JP2004001378A - 印刷不良検知方法及び検知装置並びに印刷機制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】印刷紙面内のコントロール・ストリップに設けたパッチを測定して得たデ−タに基づいて印刷不良を検知する方法において、K,C,M,Y各単色のベタパッチと60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度に基づく値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知する。また、K,C,M,Y各単色のベタパッチと60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度の差と、前記60〜85%の範囲にある平網パッチと40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度の差とに基づく値が、所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知する。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷品質を検査しあるいは管理するためのコントロール・ストリップを印刷紙面内に入れて、そのコントロール・ストリップのパッチを測定することにより、印刷不良を速やかに検知する技術に関し、さらに、それを用いて効率の良い品質管理を可能とする印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷品質を測定するためのコントロール・ストリップを印刷紙面内に入れて、そのコントロール・ストリップのパッチを測定することにより、印刷物の品質を検査し、あるいは管理する印刷方法では、印刷の基本色であるK,C,M,Yの4色のベタのパッチからインキ量を検査する方法が用いられることが大半であった。(例えば、特許文献1参照)
しかし、この方法によると、通常、ドットゲインと呼ばれる、印刷される網点の太り量の変動や、網点が多重に印刷されるダブリや、網点が擦れた状態のスラーなどの印刷不良を検査しないために、印刷された絵柄の中の全ての色を保証することは大変困難であった。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−141608号公報(請求項1、段落番号0029)
【0004】
最近になり、前記の問題点を解決するために、印刷の基本色であるK,C,M,Yの4色のベタパッチを測定することよるインキ量のみの検査に加えて、K,C,M,Yの4色のドットゲインの変動量を検査するための部分を備えたコントロール・ストリップを用いて、印刷物の検査あるいは管理を行う技術も行われるようになってきている。
【0005】
一方、コントロール・ストリップに、もしC,M,Yの3色の平網の掛け合わせで構成されるグレーのパッチを配置して検査の対象とした場合には、印刷の基本色であるK,C,M,Yの4色のインキ量のみを検査する方法と比較して、印刷される絵柄に関する情報量が多く、その結果印刷物の品質もより安定することがわかっている。この理由は、C,M,Yの3色の平網の掛け合わせで構成されるグレーのパッチの検査では、印刷の基本色であるK,C,M,Yの4色のインキ量の検査では得られない印刷品質に関する情報(例えばC、M、Y、3色のインキ量のバランス、ドットゲイン、コントラスト、トラッピングなど)が得られるためである。
【0006】
また、本出願人は特願2001−316453号において、品質管理に適した平網の網点面積率を開示しており、それによると、60〜85%間の平網パッチを用いた印刷管理を行うことで良好な印刷物を得られるという報告をしている。
【0007】
しかしながら、グレーパッチや60〜85%間の平網パッチを用いた印刷制御を行ったとしても、前述のダブリやスラーといった印刷不良は無くなるわけではない。それは、印刷中の用紙のズレなどによって発生するためであり、印刷制御に用いるインキキー開度の制御では解消することができない障害だからである。また、印刷では、突発的にインキ・水バランスの平衡が崩れることにより、許容範囲を越えた調子の変化が起こることもある。
【0008】
さらには、印刷で使用する版を作成する工程で、適正な露光・現像が行われず、制御対象となるグレーパッチや60〜85%間の平網パッチの網点の大きさが設計値と異なり、結果として印刷状態を表す正確な情報が得られないといった、版作成工程の不安定要因に起因する不良が発生する場合もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、印刷紙面内に品質を測定するためのコントロール・ストリップを入れて、そのコントロール・ストリップを測定器で測定することによって、印刷物の品質を検査あるいは管理する際に、ダブリやスラーといった印刷不良や、インキ・水バランス異常による印刷不良、さらに版作成工程の不安定要因に起因する印刷不良を速やかに検知し、無駄な印刷を防ぐことができる印刷不良検知方法及びその検知装置並びにそれを用いた印刷方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、前記課題を解決するための本発明の第1の発明は、印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデ−タに基づいて、印刷不良を検知する方法において、前記パッチは、印刷機にある複数のインキキーの並びの方向に、複数色が繰り返し配置してあり、且つ、少なくとも、印刷の基本色であるK,C,M,Yの各単色のそれぞれ60〜85%の範囲にある平網パッチと100%のベタパッチであって、1インキキー幅内に配置された計8色のパッチを測定対象に含めた測定を行い、得られた各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度とに基づいて求められる値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知することを特徴とする印刷不良検知方法である。
ここで、平網が60〜85%の範囲を下回るか又は越えた場合には、印刷品質を検査する精度が劣るので不適当である。
【0011】
また、本発明の第2の発明は、印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデ−タに基づいて、印刷不良を検知する方法において、前記パッチは、印刷機にある複数のインキキーの並びの方向に、複数色が繰り返し配置してあり、且つ、少なくとも、印刷の基本色であるK,C,M,Yの各単色のそれぞれ60〜85%の範囲にある平網パッチと100%のベタパッチであって、並びが連続した複数個のインキキー分の幅内に配置された計8色のパッチを測定対象に含めた測定を行い、得られた各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度とに基づいて求められる値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知することを特徴とする印刷不良検知方法である。
【0012】
また、本発明の第3の発明は、印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデータに基づいて、印刷品質を検査あるいは管理する印刷方法において、前記パッチは、印刷機にある複数のインキキーの並びの方向に、複数色が繰り返し配置してあり、且つ、少なくとも、印刷の基本色であるK,C,M,Yの各単色のそれぞれ、100%のベタパッチと、60〜85%の範囲にある平網パッチと、40〜50%の範囲にある平網パッチであって、1インキキー幅内に配置された計12色のパッチを測定対象に含めた測定を行い、得られた各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度との差と、前記60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度との差とに基づいて求められる値が、所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知することを特徴とする印刷不良検知方法である。
3種類のパッチを用いることで、印刷時に発生する不良ばかりでなく、版作成工程の不安定要因に起因する印刷不良なども検知できる。
【0013】
また、本発明の第4の発明は、印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデータに基づいて、印刷品質を検査あるいは管理する印刷方法において、前記パッチは、印刷機にある複数のインキキーの並びの方向に、複数色が繰り返し配置してあり、且つ、少なくとも、印刷の基本色であるK,C,M,Yの各単色のそれぞれ、100%のベタパッチと、60〜85%の範囲にある平網パッチと、40〜50%の範囲にある平網パッチであって、並びが連続した複数個のインキキー分の幅内に配置された計12色のパッチを測定対象に含めた測定を行い、得られた各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度との差と、前記60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度との差とに基づいて求められる値が、所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知することを特徴とする印刷不良検知方法である。
【0014】
また、本発明の第5の発明は、印刷紙面内のコントロール・ストリップを設けたパッチの色濃度を測定するパッチ色濃度測定手段と、該パッチ色濃度測定手段より得られたK,C,M,Yの各単色ベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度とに基づいて求められる値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知する比較演算手段とを備えることを特徴とする印刷不良検知装置である。
【0015】
また、本発明の第6の発明は、印刷紙面内のコントロール・ストリップを設けたパッチの色濃度を測定するパッチ色濃度測定手段と、該パッチ色濃度測定手段より得られたK,C,M,Yの各単色ベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度との差と、前記60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度との差とに基づいて求められる値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知する比較演算手段とを備えることを特徴とする印刷不良検知装置である。
【0016】
また、本発明の第7の発明は、前記比較演算手段が印刷を不良と検知した場合のアラーム信号を受けて、アラームを出力するアラーム手段を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の印刷不良検知装置である。
【0017】
また、本発明の第8の発明は、印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデ−タに基づいて、インキキー開度を制御する印刷方法において、前記請求項1〜4の何れかの印刷不良検知方法によって印刷不良を検知した際に、アラームを発するとともに、インキキー開度の制御を中止することを特徴とする印刷機制御方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の印刷不良検知装置について図1を用いて説明する。パッチ色濃度測定手段としての測定ヘッド25と比較演算手段としての色管理制御装置20と図示しないアラーム手段からなる。
【0019】
測定ヘッド25としては、CCDを使ったカメラやラインセンサを用いることができる。図1での色管理制御装置20は、印刷不良検知用の比較演算手段とインキキー制御の演算手段を兼務したものとしたものであるが、それぞれ別の例えばコンピュータを用いたものでも構わない。兼務させることで、印刷不良が発生したときのインキキー制御の中止を連動させ易くなる。また、アラーム手段としては、図示はしていないが、ブザー、ランプ、ディスプレイ表示など、直接、人に知らせるものを好適に選択して良い。あるいは、アラーム信号を印刷機自体の制御装置に送出するのみの機能として、人に知らせる部分や印刷停止などについては、印刷機自体の制御装置に委ねる構成としても良い。また、考えられる不良原因を表示する手段も好適に用いることができる。
【0020】
次に、測色対象のパッチで構成されるコントロールストリップについて説明する。印刷紙面内の任意の位置に、品質を測定するためのコントロール・ストリップを入れて、そのコントロール・ストリップを測定器で測定することにより、印刷物の品質を検査あるいは管理を行う。この任意の位置とは、製本工程で最終的な雑誌・書籍になるときに、断裁されてしまう部分やあるいは絵柄のない余白の部分である。
【0021】
コントロール・ストリップは、印刷の基本色である、K,C,M,Yの各々のインキ量を検査するため(検査結果は品質管理にも利用できる)の部分が含まれている。本発明第1及び2の発明においては、この各々のインキ量を検査するために必ず使用するパッチは、K,C,M,Yの各単色の、それぞれのベタパッチと60〜85%の範囲の平網パッチである。また、本発明第3及び4の発明においては、前記に加えて40〜50%の範囲の平網パッチを含めたパッチである。
【0022】
オフセット印刷の場合には、インキ量の調整は、印刷の流れ方向に沿って分割されたブレードの開き量によって行われるため、絵柄と印刷の流れ方向で対応していないパッチからは、絵柄の情報は得ることができない。従って、好ましくは各ゾーンのブレード毎に、印刷の基本色であるK,C,M,Yの4色のインキ量を検査する部分を配置した方が良いが、必ずしもそれに限定されるものではなく、本発明の第2及び第4の発明といったように、複数のインキキーゾーンに渡ってパッチを配置しても良い。
【0023】
本発明の第1の発明の場合は、K,C,M,Y各々単色のベタパッチと60〜85%の間の平網パッチが、また、第3の発明においては、前記に加えて、40〜50%の間の平網パッチが、印刷機のインキキーに対応するゾーン毎に入るようにする。印刷機のインキキー幅は、通常30〜40mm程度であり、カラーバーを測定するセンサーは、1つのパッチが2.5mm幅程度あれば測定可能である。よって、例えばインキキー幅が35mmの印刷機の場合、各インキキーゾーンに対して14個のパッチを配置することが可能である。この場合、K,C,M,Y各々単色のベタパッチと60〜85%の間の平網パッチで合計8個となる。40〜50%の間の平網パッチも使用する場合は、パッチは合計で12個となる。残り6個あるいは2個のパッチについては、対象とする絵柄や印刷工場の管理方法などに基づいて、任意にデザインしてよいことは当然である。
【0024】
本発明の印刷不良検知方法の第1の実施形態について図2のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1において、測定装置は、コントロール・ストリップの色濃度値を測定する。
【0025】
ステップS2において、色管理制御装置20は、1インキキーの幅毎に、測定されたK,C,M,Yの各単色のそれぞれ60〜85%の範囲にある平網パッチと100%のベタパッチの色濃度値に基づいて、正常又は不良を判断する。
例えば、1インキキーの幅毎に、K,C,M,Yの各単色のそれぞれ60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値と100%のベタパッチの色濃度値との比を求め,この比が予め設定された範囲に含まれるかに基づいて、正常または不良を判断する。
【0026】
また、例えば、1インキキーの幅毎に、K,C,M,Yの各単色のそれぞれ60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値と100%のベタパッチの色濃度値との差を求め,この差が予め設定された範囲に含まれるかに基づいて、正常または不良を判断する。
【0027】
正常と判断された場合、上記ステップS1以下の処理が繰り返される。不良と判断された場合、ステップS3において、色管理制御装置20はアラームを発するとともに、印刷ユニットのインキキー開度の制御を中止する。
【0028】
本実施の形態の印刷不良検知方法について詳細に説明する。本実施の形態の印刷不良検知方法では、K,C,M,Y(ブラック,シアン,マゼンタ,イエロー)各色のベタ部の色濃度値と60〜85%の間の平網部の色濃度値の比又は差を求め、この比又は差が予め設定した許容範囲に入っているか否かを判定することにより、印刷にダブリやスラーが発生しているか、あるいは突発的にインキ・水バランスの平衡が崩れ調子の変化が起こっているか検知するという方法を用いている。
【0029】
前述の印刷不良が発生した時、異常を検知しないままベタパッチの色濃度でインキキー開度をコントロールする場合、測定結果からはダブリやスラーの発生・急激な調子変化に気がつかず、印刷不良が出た状態で印刷が進んでしまう恐れがある。
【0030】
また、60%〜85%の間の平網パッチの色濃度でインキキー開度をコントロールする場合には、ダブリやスラー・急激な調子変化により測定部分の色濃度が変動し、通常とは異なった色濃度となる。この発生原因が分からないままインキキー開度をコントロールすると、絵柄の全体の色調が異常をきたしてしまう。ダブリやスラーが発生した場合は、通常は色濃度が上がるため、全体的にインキ量を少なくする方向にインキキーがコントロールされ、ベタ部や、ダブリやスラーの発生していない部分、あるいは影響の少ない部分は色濃度が低くなる。ベタパッチの色濃度でインキキー開度をコントロールした場合と比較すると、見た目は正常な印刷物に近いが、商品になるレベルではなくなる。このため、印刷不良がどこからどこまでなのかを判別するのに、多大な時間を要するばかりか、場合によっては、印刷不良に気付かないまま、得意先に納品されてしまうこともある。
【0031】
ここで、検知判断にベタパッチと60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度を用いた理由について説明する。
まず、ベタパッチを用いた理由は、印刷不良によっても色濃度変化が少ないため、比較対象としての色濃度に適するためである。60〜85%の範囲にある平網パッチを用いた理由は、これ以下の平網パッチでは、印刷不良による色濃度の変動幅が小さく、感度が悪くなるためである。
【0032】
K、C、M、Y各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の間の平網パッチの色濃度の比又は差は、印刷用紙、印刷インキ、印刷速度、印刷線数などの印刷条件によって異なる。しかし、これらの条件が安定している場合、例えば印刷機がよくメンテナンスされており、入荷される印刷インキが管理されている場合には、製版での印刷線数が一定であれば、前述のK、C、M、Y各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の間の平網パッチの色濃度の比又は差は、印刷用紙の特性によって、いくつかの代表値を求めることができる。
【0033】
また、その代表値の許容範囲については、通常の生産の中で求めることができる。例えば、OKシート時の測定色濃度を解析対象としたヒストグラムを作成し、分布状態に異常が無いことを確認した上で、その平均許容範囲を予測することができる。こうして求まった目標値と許容範囲を予め入力して置くことにより、前述のダブリやスラーの影響、あるいは突発的にインキ・水バランスの平衡が崩れることによる調子の変化などの異常を検知することが可能となる。
【0034】
また、印刷オペレータが印刷物を確認して、それを見本とする場合には、その見本となる印刷物のK、C、M、Y各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の間の平網パッチの色濃度の比又は差を目標値とし、前述の通常の生産の中で求めた許容範囲を用いて判定する方法を用いればよい。
【0035】
色管理制御装置20は、許容範囲を超えた場合には、異常が発生しているとして、アラームを出し印刷オペレータに知らせるとともに、インキキー開度のコントロールを中止する。あるいは、インキキー開度のコントロールを中止し、アラーム信号を印刷機自体の制御装置に送出する。
【0036】
続いて、本発明の印刷不良検知方法の第2の実施形態について図3のフローチャートを用いて説明する。
ステップS11において、測定装置は、コントロール・ストリップの色濃度値を測定する。
【0037】
ステップS12において、色管理制御装置20は、1インキキーの幅毎に、測定されたK,C,M,Yの各単色のそれぞれ60〜85%の範囲にある平網パッチと100%のベタパッチと40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度値に基づいて、正常又は不良を判断する。
例えば、1インキキーの幅毎に、K,C,M,Yの各単色のそれぞれ100%のベタパッチの色濃度値と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値との差と、60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度値との差との比を求め、この比が所定の許容範囲に含まれるかに基づいて、正常または不良を判断する。
【0038】
正常と判断された場合、上記ステップS11以下の処理が繰り返される。不良と判断された場合、ステップS13において、色管理制御装置20はアラームを発するとともに、印刷ユニットのインキキー開度の制御を中止する。
【0039】
本実施の形態の印刷不良検知方法について詳細に説明する。本実施の形態の印刷不良検知方法では、K,C,M,Y(ブラック,シアン,マゼンタ,イエロー)各色のベタパッチの色濃度値と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値の差と、60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度値の差を算出し、その差の比が予め設定した許容範囲に入っているか否かを判定することにより、印刷にダブリやスラーが発生していたり、あるいは突発的にインキ・水バランスの平衡が崩れ調子の変化が起きたり、さらには版作成工程の条件が不安定であったりすることによる印刷不良を検知するという方法を用いている。
【0040】
版作成工程の露光・現像条件の不安定さにより、制御対象となる60%〜85%の間の平網パッチの網点の大きさが設計値と異なる場合には、たとえ適正なインキ量を与えても通常とは異なった色濃度となる。網点が大きい場合には、通常は色濃度が上がるため、全体的にインキ量を少なくする方向にインキキーがコントロールされ、全体的に色濃度が適正値よりも低くなる。逆に網点が小さい場合には、通常は色濃度が下がるため、全体的にインキ量を多くする方向にインキキーがコントロールされ、全体的に色濃度が適正値よりも高くなる。
【0041】
以下に、不良判断にベタパッチと60〜85%の範囲にある平網パッチと40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度値を用いた理由について説明する。
【0042】
まず、ベタパッチを用いた理由は、印刷不良によっても色濃度変化が少ないため、比較対象としての色濃度に適するためである。60〜85%の範囲にある平網パッチを用いた理由は、これ以下の平網パッチでは、印刷不良による色濃度値の変動幅が小さく、制御対象としては感度が悪くなるためである。また、40〜50%の範囲にある平網パッチを用いた理由は、これ以下の平網パッチでは、印刷不良による色濃度値の変動幅が小さく、比較対象としては感度が悪くなるためである。
【0043】
K,C,M,Yベタパッチの色濃度値と、60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値との差と、60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度値との差の比は、印刷用紙、印刷インキ、印刷速度、印刷線数などの印刷条件によって異なる。しかし、これらの条件が安定している場合、例えば印刷機がよくメンテナンスされており、入荷される印刷インキが管理されている場合には、製版での印刷線数が一定であれば、前述のK,C,M,Yベタパッチの色濃度値と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値との差と、60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度値との差の比は、印刷用紙の特性によって、いくつかの代表値を求めることができる。
【0044】
この代表値の許容範囲については、通常の生産の中で求めることができる。例えば、OKシート時の測定色濃度を解析対象としたヒストグラムを作成し、分布状態に異常が無いことを確認した上で、その平均許容範囲を予測することができる。こうして求まった目標値と許容範囲を予め入力して置くことにより、前述のダブリやスラーの影響、あるいは突発的にインキ・水バランスの平衡が崩れることによる調子の変化、版作成工程の不安定さに起因する不良などの異常を検知することが可能となる。
【0045】
また、印刷オペレータが印刷物を確認して、それを見本とする場合には、その見本となる印刷物のK,C,M,Yベタパッチの色濃度値と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値との差と、60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度値との差の比を目標値とし、前述の通常の生産の中で求めた許容範囲を用いて判定する方法を用いればよい。
【0046】
色管理制御装置20は、許容範囲を超えた場合には、異常が発生しているとして、アラームを出し印刷オペレータに知らせるとともに、インキキー開度のコントロールを中止する。あるいは、インキキー開度のコントロールを中止し、アラーム信号を印刷機自体の制御装置に送出する。
【0047】
<実施例1>
次に、本発明の印刷不良検知方法の第2の実施形態の実施例について説明する。これは一実施例であり、本発明を逸脱しない程度に実施可能である。
ある印刷物における、100%のベタパッチの色濃度値、60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度値、40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度値を、それぞれD100、Dt1、Dt2とする。
【0048】
色管理制御装置20は、以下の式1を用いて演算を行う。
P=(Dt1−Dt2)/(D100−Dt1) ――― (式1)
TC=P1/P0 ――― (式2)
尚、P0は、平常な印刷時にサンプリングした印刷物を測定して得たPの値である。P1は、現在の印刷物を測定して得たPの値である。上記式1、2は例示であり、他の色濃度の差の比を用いて制御を行っても良い。
【0049】
図4は、標準的な印刷状態の網点面積率と色濃度値の関係を表すグラフを示す。この図4のグラフからTCを演算すると、P1=P0であるため、TC=1となる。
【0050】
図5は、印刷中のインキ温度上昇による過度のドットゲインが発生した時の網点面積率と色濃度値との関係を表すグラフである。
上記図4の標準的な印刷状態のグラフと上記図5のグラフからTCを演算すると、TC=1.205となる。
【0051】
図6は、ブランケット上にインキやゴミが堆積して、インキ転移不良が発生した時の網点面積率と色濃度値との関係を表すグラフである。
図4の標準的な印刷状態のグラフと上記図6のグラフからTCを演算すると、TC=1.248となる。
【0052】
図7は、インキが過乳化状態になり、いくらインキを盛っても中間の濃度が上がらない時の網点面積率と色濃度値の関係を表すグラフである。
上記図4の標準的な印刷状態のグラフと図7のグラフからTCを演算すると、TC=0.860となる。
以上の結果から、TCの演算結果を用いることにより、印刷状態が正常であるか否か判断できることが分かる。
【0053】
表1に、作成時に露光量を変化させた印刷用の版を用いて印刷した時の網点面積率50%、80%、100%のパッチの色濃度値を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
尚、網点面積率40%〜50%の範囲内ではあるが上記50%ではない平網パッチと、網点面積率60%〜85%の範囲内であるが80%ではない平網パッチを、それぞれ用いても同様の効果は得られる。
作成時に露光量を1.5倍にして作成した印刷用の版を用いて印刷物を印刷し、印刷物をサンプリングし、このサンプリングした印刷物を測定し、TCを演算すると、TC=0.883となった。
【0056】
また、作成時に露光量を半分にして作成した印刷用の版を用いて印刷物を印刷し、印刷物をサンプリングし、このサンプリングした印刷物を測定し、TCを演算すると、TC=1.088となった。
【0057】
さらに、作成時に露光量を3割減にして作成した印刷用の版を用いて印刷物を印刷し、印刷物をサンプリングし、このサンプリングした印刷物を測定し、TCを演算すると、TC=1.043となった。
【0058】
以上の結果から、TCを演算し、その演算結果を用いることにより、印刷用の版が正常に作成されているか否かの判定ができる。
そして、日常の業務を通じてTCの許容範囲を定め、この許容範囲を判断基準として印刷不良を検知することにより、印刷状態や印刷用の版が悪いにもかかわらずコントロール・ストリップの色濃度を目標値に近づける制御を行って発生する印刷不良を防止できる。
【0059】
【発明の効果】
本発明の印刷不良検知方法により、ダブリ、スラーといった印刷不良や、インキ・水バランス異常による印刷不良が発生した場合に、速やかに検知することができる。
さらに、版作成工程での条件不安定に起因する印刷不良が発生した場合に、速やかに検知することができる。
また、印刷不良が発生した場合にインキキー開度の制御を中止するという印刷方法を用いることで、色調の異なる印刷物を大量に作ってしまったり、不良品が商品の中に混ざってしまうことを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の印刷不良検知装置の一実施例を説明する印刷機の概略図である。
【図2】本発明の印刷不良検知方法の第1の実施形態について一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の印刷不良検知方法の第2の実施形態について一例を示すフローチャートである。
【図4】標準的な印刷状態の網点面積率と色濃度値との関係を表すグラフである。
【図5】印刷中のインキ温度上昇による過度のドットゲインが発生した時の網点面積率と色濃度値との関係を表すグラフである。
【図6】ブランケット上にインキやゴミが堆積してインキ転移不良が発生した時の網点面積率と色濃度値との関係を表すグラフである。
【図7】インキが過乳化状態になり、いくらインキを盛っても中間の色濃度が上がらない時の網点面積率と色濃度値との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
10・・・Kユニット
11・・・Cユニット
12・・・Mユニット
13・・・Yユニット
14・・・ブランケット胴
15・・・版胴
16・・・インキローラ
17・・・インキ量コントロール装置
18・・・印刷用紙
20・・・色管理制御装置
25・・・測定ヘッド
26・・・測色データ
Claims (8)
- 印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデ−タに基づいて、印刷不良を検知する方法において、
前記パッチは、印刷機にある複数のインキキーの並びの方向に、複数色が繰り返し配置してあり、且つ、少なくとも、印刷の基本色であるK,C,M,Yの各単色のそれぞれ60〜85%の範囲にある平網パッチと100%のベタパッチであって、1インキキー幅内に配置された計8色のパッチを測定対象に含めた測定を行い、
得られた各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度とに基づいて求められる値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知することを特徴とする印刷不良検知方法。 - 印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデ−タに基づいて、印刷不良を検知する方法において、
前記パッチは、印刷機にある複数のインキキーの並びの方向に、複数色が繰り返し配置してあり、且つ、少なくとも、印刷の基本色であるK,C,M,Yの各単色のそれぞれ60〜85%の範囲にある平網パッチと100%のベタパッチであって、並びが連続した複数個のインキキー分の幅内に配置された計8色のパッチを測定対象に含めた測定を行い、
得られた各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度とに基づいて求められる値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知することを特徴とする印刷不良検知方法。 - 印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデータに基づいて、印刷品質を検査あるいは管理する印刷方法において、
前記パッチは、印刷機にある複数のインキキーの並びの方向に、複数色が繰り返し配置してあり、且つ、少なくとも、印刷の基本色であるK,C,M,Yの各単色のそれぞれ、100%のベタパッチと、60〜85%の範囲にある平網パッチと、40〜50%の範囲にある平網パッチであって、1インキキー幅内に配置された計12色のパッチを測定対象に含めた測定を行い、
得られた各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度との差と、前記60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度との差とに基づいて求められる値が、所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知することを特徴とする印刷不良検知方法。 - 印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデータに基づいて、印刷品質を検査あるいは管理する印刷方法において、
前記パッチは、印刷機にある複数のインキキーの並びの方向に、複数色が繰り返し配置してあり、且つ、少なくとも、印刷の基本色であるK,C,M,Yの各単色のそれぞれ、100%のベタパッチと、60〜85%の範囲にある平網パッチと、40〜50%の範囲にある平網パッチであって、並びが連続した複数個のインキキー分の幅内に配置された計12色のパッチを測定対象に含めた測定を行い、
得られた各色のベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度との差と、前記60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度との差とに基づいて求められる値が、所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知することを特徴とする印刷不良検知方法。 - 印刷紙面内のコントロール・ストリップを設けたパッチの色濃度を測定するパッチ色濃度測定手段と、該パッチ色濃度測定手段より得られたK,C,M,Yの各単色ベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度とに基づいて求められる値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知する比較演算手段とを備えることを特徴とする印刷不良検知装置。
- 印刷紙面内のコントロール・ストリップを設けたパッチの色濃度を測定するパッチ色濃度測定手段と、該パッチ色濃度測定手段より得られたK,C,M,Yの各単色ベタパッチの色濃度と60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度との差と、前記60〜85%の範囲にある平網パッチの色濃度と40〜50%の範囲にある平網パッチの色濃度との差とに基づいて求められる値が所定の範囲に含まれるか否かを判断し、前記範囲に含まれない場合に印刷を不良と検知する比較演算手段とを備えることを特徴とする印刷不良検知装置。
- 前記比較演算手段が印刷を不良と検知した場合のアラーム信号を受けて、アラームを出力するアラーム手段を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の印刷不良検知装置。
- 印刷紙面内にコントロール・ストリップを設け、該コントロール・ストリップのパッチを測定することにより得られたデ−タに基づいて、インキキー開度を制御する印刷方法において、前記請求項1〜4の何れかの印刷不良検知方法によって印刷不良を検知した際に、アラームを発するとともに、インキキー開度の制御を中止することを特徴とする印刷機制御方法。
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