置15により凝縮水戻りポンプ16を制御することにより行われる。また、凝縮水流量計29の計測値も電気信号でタービン洗浄乾燥制御装置15へ送られる。タービン洗浄乾燥制御装置は、電導度センサ26により計測された凝縮水の電気電導度により初期凝縮水が発生しているか否かを判定する機能を備えている。凝縮水流量計29で計測した凝縮水の流量を考慮することにより、初期凝縮水が発生しているか否かの判定の精度を高めることができる。凝縮水の電気電導度好ましくは更に凝縮水の流量により初期凝縮水が発生していると判断したならば、タービンロータ25に取り付けられているタービン動翼21のダブテイル部20及びシュラウド部22へタービン静翼24に設置されたタービン洗浄乾燥ライン19を通った純水を噴射ノズル23から噴射し洗浄する。また、タービンの運転を停止し保管時に入る場合には、タービンの回転が停止する前に、乾燥窒素ガス供給装置18からタービン洗浄乾燥ライン19を通して噴射ノズル23へ乾燥窒素ガスを送り噴射し、ダブテイル部20及びシュラウド部22の乾燥を行う。
【0019】
図3はタービンダブテイル部を拡大した図面を示す。(イ)は正面図、(ロ)はA−A′断面図、(ハ)はB−B′断面図である。正面図で説明するとタービン動翼21のダブテイル部20に純水或いは乾燥窒素ガスを吹き付け洗浄及び乾燥を行う。本実施例では、洗浄及び乾燥効率の向上のために横貫通穴30及び縦貫通穴31を設け、純水或いは乾燥窒素ガスの通路としている。断面図で説明すると純水或いは乾燥窒素ガス32はA−A′断面の横貫通穴30から入りダブテイル部20を通り、B−B′断面の縦貫通穴31から外に出る。
【0020】
図4は中性水中に塩化ナトリウムNaClを添加したときの鉄の腐食速度と酸素溶解度の概念図を示す。NaCl濃度が高いほど腐食速度は早くなり極大値を示した後に、酸素溶解度が低下すると共に小さくなる。鉄の腐食はNaCl濃度及び酸素の溶解量が大きいほど激しいが、水中のNaCl濃度が増すと酸素の溶解量が低下し逆に腐食速度は低下する。低濃度のNaCl領域ではNaCl濃度を低下させることは腐食抑制に非常に効果がある。図5は鉄の腐食速度に及ぼす湿度の影響の概念図を示す。湿度が60%を超えると徐々に腐食速度が増加し、湿度が80%を超えると著しく増加する。したがって、蒸気タービンダブテイル部等の隙間部の腐食はNaCl濃度の低下と、保管時における水分除去による湿度低下で著しく抑制できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明により、蒸気タービン動翼のダブテイル部或いはシュラウド部において不純物の濃縮を防ぎ、孔食の発生及び孔食を起点とする応力腐食割れの発生を抑制することができる。さらに、タービン停止前のタービン回転中に乾燥ガスを噴射し乾燥させることでタービン保管時の腐食を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す蒸気タービンシステムの構成図。
【図2】洗浄乾燥機構の詳細を示す概略図。
【図3】低圧蒸気タービンの動翼ダブテイル部の形状を示す断面図。
【図4】鉄の腐食速度に及ぼす水中のNaCl濃度と酸素溶解度の影響を示す概念図。
【図5】鉄の腐食速度に及ぼす湿度の影響を示す概念図。
【符号の説明】
10…低圧蒸気タービン、13…凝縮水サンプリングライン、14…凝縮水タンク、15…タービン洗浄乾燥制御装置、16…凝縮水戻りポンプ、17…洗浄水供給装置、18…乾燥窒素ガス供給装置、19…タービン洗浄乾燥ライン、20…ダブテイル部、21…タービン動翼、22…シュラウド部、23…噴射ノズル、26…電導度センサ、29…凝縮水流量計、30…横貫通穴、31…縦貫通穴、32…純水或いは乾燥窒素ガス。
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気タービンの腐蝕を抑制する方法及び腐蝕抑制装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
蒸気タービンでは、低圧タービン最終段付近に蒸気が初期凝縮する。この初期凝縮水には給水中における不純物であるNa,Cl,SO4等が濃縮されている。また、蒸気タービンのロータと動翼を接合しているダブテイル部或いは動翼とシュラウドの接合部には隙間が存在し、タービンの負荷変動時に隙間部の蒸気が水に変化或いは逆に隙間部の水が蒸気へ変化する。この際に、隙間内の不揮発性のNa,Cl,SO4等の不純物が蒸発せずに隙間部へ残り蓄積される。これら不純物の蓄積により蒸気タービン動翼の隙間部に孔食が生じ、これを起点とする腐蝕が起こる。
【0003】
蒸気タービンのロータと動翼のダブテイル部の隙間部に発生する孔食を抑制する方法としては、蒸気中の不純物を極力少なくする方法,材料自身の耐食性を高める方法あるいはタービンに純水や腐食抑制剤を薬注する方法等が知られている。特開平3−121202号公報には蒸気タービン動翼外周部分に純水或いは腐食抑制剤を注入する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、蒸気タービンの低圧タービン最終段の腐蝕を抑制する方法及び腐蝕抑制装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、蒸気タービンの運転中に初期凝縮水を検出したならば蒸気タービン動翼の洗浄を行うことにある。好ましくは、蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に蒸気タービン動翼へ乾燥気体を吹き付ける。
【0006】
蒸気タービンのロータと動翼を接合しているダブテイル部或いは動翼とシュラウドの接合部の隙間に孔食が発生し、これが成長すると、この部分を起点として応力腐食割れが起こり破断に至る場合がある。また、腐食疲労により破断に至ることもある。また、蒸気タービン停止時に隙間部に凝縮水が残っていると、保管時に高濃度不純物を含む凝縮水に曝され常温においても著しい腐食が進行する。更に、この高濃度不純物を含む凝縮水に曝された状態で蒸気タービンを大気中で保管すると、酸素及び炭酸ガスの影響でより腐食が進行する。
【0007】
一般に金属材料の溶液中における腐食は、溶液内の不純物濃度が高いほど進む。Na,Cl,SO4等の不純物はその傾向が顕著で、これらの不純物濃度を低くすることは腐食抑制に対して有効である。また、蒸気タービンの停止保管時における腐食環境を考えると、タービンのダブテイル部等の隙間部に水分がない方が腐食を抑制できる。湿度が60%以下では腐食は殆ど進行しないため、ダブテイル部等の水分は停止前に十分乾燥させる必要がある。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0008】
初期凝縮水を検出するために、蒸気タービンの運転中に凝縮水をサンプリングして電気電導度を測定し、凝縮水の電気電導度から初期凝縮水の存在を判定することが望ましい。また、洗浄は凝縮水の電気電導度が基準値に下がるまで続けることが望ましい。洗浄水には、純水を用いるのがよい。
【0009】
蒸気タービンの運転中に蒸気タービン動翼の洗浄を行い、更に蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に蒸気タービン動翼へ乾燥気体を吹き付けることは非常に望ましく、腐蝕抑制効果を格段に高めることができる。乾燥気体としては乾燥窒素ガスを用いることができる。
【0010】
蒸気タービン動翼の洗浄と乾燥を効果的に行うために、蒸気タービンのロータと動翼の取り付け部の動翼側に、少なくとも1箇所以上のロータまでの貫通した穴を設けることが望ましい。この穴を通して洗浄水及び乾燥気体を供給し、ロータと動翼の取り付け隙間部の洗浄及び乾燥が行うことにより洗浄,乾燥を容易かつ効果的に行うことが可能になる。
【0011】
本発明の腐蝕抑制装置は、蒸気タービンの運転中に蒸気出口の手前でサンプリングした凝縮水の電気電導度から初期凝縮水を検出する初期凝縮水検出機構と、初期凝縮水検出機構により初期凝縮水が検出されたならば蒸気タービンへ洗浄水を供給して動翼を洗浄する洗浄機構とを有する。蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に前記蒸気タービンの動翼へ乾燥気体を吹き付ける乾燥機構を備えることもでき、これは腐蝕抑制効果を高めるために非常に望ましい。
【0012】
本発明の好ましい形態では、タービンのケーシングにタービン動翼の隙間部に洗浄水を吹き付けるノズルを設置し、タービンの回転中に動翼隙間部等へ洗浄水を吹き付ける。これにより隙間内の蒸気凝縮水中の不純物濃度を腐食の問題が発生しないレベルまで低下させることができる。また、好ましくは、タービンの運転停止保管前にケーシングに設置されたノズルから乾燥気体を吹き付け、隙間部を乾燥させることでタービン保管時における隙間部の腐食を抑制する。
【0013】
本発明では、タービン運転中に蒸気タービンの蒸気出口の凝縮水を検出する手段と、凝縮水の電気電導度を測定する手段を備えることが望ましい。初期凝縮水が検出されたならば、純水を蒸気タービン動翼に吹き付け、凝縮水の電気電導度が十分低下するまで純水で洗浄する。これによりタービン運転中に隙間内へ不純物が濃縮されるのを抑え腐食を抑制できる。
【0014】
本発明によれば、孔食の発生が抑制され、孔食起点による応力腐食割れの発生が顕著に緩和される。また、タービンの運転停止保管時の凝縮水による腐食が抑制される。更に蒸気タービン動翼の隙間部であるロータと動翼のダブテイル部内部の洗浄を容易にするために、蒸気タービン動翼の形状をダブテイル部に洗浄水を導入しやすい形状にすることで、より高い洗浄効果が得られる。これらにより、隙間部の洗浄が容易になり、少量の洗浄水で大きな洗浄効果が得られる。本発明は、特に過去に海水リーク等の水質の悪化した給水で蒸気タービンを運転した履歴のあるプラントでは極めて有効である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は洗浄及び乾燥機能を有する蒸気タービンシステムを示す。このシステム給水をボイラで蒸気に変換し、その蒸気でタービンを回し発電するシステムである。
【0016】
給水は脱塩器1で不純物が除去され、アンモニア注入装置2で所定のpHにされたのち給水ポンプ3で低圧給水加熱器4に送られ、脱気器5,高圧給水加熱器6,ボイラ7へと送られる。給水はボイラ7で蒸気となり、高圧蒸気タービン8を回す。高圧蒸気タービン8を出た蒸気は再熱器9で再度過熱され低圧蒸気タービン10を回し、これらの駆動力で発電機12を回し発電する。低圧蒸気タービン10を出た蒸気は復水器12で完全に凝縮され水に戻る。
【0017】
この蒸気発電タービンシステムにおいて、凝縮水サンプリングライン13から初期凝縮水をサンプリングし凝縮水タンク14内で電導度センサを用いて凝縮水の電気電導度を測定する。電導度センサによって測定した測定値をタービン洗浄乾燥制御装置15へ送り通常の値と比較し、高い場合は洗浄水供給装置17からタービン洗浄乾燥ライン19を通して純水を低圧蒸気タービン10へ送り洗浄する。凝縮水タンク14内に凝縮水がたまり、上限設定水位を超えたならば凝縮水戻りポンプ16を作動させ、タンク内の凝縮水を復水器12へ戻す。さらに、蒸気タービンを乾燥させる場合には、タービン回転中に乾燥窒素ガス供給装置18から窒素ガスをタービンへ送りタービン動翼を乾燥させる。
【0018】
図2はタービン動翼部を拡大して示したものである。蒸気タービンでは運転時常にドレン水が発生している。ドレン水或いは初期凝縮水が発生すると凝縮水サンプリングライン13から凝縮水タンク14へ凝縮水を送り、電導度センサ26を用いて凝縮水の電気電導度を測定する。電導度センサの測定値はタービン洗浄乾燥制御装置15へ電気信号で送られる。また、凝縮水タンク14の水位が上限水位計27及び下限水位計28により観測され、これらの水位計の信号もタービン洗浄乾燥制御装置15へ送られる。凝縮水の水位は常に一定の範囲になるように管理され、この水位制御はタービン洗浄乾燥制御装置15により凝縮水戻りポンプ16を制御することにより行われる。また、凝縮水流量計29の計測値も電気信号でタービン洗浄乾燥制御装置15へ送られる。タービン洗浄乾燥制御装置は、電導度センサ26により計測された凝縮水の電気電導度により初期凝縮水が発生しているか否かを判定する機能を備えている。凝縮水流量計29で計測した凝縮水の流量を考慮することにより、初期凝縮水が発生しているか否かの判定の精度を高めることができる。凝縮水の電気電導度好ましくは更に凝縮水の流量により初期凝縮水が発生していると判断したならば、タービンロータ25に取り付けられているタービン動翼21のダブテイル部20及びシュラウド部22へタービン静翼24に設置されたタービン洗浄乾燥ライン19を通った純水を噴射ノズル23から噴射し洗浄する。また、タービンの運転を停止し保管時に入る場合には、タービンの回転が停止する前に、乾燥窒素ガス供給装置18からタービン洗浄乾燥ライン19を通して噴射ノズル23へ乾燥窒素ガスを送り噴射し、ダブテイル部20及びシュラウド部22の乾燥を行う。
【0019】
図3はタービンダブテイル部を拡大した図面を示す。(イ)は正面図、(ロ)はA−A′断面図、(ハ)はB−B′断面図である。正面図で説明するとタービン動翼21のダブテイル部20に純水或いは乾燥窒素ガスを吹き付け洗浄及び乾燥を行う。本実施例では、洗浄及び乾燥効率の向上のために横貫通穴30及び縦貫通穴31を設け、純水或いは乾燥窒素ガスの通路としている。断面図で説明すると純水或いは乾燥窒素ガス32はA−A′断面の横貫通穴30から入りダブテイル部20を通り、B−B′断面の縦貫通穴31から外に出る。
【0020】
図4は中性水中に塩化ナトリウムNaClを添加したときの鉄の腐食速度と酸素溶解度の概念図を示す。NaCl濃度が高いほど腐食速度は早くなり極大値を示した後に、酸素溶解度が低下すると共に小さくなる。鉄の腐食はNaCl濃度及び酸素の溶解量が大きいほど激しいが、水中のNaCl濃度が増すと酸素の溶解量が低下し逆に腐食速度は低下する。低濃度のNaCl領域ではNaCl濃度を低下させることは腐食抑制に非常に効果がある。図5は鉄の腐食速度に及ぼす湿度の影響の概念図を示す。湿度が60%を超えると徐々に腐食速度が増加し、湿度が80%を超えると著しく増加する。したがって、蒸気タービンダブテイル部等の隙間部の腐食はNaCl濃度の低下と、保管時における水分除去による湿度低下で著しく抑制できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明により、蒸気タービン動翼のダブテイル部或いはシュラウド部において不純物の濃縮を防ぎ、孔食の発生及び孔食を起点とする応力腐食割れの発生を抑制することができる。さらに、タービン停止前のタービン回転中に乾燥ガスを噴射し乾燥させることでタービン保管時の腐食を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す蒸気タービンシステムの構成図。
【図2】洗浄乾燥機構の詳細を示す概略図。
【図3】低圧蒸気タービンの動翼ダブテイル部の形状を示す断面図。
【図4】鉄の腐食速度に及ぼす水中のNaCl濃度と酸素溶解度の影響を示す概念図。
【図5】鉄の腐食速度に及ぼす湿度の影響を示す概念図。
【符号の説明】
10…低圧蒸気タービン、13…凝縮水サンプリングライン、14…凝縮水タンク、15…タービン洗浄乾燥制御装置、16…凝縮水戻りポンプ、17…洗浄水供給装置、18…乾燥窒素ガス供給装置、19…タービン洗浄乾燥ライン、20…ダブテイル部、21…タービン動翼、22…シュラウド部、23…噴射ノズル、26…電導度センサ、29…凝縮水流量計、30…横貫通穴、31…縦貫通穴、32…純水或いは乾燥窒素ガス。
Claims (9)
- 蒸気タービンの蒸気出口の手前で初期凝縮水の検出を行い、初期凝縮水を検出したならば蒸気タービン動翼の洗浄を行うことを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制方法。
- 蒸気タービンの運転中に凝縮水をサンプリングして電気電導度を測定し、この測定によって初期凝縮水を検出したならば蒸気タービン動翼を洗浄することを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制方法。
- 請求項2において、前記洗浄を凝縮水の電気電導度が基準値に下がるまで続けることを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制方法。
- 請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、前記洗浄が純水の吹き付けによって行われることを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制方法。
- 請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、前記蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に前記蒸気タービン動翼へ乾燥気体を吹き付けることを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制方法。
- 請求項5において、前記乾燥気体として乾燥窒素ガスを吹き付けることを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制方法。
- 請求項1乃至6において、前記蒸気タービンのロータと動翼の取り付け部の前記動翼側に、少なくとも1箇所以上のロータまでの貫通した穴を設け、該穴を通して洗浄水及び乾燥気体を供給し前記ロータと前記動翼の取り付け隙間部の洗浄及び乾燥が行われるようにしたことを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制方法。
- 蒸気タービンを洗浄し腐食を抑制する装置であって、前記蒸気タービンの運転中に蒸気出口の手前でサンプリングした凝縮水の電気電導度から初期凝縮水を検出する初期凝縮水検出機構と、前記初期凝縮水検出機構により初期凝縮水が検出されたならば前記蒸気タービンへ洗浄水を供給して動翼を洗浄する洗浄機構とを有することを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制装置。
- 請求項8において、前記蒸気タービンの運転停止前の負荷低下中に前記蒸気タービンの動翼へ乾燥気体を吹き付ける乾燥機構を有することを特徴とする蒸気タービンの腐蝕抑制装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002160894A JP2004003403A (ja) | 2002-06-03 | 2002-06-03 | 蒸気タービンの腐蝕抑制方法及び腐蝕抑制装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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2002
- 2002-06-03 JP JP2002160894A patent/JP2004003403A/ja active Pending
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