JP2004001356A - 透明水蒸気バリアフィルムシートおよびその製造方法 - Google Patents

透明水蒸気バリアフィルムシートおよびその製造方法 Download PDF

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森本 純平
Kentaro Fujimoto
藤本 健太郎
Hironori Maruyama
丸山 宏典
Hisashi Ito
伊東 寿
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Abstract

【課題】曲げ性に強く、従来よりも高い水蒸気バリア性能を持つ透明フィルムを提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が150℃以上の基材フィルムシート上に無機物層を積層後、加熱する透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。無機物層は、珪素を含むものが好ましく、スパッタリングにより形成されることが好ましい。また、無機物層の厚みは、200Å以上500Å以下であることが好ましい。加熱する温度は、150℃〜前記表面層樹脂のガラス転位温度以下であることが望ましい。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水蒸気バリア性の高いバリアフィルムシートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、樹脂基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成した水蒸気バリアフィルムシートは、水蒸気の遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。特に液晶表示素子、EL素子などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明樹脂等の基材が採用され始めている。また、樹脂フィルムシートは上記要求に応えるだけでなく、ロールトゥロール方式が可能であることからガラスよりも生産性が良くコストダウンの点でも有利である。
【0003】
しかしながら、フィルムシート基材はガラスに対し水蒸気バリア性が劣るという問題がある。水蒸気バリア性が劣る基材を用いると、水蒸気が浸透し、例えば包装内容物である水蒸気の遮断を必要とする物品を変質させたり、表示素子用途においては、液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。この様な問題を解決するためにフィルム基板上に無機物薄膜を形成してガスバリアフィルム基材とすることが知られている。包装材や表示素子に使用される水蒸気バリアフィルムとしてはプラスチック基板上に酸化珪素を蒸着したもの(特許文献1)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特許文献2)が知られており、いずれも1g/m/day程度の水蒸気バリア性を有する。近年では、液晶ディスプレイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発によりプラスチックフィルム基板への水蒸気バリア性能について0.1g/m/day程度まで要求が上がってきている。これに応えるためにより高い水蒸気バリア性能が期待できる手段としてスパッタリング法やCVD法による成膜検討が行われている。
【0004】
ところが、ごく近年においてさらなる水蒸気バリア性を要求される有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進み、これに使用可能な透明性を維持しつつもさらなる高水蒸気バリア性0.1g/m/day未満の性能をもつ基材が要求されるようになってきた。さらに、曲げる事が可能な表示デバイスとしての要望も大きく、曲げても水蒸気バリア性能が劣化しないバリア層が必要となってきた。
【0005】
【特許文献1】
特公昭53−12953号公報
【特許文献2】
特開昭58−217344号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、曲げに強く、従来よりも高い水蒸気バリア性能を持つ透明フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
(1) ガラス転移温度が150℃以上の基材フィルムシート上に無機物層を積層後、加熱する透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
(2) 前記無機物層が、珪素を含む(1)の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
(3) 前記無機物層がスパッタリングにより形成されていることを特徴とする(1)、(2)の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
(4) 前記無機物層の膜厚が200Å以上500Å以下であることを特徴とする(1)〜(3)の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
(5) 前記基材フィルムシート上に他の樹脂による表面層を有する(1)〜(4)の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
(6) 加熱する温度が、150℃〜前記表面層樹脂のガラス転位温度以下である(1)〜(5)のバリアフィルムシートの製造方法。
(7) (1)〜(6)の製造方法によって製造された透明水蒸気バリアフィルムシートであって、前記無機物層側の面が外側になるよう巻径6mmの丸棒に180°巻き付ける処理をした後の水蒸気透過度が0.1g/m/day以下である透明水蒸気バリアフィルムシート。
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、樹脂フィルムシート上に構成された無機物層を、加熱することにより、水蒸気バリア性を向上させるものである。
本発明の無機物層に関しては何ら制限はないが、例えばSi、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce等の1種以上を含む酸化物もしくは窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。無機物層は厚すぎると曲げ応力によるクラックのおそれがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる。上記の理由により、無機物層の厚みは200Å以上500Å以下の範囲が好ましい。表示素子用途などのように、水蒸気バリア性と高透明性を両立させるには無機物層として珪素酸化物や珪素酸化窒化物等の珪素を含むものを使うのが好ましい。珪素酸化物はSiOxと表記され、たとえば、無機物層としてSiOxを用いる場合、良好な水蒸気バリア性と高い光線透過率を両立させるためには1.6<x<2.0であることが望ましい。珪素酸化窒化物はSiOxNyと表記されるが、このxとyの比率は密着性向上を重視する場合、酸素リッチの膜とし、1<x<2、0<y<1が好ましく、水蒸気バリア性向上を重視する場合、窒素リッチの膜とし、0<x<0.8、0.8<y<1.3が好ましい。また、無機物層の製法として、スパッタリング、蒸着、CVD、イオンプレーテイングなどがあるが、高融点物質や熱分解しやすい物質の層が作れるという利点から、スパッタリングが好ましい。
【0009】
本発明の基材フィルムシートについては特に制限はないが、例えば、ガラス転位温度(以下Tg)が150℃以上である、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等を使用することが好ましい。加熱処理温度を高くできるという点では、そのTgは200℃以上であることが望ましく、ポリエーテルサルホンは光学特性が良好で耐熱性が高く、有機物層・無機物層形成プロセスにおいて高温処理による変形や劣化が無いのでさらに好ましい。
また、本発明の基材フィルムシートは1種類の材質でなくても良く、2種類以上の樹脂による複合体、積層体であっても良い。
【0010】
本発明は基材フィルムシート上に他の樹脂による表面層を積層しても良い。無機物層と接する表面層は、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等を使用することができる。中でも、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、イソシアヌル酸アクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、エチレングリコールアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのうち、2官能以上のアクリロイル基を有するモノマーを塗工後、架橋させて得られる高分子を主成分とすることが無機物層との密着性や塗工性が良く好ましい。上記樹脂の内、特に架橋度が高く、Tgが150℃以上である、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレートを主成分とすることが好ましい。これらの2官能以上のアクリロイル基を有するモノマーは2種類以上を混合して用いても、また1官能のアクリレートを混合して用いても良い。また、それ自体で比較的バリア性のあるPVA系やEVA系、ポリ塩化ビニリデン、もしくはこれらの樹脂の複数を混用することもできる。これらの高分子を他の樹脂から成るフィルムシート上に積層する場合は、0.01〜10μm程度の厚みに積層するのが好ましいが、特に限定はしない。
【0011】
本発明の加熱方法については、特に限定はしないが、樹脂フィルムシート上に無機物層を積層後、オーブン等の高温環境中で加熱する方法、無機物層に温風等の熱媒体を接触させる方法、電磁波・高周波等による方法を例示することができる。また、その加熱温度については、特に限定しないが、150℃〜樹脂基材のTg以下が特に水蒸気バリア性の向上に効果的であり、好ましい。
【0012】
【実施例】
以下本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は、何ら下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリエーテルサルホンフィルム(Tg:225℃)に2官能のエポキシアクリレート(昭和高分子VR−60−LAV、Tg:87℃)25wt%、ジエチレングリコール50wt%、酢酸エチル24wt%、シランカップリング剤1wt%からなる均一な混合溶液をスピンコーターで塗布し、80℃10分加熱乾燥後さらにUV照射で硬化させて2μmの樹脂層を形成した。つぎに、スパッタ装置の真空槽内に前記有機物層を形成したフィルムをセットし10−4Pa台まで真空引きし、放電ガスとしてアルゴンを分圧で0.04Pa導入、反応ガスとして酸素を分圧で0.04Pa導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始しSiターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開きフィルムへのSiOx無機膜の形成を開始した。50nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。その後、真空槽内に大気を導入しSiOx無機物層の形成されたフィルムを取り出した。その後、200℃に保ったオーブンで1時間加熱処理をした。
【0013】
(実施例2)
実施例1と同様に、ポリエーテルサルホンフィルム上に無機物層の形成を行った後、150℃に保ったオーブンで1時間加熱処理をした。
(実施例3)
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(東亞合成 M315、ガラス転移温度:250℃)フィルム上に、樹脂層を介さずに直接、実施例1と同様のスパッタリング手法でSiOx無機物層を形成させ、その後、200℃に保ったオーブンで1時間加熱処理をした。
(実施例4)
実施例1での、2官能のエポキシアクリレートの代わりに、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートを用いて、その他は全く同じ手法で成膜を行い、その後、200℃に保ったオーブンで1時間加熱処理をした。
【0014】
(比較例1)
実施例1と同様に、表面に樹脂層を形成させたポリエーテルサルホンフィルム上に無機物層の形成を行い、加熱処理は行わなかった。
(比較例2)
実施例1と同様に、表面に樹脂層を形成させたポリエーテルサルホンフィルム上に無機物層の形成を行った後、230℃に保ったオーブンで1時間加熱処理をした。
(比較例3)
実施例3と同様に、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート上に無機物層の形成を行い、加熱処理は行わなかった。
(比較例4)
実施例4と同様に、表面に樹脂層を形成させたポリエーテルサルホンフィルム上に無機物層の形成を行い、加熱処理は行わなかった。
(比較例5)
ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度:69℃)上に、実施例1と同様の手法で無機物層の形成を行い、150℃に保ったオーブンで1時間加熱処理をした。
【0015】
(評価)
各々の製法によって形成されたバリアフィルムシートにおいて、無機物層の面が外側になるよう巻径6mmの丸棒に180°巻き付ける処理を施し、その屈曲処理前後における水蒸気透過度をJIS K 7129B法にて測定した。また、目視により外観を評価した。結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
Figure 2004001356
【0017】
実施例1〜4においては、いずれの評価結果も表示素子用としての要求特性を十分に満たしており、また実施例1〜4と比較例1・3・4から、加熱処理を行うことによって水蒸気透過度が小さい値をとることが確認された。熱処理温度が230℃と樹脂基材のガラス転移温度以上である比較例2では、実施例1・2と比較して水蒸気透過度が高い値となった。これは、高熱のため基材が変形し樹脂基材と無機物層との密着が所々で悪く、バリア性にも影響しているものと推定される。また、ポリエチレンテレフタレートを樹脂基板として用いた比較例5では、100℃以上で樹脂基板が軟化し、水蒸気バリア性が得られなかった。
【0018】
さらに、実施例1と比較例1とからは加熱処理後に屈曲処理をしても水蒸気透過度が変化しないが、加熱処理無しで屈曲処理をすると水蒸気透過度の値が大きくなることが確認された。これらのことから、屈曲処理の有無を問わず加熱処理によって水蒸気バリア性が向上(水蒸気透過度の値が低下)することが確認された。
【0019】
【発明の効果】
本発明により、熱処理という簡便な手法によって曲げ性に強く、従来より高い水蒸気バリア性をもつ透明フィルムの作成が可能となった。

Claims (7)

  1. ガラス転移温度が150℃以上の基材フィルムシート上に無機物層を積層後、加熱する透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
  2. 前記無機物層が、珪素を含む請求項1記載の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
  3. 前記無機物層がスパッタリングにより形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
  4. 前記無機物層の膜厚が200Å以上500Å以下であることを特徴とする請求項1〜3何れか一項記載の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
  5. 前記基材フィルムシート上に他の樹脂による表面層を有する請求項1〜4何れか一項記載の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
  6. 加熱する温度が、150℃〜前記表面層樹脂のガラス転位温度以下である請求項1〜5何れか一項記載の透明水蒸気バリアフィルムシートの製造方法。
  7. 請求項1〜6何れか1項記載の製造方法によって製造された透明水蒸気バリアフィルムシートであって、前記無機物層側の面が外側になるよう巻径6mmの丸棒に180°巻き付ける処理をした後の水蒸気透過度が0.1g/m/day以下である透明水蒸気バリアフィルムシート。
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