JP4970691B2 - Moが基になった触媒組成物を用いて共役ジエン重合体の性質を調節する方法 - Google Patents
Moが基になった触媒組成物を用いて共役ジエン重合体の性質を調節する方法 Download PDFInfo
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Description
(発明の背景)
本発明は、一般に、共役ジエンの重合方法、より詳細には、(a)モリブデン含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイト(hydrogen phosphite)と(c)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物を組合せることにより生成したMoが基になった触媒組成物を用いる方法に関する。この触媒組成物を用いた方法で製造した共役ジエン重合体の性質、例えば溶融温度および分子量などを操作することができる。
【0002】
シンジオタクチック(syndiotactic)1,2−ポリブタジエン(本明細書では以降「s−PBD」)は、側鎖であるビニル基が主重合体鎖に関して相対する側に交互に位置する立体規則的構造を有する結晶性で熱可塑性の樹脂である。s−PBDは、プラスチックとゴムの両方の性質を示すユニークな材料であり、従って、これは数多くの用途を有する。例えば、s−PBDを用いてフィルム、繊維およびいろいろな成形品を製造することができる。また、これを天然または合成ゴムにブレンドして一緒に硬化させることも可能である。
【0003】
s−PBDの製造は溶液、乳化または懸濁重合で実施可能である。s−PBDの物性は主にその溶融温度および分子量で決まる。s−PBDが示す溶融温度は一般に約195から約215℃の範囲内であるが、加工性を考慮すると、s−PBDの溶融温度は一般に約195℃未満であるのが望ましい。従って、s−PBDの溶融温度と分子量を調節する手段が求められている。
【0004】
s−PBDの製造ではCo、Ti、V、MoおよびCrが基になったいろいろな遷移金属触媒系が報告されている。しかしながら、そのような触媒系は大部分が全く実用性を有さない、と言うのは、それらは触媒活性が低いか或は立体選択性が劣りそしてある場合には商業的使用に適切でない低い分子量の重合体または部分的に架橋した重合体がもたらされるからである。
【0005】
商業的規模のs−PBD製造ではCoが基になった下記の2種類の触媒系が知られている:(1)ビス(アセチルアセトネート)Co、トリエチルアルミニウム、水およびトリフェニルホスフィンを含有する系(米国特許第3,498,963号および4,182,813号)、そして(2)トリス(アセチルアセトネート)Co、トリエチルアルミニウムおよびCS2を含有する系(米国特許第3,778,424号)。このようなCoが基になった触媒系もまた欠点を有する。
【0006】
この上に示した1番目のCo触媒系を用いると非常に低い結晶度を示すs−PBDがもたらされる。また、このような触媒系が充分な触媒活性を示すのは、ハロゲン置換炭化水素溶媒を重合用媒体として用いた時のみであり、ハロゲン置換溶媒は毒性に問題がある。
【0007】
この上に示した2番目のCo触媒系ではCS2が触媒成分の1つとして用いられている。CS2は低い引火点を示し、不快な臭いを発し、高い揮発性を示しかつ毒性があることから、これの使用は困難かつ危険であり、それが僅かな量でも大気の中に入り込まないように高価な安全手段を取る必要がある。その上、そのようなCo触媒系を用いて製造したs−PBDは約200から210℃の非常に高い溶融温度を示すことから、このような重合体は加工が困難である。触媒改質剤を4番目の触媒成分として用いることで、前記Co触媒系を用いて製造させるs−PBDの溶融温度を下げることは可能であるが、そのような触媒改質剤を存在させると触媒活性および重合体収率が悪影響を受ける。従って、そのようなCoが基になった触媒系を産業的に用いるには数多くの制限が要求される。
【0008】
Mo含有化合物が基になった配位触媒系、例えばアセチルアセトネートモリブデンとトリエチルアミンの組み合わせなどがある時期知られていたが、それらが1,3−ブタジエンの重合で示す触媒活性は非常に低くかつ立体選択性も劣ることが示された。生成物混合物はしばしばオリゴマー、低分子量の液状重合体および部分的に架橋した重合体を含有する。従って、このような触媒系はほとんど産業的有用性を持たない。
【0009】
s−PBDは有用でありかつ本技術分野で今まで知られていた触媒は数多くの欠点を有することから、1,3−ブタジエンを重合してs−PBDを生成させるため高い活性と立体選択性を示す有意に向上した新規な触媒組成物を開発することができれば、これは望ましいことである。また、重合生成物の溶融温度および分子量を調節することができれば、これも望ましことである。
【0010】
(発明の要約)
本発明は、一般に、所望の性質を有する共役ジエン重合体の製造方法を提供し、この方法は、(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイトと(c)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム(本明細書では以降「有機Al」)化合物のブレンド物を組合せることにより生成した触媒組成物を触媒有効量で存在させて共役ジエン単量体を重合させる段階を含んで成る。
【0011】
本発明は、また、(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイトと(c)立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を組み合せることにより生成した触媒組成物を用いて共役ジエン単量体を重合させることにより製造した結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を調節する方法も提供する。この方法は、少なくとも1種の立体障害有機Al化合物と少なくとも1種の非立体障害(sterically non−hindered)有機Al化合物を選択し、この選択した有機Al化合物を組み合せることにより前記触媒組成物の材料(c)を生成させ、そしてその後、前記触媒組成物を用いて前記共役ジエン単量体を重合させる段階を包含する。
【0012】
本発明は、更に、(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイトと(c)立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を組み合わせる段階を含んで成る方法で生成した触媒組成物も提供する。
【0013】
本発明は、また、(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイトと(c)立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を含んで成る材料の組み合わせまたは反応生成物である触媒組成物も提供する。
【0014】
本発明で用いるMoが基になった触媒組成物は、有利に、共役ジエン単量体、例えば1,3−ブタジエンなどの重合で非常に高い触媒活性および立体選択性を示す。このような活性および選択性により、とりわけ、触媒を低い濃度で用いて共役ジエン重合体、例えばs−PBDなどを比較的短い重合時間後に非常に高い収率で生成させることができると言った利点が得られる。本発明の触媒組成物は有意に非常に幅広い用途を有する。立体的に異なる2種以上の有機Al化合物をブレンドすることにより、幅広い範囲の溶融温度および分子量を有する結晶性共役ジエン重合体、例えばs−PBDなどを製造することができ、このように、触媒活性および重合体の収率に悪影響を与える溶融温度調節剤も分子量調節剤も添加する必要がない。加うるに、本発明で用いる触媒組成物はCS2を含有しない。従って、CS2の使用に伴う毒性、不快な臭い、危険性および費用が除去される。その上、使用するMo含有化合物は一般に安定で安価で相対的に無毒でありかつ容易に入手可能である。更にその上、本発明で用いる触媒組成物は、幅広く多様な溶媒(ハロゲンで置換されていない環境的に好ましい溶媒、例えば脂肪族および環状脂肪族炭化水素を包含)中で高い触媒活性を示す。
【0015】
(好適な態様の詳細な説明)
本発明は、一般に、Moが基になった触媒組成物を用いて共役ジエン重合体を合成する方法に向けたものである。本発明の好適な態様は、結晶性共役ジエン重合体、例えばs−PBDなどの合成に向けたものである。(a)Mo含有化合物と(b)ハイドロジエンホスファイトと(c)立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を組み合わせることにより本発明で用いる触媒組成物を生成させる。この3種類の触媒材料(a)、(b)および(c)に加えて、望まれるならばまた他の有機金属化合物またはルイス塩基を添加することも可能である。立体的に異なる特定の有機Al化合物を選択することにより、得られる共役ジエン重合体の性質を調整することができる。例えば、立体的に異なる特定の有機Al化合物を選択するか或は立体的に異なる有機Al化合物のモル比を変えることにより結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を調整することができる。
【0016】
いろいろなMo含有化合物またはこれらの混合物を本発明で用いる触媒組成物の材料(a)として用いることができる。炭化水素溶媒、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素または環状脂肪族炭化水素などに可溶なMo含有化合物の使用が一般に有利である。しかしながら、炭化水素に不溶なMo含有化合物を重合媒体中で懸濁させることにより触媒活性種を生成させることも可能であり、従ってそれも有用である。
【0017】
このようなMo含有化合物が含有するMo原子は0から+6以下の範囲のいろいろな酸化状態のものであってもよい。用いることができる適切な種類のMo含有化合物には、これらに限定するものでないが、Moのカルボン酸塩、Moの有機燐酸塩、Moの有機ホスホン酸塩、Moの有機ホスフィン酸塩、Moのカルバミン酸塩、Moのジチオカルバミン酸塩、Moのキサントゲン酸塩、Moのβ−ジケトネート、Moのアルコキサイドもしくはアリールオキサイド、Moのハロゲン化物、Moの疑似ハロゲン化物、Moのオキシハロゲン化物および有機モリブデン化合物が含まれる。この上に示した各種類の適切なモリブデン化合物の具体例のいくつかには下記が含まれる。
カルボン酸塩:
蟻酸塩、酢酸塩、アクリル酸塩、メタアクリル酸塩、吉草酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、しゅう酸塩、オクチル酸塩(2−ethylhexanoate)、ネオデカン酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、安息香酸塩およびピコリン酸塩、
有機燐酸塩:
ジブチル燐酸塩、ジペンチル燐酸塩、ジヘキシル燐酸塩、ジヘプチル燐酸塩、ジオクチル燐酸塩、ビス(1−メチルヘプチル)燐酸塩、ビス(2−エチルヘキシル)燐酸塩、ジデシル燐酸塩、ジドデシル燐酸塩、ジオクタデシル燐酸塩、ジオレイル燐酸塩、ジフェニル燐酸塩、ビス(p−ノニルフェニル)燐酸塩、ブチル(2−エチルヘキシル)燐酸塩、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)燐酸塩および(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)燐酸塩、
有機ホスホン酸塩:
ブチルホスホン酸塩、ペンチルホスホン酸塩、ヘキシルホスホン酸塩、ヘプチルホスホン酸塩、オクチルホスホン酸塩、(1−メチルヘプチル)ホスホン酸塩、(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、デシルホスホン酸塩、ドデシルホスホン酸塩、オクタデシルホスホン酸塩、オレイルホスホン酸塩、フェニルホスホン酸塩、(p−ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ブチルブチルホスホン酸塩、ペンチルペンチルホスホン酸塩、ヘキシルヘキシルホスホン酸塩、ヘプチルヘプチルホスホン酸塩、オクチルオクチルホスホン酸塩、(1−メチルヘプチル)(1−メチルヘプチル)ホスホン酸塩、(2−エチルヘキシル)(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、デシルデシルホスホン酸塩、ドデシルドデシルホスホン酸塩、オクタデシルオクタデシルホスホン酸塩、オレイルオレイルホスホン酸塩、フェニルフェニルホスホン酸塩、(p−ノニルフェニル)(p−ノニルフェニル)ホスホン酸塩、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、(2−エチルヘキシル)ブチルホスホン酸塩、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスホン酸塩、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスホン酸塩および(p−ノニルフェニル)(2−エチルヘキシル)ホスホン酸塩、
有機ホスフィン酸塩:
ブチルホスフィン酸塩、ペンチルホスフィン酸塩、ヘキシルホスフィン酸塩、ヘプチルホスフィン酸塩、オクチルホスフィン酸塩、(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、デシルホスフィン酸塩、ドデシルホスフィン酸塩、オクタデシルホスフィン酸塩、オレイルホスフィン酸塩、フェニルホスフィン酸塩、(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ジブチルホスフィン酸塩、ジペンチルホスフィン酸塩、ジヘキシルホスフィン酸塩、ジヘプチルホスフィン酸塩、ジオクチルホスフィン酸塩、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、ジデシルホスフィン酸塩、ジドデシルホスフィン酸塩、ジオクタデシルホスフィン酸塩、ジオレイルホスフィン酸塩、ジフェニルホスフィン酸塩、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸塩および(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸塩、
カルバミン酸塩:
ジメチルカルバミン酸塩、ジエチルカルバミン酸塩、ジイソプロピルカルバミン酸塩、ジブチルカルバミン酸塩およびジベンジルカルバミン酸塩、
ジチオカルバミン酸塩:
ジメチルジチオカルバミン酸塩、ジエチルジチオカルバミン酸塩、ジイソプロピルジチオカルバミン酸塩、ジブチルジチオカルバミン酸塩およびジベンジルジチオカルバミン酸塩、
キサントゲン酸塩:
メチルキサントゲン酸塩、エチルキサントゲン酸塩、イソプロピルキサントゲン酸塩、ブチルキサントゲン酸塩およびベンジルキサントゲン酸塩、
β−ジケトネート:
アセチルアセトネート、トリフルオロアセチルアセトネート、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ベンゾイルアセトネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジオキサイドビス(アセチルアセトネート)、ジオキサイドビス(トリフルオロアセチルアセトネート)、ジオキサイドビス(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)、ジオキサイドビス(ベンゾイルアセトネート)およびジオキサイドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、
アルコキサイドまたはアリールオキサイド:
メトキサイド、エトキサイド、イソプロポキサイド、2−エチルヘキソキサイド、フェノキサイド、ノニルフェノキサイドおよびナフトキサイド、
ハロゲン化物:
六フッ化物、五フッ化物、四フッ化物、三フッ化物、五塩化物、四塩化物、三塩化物、四臭化物、三臭化物、三ヨウ化物および二ヨウ化物、
疑似ハロゲン化物:
シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩およびアジ化物、そして
オキシハロゲン化物:
オキシ四フッ化物、ジオキシ二フッ化物、オキシ四塩化物、オキシ三塩化物、ジオキシ二塩化物、オキシ三臭化物およびジオキシ二臭化物。
【0018】
用語「有機モリブデン化合物」は、Mo−C結合を少なくとも1つ含むモリブデン化合物のいずれかを指す。適切な有機モリブデン化合物の具体例のいくつかには、トリス(アリル)モリブデン、トリス(メタアリル)モリブデン、トリス(クロチル)モリブデン、ビス(シクロペンタジエニル)モリブデン、ビス(エチルベンゼン)モリブデン、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)モリブデン、ビス(ペンタジエニル)モリブデン、ビス(2,4−ジメチルペンタジエニル)モリブデン、ビス(アリル)トリカルボニルモリブデン、(シクロペンタジエニル)(ペンタジエニル)モリブデン、テトラ(1−ノルボルニル)モリブデン、(トリメチレンメタン)テトラカルボニルモリブデン、ビス(ブタジエン)ジカルボニルモリブデン、(ブタジエン)テトラカルボニルモリブデンおよびビス(シクロオクタテトラエン)モリブデンが含まれる。
【0019】
本発明で用いる触媒組成物の材料(b)として用いることができる有用なハイドロジエンホスファイト化合物は非環状ハイドロジエンホスファイト、環状ハイドロジエンホスファイトおよびこれらの混合物である。
【0020】
非環状のハイドロジエンホスファイトは一般に下記のケト−エノール形互変異性構造:
【0021】
【化2】
【0022】
[ここで、R1およびR2は、同一もしくは異なっていてもよく、一価の有機基である]
で描写可能である。R1およびR2は、好適には、ヒドロカルビル基、例えばこれらに限定するものでないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリールおよびアルキニル基などであり、各基が含むC原子の数は好適には1またはそのような基が形成されるに適した最小限のC原子数から20以下のC原子数である。前記ヒドロカルビル基はヘテロ原子、例えばこれらに限定するものでないがN、O、Si、SおよびPなどを含んでいることができる。非環状のハイドロジエンホスファイトは主にケト互変異性体(左側に示した)として存在し、エノール互変異性体(右側に示した)は主要でない種である。上述した互変異性平衡の平衡定数は温度、R1およびR2基の種類、溶媒の種類などの如き要因に依存する。両方の互変異性体とも水素結合により二量体、三量体またはオリゴマー形態で結合していることができる。この2種類の互変異性体のいずれかまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0023】
適切な非環状ハイドロジエンホスファイトの代表的な非限定例には、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジエチルハイドロジエンホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイト、ジヘキシルハイドロジエンホスファイト、ジオクチルハイドロジエンホスファイト、ジデシルハイドロジエンホスファイト、ジドデシルハイドロジエンホスファイト、ジオクタデシルハイドロジエンホスファイト、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ハイドロジエンホスファイト、ジイソプロピルハイドロジエンホスファイト、ビス(3,3−ジメチル−2−ブチル)ハイドロジエンホスファイト、ビス(2,4−ジメチル−3−ペンチル)ハイドロジエンホスファイト、ジ−t−ブチルハイドロジエンホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジネオペンチルハイドロジエンホスファイト、ビス(シクロプロピルメチル)ハイドロジエンホスファイト、ビス(シクロブチルメチル)ハイドロジエンホスファイト、ビス(シクロペンチルメチル)ハイドロジエンホスファイト、ビス(シクロヘキシルメチル)ハイドロジエンホスファイト、ジシクロブチルハイドロジエンホスファイト、ジシクロペンチルハイドロジエンホスファイト、ジシクロヘキシルハイドロジエンホスファイト、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルハイドロジエンホスファイト、ジナフチルハイドロジエンホスファイト、ジベンジルハイドロジエンホスファイト、ビス(1−ナフチルメチル)ハイドロジエンホスファイト、ジアリルハイドロジエンホスファイト、ジメタアリルハイドロジエンホスファイト、ジクロチルハイドロジエンホスファイト、エチルブチルハイドロジエンホスファイト、メチルヘキシルハイドロジエンホスファイト、メチルネオペンチルハイドロジエンホスファイト、メチルフェニルハイドロジエンホスファイト、メチルシクロヘキシルハイドロジエンホスファイト、メチルベンジルハイドロジエンホスファイトなどが含まれる。また、この上に示したジヒドロカルビルハイドロジエンホスファイトの混合物を用いることも可能である。
【0024】
環状ハイドロジエンホスファイトは、一般に、P原子に単結合している2つのO原子の間を橋渡ししている二価の有機基を含有する。そのような環状ハイドロジエンホスファイトは下記のケト−エノール形互変異性構造:
【0025】
【化3】
【0026】
[ここで、R3は二価の有機基である]
で描写可能である。R3は、好適には、ヒドロカルビレン基、例えばこれらに限定するものでないが、アルキレン、シクロアルキレン、置換アルキレン、置換シクロアルキレン、アルケニレン、シクロアルケニレン、置換アルケニレン、置換シクロアルケニレン、アリーレンおよび置換アリーレン基などであり、各基が含むC原子の数は好適には1またはそのような基が形成されるに適した最小限のC原子数から20以下のC原子数である。前記ヒドロカルビレン基はヘテロ原子、例えばこれらに限定するものでないがN、O、Si、SおよびPなどを含んでいることもできる。環状のハイドロジエンホスファイトは主にケト互変異性体(左側に示した)として存在し、エノール互変異性体(右側に示した)は主要でない種である。上述した互変異性平衡の平衡定数は温度、R3基の種類、溶媒の種類などの如き要因に依存する。両方の互変異性体とも水素結合により二量体、三量体またはオリゴマー形態で結合していることができる。この2種類の互変異性体のいずれかまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0027】
環状ハイドロジエンホスファイトの合成は非環状ジヒドロカルビルハイドロジエンホスファイト(通常はジメチルハイドロジエンホスファイトまたはジエチルハイドロジエンホスファイト)とアルキレンジオールもしくはアリーレンジオールのエステル交換反応で実施可能である。このエステル交換反応の手順は本分野の技術者に良く知られている。エステル交換反応を典型的には非環状ジヒドロカルビルハイドロジエンホスファイトとアルキレンジオールもしくはアリーレンジオールの混合物を加熱することにより実施する。その後、エステル交換反応の結果と得られる副生成物であるアルコール(通常はメタノールまたはエタノール)を留出させると新しく生成した環状のハイドロジエンホスファイトが残存する。
【0028】
適切な環状アルキレンハイドロジエンホスファイトの例は、2−オキソ−(2H)−5−ブチル−5−エチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−4−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−5−エチル−5−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−5,5−ジエチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−5−メチル−5−プロピル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−4−イソプロピル−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−4,6−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−4−プロピル−5−エチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン、2−オキソ−(2H)−4−メチル−1,3,2−ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホランなどである。また、この上に示した環状アルキレンハイドロジエンホスファイトの混合物を用いることも可能である。
【0029】
適切な環状アリーレンハイドロジエンホスファイトの例は、2−オキソ−(2H)−4,5−ベンゾ−1,3,2−ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,5−(3’−メチルベンゾ)−1,3,2−ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,5−(4’−メチルベンゾ)−1,3,2−ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,5−(4’−t−ブチルベンゾ)−1,3,2−ジオキサホスホラン、2−オキソ−(2H)−4,5−ナフタロ−1,3,2−ジオキサホスホランなどである。また、この上に示した環状アリーレンハイドロジエンホスファイトの混合物を用いることも可能である。
【0030】
上述したように、本触媒組成物の材料(c)は、異なる立体障害を有する2種以上の有機Al化合物のブレンド物を含む。炭化水素溶媒に可溶な有機Al化合物の使用が一般に好適である。用語「有機Al化合物」を本明細書で用いる場合、これはAl−C結合を少なくとも1つ含むAl化合物のいずれかを指す。好適な態様では、立体障害を有する少なくとも1種の有機Al化合物とあまり立体障害を有さない、即ちより簡単に述べると非障害の少なくとも1種の有機Al化合物を組み合わせることにより本触媒組成物の材料(c)を生成させる。
【0031】
材料(c)を生成させる時に用いる有機Al化合物は、一般に、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合している有機基を少なくとも1つ含むことを特徴とする。このような有機基の構造によって有機Al化合物が本発明の目的で立体的に障害または非障害であるかが決まる。このような有機基の構造は、アルミニウム原子に結合している有機基を示す下記の図を参照することにより最良に説明される:
【0032】
【化4】
【0033】
ここで、Cαはα炭素であり、そしてCβはβ炭素である。有機Al化合物の立体障害は一般にα炭素およびβ炭素の置換パターンで決まる。α炭素が第二級または第三級炭素、即ちこれに結合している水素原子の数が1のみであるか或はゼロの場合の有機Al化合物は立体的に障害を受けている。また、β炭素に結合している水素原子の数が1のみであるか或はゼロの場合の有機Al化合物も立体的に障害を受けている。他方、α炭素が第一級炭素、即ちこれに結合している水素原子の数が2の場合そしてβ炭素に結合している水素原子の数が少なくとも2の場合の有機Al化合物は障害を受けていない。障害を受けていない他の有機基にはCH3またはCH2Fが含まれる。
【0034】
立体障害有機基の非限定例にはイソプロピル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ネオペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロペンチルおよび2,6−ジメチルフェニル基が含まれる。非障害有機基の非限定例にはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシルおよびn−オクチル基が含まれる。
【0035】
本分野の技術者は、この上の図に示したようにAl原子の原子価は一般に3であることから有機Al化合物が障害有機基と非障害有機基の両方を含むことがあり得ることを理解するであろう。有機Al化合物が障害有機基と非障害有機基の両方を含む場合、本明細書の目的で、そのような化合物は立体障害と非障害の両方であると見なす、と言うのは、障害有機基と非障害有機基の両方が得られる重合体の性質に影響を与えると考えているからである。
【0036】
本発明で用いる触媒組成物の材料(c)を生成させる時に用いることができる好適な種類の有機Al化合物は、一般式AlRnX3-n[式中、各Rは独立して、Al原子にC原子を介して結合している一価有機基であり、nは1から3の整数であり、そして各Xは独立して水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキサイド基またはアリールオキサイド基である]で表される。各Rは、好適には、ヒドロカルビル基、例えばこれらに限定するものでないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリールおよびアルキニル基などであり、各基が含むC原子の数は好適には1またはそのような基が形成されるに適した最小限のC原子数から約20以下のC原子数である。前記ヒドロカルビル基もまたヘテロ原子、例えばO、S、N、SiおよびPなどを含んでいることができる。各Xは、好適には、カルボキシレート、アルコキサイドまたはアリールオキサイド基であり、各基が含むC原子数は好適には1またはそのような基が形成されるに適した最小限のC原子数から約20以下のC原子数である。
【0037】
従って、用いることができる適切なある種の有機Al化合物には、これらに限定するものでないが、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムの水素化物、ヒドロカルビルアルミニウムの二水素化物、ヒドロカルビルアルミニウムの二ハロゲン化物、ジヒドロカルビルアルミニウムのハロゲン化物、ジヒドロカルビルアルミニウムのカルボン酸塩、ヒドロカルビルアルミニウムのビス(カルボン酸)塩、ジヒドロカルビルアルミニウムのアルコキサイド、ヒドロカルビルアルミニウムのジアルコキサイド、ジヒドロカルビルアルミニウムのアリールオキサイド、ヒドロカルビルアルミニウムのジアリールオキサイドなど、そしてこれらの混合物が含まれる。一般にトリヒドロカルビルアルミニウム化合物が好適である。
【0038】
用いることができる有機Al化合物の具体例のいくつかには、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム、エチルジベンジルアルミニウム、ジエチルアルミニウムの水素化物、ジ−n−プロピルアルミニウムの水素化物、ジイソプロピルアルミニウムの水素化物、ジn−ブチルアルミニウムの水素化物、ジイソブチルアルミニウムの水素化物、ジn−オクチルアルミニウムの水素化物、ジフェニルアルミニウムの水素化物、ジ−p−トリルアルミニウムの水素化物、ジベンジルアルミニウムの水素化物、フェニルエチルアルミニウムの水素化物、フェニル−n−プロピルアルミニウムの水素化物、フェニルイソプロピルアルミニウムの水素化物、フェニル−n−ブチルアルミニウムの水素化物、フェニルイソブチルアルミニウムの水素化物、フェニル−n−オクチルアルミニウムの水素化物、p−トリルエチルアルミニウムの水素化物、p−トリル−n−プロピルアルミニウムの水素化物、p−トリルイソプロピルアルミニウムの水素化物、p−トリル−n−ブチルアルミニウムの水素化物、p−トリルイソブチルアルミニウムの水素化物、p−トリル−n−オクチルアルミニウムの水素化物、ベンジルエチルアルミニウムの水素化物、ベンジル−n−プロピルアルミニウムの水素化物、ベンジルイソプロピルアルミニウムの水素化物、ベンジル−n−ブチルアルミニウムの水素化物、ベンジルイソブチルアルミニウムの水素化物およびベンジル−n−オクチルアルミニウムの水素化物、エチルアルミニウムの二水素化物、n−プロピルアルミニウムの二水素化物、イソプロピルアルミニウムの二水素化物、n−ブチルアルミニウムの二水素化物、イソブチルアルミニウムの二水素化物、n−オクチルアルミニウムの二水素化物、ジメチルアルミニウムの塩化物、ジエチルアルミニウムの塩化物、ジイソブチルアルミニウムの塩化物、ジメチルアルミニウムの臭化物、ジエチルアルミニウムの臭化物、ジメチルアルミニウムのフッ化物、ジエチルアルミニウムのフッ化物、メチルアルミニウムの二塩化物、エチルアルミニウムの二塩化物、イソブチルアルミニウムの二塩化物、メチルアルミニウムの二臭化物、エチルアルミニウムの二臭化物、メチルアルミニウムの二フッ化物、エチルアルミニウムの二フッ化物、メチルアルミニウムのセスキクロライド、エチルアルミニウムのセスキクロライド、イソブチルアルミニウムのセスキクロライド、ジメチルアルミニウムのカプロン酸塩、ジエチルアルミニウムのカプリル酸塩、ジイソブチルアルミニウムのオクチル酸塩、ジメチルアルミニウムのネオデカン酸塩、ジエチルアルミニウムのステアリン酸塩、ジイソブチルアルミニウムのオレイン酸塩、メチルアルミニウムのビス(カプロン酸)塩、エチルアルミニウムのビス(カプリル酸)塩、イソブチルアルミニウムのビス(オクチル酸)塩、メチルアルミニウムのビス(ネオデカン酸)塩、エチルアルミニウムのビス(ステアリン酸)塩、イソブチルアルミニウムのビス(オレイン酸)塩、ジメチルアルミニウムのメトキサイド、ジエチルアルミニウムのメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムのメトキサイド、ジメチルアルミニウムのエトキサイド、ジエチルアルミニウムのエトキサイド、ジイソブチルアルミニウムのエトキサイド、ジメチルアルミニウムのフェノキサイド、ジエチルアルミニウムのフェノキサイド、ジイソブチルアルミニウムのフェノキサイド、メチルアルミニウムのジメトキサイド、エチルアルミニウムのジメトキサイド、イソブチルアルミニウムのジメトキサイド、メチルアルミニウムのジエトキサイド、エチルアルミニウムのジエトキサイド、イソブチルアルミニウムのジエトキサイド、メチルアルミニウムのジフェノキサイド、エチルアルミニウムのジフェノキサイド、イソブチルアルミニウムのジフェノキサイド、トリス(フルオロメチル)アルミニウムなど、そしてこれらの混合物が含まれる。
【0039】
本発明で用いる触媒組成物の材料(c)を生成させる時に用いることができる別の種類の有機Al化合物はアルミノキサンである。アルミノキサンは本技術分野で良く知られており、これには一般式:
【0040】
【化5】
【0041】
で表され得る線状のオリゴマー状アルミノキサン、および一般式:
【0042】
【化6】
【0043】
で表され得る環状のオリゴマー状アルミノキサンが含まれ、ここで、xは1から約100、好適には約10から約50の整数であり、yは、2から約100、好適には約3から約20の整数であり、そして各R4は、独立して、Al原子にC原子を介して結合している一価の有機基である。各R4は、好適には、ヒドロカルビル基、例えばこれらに限定するものでないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリールおよびアルキニル基などであり、各基が含むC原子の数は好適には1またはそのような基が形成されるに適した最小限のC原子数から約20以下のC原子数である。前記ヒドロカルビル基はヘテロ原子、例えばこれらに限定するものでないがN、O、Si、SおよびPなどを含んでいることもできる。アルミノキサンのモル数はオリゴマー状アルミノキサン分子のモル数ではなくAl原子のモル数を指す。アルミノキサンを用いた触媒反応の技術分野ではそのような慣例が通常用いられる。
【0044】
アルミノキサンの調製はトリヒドロカルビルアルミニウム化合物と水を反応させることで実施可能である。この反応は、公知方法、例えば(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒に溶解させた後に水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を例えば金属塩に含まれている結晶水または有機もしくは無機化合物に吸着されている水と反応させる方法、そして(3)重合させるべき単量体もしくは単量体の溶液にトリヒドロカルビルアルミニウム化合物を添加した後に水を加える方法などに従って実施可能である。
【0045】
用いることができる適切なアルミノキサン化合物の具体例のいくつかには、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、n−ブチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、t−ブチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンなど、そしてこれらの混合物が含まれる。入手性そして脂肪族および環状脂肪族炭化水素溶媒への溶解性が理由で特にイソブチルアルミノキサンが有用である[公知の技術を用いて、MAOが有するメチル基の約20−80%をC2−C12ヒドロカルビル基、好適にはイソブチル基で置換するとMMAOが生成し得る]。
【0046】
そのような触媒組成物は、幅広い範囲の全触媒濃度および触媒材料比に亘って非常に高い触媒活性を示す。しかしながら、最も望ましい特性を有する重合体が得られる全触媒濃度および触媒材料比の範囲はより狭い。その上、3種類の触媒材料(a)、(b)および(c)が相互作用して活性触媒種を生成すると考えている。従って、いずれか1つの触媒材料の最適な濃度は他の触媒材料の濃度に依存する。ハイドロジエンホスファイトとMo含有化合物のモル比(P/Mo)は約0.5:1から約50:1、より好適には約1:1から約25:1、更により好適には約2:1から約10:1に及んで多様であり得る。本触媒組成物の材料(c)にこの上に示した如き式AlRnX3-nで定義される2種以上の有機Al化合物のブレンド物を含める場合の有機Al化合物のブレンド物中のAlとMo含有化合物のモル比(Al/Mo)は約1:1から約100:1、より好適には約3:1から約50:1、更により好適には約5:1から約25:1に及んで多様であり得る。本発明で用いる触媒組成物の材料(c)に2種以上のアルミノキサンのブレンド物を含める場合のアルミノキサンのブレンド物中のアルミニウムとMo含有化合物のモル比(Al/Mo)は約5:1から約500:1、より好適には約10:1から約200:1、更により好適には約20:1から約100:1に及んで多様であり得る。この上に示した態様が好適であるが、式AlRnX3-nで定義される化合物とアルミノキサンを組み合わせることにより2種以上の有機Al化合物のブレンド物を生成させることも可能である。
【0047】
この上で考察したように、好適には、3種類の材料(a)、(b)および(c)を組み合わせることにより本発明で用いる触媒組成物を生成させる。このような組み合わせの結果として活性触媒種が生成すると考えてはいるが、いろいろな材料または成分の間で起こる相互作用または反応の度合を決して大きな度合の確かさでは認識していない。従って、前記材料の簡単な混合物、物理的もしくは化学的引力によって生じるいろいろな材料の錯体、前記材料の化学反応生成物または前記の組み合わせを包含させる目的で用語「触媒組成物」を用いてきた。
【0048】
例えば、下記の方法の中の1つを用いて触媒材料もしくは成分を組み合わせるか或は混合することにより本発明で用いる組成物を生成させることができる:
1)単量体と溶媒[または簡単にバルク単量体(bulk monomer)]が入っている溶液に前記3種類の触媒材料を段階的または同時様式で添加することで触媒組成物をインサイチューで生成させることができる。前記触媒材料を段階的に添加する場合の添加順は重要でない。しかしながら、好適には、Mo含有化合物を最初に添加した後、ハイドロジエンホスファイトに続いて、2種以上の有機Al化合物のブレンド物を添加する。
2)前記3種類の材料を重合装置の外側で一般に約−20から約80℃の適切な温度で前以て混合しておきそして得られた触媒組成物を単量体溶液に添加することができる。
3)本触媒組成物を単量体の存在下で前以て生じさせておくこともできる。即ち、前記3種類の触媒材料を少量の単量体の存在下で一般に約−20から約80℃の適切な温度で前以て混合しておく。このようにして本触媒を前以て生じさせる時に用いる単量体の量はMo含有化合物1モル当たり約1から約500モル、より好適には約4から約100モル、更により好適には約10から約50モルの範囲であることができる。その結果得られた本触媒組成物を重合させるべき単量体の残りに添加する。
4)2段階手順を用いて触媒組成物を生成させることも可能である。1番目の段階は、Mo含有化合物と2種以上の有機Al化合物のブレンド物を少量の単量体の存在下で一般に約−20から約80℃の適切な温度で組み合わせることを包含する。2番目の段階で、この上に示した反応混合物とハイドロジエンホスファイトを段階的または同時様式のいずれかで重合させるべき単量体の残りに仕込む。
5)別の2段階手順では、最初にMo含有化合物とハイドロジエンホスファイトを前以て組み合せることによりMo−配位子錯体を生成させる。このMo−配位子錯体が生成した後、この配位子を2種以上の有機Al化合物のブレンド物と組み合わせることにより活性触媒種を生成させる。前記Mo−配位子錯体の調製は個別にか或は重合させるべき単量体の存在下で実施可能である。この錯体形成反応は通常の圧力下で便利な任意温度で実施可能であるが、反応速度を速める目的で好適にはこの反応を室温以上の温度で実施する。このMo−配位子錯体の生成で用いる温度および時間はいくつかの変数に依存し、そのような変数には、用いる個々の出発材料および溶媒が含まれる。このMo−配位子錯体が生成した後、これをその錯体形成反応混合物から単離することなく用いることができる。しかしながら、望まれるならば、このMo−配位子錯体を使用に先立って前記錯体形成反応混合物から単離することもできる。
【0049】
触媒材料(c)、即ち2種以上の有機Al化合物のブレンド物に関して、このブレンド物を他の触媒材料および重合させるべき単量体と混合する前に2種以上の有機Al化合物を組み合わせることによりそのようなブレンド物を前以て生成させておく方が有利である。それにも拘らず、また、2種以上の有機Al化合物のブレンド物をインサイチューで生成させることも可能である。即ち、この2種以上の有機Al化合物を重合時に他の触媒材料および重合させるべき単量体の存在下で組み合わせる。
【0050】
この上に示した方法で挙げたように、Moが基になった触媒組成物または触媒材料の1種以上の溶液を重合装置の外側で生成させる場合には、好適には、有機溶媒もしくは担体を用いる。有用な溶媒には炭化水素溶媒、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素および環状脂肪族炭化水素などが含まれる。芳香族炭化水素溶媒の非限定例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メシチレンなどが含まれる。脂肪族炭化水素溶媒の非限定例には、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、ケロセン、石油スピリットなどが含まれる。環状脂肪族炭化水素溶媒の非限定例には、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどが含まれる。また、この上に示した炭化水素の商業的混合物を用いることも可能である。環境上の理由で脂肪族および環状脂肪族溶媒が非常に好適である。この上に示した有機溶媒は本触媒組成物または材料を溶かす働きをし得るか、或は前記溶媒は単に本触媒組成物もしくは材料を懸濁させ得る担体として働き得る。
【0051】
この上に記述したように、本発明で用いる触媒組成物は共役ジエンの重合に非常に高い触媒活性を示す。重合させることができる共役ジエンの具体例のいくつかには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエンおよび2,4−ヘキサジエンが含まれる。また、2種以上の共役ジエンの混合物を共重合で用いることも可能である。好適な共役ジエンは1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンおよび1,3−ヘキサジエンである。最も好適な単量体は1,3−ブタジエンである、と言うのは、本発明で用いる触媒組成物は有利に1,3−ブタジエンからs−PBDを生じさせる重合で非常に高い触媒活性と立体選択性を示しかつこの上に示したようにs−PBDの溶融温度の調整を可能にするからである。
【0052】
共役ジエン単量体を触媒有効量の本触媒組成物の存在下で重合させることにより、共役ジエン重合体、例えばs−PBDなどの製造を達成する。この上に示した如き共役ジエンと本触媒組成物の材料を接触させる時に利用できる方法は多様である。触媒有効量が意味することの理解に関して、重合マス(mass)で用いる全触媒濃度はいろいろな要因、例えば材料の純度、重合温度、望まれる重合速度および転化率、そして他の数多くの要因の相互作用に依存する。従って、個々の触媒材料を触媒有効量で用いるべきであると述べることを除いて具体的な全触媒濃度を明確に挙げるのは不可能である。用いるMo含有化合物の量は一般に共役ジエン単量体100g当たり約0.01から約2ミリモル、より好適には共役ジエン単量体100g当たり約0.02から約1.0ミリモル、更により好適には共役ジエン単量体100g当たり約0.05から約0.5ミリモルに及んで多様であり得る。
【0053】
共役ジエン単量体の重合を好適には希釈剤としての有機溶媒中で実施する。従って、重合させるべき単量体と生成する重合体の両方ともが重合用媒体に溶解し得る溶液重合系を用いることができる。別法として、生成する重合体が不溶な溶媒を選択することにより沈澱重合系を用いることも可能である。両方の場合とも、触媒組成物の調製で使用可能な有機溶媒に加えて、通常はある量の有機溶媒を重合系に加える。この追加的有機溶媒は触媒溶液に含まれる有機溶媒と同じか或は異なっていてもよい。重合に触媒作用を及ぼす目的で用いる有機溶媒は触媒組成物に関して不活性であるのが一般に好適である。希釈剤として用いることができる適切な種類の有機溶媒には、これらに限定するものでないが、脂肪族、環状脂肪族および芳香族炭化水素が含まれる。適切な脂肪族溶媒の代表的例のいくつかには、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、ケロセン、石油スピリットなどが含まれる。適切な環状脂肪族溶媒の代表的な例のいくつかには、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどが含まれる。適切な芳香族溶媒の代表的例のいくつかには、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メシチレンなどが含まれる。また、この上に示した炭化水素の商業的混合物を用いることも可能である。環境上の理由で脂肪族および環状脂肪族溶媒が非常に好適である。
【0054】
重合させるべき共役ジエン単量体の濃度は特定の範囲に限定されない。しかしながら、一般的には、重合開始時の重合用媒体に存在させる単量体の濃度は好適には約3から約80重量%、より好適には約5から約50重量%、更により好適には約10から約30重量%の範囲である。
【0055】
共役ジエン単量体の重合をまた塊状重合で実施することも可能であり、塊状重合は溶媒を全く用いない重合環境を指す。塊状重合は凝縮液相または気相中のいずれかで実施可能である。
【0056】
共役ジエン単量体を重合させる時、生成する共役ジエン重合体の分子量を制御する目的で分子量調節剤を用いることができる。その結果として、幅広い分子量を示す共役ジエン重合体を製造する目的でそれを用いることができるような様式で重合系の範囲を広げることができる。用いることができる適切な種類の分子量調節剤には、これらに限定するものでないが、α−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび1−オクテンなど、累積ジオレフィン(accumulated diolefins)、例えばアレンおよび1,2−ブタジエンなど、非共役ジオレフィン、例えば1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、4−ビニルシクロヘキセン、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,2−ジビニルシクロヘキサン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよび1,2,4−トリビニルシクロヘキサンなど、アセチレン類、例えばアセチレン、メチルアセチレンおよびビニルアセチレンなど、そしてこれらの混合物が含まれる。このような分子量調節剤の使用量は、共役ジエン単量体100重量部当たりの部数(phm)で表して、約0.01から約10phm、好適には約0.02から約2phm、より好適には約0.05から約1phmである。
【0057】
また、共役ジエン単量体の重合をH2の存在下で実施することにより、生成させるべき共役ジエン重合体の分子量を有効に調節することも可能である。この場合の好適なH2分圧は約0.01から約50気圧の範囲内である。
【0058】
本発明に従って実施する共役ジエン単量体の重合は、バッチ方法、連続方法または半連続方法でさえ実施可能である。半連続方法では、既に重合した単量体を置換する必要に応じて単量体を間欠的に仕込む。如何なる場合でも、重合を望ましくは撹拌を中程度から激しく行いながら不活性な保護ガス、例えば窒素、アルゴンまたはヘリウムなどを用いて嫌気条件下で実施する。本発明の実施で用いる重合温度は低温、例えば−10℃以下から高温、例えば100℃以上に及んで幅広く多様であり得るが、好適な温度範囲は約20から約90℃である。重合で発生する熱は外部冷却、単量体または溶媒の蒸発による冷却またはこの2つの方法の組み合わせで除去可能である。用いる重合圧は幅広く多様であり得るが、好適な圧力範囲は約1から約10気圧である。
【0059】
所望の転化率が達成された時点で、触媒を失活させる重合停止剤を添加することで重合を停止させることができる。用いる停止剤は典型的にプロトン性化合物であり、それには、これらに限定するものでないが、アルコール、カルボン酸、無機酸、水またはこれらの混合物が含まれる。この停止剤の添加と一緒にか、添加前にか或は添加後に抗酸化剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどを添加することもできる。用いる抗酸化剤の量は好適には重合体生成物の0.2から1重量の範囲である。この重合反応を停止させた時点で通常の脱溶媒および乾燥手順を用いて重合体を重合混合物から回収することもできる。例えば、アルコール、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどを用いて重合混合物を凝固させるか或は蒸気を用いて溶媒と未反応の単量体を留出させた後に濾過を行うことなどにより重合体を重合混合物から単離することができる。次に、この重合体生成物を乾燥させることで残存量の溶媒と水を除去する。
【0060】
この上に示したように、本発明の好適な態様は、結晶性共役ジエン重合体、例えばs−PBDなどを合成する方法に向けたものである。有利には、立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を本発明の触媒組成物に含める材料(c)として用いることにより、本発明に従って得られる結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を操作することができる。立体障害有機Al化合物を本触媒組成物に入れて用いると一般に比較的高い溶融温度を示す重合体がもたらされそして立体障害を受けていない有機Al化合物を本触媒組成物に入れて用いると比較的低い溶融温度を示す重合体がもたらされることを見いだした。驚くべきことに、立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物を用いると得られる重合体の溶融温度を注文に合わせることができる。言い換えれば、比較的高い溶融温度を示す重合体をもたらす立体障害有機Al化合物と比較的低い溶融温度を示す重合体をもたらす非立体障害有機Al化合物のブレンド物を用いると、比較的高い溶融温度と比較的低い溶融温度の間のどこかの溶融温度を示す重合体を得ることが可能になる。
【0061】
例えば非環状ハイドロジエンホスファイトを本触媒組成物に入れて用いた時に非立体障害有機Al化合物を用いると一般に約90から約140℃の溶融温度を示すs−PBD重合体がもたらされる。他方、立体障害有機Al化合物を用いると一般に約180から約210℃の溶融温度を示すs−PBD重合体がもたらされる。非環状ハイドロジエンホスファイトを本触媒組成物に入れて用いた時に立体障害有機Al化合物と非立体障害有機Al化合物のブレンド物を用いると約90から約210℃の範囲の中のどこかの溶融温度を示すs−PBD重合体を得ることができる。本発明の方法を用いると、有利に、約140から約180℃、より有利には約145から約170℃、更により有利には約150から約160℃の溶融温度を示すs−PBDを合成することができる。
【0062】
その上、障害有機Al化合物と非障害有機Al化合物のモル比を調整することにより得られる結晶性共役ジエン重合体の所望溶融温度を達成することができる。得られる重合体の溶融温度は、一般に、非障害有機Al化合物に対する障害有機Al化合物のモル比を高くすればするほど高くなる。同様に、非障害有機Al化合物に対する障害有機Al化合物のモル比を低くすることにより、得られる重合体の溶融温度を下げることも可能である。
【0063】
非障害有機Al化合物に対する障害有機Al化合物のモル比を調整することに加えて、障害化合物の種類の範囲内の特定の有機Al化合物を選択するか、非障害化合物の種類の範囲内の特定の有機Al化合物を選択するか、或は各種類から1種以上を選択することにより、得られる結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を操作することができる。次に、その選択した有機Al化合物を組み合わせることにより本触媒組成物の材料(c)を生成させる。
【0064】
立体的に異なる2種以上の有機Al化合物のブレンド物に含める非障害有機Al化合物に対する障害有機Al化合物のモル比を高くすることでs−PBDの分子量、1,2−結合含有量およびシンジオタクティシティー(syndiotacticities)を高くすることができる。
【0065】
s−PBDをいろいろなゴムとブレンドすることでそれらの特性を向上させることができる。例えばこれを弾性重合体に添加することで、前記弾性重合体から製造される構成要素、特にタイヤの生強度を向上させることができる。タイヤの支持用もしくは補強用カーカス(carcass)は特に組み立ておよび硬化手順中に変形を起こし易い。この理由で、タイヤの支持用カーカスで用いられるゴム組成物にs−PBDを添加するのはそのような変形を防止または最小限にするに特に役立つ。加うるに、s−PBDをタイヤ踏み面用組成物に添加するとタイヤの熱蓄積が低下しかつタイヤの裂けおよび摩耗特性が向上し得る。s−PBDはまたフィルムおよび包装用材料の製造、そして数多くの成形用途で有用である。
【0066】
【実施例】
参考実施例1
オーブンで乾燥させておいた1Lのガラス製ボトルを自己密封性ゴムライナーおよび穴開き金属製キャップで蓋をした。このボトルを乾燥N2流れで徹底的にパージ洗浄した後、このボトルにヘキサンを23gおよび1,3−ブタジエン含有量が22.0重量%の1,3−ブタジエン/ヘキサンブレンド物を227g仕込んだ。このボトルに下記の触媒材料を逐次的に加えた:(1)0.15ミリモルのオクチル酸Mo、(2)0.60ミリモルのビス(2−エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイトおよび(3)2.55ミリモルのトリ−n−ブチルアルミニウム。このボトルを65℃に維持されている水浴内で6時間揺らした。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1.0g入れておいた10mLのイソプロパノールを加えることで重合を停止させた。3Lのイソプロパノールを用いて重合混合物を凝固させた。濾過に続いて乾燥を真空下60℃で一定重量になるまで行うことにより、得られたs−PBDを単離した。
【0067】
溶融温度をDSCで測定した。重合体の1,2−結合およびシンジオタクティシティー含有量を1Hおよび13C NMR分析で測定した。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および多分散指数をGPC測定で測定した。
【0068】
実施例2−4、参考実施例5
実施例2−4、参考実施例5では、参考実施例1で用いたトリn−ブチルアルミニウムの代わりにいろいろなモル比、即ち30:70、50:50、70:30および100:0のトリイソブチルアルミニウム/トリn−ブチルアルミニウム混合物を用いる以外は実施例1に記述した手順を繰り返した(これらのサンプル各々のMo/P/Alモル比は1:4:17であった)。
【0069】
参考実施例1、実施例2−4、参考実施例5の有機Al成分比、重合体収率および得られた重合体の物理的性質を表1に要約する。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、トリn−ブチルアルミニウムに対するトリイソブチルアルミニウムのモル比を高くすることでs−PBDの溶融温度、分子量、1,2−結合含有量およびシンジオタクテックィシティーを高くすることができる。
Claims (12)
- 所望の性質を有する共役ジエン重合体の製造方法であって、
a)モリブデン含有化合物、
b)ハイドロジエンホスファイト、および
c)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物、
を組合せることにより生成した触媒組成物を触媒有効量で存在させて1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンまたはそれらの混合物を重合させることを含んで成る方法。 - (1)モリブデン含有化合物、(2)ハイドロジエンホスファイトおよび(3)立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物、を組合せることにより生成した触媒組成物を用いて1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンまたはそれらの混合物を重合させて生成する結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を調節する方法であって、a)少なくとも1種の立体障害有機アルミニウム化合物と少なくとも1種の非立体障害有機アルミニウム化合物を選択し、
b)この選択した有機アルミニウム化合物を組合せることにより触媒組成物の材料(3)を生成させ、そして
c)その後、前記触媒組成物を用いて共役ジエン単量体を重合させる、
ことを含んで成る方法。 - 触媒組成物であって、Mo含有化合物とハイドロジエンホスファイトと立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物を組合せることを含んで成る方法で生成した触媒組成物。
- 前記立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物が少なくとも1種の立体障害有機アルミニウム化合物と少なくとも1種の非立体障害有機アルミニウム化合物を含有する請求項1記載の方法。
- 前記立体的に異なる2種以上の有機アルミニウム化合物のブレンド物が少なくとも1種の立体障害有機アルミニウム化合物と少なくとも1種の非立体障害有機アルミニウム化合物を含有する請求項3記載の触媒組成物
- 前記少なくとも1種の立体障害有機アルミニウム化合物がトリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1−メチル−シクロペンチル)アルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、イソプロピルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、t−ブチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンまたはそれらの混合物である請求項2または4記載の方法。
- 前記少なくとも1種の非立体障害有機アルミニウム化合物がトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、n−ブチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアルミノキサンまたはそれらの混合物である請求項2または4記載の方法。
- 前記結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を高くする目的で前記非立体障害有機アルミニウム化合物に対する前記立体障害有機アルミニウム化合物のモル比を高くする段階を更に含んで成る請求項2記載の方法。
- 前記結晶性共役ジエン重合体の溶融温度を低くする目的で前記非立体障害有機アルミニウム化合物に対する前記立体障害有機アルミニウム化合物のモル比を低くすることを更に含んで成る請求項2記載の方法。
- 前記共役ジエンが1,3−ブタジエンであり、それによって、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを生成させる請求項10または11記載の方法。
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