JP2003531248A - Moが基になった触媒組成物を用いて共役ジエン重合体の性質を調節する方法 - Google Patents

Moが基になった触媒組成物を用いて共役ジエン重合体の性質を調節する方法

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Abstract

(57)【要約】 (a)モリブデン含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイトと(c)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物を含有させた材料の組み合わせまたは反応生成物である触媒組成物は特に共役ジエンの重合で用いるに有用である。1,3−ブタジエンを重合させてシンジオタクテック1,2−ポリブタジエンを生成させる時、前記有機アルミニウム化合物の比率を調整することにより重合体生成物の溶融温度および分子量を変えることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の背景) 本発明は、一般に、共役ジエンの重合方法、より詳細には、(a)モリブデン
含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイト(hydrogen phos
phite)と(c)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレ
ンド物を組合せることにより生成したMoが基になった触媒組成物を用いる方法
に関する。この触媒組成物を用いた方法で製造した共役ジエン重合体の性質、例
えば溶融温度および分子量などを操作することができる。
【0002】 シンジオタクチック(syndiotactic)1,2−ポリブタジエン(
本明細書では以降「s−PBD」)は、側鎖であるビニル基が主重合体鎖に関し
て相対する側に交互に位置する立体規則的構造を有する結晶性で熱可塑性の樹脂
である。s−PBDは、プラスチックとゴムの両方の性質を示すユニークな材料
であり、従って、これは数多くの用途を有する。例えば、s−PBDを用いてフ
ィルム、繊維およびいろいろな成形品を製造することができる。また、これを天
然または合成ゴムにブレンドして一緒に硬化させることも可能である。
【0003】 s−PBDの製造は溶液、乳化または懸濁重合で実施可能である。s−PBD
の物性は主にその溶融温度および分子量で決まる。s−PBDが示す溶融温度は
一般に約195から約215℃の範囲内であるが、加工性を考慮すると、s−P
BDの溶融温度は一般に約195℃未満であるのが望ましい。従って、s−PB
Dの溶融温度と分子量を調節する手段が求められている。
【0004】 s−PBDの製造ではCo、Ti、V、MoおよびCrが基になったいろいろ
な遷移金属触媒系が報告されている。しかしながら、そのような触媒系は大部分
が全く実用性を有さない、と言うのは、それらは触媒活性が低いか或は立体選択
性が劣りそしてある場合には商業的使用に適切でない低い分子量の重合体または
部分的に架橋した重合体がもたらされるからである。
【0005】 商業的規模のs−PBD製造ではCoが基になった下記の2種類の触媒系が知
られている:(1)ビス(アセチルアセトネート)Co、トリエチルアルミニウ
ム、水およびトリフェニルホスフィンを含有する系(米国特許第3,498,9
63号および4,182,813号)、そして(2)トリス(アセチルアセトネ
ート)Co、トリエチルアルミニウムおよびCS2を含有する系(米国特許第3
,778,424号)。このようなCoが基になった触媒系もまた欠点を有する
【0006】 この上に示した1番目のCo触媒系を用いると非常に低い結晶度を示すs−P
BDがもたらされる。また、このような触媒系が充分な触媒活性を示すのは、ハ
ロゲン置換炭化水素溶媒を重合用媒体として用いた時のみであり、ハロゲン置換
溶媒は毒性に問題がある。
【0007】 この上に示した2番目のCo触媒系ではCS2が触媒成分の1つとして用いら
れている。CS2は低い引火点を示し、不快な臭いを発し、高い揮発性を示しか
つ毒性があることから、これの使用は困難かつ危険であり、それが僅かな量でも
大気の中に入り込まないように高価な安全手段を取る必要がある。その上、その
ようなCo触媒系を用いて製造したs−PBDは約200から210℃の非常に
高い溶融温度を示すことから、このような重合体は加工が困難である。触媒改質
剤を4番目の触媒成分として用いることで、前記Co触媒系を用いて製造させる
s−PBDの溶融温度を下げることは可能であるが、そのような触媒改質剤を存
在させると触媒活性および重合体収率が悪影響を受ける。従って、そのようなC
oが基になった触媒系を産業的に用いるには数多くの制限が要求される。
【0008】 Mo含有化合物が基になった配位触媒系、例えばアセチルアセトネートモリブ
デンとトリエチルアミンの組み合わせなどがある時期知られていたが、それらが
1,3−ブタジエンの重合で示す触媒活性は非常に低くかつ立体選択性も劣るこ
とが示された。生成物混合物はしばしばオリゴマー、低分子量の液状重合体およ
び部分的に架橋した重合体を含有する。従って、このような触媒系はほとんど産
業的有用性を持たない。
【0009】 s−PBDは有用でありかつ本技術分野で今まで知られていた触媒は数多くの
欠点を有することから、1,3−ブタジエンを重合してs−PBDを生成させる
ため高い活性と立体選択性を示す有意に向上した新規な触媒組成物を開発するこ
とができれば、これは望ましいことである。また、重合生成物の溶融温度および
分子量を調節することができれば、これも望ましことである。
【0010】 (発明の要約) 本発明は、一般に、所望の性質を有する共役ジエン重合体の製造方法を提供し
、この方法は、(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイトと(
c)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム(本明細書では以降「有機Al
」)化合物のブレンド物を組合せることにより生成した触媒組成物を触媒有効量
で存在させて共役ジエン単量体を重合させる段階を含んで成る。
【0011】 本発明は、また、(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイト
と(c)立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を組み合せるこ
とにより生成した触媒組成物を用いて共役ジエン単量体を重合させることにより
製造した結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を調節する方法も提供する。この方
法は、少なくとも1種の立体障害有機Al化合物と少なくとも1種の非立体障害
(sterically non−hindered)有機Al化合物を選択し
、この選択した有機Al化合物を組み合せることにより前記触媒組成物の材料(
c)を生成させ、そしてその後、前記触媒組成物を用いて前記共役ジエン単量体
を重合させる段階を包含する。
【0012】 本発明は、更に、(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイト
と(c)立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を組み合わせる
段階を含んで成る方法で生成した触媒組成物も提供する。
【0013】 本発明は、また、(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイト
と(c)立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を含んで成る材
料の組み合わせまたは反応生成物である触媒組成物も提供する。
【0014】 本発明で用いるMoが基になった触媒組成物は、有利に、共役ジエン単量体、
例えば1,3−ブタジエンなどの重合で非常に高い触媒活性および立体選択性を
示す。このような活性および選択性により、とりわけ、触媒を低い濃度で用いて
共役ジエン重合体、例えばs−PBDなどを比較的短い重合時間後に非常に高い
収率で生成させることができると言った利点が得られる。本発明の触媒組成物は
有意に非常に幅広い用途を有する。立体的に異なる2種以上の有機Al化合物を
ブレンドすることにより、幅広い範囲の溶融温度および分子量を有する結晶性共
役ジエン重合体、例えばs−PBDなどを製造することができ、このように、触
媒活性および重合体の収率に悪影響を与える溶融温度調節剤も分子量調節剤も添
加する必要がない。加うるに、本発明で用いる触媒組成物はCS2を含有しない
。従って、CS2の使用に伴う毒性、不快な臭い、危険性および費用が除去され
る。その上、使用するMo含有化合物は一般に安定で安価で相対的に無毒であり
かつ容易に入手可能である。更にその上、本発明で用いる触媒組成物は、幅広く
多様な溶媒(ハロゲンで置換されていない環境的に好ましい溶媒、例えば脂肪族
および環状脂肪族炭化水素を包含)中で高い触媒活性を示す。
【0015】 (好適な態様の詳細な説明) 本発明は、一般に、Moが基になった触媒組成物を用いて共役ジエン重合体を
合成する方法に向けたものである。本発明の好適な態様は、結晶性共役ジエン重
合体、例えばs−PBDなどの合成に向けたものである。(a)Mo含有化合物
と(b)ハイドロジエンホスファイトと(c)立体的に異なる2種以上の有機A
l化合物のブレンド物を組み合わせることにより本発明で用いる触媒組成物を生
成させる。この3種類の触媒材料(a)、(b)および(c)に加えて、望まれ
るならばまた他の有機金属化合物またはルイス塩基を添加することも可能である
。立体的に異なる特定の有機Al化合物を選択することにより、得られる共役ジ
エン重合体の性質を調整することができる。例えば、立体的に異なる特定の有機
Al化合物を選択するか或は立体的に異なる有機Al化合物のモル比を変えるこ
とにより結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を調整することができる。
【0016】 いろいろなMo含有化合物またはこれらの混合物を本発明で用いる触媒組成物
の材料(a)として用いることができる。炭化水素溶媒、例えば芳香族炭化水素
、脂肪族炭化水素または環状脂肪族炭化水素などに可溶なMo含有化合物の使用
が一般に有利である。しかしながら、炭化水素に不溶なMo含有化合物を重合媒
体中で懸濁させることにより触媒活性種を生成させることも可能であり、従って
それも有用である。
【0017】 このようなMo含有化合物が含有するMo原子は0から+6以下の範囲のいろ
いろな酸化状態のものであってもよい。用いることができる適切な種類のMo含
有化合物には、これらに限定するものでないが、Moのカルボン酸塩、Moの有
機燐酸塩、Moの有機ホスホン酸塩、Moの有機ホスフィン酸塩、Moのカルバ
ミン酸塩、Moのジチオカルバミン酸塩、Moのキサントゲン酸塩、Moのβ−
ジケトネート、Moのアルコキサイドもしくはアリールオキサイド、Moのハロ
ゲン化物、Moの疑似ハロゲン化物、Moのオキシハロゲン化物および有機モリ
ブデン化合物が含まれる。この上に示した各種類の適切なモリブデン化合物の具
体例のいくつかには下記が含まれる。カルボン酸塩: 蟻酸塩、酢酸塩、アクリル酸塩、メタアクリル酸塩、吉草酸塩、グルコン酸塩
、クエン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、しゅう酸塩、オクチル酸塩
(2−ethylhexanoate)、ネオデカン酸塩、ナフテン酸塩、ステ
アリン酸塩、オレイン酸塩、安息香酸塩およびピコリン酸塩、有機燐酸塩: ジブチル燐酸塩、ジペンチル燐酸塩、ジヘキシル燐酸塩、ジヘプチル燐酸塩、
ジオクチル燐酸塩、ビス(1−メチルヘプチル)燐酸塩、ビス(2−エチルヘキ
シル)燐酸塩、ジデシル燐酸塩、ジドデシル燐酸塩、ジオクタデシル燐酸塩、ジ
オレイル燐酸塩、ジフェニル燐酸塩、ビス(p−ノニルフェニル)燐酸塩、ブチ
ル(2−エチルヘキシル)燐酸塩、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシ
ル)燐酸塩および(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)燐酸塩、有機ホスホン酸塩: ブチルホスホン酸塩、ペンチルホスホン酸塩、ヘキシルホスホン酸塩、ヘプチ
ルホスホン酸塩、オクチルホスホン酸塩、(1−メチルヘプチル)ホスホン酸塩
、(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、デシルホスホン酸塩、ドデシルホスホ
ン酸塩、オクタデシルホスホン酸塩、オレイルホスホン酸塩、フェニルホスホン
酸塩、(p−ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ブチルブチルホスホン酸塩、ペン
チルペンチルホスホン酸塩、ヘキシルヘキシルホスホン酸塩、ヘプチルヘプチル
ホスホン酸塩、オクチルオクチルホスホン酸塩、(1−メチルヘプチル)(1−
メチルヘプチル)ホスホン酸塩、(2−エチルヘキシル)(2−エチルヘキシル
)ホスホン酸塩、デシルデシルホスホン酸塩、ドデシルドデシルホスホン酸塩、
オクタデシルオクタデシルホスホン酸塩、オレイルオレイルホスホン酸塩、フェ
ニルフェニルホスホン酸塩、(p−ノニルフェニル)(p−ノニルフェニル)ホ
スホン酸塩、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、(2−エチルヘキシ
ル)ブチルホスホン酸塩、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホス
ホン酸塩、(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスホン酸塩、(2
−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスホン酸塩および(p−ノニルフ
ェニル)(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、有機ホスフィン酸塩: ブチルホスフィン酸塩、ペンチルホスフィン酸塩、ヘキシルホスフィン酸塩、
ヘプチルホスフィン酸塩、オクチルホスフィン酸塩、(1−メチルヘプチル)ホ
スフィン酸塩、(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、デシルホスフィン酸塩
、ドデシルホスフィン酸塩、オクタデシルホスフィン酸塩、オレイルホスフィン
酸塩、フェニルホスフィン酸塩、(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ジブ
チルホスフィン酸塩、ジペンチルホスフィン酸塩、ジヘキシルホスフィン酸塩、
ジヘプチルホスフィン酸塩、ジオクチルホスフィン酸塩、ビス(1−メチルヘプ
チル)ホスフィン酸塩、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ジデシル
ホスフィン酸塩、ジドデシルホスフィン酸塩、ジオクタデシルホスフィン酸塩、
ジオレイルホスフィン酸塩、ジフェニルホスフィン酸塩、ビス(p−ノニルフェ
ニル)ホスフィン酸塩、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、(1−
メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩および(2−エチルヘ
キシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、カルバミン酸塩: ジメチルカルバミン酸塩、ジエチルカルバミン酸塩、ジイソプロピルカルバミ
ン酸塩、ジブチルカルバミン酸塩およびジベンジルカルバミン酸塩、ジチオカルバミン酸塩: ジメチルジチオカルバミン酸塩、ジエチルジチオカルバミン酸塩、ジイソプロ
ピルジチオカルバミン酸塩、ジブチルジチオカルバミン酸塩およびジベンジルジ
チオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩: メチルキサントゲン酸塩、エチルキサントゲン酸塩、イソプロピルキサントゲ
ン酸塩、ブチルキサントゲン酸塩およびベンジルキサントゲン酸塩、β−ジケトネート: アセチルアセトネート、トリフルオロアセチルアセトネート、ヘキサフルオロ
アセチルアセトネート、ベンゾイルアセトネート、2,2,6,6−テトラメチ
ル−3,5−ヘプタンジオネート、ジオキサイドビス(アセチルアセトネート)
、ジオキサイドビス(トリフルオロアセチルアセトネート)、ジオキサイドビス
(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)、ジオキサイドビス(ベンゾイルアセ
トネート)およびジオキサイドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−
ヘプタンジオネート)、アルコキサイドまたはアリールオキサイド: メトキサイド、エトキサイド、イソプロポキサイド、2−エチルヘキソキサイ
ド、フェノキサイド、ノニルフェノキサイドおよびナフトキサイド、ハロゲン化物: 六フッ化物、五フッ化物、四フッ化物、三フッ化物、五塩化物、四塩化物、三
塩化物、四臭化物、三臭化物、三ヨウ化物および二ヨウ化物、疑似ハロゲン化物: シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩およびアジ化物、そしてオキシハロゲン化物: オキシ四フッ化物、ジオキシ二フッ化物、オキシ四塩化物、オキシ三塩化物、
ジオキシ二塩化物、オキシ三臭化物およびジオキシ二臭化物。
【0018】 用語「有機モリブデン化合物」は、Mo−C結合を少なくとも1つ含むモリブ
デン化合物のいずれかを指す。適切な有機モリブデン化合物の具体例のいくつか
には、トリス(アリル)モリブデン、トリス(メタアリル)モリブデン、トリス
(クロチル)モリブデン、ビス(シクロペンタジエニル)モリブデン、ビス(エ
チルベンゼン)モリブデン、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)モリブ
デン、ビス(ペンタジエニル)モリブデン、ビス(2,4−ジメチルペンタジエ
ニル)モリブデン、ビス(アリル)トリカルボニルモリブデン、(シクロペンタ
ジエニル)(ペンタジエニル)モリブデン、テトラ(1−ノルボルニル)モリブ
デン、(トリメチレンメタン)テトラカルボニルモリブデン、ビス(ブタジエン
)ジカルボニルモリブデン、(ブタジエン)テトラカルボニルモリブデンおよび
ビス(シクロオクタテトラエン)モリブデンが含まれる。
【0019】 本発明で用いる触媒組成物の材料(b)として用いることができる有用なハイ
ドロジエンホスファイト化合物は非環状ハイドロジエンホスファイト、環状ハイ
ドロジエンホスファイトおよびこれらの混合物である。
【0020】 非環状のハイドロジエンホスファイトは一般に下記のケト−エノール形互変異
性構造:
【0021】
【化2】
【0022】 [ここで、R1およびR2は、同一もしくは異なっていてもよく、一価の有機基で
ある] で描写可能である。R1およびR2は、好適には、ヒドロカルビル基、例えばこれ
らに限定するものでないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、
アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アリル、置
換アリール、アラルキル、アルカリールおよびアルキニル基などであり、各基が
含むC原子の数は好適には1またはそのような基が形成されるに適した最小限の
C原子数から20以下のC原子数である。前記ヒドロカルビル基はヘテロ原子、
例えばこれらに限定するものでないがN、O、Si、SおよびPなどを含んでい
ることができる。非環状のハイドロジエンホスファイトは主にケト互変異性体(
左側に示した)として存在し、エノール互変異性体(右側に示した)は主要でな
い種である。上述した互変異性平衡の平衡定数は温度、R1およびR2基の種類、
溶媒の種類などの如き要因に依存する。両方の互変異性体とも水素結合により二
量体、三量体またはオリゴマー形態で結合していることができる。この2種類の
互変異性体のいずれかまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0023】 適切な非環状ハイドロジエンホスファイトの代表的な非限定例には、ジメチル
ハイドロジエンホスファイト、ジエチルハイドロジエンホスファイト、ジブチル
ハイドロジエンホスファイト、ジヘキシルハイドロジエンホスファイト、ジオク
チルハイドロジエンホスファイト、ジデシルハイドロジエンホスファイト、ジド
デシルハイドロジエンホスファイト、ジオクタデシルハイドロジエンホスファイ
ト、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ハイドロジエンホスファイト、ジ
イソプロピルハイドロジエンホスファイト、ビス(3,3−ジメチル−2−ブチ
ル)ハイドロジエンホスファイト、ビス(2,4−ジメチル−3−ペンチル)ハ
イドロジエンホスファイト、ジ−t−ブチルハイドロジエンホスファイト、ビス
(2−エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジネオペンチルハイドロ
ジエンホスファイト、ビス(シクロプロピルメチル)ハイドロジエンホスファイ
ト、ビス(シクロブチルメチル)ハイドロジエンホスファイト、ビス(シクロペ
ンチルメチル)ハイドロジエンホスファイト、ビス(シクロヘキシルメチル)ハ
イドロジエンホスファイト、ジシクロブチルハイドロジエンホスファイト、ジシ
クロペンチルハイドロジエンホスファイト、ジシクロヘキシルハイドロジエンホ
スファイト、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルハイドロジエン
ホスファイト、ジナフチルハイドロジエンホスファイト、ジベンジルハイドロジ
エンホスファイト、ビス(1−ナフチルメチル)ハイドロジエンホスファイト、
ジアリルハイドロジエンホスファイト、ジメタアリルハイドロジエンホスファイ
ト、ジクロチルハイドロジエンホスファイト、エチルブチルハイドロジエンホス
ファイト、メチルヘキシルハイドロジエンホスファイト、メチルネオペンチルハ
イドロジエンホスファイト、メチルフェニルハイドロジエンホスファイト、メチ
ルシクロヘキシルハイドロジエンホスファイト、メチルベンジルハイドロジエン
ホスファイトなどが含まれる。また、この上に示したジヒドロカルビルハイドロ
ジエンホスファイトの混合物を用いることも可能である。
【0024】 環状ハイドロジエンホスファイトは、一般に、P原子に単結合している2つの
O原子の間を橋渡ししている二価の有機基を含有する。そのような環状ハイドロ
ジエンホスファイトは下記のケト−エノール形互変異性構造:
【0025】
【化3】
【0026】 [ここで、R3は二価の有機基である] で描写可能である。R3は、好適には、ヒドロカルビレン基、例えばこれらに限
定するものでないが、アルキレン、シクロアルキレン、置換アルキレン、置換シ
クロアルキレン、アルケニレン、シクロアルケニレン、置換アルケニレン、置換
シクロアルケニレン、アリーレンおよび置換アリーレン基などであり、各基が含
むC原子の数は好適には1またはそのような基が形成されるに適した最小限のC
原子数から20以下のC原子数である。前記ヒドロカルビレン基はヘテロ原子、
例えばこれらに限定するものでないがN、O、Si、SおよびPなどを含んでい
ることもできる。環状のハイドロジエンホスファイトは主にケト互変異性体(左
側に示した)として存在し、エノール互変異性体(右側に示した)は主要でない
種である。上述した互変異性平衡の平衡定数は温度、R3基の種類、溶媒の種類
などの如き要因に依存する。両方の互変異性体とも水素結合により二量体、三量
体またはオリゴマー形態で結合していることができる。この2種類の互変異性体
のいずれかまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0027】 環状ハイドロジエンホスファイトの合成は非環状ジヒドロカルビルハイドロジ
エンホスファイト(通常はジメチルハイドロジエンホスファイトまたはジエチル
ハイドロジエンホスファイト)とアルキレンジオールもしくはアリーレンジオー
ルのエステル交換反応で実施可能である。このエステル交換反応の手順は本分野
の技術者に良く知られている。エステル交換反応を典型的には非環状ジヒドロカ
ルビルハイドロジエンホスファイトとアルキレンジオールもしくはアリーレンジ
オールの混合物を加熱することにより実施する。その後、エステル交換反応の結
果と得られる副生成物であるアルコール(通常はメタノールまたはエタノール)
を留出させると新しく生成した環状のハイドロジエンホスファイトが残存する。
【0028】 適切な環状アルキレンハイドロジエンホスファイトの例は、2−オキソ−(2
H)−5−ブチル−5−エチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキ
ソ−(2H)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オ
キソ−(2H)−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−
4−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−5−
エチル−5−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H
)−5,5−ジエチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2
H)−5−メチル−5−プロピル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オ
キソ−(2H)−4−イソプロピル−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサ
ホスホリナン、2−オキソ−(2H)−4,6−ジメチル−1,3,2−ジオキ
サホスホリナン、2−オキソ−(2H)−4−プロピル−5−エチル−1,3,
2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−4−メチル−1,3,2−
ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,5−ジメチル−1,3,2−
ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,4,5,5−テトラメチル−
1,3,2−ジオキサホスホランなどである。また、この上に示した環状アルキ
レンハイドロジエンホスファイトの混合物を用いることも可能である。
【0029】 適切な環状アリーレンハイドロジエンホスファイトの例は、2−オキソ−(2
H)−4,5−ベンゾ−1,3,2−ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H
)−4,5−(3’−メチルベンゾ)−1,3,2−ジオキサホスホラン、2−
オキソ−(2H)−4,5−(4’−メチルベンゾ)−1,3,2−ジオキサホ
スホラン、2−オキソ−(2H)−4,5−(4’−t−ブチルベンゾ)−1,
3,2−ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,5−ナフタロ−1,
3,2−ジオキサホスホランなどである。また、この上に示した環状アリーレン
ハイドロジエンホスファイトの混合物を用いることも可能である。
【0030】 上述したように、本触媒組成物の材料(c)は、異なる立体障害を有する2種
以上の有機Al化合物のブレンド物を含む。炭化水素溶媒に可溶な有機Al化合
物の使用が一般に好適である。用語「有機Al化合物」を本明細書で用いる場合
、これはAl−C結合を少なくとも1つ含むAl化合物のいずれかを指す。好適
な態様では、立体障害を有する少なくとも1種の有機Al化合物とあまり立体障
害を有さない、即ちより簡単に述べると非障害の少なくとも1種の有機Al化合
物を組み合わせることにより本触媒組成物の材料(c)を生成させる。
【0031】 材料(c)を生成させる時に用いる有機Al化合物は、一般に、炭素原子を介
してアルミニウム原子に結合している有機基を少なくとも1つ含むことを特徴と
する。このような有機基の構造によって有機Al化合物が本発明の目的で立体的
に障害または非障害であるかが決まる。このような有機基の構造は、アルミニウ
ム原子に結合している有機基を示す下記の図を参照することにより最良に説明さ
れる:
【0032】
【化4】
【0033】 ここで、Cαはα炭素であり、そしてCβはβ炭素である。有機Al化合物の立
体障害は一般にα炭素およびβ炭素の置換パターンで決まる。α炭素が第二級ま
たは第三級炭素、即ちこれに結合している水素原子の数が1のみであるか或はゼ
ロの場合の有機Al化合物は立体的に障害を受けている。また、β炭素に結合し
ている水素原子の数が1のみであるか或はゼロの場合の有機Al化合物も立体的
に障害を受けている。他方、α炭素が第一級炭素、即ちこれに結合している水素
原子の数が2の場合そしてβ炭素に結合している水素原子の数が少なくとも2の
場合の有機Al化合物は障害を受けていない。障害を受けていない他の有機基に
はCH3またはCH2Fが含まれる。
【0034】 立体障害有機基の非限定例にはイソプロピル、イソブチル、t−ブチル、2−
エチルヘキシル、ネオペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロペンチルお
よび2,6−ジメチルフェニル基が含まれる。非障害有機基の非限定例にはメチ
ル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシルおよびn−オクチル基が
含まれる。
【0035】 本分野の技術者は、この上の図に示したようにAl原子の原子価は一般に3で
あることから有機Al化合物が障害有機基と非障害有機基の両方を含むことがあ
り得ることを理解するであろう。有機Al化合物が障害有機基と非障害有機基の
両方を含む場合、本明細書の目的で、そのような化合物は立体障害と非障害の両
方であると見なす、と言うのは、障害有機基と非障害有機基の両方が得られる重
合体の性質に影響を与えると考えているからである。
【0036】 本発明で用いる触媒組成物の材料(c)を生成させる時に用いることができる
好適な種類の有機Al化合物は、一般式AlRn3-n[式中、各Rは独立して、
Al原子にC原子を介して結合している一価有機基であり、nは1から3の整数
であり、そして各Xは独立して水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、
アルコキサイド基またはアリールオキサイド基である]で表される。各Rは、好
適には、ヒドロカルビル基、例えばこれらに限定するものでないが、アルキル、
シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シ
クロアルケニル、アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリール
およびアルキニル基などであり、各基が含むC原子の数は好適には1またはその
ような基が形成されるに適した最小限のC原子数から約20以下のC原子数であ
る。前記ヒドロカルビル基もまたヘテロ原子、例えばO、S、N、SiおよびP
などを含んでいることができる。各Xは、好適には、カルボキシレート、アルコ
キサイドまたはアリールオキサイド基であり、各基が含むC原子数は好適には1
またはそのような基が形成されるに適した最小限のC原子数から約20以下のC
原子数である。
【0037】 従って、用いることができる適切なある種の有機Al化合物には、これらに限
定するものでないが、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアル
ミニウムの水素化物、ヒドロカルビルアルミニウムの二水素化物、ヒドロカルビ
ルアルミニウムの二ハロゲン化物、ジヒドロカルビルアルミニウムのハロゲン化
物、ジヒドロカルビルアルミニウムのカルボン酸塩、ヒドロカルビルアルミニウ
ムのビス(カルボン酸)塩、ジヒドロカルビルアルミニウムのアルコキサイド、
ヒドロカルビルアルミニウムのジアルコキサイド、ジヒドロカルビルアルミニウ
ムのアリールオキサイド、ヒドロカルビルアルミニウムのジアリールオキサイド
など、そしてこれらの混合物が含まれる。一般にトリヒドロカルビルアルミニウ
ム化合物が好適である。
【0038】 用いることができる有機Al化合物の具体例のいくつかには、トリメチルアル
ミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−
プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアル
ミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、
トリ−n−オクチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリフェ
ニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム
、トリネオペンチルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロペンチル)アルミ
ニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、ジエチルフェニル
アルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニ
ウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム、エ
チルジベンジルアルミニウム、ジエチルアルミニウムの水素化物、ジ−n−プロ
ピルアルミニウムの水素化物、ジイソプロピルアルミニウムの水素化物、ジn−
ブチルアルミニウムの水素化物、ジイソブチルアルミニウムの水素化物、ジn−
オクチルアルミニウムの水素化物、ジフェニルアルミニウムの水素化物、ジ−p
−トリルアルミニウムの水素化物、ジベンジルアルミニウムの水素化物、フェニ
ルエチルアルミニウムの水素化物、フェニル−n−プロピルアルミニウムの水素
化物、フェニルイソプロピルアルミニウムの水素化物、フェニル−n−ブチルア
ルミニウムの水素化物、フェニルイソブチルアルミニウムの水素化物、フェニル
−n−オクチルアルミニウムの水素化物、p−トリルエチルアルミニウムの水素
化物、p−トリル−n−プロピルアルミニウムの水素化物、p−トリルイソプロ
ピルアルミニウムの水素化物、p−トリル−n−ブチルアルミニウムの水素化物
、p−トリルイソブチルアルミニウムの水素化物、p−トリル−n−オクチルア
ルミニウムの水素化物、ベンジルエチルアルミニウムの水素化物、ベンジル−n
−プロピルアルミニウムの水素化物、ベンジルイソプロピルアルミニウムの水素
化物、ベンジル−n−ブチルアルミニウムの水素化物、ベンジルイソブチルアル
ミニウムの水素化物およびベンジル−n−オクチルアルミニウムの水素化物、エ
チルアルミニウムの二水素化物、n−プロピルアルミニウムの二水素化物、イソ
プロピルアルミニウムの二水素化物、n−ブチルアルミニウムの二水素化物、イ
ソブチルアルミニウムの二水素化物、n−オクチルアルミニウムの二水素化物、
ジメチルアルミニウムの塩化物、ジエチルアルミニウムの塩化物、ジイソブチル
アルミニウムの塩化物、ジメチルアルミニウムの臭化物、ジエチルアルミニウム
の臭化物、ジメチルアルミニウムのフッ化物、ジエチルアルミニウムのフッ化物
、メチルアルミニウムの二塩化物、エチルアルミニウムの二塩化物、イソブチル
アルミニウムの二塩化物、メチルアルミニウムの二臭化物、エチルアルミニウム
の二臭化物、メチルアルミニウムの二フッ化物、エチルアルミニウムの二フッ化
物、メチルアルミニウムのセスキクロライド、エチルアルミニウムのセスキクロ
ライド、イソブチルアルミニウムのセスキクロライド、ジメチルアルミニウムの
カプロン酸塩、ジエチルアルミニウムのカプリル酸塩、ジイソブチルアルミニウ
ムのオクチル酸塩、ジメチルアルミニウムのネオデカン酸塩、ジエチルアルミニ
ウムのステアリン酸塩、ジイソブチルアルミニウムのオレイン酸塩、メチルアル
ミニウムのビス(カプロン酸)塩、エチルアルミニウムのビス(カプリル酸)塩
、イソブチルアルミニウムのビス(オクチル酸)塩、メチルアルミニウムのビス
(ネオデカン酸)塩、エチルアルミニウムのビス(ステアリン酸)塩、イソブチ
ルアルミニウムのビス(オレイン酸)塩、ジメチルアルミニウムのメトキサイド
、ジエチルアルミニウムのメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムのメトキサ
イド、ジメチルアルミニウムのエトキサイド、ジエチルアルミニウムのエトキサ
イド、ジイソブチルアルミニウムのエトキサイド、ジメチルアルミニウムのフェ
ノキサイド、ジエチルアルミニウムのフェノキサイド、ジイソブチルアルミニウ
ムのフェノキサイド、メチルアルミニウムのジメトキサイド、エチルアルミニウ
ムのジメトキサイド、イソブチルアルミニウムのジメトキサイド、メチルアルミ
ニウムのジエトキサイド、エチルアルミニウムのジエトキサイド、イソブチルア
ルミニウムのジエトキサイド、メチルアルミニウムのジフェノキサイド、エチル
アルミニウムのジフェノキサイド、イソブチルアルミニウムのジフェノキサイド
、トリス(フルオロメチル)アルミニウムなど、そしてこれらの混合物が含まれ
る。
【0039】 本発明で用いる触媒組成物の材料(c)を生成させる時に用いることができる
別の種類の有機Al化合物はアルミノキサンである。アルミノキサンは本技術分
野で良く知られており、これには一般式:
【0040】
【化5】
【0041】 で表され得る線状のオリゴマー状アルミノキサン、および一般式:
【0042】
【化6】
【0043】 で表され得る環状のオリゴマー状アルミノキサンが含まれ、ここで、xは1から
約100、好適には約10から約50の整数であり、yは、2から約100、好
適には約3から約20の整数であり、そして各R4は、独立して、Al原子にC
原子を介して結合している一価の有機基である。各R4は、好適には、ヒドロカ
ルビル基、例えばこれらに限定するものでないが、アルキル、シクロアルキル、
置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、
アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリールおよびアルキニル
基などであり、各基が含むC原子の数は好適には1またはそのような基が形成さ
れるに適した最小限のC原子数から約20以下のC原子数である。前記ヒドロカ
ルビル基はヘテロ原子、例えばこれらに限定するものでないがN、O、Si、S
およびPなどを含んでいることもできる。アルミノキサンのモル数はオリゴマー
状アルミノキサン分子のモル数ではなくAl原子のモル数を指す。アルミノキサ
ンを用いた触媒反応の技術分野ではそのような慣例が通常用いられる。
【0044】 アルミノキサンの調製はトリヒドロカルビルアルミニウム化合物と水を反応さ
せることで実施可能である。この反応は、公知方法、例えば(1)トリヒドロカ
ルビルアルミニウム化合物を有機溶媒に溶解させた後に水と接触させる方法、(
2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を例えば金属塩に含まれている結晶
水または有機もしくは無機化合物に吸着されている水と反応させる方法、そして
(3)重合させるべき単量体もしくは単量体の溶液にトリヒドロカルビルアルミ
ニウム化合物を添加した後に水を加える方法などに従って実施可能である。
【0045】 用いることができる適切なアルミノキサン化合物の具体例のいくつかには、メ
チルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチ
ルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン
、n−ブチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアル
ミノキサン、イソブチルアルミノキサン、t−ブチルアルミノキサン、ネオペン
チルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチ
ルアルミノキサン、2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンなど、そしてこれ
らの混合物が含まれる。入手性そして脂肪族および環状脂肪族炭化水素溶媒への
溶解性が理由で特にイソブチルアルミノキサンが有用である[公知の技術を用い
て、MAOが有するメチル基の約20−80%をC2−C12ヒドロカルビル基、
好適にはイソブチル基で置換するとMMAOが生成し得る]。
【0046】 そのような触媒組成物は、幅広い範囲の全触媒濃度および触媒材料比に亘って
非常に高い触媒活性を示す。しかしながら、最も望ましい特性を有する重合体が
得られる全触媒濃度および触媒材料比の範囲はより狭い。その上、3種類の触媒
材料(a)、(b)および(c)が相互作用して活性触媒種を生成すると考えて
いる。従って、いずれか1つの触媒材料の最適な濃度は他の触媒材料の濃度に依
存する。ハイドロジエンホスファイトとMo含有化合物のモル比(P/Mo)は
約0.5:1から約50:1、より好適には約1:1から約25:1、更により
好適には約2:1から約10:1に及んで多様であり得る。本触媒組成物の材料
(c)にこの上に示した如き式AlRn3-nで定義される2種以上の有機Al化
合物のブレンド物を含める場合の有機Al化合物のブレンド物中のAlとMo含
有化合物のモル比(Al/Mo)は約1:1から約100:1、より好適には約
3:1から約50:1、更により好適には約5:1から約25:1に及んで多様
であり得る。本発明で用いる触媒組成物の材料(c)に2種以上のアルミノキサ
ンのブレンド物を含める場合のアルミノキサンのブレンド物中のアルミニウムと
Mo含有化合物のモル比(Al/Mo)は約5:1から約500:1、より好適
には約10:1から約200:1、更により好適には約20:1から約100:
1に及んで多様であり得る。この上に示した態様が好適であるが、式AlRn3 -n で定義される化合物とアルミノキサンを組み合わせることにより2種以上の有
機Al化合物のブレンド物を生成させることも可能である。
【0047】 この上で考察したように、好適には、3種類の材料(a)、(b)および(c
)を組み合わせることにより本発明で用いる触媒組成物を生成させる。このよう
な組み合わせの結果として活性触媒種が生成すると考えてはいるが、いろいろな
材料または成分の間で起こる相互作用または反応の度合を決して大きな度合の確
かさでは認識していない。従って、前記材料の簡単な混合物、物理的もしくは化
学的引力によって生じるいろいろな材料の錯体、前記材料の化学反応生成物また
は前記の組み合わせを包含させる目的で用語「触媒組成物」を用いてきた。
【0048】 例えば、下記の方法の中の1つを用いて触媒材料もしくは成分を組み合わせる
か或は混合することにより本発明で用いる組成物を生成させることができる: 1)単量体と溶媒[または簡単にバルク単量体(bulk monomer)]
が入っている溶液に前記3種類の触媒材料を段階的または同時様式で添加するこ
とで触媒組成物をインサイチューで生成させることができる。前記触媒材料を段
階的に添加する場合の添加順は重要でない。しかしながら、好適には、Mo含有
化合物を最初に添加した後、ハイドロジエンホスファイトに続いて、2種以上の
有機Al化合物のブレンド物を添加する。 2)前記3種類の材料を重合装置の外側で一般に約−20から約80℃の適切な
温度で前以て混合しておきそして得られた触媒組成物を単量体溶液に添加するこ
とができる。 3)本触媒組成物を単量体の存在下で前以て生じさせておくこともできる。即ち
、前記3種類の触媒材料を少量の単量体の存在下で一般に約−20から約80℃
の適切な温度で前以て混合しておく。このようにして本触媒を前以て生じさせる
時に用いる単量体の量はMo含有化合物1モル当たり約1から約500モル、よ
り好適には約4から約100モル、更により好適には約10から約50モルの範
囲であることができる。その結果得られた本触媒組成物を重合させるべき単量体
の残りに添加する。 4)2段階手順を用いて触媒組成物を生成させることも可能である。1番目の段
階は、Mo含有化合物と2種以上の有機Al化合物のブレンド物を少量の単量体
の存在下で一般に約−20から約80℃の適切な温度で組み合わせることを包含
する。2番目の段階で、この上に示した反応混合物とハイドロジエンホスファイ
トを段階的または同時様式のいずれかで重合させるべき単量体の残りに仕込む。 5)別の2段階手順では、最初にMo含有化合物とハイドロジエンホスファイト
を前以て組み合せることによりMo−配位子錯体を生成させる。このMo−配位
子錯体が生成した後、この配位子を2種以上の有機Al化合物のブレンド物と組
み合わせることにより活性触媒種を生成させる。前記Mo−配位子錯体の調製は
個別にか或は重合させるべき単量体の存在下で実施可能である。この錯体形成反
応は通常の圧力下で便利な任意温度で実施可能であるが、反応速度を速める目的
で好適にはこの反応を室温以上の温度で実施する。このMo−配位子錯体の生成
で用いる温度および時間はいくつかの変数に依存し、そのような変数には、用い
る個々の出発材料および溶媒が含まれる。このMo−配位子錯体が生成した後、
これをその錯体形成反応混合物から単離することなく用いることができる。しか
しながら、望まれるならば、このMo−配位子錯体を使用に先立って前記錯体形
成反応混合物から単離することもできる。
【0049】 触媒材料(c)、即ち2種以上の有機Al化合物のブレンド物に関して、この
ブレンド物を他の触媒材料および重合させるべき単量体と混合する前に2種以上
の有機Al化合物を組み合わせることによりそのようなブレンド物を前以て生成
させておく方が有利である。それにも拘らず、また、2種以上の有機Al化合物
のブレンド物をインサイチューで生成させることも可能である。即ち、この2種
以上の有機Al化合物を重合時に他の触媒材料および重合させるべき単量体の存
在下で組み合わせる。
【0050】 この上に示した方法で挙げたように、Moが基になった触媒組成物または触媒
材料の1種以上の溶液を重合装置の外側で生成させる場合には、好適には、有機
溶媒もしくは担体を用いる。有用な溶媒には炭化水素溶媒、例えば芳香族炭化水
素、脂肪族炭化水素および環状脂肪族炭化水素などが含まれる。芳香族炭化水素
溶媒の非限定例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチ
ルベンゼン、メシチレンなどが含まれる。脂肪族炭化水素溶媒の非限定例には、
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−
デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2−
ジメチルブタン、石油エーテル、ケロセン、石油スピリットなどが含まれる。環
状脂肪族炭化水素溶媒の非限定例には、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチ
ルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどが含まれる。また、この上に示し
た炭化水素の商業的混合物を用いることも可能である。環境上の理由で脂肪族お
よび環状脂肪族溶媒が非常に好適である。この上に示した有機溶媒は本触媒組成
物または材料を溶かす働きをし得るか、或は前記溶媒は単に本触媒組成物もしく
は材料を懸濁させ得る担体として働き得る。
【0051】 この上に記述したように、本発明で用いる触媒組成物は共役ジエンの重合に非
常に高い触媒活性を示す。重合させることができる共役ジエンの具体例のいくつ
かには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘ
キサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブ
タジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジ
エン、4−メチル−1,3−ペンタジエンおよび2,4−ヘキサジエンが含まれ
る。また、2種以上の共役ジエンの混合物を共重合で用いることも可能である。
好適な共役ジエンは1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンお
よび1,3−ヘキサジエンである。最も好適な単量体は1,3−ブタジエンであ
る、と言うのは、本発明で用いる触媒組成物は有利に1,3−ブタジエンからs
−PBDを生じさせる重合で非常に高い触媒活性と立体選択性を示しかつこの上
に示したようにs−PBDの溶融温度の調整を可能にするからである。
【0052】 共役ジエン単量体を触媒有効量の本触媒組成物の存在下で重合させることによ
り、共役ジエン重合体、例えばs−PBDなどの製造を達成する。この上に示し
た如き共役ジエンと本触媒組成物の材料を接触させる時に利用できる方法は多様
である。触媒有効量が意味することの理解に関して、重合マス(mass)で用
いる全触媒濃度はいろいろな要因、例えば材料の純度、重合温度、望まれる重合
速度および転化率、そして他の数多くの要因の相互作用に依存する。従って、個
々の触媒材料を触媒有効量で用いるべきであると述べることを除いて具体的な全
触媒濃度を明確に挙げるのは不可能である。用いるMo含有化合物の量は一般に
共役ジエン単量体100g当たり約0.01から約2ミリモル、より好適には共
役ジエン単量体100g当たり約0.02から約1.0ミリモル、更により好適
には共役ジエン単量体100g当たり約0.05から約0.5ミリモルに及んで
多様であり得る。
【0053】 共役ジエン単量体の重合を好適には希釈剤としての有機溶媒中で実施する。従
って、重合させるべき単量体と生成する重合体の両方ともが重合用媒体に溶解し
得る溶液重合系を用いることができる。別法として、生成する重合体が不溶な溶
媒を選択することにより沈澱重合系を用いることも可能である。両方の場合とも
、触媒組成物の調製で使用可能な有機溶媒に加えて、通常はある量の有機溶媒を
重合系に加える。この追加的有機溶媒は触媒溶液に含まれる有機溶媒と同じか或
は異なっていてもよい。重合に触媒作用を及ぼす目的で用いる有機溶媒は触媒組
成物に関して不活性であるのが一般に好適である。希釈剤として用いることがで
きる適切な種類の有機溶媒には、これらに限定するものでないが、脂肪族、環状
脂肪族および芳香族炭化水素が含まれる。適切な脂肪族溶媒の代表的例のいくつ
かには、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナ
ン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、
2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、ケロセン、石油スピリットなどが含ま
れる。適切な環状脂肪族溶媒の代表的な例のいくつかには、シクロペンタン、シ
クロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどが含まれる。
適切な芳香族溶媒の代表的例のいくつかには、ベンゼン、トルエン、キシレン、
エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メシチレンなどが含まれる。また、この上
に示した炭化水素の商業的混合物を用いることも可能である。環境上の理由で脂
肪族および環状脂肪族溶媒が非常に好適である。
【0054】 重合させるべき共役ジエン単量体の濃度は特定の範囲に限定されない。しかし
ながら、一般的には、重合開始時の重合用媒体に存在させる単量体の濃度は好適
には約3から約80重量%、より好適には約5から約50重量%、更により好適
には約10から約30重量%の範囲である。
【0055】 共役ジエン単量体の重合をまた塊状重合で実施することも可能であり、塊状重
合は溶媒を全く用いない重合環境を指す。塊状重合は凝縮液相または気相中のい
ずれかで実施可能である。
【0056】 共役ジエン単量体を重合させる時、生成する共役ジエン重合体の分子量を制御
する目的で分子量調節剤を用いることができる。その結果として、幅広い分子量
を示す共役ジエン重合体を製造する目的でそれを用いることができるような様式
で重合系の範囲を広げることができる。用いることができる適切な種類の分子量
調節剤には、これらに限定するものでないが、α−オレフィン、例えばエチレン
、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび
1−オクテンなど、累積ジオレフィン(accumulated diolef
ins)、例えばアレンおよび1,2−ブタジエンなど、非共役ジオレフィン、
例えば1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,5−シ
クロオクタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,4−シクロ
ヘキサジエン、4−ビニルシクロヘキセン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘ
キサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,2−ジビニル
シクロヘキサン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノル
ボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよび1,2
,4−トリビニルシクロヘキサンなど、アセチレン類、例えばアセチレン、メチ
ルアセチレンおよびビニルアセチレンなど、そしてこれらの混合物が含まれる。
このような分子量調節剤の使用量は、共役ジエン単量体100重量部当たりの部
数(phm)で表して、約0.01から約10phm、好適には約0.02から
約2phm、より好適には約0.05から約1phmである。
【0057】 また、共役ジエン単量体の重合をH2の存在下で実施することにより、生成さ
せるべき共役ジエン重合体の分子量を有効に調節することも可能である。この場
合の好適なH2分圧は約0.01から約50気圧の範囲内である。
【0058】 本発明に従って実施する共役ジエン単量体の重合は、バッチ方法、連続方法ま
たは半連続方法でさえ実施可能である。半連続方法では、既に重合した単量体を
置換する必要に応じて単量体を間欠的に仕込む。如何なる場合でも、重合を望ま
しくは撹拌を中程度から激しく行いながら不活性な保護ガス、例えば窒素、アル
ゴンまたはヘリウムなどを用いて嫌気条件下で実施する。本発明の実施で用いる
重合温度は低温、例えば−10℃以下から高温、例えば100℃以上に及んで幅
広く多様であり得るが、好適な温度範囲は約20から約90℃である。重合で発
生する熱は外部冷却、単量体または溶媒の蒸発による冷却またはこの2つの方法
の組み合わせで除去可能である。用いる重合圧は幅広く多様であり得るが、好適
な圧力範囲は約1から約10気圧である。
【0059】 所望の転化率が達成された時点で、触媒を失活させる重合停止剤を添加するこ
とで重合を停止させることができる。用いる停止剤は典型的にプロトン性化合物
であり、それには、これらに限定するものでないが、アルコール、カルボン酸、
無機酸、水またはこれらの混合物が含まれる。この停止剤の添加と一緒にか、添
加前にか或は添加後に抗酸化剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフ
ェノールなどを添加することもできる。用いる抗酸化剤の量は好適には重合体生
成物の0.2から1重量の範囲である。この重合反応を停止させた時点で通常の
脱溶媒および乾燥手順を用いて重合体を重合混合物から回収することもできる。
例えば、アルコール、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノールな
どを用いて重合混合物を凝固させるか或は蒸気を用いて溶媒と未反応の単量体を
留出させた後に濾過を行うことなどにより重合体を重合混合物から単離すること
ができる。次に、この重合体生成物を乾燥させることで残存量の溶媒と水を除去
する。
【0060】 この上に示したように、本発明の好適な態様は、結晶性共役ジエン重合体、例
えばs−PBDなどを合成する方法に向けたものである。有利には、立体的に異
なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を本発明の触媒組成物に含める材料
(c)として用いることにより、本発明に従って得られる結晶性共役ジエン重合
体の溶融温度を操作することができる。立体障害有機Al化合物を本触媒組成物
に入れて用いると一般に比較的高い溶融温度を示す重合体がもたらされそして立
体障害を受けていない有機Al化合物を本触媒組成物に入れて用いると比較的低
い溶融温度を示す重合体がもたらされることを見いだした。驚くべきことに、立
体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を用いると得られる重合体
の溶融温度を注文に合わせることができる。言い換えれば、比較的高い溶融温度
を示す重合体をもたらす立体障害有機Al化合物と比較的低い溶融温度を示す重
合体をもたらす非立体障害有機Al化合物のブレンド物を用いると、比較的高い
溶融温度と比較的低い溶融温度の間のどこかの溶融温度を示す重合体を得ること
が可能になる。
【0061】 例えば非環状ハイドロジエンホスファイトを本触媒組成物に入れて用いた時に
非立体障害有機Al化合物を用いると一般に約90から約140℃の溶融温度を
示すs−PBD重合体がもたらされる。他方、立体障害有機Al化合物を用いる
と一般に約180から約210℃の溶融温度を示すs−PBD重合体がもたらさ
れる。非環状ハイドロジエンホスファイトを本触媒組成物に入れて用いた時に立
体障害有機Al化合物と非立体障害有機Al化合物のブレンド物を用いると約9
0から約210℃の範囲の中のどこかの溶融温度を示すs−PBD重合体を得る
ことができる。本発明の方法を用いると、有利に、約140から約180℃、よ
り有利には約145から約170℃、更により有利には約150から約160℃
の溶融温度を示すs−PBDを合成することができる。
【0062】 その上、障害有機Al化合物と非障害有機Al化合物のモル比を調整すること
により得られる結晶性共役ジエン重合体の所望溶融温度を達成することができる
。得られる重合体の溶融温度は、一般に、非障害有機Al化合物に対する障害有
機Al化合物のモル比を高くすればするほど高くなる。同様に、非障害有機Al
化合物に対する障害有機Al化合物のモル比を低くすることにより、得られる重
合体の溶融温度を下げることも可能である。
【0063】 非障害有機Al化合物に対する障害有機Al化合物のモル比を調整することに
加えて、障害化合物の種類の範囲内の特定の有機Al化合物を選択するか、非障
害化合物の種類の範囲内の特定の有機Al化合物を選択するか、或は各種類から
1種以上を選択することにより、得られる結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を
操作することができる。次に、その選択した有機Al化合物を組み合わせること
により本触媒組成物の材料(c)を生成させる。
【0064】 立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物に含める非障害有機A
l化合物に対する障害有機Al化合物のモル比を高くすることでs−PBDの分
子量、1,2−結合含有量およびシンジオタクティシティー(syndiota
cticities)を高くすることができる。
【0065】 s−PBDをいろいろなゴムとブレンドすることでそれらの特性を向上させる
ことができる。例えばこれを弾性重合体に添加することで、前記弾性重合体から
製造される構成要素、特にタイヤの生強度を向上させることができる。タイヤの
支持用もしくは補強用カーカス(carcass)は特に組み立ておよび硬化手
順中に変形を起こし易い。この理由で、タイヤの支持用カーカスで用いられるゴ
ム組成物にs−PBDを添加するのはそのような変形を防止または最小限にする
に特に役立つ。加うるに、s−PBDをタイヤ踏み面用組成物に添加するとタイ
ヤの熱蓄積が低下しかつタイヤの裂けおよび摩耗特性が向上し得る。s−PBD
はまたフィルムおよび包装用材料の製造、そして数多くの成形用途で有用である
【0066】
【実施例】
実施例1 オーブンで乾燥させておいた1Lのガラス製ボトルを自己密封性ゴムライナー
および穴開き金属製キャップで蓋をした。このボトルを乾燥N2流れで徹底的に
パージ洗浄した後、このボトルにヘキサンを23gおよび1,3−ブタジエン含
有量が22.0重量%の1,3−ブタジエン/ヘキサンブレンド物を227g仕
込んだ。このボトルに下記の触媒材料を逐次的に加えた:(1)0.15ミリモ
ルのオクチル酸Mo、(2)0.60ミリモルのビス(2−エチルヘキシル)ハ
イドロジエンホスファイトおよび(3)2.55ミリモルのトリ−n−ブチルア
ルミニウム。このボトルを65℃に維持されている水浴内で6時間揺らした。2
,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1.0g入れておいた10mL
のイソプロパノールを加えることで重合を停止させた。3Lのイソプロパノール
を用いて重合混合物を凝固させた。濾過に続いて乾燥を真空下60℃で一定重量
になるまで行うことにより、得られたs−PBDを単離した。
【0067】 溶融温度をDSCで測定した。重合体の1,2−結合およびシンジオタクティ
シティー含有量を1Hおよび13C NMR分析で測定した。重量平均分子量(Mw )、数平均分子量(Mn)および多分散指数をGPC測定で測定した。
【0068】 実施例2−5 実施例2−5では、実施例1で用いたトリn−ブチルアルミニウムの代わりに
いろいろなモル比、即ち30:70、50:50、70:30および100:0
のトリイソブチルアルミニウム/トリn−ブチルアルミニウム混合物を用いる以
外は実施例1に記述した手順を繰り返した(これらのサンプル各々のMo/P/
Alモル比は1:4:17であった)。
【0069】 実施例1−5の有機Al成分比、重合体収率および得られた重合体の物理的性
質を表1に要約する。
【0070】
【表1】
【0071】 表1に示すように、トリn−ブチルアルミニウムに対するトリイソブチルアル
ミニウムのモル比を高くすることでs−PBDの溶融温度、分子量、1,2−結
合含有量およびシンジオタクテックィシティーを高くすることができる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所望の性質を有する共役ジエン重合体の製造方法であって、 a)モリブデン含有化合物、 b)ハイドロジエンホスファイト、および c)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物、 を組合せることにより生成した触媒組成物を触媒有効量で存在させて1,3−ブ
    タジエン、1,3−ペンタジエン、1,2−ヘキサジエンまたはそれらの混合物
    を重合させることを含んで成る方法。
  2. 【請求項2】 (1)モリブデン含有化合物、(2)ハイドロジエンホスフ
    ァイトおよび(3)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレン
    ド物、を組合せることにより生成した触媒組成物を用いて1,3−ブタジエン、
    1,3−ペンタジエン、1,2−ヘキサジエンまたはそれらの混合物を重合させ
    て生成する結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を調節する方法であって、 a)少なくとも1種の立体障害有機アルミニウム化合物と少なくとも1種の非立
    体障害有機アルミニウム化合物を選択し、 b)この選択した有機アルミニウム化合物を組合せることにより触媒組成物の材
    料(3)を生成させ、そして c)その後、前記触媒組成物を用いて共役ジエン単量体を重合させる、 ことを含んで成る方法。
  3. 【請求項3】 触媒組成物であって、Mo含有化合物とハイドロジエンホス
    ファイトと立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物を組
    合せることを含んで成る方法で生成した触媒組成物。
  4. 【請求項4】 前記立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブ
    レンド物が少なくとも1種の立体障害有機アルミニウム化合物と少なくとも1種
    の非立体障害有機アルミニウム化合物を含有する請求項1記載の方法または請求
    項3記載の触媒。
  5. 【請求項5】 前記少なくとも1種の立体障害有機アルミニウム化合物がト
    リイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチル
    アルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウ
    ム、トリス(1−メチル−シクロペンチル)アルミニウム、トリス(2,6−ジ
    メチルフェニル)アルミニウム、イソプロピルアルミノキサン、イソブチルアル
    ミノキサン、t−ブチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、シクロ
    ヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、2,6−
    ジメチルフェニルアルミノキサンまたはそれらの混合物である請求項2または4
    記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記少なくとも1種の非立体障害有機アルミニウム化合物が
    トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミ
    ニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ト
    リ−n−オクチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン
    、n−プロピルアルミノキサン、n−ブチルアルミノキサン、n−ヘキシルアル
    ミノキサン、n−オクチルアルミノキサンまたはそれらの混合物である請求項2
    または4記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記ハイドロジエンホスファイトが下記のケト−エノール形
    互変異性構造: 【化1】 [ここで、R1およびR2は独立して一価有機基である] で定義される非環状のハイドロジエンホスファイトである請求項2または4記載
    の方法または請求項3記載の触媒。
  8. 【請求項8】 前記結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を高くする目的で前
    記非立体障害有機アルミニウム化合物に対する前記立体障害有機アルミニウム化
    合物のモル比を高くする段階を更に含んで成る請求項2記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を低くする目的で前
    記非立体障害有機アルミニウム化合物に対する前記立体障害有機アルミニウム化
    合物のモル比を低くすることを更に含んで成る請求項2記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記共役ジエンが1,3−ブタジエンであり、それによっ
    て、シンジオタクチック1,3−ポリブタジエンを生成させる請求項8および9
    記載の方法。
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